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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135118
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】振動発電装置
(51)【国際特許分類】
   H02N 1/00 20060101AFI20240927BHJP
   B81B 3/00 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
H02N1/00
B81B3/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023045650
(22)【出願日】2023-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菊池 和浩
【テーマコード(参考)】
3C081
【Fターム(参考)】
3C081AA01
3C081BA22
3C081BA42
3C081BA48
3C081BA81
3C081DA03
3C081DA06
3C081DA10
3C081DA22
3C081DA27
3C081EA21
(57)【要約】
【課題】耐久性が高く、荷電処理が必要としない高効率な振動発電技術を提供すること。
【解決手段】振動発電装置は、第1基板と、外部からの振動により第1基板と対向した状態で移動可能に保持された第2基板と、第1基板に配置された複数の電極を有する第1導電部と、第1導電部の複数の電極の上面に対して、所定の間隔で第2基板に配置された複数の電極を有する第2導電部と、を備える。第1基板には、異なる極性の電荷が外部から供給される電極が交互に配置され、第2基板の移動により第1導電部の電極と対向する第2導電部の電極は、電荷により誘導された極性の電荷を配線から出力する。
【選択図】図6A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1基板と、
外部からの振動により前記第1基板と対向した状態で移動可能に保持された第2基板と、
前記第1基板に配置された複数の電極を有する第1導電部と、
前記第1導電部の前記複数の電極の上面に対して、所定の間隔で前記第2基板に配置された複数の電極を有する第2導電部と、を備え、
前記第1基板には、異なる極性の電荷が外部から供給される電極が交互に配置され、
前記第2基板の移動により前記第1導電部の電極と対向する前記第2導電部の電極は、前記電荷により誘導された極性の電荷を配線から出力する
ことを特徴とする振動発電装置。
【請求項2】
前記第1基板には、第1の極性の電荷が供給される電極と、前記第1の極性に対して逆の第2の極性の電荷が供給される電極と、が交互に配置され、
前記第2基板の移動により前記第2の極性が供給された電極と対向する、前記第2導電部の電極は、前記第2の極性の電荷により誘導された第1の極性の電荷を第1配線から出力し、
前記第2基板の移動により前記第1の極性が供給された電極と対向する、前記第2導電部の電極は、前記第1の極性の電荷により誘導された第2の極性の電荷を第2配線から出力する
ことを特徴とする請求項1に記載の振動発電装置。
【請求項3】
前記第1導電部の複数の電極には、前記外部から供給される電荷の極性と同一の極性を有する電荷が注入された誘電体が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の振動発電装置。
【請求項4】
第1基板と、
外部からの振動により前記第1基板と対向した状態で移動可能に保持された第2基板と、
前記第1基板に配置された複数の電極を有する第1導電部と、
前記第1導電部の前記複数の電極の上面に対して、所定の間隔で前記第2基板に配置された複数の電極を有する第2導電部と、を備え、
前記第1基板及び前記第2基板には、外部から電荷が供給される電荷供給電極と前記電荷が供給されない電荷非供給電極とが交互に配置され、
前記第2基板の移動により、前記第1導電部の電荷供給電極と対向する前記第2導電部の電荷非供給電極は、当該電荷供給電極の電荷により誘導された極性の電荷を出力し、
前記第2基板の移動により、前記第2導電部の電荷供給電極と対向する前記第1導電部の電荷非供給電極は、当該電荷供給電極の電荷により誘導された極性の電荷を出力する
ことを特徴とする振動発電装置。
【請求項5】
前記第1基板には、第2の極性の電荷が供給される第2電荷供給電極と、前記電荷が供給されない第2電荷非供給電極とが交互に配置され、
前記第2基板には、第1の極性の電荷が供給される第1電荷供給電極と、前記電荷が供給されない第1電荷非供給電極とが交互に配置され、
前記第2基板の移動により、前記第1電荷供給電極と対向する前記第2電荷非供給電極は、前記第1の極性の電荷により誘導された第2の極性の電荷を第1配線から出力し、
前記第2基板の移動により、前記第2電荷供給電極と対向する前記第1電荷非供給電極は、前記第2の極性の電荷により誘導された第1の極性の電荷を第2配線から出力することを特徴とする請求項4に記載の振動発電装置。
【請求項6】
前記第1導電部の前記電荷供給電極、及び前記第2導電部の前記電荷供給電極には、前記外部から供給される電荷の極性と同一の極性を有する電荷が注入された誘電体が形成されていることを特徴とする請求項4に記載の振動発電装置。
【請求項7】
第1振動基板及び第2振動基板と、
前記第1振動基板の上面と前記第2振動基板の下面との間に配置された弾性部材と、
前記第1振動基板の上面に配置された第1振動電極と、
前記第1振動電極の上面に対して、所定の間隔で前記第2振動基板の下面に配置された第2振動電極と、
交流信号を直流信号に変換する整流器と、を更に備え、
前記弾性部材は、外部からの振動により、前記第1振動電極と前記第2振動電極とが接触するように、または、前記接触から離間するように、前記第1振動基板及び前記第2振動基板を保持し、
前記第1振動電極及び前記第2振動電極は、前記接触または前記離間により発生する電界の変化に基づいた交流信号を出力し、
前記整流器は、前記交流信号から変換した直流信号を、前記第1導電部の電極または前記第2導電部の電極に供給する
ことを特徴とする請求項1に記載の振動発電装置。
【請求項8】
第1基板と、
外部からの振動により前記第1基板と対向した状態で移動可能に保持された第2基板と、
前記第1基板に配置された複数の電極を有する第1導電部と、
前記第1導電部の前記複数の電極の上面に対して、所定の間隔で前記第2基板に配置された複数の電極を有する第2導電部と、を備え、
前記第1基板には、異なる極性の電荷が外部から供給される電極が配置され、
前記第2基板の移動により前記第1導電部の電極と対向する前記第2導電部の電極は、前記電荷により誘導された極性の電荷を配線から出力する
ことを特徴とする振動発電装置。
【請求項9】
第1基板と、
外部からの振動により前記第1基板と対向した状態で移動可能に保持された第2基板と、
前記第1基板に配置された複数の電極を有する第1導電部と、
前記第1導電部の前記複数の電極の上面に対して、所定の間隔で前記第2基板に配置された複数の電極を有する第2導電部と、を備え、
前記第1基板及び前記第2基板には、外部から電荷が供給される電荷供給電極と前記電荷が供給されない電荷非供給電極とが配置され、
前記第2基板の移動により、前記第1導電部の電荷供給電極と対向する前記第2導電部の電荷非供給電極は、当該電荷供給電極の電荷により誘導された極性の電荷を出力し、
前記第2基板の移動により、前記第2導電部の電荷供給電極と対向する前記第1導電部の電荷非供給電極は、当該電荷供給電極の電荷により誘導された極性の電荷を出力する
ことを特徴とする振動発電装置。
【請求項10】
第1振動基板及び第2振動基板と、
前記第1振動基板の上面と前記第2振動基板の下面との間に配置された弾性部材と、
前記第1振動基板の上面に配置された第1振動電極と、
前記第1振動電極の上面に対して、所定の間隔で前記第2振動基板の下面に配置された第2振動電極と、
交流信号を直流信号に変換する整流器と、を更に備え、
前記弾性部材は、外部からの振動により、前記第1振動電極と前記第2振動電極とが接触するように、または、前記接触から離間するように、前記第1振動基板及び前記第2振動基板を保持し、
前記第1振動電極及び前記第2振動電極は、前記接触または前記離間により発生する電界の変化に基づいた交流信号を出力し、
前記整流器は、前記交流信号から変換した直流信号を、前記第1導電部の電極または前記第2導電部の電極に供給する
ことを特徴とする請求項8または9に記載の振動発電装置。
【請求項11】
前記直流信号を供給する供給電極の設定、及び、前記直流信号の電荷に基づいて誘導された極性を有する電荷を出力する出力電極の設定を、回路の設定を切替えることにより行う電極設定回路を更に備え、
前記電極設定回路は、
前記第1導電部の電極及び前記第2導電部の電極のうちから設定された前記供給電極に前記直流信号を供給し、
前記第1導電部の電極及び前記第2導電部の電極のうちから設定された前記出力電極から出力された前記電荷を発電エネルギーとして出力することを特徴とする請求項10に記載の振動発電装置。
【請求項12】
接触型発電機と非接触型発電機とを有する振動発電装置であって、
前記非接触型発電機は、
第1基板と、
外部からの振動により前記第1基板と対向した状態で移動可能に保持された第2基板と、
前記第1基板に配置された複数の電極を有する第1導電部と、
前記第1導電部の前記複数の電極の上面に対して、所定の間隔で前記第2基板に配置された複数の電極を有する第2導電部と、を備え、
前記接触型発電機は、
第1振動基板及び第2振動基板と、
前記第1振動基板の上面と前記第2振動基板の下面との間に配置された弾性部材と、
前記第1振動基板の上面に配置された第1振動電極と、
前記第1振動電極の上面に対して、所定の間隔で前記第2振動基板の下面に配置された第2振動電極と、
前記弾性部材は、外部からの振動により、前記第1振動電極と前記第2振動電極とが接触するように、または、前記接触から離間するように、前記第1振動基板及び前記第2振動基板を保持し、
前記第1振動電極及び前記第2振動電極は、前記接触または前記離間により発生する電界の変化に基づいた交流信号を出力し、
前記交流信号から整流器を介して変換された異なる極性の電荷は、前記第1導電部の電極または前記第2導電部の電極に供給され、前記電荷を供給された電極と対向した電極に誘導された電荷が配線を介して出力される
ことを特徴とする振動発電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、エレクトレットを有する複数のエレクトレット電極を用いて、外部からの振動により交流電力を出力する振動発電素子が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6927527号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
エレクトレットを用いた発電では一般に荷電処理が必要であるが、荷電処理により注入した電荷が経時的に減少して劣化するという課題がある。また、電荷の減少を抑制するために不活性化ガスや真空で封止する処理も必要となる課題がある。
【0005】
一方、接触型振動発電には面接触方式と摩擦方式の2種類がある。面接触方式は、帯電性の低さと発電時間の短さから発電量が少ない課題がある。摩擦方式は、面接触方式に対して帯電性が高く発電時間も長いため発電量は大きいが、擦過による材料劣化で耐久性に課題がある。
【0006】
開示の技術は、上記の課題に鑑み、耐久性が高く、荷電処理を必要としない高効率な振動発電技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
開示の技術の一態様による振動発電装置は、第1基板と、
外部からの振動により前記第1基板と対向した状態で移動可能に保持された第2基板と、
前記第1基板に配置された複数の電極を有する第1導電部と、
前記第1導電部の前記複数の電極の上面に対して、所定の間隔で前記第2基板に配置された複数の電極を有する第2導電部と、を備え、
前記第1基板には、異なる極性の電荷が外部から供給される電極が交互に配置され、
前記第2基板の移動により前記第1導電部の電極と対向する前記第2導電部の電極は、前記電荷により誘導された極性の電荷を配線から出力する。
【0008】
開示の技術の他の一態様による振動発電装置は、第1基板と、
外部からの振動により前記第1基板と対向した状態で移動可能に保持された第2基板と、
前記第1基板に配置された複数の電極を有する第1導電部と、
前記第1導電部の前記複数の電極の上面に対して、所定の間隔で前記第2基板に配置された複数の電極を有する第2導電部と、を備え、
前記第1基板及び前記第2基板には、外部から電荷が供給される電荷供給電極と前記電荷が供給されない電荷非供給電極とが交互に配置され、
前記第2基板の移動により、前記第1導電部の電荷供給電極と対向する前記第2導電部の電荷非供給電極は、当該電荷供給電極の電荷により誘導された極性の電荷を出力し、
前記第2基板の移動により、前記第2導電部の電荷供給電極と対向する前記第1導電部の電荷非供給電極は、当該電荷供給電極の電荷により誘導された極性の電荷を出力する。
【0009】
開示の技術の他の一態様による振動発電装置は、第1基板と、
外部からの振動により前記第1基板と対向した状態で移動可能に保持された第2基板と、
前記第1基板に配置された複数の電極を有する第1導電部と、
前記第1導電部の前記複数の電極の上面に対して、所定の間隔で前記第2基板に配置された複数の電極を有する第2導電部と、を備え、
前記第1基板には、異なる極性の電荷が外部から供給される電極が配置され、
前記第2基板の移動により前記第1導電部の電極と対向する前記第2導電部の電極は、前記電荷により誘導された極性の電荷を配線から出力する。
【0010】
開示の技術の他の一態様による振動発電装置は、第1基板と、
外部からの振動により前記第1基板と対向した状態で移動可能に保持された第2基板と、
前記第1基板に配置された複数の電極を有する第1導電部と、
前記第1導電部の前記複数の電極の上面に対して、所定の間隔で前記第2基板に配置された複数の電極を有する第2導電部と、を備え、
前記第1基板及び前記第2基板には、外部から電荷が供給される電荷供給電極と前記電荷が供給されない電荷非供給電極とが配置され、
前記第2基板の移動により、前記第1導電部の電荷供給電極と対向する前記第2導電部の電荷非供給電極は、当該電荷供給電極の電荷により誘導された極性の電荷を出力し、
前記第2基板の移動により、前記第2導電部の電荷供給電極と対向する前記第1導電部の電荷非供給電極は、当該電荷供給電極の電荷により誘導された極性の電荷を出力する。
【発明の効果】
【0011】
開示の技術によれば、第1電極、第2電極は非接触であるため耐久性の高い構造を提供することができる。また、外部から、直流信号を供給して電極に電荷を与えるため、エレクトレットによる発電装置のような荷電処理は必要とされず、安定的で高効率に発電を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1の実施形態に係る振動発電装置の概略的な構成を示す図。
図2】接触型発電機の例示的な構成を示す断面図。
図3】上下方向の外部の振動を受けた接触型発電機の変形を示す図。
図4】非接触型発電機の例示的な構成を示す断面図。
図5】左右方向の外部の振動を受けた非接触型発電機における第2基板のスライド移動を示す図。
図6A】非接触型発電機の接続構成例1を示す図。
図6B】非接触型発電機の接続構成例2を示す図。
図7A】非接触型発電機の接続構成例3を示す図。
図7B】非接触型発電機の接続構成例4を示す図
図8A】接続構成例1の変形例1を示す図。
図8B】接続構成例2の変形例2を示す図。
図8C】接続構成例3の変形例3を示す図。
図8D】接続構成例4の変形例4を示す図。
図9】第2の実施形態に係る振動発電装置における整流器及び非接触型発電機の接続構成例を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴のうち二つ以上の特徴は任意に組み合わされてもよい。また、同一若しくは同様の構成には同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0014】
[第1の実施形態]
図1は本発明の第1の実施形態に係る振動発電装置10の概略的な構成を示す図であり、振動発電装置10は、接触型発電機100と非接触型発電機200とを有する。接触型発電機100と非接触型発電機200との間には、整流器150が設けられている。整流器150は、例えば、ダイオードをブリッジ接続して構成された全波整流回路であり、接触型発電機100で発生した交流信号(交流電流)を直流信号(直流電流)に変換し、変換した直流信号を非接触型発電機200に供給する。非接触型発電機200は、接触型発電機100から整流器150を介して供給された直流信号を用いて発電を行う。
【0015】
(接触型発電機100の構成)
図2は、接触型発電機100の例示的な構成を示す断面図である。図2において、x方向は接触型発電機100の上下方向を示し、y方向は接触型発電機100の左右方向を示し、z方向は接触型発電機100において紙面に垂直な方向を示す。
【0016】
接触型発電機100は第1振動基板110及び第2振動基板120を有し、第1振動基板110及び第2振動基板120は、例えば、ガラスやシリコンのような硬質材料や柔軟な樹脂材料など、絶縁性を有する材料を含んでもよい。
【0017】
接触型発電機100は、第1振動電極111及び第2振動電極121を有しており、第1振動電極111は第1振動基板110に設けられている。また、第2振動電極121は第2振動基板120に設けられている。第1振動電極111及び第2振動電極121は、電気伝導性にすぐれた物質を含み、例えば、Ag、Cuなどを用いることができる。なお、電極の物質としては、これらに限定されるものではなく、Au、Ni、Cr及びPtなどであってもよい。接触型発電機100においては、振動により界面が接触(面接触)する部材が、それぞれ異なる物質であればよい。図2に示すように、第1振動電極111及び第2振動電極121の間には、樹脂材料等の保護部材112が形成されているので、第1振動電極111及び第2振動電極121はそれぞれ同一の物質であってもよい。例えば、第1振動電極111及び第2振動電極121をAg等で形成してもよいし、第1振動電極111及び第2振動電極121をCu等で形成してもよい。
【0018】
第1振動電極111上には保護部材112が形成されている。樹脂材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタラート(polyethylene terephthalate:PET)、ポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoroethylene: PTFE)などを含んでもよい。なお、保護部材112は第1振動電極111上に限られず、第2振動電極121上に形成してもよい。
【0019】
図2に示すように、第1振動基板110及び第2振動基板120の間には、弾性部材130が設けられている。弾性部材130は、例えば、所定の弾性係数を有するばねを含むが、これに限定されるものではなく、ばねと同様の弾性係数を有する部材であれば、樹脂材料等であってもよい。
【0020】
第1振動電極111上に形成された保護部材112の上面112aは、第2振動電極121と対向した状態で保持される。第2振動電極121は、第1振動電極111の上面112aに対して、所定の間隔で第2振動基板120の下面に配置されている。
【0021】
弾性部材130は、外部からの振動により、第1振動電極111と第2振動電極121とが接触するように、または、接触から離間するように、第1振動基板110及び第2振動基板120を保持する。
【0022】
x方向に外部の振動が接触型発電機100に作用していない状態では、第1振動基板110と第2振動基板120との相対距離は一定の距離に保持され、x方向に外部の振動が接触型発電機100に作用して弾性部材130が圧縮されると、第1振動基板110と第2振動基板120との相対距離は接近し、保護部材112の上面112aと第2振動電極121の下面121aとが接触した状態になる。第1振動電極111及び第2振動電極121は、接触または離間により発生する電界の変化に基づいた交流信号を出力する。
【0023】
ここで、外部の振動とは、生活環境において発生し得る振動であり、構造物(ビル、橋梁、道路など)、移動体(車両、航空機など)、各種の装置の動作時に発生し得る振動である。
【0024】
図3は上下方向(x方向)の外部の振動を受けた接触型発電機100の変形を例示的に示す図である。ST31は、接触型発電機100が外部の振動を受ける前の第1振動基板110及び第2振動基板120の初期状態(初期位置)を示す図である。ST32は、外部の振動により圧縮力が作用して保護部材112の上面112aと、第2振動電極121の下面121aとが接触(面接触)した状態を示す図である。また、ST33は、圧縮力が解放されて、第1振動基板110及び第2振動基板120が初期状態(初期位置)に戻った状態を示す図である。
【0025】
異なる材料が接触すると、仕事関数をパラメータとして界面での電荷の移動が発生し、ST32で示したような面接触により仕事関数の大きい方が正に帯電し、仕事関数の小さい方が負に帯電し得る。例えば、第1振動基板110と第2振動基板120との接近により正の電荷が発生し、第1振動基板110と第2振動基板120との離間により、逆方向の電荷の移動が発生して負の電荷が発生する。外部の振動により、面接触と離間の状態(ST31からST33)が周期的に繰り返されることにより、接触型発電機100は、交流信号(交流電流)を継続的に生成する。なお、生成する交流信号(交流電流)を増加させるために、保護部材112の上面112aと第2振動電極121の下面121aに凹凸を形成してもよい。また、保護部材112の上面112aと第2振動電極121の下面121aを所定の表面粗さで形成してもよい。
【0026】
生成された交流信号(交流電流)は、第1振動電極111に接続された第1配線115、及び第2振動電極121に接続された第2配線125を介して整流器150に出力される。整流器150は、交流信号を直流信号に変換し、変換した直流信号を非接触型発電機200に供給する。
【0027】
本実施形態の接触型発電機100によれば、生活環境において発生し得る振動(環境振動)を利用して、交流信号を継続的に発生させることができ、非接触型発電機200で利用可能な電気的なエネルギーを継続的に供給することができる。
【0028】
(非接触型発電機200の構成)
図4は、非接触型発電機200の例示的な構成を示す断面図である。図4において、x方向は非接触型発電機200の上下方向を示し、y方向は非接触型発電機200の左右方向を示し、z方向は非接触型発電機200において紙面に垂直な方向を示す。
【0029】
非接触型発電機200は第1基板210(固定基板)及び第2基板220(可動基板)を有し、第1基板210及び第2基板220は、例えば、ガラスやシリコンのような硬質材料や柔軟な樹脂材料など、絶縁性を有する材料を含んでもよい。
【0030】
第1基板210(固定基板)の上面には、第1導電部211の電極(A~F)が、配置間隔Pで複数配置されている。また、第1基板210(固定基板)に対向する第2基板220(可動基板)の下面には、第2導電部221の電極(a~d)が複数配置されている。第2導電部221の電極(a~d)の配置間隔は、第1導電部211の電極(A~F)の配置間隔Pと同一の配置間隔で複数配置されていることが好ましい。また、第1導電部211の各電極(A~F)及び第2導電部221の各電極(a~d)の電極面の面積や形状も等しいことが好ましい。
【0031】
第1導電部211の電極(A~F)及び第2導電部221の電極(a~d)は、接触型発電機100と同様に、電気伝導性にすぐれた物質を含み、例えば、Ag、Cuなどを用いることができる。なお、電極の物質としては、これらに限定されるものではなく、Au、Ni、Cr及びPtなどであってもよい。
【0032】
第1基板210(固定基板)及び第2基板220(可動基板)は筐体250内に納められている。第1基板210(固定基板)は筐体250内の下部に固定され、第2基板220(可動基板)は、第1基板210(固定基板)に対して、不図示の摺動機構によってy方向に平行移動できるようにして筐体250内に保持されている。また、第2基板220(可動基板)は、第1導電部211の上面と第2導電部221の下面とが一定の間隔Hとなるx方向の位置に保持されている。第1導電部211の上面と第2導電部221の下面とが一定の間隔Hで対向した状態で、第2基板220はy方向に平行移動できるように保持されている。
【0033】
第2基板220の左右には、第2基板220の左右方向の端部を保護するステー235が設けられている。弾性部材230は第2基板220の左右方向に配置され、弾性部材230の一端はステー235に取付けられる。また、弾性部材230の他端は非接触型発電機200の筐体250の側壁に取付けられている。弾性部材230は、接触型発電機100と同様に、例えば、所定の弾性係数(ばね係数)を有するばねを含むが、これに限定されるものではなく、ばねと同様の弾性係数を有する部材であれば、樹脂材料等であってもよい。
【0034】
y方向に外部の振動(環境振動)が非接触型発電機200に作用していない状態では、弾性部材230のばね力が釣り合った初期位置に第2基板220は位置する。初期位置は、左右の弾性部材230の釣り合い位置を調整することにより、任意に設定することが可能である。図4に示す例では、筐体250内の中央位置を初期位置としている。
【0035】
y方向に外部の振動が非接触型発電機200に作用して、一方の弾性部材230が圧縮され、他方の弾性部材230が伸長されると、初期位置に戻す方向に各弾性部材230の復原力が第2基板220に作用する。復原力とは、圧縮側の弾性部材230が第2基板220を押し戻す力と、引張り側の弾性部材230が第2基板220を引き戻す力との和である。y方向における外部の振動が周期的に非接触型発電機200に作用すると、第2基板220は、初期位置を中心として、第1基板210(固定基板)に対して左右方向のスライド移動を繰り返した状態になる。
【0036】
図5は左右方向(y方向)の外部の振動を受けた非接触型発電機200における第2基板220のスライド移動を例示的に示す図である。
【0037】
ST51は、非接触型発電機200が外部の振動を受ける前の第2基板220の初期状態(初期位置)を示す図である。ST52は、外部の振動により、第2基板220が紙面左に平行移動した状態を示し、ST53は、外部の振動により、第2基板220が紙面右に平行移動した状態を示す図である。
【0038】
左右方向(y方向)に第2基板220が平行移動して、第1導電部211と第2導電部221とが近づくと、第1導電部211が帯電している場合は静電誘導によって第2導電部221に異なる極性の電荷が誘導される。第1導電部211が正に帯電した場合には対向する第2導電部221には負の電荷が誘導される。同様に、第1導電部211が負に帯電した場合には、対向する第2導電部221には正の電荷が誘導される。
【0039】
第1基板210には、異なる極性の電荷が筐体250の外部から供給される電極が交互に配置され、第2基板220の移動により第1導電部211の電極と対向する第2導電部221の電極は、第1導電部211の電極の電荷により誘導された極性の電荷(電荷信号)を配線から出力する。
【0040】
(接続構成例1)
図6Aは、非接触型発電機200の接続構成例1を示す図である。第1基板210(固定基板)の上面に、配置間隔Pで配置されている、複数の第1導電部211の夫々をA、B、C、D、E、Fと示している。また、第2基板220(可動基板)の下面に、配置間隔Pで配置されている、複数の第2導電部221の夫々をa、b、c、dと示している。
【0041】
整流器150から出力される第1の極性(プラス)を有する直流信号は、第1導電部211のA、C、Eに供給される。この状態で、第1導電部211のA、C、Eに対向する位置にある、第2導電部221のb、dには、第1の極性に対して逆の第2の極性(マイナス)の電荷が誘導される。非接触型発電機200は、第2導電部221のb、dに誘導された第2の極性(マイナス)を有する電荷(電荷信号)を第2配線625を介して外部に出力する。
【0042】
また、整流器150から出力される第2の極性(マイナス)を有する直流信号は、第1導電部211のB、D、Fに供給される。この状態で、第1導電部211のB、D、Fに対向する位置にある、第2導電部221のa、cには、第2の極性に対して逆の第1の極性(プラス)の電荷が誘導される。非接触型発電機200は、第2導電部221のa、cに誘導された第1の極性(プラス)を有する電荷(電荷信号)を第1配線615を介して外部に出力する。
【0043】
第2基板220の平行移動により、第2導電部221(a~d)に誘導される電荷の極性が切り替わることにより、非接触型発電機200は、第1配線615及び第2配線625から交流波形の出力電圧を出力する。図6Aに示す接続構成例1では、複数の第1導電部211を構成する各電極(A~F)には、交互に異なる極性の信号(第1の極性を有する信号、または第2の極性を有する信号)が供給される。交互に異なる極性の信号に基づいて、複数の第2導電部221を構成する各電極(a~d)側に誘導された電荷(電荷信号)を非接触型発電機200の出力電圧として得ることができる。図6Aと同様の構成を用いて、出願人が行った実験では、100Vpp程度の出力電圧が得られることが認められている。
【0044】
図6Aに開示された非接触型発電機200によれば、第1導電部211、第2導電部221は非接触であるため耐久性の高い構造を提供することができる。また、外部から、直流信号を供給して電極に電荷を与えるため、エレクトレットによる発電装置のような荷電処理は必要とされない。エレクトレットに予め電荷を注入した構成では、注入電荷は時間の経過とともに低減してくという課題がある。一方、開示の技術によれば、耐久性の高い接触型発電機100で得られたエネルギーを、整流器150を通じて非接触型発電機200の電極に電荷を安定的に与えて発電を行うことでき、高効率な非接触型発電機200を提供することができる。
【0045】
・接続構成例1の変形例1
図8Aは、図6Aで説明した接続構成例1の変形例1を説明する図である。変形例1では、第1導電部211に誘電体280Aが形成されている構成を説明する。誘電体280Aは、第1導電部211を構成する各電極(A~F)に絶縁体を被覆して、荷電処理により電荷を注入することにより形成されている。誘電体280Aは、例えば、樹脂材料など、絶縁性を有する材料を含んでもよい。電荷の注入方法としては、例えば、イオン注入、コロナ処理などを用いればよく、電荷の極性は、誘電体280Aが形成される各電極(A~F)の極性に合わせて注入すればよい。例えば、第1導電部211のAに形成される誘電体の場合、第1導電部211のAには、外部から第1の極性(プラス)の直流信号が供給されるので、第1導電部211のAの極性に合わせた電荷を注入すればよい。
【0046】
第1導電部211を構成する各電極(A~F)の電荷と誘電体280Aに注入されている電荷とを合わせることにより、第2導電部221の各電極(a~d)に誘導する電荷を増加させ、発電量を増加させることができる。
【0047】
また、外部からの電力供給が途切れて各電極(A~F)に直流信号が供給されない状況でも、誘電体280Aの電荷に基づいて、第2導電部221の各電極(a~d)に電荷を誘導させて発電を継続することができ、安定した電力供給が可能になる。
【0048】
(接続構成例2)
接続構成例1では、整流器150から第1導電部211側に、第1の極性(プラス)を有する信号、及び第2の極性(マイナス)を有する信号を交互に供給する構成を説明したが、交互に供給する信号の極性は図6Aに示した接続構成例に限られず、逆の極性の信号を交互に供給してもよい。
【0049】
図6Bは、非接触型発電機200の接続構成例2を示す図である。図6Bにおいて、複数の第1導電部211及び複数の第2導電部221を構成する各電極の表記は図6Aと同様である。
【0050】
整流器150から出力される第1の極性(プラス)を有する直流信号は、第1導電部211のB、D、Fに供給される。この状態で、第1導電部211のB、D、Fに対向する位置にある、第2導電部221のa、cには、第1の極性に対して逆の第2の極性(マイナス)の電荷が誘導される。非接触型発電機200は、第2導電部221のa、cに誘導された第2の極性(マイナス)を有する電荷(電荷信号)を第2配線625を介して外部に出力する。
【0051】
また、整流器150から出力される第2の極性(マイナス)を有する直流信号は、第1導電部211のA、C、Eに供給される。この状態で、第1導電部211のA、C、Eに対向する位置にある、第2導電部221のb、dには、第2の極性に対して逆の第1の極性(プラス)の電荷が誘導される。非接触型発電機200は、第2導電部221のb、dに誘導された第1の極性(プラス)を有する電荷(電荷信号)を第1配線615を介して外部に出力する。
【0052】
図6Bに示す接続構成例2でも接続構成例1と同様に、第2基板220の平行移動により、第2導電部221(a~d)に誘導される電荷の極性が切り替わることにより、非接触型発電機200は、第1配線615及び第2配線625から交流波形の出力電圧を出力する。複数の第1導電部211を構成する各電極(A~F)には、交互に異なる極性の信号(第1の極性を有する信号、または第2の極性を有する信号)が供給される。交互に異なる極性の信号に基づいて、複数の第2導電部221を構成する各電極(a~d)側に誘導された電荷(電荷信号)を非接触型発電機200の出力電圧として得ることができる。図6Bと同様の構成を用いて実験を行った場合でも、接続構成例1と同様に100Vpp程度の出力電圧が得られる。
【0053】
図6Bに開示された非接触型発電機200によれば、第1導電部211、第2導電部221は非接触であるため耐久性の高い構造を提供することができる。また、外部から、直流信号を供給して電極に電荷を与えるため、エレクトレットによる発電装置のような荷電処理は必要とされない。エレクトレットに予め電荷を注入した構成では、注入電荷は時間の経過とともに低減してくという課題がある。一方、開示の技術によれば、耐久性の高い接触型発電機100で得られたエネルギーを、整流器150を通じて非接触型発電機200の電極に電荷を安定的に与えて発電を行うことでき、高効率な非接触型発電機200を提供することができる。
【0054】
・接続構成例2の変形例2
図8Bは、図6Bで説明した接続構成例2の変形例2を説明する図である。変形例2では、変形例1と同様に、第1導電部211に誘電体280Bが形成されている構成を説明する。誘電体280Bは、第1導電部211を構成する各電極(A~F)に絶縁体を被覆して、荷電処理により電荷を注入することにより形成されている。電荷の極性は、誘電体280Bが形成される各電極(A~F)の極性に合わせて注入すればよい。例えば、第1導電部211のAに形成される誘電体の場合、第1導電部211のAには、外部から第2の極性(マイナス)の直流信号が供給されるので、第1導電部211のAの極性に合わせた電荷を注入すればよい。
【0055】
第1導電部211を構成する各電極(A~F)の電荷と誘電体280Bに注入されている電荷とを合わせることにより、第2導電部221の各電極(a~d)に誘導する電荷を増加させ、発電量を増加させることができる。
【0056】
また、外部からの電力供給が途切れて各電極(A~F)に直流信号が供給されない状況でも、誘電体280Bの電荷に基づいて、第2導電部221の各電極(a~d)に電荷を誘導させて発電を継続することができ、安定した電力供給が可能になる。
【0057】
(接続構成例3)
先に説明した接続構成例1、2では、整流器150から第1導電部211側に、第1の極性(プラス)を有する信号、及び第2の極性(マイナス)を有する信号を交互に供給する構成を説明したが、非接触型発電機200における接続例は、接続構成例1、2に限られず、一方の極性の信号を第1導電部211側に供給し、他方の極性の信号を第2導電部221側に供給してもよい。
【0058】
接続構成例3では、第1の極性(プラス)の信号を第2導電部221側に供給し、第2の極性(マイナス)の信号を第1導電部211側に供給する例を説明する。
【0059】
図7Aは、非接触型発電機200の接続構成例3を示す図である。図7Aにおいて、複数の第1導電部211及び複数の第2導電部221を構成する各電極の表記は図6Aと同様である。
【0060】
図7Aにおいて、整流器150から出力される第1の極性(プラス)を有する直流信号は、第2導電部221のb、dに供給される。この状態で、第2導電部221のb、dに対向する位置にある、第1導電部211のC、Eには、第1の極性に対して逆の第2の極性(マイナス)の電荷が誘導される。なお、第2基板220の平行移動により、第2導電部221のbが第1導電部211のAに対向した状態で、第1導電部211のAには、第2の極性(マイナス)の電荷が誘導される。非接触型発電機200は、第1導電部211のA、C、Eに誘導された第2の極性(マイナス)を有する電荷(電荷信号)を第2配線725を介して外部に出力する。
【0061】
また、整流器150から出力される第2の極性(マイナス)を有する直流信号は、第1導電部211のB、D、Fに供給される。この状態で、第1導電部211のB、D、Fに対向する位置にある、第2導電部221のa、cには、第2の極性に対して逆の第1の極性(プラス)の電荷が誘導される。非接触型発電機200は、第2導電部221のa、cに誘導された第1の極性(プラス)を有する電荷(電荷信号)を第1配線715を介して外部に出力する。
【0062】
第2基板220の平行移動により、第1導電部211(A~F)及び第2導電部221(a~d)に誘導される電荷の極性が切り替わることにより、非接触型発電機200は、第1配線715及び第2配線725から交流波形の出力電圧を出力する。図7Aと同様の構成を用いて、出願人が行った実験では、100Vpp程度の出力電圧が得られることが認められている。
【0063】
第1基板210及び第2基板220には、筐体250の外部から電荷が供給される電荷供給電極(B、D、F、b、d)と電荷が供給されない電荷非供給電極(A、C、E、a、c)とが交互に配置されている。第2基板220の移動により、第1導電部211の電荷供給電極(B、D、F)と対向する第2導電部の電荷非供給電極(a、c)は、電荷供給電極(B、D、F)の電荷により誘導された極性の電荷(電荷信号)を出力する。また、第2基板220の移動により、第2導電部221の電荷供給電極(b、d)と対向する第1導電部211の電荷非供給電極(A、C、E、)は、電荷供給電極(b、d)の電荷により誘導された極性の電荷(電荷信号)を出力する。
【0064】
図7Aに開示された非接触型発電機200によれば、第1導電部211、第2導電部221は非接触であるため耐久性の高い構造を提供することができる。また、外部から、直流信号を供給して電極に電荷を与えるため、エレクトレットによる発電装置のような荷電処理は必要とされない。エレクトレットに予め電荷を注入した構成では、注入電荷は時間の経過とともに低減してくという課題がある。一方、開示の技術によれば、耐久性の高い接触型発電機100で得られたエネルギーを、整流器150を通じて非接触型発電機200の電極に電荷を安定的に与えて発電を行うことでき、高効率な非接触型発電機200を提供することができる。
【0065】
・接続構成例3の変形例3
図8Cは、図7Aで説明した接続構成例3の変形例3を説明する図である。変形例3では、第1の極性(プラス)の信号を供給する第2導電部221のb、dに誘電体281Cが形成され、第2の極性(マイナス)の信号を供給する第1導電部211のB、D、Fに誘電体280Cが形成されている構成を説明する。誘電体280C、281Cは、第1導電部211のB、D、F及び第2導電部221のb、dに絶縁体を被覆して、荷電処理により電荷を注入することにより形成されている。電荷の極性は、誘電体280C、281Cが形成される各電極の極性に合わせて注入すればよい。例えば、第1導電部211のBに形成される誘電体280Cの場合、第1導電部211のBには、外部から第2の極性(マイナス)の直流信号が供給されるので、第1導電部211のBの極性に合わせた電荷を注入すればよい。また、第2導電部221のbに形成される誘電体281Cの場合、第2導電部221のbには、外部から第1の極性(プラス)の直流信号が供給されるので、第2導電部221のbの極性に合わせた電荷を注入すればよい。
【0066】
第1導電部211のB、D、Fの電荷と誘電体280Cに注入されている電荷とを合わせることにより、第2導電部221のa、cに誘導する電荷を増加させ、発電量を増加させることができる。同様に、第2導電部221のb、dの電荷と誘電体281Cに注入されている電荷とを合わせることにより、第1導電部211のA、C、Eに誘導する電荷を増加させ、発電量を増加させることができる。
【0067】
また、外部からの電力供給が途切れて各電極(第1導電部211のB、D、F、第2導電部221のb、d)に直流信号が供給されない状況でも、誘電体280C、281Cの電荷に基づいて、第1導電部211のA、C、E、第2導電部221のa、cに電荷を誘導させて発電を継続することができ、安定した電力供給が可能になる。
【0068】
図7Aに開示された非接触型発電機200によれば、第1導電部211、第2導電部221は非接触であるため耐久性の高い構造を提供することができる。また、外部から、直流信号を供給して電極に電荷を与えるため、エレクトレットによる発電装置のような荷電処理は必要とされない。エレクトレットに予め電荷を注入した構成では、注入電荷は時間の経過とともに低減していくという課題がある。一方、開示の技術によれば、耐久性の高い接触型発電機100で得られたエネルギーを、整流器150を通じて非接触型発電機200の電極に電荷を安定的に与えて発電を行うことでき、高効率な非接触型発電機200を提供することができる。
【0069】
(接続構成例4)
先の接続構成例3では、整流器150から第2導電部221側に、第1の極性(プラス)を有する信号を交互に供給し、整流器150から第1導電部211側に、第2の極性(マイナス)を有する信号を交互に供給する構成を説明したが、交互に供給する信号の極性は図7Aに示した接続構成例に限られず、逆の極性の信号を交互に供給してもよい。
【0070】
接続構成例4では、第1の極性(プラス)の信号を第1導電部211側に供給し、第2の極性(マイナス)の信号を第2導電部221側に供給する例を説明する。図7Bは、非接触型発電機200の接続構成例4を示す図である。図7Bにおいて、複数の第1導電部211及び複数の第2導電部221を構成する各電極の表記は図6Aと同様である。
【0071】
図7Bにおいて、整流器150から出力される第1の極性(プラス)を有する直流信号は、第1導電部211のB、D、Fに供給される。この状態で、第1導電部211のB、D、Fに対向する位置にある、第2導電部221のa、cには、第1の極性に対して逆の第2の極性(マイナス)の電荷が誘導される。非接触型発電機200は、第2導電部221のa、cに誘導された第2の極性(マイナス)を有する電荷(電荷信号)を第1配線715を介して外部に出力する。
【0072】
また、整流器150から出力される第2の極性(マイナス)を有する直流信号は、第2導電部221のb、dに供給される。この状態で、第2導電部221のb、dに対向する位置にある、第1導電部211のC、Eには、第2の極性に対して逆の第1の極性(プラス)の電荷が誘導される。なお、第2基板220の平行移動により、第2導電部221のbが第1導電部211のAに対向した状態で、第1導電部211のAには、第1の極性(プラス)の電荷が誘導される。非接触型発電機200は、第1導電部211のA、C、Eに誘導された第1の極性(プラス)を有する電荷(電荷信号)を第2配線725を介して外部に出力する。
【0073】
第2基板220の平行移動により、第1導電部211(A~F)及び第2導電部221(a~d)に誘導される電荷の極性が切り替わることにより、非接触型発電機200は、第1配線715及び第2配線725から交流波形の出力電圧を出力する。図7Bと同様の構成を用いて実験を行った場合でも、接続構成例3と同様に100Vpp程度の出力電圧が得られる。
【0074】
図7Bに開示された非接触型発電機200によれば、第1導電部211、第2導電部221は非接触であるため耐久性の高い構造を提供することができる。また、外部から、直流信号を供給して電極に電荷を与えるため、エレクトレットによる発電装置のような荷電処理は必要とされない。エレクトレットに予め電荷を注入した構成では、注入電荷は時間の経過とともに低減してくという課題がある。一方、開示の技術によれば、耐久性の高い接触型発電機100で得られたエネルギーを、整流器150を通じて非接触型発電機200の電極に電荷を安定的に与えて発電を行うことでき、高効率な非接触型発電機を提供することができる。
【0075】
・接続構成例4の変形例4
図8Dは、図7Bで説明した接続構成例4の変形例4を説明する図である。変形例4では、第2の極性(マイナス)の信号を供給する第2導電部221のb、dに誘電体281Dが形成され、第1の極性(プラス)の信号を供給する第1導電部211のB、D、Fに誘電体280Dが形成されている構成を説明する。誘電体280D、281Dは、第1導電部211のB、D、F及び第2導電部221のb、dに絶縁体を被覆して、荷電処理により電荷を注入することにより形成されている。電荷の極性は、誘電体280D、281Dが形成される各電極の極性に合わせて注入すればよい。例えば、第1導電部211のBに形成される誘電体280Dの場合、第1導電部211のBには、外部から第1の極性(プラス)の直流信号が供給されるので、第1導電部211のBの極性に合わせた電荷を注入すればよい。また、第2導電部221のbに形成される誘電体281Dの場合、第2導電部221のbには、外部から第2の極性(マイナス)の直流信号が供給されるので、第2導電部221のbの極性に合わせた電荷を注入すればよい。
【0076】
第1導電部211のB、D、Fの電荷と誘電体280Dに注入されている電荷とを合わせることにより、第2導電部221のa、cに誘導する電荷を増加させ、発電量を増加させることができる。同様に、第2導電部221のb、dの電荷と誘電体281Dに注入されている電荷とを合わせることにより、第1導電部211のA、C、Eに誘導する電荷を増加させ、発電量を増加させることができる。
【0077】
また、外部からの電力供給が途切れて各電極(第1導電部211のB、D、F、第2導電部221のb、d)に直流信号が供給されない状況でも、誘電体280D、281Dの電荷に基づいて、第1導電部211のA、C、E、第2導電部221のa、cに電荷を誘導させて発電を継続することができ、安定した電力供給が可能になる。
【0078】
第1の実施形態の振動発電装置10によれば、第1電極、第2電極は非接触であるため耐久性の高い構造を提供することができる。また、外部から、直流信号を供給して電極に電荷を与えるため、エレクトレットによる発電装置のような荷電処理は必要とされず、安定的で高効率に発電を行うことができる。
【0079】
[第2の実施形態]
先の第1の実施形態では、整流器150から出力される第1の極性(プラス)を有する直流信号及び第2の極性(マイナス)を有する直流信号の供給先が予め設定されている構成を説明した。本実施形態では、直流電流の供給先として、第1導電部の各電極、及び第2導電部の各電極を任意に設定することができる構成について説明する。
【0080】
図9は第2の実施形態に係る振動発電装置10における整流器150及び非接触型発電機200の接続構成例を説明する図である。振動発電装置10は、整流器150から出力された直流信号を供給する供給電極の設定、及び、直流信号の電荷に基づいて誘導された極性の電荷を出力する出力電極の設定を行うことが可能な電極設定回路920を有する。電極設定回路920は、回路の設定を切替えることにより、直流信号を供給する供給電極、及び電荷を出力する出力電極を任意に設定することが可能である。
電極設定回路920は、直流信号(第1の極性の信号及び第2の極性の信号)の供給先を、第1導電部211の電極(A~F)に設定することが可能である。また、電極設定回路920は、電荷を出力する出力電極を第2導電部221の電極(a~d)に設定することが可能である。例えば、図9に示したように、電極設定回路920は、第1導電部211の電極(A~F)の一部(例えば、A、B、E、F)を第1の極性の信号の供給先の電極として設定し、第1導電部211の他の電極(C、D)を第2の極性の信号の供給先の電極として設定してもよい。また、電極設定回路920は、第2導電部221の電極(a~d)の一部(例えば、b、c)を第1の極性の信号の出力元の電極として設定し、第2導電部221の他の電極(a、d)を第2の極性の信号の出力元の電極として設定してもよい。電極設定回路920は、第1導電部211の電極及び第2導電部221の電極のうちから設定された供給電極に直流信号を供給し、第1導電部211の電極及び第2導電部221の電極のうちから設定された出力電極から出力された電荷を発電エネルギーとして出力する。
【0081】
第2の実施形態の振動発電装置10によれば、第1電極、第2電極は非接触であるため耐久性の高い構造を提供することができる。また、外部から、直流信号を供給して電極に電荷を与えるため、エレクトレットによる発電装置のような荷電処理は必要とされず、安定的で高効率に発電を行うことができる。
【0082】
発明は上記の実施形態に制限されるものではなく、発明の要旨の範囲内で、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0083】
10:振動発電装置、100:接触型発電機、150:整流器、200:非接触型発電機、210:第1基板、220:第2基板、211:第1導電部、221:第2導電部、920:電極設定回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B
図8C
図8D
図9