(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135130
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】車両用回転支持機構
(51)【国際特許分類】
B60N 2/75 20180101AFI20240927BHJP
B60N 2/90 20180101ALI20240927BHJP
A47C 7/54 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
B60N2/75
B60N2/90
A47C7/54 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023045665
(22)【出願日】2023-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中尾 健志
【テーマコード(参考)】
3B087
【Fターム(参考)】
3B087DC02
3B087DE10
(57)【要約】
【課題】ワッシャーを利用して回転部材を任意の回転方向位置に保持し易い車両用回転支持機構を得る。
【解決手段】ベース部材に固定されたブラケット33と、回転部材の骨格部材でありブラケットと対向するフレーム部材43と、ブラケットとフレーム部材の一方である第1特定部材33に設けられた第1貫通孔34と、ブラケットとフレーム部材の他方である第2特定部材43に固定され第1貫通孔を回転可能に貫通する回転中心軸73と、回転中心軸に固定され第1特定部材と対向する押さえ部71と、回転中心軸が貫通する第2貫通孔75Bを有し、押さえ部と第1特定部材とによって挟まれ山部76を2つのみ有するウェブワッシャー75と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース部材に固定されたブラケットと、
回転部材の骨格部材であり、前記ブラケットと対向するフレーム部材と、
前記ブラケットと前記フレーム部材の一方である第1特定部材に設けられた第1貫通孔と、
前記ブラケットと前記フレーム部材の他方である第2特定部材に固定され、前記第1貫通孔を回転可能に貫通する回転中心軸と、
前記回転中心軸に固定され、前記第1特定部材と対向する押さえ部と、
前記回転中心軸が貫通する第2貫通孔を有し、前記押さえ部と前記第1特定部材とによって挟まれ、山部を2つのみ有するウェブワッシャーと、
を備える車両用回転支持機構。
【請求項2】
前記ウェブワッシャーが塑性変形した状態で前記押さえ部と前記第1特定部材とによって挟まれる請求項1に記載の車両用回転支持機構。
【請求項3】
前記第1特定部材の前記ウェブワッシャーとの対向面である第1面、及び、前記押さえ部の前記ウェブワッシャーとの対向面である第2面が、互いに平行な平面である請求項2に記載の車両用回転支持機構。
【請求項4】
前記ウェブワッシャーの前記押さえ部との対向面に粗面処理が施されている請求項1又は請求項2に記載の車両用回転支持機構。
【請求項5】
前記ベース部材がシートであり、
前記回転部材がアームレストである請求項1又は請求項2に記載の車両用回転支持機構。
【請求項6】
前記第2特定部材にナットが固定され、
前記回転中心軸であり前記ナットに螺合される雄ねじ部、及び、前記押さえ部である頭部、を有するボルトを備える請求項1又は請求項2に記載の車両用回転支持機構。
【請求項7】
前記ウェブワッシャーが、国際標準化機構規格のISO4960で規定されたCold-reduced carbon steel strip製である請求項1又は請求項2に記載の車両用回転支持機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用回転支持機構に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には車両用回転支持機構が開示されている。この車両用回転支持機構は、シートのシートバックに固定されたボルトと、ボルトが相対回転可能に貫通するアームレストと、ボルトに螺合され且つアームレストの表面と対向するナットと、アームレストの表面とナットによって挟まれるワッシャーと、を備える。
【0003】
この車両用回転支持機構では、アームレストがシートバックに対してボルト回りに回転可能である。さらにワッシャーからアームレストに適切な大きさの力が及ぶ場合に、ワッシャーを利用して、アームレストを任意の回転方向位置に保持できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1は、ワッシャーを利用してアームレストを任意の回転方向位置に保持することに関して改善の余地がある。
【0006】
本発明は上記事実を考慮し、ワッシャーを利用して回転部材を任意の回転方向位置に保持し易い車両用回転支持機構を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明に係る車両用回転支持機構は、ベース部材に固定されたブラケットと、回転部材の骨格部材であり、前記ブラケットと対向するフレーム部材と、前記ブラケットと前記フレーム部材の一方である第1特定部材に設けられた第1貫通孔と、前記ブラケットと前記フレーム部材の他方である第2特定部材に固定され、前記第1貫通孔を回転可能に貫通する回転中心軸と、前記回転中心軸に固定され、前記第1特定部材と対向する押さえ部と、前記回転中心軸が貫通する第2貫通孔を有し、前記押さえ部と前記第1特定部材とによって挟まれ、山部を2つのみ有するウェブワッシャーと、を備える。
【0008】
請求項1に記載の車両用回転支持機構のウェブワッシャーは、回転中心軸が貫通する第2貫通孔を有し、押さえ部と第1特定部材とによって挟まれる。さらにウェブワッシャーは、山部を2つのみ有する。そのため請求項1のウェブワッシャーは、山部を3つ以上有する場合と比べて、第1特定部材に対して大きな力を付与できるように設計するのが容易である。従って、請求項1に記載の車両用回転支持機構は、ワッシャーを利用して回転部材を任意の回転方向位置に保持し易い。
【0009】
請求項2に記載の発明に係る車両用回転支持機構は、請求項1に記載の車両用回転支持機構において、前記ウェブワッシャーが塑性変形した状態で前記押さえ部と前記第1特定部材とによって挟まれる。
【0010】
請求項2に記載の車両用回転支持機構のウェブワッシャーは、塑性変形した状態で押さえ部と第1特定部材とによって挟まれる。ウェブワッシャーが弾性変形した状態で押さえ部と第1特定部材とによって挟まれる場合は、回転部材を繰り返し回転させたときに、ウェブワッシャーが塑性変形する。このようにウェブワッシャーの変形状態が弾性変形から塑性変形に変化すると、ウェブワッシャーから第1特定部材に及ぶ力が徐々に小さくなる。これに対して請求項2に記載の車両用回転支持機構では、回転部材を繰り返し回転させてもウェブワッシャーの変形状態が塑性変形のままである。そのため、請求項2に記載の車両用回転支持機構では、回転部材を繰り返し回転させても、ウェブワッシャーから第1特定部材に及ぶ力が小さくなり難い。
【0011】
請求項3に記載の発明に係る車両用回転支持機構は、請求項2に記載の車両用回転支持機構において、前記第1特定部材の前記ウェブワッシャーとの対向面である第1面、及び、前記押さえ部の前記ウェブワッシャーとの対向面である第2面が、互いに平行な平面である。
【0012】
請求項3に記載の車両用回転支持機構では、第1特定部材の第1面及び押さえ部の第2面が互いに平行な平面である。そのため山部を2つのみ有するウェブワッシャーを、第1特定部材の第1面と押さえ部の第2面とによって安定した状態で挟むことが可能である。
【0013】
さらに請求項3に記載の車両用回転支持機構では、第1面と第2面が平行ではない場合と比べて、回転部材を繰り返し回転させたときにウェブワッシャーの塑性変形の状態が変化し難い。そのため回転部材を繰り返し回転させても、ウェブワッシャーから第1特定部材に及ぶ力が小さくなり難い。
【0014】
請求項4に記載の発明に係る車両用回転支持機構は、請求項1又は請求項2に記載の車両用回転支持機構において、前記ウェブワッシャーの前記押さえ部との対向面に粗面処理が施されている。
【0015】
請求項4に記載の車両用回転支持機構は、ウェブワッシャーと押さえ部との間の摩擦抵抗力が大きくなり易い。そのため、ウェブワッシャーの押さえ部との対向面に粗面処理が施されていない場合と比べて、ウェブワッシャーは第1特定部材に対して大きな力を付与し易い。
【0016】
請求項5に記載の発明に係る車両用回転支持機構は、請求項1又は請求項2に記載の車両用回転支持機構において、前記ベース部材がシートであり、前記回転部材がアームレストである。
【0017】
請求項5に記載の車両用回転支持機構は、ワッシャーを利用してアームレストを任意の回転方向位置に保持し易い。
【0018】
請求項6に記載の発明に係る車両用回転支持機構は、請求項1又は請求項2に記載の車両用回転支持機構において、前記第2特定部材にナットが固定され、前記回転中心軸であり前記ナットに螺合される雄ねじ部、及び、前記押さえ部である頭部、を有するボルトを備える。
【0019】
請求項6に記載では、ナット及びボルトを用いて車両用回転支持機構を実現できる。
【0020】
請求項7に記載の発明に係る車両用回転支持機構は、請求項1又は請求項2に記載の車両用回転支持機構において、前記ウェブワッシャーが、国際標準化機構規格のISO4960で規定されたCold-reduced carbon steel strip製である。
【0021】
請求項7に記載の車両用回転支持機構によれば、ウェブワッシャーが第1特定部材に対して大きな力を付与し易くなる。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように、本発明に係る車両用回転支持機構は、ワッシャーを利用して回転部材を任意の回転方向位置に保持し易い。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の実施形態に係る車両用回転支持機構が適用されたリアシートの斜視図である。
【
図2】リアシートの第1シートバックの一部を示す斜視図である。
【
図3】第1シートバック及びアームレストのフレーム部材、並びに、車両用回転支持機構の分解斜視図である。
【
図4】車両用回転支持機構を拡大して示す分解斜視図である。
【
図5】車両用回転支持機構を拡大して示す斜視図である。
【
図8】アームレストの回転位置と保持トルクの関係を示すグラフである。
【
図9】本発明の変形例の
図4に対応する分解斜視図である。
【
図10】本発明の変形例の
図6に対応する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、
図1~
図8を用いて本発明の実施形態に係る車両用回転支持機構について説明する。なお、各図中に適宜示される矢印FRは車両前後方向(シート前後方向)の前方向を示し、矢印UPは車両上下方向(シート上下方向)の上方向を示し、矢印LHは車両左右方向(シート左右方向)の左側を示す。以下、単に前後、左右、上下の方向を用いて説明する場合、シート前後方向の前後、シート左右方向(車両幅方向)の左右、シート上下方向の上下を示す。
【0025】
図1に示されたように車両10の車室11の床面12にはリアシート(ベース部材)15が設けられている。リアシート15は、床面12に支持部材12Aを介して固定されたシートクッション16と、共にシートクッション16の後端部に下端部が接続された第1シートバック17及び第2シートバック80を有する。
【0026】
図1及び
図2に示されたように第1シートバック17の左端部には略直方体形状の凹部18が形成されている。
図2に示されたように、第1シートバック17の内部には、第1シートバック17の骨格部材である金属製のフレーム部材20が設けられている。フレーム部材20は、第1シートバック17の上部に設けられた左右方向に延びるアッパフレーム21と、第1シートバック17の下部に設けられた左右方向に延びるロアフレーム22と、第1シートバック17の左右両側部に設けられた上下方向に延びる一対のサイドフレーム23(右側のサイドフレーム23の図示は省略)と、を有する。左右のサイドフレーム23の上端部がアッパフレーム21の左右両端部にそれぞれ接続され、左右のサイドフレーム23の下端部がロアフレーム22の左右両端部にそれぞれ接続されている。
【0027】
図3に示されたようにロアフレーム22の長手方向の中間部の上面には金属製の第1ブラケット28の下端部が固定されている。第1ブラケット28には回転支持孔29及び円弧溝30が形成されている。側面視における円弧溝30の形状は、回転支持孔29の中心点を中心とする円弧形状である。
【0028】
さらに
図3に示されたように、左側のサイドフレーム23の前面には金属製の第2ブラケット(ブラケット)(第1特定部材)33の後端面が固定されている。第2ブラケット33の下端部33Aには回転支持孔(第1貫通孔)34及び円弧溝35が形成されている。下端部33Aの左側面(第1面)33A1は左右方向に対して直交する平面である。側面視における円弧溝35の形状は、回転支持孔34の中心点を中心とする円弧形状である。第1ブラケット28の回転支持孔29と回転支持孔34は互いに同軸をなす。
【0029】
第1シートバック17の凹部18には、凹部18とほぼ同じ形状のアームレスト(回転部材)40が設けられている。即ち、アームレスト40は略直方体形状である。アームレスト40は、フレームユニット42、クッション部材64、カバー部材66、ボルト70及びウェブワッシャー75を有する。
【0030】
図3に示されたように、アームレスト40の内部には、アームレスト40の骨格部材である金属製のフレーム部材(第2特定部材)43が設けられている。フレーム部材43は、アームレスト40の上部に設けられた左右方向に延びるアッパフレーム44と、アームレスト40の下部に設けられた左右方向に延びるロアフレーム45と、アームレスト40の左右両側部に設けられた上下方向に延びる一対のサイドフレーム46、47と、を有する。左右のサイドフレーム46、47の上端部がアッパフレーム44の左右両端部にそれぞれ接続され、左右のサイドフレーム46、47の下端部がロアフレーム45の左右両端部にそれぞれ接続されている。
【0031】
右側のサイドフレーム46の右側面の下端部には、回転軸49及び案内突起50が固定されている。回転軸49及び案内突起50は、共に軸線が左右方向に延びる円柱部材である。案内突起50の外周面にはカラー51が回転可能に装着されている。
【0032】
図5に示されたように左側のサイドフレーム47の断面形状は略U字形である。即ち、サイドフレーム47は、左右方向に対して略直交する側面板47Aと、側面板47Aの前縁部から右側に延びる前板47Bと、側面板47Aの後縁部から右側に延びる後板47Cと、を有する。
図4に示されたように、側面板47Aの左側面の下端部には案内突起55が固定されている。案内突起55は軸線が左右方向に延びる円柱部材である。案内突起55の外周面にはカラー56が回転可能に装着されている。
図6に示されたように側面板47Aには、案内突起55(カラー56)より上方に位置する円形の貫通孔58が設けられている。さらに側面板47Aの左側面には、貫通孔58と同軸をなす円筒状の樹脂部材60が固定されている。さらに側面板47Aの右側面には、貫通孔58と同軸をなす金属製のウェルドナット(ナット)62が固定されている。以上説明したフレーム部材43、回転軸49、案内突起50、カラー51、案内突起55、カラー56、樹脂部材60及びウェルドナット62がフレームユニット42の構成要素である。
【0033】
さらにフレームユニット42の周囲をクッション部材64(
図2参照)が覆っている。クッション部材64の外形は凹部18の外形と略同一である。さらにクッション部材64の表面をカバー部材66が覆っている。但し、回転軸49及び案内突起50(カラー51)はカバー部材66の右側面に形成された開口部(図示省略)を介してカバー部材66の右側面から右側に突出している。また案内突起55(カラー56)及び樹脂部材60はカバー部材66の左側面に形成された開口部(図示省略)を介してカバー部材66の左側面から左側に突出している。
【0034】
以上説明した構成のアームレスト40の下端部が凹部18の下端部に配置される。さらに回転軸49が第1ブラケット28の回転支持孔29に回転可能に挿入され、案内突起50(カラー51)が円弧溝30に相対移動可能に挿入されている。さらに
図5及び
図6に示されたように、第2ブラケット33の下端部33Aの右側面に樹脂部材60の左側面が接触した状態で、案内突起55(カラー56)が円弧溝35に相対移動可能に挿入されている。
【0035】
図5~
図7に示された金属製のボルト70は、その軸線を中心とする回転対称体である。ボルト70は、頭部(押さえ部)71、中間部72、及び雄ねじ部(回転中心軸)73を有する。中間部72は、回転支持孔34の径及び樹脂部材60の内径、頭部71の外径より小径の円柱体である。雄ねじ部73は中間部72及び貫通孔58より小径である。頭部71の中間部72側の面は、自身の軸線(左右方向)に対して直交する平面からなる接触面(第2面)71Aである。
【0036】
図5及び
図6に示されたように、ボルト70の中間部72には環状部材であるウェブワッシャー75が装着される。ウェブワッシャー75は金属製である。この金属は、JIS規格(日本産業規格)の「JIS G 4802」で規定されたS65C-CSP(ばね用冷間圧延鋼帯)である。換言すると、この金属はISO規格(国際標準化機構規格)のISO4960で規定されたCold-reduced carbon steel stripである。ウェブワッシャー75は、厚さが3.2mmの金属板をプレス加工することにより製造されている。
図4に示されたようにウェブワッシャー75は、自由状態において周辺部より右側に突出する2つの山部76を有する。各山部76の周辺部に対する右側への突出量は実質的に同一である。また2つの山部76のウェブワッシャー75の周方向位置は、互いに180°ずれている。
図7に示されたように、ボルト70が自由状態にあるときのウェブワッシャー75の左端部と各山部76の右端部との間の左右方向距離はL1である。さらにウェブワッシャー75の左側面全体には粗面処理が施されている。即ち、ウェブワッシャー75の左側面は、右側面より面粗度が大きい粗面75Aにより構成されている。
【0037】
図6に示されたように、ボルト70の中間部72が、左側からウェブワッシャー75の貫通孔(第2貫通孔)75B、及び第2ブラケット33の回転支持孔34及び樹脂部材60に相対回転可能に挿入され、雄ねじ部73が貫通孔58を右側へ貫通する。さらに雄ねじ部73がウェルドナット62に螺合される。このときウェブワッシャー75の粗面75A(左側面)に頭部71の接触面71Aが接触し、各山部76の右端部に第2ブラケット33の左側面33A1が接触する。即ち、接触面71Aと左側面33A1によってウェブワッシャー75が挟まれる。
【0038】
このとき接触面71Aと左側面33A1は互いに平行をなす。さらにこのときの接触面71Aと左側面33A1の間の左右方向距離はL3となる。このとき
図7に示されたようにウェブワッシャー75の左端部と各山部76の右端部との間の左右方向距離はL3になる。
図7の距離L2は、ウェブワッシャー75が所定量だけ弾性変形しているときのウェブワッシャー75の左端部と各山部76の右端部との間の左右方向距離である。L1>L2>L3である。さらに左右方向距離がL3になると、ウェブワッシャー75の変形態様は塑性変形になる。即ち、ウェブワッシャー75は塑性変形状態で左側面33A1と接触面71Aによって挟まれる。換言すると、第1シートバック17が製造された時点で既にウェブワッシャー75にはへたりが生じている。この第1シートバック17が製造された時点においてウェブワッシャー75に発生しているへたりを「初期へたり」と定義する。
【0039】
このようにして第1シートバック17と一体化されたアームレスト40は、互いに同軸をなす回転軸49及びボルト70(雄ねじ部73)を中心に第1シートバック17に対して回転可能である。即ち、アームレスト40は
図1に実線で示された初期位置と、
図1に仮想線で示された最大回転位置との間を第1シートバック17に対して回転可能である。アームレスト40が初期位置に位置するとき、案内突起55(カラー56)は円弧溝35の下端部に位置し(
図5参照)、案内突起50(カラー51)は円弧溝30の下端部に位置する(図示省略)。アームレスト40が最大回転位置に位置するとき、案内突起55(カラー56)は円弧溝35の上端部に位置し(図示省略)、案内突起50(カラー51)は円弧溝30の上端部に位置する(図示省略)。即ち、アームレスト40の初期位置より後方(上方)への回転、及び、アームレスト40の最大回転位置より前方(下方)への回転が規制されている。
【0040】
図2に示されたように第1シートバック17は、左側のサイドフレーム23の上部を除く部位及び第2ブラケット33を左側から覆う樹脂製のカバー部材25を備える。カバー部材25の内面は左側のサイドフレーム23に固定されている。
【0041】
図1に示されたように第2シートバック80の右側面が第1シートバック17の左側面を覆っている。そのためアームレスト40の位置にかかわらず、第1シートバック17の左端面は車室11において露出しない。
【0042】
以上説明した構成の中でフレームユニット42、ボルト70及びウェブワッシャー75が回転支持機構(車両用回転支持機構)77の構成要素である。
【0043】
(作用及び効果)
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0044】
まず
図1に示されたようにアームレスト40が初期位置に位置する場合を想定する。
図8に示されたように、このときアームレスト40の自重に起因してボルト70に発生する回転トルクはほぼゼロである。以下の説明におけるボルト70の回転トルクは、アームレスト40の自重に起因するものである。
【0045】
乗員が手で初期位置に位置するアームレスト40を前方へ押すとアームレスト40が前方に向かって回転する。
図8に示されたように、これに伴ってボルト70の回転トルクが徐々に増大する。さらにアームレスト40が最大回転位置より僅かに初期位置側の位置Pfに到達したときに、ボルト70の回転トルクが最大値Trmaxになる。
【0046】
アームレスト40が初期位置と位置Pfとの間の任意の回転位置にあり且つ乗員がアームレスト40から手を離したときに、アームレスト40をこの回転位置に保持するためには、ウェブワッシャー75が第2ブラケット33の左側面33A1に及ぼす力によって生じる保持トルクの大きさが最大値Trmax以上である必要がある。そのためウェブワッシャー75は、最大値Trmax以上の大きさの保持トルクを生み出す力を発生して左側面33A1に付与する必要がある。以下の説明では、ウェブワッシャー75が左側面33A1に付与する力を軸方向力と称する。
【0047】
ところでウェブワッシャーの山部の数は一般的には3つ以上である。また山部の高さが大きい程、ウェブワッシャーは大きな軸方向力を発生し易い。しかし山部の数が多くなると、それぞれの山部の高さを大きくしながらウェブワッシャーを製造するのが難しくなる。そのため山部の数が3つ以上のウェブワッシャーを、大きな軸方向力を発生可能なように製造するのは難しい。
【0048】
これに対して本実施形態のウェブワッシャー75の山部76の数は2つである。そのため、それぞれの山部76の高さを大きくしながらウェブワッシャー75を製造するのは容易である。さらにウェブワッシャー75を構成する金属が、JIS規格の「JIS G 4802」で規定されたS65C-CSP(ISO規格のISO4960で規定されたCold-reduced carbon steel strip)である。従って、本実施形態のウェブワッシャー75は大きな軸方向力を発生可能である。即ち、ウェブワッシャー75は、最大値Trmax以上の大きさの保持トルクを生み出す軸方向力を発生可能である。そのため本実施形態の回転支持機構77は、ウェブワッシャー75を利用してアームレスト40を任意の回転方向位置に保持し易い。
【0049】
さらにウェブワッシャー75は、塑性変形した状態でボルト70の頭部71の接触面71Aと第2ブラケット33の左側面33A1とによって挟まれる。ウェブワッシャー75が弾性変形した状態で接触面71Aと左側面33A1とによって挟まれた場合は、アームレスト40を繰り返し回転させたときにウェブワッシャー75の変形状態が弾性変形から塑性変形に変わる。このようにウェブワッシャー75の変形状態が弾性変形から塑性変形に変化すると、ウェブワッシャー75から左側面33A1に及ぶ軸方向力が徐々に小さくなる。これに対して回転支持機構77では、アームレスト40を繰り返し回転させてもウェブワッシャー75の変形状態は塑性変形のままである。さらに頭部71の接触面71Aと第2ブラケット33の左側面33A1が互いに平行な平面であるため、接触面71Aと左側面33A1が平行ではない場合と比べて、アームレスト40を繰り返し回転させたときにウェブワッシャー75の塑性変形の状態が変化し難い。そのためアームレスト40を繰り返し回転させても、ウェブワッシャー75から左側面33A1に及ぶ軸方向力が小さくなり難い。
【0050】
また、一般的に互いに対向する2部材による山部76が2つのみであるウェブワッシャー75の支持状態は、山部が3つ以上のウェブワッシャーと比べて安定し難い。しかし本実施形態の回転支持機構77では、互いに平行な平面からなる接触面71Aと左側面33A1によってウェブワッシャー75を挟み込んでいる。さらに
図7に示されたように接触面71Aと左側面33A1によってウェブワッシャー75が挟み込まれたときのウェブワッシャー75の左端部と各山部76の右端部との間の左右方向距離L3は、ウェブワッシャー75が自由状態にあるときの左右方向距離L1より大幅に小さい。そのため山部76の数が2つであるものの、接触面71Aと左側面33A1によってウェブワッシャー75を安定した状態で挟むことが可能である。
【0051】
さらにウェブワッシャー75の左側面である粗面75Aが頭部71の接触面71Aに接触している。そのため、ウェブワッシャー75の左側面の面粗度がウェブワッシャー75の右側面と同じ場合と比べて、ウェブワッシャー75と頭部71(接触面71A)との間の摩擦抵抗力が大きくなり易い。そのためウェブワッシャー75の左側面に粗面処理が施されていない場合と比べて、ウェブワッシャー75は左側面33A1に対して大きな軸方向力を付与し易い。
【0052】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【0053】
例えば、
図9及び
図10に示された変形例の態様で本発明が実施されてもよい。この変形例の回転支持機構(車両用回転支持機構)85は、構成要素としてウェブワッシャー75、フレームユニット86及びナット(押さえ部)90を有する。さらに本変形例のフレームユニット86は構成要素として、フレーム部材43、回転軸49、案内突起50、カラー51、案内突起55、カラー56、樹脂部材60及び回転中心軸87を有する。サイドフレーム47の側面板47Aに貫通孔58は設けられていない。さらに側面板47Aの左側面に、樹脂部材60の内部空間を貫通しながら左方へ直線的に延びる回転中心軸87の右端部が固定されている。回転中心軸87の左側部には雄ねじ部88が形成されている。
【0054】
図10に示されたように、樹脂部材60に第2ブラケット33の右側面が接触し、回転中心軸87が右側から第2ブラケット33の回転支持孔34を相対回転可能に貫通する。さらに回転中心軸87にウェブワッシャー75が装着され、且つ、回転中心軸87の雄ねじ部88にナット90が螺合される。このときウェブワッシャー75の粗面75A(左側面)にナット90の右側面である接触面90Aが接触し、各山部76の右端部に左側面33A1が接触する。即ち、接触面90Aと左側面33A1によってウェブワッシャー75が挟まれる。接触面90Aは左側面33A1と平行な平面である。さらに回転中心軸87に装着されたウェブワッシャー75が接触面90Aと左側面33A1によって挟まれることにより、上記実施形態と同様に、第1シートバック17が製造された時点においてウェブワッシャー75が初期へたりをおこしている。そのため本変形例の回転支持機構85も回転支持機構77と同様の作用効果を発揮可能である。
【0055】
また上記実施形態において、第2ブラケット(第2特定部材)33に貫通孔58を形成し、第2ブラケット33に案内突起55、樹脂部材60及びウェルドナット62を固定し、フレーム部材(第1特定部材)43のサイドフレーム47に回転支持孔(第1貫通孔)34及び円弧溝35を形成してもよい。この場合も案内突起55にカラー56が装着される。さらにこの場合は、ウェブワッシャー75が装着されたボルト70の雄ねじ部(回転中心軸)73が、回転支持孔34、樹脂部材60の内部空間及び貫通孔58を貫通してウェルドナット62に螺合される。
【0056】
また
図9及び
図10の変形例において、第2ブラケット(第2特定部材)33に案内突起55、樹脂部材60及び回転中心軸87を固定し、フレーム部材(第1特定部材)43のサイドフレーム47に回転支持孔(第1貫通孔)34及び円弧溝35を形成してもよい。この場合も案内突起55にカラー56が装着される。さらに回転中心軸87に装着されたウェブワッシャー75が、ナット90の接触面90Aと左側面33A1によって挟まれる。
【0057】
車両のフロントシートと、フロントシートに対して回転可能なアームレスト(回転部材)と、の間に本発明が適用されてもよい。
【0058】
車両のコンソールボックスと、コンソールボックスに対して回転可能な蓋(回転部材)と、の間に本発明が適用されてもよい。
【符号の説明】
【0059】
10 車両
15 リアシート(ベース部材)
20 フレーム部材
33 第2ブラケット(ブラケット)(第1特定部材)(第2特定部材)
33A1 左側面(第1面)
34 回転支持孔(第1貫通孔)
40 アームレスト(回転部材)
43 フレーム部材(第2特定部材)(第1特定部材)
62 ウェルドナット(ナット)
70 ボルト
71 頭部(押さえ部)
71A 接触面(第2面)
73 雄ねじ部(回転中心軸)
75 ウェブワッシャー
75A 粗面
75B 貫通孔(第2貫通孔)
76 山部
77 回転支持機構(車両用回転支持機構)
85 回転支持機構(車両用回転支持機構)
87 回転中心軸
90 ナット(押さえ部)