(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135112
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】処方箋管理システム
(51)【国際特許分類】
G16H 20/10 20180101AFI20240927BHJP
【FI】
G16H20/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023045641
(22)【出願日】2023-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】514020389
【氏名又は名称】TIS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】奥山 知博
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA25
(57)【要約】
【課題】リフィル処方箋の利用において医薬品の不適切な処方を未然に防ぐための技術を提供する。
【解決手段】コンピュータが、対象者に対し新たに発行された新規処方箋の情報の入力を受け付け、リフィル処方箋の情報が登録されたデータベースから、前記対象者に対し過去に発行されたリフィル処方箋の情報を取得し、前記新規処方箋の情報と前記対象者のリフィル処方箋の情報とを比較することにより、前記新規処方箋との併用が適切でなく、且つ、使用可能回数が残っているリフィル処方箋である、不適切リフィル処方箋の有無を判定し、前記不適切リフィル処方箋が存在すると判定された場合に、前記不適切リフィル処方箋の内容を更新する処理を行う。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象者に対し新たに発行された新規処方箋の情報の入力を受け付ける新規処方箋情報受付部と、
リフィル処方箋の情報が登録されたデータベースから、前記対象者に対し過去に発行されたリフィル処方箋の情報を取得するリフィル処方箋情報取得部と、
前記新規処方箋の情報と前記対象者のリフィル処方箋の情報とを比較することにより、前記新規処方箋との併用が適切でなく、且つ、使用可能回数が残っているリフィル処方箋である、不適切リフィル処方箋の有無を判定する判定部と、
前記不適切リフィル処方箋が存在すると判定された場合に、前記不適切リフィル処方箋の内容を更新する処理を行う不適切リフィル処方箋更新部と、
を有する処方箋管理システム。
【請求項2】
前記判定部は、リフィル処方箋が、前記新規処方箋の処方薬と薬名が一致する医薬品、又は、前記新規処方箋の処方薬と同一の有効成分を含有する医薬品を含む場合に、前記新規処方箋との併用が適切でないと判定する、
請求項1に記載の処方箋管理システム。
【請求項3】
前記新規処方箋の処方薬と前記不適切リフィル処方箋の処方薬のうちの一方が新薬であり他方がその後発医薬品である場合に、前記対象者に対し新薬と後発医薬品のいずれの処方を希望するか確認する確認部をさらに有する、
請求項2に記載の処方箋管理システム。
【請求項4】
前記不適切リフィル処方箋更新部は、前記不適切リフィル処方箋の使用可能回数を減じる処理を行う、
請求項2に記載の処方箋管理システム。
【請求項5】
前記不適切リフィル処方箋更新部は、前記不適切リフィル処方箋と前記新規処方箋を統合する処理を行う、
請求項2に記載の処方箋管理システム。
【請求項6】
前記判定部は、リフィル処方箋が、前記新規処方箋の処方薬と併用禁忌の医薬品を含む場合に、前記新規処方箋との併用が適切でないと判定する、
請求項1に記載の処方箋管理システム。
【請求項7】
前記不適切リフィル処方箋更新部は、前記不適切リフィル処方箋の使用可能回数を0にする処理、又は、前記不適切リフィル処方箋を無効にする処理を行う、
請求項6に記載の処方箋管理システム。
【請求項8】
前記リフィル処方箋情報取得部は、前記データベースから、前記対象者の同居者に対し過去に発行されたリフィル処方箋の情報を取得し、
前記判定部は、前記同居者のリフィル処方箋からも前記不適切リフィル処方箋の有無を判定する、
請求項1に記載の処方箋管理システム。
【請求項9】
コンピュータが、
対象者に対し新たに発行された新規処方箋の情報の入力を受け付け、
リフィル処方箋の情報が登録されたデータベースから、前記対象者に対し過去に発行されたリフィル処方箋の情報を取得し、
前記新規処方箋の情報と前記対象者のリフィル処方箋の情報とを比較することにより、
前記新規処方箋との併用が適切でなく、且つ、使用可能回数が残っているリフィル処方箋である、不適切リフィル処方箋の有無を判定し、
前記不適切リフィル処方箋が存在すると判定された場合に、前記不適切リフィル処方箋の内容を更新する処理を行う、
処方箋管理方法。
【請求項10】
対象者に対し新たに発行された新規処方箋の情報を取得するステップと、
リフィル処方箋の情報が登録されたデータベースから、前記対象者に対し過去に発行されたリフィル処方箋の情報を取得するステップと、
前記新規処方箋の情報と前記対象者のリフィル処方箋の情報とを比較することにより、前記新規処方箋との併用が適切でなく、且つ、使用可能回数が残っているリフィル処方箋である、不適切リフィル処方箋の有無を判定するステップと、
前記不適切リフィル処方箋が存在すると判定された場合に、前記不適切リフィル処方箋の内容を更新する処理を行うステップと、
をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リフィル処方箋の適切な利用を支援する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、医療やヘルスケア分野のICT化が急速に進んでおり、特に新型コロナウィルスのパンデミックが契機となって、オンライン診療やオンライン調剤への注目も高まっている。オンラインにおける処方箋の取り扱いや電子化、薬の調剤や受け渡しなどについては未だ課題が残るものの、今後の普及及び成長が期待されている。
【0003】
特許文献1では、オンラインで薬剤師からの服薬指導を受けた後、非対面で処方薬を受け取ることを可能にするロッカーボックスに関する発明が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
日本において、2022年の診療報酬改定により『リフィル処方箋制度』が導入された。リフィル処方箋とは、一定の条件の下、複数回繰り返し使用することが可能な処方箋である。患者にとっては、病院へ何度も足を運ぶことなく医薬品を受け取ることができるので、通院負担が軽減されるというメリットがある。また、医療機関にとっても、病状が安定している患者の受診回数が減ることで、診療効率の向上や医師の負担軽減を図ることができると期待される。
【0006】
しかしその一方で、リフィル処方箋の運用及び管理に関しては、次のような問題が懸念される。
【0007】
患者自身がリフィル処方箋の仕組みを正しく理解していなかったり、過去にもらったリフィル処方箋の内容をおぼえていなかったりすると、医療機関を再度受診し、同じ医薬品の処方箋を新たに受け取ってしまう可能性がある。もし、この患者が、新たに出された処方箋と過去のリフィル処方箋の両方で調剤を受け、それらの薬を気づかずに服用してしまった場合には、用量が過剰となり健康を損ねかねない。あるいは、余剰となった医薬品が転売されるなど、医薬品の不正流通につながるおそれもある。
【0008】
また、薬の「飲み合わせ」の問題も懸念される。新たに出された処方箋に含まれる医薬品と過去のリフィル処方箋に含まれる医薬品とが併用禁忌の関係にある場合、気づかずに両方の薬を服用したことにより、副作用などの健康被害が生じたり、相互作用によって薬効が減弱されるおそれがある。
【0009】
処方箋の発行者(医師、医療機関)及び処方箋に従って調剤を行う者(薬剤師、薬局)としても、過剰な処方や併用禁忌にあたる処方は止めたいものの、現状は、そのような手立て・仕組みは存在しない。
【0010】
なお、特許文献1のロッカーボックスでは、分割調剤の処方箋への対策が取られている。分割調剤とは、処方薬を複数回に分けて調剤する制度であり、患者が1枚の処方箋で複数回処方薬を受け取るという点ではリフィル処方箋に似ている。しかし、分割調剤の場合
は、調剤の度に薬局が医師に報告することが義務付けられているため、リフィル処方箋で懸念される問題は生じにくい。
【0011】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、リフィル処方箋の利用において医薬品の不適切な処方を未然に防ぐための技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、対象者に対し新たに発行された新規処方箋の情報の入力を受け付ける新規処方箋情報受付部と、リフィル処方箋の情報が登録されたデータベースから、前記対象者に対し過去に発行されたリフィル処方箋の情報を取得するリフィル処方箋情報取得部と、前記新規処方箋の情報と前記対象者のリフィル処方箋の情報とを比較することにより、前記新規処方箋との併用が適切でなく、且つ、使用可能回数が残っているリフィル処方箋である、不適切リフィル処方箋の有無を判定する判定部と、前記不適切リフィル処方箋が存在すると判定された場合に、前記不適切リフィル処方箋の内容を更新する処理を行う不適切リフィル処方箋更新部と、を有する処方箋管理システムを含む。
【0013】
前記判定部は、リフィル処方箋が、前記新規処方箋の処方薬と薬名が一致する医薬品、又は、前記新規処方箋の処方薬と同一の有効成分を含有する医薬品を含む場合に、前記新規処方箋との併用が適切でないと判定してもよい。
【0014】
前記新規処方箋の処方薬と前記不適切リフィル処方箋の処方薬のうちの一方が新薬であり他方がその後発医薬品である場合に、前記対象者に対し新薬と後発医薬品のいずれの処方を希望するか確認する確認部をさらに有してもよい。
【0015】
前記不適切リフィル処方箋更新部は、前記不適切リフィル処方箋の使用可能回数を減じる処理を行ってもよい。
【0016】
前記不適切リフィル処方箋更新部は、前記不適切リフィル処方箋と前記新規処方箋を統合する処理を行ってもよい。
【0017】
前記判定部は、リフィル処方箋が、前記新規処方箋の処方薬と併用禁忌の医薬品を含む場合に、前記新規処方箋との併用が適切でないと判定してもよい。
【0018】
前記不適切リフィル処方箋更新部は、前記不適切リフィル処方箋の使用可能回数を0にする処理、又は、前記不適切リフィル処方箋を無効にする処理を行ってもよい。
【0019】
前記リフィル処方箋情報取得部は、前記データベースから、前記対象者の同居者に対し過去に発行されたリフィル処方箋の情報を取得し、前記判定部は、前記同居者のリフィル処方箋からも前記不適切リフィル処方箋の有無を判定してもよい。
【0020】
本発明は、コンピュータが、対象者に対し新たに発行された新規処方箋の情報の入力を受け付け、リフィル処方箋の情報が登録されたデータベースから、前記対象者に対し過去に発行されたリフィル処方箋の情報を取得し、前記新規処方箋の情報と前記対象者のリフィル処方箋の情報とを比較することにより、前記新規処方箋との併用が適切でなく、且つ、使用可能回数が残っているリフィル処方箋である、不適切リフィル処方箋の有無を判定し、前記不適切リフィル処方箋が存在すると判定された場合に、前記不適切リフィル処方箋の内容を更新する処理を行う、処方箋管理方法を含む。
【0021】
本発明は、対象者に対し新たに発行された新規処方箋の情報を取得するステップと、リ
フィル処方箋の情報が登録されたデータベースから、前記対象者に対し過去に発行されたリフィル処方箋の情報を取得するステップと、前記新規処方箋の情報と前記対象者のリフィル処方箋の情報とを比較することにより、前記新規処方箋との併用が適切でなく、且つ、使用可能回数が残っているリフィル処方箋である、不適切リフィル処方箋の有無を判定するステップと、前記不適切リフィル処方箋が存在すると判定された場合に、前記不適切リフィル処方箋の内容を更新する処理を行うステップと、をコンピュータに実行させるためのプログラムを含む。
【0022】
本発明は、上記構成や後述する構成の少なくとも一部を有する処方箋管理システム、リフィル処方箋更新システム、不適切処方回避システムなどとして捉えることができる。また、本発明は、上記処理や後述する処理の少なくとも一部を有する処方箋管理方法、リフィル処方箋更新方法、不適切処方回避方法として捉えてもよい。また、本発明は、コンピュータをこれらのシステムとして機能させるプログラムや、コンピュータにこれらの方法を実行させるためのプログラム、あるいは、そのようなプログラムを非一時的に記憶したコンピュータ読取可能な記憶媒体として捉えてもよい。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、リフィル処方箋の利用において医薬品の不適切な処方を未然に防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は処方箋管理システムの概略を示す図である。
【
図2】
図2は処方箋管理システムの論理構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3は重複チェック処理の流れを示すフローチャートである。
【
図5】
図5は併用禁忌チェック処理の流れを示すフローチャートである。
【
図6】
図6は後発医薬品の希望確認処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明はリフィル処方箋の適切な利用を支援するための処方箋管理システムに関する。この処方箋管理システムは、対象者に対し新たに発行された新規処方箋の情報と、その対象者に対し過去に発行されたリフィル処方箋の情報とを比較し、新規処方箋との併用が適切でないリフィル処方箋が残っていた場合に、そのリフィル処方箋の内容を更新する処理を行うことによって、重複する医薬品の過剰な処方や併用禁忌のある医薬品の処方を未然に防ぐものである。
【0026】
本発明の処方箋管理システムは、例えば次のような場面での利用が想定される。
【0027】
(1)調剤薬局での利用
薬剤師が、患者から新規処方箋を持ち込まれたときに、処方箋管理システムを利用して、当該患者がすでに持っているリフィル処方箋との処方内容の適否を調べる。もし重複する医薬品や併用禁忌のある医薬品が見つかった場合には、例えば、薬剤師から患者に処方上の問題を説明したうえで、過去のリフィル処方箋の内容を更新し、不適切な処方が行われないよう手当てする。そして、薬剤師が適切な服薬指導を行い、新規処方箋に基づく薬の処方を行う。なお、リフィル処方箋の内容を更新する際には、薬剤師が、必要に応じて、リフィル処方箋の発行者(医師、医療機関)に問合せないし報告を行ってもよい。
【0028】
(2)医療機関での利用
医師が、患者に交付する処方箋を新規に作成したときに、処方箋管理システムを利用して、当該患者がすでに持っているリフィル処方箋との処方内容の適否を調べる。もし重複
する医薬品や併用禁忌のある医薬品が見つかった場合には、例えば、医師が過去のリフィル処方箋の内容を更新し、患者が不適切な薬の処方を受けないよう手当てする。なお、リフィル処方箋の内容を更新する際には、患者に対して、過去のリフィル処方箋の内容に変更が生じたことの説明や、薬の処方を受ける場合の注意点、服薬指導などが行われるとよい。
【0029】
(3)患者によるセルフチェック
患者自身が、自分が保有しているリフィル処方箋の管理に利用してもよい。従前は、患者は処方箋を受け取るとすぐに調剤薬局に行き、薬の処方を受けていたため、処方箋が長期に手元に残るということがなかった。これに対し、リフィル処方箋の場合は、何度も繰り返し使用することになるため、患者自身で、使用回数、有効期間、調剤を受けるタイミングなどを管理する必要が生じる。本発明の処方箋管理システムを利用すれば、患者自身で処方内容の重複や併用禁忌をセルフチェックできるため、管理が容易になる。患者が複数の医療機関にかかり、各医療機関から個別に処方箋の交付を受けているような場合には、このようなセルフチェック機能は特に有益である。
【0030】
以下では、処方箋管理システムを調剤薬局に導入した場合のユースケースを例に挙げて、本発明の好ましい一実施形態を説明する。
【0031】
(システム構成)
図1は、処方箋管理システム1の概略を示す図である。
【0032】
処方箋管理システム1は、情報処理装置10と端末11とを備える。なお、説明の便宜のため、端末11を1台しか示していないが、端末11を複数台設けてもよい。例えば、調剤薬局の薬剤師Aに一人一台の端末11を持たせることも可能である。
【0033】
情報処理装置10は、各種情報処理を担うコンピュータである。例えば、情報処理装置10は、プロセッサ(CPU)、メモリ、ストレージ、通信装置などを備える汎用のコンピュータにより構成可能であり、後述する情報処理装置10の機能は、ストレージからメモリに展開されたプログラムをプロセッサが実行することによって実現される。情報処理装置10は、ローカル(調剤薬局内)に設置されるコンピュータでもよいし、インターネット上(クラウド)に設置されるコンピュータでもよい。また、情報処理装置10は、一台のコンピュータで構成してもよいし、分散コンピューティングのように複数台のコンピュータの協働により構成してもよいし、クラウドコンピューティングのように動的に割り当てられるリソースであってもよい。あるいは、情報処理装置10の提供する機能の一部ないし全部を、FPGAやASICなどの回路、又は、専用のハードウェアにより構成してもよい。
【0034】
端末11は、薬剤師Aが利用するコンピュータである。例えば、端末11は、プロセッサ(CPU)、メモリ、ストレージ、表示装置、入力装置、通信装置などを備える汎用のコンピュータにより構成可能であり、後述する端末11の機能は、ストレージからメモリに展開されたプログラムをプロセッサが実行することによって実現される。典型的にはタブレット端末やスマートフォンを端末11として利用することが好ましいが、それに限らず、パーソナルコンピュータ、POS端末などを端末11として利用してもよい。端末11は、入力装置として、紙の処方箋Rxを撮影するカメラ、患者Pのカード(マイナンバーカード、薬局の会員カードなど)を読み取るリーダなどを備えていてもよい。
【0035】
(処方箋管理システムの機能)
図2は、処方箋管理システム1の論理構成を示すブロック図である。
【0036】
処方箋管理システム1は、主な機能として、新規処方箋情報受付部100、リフィル処方箋情報取得部101、判定部102、不適切リフィル処方箋更新部103、確認部104を有する。本実施形態では、新規処方箋情報受付部100及び確認部104の機能を端末11に実装し、残りの機能を情報処理装置10に実装したが、各機能の実装方法はこれに限られない。情報処理装置10及び端末11の機能の詳細は後述する。
【0037】
図2に示すデータベース2は、発行済みのリフィル処方箋の情報が登録されたデータベースである。処方箋管理システム1はインターネットを介してデータベース2にアクセスし、リフィル処方箋の情報の取得、更新、削除などを行うことが可能である。このデータベース2は、処方箋管理システム1と同じ事業者により運用されていてもよいし、他の事業者もしくは国や自治体などで運用されていてもよい。また、厚生労働省が進めている電子処方箋管理サービスにおいて提供される機能の一つであってもよい。なお、データベース2へのリフィル処方箋情報の登録は、患者自身が行う場合、薬剤師が行う場合、医師が行う場合のいずれも想定される。
【0038】
本実施形態の処方箋管理システム1は、重複チェックと併用禁忌チェックの2つのチェック処理を実行可能である。重複チェックとは、2つの処方箋の間で処方薬の重複の有無をチェックする処理であり、併用禁忌チェックとは、2つの処方箋の間で処方薬の併用禁忌の有無をチェックする処理である。処方箋管理システム1は、チェック対象とする処方箋を受け付けたときに、いずれか一方のチェック処理のみを実行してもよいし、両方のチェック処理を実行してもよい。以下、それぞれのチェック処理の詳細を説明する。
【0039】
(重複チェック処理)
図1、
図3、
図4を用いて、処方箋管理システム1によるリフィル処方箋の重複チェック及び更新処理について説明する。
図3は処方箋管理システム1の重複チェック処理の流れを示すフローチャートであり、
図4は処方箋の例を示す図である。
【0040】
図1に示すように、対象者(患者)Pが、医師Dから新たに発行された処方箋Rx(新規処方箋)を調剤薬局に持ち込み、薬剤師Aに医薬品の処方を依頼した、という場面を想定する。なお、新規処方箋Rxは普通の処方箋(非リフィル処方箋)でもよいしリフィル処方箋でもよい。
【0041】
ステップS30において、薬剤師Aが、端末11を利用して、対象者Pの識別情報を入力する。対象者Pの識別情報とは、対象者Pを一意に特定するための情報であり、例えば、氏名、生年月日、マイナンバー、被保険者記号・番号のような個人情報でもよいし、調剤薬局の会員番号のような情報でもよい。入力された識別情報は、新規処方箋情報受付部100によって処方箋管理システム1に取り込まれる。端末11への入力方法は問わない。例えば、薬剤師Aが本人確認書類を見ながら端末11に情報を手入力してもよい。あるいは、端末11のカメラで本人確認書類を撮影し、画像の文字認識により情報が自動入力されてもよい。あるいは、端末11のリーダによりマイナンバーカードや会員カードを読み取ってもよい。
【0042】
ステップS31において、薬剤師Aが、端末11を利用して、対象者Pから提出された新規処方箋Rxの情報を入力する。入力された処方箋情報は新規処方箋情報受付部100によって処方箋管理システム1に取り込まれる。端末11への入力方法は問わない。例えば、薬剤師Aが処方箋Rxを見ながら端末11に情報を手入力してもよい。あるいは、端末11のカメラで処方箋Rxを撮影し、画像の文字認識により情報が自動入力されてもよい。薬剤師Aがファクシミリや電子メールにより処方箋Rxを受け取った場合も同様である。あるいは、処方箋Rxが電子処方箋の場合であれば、薬剤師Aは端末11を介して電子処方箋管理サービスにアクセスし、処方箋Rxの情報をダウンロードしてもよい。
【0043】
図4の符号40は、非リフィル処方箋の場合に入力される処方箋情報の例である。処方箋Rxの情報には、患者の氏名・生年月日、薬名、分量、用法・用量、発行の年月日、有効期間、処方箋の発行者情報(医療機関の所在地・名称、医師の氏名など)などが含まれている。
【0044】
ステップS32において、リフィル処方箋情報取得部101が、データベース2から、対象者Pに対し過去に発行されたリフィル処方箋RRxの情報を取得する。対象者Pの特定は、ステップS30で入力された対象者Pの識別情報によって行う。この対象者Pについて複数のリフィル処方箋RRxが登録されている場合は、すべてのリフィル処方箋RRxの情報が取得される。
【0045】
図4の符号41は、取得されたリフィル処方箋RRxの処方箋情報の例である。リフィル処方箋RRxの情報には、患者の氏名・生年月日、薬名、分量、用法・用量、発行の年月日、有効期間、処方箋の発行者情報(医療機関の所在地・名称、医師の氏名など)に加え、使用可能回数、実施済みの調剤年月日・調剤者情報(薬局の名称、薬剤師の氏名)などが含まれている。使用可能回数とは、このリフィル処方箋RRxをあと何回使用してよいかを示す残回数である。例えば、使用回数上限が3回に設定されたリフィル処方箋について、既に1回の調剤が実施されていたら、使用可能回数は2回となる。
【0046】
ステップS33において、判定部102が、ステップS32で取得されたリフィル処方箋RRxの中から一つ有効なリフィル処方箋RRxを選択する。有効なリフィル処方箋RRxとは、有効期間が切れておらず、且つ、使用可能回数が残っている(使用した回数が上限に達していない)リフィル処方箋RRxをいう。
【0047】
ステップS34において、判定部102は、新規処方箋Rxの情報とリフィル処方箋RRxの情報とを比較し、リフィル処方箋RRxが新規処方箋Rxと重複する処方薬を含んでいるか否かをチェックする。このとき、薬名が一致する医薬品に加え、同一の有効成分を含む医薬品(新薬とその後発医薬品の関係)も「重複」と判断してよい。
【0048】
ステップS34で肯定判定がなされた場合、このリフィル処方箋RRxは「不適切リフィル処方箋」(新規処方箋Rxと重複する処方薬を含み、且つ、使用可能回数が残っているリフィル処方箋)に該当すると判定され、ステップS35の処理に進む。ステップS32で複数のリフィル処方箋RRxの情報が取得された場合には、不適切リフィル処方箋が見つかるか全てのリフィル処方箋RRxのチェックが完了するまでステップS33及びS34の重複判定処理が繰り返される(ステップS36)。
【0049】
不適切リフィル処方箋が存在すると判定された場合には、ステップS35において、不適切リフィル処方箋更新部103が、不適切リフィル処方箋の内容を更新する処理を行う。例えば、
図4の符号42に示すように、不適切リフィル処方箋更新部103は、不適切リフィル処方箋に該当すると判定されたリフィル処方箋RRxの使用可能回数から1を減じる処理を行う。リフィル処方箋RRxの更新情報はデータベース2に送信され、データベース2の登録情報も更新される。なお、リフィル処方箋RRxの内容更新にあたり発行者(医師)への確認や許諾が必要な場合には、確認部104から発行者へ問い合わせを送信するか、薬剤師Aが発行者へ問い合わせを行ってもよい。発行者への報告のみで足りるのであれば、ステップS35の更新処理の後に、確認部104が発行者へ更新報告を送信するか、薬剤師Aが発行者へ更新報告を行ってもよい。あるいは、データベース2の登録情報を更新すると、自動的にリフィル処方箋RRxの発行者に更新報告が送信される仕組みになっていてもよい。
【0050】
以上の重複チェックが完了した後、薬剤師Aは、新規処方箋Rxに基づき調剤を行い、対象者Pに薬を処方する。対象者Pへの服薬指導の中で、薬剤師Aから、重複する処方薬を含むリフィル処方箋RRxが存在したこと、過剰な処方が行われないようにリフィル処方箋RRxの使用可能回数を減じたことなどの説明が行われる。
【0051】
本実施形態の処方箋管理システム1を利用することによって、不適切リフィル処方箋の有無を簡単にチェックでき、もし処方薬が重複するリフィル処方箋が残っていた場合にはその処方内容が自動で更新される。これにより、対象者Pに対して医薬品が過剰に処方される事態を防ぐことができるため、過剰服薬による健康被害の発生、残薬の発生、医薬品の不正流通などを未然に防止することができる。
【0052】
(併用禁忌チェック処理)
図5を用いて、処方箋管理システム1によるリフィル処方箋の併用禁忌チェック及び更新処理について説明する。
図5は処方箋管理システム1の併用禁忌チェック処理の流れを示すフローチャートである。上述した重複チェック処理と共通する内容は説明を割愛し、併用禁忌チェック処理に特有の内容を中心に説明する。
【0053】
ステップS50~S52の処理は、重複チェック処理(
図3)のステップS30~S32の処理と同じである。したがって、処方箋管理システム1が重複チェック処理の後に併用禁忌チェック処理を続けて実行する場合には、ステップS50~S52の処理をスキップしてもよい。
【0054】
ステップS53において、判定部102が、ステップS52で取得されたリフィル処方箋RRxの中から一つ有効なリフィル処方箋RRxを選択する。有効なリフィル処方箋RRxとは、有効期間が切れておらず、且つ、使用可能回数が残っている(使用した回数が上限に達していない)リフィル処方箋RRxをいう。
【0055】
ステップS54において、判定部102は、新規処方箋Rxの情報とリフィル処方箋RRxの情報とを比較し、リフィル処方箋RRxが新規処方箋Rxの処方薬と併用禁忌のある処方薬を含んでいるか否かをチェックする。併用禁忌の組み合わせは予めリスト化されており、判定部102はそのリストを参照することにより併用禁忌の有無を判断するものとする。
【0056】
ステップS54で肯定判定がなされた場合、このリフィル処方箋RRxは「不適切リフィル処方箋」(新規処方箋Rxと併用禁忌のある処方薬を含み、且つ、使用可能回数が残っているリフィル処方箋)に該当すると判定され、ステップS55の処理に進む。併用禁忌のある処方薬が含まれていない場合(ステップS54のNO)は、ステップS55の処理はスキップされる。
【0057】
ステップS55において、不適切リフィル処方箋更新部103が、不適切リフィル処方箋の内容を更新する処理を行う。例えば、不適切リフィル処方箋更新部103は、不適切リフィル処方箋に該当すると判定されたリフィル処方箋RRxの使用可能回数を0にするか、又は、無効にする処理を行う。リフィル処方箋RRxの更新情報はデータベース2に送信され、データベース2の登録情報も更新される。なお、リフィル処方箋RRxの内容更新にあたり発行者(医師)への確認や許諾が必要な場合には、確認部104から発行者へ問い合わせを送信するか、薬剤師Aが発行者へ問い合わせを行ってもよい。発行者への報告のみで足りるのであれば、ステップS55の更新処理の後に、確認部104が発行者へ更新報告を送信するか、薬剤師Aが発行者へ更新報告を行ってもよい。あるいは、データベース2の登録情報を更新すると、自動的にリフィル処方箋RRxの発行者に更新報告が送信される仕組みになっていてもよい。
【0058】
ステップS52で複数のリフィル処方箋RRxの情報が取得された場合には、全てのリフィル処方箋RRxのチェックが完了するまでステップS53~S55の処理が繰り返される(ステップS56)。
【0059】
以上の併用禁忌チェックが完了した後、薬剤師Aは、新規処方箋Rxに基づき調剤を行い、対象者Pに薬を処方する。対象者Pへの服薬指導の中で、薬剤師Aから、併用禁忌のある処方薬を含むリフィル処方箋RRxが存在したこと、不適切な処方が行われないようにリフィル処方箋RRxを使用できないようにしたことなどの説明が行われる。
【0060】
本実施形態の処方箋管理システム1を利用することによって、不適切リフィル処方箋の有無を簡単にチェックでき、もし併用禁忌のある医薬品を含むリフィル処方箋が残っていた場合にはその処方内容が自動で更新される。これにより、対象者Pに対して併用禁忌のある医薬品が不適切に処方される事態を防ぐことができるため、副作用などの健康被害の発生や、相互作用によって薬効が減弱されることを未然に防止することができる。
【0061】
(変形例)
上記実施形態は本発明の一適用例を説明したものにすぎず、本発明の範囲は上記実施形態のものに限定されない。例えば、上記実施形態では、処方箋管理システムを調剤薬局での重複チェックや併用禁忌チェックに利用する例を示したが、本発明の処方箋管理システムは、医療機関で新規処方箋を発行する際のチェックや、患者によるセルフチェックなどにも好ましく適用できる。
【0062】
また、上記実施形態では、不適切リフィル処方箋の更新処理として、使用可能回数を変更する処理を例示したが、これ以外にも、例えば、次のような更新処理を行ってもよい。
・不適切リフィル処方箋の有効期間を変更するなどして、処方箋を無効にする。
・不適切リフィル処方箋が複数種類の処方薬を含んでいる場合には、新規処方箋と重複する処方薬又は併用禁忌のある処方薬の情報のみ削除し、他の処方薬の情報はそのまま残す。
・不適切リフィル処方箋で処方される分量の方が新規処方箋で処方される分量より多い場合には、不適切リフィル処方箋で処方される分量を減じる。
・新規処方箋に基づき調剤した日付と調剤者の情報を、不適切リフィル処方箋の実施済みの調剤年月日・調剤者情報に記述する。
・不適切リフィル処方箋の備考欄に、新規処方箋に基づき実施した調剤の内容を記述する。
【0063】
図3のステップS34において重複する処方薬を含むリフィル処方箋が検出されたとしても、使用可能回数を減じる必要のないケースもある。例えば、処方箋の発行者へ確認(問い合わせ)して重複処方に問題ない旨の回答が得られた場合や、不適切リフィル処方箋と新規処方箋の調剤タイミングがずれており重複処方に当たらない場合や、不適切リフィル処方箋と新規処方箋の両方で重複処方されたとしてもその分量が過剰服薬に当たらない場合などである。このような場合は、ステップS35の更新処理において、不適切リフィル処方箋更新部103は、不適切リフィル処方箋と新規処方箋を統合する処理を行ってもよい。具体的には、不適切リフィル処方箋更新部103は、新規処方箋を破棄して、代わりに不適切リフィル処方箋の使用可能回数を1加算してもよい。あるいは、不適切リフィル処方箋更新部103は、新規処方箋を破棄して、代わりに不適切リフィル処方箋の処方内容を修正(分量を増やす、用量を増やすなど)してもよい。
【0064】
また、新規処方箋の処方薬と不適切リフィル処方箋の処方薬のうちの一方が新薬であり他方がその後発医薬品(ジェネリック医薬品)である場合に、確認部104が、対象者P
に対し新薬と後発医薬品のいずれの処方を希望するか確認してもよい。
図6に確認フローの一例を示す。
図3のステップS34の部分がステップS60~S62の処理に置き換わっている(その他の処理は
図3と同じでよい。)。ステップS60において、判定部102は、新規処方箋Rxの処方薬とリフィル処方箋RRxの処方薬の薬名が一致するか否かをチェックする。薬名が一致していた場合はステップS35に進む。それ以外の場合は、ステップS61において、判定部102が、新規処方箋Rxの処方薬とリフィル処方箋RRxの処方薬が同一の有効成分を含有するか否か、すなわち、新薬と後発医薬品の関係にあるか否かをチェックする。肯定判定の場合はステップS62に進み、確認部104が、対象者Pに対し新薬と後発医薬品のいずれの処方を希望するか確認する。ステップS35では対象者Pの希望を反映した更新処理が行われる。例えば、新規処方箋Rxが新薬、リフィル処方箋RRxが後発医薬品の関係にあり、対象者Pが新薬を希望した場合は、リフィル処方箋RRxの薬名を新薬に書き換える。新規処方箋Rxが新薬、リフィル処方箋RRxが後発医薬品の関係にあり、対象者Pが後発医薬品を希望した場合は、リフィル処方箋RRxの薬名は更新しないが、新規処方箋Rxで処方する際に新薬ではなく後発医薬品を処方する。また、新規処方箋Rxが後発医薬品、リフィル処方箋RRxが新薬の関係にあり、対象者Pが後発医薬品を希望した場合は、リフィル処方箋RRxの薬名を後発医薬品に書き換える。新規処方箋Rxが後発医薬品、リフィル処方箋RRxが新薬の関係にあり、対象者Pが新薬を希望した場合は、リフィル処方箋RRxの薬名は更新しないが、新規処方箋Rxで処方する際に後発医薬品ではなく新薬を処方する。このような対処を行うことによって、対象者(患者)の希望に叶う調剤業務を実現することができる。
【0065】
また、上記実施形態では、対象者本人の過去のリフィル処方箋との重複チェックのみを行ったが、チェック範囲をさらに広げて、対象者の同居者のリフィル処方箋との重複チェックを行ってもよい。具体的には、
図3のステップS32において、リフィル処方箋情報取得部101が、データベース2から、対象者Pと住所が同じ者に対し過去に発行されたリフィル処方箋の情報も取得する。対象者Pの住所は、ステップS30で入力された対象者Pの識別情報により特定可能である。ステップS33~S35の処理では、まず対象者P本人のリフィル処方箋から優先的に重複チェックを行い、対象者P本人のリフィル処方箋の中に重複したものが見つからなければ、次に同居者のリフィル処方箋との重複チェックを実行する。このように同居者のリフィル処方箋までチェック範囲を拡大することにより、対象者Pが同居者の残薬を服薬したり残薬を不正譲渡したりする可能性を未然に防ぐことができる。
【0066】
また、処方箋管理システム1が、不適切リフィル処方箋を検出した場合に、確認部104から処方箋管理システム1のユーザー、対象者P、新規処方箋の発行者、データベース2の管理者などに通知を行う機能を有していてもよい。
【0067】
図1のユースケースは、対象者Pが調剤薬局に足を運び、薬剤師Aから対面で説明や服薬指導を受ける例を示したが、本発明は、オンライン診療やオンライン調剤にも好ましく適用可能である。オンライン診療は、遠隔にいる医師が、パーソナルコンピュータやスマートフォンなどの情報通信機器によるWeb通話等を利用して、患者の診察・診断を行い、診断結果の伝達や処方等の診療行為を行うことである。また、オンライン調剤は、遠隔にいる薬剤師が、パーソナルコンピュータやスマートフォンなどの情報通信機器によるWeb通話等を利用して、患者に薬の説明や服薬指導等を行い、患者に医薬品を交付することである。処方箋管理システム1をオンライン診療を行う医療機関又はオンライン調剤を行う調剤薬局にて利用する場合には、医師や薬剤師によるリフィル処方箋の説明や服薬指導はオンラインで行われてもよい。また、医師や薬剤師の代わりに、AIチャットボットによる自動応答システムによりリフィル処方箋の説明や服薬指導が行われてもよい。基本的な又は定型の説明や回答は自動応答システムが行い、重要な内容や難しい内容の場合に医師や薬剤師が応答するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0068】
1:処方箋管理システム
10:情報処理装置
11:端末
40:新規処方箋
41:リフィル処方箋
42:更新されたリフィル処方箋
A:薬剤師
D:医師
P:対象者(患者)
Rx:処方箋
RRx:リフィル処方箋