(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135102
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】液晶装置および電子機器
(51)【国際特許分類】
G02F 1/1339 20060101AFI20240927BHJP
G02F 1/13 20060101ALI20240927BHJP
G02F 1/1337 20060101ALI20240927BHJP
G02F 1/1368 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
G02F1/1339 505
G02F1/13 505
G02F1/1337 515
G02F1/1368
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023045623
(22)【出願日】2023-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100114937
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 裕幸
(74)【代理人】
【識別番号】100196058
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 彰雄
(72)【発明者】
【氏名】柳澤 達也
【テーマコード(参考)】
2H088
2H189
2H192
2H290
【Fターム(参考)】
2H088EA10
2H088EA12
2H088GA02
2H088GA19
2H088HA02
2H088HA03
2H088HA08
2H088HA12
2H088HA18
2H088JA10
2H088KA27
2H088MA20
2H189AA08
2H189DA83
2H189DA87
2H189GA49
2H189HA11
2H189HA16
2H189JA10
2H189LA03
2H189LA05
2H189LA10
2H189LA14
2H189LA17
2H189MA05
2H189MA15
2H192AA24
2H192EA43
2H192FA01
2H192GD12
2H192GD25
2H192JA13
2H192JB02
2H290AA35
2H290BF04
2H290CA46
2H290CB22
(57)【要約】
【課題】液晶の劣化により生じたイオン性不純物をキセロゲルにより取り除くことができ、液晶パネルを大型化することなく液晶の劣化による影響を低減できる液晶装置および電子機器を提供する。
【解決手段】第1基板と、第2基板と、前記第1基板と前記第2基板との間で平面視で外周部に配置されるシール材と、前記第1基板と前記第2基板との間、かつ平面視で前記シール材によって囲まれる内側に配置される液晶層と、少なくとも前記シール材の一部に沿って配置されるキセロゲルを含む吸着層と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1基板と、
第2基板と、
前記第1基板と前記第2基板との間に配置されるシール材と、
前記第1基板と前記第2基板との間、かつ平面視で前記シール材によって囲まれる内側に配置される液晶層と、
少なくとも前記シール材の一部に沿って配置されるキセロゲルを含む吸着層と、
を備えることを特徴とする液晶装置。
【請求項2】
前記吸着層は、前記シール材の前記液晶層側の側面に配置される、
ことを特徴とする請求項1に記載の液晶装置。
【請求項3】
前記吸着層は、前記シール材の前記液晶層とは反対側の側面に配置される、
ことを特徴とする請求項1に記載の液晶装置。
【請求項4】
前記吸着層は、前記シール材の角部に配置される、
ことを特徴とする請求項1に記載の液晶装置。
【請求項5】
第1基板と、
第2基板と、
前記第1基板と前記第2基板との間に配置されるシール材と、
前記第1基板と前記第2基板との間、かつ平面視で前記シール材によって囲まれる内部に配置される液晶層と、
前記第1基板と前記液晶層との間に配置される画素電極と、
前記画素電極よりも前記シール材側に配置されるダミー画素電極と、
平面視で前記画素電極と前記ダミー画素電極との間に配置され、キセロゲルを含む吸着層と、
を備えることを特徴とする液晶装置。
【請求項6】
前記第1基板は、配向膜を有し、
前記吸着層は、前記配向膜よりも前記第1基板側に配置される、
ことを特徴とする請求項5に記載の液晶装置。
【請求項7】
前記第1基板は、配向膜を有し、
前記吸着層は、前記配向膜と重ならない位置に配置される、
ことを特徴とする請求項5に記載の液晶装置。
【請求項8】
前記吸着層は、平面視で前記画素電極と前記ダミー画素電極との間に配置された遮光層と重なる位置に配置される、
ことを特徴とする請求項5に記載の液晶装置。
【請求項9】
第1基板と、
第2基板と、
前記第1基板と前記第2基板との間に配置される液晶層と、
前記第1基板と前記液晶層との間に配置される第1画素電極と、
前記第1基板と前記液晶層との間に配置され、平面視で前記第1画素電極と並んで配置される第2画素電極と、
平面視で前記第1画素電極と前記第2画素電極との間に配置され、キセロゲルを含む吸着層と、
を備えることを特徴とする液晶装置。
【請求項10】
前記第1基板は、配向膜を有し、
前記吸着層は、前記配向膜よりも前記第1基板側に配置される、
ことを特徴とする請求項9に記載の液晶装置。
【請求項11】
前記第1基板は、配向膜を有し、
前記吸着層は、前記配向膜と重ならない位置に配置される、
ことを特徴とする請求項9に記載の液晶装置。
【請求項12】
前記吸着層は、前記第1画素電極と前記第2画素電極との間に配置された遮光層と重なる位置に配置される、
ことを特徴とする請求項9に記載の液晶装置。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれか1項に記載の液晶装置を備えた電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶装置および電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶装置として、シール材の内部に設けられた液晶を循環させる循環流路がシール材及び隔壁によって構成され、循環流路は、循環流路の液晶を強制的に流動させる強制循環装置が設けられるとともに、表示領域よりイオンに対する吸着性を高くする構成が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に開示される液晶装置では、循環経路を設ける分十分なスペースを確保する必要があるため、表示領域を縮小化したり、パネルを大型化しなければならないという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の1つの態様によれば、第1基板と、第2基板と、前記第1基板と前記第2基板との間に配置されるシール材と、前記第1基板と前記第2基板との間、かつ平面視で前記シール材の内部に配置される液晶層と、少なくとも前記シール材の一部に沿って配置されるキセロゲルを含む吸着層と、を備える、液晶装置が提供される。
【0006】
本発明の別の態様によれば、第1基板と、第2基板と、前記第1基板と前記第2基板との間に配置されるシール材と、前記第1基板と前記第2基板との間、かつ平面視で前記シール材の内部に配置される液晶層と、前記第1基板と前記液晶層との間に配置される画素電極と、前記画素電極よりも前記シール材側に配置されるダミー画素電極と、平面視で前記画素電極と前記ダミー画素電極との間に配置され、キセロゲルを含む吸着層と、を備える、液晶装置が提供される。
【0007】
本発明の別の態様によれば、第1基板と、第2基板と、前記第1基板と前記第2基板との間に配置される液晶層と、前記第1基板と前記液晶層との間に配置される第1画素電極と、前記第1基板と前記液晶層との間に配置され、平面視で前記第1画素電極と並んで配置される第2画素電極と、平面視で前記第1画素電極と前記第2画素電極との間に配置され、キセロゲルを含む吸着層と、を備える、液晶装置が提供される。
【0008】
本発明の別の態様によれば、上述した液晶装置を備えた電子機器が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の第1実施形態による液晶装置の構成例を示す平面図。
【
図3】
図1に示す液晶装置の画素の具体的構成例を模式的に示す断面図。
【
図4】本発明の第1実施形態の変形例による液晶装置の画素の具体的構成例を模式的に示す断面図。
【
図5】本発明の第2実施形態による液晶装置の画素の具体的構成例を模式的に示す断面図。
【
図6】本発明の第3実施形態による液晶ディスプレイの構成例を示す分解斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[第1実施形態]
以下、本発明の一実施形態について図面を用いて説明する。
なお、以下の各図面においては各構成要素を見やすくするため、構成要素によって寸法の縮尺を異ならせて示すことがある。
【0011】
[液晶装置の全体構成]
図1は、第1実施形態に係る液晶装置100の一態様を示す平面図である。
図2は、
図1の液晶装置100のH―H’断面図である。
図3は、
図2に示す断面を拡大して模式的に示す説明図である。
図1、
図2、および
図3に示すように、液晶装置100は、第1基板10(素子基板)と、第2基板20(対向基板)とが所定の隙間を介してシール材103によって張り合わされた液晶パネル100pを有している。
【0012】
シール材103は、光硬化樹脂や熱硬化性樹脂等からなる接着剤である。シール材103は、第2基板20の外縁に沿うように枠状に設けられている。第1基板10と第2基板20との間でシール材103によって囲まれた領域には、液晶層50が設置されている。シール材103には、液晶注入口として利用される途切れ部分(図示省略)が形成される場合がある。途切れ部分は、液晶を注入した後、封止材によって塞がれる。
【0013】
第1基板10および第2基板20は、それぞれ平面視で四角形状である。第1基板10、第2基板20、および液晶装置100の略中央における表示領域10Aは、平面視で長方形状である。ここで、液晶パネル100pにおいて、長辺方向に沿う方向をX軸方向と定義し、短辺方向に沿う方向をY方向と定義する。かかる形状に対応して、シール材103は、表示領域10Aの形状に合わせて略長方形に設けられる。シール材103の内周縁103aと表示領域10Aの外周縁10aとの間には、矩形枠状の周辺領域10Bが設けられている。
【0014】
周辺領域10Bの外周部には、キセロゲルを含む吸着層102が設けられている。吸着層102は、シール材103の内周縁103aと接するように搭載されている。吸着層102では、液晶層50の液晶材料に光が当たることで生成するイオン性不純物が、キセロゲルからなる吸着層102に接触あるいは通過することにより、イオン性不純物のみが選択的に吸着される。キセロゲルの基となるゲルの官能基の違いにより、化学的に捕捉する劣化物を調整できる。また液晶材料自体は、ゲル構造の制御により、物理的にキセロゲルに吸着されない。
【0015】
第1基板10は、石英やガラス等からなる透光性の基板本体10wを有する。表示領域10Aの外側には、第1基板10の第2基板20側と対向する一方面10sにおいて、第1基板10のX軸方向に延びる一方の第1辺10cに沿ってデータ線駆動回路11および複数の端子12が形成されている。第1基板10の一方面10sにおける第1辺10cに隣接し、Y軸方向に延びる一対の第2辺10dに沿って走査線駆動回路13が形成されている。複数の端子12には、フレキシブル配線基板14が接続されている。第1基板10には、フレキシブル配線基板14を介して各種電位や各種信号が入力される。
【0016】
ここで、第1基板10に形成される層を説明する際、上層側あるいは表面側とは第1基板10の基板本体10wが位置する側とは反対側(第2基板20および液晶層50が位置する側)を意味し、下層側とは第1基板10の基板本体10wが位置する側を意味する。第2基板20に形成される層を説明する際、上層側あるいは表面側とは第2基板20の基板本体20wが位置する側とは反対側(第1基板10および液晶層50が位置する側)を意味し、下層側とは第2基板20の基板本体20wが位置する側を意味する。
【0017】
第1基板10の一方面10s側において、表示領域10Aには、ITO(インジウム錫酸化物:Indium Tin Oxide)膜等からなる透光性の複数の画素電極9Aと、複数の画素電極9Aの各々に電気的に接続するトランジスター(図示省略)と、がマトリクス状に形成されている。画素電極9Aの上層側には第1無機配向膜16が形成されている。
【0018】
図2および
図3に示すように、第1基板10の一方面10sの側において、表示領域10Aと吸着層102とに挟まれた四角枠状の周辺領域10Bには、画素電極9Aと同時形成されたダミー画素電極9Bが形成されている。
図2では、1つの辺当たり、2列のダミー画素電極9Bが表されている。なお、ダミー画素電極9Bは、1列や3列以上で形成されていてもよい。
【0019】
図2に示すように、第2基板20は、石英やガラス等からなる基板本体20wを有している。基板本体20wの第1基板10側の面(一方面20s)には、ITO膜からなる透光性の共通電極21が後述する絶縁膜22を介して形成されている。共通電極21は、第2基板20の全面にわたって形成されている。第2基板20の一方面20sの側には、共通電極21の下層側に遮光層29が形成されている。遮光層29は、第2基板20の一方面20sと共通電極21との間に介在されている。共通電極21の液晶層50側の表面には、第2無機配向膜26が積層されている(
図3参照)。遮光層29と共通電極21との間には、透光性の絶縁膜22が形成されている。遮光層29は、表示領域10Aの外周縁に沿って延在する額縁部を形成している。すなわち遮光層29の内縁によって、表示領域10Aの外縁が規定されている。遮光層29は、平面視でダミー画素電極9Bと重なる位置に形成されている。遮光層29は、隣り合う画素電極9Aにより挟まれた画素間領域に重なるブラックマトリクス部(図示せず)を含んで形成されてもよい。また、第2基板20では、複数の画素電極9Aの各々と平面視で重なる領域にレンズが形成されることもある。
【0020】
図1に示すように、第1基板10には、平面視でシール材103より外側において第2基板20の角部分と重なる領域に、第1基板10と第2基板20との間で電気的導通をとるための基板間導通用電極105Aが形成されている。基板間導通用電極105Aには、導電粒子を含んだ基板間導通材105Bが配置されている。第2基板20の共通電極21は、基板間導通用電極105Aおよび基板間導通材105Bを介して、第1基板10側に電気的に接続されている。このため、共通電極21は、第1基板10の側から共通電位が印加されている。
【0021】
[液晶装置の具体的構成]
図3に示すように、第1無機配向膜16および第2無機配向膜26はいずれも、シリコン酸化膜(SiOx(x<2))、(SiO
2)、チタン酸化膜(TiO
2)、マグネシウム酸化膜(MgO)、アルミニウム酸化膜(Al
2O
3)、酸化インジウム(In
2O
3)、三酸化二アンチモン(Sb
2O
3)、五酸化タンタル(Ta
2O
5)等の斜方蒸着膜からなる。従って、第1無機配向膜16および第2無機配向膜26は、カラムと称せられる複数の凸部が斜めに傾いたカラム構造を有している。そのため、第1無機配向膜16および第2無機配向膜26は、液晶層50に用いた誘電異方性が負のネマチック液晶分子等の液晶分子(液晶材料55)を垂直配向させた際、液晶材料55の長軸を第1基板10および第2基板20に対する法線から斜めに傾いたプレチルトを付すことができる。本実施形態において、第1無機配向膜16および第2無機配向膜26はいずれも、SiO
2の斜方蒸着膜からなる。
【0022】
第1無機配向膜16および第2無機配向膜26は各々、第1基板10および第2基板20の略全面に形成されている。第1無機配向膜16および第2無機配向膜26の液晶層50側の面には、有機シラン化合物層17、27が積層されている。このため、第1無機配向膜16および第2無機配向膜26のシラノール基と液晶層50とが接触していない。これにより、第1無機配向膜16および第2無機配向膜26のシラノール基と液晶層50との間で光化学反応が発生しにくいので、液晶装置100の信頼性を向上することができる。
【0023】
より具体的には、第1無機配向膜16の表面では、Si原子の未結合手(ダングリングボンド)や、Si原子同士が結合したダイマー構造(Si-Si結合)が存在し、かかるSi原子の未結合手は、液晶中や雰囲気中の水分等との反応によって、シラノール基(-Si-OH)により終端されやすい。ここで、シラノール基は、反応性が高い。しかるに本実施形態では、第1無機配向膜16の表面を有機シロキサン(デシルトリメトキシシラン)等のシランカップリング剤により水酸基(-OH)部分に有機シラン化合物層17を結合させてある。従って、第1無機配向膜16のシラノール基と液晶層50とが接触していない。
【0024】
ここで用いたシランカップリング剤は、加水分解によってシラノール(Si-OH)を生成した後、シラノール同士が徐々に縮合してシロキサン結合(Si-O-Si)を生成し、有機シラン化合物層17を形成する。また、シランカップリング剤は、第1無機配向膜16等の無機酸化物表面と強固な結合を生成し、自己組織化単分子膜を形成する。かかるシランカップリング剤としては、n-ヘキシルトリメトキシシラン、n-ヘキシルトリエトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、n-オクチルトリエトキシシラン、n-デシルトリメトキシシラン等を例示することができる。また、シランカップリング剤としては、疎水性有機官能基Rにフッ素原子(F)を含むものを用いることができる。いずれのシランカップリング剤を用いた場合も、有機シラン化合物層17は撥水性を有している。なお、第2無機配向膜26の側に形成した有機シラン化合物層27も、有機シラン化合物層17と同様な構成を有している。従って、吸着層102は、第1無機配向膜16と第2無機配向膜26との間で液晶層50を囲むように設けられ、その液晶層50と触れていない方にはシール材103が設けられており、第1基板10と第2基板20とを貼り合せている。
【0025】
[液晶装置の製造方法]
本実施形態の液晶装置100を製造するにあたって、第1製造方法では、例えば、第1基板10および第2基板20を各々、大型のマザー基板の状態で貼り合わせ工程を行い、その後、第2基板20用のマザー基板を切断して、液晶注入口を露出させる。次に、液晶注入工程を行った後、封止工程を行い、しかる後に、第1基板10用のマザー基板を分割予定ラインに沿って切断して、単品サイズの液晶装置100を得る。
【0026】
また、第2製造方法では、第1基板10のみを大型のマザー基板の状態で構成した後、単品サイズの第2基板20をマザー基板と貼り合わせる。次に、液晶注入工程を行った後、封止工程を行い、しかる後に、マザー基板を分割予定ラインに沿って切断して、単品サイズの液晶装置100を得る。
【0027】
次に、液晶装置1の作用について説明する。
【0028】
図1~
図3に示すように、本実施形態の液晶装置100では、第1基板10と、第2基板20と、第1基板10と第2基板20との間、かつ平面視で外周部に配置されるシール材103と、第1基板10と第2基板20との間、かつ平面視でシール材103によって囲まれる内側に配置される液晶層50と、少なくともシール材103の一部に沿って配置されるキセロゲルを含む吸着層102と、を備える。これにより本実施形態では、キセロゲルを含む吸着層102を液晶パネル100pの表示領域10Aの外部に設置することで、液晶の劣化により生じたイオン性不純物を取り除くことができる。
【0029】
例えば投射型表示装置等に搭載された液晶装置100において、光源からの強い光が表示領域10Aに入射すると、表示領域10Aの液晶が加熱される。加熱された液晶は、比重が低下して表示領域10Aの中央部から周囲に拡散していく。とくに液晶に強い光が当たることで生成するイオン性不純物のうち小さなものは、移動度が高く液晶よりも速く拡散していく。これにより、イオン性不純物を吸着層102によって効率的に捕らえることができる。そのため、表示領域10Aの液晶におけるイオン性不純物の濃度を低く維持することができる。したがって、画像を表示した際、表示領域10Aの角でのイオン性不純物の凝集に起因するシミ等の表示ムラが発生しにくくなる。さらに、表示領域10Aにおいて、液晶が光源からの光による光化学反応によって劣化した場合でも、表示領域10Aの液晶全体が劣化するまでの時間を延長することができる。
【0030】
このように本実施形態の液晶装置100では、シール材103の液晶層50側の内周縁103aにキセロゲルを含む吸着層102を配置することにより、強い光源光が液晶層50に侵入した場合に、液晶が加熱されて比重が低下し表示領域10Aの中心から周辺部に拡散するのに合わせて移動するイオン性不純物を吸着層102のキセロゲルにより捕捉することができ、液晶パネル100pを大型化することなく液晶の劣化による影響を低減できる。つまり、本実施形態では、従来のようなイオン性不純物を循環させる循環流路を配置するためのスペースを確保する必要がなくなり、上述したような表示領域10Aの拡大と、液晶パネル100pの小型化が可能となる。
【0031】
さらに、ゲルの光による劣化とその液晶への影響を考慮しなくて良いため、プロジェクタ向け液晶パネル等といった高耐光性が要求される液晶パネルを製造することができる。
【0032】
また、本実施形態の液晶装置100では、キセロゲルの元となるハイドロゲルあるいはオルガノゲルの作製方法によって、搭載方法を自由に決定することができる。例えば、ゲル溶液でガラス基板をコーティングさせてからゲルを作製することにより、薄いゲル膜が得られる。これをUV光などによりパターニングすることにより、本実施形態のように表示領域10Aの周囲にゲルを設置すること(後述する変形例参照)や、後述する第2実施形態や第3実施形態のように液晶パネル100pの画素間にゲルを設置することも可能である。
【0033】
以上説明した少なくとも一つの実施形態によれば、吸着層102のキセロゲルを液晶パネル100pの表示領域10Aの外部に設置することで、液晶の劣化により生じたイオン性不純物をキセロゲルにより取り除くことができ、液晶パネル100pを大型化することなく液晶の劣化による影響を低減できる。
【0034】
次に、実施形態による液晶装置および電子機器の他の実施形態および変形例について説明する。なお、上述した第1実施形態の構成要素と同一機能を有する構成要素には同一符号を付し、これらについては、説明が重複するので詳しい説明は省略する。
【0035】
[第1実施形態の変形例]
図4は、第1実施形態の変形例による液晶装置100Aの画素の具体的構成例を模式的に示す断面図であって、上述した第1実施形態の
図3に対応する図である。
図4に示すように、吸着層102Aはシール材103の外周部を囲むように搭載されている。その他の構成は、第1実施形態と同様である。
【0036】
周辺領域10Bの外周部には、キセロゲルを含む吸着層102Aが設けられている。変形例による吸着層102Aは、シール材103の外周縁103bと接するように搭載されている。吸着層102Aの機能は、第1実施形態と同様である。つまり、吸着層102Aでは、液晶層50の液晶材料に光が当たることで生成するイオン性不純物が、吸着層102Aに接触あるいは通過することにより、イオン性不純物のみが選択的に吸着される。
【0037】
このように構成される本変形例による液晶装置100Aでは、第1実施形態と同様に拡散したイオン性不純物がシール材103と接触した際に、イオン性不純物の一部がシール材103から染み出し、吸着層102Aに接触することで、吸着層102Aに内包される。すなわち、シール材103の外周縁103bにキセロゲルを含む吸着層102Aを配置することにより、強い光源光が液晶層50に侵入した場合に、液晶が加熱されて比重が低下し表示領域10Aの中心から周辺部に拡散するのに合わせて移動するイオン性不純物を吸着層102Aのキセロゲルにより捕捉することができ、液晶パネル100pを大型化することなく液晶の劣化による影響を低減できる。
【0038】
また、本変形例では、シール材103の周辺領域に吸着層102Aが設けられているため、強い光による吸着層102Aの劣化を防ぐことに加えて、吸着層102Aに起因する液晶の劣化を防ぐことができる。
【0039】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態による液晶装置について詳細に説明する。
図5は第2実施形態による液晶装置100Bの画素の具体的構成例を模式的に示す断面図であって、上述した第1実施形態の
図3に対応する図である。
図5に示すように、第2実施形態の液晶装置100Bは、表示領域10Aとシール材103とに挟まれた四角枠状の周辺領域10Bにおいて、画素電極9Aと同時形成されたダミー画素電極9Bが形成されている。画素電極9Aとダミー画素電極9Bとの間には、吸着層102Bが設けられている。吸着層102Bは、第1無機配向膜16や有機シラン化合物層17よりも第1基板10側に配置される。吸着層102Bの液晶層50側の上部には、第1無機配向膜16や有機シラン化合物層17が設けられていない。その他の構成は、第1実施形態と同様である。
【0040】
また、
図5では、画素電極9Aとダミー画素電極9Bとの間にのみ吸着層102Bが設けられた構成を示しているが、後述する第3実施形態のように画素電極9A、9Aどうしの間に吸着層102Bを設けても良い。
【0041】
第2実施形態の液晶装置100Bによれば、強い光源光が液晶層50に侵入した場合に、液晶が加熱されて比重が低下し表示領域10Aの中心から周辺部に拡散するのに合わせて移動するイオン性不純物を吸着層102Bのキセロゲルにより捕捉することができ、液晶パネル100pを大型化することなく液晶の劣化による影響を低減できる。そして、第2実施形態では、画素電極9Aとダミー画素電極9Bとの間に吸着層102Bを設けることにより、液晶層50との接触面積を増やすことができ、効率よくイオン性不純物を吸着することができる。
【0042】
そして、第2実施形態においても、従来のようなイオン性不純物を循環させる循環流路を配置するためのスペースを確保する必要がなくなり、上述したような表示領域10Aの拡大と、液晶パネル100pの小型化を図ることができる。
【0043】
また、この場合には、画素電極9Aとダミー画素電極9Bとの間の小さな領域にのみ吸着層102Bを設ける構成であるので、光による吸着層102B自体の劣化も抑えることができる。
【0044】
また、本実施形態による液晶装置100Bでは、吸着層102Bが第1無機配向膜16や有機シラン化合物層17よりも第1基板10側に配置され、さらに平面視で第1無機配向膜16や有機シラン化合物層17に重ならない位置に配置されるので、液晶層50との接触しやすくなり、効率よくイオン性不純物を吸着することができる。
【0045】
[第3実施形態]
次に、第3実施形態による液晶装置について詳細に説明する。
図6は、第3実施形態による透過型TFT液晶ディスプレイ(液晶ディスプレイ200)の構成例を示す分解斜視図である。
図6に示すように、第3実施形態による液晶ディスプレイ200(液晶装置)は、バックライト光源201と、第1偏光板202Aと、第2偏光板202Bと、第1ガラス基板203A、第2ガラス基板203Bと、カラーフィルター204と、液晶層50と、を備えている。
【0046】
第1偏光板202Aは、バックライト光源201の第1ガラス基板203Aに向かう面に設けられる。バックライト光源201は、第1偏光板202Aに向けて光201Lを放出する。カラーフィルター204は、第2偏光板202Bの第2ガラス基板203Bに向かう面に設けられている。第1偏光板202Aとカラーフィルター204との間には、それぞれ第1ガラス基板203Aと第2ガラス基板203Bが設けられている。カラーフィルター204は、本実施形態においてRGBの3色カラーフィルターが並んで配置される構成となっている。なお、カラーフィルターは、RGBの3色のものに限定されることはなく、3色以外の複数色のカラーフィルターが並ぶ構成であってもよく、また単色のカラーフィルターであってもよい。
【0047】
第1ガラス基板203Aにおける第2ガラス基板203Bを向く面203aには、複数の画素電極205A(第1画素電極、第2画素電極)が縦横に配列され、それぞれTFTが備わっている。第2ガラス基板203Bの第1ガラス基板203Aを向く面203bには、対向電極205Bが設けられている。第1ガラス基板203Aと第2ガラス基板203Bとの間には、液晶層50が挟み込まれている。第1ガラス基板203Aの第2ガラス基板203Bを向く面203aには、画素電極205A、205A同士の間においてゲル膜207(吸着層)がパターニングされている。
【0048】
第3実施形態による液晶ディスプレイ200においては、強い光源光が液晶層50に侵入した場合に、液晶が加熱されて比重が低下し表示領域10Aの中心から周辺部に拡散するのに合わせて移動するイオン性不純物を画素電極205A、205A間にパターニングされたゲル膜207によって捕集することができ、液晶パネル100pを大型化することなく液晶の劣化による影響を低減できる。そして、第3実施形態では、画素電極205A、205A間に吸着層をなすゲル膜207を設けることにより、液晶層50との接触面積を増やすことができ、効率よくイオン性不純物を吸着することができる。
【0049】
そして、第3実施形態においても、従来のようなイオン性不純物を循環させる循環流路を配置するためのスペースを確保する必要がなくなり、上述したような表示領域10Aの拡大と、液晶パネル100pの小型化を図ることができる。
【0050】
また、本第3実施形態による液晶ディスプレイ200では、液晶層50におけるイオン性不純物の濃度を低く維持することができる。そのため、液晶がバックライト光源201からの光による光化学反応によって劣化した場合でも、液晶層50の液晶全体が劣化するまでの時間を延長することができる。しかも、第1ガラス基板203A全体でなく、画素電極205A間にゲル膜207を膜状配置することにより、電極反応によるゲルの光劣化を低減することができる。
【0051】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0052】
上述した、第1実施形態では吸着層102がシール材103の内周縁103aに配置され、変形例では吸着層102Aがシール材103の外周縁103bに配置されているが、シール材103における吸着層の位置はこれに限定されることはない。例えば、吸着層がシール材103の角部に配置されていてもよい。
【0053】
また、第2実施形態における吸着層102Bが平面視で画素電極9Aとダミー画素電極9Bとの間に配置された遮光層29と重なる位置に配置される構成としてもよい。
【0054】
本発明を適用した液晶装置を備えた電子機器は、上記実施形態の投射型表示装置に限定されない。本発明を適用した液晶装置は、例えば、投射型のHUD(ヘッドアップディスプレイ)やHMD(ヘッドマウントディスプレイ)、パーソナルコンピューター、デジタルスチルカメラ、液晶テレビ等の電子機器に用いてもよい。
【0055】
本発明の一つの態様の液晶装置は、以下の構成を有していてもよい。
本発明の一態様の入力装置は、第1基板と、第2基板と、前記第1基板と前記第2基板との間で平面視で外周部に配置されるシール材と、前記第1基板と前記第2基板との間、かつ平面視で前記シール材によって囲まれる内側に配置される液晶層と、少なくとも前記シール材の一部に沿って配置されるキセロゲルを含む吸着層と、を備える。
【0056】
本発明の一つの態様の入力装置では、前記吸着層は、前記シール材の前記液晶層側の側面に配置される、構成としてもよい。
【0057】
本発明の一つの態様の液晶装置では、前記吸着層は、前記シール材の前記液晶層とは反対側の側面に配置される、構成としてもよい。
【0058】
本発明の一つの態様の液晶装置では、前記吸着層は、前記シール材の角部に配置される、構成としてもよい。
【0059】
本発明の一つの態様の液晶装置では、第1基板と、第2基板と、前記第1基板と前記第2基板との間で平面視で外周部に配置されるシール材と、前記第1基板と前記第2基板との間、かつ平面視で前記シール材によって囲まれる内側に配置される液晶層と、前記第1基板と前記液晶層との間に配置される画素電極と、前記画素電極よりも前記シール材側に配置されるダミー画素電極と、平面視で前記画素電極と前記ダミー画素電極との間に配置され、キセロゲルを含む吸着層と、を備える。
【0060】
本発明の一つの態様の液晶装置では、前記第1基板は、配向膜を有し、前記吸着層は、前記配向膜よりも前記第1基板側に配置される、構成としてもよい。
【0061】
本発明の一つの態様の液晶装置では、前記第1基板は、配向膜を有し、前記吸着層は、前記配向膜と重ならない位置に配置される、構成としてもよい。
【0062】
本発明の一つの態様の液晶装置では、前記吸着層は、平面視で前記画素電極と前記ダミー画素電極との間に配置された遮光層と重なる位置に配置される、構成としてもよい。
【0063】
本発明の一つの態様の液晶装置では、第1基板と、第2基板と、前記第1基板と前記第2基板との間に配置される液晶層と、前記第1基板と前記液晶層との間に配置される第1画素電極と、前記第1基板と前記液晶層との間に配置され、平面視で前記第1画素電極と並んで配置される第2画素電極と、平面視で前記第1画素電極と前記第2画素電極との間に配置され、キセロゲルを含む吸着層と、を備える。
【0064】
本発明の一つの態様の液晶装置では、前記第1基板は、配向膜を有し、前記吸着層は、前記配向膜よりも前記第1基板側に配置される、構成としてもよい。
【0065】
本発明の一つの態様の液晶装置では、前記第1基板は、配向膜を有し、前記吸着層は、前記配向膜と重ならない位置に配置される、構成としてもよい。
【0066】
本発明の一つの態様の液晶装置では、前記吸着層は、前記第1画素電極と前記第2画素電極との間に配置された遮光層と重なる位置に配置される、構成としてもよい。
【0067】
本発明の一態様の電子機器は、以下の構成を有していてもよい。
本発明の一態様の電子機器は、上記態様の液晶装置を備える。
【符号の説明】
【0068】
9A…画素電極、9B…ダミー画素電極、10…第1基板、10A…表示領域、10B…周辺領域、10w…第1基板本体、11…データ線駆動回路、12…端子、13…走査線駆動回路、14…フレキシブル配線基板、16…第1無機配向膜、17…有機シラン化合物層、19…第1基板本体、20…第2基板、20w…第2基板本体、21…共通電極、26…第2無機配向膜、27…有機シラン化合物層、29…遮光層、50…液晶層、55…液晶材料、100、110A、110B…液晶装置、100p…液晶パネル、102、102A、102B、102C…吸着層、103…シール材、103a…内周縁、103b…外周縁、105A…基板間導通用電極、105B…基板間導通材、200…TFT液晶ディスプレイ(液晶装置)、201…バックライト光源、201L…光、202A…第1偏光板、202B…第2偏光板、203A…第1ガラス基板、203B…第2ガラス基板、204…カラーフィルター、205A…画素電極(第1画素電極)、205B…対向電極、206…TFT、207…ゲル膜