(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135144
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】トランジスタおよびトランジスタの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/338 20060101AFI20240927BHJP
H01L 21/768 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
H01L29/80 F
H01L29/80 U
H01L29/80 H
H01L21/90 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023045684
(22)【出願日】2023-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100136722
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼木 邦夫
(74)【代理人】
【識別番号】100174399
【弁理士】
【氏名又は名称】寺澤 正太郎
(72)【発明者】
【氏名】辻 幸洋
【テーマコード(参考)】
5F033
5F102
【Fターム(参考)】
5F033GG02
5F033HH08
5F033HH13
5F033JJ19
5F033KK04
5F033MM30
5F033NN32
5F033PP07
5F033PP15
5F033QQ13
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5F033RR06
5F033RR08
5F033XX33
5F102GB01
5F102GC01
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5F102GR07
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5F102GT01
5F102GV05
5F102GV06
5F102GV07
5F102GV08
5F102HC01
5F102HC02
5F102HC11
5F102HC16
5F102HC19
(57)【要約】
【課題】プラグが埋め込まれる開口のアスペクト比を大きくすることが可能なトランジスタおよびトランジスタの製造方法を提供する。
【解決手段】トランジスタは、半導体積層部と、半導体積層部上に設けられたソース電極およびドレイン電極、並びに半導体積層部上においてソース電極とドレイン電極との間に設けられたゲート電極と、ゲート電極、ソース電極およびドレイン電極のうちの一つである第1電極上に設けられた第1ポリシリコン膜と、半導体積層部上に設けられ、ゲート電極、ソース電極、ドレイン電極および第1ポリシリコン膜を覆うとともに、第1ポリシリコン膜上に形成された第1開口を有する誘電体層と、タングステンを含み、第1開口に埋め込まれて第1ポリシリコン膜に接する第1プラグと、誘電体層上に設けられ、第1プラグに接する第1配線と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体積層部と、
前記半導体積層部上に設けられたソース電極およびドレイン電極、並びに前記半導体積層部上において前記ソース電極と前記ドレイン電極との間に設けられたゲート電極と、
前記ゲート電極、前記ソース電極および前記ドレイン電極のうちの一つである第1電極上に設けられた第1ポリシリコン膜と、
前記半導体積層部上に設けられ、前記ゲート電極、前記ソース電極、前記ドレイン電極および前記第1ポリシリコン膜を覆うとともに、前記第1ポリシリコン膜上に形成された第1開口を有する誘電体層と、
タングステンを含み、前記第1開口に埋め込まれて前記第1ポリシリコン膜に接する第1プラグと、
前記誘電体層上に設けられ、前記第1プラグに接する第1配線と、
を備える、トランジスタ。
【請求項2】
前記第1電極のうち少なくとも前記第1ポリシリコン膜に接する部分は、組成中にニッケルを含む、請求項1に記載のトランジスタ。
【請求項3】
前記第1電極のうち少なくとも前記第1ポリシリコン膜に接する部分はニッケルのみからなる、請求項2に記載のトランジスタ。
【請求項4】
前記第1プラグはタングステンのみからなる、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のトランジスタ。
【請求項5】
前記第1開口の深さDと開口幅Aとの比(D/A)が2以上である、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のトランジスタ。
【請求項6】
前記ゲート電極、前記ソース電極および前記ドレイン電極のうちの他の一つである第2電極上に設けられた第2ポリシリコン膜と、
前記ゲート電極、前記ソース電極および前記ドレイン電極のうちの残りの一つである第3電極上に設けられた第3ポリシリコン膜と、
を更に備え、
前記誘電体層は、前記第2ポリシリコン膜および前記第3ポリシリコン膜を更に覆うとともに、前記第2ポリシリコン膜および前記第3ポリシリコン膜の上にそれぞれ形成された第2開口および第3開口を更に有し、
当該トランジスタは、
タングステンを含み、前記第2開口に埋め込まれて前記第2ポリシリコン膜に接する第2プラグと、
タングステンを含み、前記第3開口に埋め込まれて前記第3ポリシリコン膜に接する第3プラグと、
前記誘電体層上に設けられ、前記第2プラグおよび前記第3プラグにそれぞれ接する第2配線および第3配線と、
を更に備える、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のトランジスタ。
【請求項7】
前記第2電極のうち少なくとも前記第2ポリシリコン膜に接する部分、および前記第3電極のうち少なくとも前記第3ポリシリコン膜に接する部分は、組成中にニッケルを含む、請求項6に記載のトランジスタ。
【請求項8】
前記ゲート電極、前記ソース電極および前記ドレイン電極は組成中にニッケルを含み、
前記半導体積層部は、III族窒化物半導体を含み前記ゲート電極と接触する半導体層、III族窒化物半導体を含み前記ソース電極と接触する第1高濃度n型半導体領域、およびIII族窒化物半導体を含み前記ドレイン電極と接触する第2高濃度n型半導体領域を有する、請求項6に記載のトランジスタ。
【請求項9】
前記半導体積層部は、
前記第1高濃度n型半導体領域と前記第2高濃度n型半導体領域との間に設けられたチャネル層と、
前記チャネル層よりも大きいバンドギャップを有する電子供給層と、
を有する、請求項8に記載のトランジスタ。
【請求項10】
ソース電極およびドレイン電極、並びに前記ソース電極と前記ドレイン電極との間に位置するゲート電極を半導体積層部上に形成する電極形成工程と、
前記ゲート電極、前記ソース電極および前記ドレイン電極のうちの一つである第1電極上に第1ポリシリコン膜を形成するポリシリコン膜形成工程と、
前記ゲート電極、前記ソース電極、前記ドレイン電極および前記第1ポリシリコン膜を覆う誘電体層を前記半導体積層部上に形成する誘電体層形成工程と、
前記誘電体層において、前記第1ポリシリコン膜上に第1開口を形成する開口形成工程と、
タングステンを含む材料を前記第1開口に埋め込むことにより、前記第1ポリシリコン膜に接する第1プラグを形成するプラグ形成工程と、
前記第1プラグに接する第1配線を前記誘電体層上に形成する配線形成工程と、
を含む、トランジスタの製造方法。
【請求項11】
前記電極形成工程では、少なくとも前記第1ポリシリコン膜に接する部分の組成中にニッケルを含む前記第1電極を形成する、請求項10に記載のトランジスタの製造方法。
【請求項12】
前記電極形成工程では、少なくとも前記第1ポリシリコン膜に接する部分がニッケルのみからなる前記第1電極を形成する、請求項11に記載のトランジスタの製造方法。
【請求項13】
前記ポリシリコン膜形成工程では、成膜原料としてSiH4を用い、前記第1ポリシリコン膜を室温にて形成する、請求項11に記載のトランジスタの製造方法。
【請求項14】
前記プラグ形成工程では、タングステンのみからなる前記第1プラグを形成する、請求項10から請求項13のいずれか1項に記載のトランジスタの製造方法。
【請求項15】
前記開口形成工程では、前記第1開口の深さDと開口幅Aとの比(D/A)を2以上とする、請求項10から請求項13のいずれか1項に記載のトランジスタの製造方法。
【請求項16】
前記ポリシリコン膜形成工程では、前記ゲート電極、前記ソース電極および前記ドレイン電極のうちの他の一つである第2電極上に第2ポリシリコン膜を、前記ゲート電極、前記ソース電極および前記ドレイン電極のうちの残りの一つである第3電極上に第3ポリシリコン膜を更に形成し、
前記誘電体層形成工程では、前記第2ポリシリコン膜および前記第3ポリシリコン膜を更に覆う前記誘電体層を形成し、
前記開口形成工程では、前記誘電体層において、前記第2ポリシリコン膜の上に第2開口を、前記第3ポリシリコン膜の上に第3開口を更に形成し、
前記プラグ形成工程では、タングステンを含む材料を前記第2開口および前記第3開口に更に埋め込むことにより、前記第2ポリシリコン膜に接する第2プラグおよび前記第3ポリシリコン膜に接する第3プラグを更に形成し、
前記配線形成工程では、前記第2プラグに接する第2配線および前記第3プラグに接する第3配線を前記誘電体層上に更に形成する、請求項10から請求項13のいずれか1項に記載のトランジスタの製造方法。
【請求項17】
前記電極形成工程では、少なくとも前記第2ポリシリコン膜に接する部分の組成中にニッケルを含む前記第2電極、および少なくとも前記第3ポリシリコン膜に接する部分の組成中にニッケルを含む前記第3電極を形成する、請求項16に記載のトランジスタの製造方法。
【請求項18】
前記半導体積層部は、III族窒化物半導体を含む半導体層、III族窒化物半導体を含む第1高濃度n型半導体領域、およびIII族窒化物半導体を含む第2高濃度n型半導体領域を有し、
前記電極形成工程では、組成中にニッケルをそれぞれ含む前記ゲート電極、前記ソース電極および前記ドレイン電極を形成し、前記ゲート電極を前記半導体層にショットキ接触させ、前記ソース電極を前記第1高濃度n型半導体領域と接触させ、前記ドレイン電極を前記第2高濃度n型半導体領域と接触させる、請求項16に記載のトランジスタの製造方法。
【請求項19】
前記半導体積層部は、
前記第1高濃度n型半導体領域と前記第2高濃度n型半導体領域との間に設けられたチャネル層と、
前記チャネル層よりも大きいバンドギャップを有する電子供給層と、
を有する、請求項18に記載のトランジスタの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、トランジスタおよびトランジスタの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、高電子移動度トランジスタ(High Electron Mobility Transistor:HEMT)を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】「半導体・ディスプレイ産業における革新的製造技術(上)」、(株)テクノロジー・アライアンス・グループ、155頁
【非特許文献2】Hitoshi Itoh et al., "Mechanism for Initial Stage of SelectiveTungsten Growth Employing a WF6 and SiH4 Mixture", JapaneseJournal of Applied Physics,Vol.30, No.7, pp. 1525-1529 (1991)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
トランジスタにおいて、ゲート電極、ソース電極およびドレイン電極のうち少なくとも一つの電極に対し、該電極上に設けられた配線および該配線と該電極とを接続するプラグが設けられることがある。例えば、トランジスタを高周波数帯において使用する場合、ゲート抵抗を低減することが求められる。一方、トランジスタには小型化が求められ、ゲート電極の断面積は次第に小さくなっている。ゲート電極の断面積が小さくなるほどゲート抵抗は増大する。ゲート電極に沿った配線をゲート電極より上の配線層に形成し、配線層とゲート電極との間に介在する誘電体層を貫通するプラグを介してゲート電極を該配線と接続することにより、ゲート抵抗を低減することができる。
【0006】
しかしながら、誘電体層を貫通するプラグの形成には次のような問題がある。プラグを形成する際には、誘電体層に開口を形成し、例えば熱CVDといった成膜方法を用いて、該開口内に金属材料(例えばタングステン)を埋め込む。電極の小型化によってプラグの幅が小さくなると、開口の幅も小さくなる。開口のアスペクト比(深さを幅で除算した値)が大きいと、金属材料が開口内に十分に入っていかず、プラグを形成することが困難となる。よって、誘電体層を薄く形成して開口を浅くせざるを得ず、その場合、プラグおよび配線を、より多段に重ねて形成する必要が生じることがある。そうすると、プラグおよび配線を形成するための工程数が増加してしまう。
【0007】
本開示は、プラグが埋め込まれる開口のアスペクト比を大きくすることが可能なトランジスタおよびトランジスタの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するために、本開示の一態様に係るトランジスタは、半導体積層部と、半導体積層部上に設けられたソース電極およびドレイン電極、並びに半導体積層部上においてソース電極とドレイン電極との間に設けられたゲート電極と、ゲート電極、ソース電極およびドレイン電極のうちの一つである第1電極上に設けられた第1ポリシリコン膜と、半導体積層部上に設けられ、ゲート電極、ソース電極、ドレイン電極および第1ポリシリコン膜を覆うとともに、第1ポリシリコン膜上に形成された第1開口を有する誘電体層と、タングステンを含み、第1開口に埋め込まれて第1ポリシリコン膜に接する第1プラグと、誘電体層上に設けられ、第1プラグに接する第1配線と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、プラグが埋め込まれる開口のアスペクト比を大きくすることが可能なトランジスタおよびトランジスタの製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本開示の一実施形態に係るトランジスタの構成を示す断面図である。
【
図2】
図2の(a)、(b)および(c)は、トランジスタの製造方法における各工程を示す断面図である。
【
図3】
図3の(a)および(b)は、トランジスタの製造方法における各工程を示す断面図である。
【
図4】
図4の(a)および(b)は、トランジスタの製造方法における各工程を示す断面図である。
【
図5】
図5の(a)、(b)および(c)は、参考例に係るトランジスタの製造方法における各工程を示す断面図である。
【
図6】
図6の(a)、(b)および(c)は、参考例に係るトランジスタの製造方法における各工程を示す断面図である。
【
図7】
図7の(a)および(b)は、参考例に係るトランジスタの製造方法における各工程を示す断面図である。
【
図8】
図8は、一変形例として、配線形状を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[本開示の実施形態の説明]
最初に、本開示の実施形態の内容を列記して説明する。[1]本開示の一態様に係るトランジスタは、半導体積層部と、半導体積層部上に設けられたソース電極およびドレイン電極、並びに半導体積層部上においてソース電極とドレイン電極との間に設けられたゲート電極と、ゲート電極、ソース電極およびドレイン電極のうちの一つである第1電極上に設けられた第1ポリシリコン膜と、半導体積層部上に設けられ、ゲート電極、ソース電極、ドレイン電極および第1ポリシリコン膜を覆うとともに、第1ポリシリコン膜上に形成された第1開口を有する誘電体層と、タングステンを含み、第1開口に埋め込まれて第1ポリシリコン膜に接する第1プラグと、誘電体層上に設けられ、第1プラグに接する第1配線と、を備える。
【0012】
このトランジスタは、ゲート電極、ソース電極およびドレイン電極のうちの一つである第1電極上に第1ポリシリコン膜を備える。タングステンを含む第1プラグを形成する際、ポリシリコンは触媒となり、タングステンの材料(例えばWF6)を分解させる作用を有する。従って、タングステンを含む第1プラグの材料は、開口内において露出する第1ポリシリコン膜上に選択的に成長する。従って、開口のアスペクト比が大きい場合であっても第1プラグの材料が第1開口内に十分に入り込み、第1プラグを好適に形成することができる。よって、このトランジスタによれば、第1プラグが埋め込まれる開口のアスペクト比を大きくすることができる。その結果、プラグおよび配線の段数を削減し、プラグおよび配線を形成するための工程数の増加を抑えることができる。
【0013】
[2]上記[1]のトランジスタにおいて、第1電極のうち少なくとも第1ポリシリコン膜に接する部分は、組成中にニッケルを含んでもよい。第1ポリシリコン膜を形成する際、第1電極中のニッケルが作用し、第1ポリシリコン膜の材料(例えばSiH4)の分解が促進される。従って、第1ポリシリコン膜を容易に形成することができる。
【0014】
[3]上記[2]のトランジスタにおいて、第1電極のうち少なくとも第1ポリシリコン膜に接する部分はニッケルのみからなってもよい。この場合、第1ポリシリコン膜の材料の分解がより効果的に促進される。よって、第1ポリシリコン膜を更に容易に形成することができる。
【0015】
[4]上記[1]から[3]のいずれか一つのトランジスタにおいて、第1プラグはタングステンのみからなってもよい。この場合、ポリシリコンが触媒となり、第1開口内に第1プラグをより好適に形成することができる。
【0016】
[5]上記[1]から[4]のいずれか一つのトランジスタにおいて、第1開口の深さDと開口幅Aとの比(D/A)が2以上であってもよい。上記[1]から[4]のいずれか一つのトランジスタによれば、このようにアスペクト比が大きい第1開口であっても第1プラグを埋め込むことができる。
【0017】
[6]上記[1]から[5]のいずれか一つのトランジスタは、ゲート電極、ソース電極およびドレイン電極のうちの他の一つである第2電極上に設けられた第2ポリシリコン膜と、ゲート電極、ソース電極およびドレイン電極のうちの残りの一つである第3電極上に設けられた第3ポリシリコン膜と、を更に備えてもよい。誘電体層は、第2ポリシリコン膜および第3ポリシリコン膜を更に覆うとともに、第2ポリシリコン膜および第3ポリシリコン膜の上にそれぞれ形成された第2開口および第3開口を更に有してもよい。そして、当該トランジスタは、タングステンを含み、第2開口に埋め込まれて第2ポリシリコン膜に接する第2プラグと、タングステンを含み、第3開口に埋め込まれて第3ポリシリコン膜に接する第3プラグと、誘電体層上に設けられ、第2プラグおよび第3プラグにそれぞれ接する第2配線および第3配線と、を更に備えてもよい。この場合、ゲート電極、ソース電極およびドレイン電極の全ての電極に対して配線およびプラグを設けることができる。例えば、トランジスタを高周波数帯において使用する場合、ゲート信号に重畳するノイズを低減することが求められる。一般的に、ソース電極は基準電位線(GND線)に接続されるので、第1配線、第2配線および第3配線のうちゲート電極に対応する配線を、第1配線、第2配線および第3配線のうちソース電極に対応する配線によって挟むことにより、ゲート信号に重畳するノイズを低減することができる。
【0018】
[7]上記[6]のトランジスタにおいて、第2電極のうち少なくとも第2ポリシリコン膜に接する部分、および第3電極のうち少なくとも第3ポリシリコン膜に接する部分は、組成中にニッケルを含んでもよい。第2ポリシリコン膜および第3ポリシリコン膜それぞれを形成する際、第2電極および第3電極それぞれのニッケルが作用し、第2ポリシリコン膜および第3ポリシリコン膜それぞれの材料(例えばSiH4)の分解が促進される。従って、第2ポリシリコン膜および第3ポリシリコン膜を容易に形成することができる。
【0019】
[8]上記[6]または[7]のトランジスタにおいて、ゲート電極、ソース電極およびドレイン電極は組成中にニッケルを含み、半導体積層部は、III族窒化物半導体を含みゲート電極と接触する半導体層、III族窒化物半導体を含みソース電極と接触する第1高濃度n型半導体領域、およびIII族窒化物半導体を含みドレイン電極と接触する第2高濃度n型半導体領域を有してもよい。組成中にニッケルを含む電極は、例えば低いドーパント濃度を有するか若しくはアンドープである例えばGaNまたはAlGaNといったIII族窒化物半導体とはショットキ接触を成すが、例えば高濃度n型GaNといった高濃度n型III族窒化物半導体との間では十分に低いコンタクト抵抗を有する。従って、上記[8]のトランジスタによれば、ゲート電極、ソース電極およびドレイン電極が組成中にニッケルを含む場合であっても、これらの電極と半導体積層部との好適な接触形態を得ることができる。加えて、ゲート電極、ソース電極およびドレイン電極それぞれのニッケルが作用し、第1ポリシリコン膜、第2ポリシリコン膜および第3ポリシリコン膜それぞれの材料(例えばSiH4)の分解が促進される。
【0020】
[9]上記[8]のトランジスタにおいて、半導体積層部は、第1高濃度n型半導体領域と第2高濃度n型半導体領域との間に設けられたチャネル層と、チャネル層よりも大きいバンドギャップを有する電子供給層と、を有してもよい。この場合、高電子移動度トランジスタ(HEMT)を得ることができる。
【0021】
[10]本開示の一態様に係るトランジスタの製造方法は、ソース電極およびドレイン電極、並びにソース電極とドレイン電極との間に位置するゲート電極を半導体積層部上に形成する電極形成工程と、ゲート電極、ソース電極およびドレイン電極のうちの一つである第1電極上に第1ポリシリコン膜を形成するポリシリコン膜形成工程と、ゲート電極、ソース電極、ドレイン電極および第1ポリシリコン膜を覆う誘電体層を半導体積層部上に形成する誘電体層形成工程と、誘電体層において、第1ポリシリコン膜上に第1開口を形成する開口形成工程と、タングステンを含む材料を第1開口に埋め込むことにより、第1ポリシリコン膜に接する第1プラグを形成するプラグ形成工程と、第1プラグに接する第1配線を誘電体層上に形成する配線形成工程と、を含む。
【0022】
この製造方法では、電極形成工程において、ゲート電極、ソース電極およびドレイン電極のうちの一つである第1電極上に第1ポリシリコン膜を形成する。プラグ形成工程においてタングステンを含む第1プラグを形成する際、ポリシリコンは触媒となり、タングステンの材料(例えばWF6)を分解させる作用を有する。従って、タングステンを含む第1プラグの材料は、開口内において露出する第1ポリシリコン膜上に選択的に成長する。従って、開口のアスペクト比が大きい場合であっても第1プラグの材料が第1開口内に十分に入り込み、第1プラグを好適に形成することができる。よって、この製造方法によれば、第1プラグが埋め込まれる開口のアスペクト比を大きくすることができる。その結果、プラグおよび配線の段数を削減し、プラグおよび配線を形成するための工程数の増加を抑えることができる。
【0023】
[11]上記[10]の製造方法において、電極形成工程では、少なくとも第1ポリシリコン膜に接する部分の組成中にニッケルを含む第1電極を形成してもよい。第1ポリシリコン膜を形成する際、第1電極中のニッケルが作用し、第1ポリシリコン膜の材料(例えばSiH4)の分解が促進される。従って、第1ポリシリコン膜を容易に形成することができる。
【0024】
[12]上記[11]の製造方法において、電極形成工程では、少なくとも第1ポリシリコン膜に接する部分がニッケルのみからなる第1電極を形成してもよい。この場合、第1ポリシリコン膜の材料の分解がより効果的に促進される。よって、第1ポリシリコン膜を更に容易に形成することができる。
【0025】
[13]上記[11]または[12]の製造方法において、ポリシリコン膜形成工程では、成膜原料としてSiH4を用い、第1ポリシリコン膜を室温にて形成してもよい。成膜原料としてSiH4を用いる場合、第1電極中のニッケルがより効果的に作用し、第1ポリシリコン膜の材料(SiH4)の分解がより一層促進される。よって、室温にて第1ポリシリコン膜を容易に形成することができる。
【0026】
[14]上記[10]から[13]のいずれか1つの製造方法において、プラグ形成工程では、タングステンのみからなる第1プラグを形成してもよい。この場合、ポリシリコンが触媒となり、第1開口内に第1プラグをより好適に形成することができる。
【0027】
[15]上記[10]から[14]のいずれか1つの製造方法において、開口形成工程では、第1開口の深さDと開口幅Aとの比(D/A)を2以上としてもよい。上記[10]から[14]のいずれか一つの製造方法によれば、このようにアスペクト比が大きい第1開口であっても第1プラグを埋め込むことができる。
【0028】
[16]上記[10]から[15]のいずれか1つの製造方法において、ポリシリコン膜形成工程では、ゲート電極、ソース電極およびドレイン電極のうちの他の一つである第2電極上に第2ポリシリコン膜を、ゲート電極、ソース電極およびドレイン電極のうちの残りの一つである第3電極上に第3ポリシリコン膜を更に形成し、誘電体層形成工程では、第2ポリシリコン膜および第3ポリシリコン膜を更に覆う誘電体層を形成し、開口形成工程では、誘電体層において、第2ポリシリコン膜の上に第2開口を、第3ポリシリコン膜の上に第3開口を更に形成し、プラグ形成工程では、タングステンを含む材料を第2開口および第3開口に更に埋め込むことにより、第2ポリシリコン膜に接する第2プラグおよび第3ポリシリコン膜に接する第3プラグを更に形成し、配線形成工程では、第2プラグに接する第2配線および第3プラグに接する第3配線を誘電体層上に更に形成してもよい。この場合、ゲート電極、ソース電極およびドレイン電極の全ての電極に対して配線およびプラグを設けることができる。例えば、第1配線、第2配線および第3配線のうちゲート電極に対応する配線を、第1配線、第2配線および第3配線のうちソース電極に対応する配線によって挟むことにより、ゲート信号に重畳するノイズを低減することができる。
【0029】
[17]上記[16]の製造方法において、電極形成工程では、少なくとも第2ポリシリコン膜に接する部分の組成中にニッケルを含む第2電極、および少なくとも第3ポリシリコン膜に接する部分の組成中にニッケルを含む第3電極を形成してもよい。第2ポリシリコン膜および第3ポリシリコン膜それぞれを形成する際、第2電極および第3電極それぞれのニッケルが作用し、第2ポリシリコン膜および第3ポリシリコン膜それぞれの材料(例えばSiH4)の分解が促進される。従って、第2ポリシリコン膜および第3ポリシリコン膜を容易に形成することができる。
【0030】
[18]上記[16]または[17]の製造方法において、半導体積層部は、III族窒化物半導体を含む半導体層、III族窒化物半導体を含む第1高濃度n型半導体領域、およびIII族窒化物半導体を含む第2高濃度n型半導体領域を有し、電極形成工程では、組成中にニッケルをそれぞれ含むゲート電極、ソース電極およびドレイン電極を形成し、ゲート電極を半導体層にショットキ接触させ、ソース電極を第1高濃度n型半導体領域と接触させ、ドレイン電極を第2高濃度n型半導体領域と接触させてもよい。組成中にニッケルを含む電極は、例えば低いドーパント濃度を有するか若しくはアンドープである例えばGaNまたはAlGaNといったIII族窒化物半導体とはショットキ接触を成すが、例えば高濃度n型GaNといった高濃度n型III族窒化物半導体との間では十分に低いコンタクト抵抗を有する。従って、上記[18]の製造方法によれば、ゲート電極、ソース電極およびドレイン電極が組成中にニッケルを含む場合であっても、これらの電極と半導体積層部との好適な接触形態を得ることができる。加えて、ゲート電極、ソース電極およびドレイン電極それぞれのニッケルが作用し、第1ポリシリコン膜、第2ポリシリコン膜および第3ポリシリコン膜それぞれの材料(例えばSiH4)の分解が促進される。
【0031】
[19]上記[18]の製造方法において、半導体積層部は、第1高濃度n型半導体領域と第2高濃度n型半導体領域との間に設けられたチャネル層と、チャネル層よりも大きいバンドギャップを有する電子供給層と、を有してもよい。この場合、高電子移動度トランジスタ(HEMT)を得ることができる。
【0032】
[本開示の実施形態の詳細]
本実施形態に係るトランジスタおよびトランジスタの製造方法の具体例を、必要により図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されず、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。以下の説明では、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0033】
図1は、本開示の一実施形態に係るトランジスタ10の構成を示す断面図である。
図1には、説明の便宜のためXYZ直交座標系が併せて示されている。本実施形態のトランジスタ10は、GaNおよびAlGaNといったIII族窒化物半導体を主に含む高電子移動度トランジスタ(HEMT)である。トランジスタ10は、低雑音、高周波における高利得、および高耐圧といった特徴から、パワーアンプ(例えば、携帯基地局用パワーアンプ)に用いられる。トランジスタ10は、例えば10GHzから80GHzまでの高い周波数帯において使用される。トランジスタ10は、基板20、半導体積層部30、ゲート電極41、ソース電極42、ドレイン電極43、ポリシリコン膜51,52および53、誘電体層61および62、プラグ71,72および73、並びに配線81,82,83および84を備える。
【0034】
基板20は、主面21および裏面22を有する板状の部材である。基板20は、結晶成長用の基板である。基板20は、半導体基板であってもよい。基板20は、例えばSiC基板またはGaN基板である。基板20は、半導体を除く他の材料、例えばサファイアから成ってもよい。基板20の厚み方向はZ方向に沿っており、主面21および裏面22はX方向およびY方向に沿って延在している。
【0035】
半導体積層部30は、チャネル層31、電子供給層(バリア層)32、第1高濃度n型半導体領域33、および第2高濃度n型半導体領域34を有する。チャネル層31は、基板20の主面21上にエピタキシャル成長した半導体層である。チャネル層31は、例えば窒化ガリウム(GaN)といったIII族窒化物半導体を主に含み、一例ではIII族窒化物半導体のみからなる。チャネル層31の厚さは、例えば1000nm以上3000nm以下である。
【0036】
電子供給層32は、チャネル層31上にエピタキシャル成長した半導体層であって、チャネル層31よりも大きなバンドギャップを有する。チャネル層31および電子供給層(バリア層)32の積層方向は、Z方向に沿っている。電子供給層32は、III族窒化物半導体を主に含み、一例では、n型不純物を除いてIII族窒化物半導体のみからなる。このようなIII族窒化物半導体としては、例えばAlGaNまたはInAlNが挙げられる。電子供給層32の厚さは、例えば10nm以上30nm以下である。ピエゾ効果により、チャネル層31と電子供給層32との界面に2次元電子ガス(2DEG)が生じる。これにより、チャネル層31における電子供給層32側の表面近傍に、チャネル領域31aが形成される。電子供給層32は、低濃度のn型か、またはアンドープである。電子供給層32のn型不純物濃度は、例えば0cm-3以上1016cm-3以下である。
【0037】
第1高濃度n型半導体領域33および第2高濃度n型半導体領域34は、電子供給層32、または電子供給層32に加えてチャネル層31の一部がエッチングされることにより形成された凹部(リセス)30a,30b内にそれぞれエピタキシャル成長した領域である。第1高濃度n型半導体領域33および第2高濃度n型半導体領域34は、高濃度のn型III族窒化物半導体を主に含み、一例では高濃度のn型III族窒化物半導体のみからなる。第1高濃度n型半導体領域33および第2高濃度n型半導体領域34は、例えば高濃度のn型GaNのみからなる。n型不純物は、例えばケイ素(Si)である。第1高濃度n型半導体領域33および第2高濃度n型半導体領域34のn型不純物濃度は、例えば1019cm-3以上1021cm-3以下である。
【0038】
第2高濃度n型半導体領域34は、第1高濃度n型半導体領域33に対し、チャネル層31及び電子供給層32の積層方向と交差する方向(例えばX方向)に並んでいる。そして、前述したチャネル層31の一部および電子供給層32は、第1高濃度n型半導体領域33と第2高濃度n型半導体領域34との間に設けられている。第1高濃度n型半導体領域33および第2高濃度n型半導体領域34の厚さは、電子供給層32の厚さ以上であり、電子供給層32とチャネル層31とを合わせた厚さよりも薄い。従って、第1高濃度n型半導体領域33および第2高濃度n型半導体領域34の側面は、チャネル領域31aと接する。第1高濃度n型半導体領域33および第2高濃度n型半導体領域34の厚さは例えば20nm以上100nm以下である。
【0039】
誘電体層61は、半導体積層部30上に設けられ、半導体積層部30の表面を覆っている。誘電体層61は、無機誘電体を主に含む。誘電体層61は、例えば窒化シリコン(SiN)、酸化シリコン(SiO2)、もしくは酸化窒化シリコン(SiON)といったシリコン化合物を主に含む。一実施例では、誘電体層61はSiN、SiO2またはSiONのみからなる。誘電体層61は、ゲート電極41のためのゲート開口61a、ソース電極42のためのソース開口61b、およびドレイン電極43のためのドレイン開口61cを有する。ゲート開口61aは電子供給層32上に設けられている。ソース開口61bには第1高濃度n型半導体領域33が埋め込まれている。ドレイン開口61cには第2高濃度n型半導体領域34が埋め込まれている。
【0040】
ゲート電極41、ソース電極42およびドレイン電極43は、半導体積層部30上に設けられている。ゲート電極41は、X方向においてソース電極42とドレイン電極43との間に位置する。ゲート電極41、ソース電極42およびドレイン電極43は、これらの並び方向(例えばX方向)と交差する方向(例えばY方向)に沿って延在している。ゲート電極41は、ゲート開口61aに埋め込まれ、T字状といった断面形状を有する。ゲート電極41は、ゲート開口61aを介して電子供給層32と接する。ゲート電極41は、電子供給層32とショットキ接触を成す。
【0041】
ゲート電極41のうち少なくとも電子供給層32と接触する部分は、電子供給層32とショットキ接触を成す材料を含む。電子供給層32のIII族窒化物半導体とショットキ接触を成す材料は、例えばニッケル(Ni)である。また、ゲート電極41のうち電子供給層32とは反対側の表面を構成する部分、言い換えると、ゲート電極41のうち少なくともポリシリコン膜51と接する部分は、Niを含む。一実施例では、ゲート電極41のうち少なくともポリシリコン膜51と接する部分はNiのみからなる。或いは、別の実施例では、ゲート電極41の全体が、組成中にNiを含むか、またはNiのみからなる。
【0042】
ソース電極42は、ソース開口61bから露出する第1高濃度n型半導体領域33上に設けられ、第1高濃度n型半導体領域33と接触する。ソース電極42のうち少なくとも第1高濃度n型半導体領域33と接触する部分は、第1高濃度n型半導体領域33と低い接触抵抗を成す材料を含む。第1高濃度n型半導体領域33の高濃度n型III族窒化物半導体と低い接触抵抗を成す材料は、例えばNiである。また、ソース電極42のうち第1高濃度n型半導体領域33とは反対側の表面を構成する部分、言い換えると、ソース電極42のうち少なくともポリシリコン膜52と接する部分はNiを含む。一実施例では、ソース電極42のうち少なくともポリシリコン膜52と接する部分はNiのみからなる。或いは、別の実施例では、ソース電極42の全体が、組成中にNiを含むか、またはNiのみからなる。なお、ソース電極42は、第1高濃度n型半導体領域33の一部がエッチングされて形成された凹部上に設けられてもよい。
【0043】
ドレイン電極43は、ドレイン開口61cから露出する第2高濃度n型半導体領域34上に設けられ、第2高濃度n型半導体領域34と接触する。ドレイン電極43のうち少なくとも第2高濃度n型半導体領域34と接触する部分は、第2高濃度n型半導体領域34と低い接触抵抗を成す材料を含む。第2高濃度n型半導体領域34の高濃度n型III族窒化物半導体と低い接触抵抗を成す材料は、例えばNiである。また、ドレイン電極43のうち第2高濃度n型半導体領域34とは反対側の表面を構成する部分、言い換えると、ドレイン電極43のうち少なくともポリシリコン膜53と接する部分はNiを含む。一実施例では、ドレイン電極43のうち少なくともポリシリコン膜53と接する部分はNiのみからなる。或いは、別の実施例では、ドレイン電極43の全体が、組成中にNiを含むか、またはNiのみからなる。なお、ドレイン電極43は、第2高濃度n型半導体領域34の一部がエッチングされて形成された凹部上に設けられてもよい。
【0044】
本実施形態において、ゲート電極41、ソース電極42およびドレイン電極43のうち一つは、本開示における第1電極に相当する。ゲート電極41、ソース電極42およびドレイン電極43のうち残りの二つは、本開示における第2電極および第3電極に相当する。
【0045】
ポリシリコン膜51は、ゲート電極41上に設けられている。ポリシリコン膜52は、ソース電極42上に設けられている。ポリシリコン膜53は、ドレイン電極43上に設けられている。このように、ポリシリコン膜51,52および53は、ゲート電極41、ソース電極42およびドレイン電極43の上にそれぞれ選択的に形成されている。また、ポリシリコン膜51,52および53それぞれは、平面視にて、ゲート電極41、ソース電極42およびドレイン電極43それぞれからはみ出すことなく且つ欠けることなく重なっている。ポリシリコン膜51,52および53それぞれは、ゲート電極41、ソース電極42およびドレイン電極43それぞれに沿ってY方向に延在している。
【0046】
ポリシリコン膜51,52および53は、互いに電気的に分離している。ポリシリコン膜51,52および53は、ポリシリコン(多結晶シリコン)のみからなる。一例では、ポリシリコン膜51,52および53それぞれは、ゲート電極41、ソース電極42およびドレイン電極43それぞれと接する。ポリシリコン膜51,52および53の厚さは、例えば5nm以上10nm以下である。
【0047】
本実施形態において、ポリシリコン膜51,52および53のうち第1電極上に設けられたポリシリコン膜は、本開示における第1ポリシリコン膜に相当する。ポリシリコン膜51,52および53のうち第2電極上に設けられたポリシリコン膜は、本開示における第2ポリシリコン膜に相当する。ポリシリコン膜51,52および53のうち第3電極上に設けられたポリシリコン膜は、本開示における第3ポリシリコン膜に相当する。
【0048】
誘電体層62は、半導体積層部30上且つ誘電体層61上に設けられている。誘電体層62は、ゲート電極41、ソース電極42およびドレイン電極43、並びにポリシリコン膜51,52および53を覆う。誘電体層62は、無機誘電体を主に含む。誘電体層62は、例えば窒化シリコン(SiN)、酸化シリコン(SiO2)、もしくは酸化窒化シリコン(SiON)といったシリコン化合物を主に含む。一実施例では、誘電体層62はSiN、SiO2またはSiONのみからなる。誘電体層62は、誘電体層61と同じ材料によって構成されてもよい。
【0049】
誘電体層62は、ポリシリコン膜51上に形成された開口(コンタクトホール)62a、ポリシリコン膜52上に形成された開口(コンタクトホール)62b、およびポリシリコン膜53上に形成された開口(コンタクトホール)62cを有する。平面視において、開口62a,62bおよび62cそれぞれは、ゲート電極41、ソース電極42およびドレイン電極43それぞれに沿ってY方向に延在している。また、開口62a,62bおよび62cは、誘電体層62の厚み方向(Z方向)において誘電体層62を貫通している。言い換えると、誘電体層62の厚み方向(Z方向)における開口62a,62bおよび62cそれぞれの一端は、ポリシリコン膜51,52および53それぞれに達している。誘電体層62の厚み方向(Z方向)における開口62a,62bおよび62cそれぞれの他端は、誘電体層61とは反対側の誘電体層62の表面に達している。開口62a,62bおよび62cのX方向の幅は、誘電体層62の表面からポリシリコン膜51,52および53に近づくにつれて次第に狭くなっている。
【0050】
開口62a,62bおよび62cの深さDは例えば1000nm以上4000nm以下である。また、開口62a,62bおよび62cの開口幅Aは例えば500nm以上2000nm以下である。なお、ここでいう開口幅Aとは、誘電体層62の厚み方向(Z方向)における開口62a,62bおよび62cの両端のうち、ポリシリコン膜51,52および53とは反対側の一端(すなわち誘電体層62の表面に位置する一端)における開口62a,62bおよび62cのX方向の幅を、Y方向にわたって平均した値を意味する。また、開口62a,62bおよび62cのアスペクト比(D/A)は、例えば2以上8以下である。
【0051】
本実施形態において、開口62a,62bおよび62cのうち第1ポリシリコン膜上に形成された開口は、本開示における第1開口に相当する。開口62a,62bおよび62cのうち第2ポリシリコン膜上に形成された開口は、本開示における第2ポリシリコン膜に相当する。開口62a,62bおよび62cのうち第3ポリシリコン膜上に形成された開口は、本開示における第3開口に相当する。
【0052】
プラグ71,72および73それぞれは、開口62a,62bおよび62cそれぞれに埋め込まれてポリシリコン膜51,52および53それぞれに接する。平面視において、プラグ71,72および73それぞれは、ゲート電極41、ソース電極42およびドレイン電極43それぞれに沿ってY方向に延在している。プラグ71,72および73は、金属製であり、タングステン(W)を含む。一例では、プラグ71,72および73はWのみからなる。誘電体層62の厚み方向(Z方向)において、プラグ71,72および73それぞれの一端はポリシリコン膜53,54および55それぞれと接触しており、プラグ71,72および73の他端は誘電体層62から露出している。
【0053】
本実施形態において、プラグ71,72および73のうち第1開口内に埋め込まれているプラグは、本開示における第1プラグに相当する。プラグ71,72および73のうち第2開口内に埋め込まれているプラグは、本開示における第2プラグに相当する。プラグ71,72および73のうち第3開口内に埋め込まれているプラグは、本開示における第3プラグに相当する。
【0054】
配線81,82および83は、金属膜であって、誘電体層62上に設けられている。配線81,82および83それぞれは、71,72および73それぞれの他端と接する。これにより、配線81,82および83それぞれは、ゲート電極41、ソース電極42およびドレイン電極43それぞれと電気的に接続される。配線81,82および83は、例えばアルミニウム(Al)を含み、一例ではAlのみからなる。平面視において、配線81,82および83それぞれは、ゲート電極41、ソース電極42およびドレイン電極43それぞれに沿ってY方向に延在している。配線81,82および83の厚みは、例えば1000nm以上5000nm以下である。
【0055】
配線84は、金属膜であって、基板20の裏面22上に設けられている。また、配線84は、基板20の裏面22からソース電極42に達する開口91を埋め込んでおり、ソース電極42と接することによりソース電極42と電気的に接続される。配線84は、例えば金(Au)といった金属からなる。
【0056】
以上の構成を備える本実施形態のトランジスタ10の製造方法について説明する。
図2、
図3および
図4は、トランジスタ10の製造方法における各工程を示す断面図である。
【0057】
まず、
図2の(a)部に示されるように、基板20の主面21上にチャネル層31および電子供給層32を順次エピタキシャル成長させる。次に、電子供給層32上に誘電体層61を例えば化学気相堆積法(ChemicalVapor Deposition:CVD)により形成する。フォトリソグラフィ法を用いて、ソース電極42およびドレイン電極43に対応する開口を有する第1レジストパターンを誘電体層61上に形成する。この第1レジストパターンをマスクとして用い、反応性イオンエッチングにより誘電体層61のソース開口61bおよびドレイン開口61cを形成する。更に、そのまま反応性イオンエッチングを継続することにより、電子供給層32を貫通してチャネル層31に達する凹部30a,30bを形成する。第1高濃度n型半導体領域33および第2高濃度n型半導体領域34の半導体材料を凹部30a,30b内に選択的に再成長させることにより、第1高濃度n型半導体領域33および第2高濃度n型半導体領域34を形成する。これにより、チャネル層31、電子供給層32、第1高濃度n型半導体領域33および第2高濃度n型半導体領域34を有する半導体積層部30が形成される。その後、第1レジストパターンを、有機溶剤を用いて除去する。以上の工程により、半導体積層部30が形成される。リフトオフ法を用いて、第1高濃度n型半導体領域33上にソース電極42を形成すると共に、第2高濃度n型半導体領域34上にドレイン電極43を形成する(電極形成工程)。フォトリソグラフィ法を用いて、ゲート電極41に対応する開口を有する第2レジストパターンを誘電体層61上に形成する。この第2レジストパターンをマスクとして用い、反応性イオンエッチングにより誘電体層61のゲート開口61aを形成する。その後、第2レジストパターンを、有機溶剤を用いて除去する。リフトオフ法を用いて、ゲート開口61a内の電子供給層32上からその周囲の誘電体層61上にわたって、ゲート電極41を例えば真空蒸着法により形成する(電極形成工程)。
【0058】
次に、
図2の(b)部に示されるように、ゲート電極41上、ソース電極42上およびドレイン電極43上に選択的にポリシリコンを堆積させることによって、ポリシリコン膜51,52および53を形成する(ポリシリコン膜形成工程)。この工程では、プラズマCVD用のチャンバ内にポリシリコンの材料、例えばモノシラン(SiH
4)を導入する。このとき、Niを含む(或いはNiのみからなる)金属の表面では、ポリシリコンの材料(例えばSiH
4)が室温にて分解する(非特許文献1を参照)。上述したように、ゲート電極41のうち少なくともポリシリコン膜51と接する部分、ソース電極42のうち少なくともポリシリコン膜52と接する部分、およびドレイン電極43のうち少なくともポリシリコン膜53と接する部分はNiを含むので、ゲート電極41上、ソース電極42上およびドレイン電極43上に、室温にて選択的にポリシリコンが堆積する。
【0059】
続いて、
図2の(c)部に示されるように、ゲート電極41、ソース電極42、ドレイン電極43、並びにポリシリコン膜51,52および53を覆う誘電体層62を、半導体積層部30上に形成する(誘電体層形成工程)。この工程では、誘電体層62を例えばプラズマCVD法を用いて形成する。ゲート電極41上、ソース電極42上およびドレイン電極43並びにポリシリコン膜51,52および53によって生じる半導体積層部30上の凹凸形状は、誘電体層62の表面に転写される。その後、化学的機械研磨(CMP)法を用いて誘電体層62の表面を平坦化する。
【0060】
続いて、
図3の(a)部に示されるように、誘電体層62において、ポリシリコン膜51に達する開口62aをポリシリコン膜51上に形成し、ポリシリコン膜52に達する開口62bをポリシリコン膜52上に形成し、ポリシリコン膜53に達する開口62cをポリシリコン膜53上に形成する(開口形成工程)。この工程では、開口62a,62bおよび62cを、ドライエッチングといった異方性エッチングにより形成する。誘電体層62がシリコン化合物を含む場合、エッチングガスは例えばフッ素系ガスである。上述したように、開口62a,62bおよび62cのアスペクト比(D/A)は例えば2以上8以下である。
【0061】
続いて、
図3の(b)部に示されるように、Wを含む材料を開口62a,62bおよび62cに埋め込むことにより、ポリシリコン膜51に接するプラグ71、ポリシリコン膜52に接するプラグ72、およびポリシリコン膜53に接するプラグ73を形成する(プラグ形成工程)。このとき、ポリシリコン膜51,52および53に含まれるポリシリコンは触媒となり、Wの材料(例えばWF
6)を下の反応式(1)のとおり分解させる(非特許文献2を参照)。
WF
6+3Si→W+3SiF
2 ・・・(1)
従って、Wを含むプラグ71,72および73の材料は、開口62a,62bおよび62c内においてそれぞれ露出するポリシリコン膜51,52および53上に選択的に成長する。従って、プラグ71,72および73の材料は、開口62a,62bおよび62cを除く誘電体層62上には殆ど成長しない。
【0062】
続いて、
図4の(a)部に示されるように、プラグ71,72および73にそれぞれ接する配線81,82および83を、誘電体層62上に形成する(配線形成工程)。この工程では、配線81,82および83の金属材料(例えばAl)を、例えばスパッタリング法により誘電体層62上に一様に成膜したのち、フォトリソグラフィ技術を用いてその金属膜の上にレジストマスクを形成し、金属膜の不要部分をドライエッチングにより除去する。エッチングガスは例えば塩素ガスである。
【0063】
続いて、
図4の(b)部に示されるように、基板20の裏面22を研磨して基板20の厚みを小さくした後、基板20の裏面22からソース電極42に至る開口91を、基板20および半導体積層部30に形成する。この工程では、開口91を例えばドライエッチングといった異方性エッチングにより形成する。そして、裏面22上の全面に配線84を形成するとともに、配線84の金属材料により開口91を埋め込む。以上の工程を経て、本実施形態のトランジスタ10が作製される。
【0064】
以上の構成を備える本実施形態のトランジスタ10およびその製造方法によって得られる効果について、参考例との比較に基づいて説明する。
図5、
図6および
図7は、参考例に係るトランジスタの製造方法における各工程を示す断面図である。
【0065】
まず、
図5の(a)部に示されるように、基板20の主面21上にチャネル層31および電子供給層32を順次成長させる。次に、電子供給層32上に誘電体層61を形成する。誘電体層61のソース開口61bおよびドレイン開口61cを形成したのち、凹部30a,30bを形成する。以上の工程はトランジスタ10の製造方法と同じである。
【0066】
その後、凹部30a,30bの形成に使用したレジストマスクをそのまま用いる真空蒸着法およびリフトオフ法により、ソース電極45およびドレイン電極46を形成する。具体的には、オーミック接触のためのチタン(Ti)層451および461それぞれを、凹部30aおよび30bそれぞれの内部に形成する。次いで、アルミニウム(Al)層452および462それぞれを、Ti層451および461それぞれの上に形成する。そして、モリブデン(Mo)層453および463それぞれを、Al層452および462それぞれの上に形成する。金(Au)層454および464それぞれを、Mo層453および463それぞれの上に形成する。Ti層451、Al層452、Mo層453およびAu層454は、ソース電極45を構成する。Ti層461、Al層462、Mo層463およびAu層464は、ドレイン電極46を構成する。
【0067】
続いて、誘電体層61にゲート開口61aを形成する。ゲート開口61a内の電子供給層32上に、ゲート電極41の一部となるNi層441を真空蒸着により形成する。Ni層441は、電子供給層32とショットキ接触をなす。続いて、ゲート電極41の残部となるAu層442を、真空蒸着によりNi層441上に形成する。Au層442は、Ni層441とプラグ71との間の抵抗を低減する。ゲート電極41の周囲の不要なNiおよびAuは、リフトオフにより除去される。
【0068】
続いて、
図5の(b)に示されるように、ゲート電極44、ソース電極45およびドレイン電極46を覆う誘電体層62を、誘電体層61上に形成する。そして、
図5の(c)に示されるように、CMP法を用いて誘電体層62の表面を平坦化する。
図6の(a)に示されるように、誘電体層62において、Au層442,454および464それぞれに達する開口62a,62bおよび62cそれぞれを、Au層442,454および464それぞれの上に形成する。参考例においては、開口62a,62bおよび62cのアスペクト比(D/A)は1程度である。
図6の(b)に示されるように、WF
6ガスを原料ガスとする熱CVDによりW膜74を誘電体層62上に一様に成膜する。このとき、Wは原料ガスWF
6と還元ガスH
2との下記の反応式(2)により生成される。
WF
6+3H
2→W+6HF ・・・(2)
W膜74は、開口62a,62bおよび62c内にも埋め込まれ、Au層442,454および464に接触する。その後、W膜74のうち、開口62a,62bおよび62cを除く誘電体層62上の領域に堆積した部分を除去するため、
図6の(c)に示されるように、例えばフッ素系ガスを用いる等方性エッチングによりW膜74をエッチバックする。これにより、Au層442に接するプラグ71、Au層454に接するプラグ72、およびAu層464に接するプラグ73が残る。
【0069】
以降、
図7の(a)に示されるように、プラグ71,72および73にそれぞれ接する配線81,82および83を、誘電体層62上に形成する。
図7の(b)部に示されるように、基板20の裏面22を研磨して基板20の厚みを小さくした後、基板20の裏面22からソース電極42に至る開口91を形成する。そして、裏面22上の全面に配線84を形成するとともに、配線84の金属材料により開口91を埋め込む。
【0070】
参考例に係るトランジスタの製造方法は、次に述べる課題を有する。ゲート電極44、ソース電極45およびドレイン電極46(特にゲート電極44)の小型化によってプラグ71,72および73の幅が小さくなると、開口62a,62bおよび62cの幅も小さくなる。開口62a,62bおよび62cのアスペクト比が大きいと、W膜74を形成する際にWF6ガスが開口62a,62bおよび62c内に十分に入っていかず、プラグ71,72および73とAu層442,454および464との間に空隙ができてしまう。よって、誘電体層62を薄く形成して開口62a,62bおよび62cを浅く(すなわちアスペクト比を小さく)せざるを得ず、その場合、プラグ71,72および73および配線81,82および83を、より多段に重ねて形成する必要が生じることがある。そうすると、プラグ71,72および73および配線81,82および83を形成するための工程数が増加してしまう。
【0071】
また、WF6ガスを原料ガスとする熱CVDによりW膜74を誘電体層62上に成膜する際、HF蒸気が副生される。HF蒸気は、誘電体層62のシリコン化合物を侵食するので、誘電体層62の表面の平坦性が損なわれてしまう。加えて、W膜74をエッチバックする際に使用されるフッ素系ガスもまた誘電体層62のシリコン化合物を侵食するので、誘電体層62が露出したタイミングでエッチバックを止める必要があり、エッチング時間の制御が難しい。
【0072】
上記の課題に対し、本実施形態の製造方法では、電極形成工程において、ゲート電極41、ソース電極42およびドレイン電極43それぞれの上に、ポリシリコン膜51,52および53それぞれを形成する。また、本実施形態のトランジスタ10は、ゲート電極41、ソース電極42およびドレイン電極43それぞれの上にポリシリコン膜51,52および53それぞれを備える。前述したように、Wを含むプラグ71,72および73を形成する際、ポリシリコンは触媒となり、Wの材料(例えばWF6)を分解させる。従って、Wを含むプラグ71,72および73の材料は、開口62a,62bおよび62c内において露出するポリシリコン膜51,52および53上に選択的に成長する。従って、開口62a,62bおよび62cのアスペクト比が大きい場合であっても、プラグ71,72および73の材料が開口62a,62bおよび62c内に十分に入り込み、プラグ71,72および73を好適に形成することができる。よって、本実施形態のトランジスタ10およびその製造方法によれば、プラグ71,72および73が埋め込まれる開口62a,62bおよび62cのアスペクト比を大きくすることができる。その結果、プラグ71,72および73並びに配線81,82および83の段数を削減し、プラグ71,72および73並びに配線81,82および83を形成するための工程数の増加を抑えることができる。
【0073】
加えて、ポリシリコンを触媒とするW成膜では、上述した反応式(1)のとおり、HF蒸気は発生しない。従って、誘電体層62の表面の平坦性が損なわれることを抑制できる。更には、ポリシリコンを触媒とすることにより、プラグ71,72および73の材料は、開口62a,62bおよび62c内に選択的に堆積し、開口62a,62bおよび62cを除く誘電体層62上には殆ど堆積しない。これにより、W膜のエッチバックを不要とすることができる。
【0074】
本実施形態のように、ゲート電極41、ソース電極42およびドレイン電極43それぞれのうち少なくともポリシリコン膜51,52および53それぞれに接する部分は、組成中にNiを含んでもよい。同様に、電極形成工程では、少なくともポリシリコン膜51,52および53それぞれに接する部分の組成中にNiを含むゲート電極41、ソース電極42およびドレイン電極43それぞれを形成してもよい。ポリシリコン膜51,52および53それぞれを形成する際、ゲート電極41、ソース電極42およびドレイン電極43それぞれのNiが作用し、ポリシリコン膜51,52および53の材料(例えばSiH4)の分解が促進される。従って、ポリシリコン膜51,52および53を容易に形成することができる。
【0075】
本実施形態のように、ゲート電極41、ソース電極42およびドレイン電極43それぞれのうち少なくともポリシリコン膜51,52および53それぞれに接する部分はNiのみからなってもよい。同様に、電極形成工程では、少なくともポリシリコン膜51,52および53それぞれに接する部分がNiのみからなるゲート電極41、ソース電極42およびドレイン電極43それぞれを形成してもよい。この場合、ポリシリコン膜51,52および53の材料の分解がより効果的に促進される。よって、ポリシリコン膜51,52および53を更に容易に形成することができる。
【0076】
本実施形態のように、ポリシリコン膜形成工程では、成膜原料としてSiH4を用い、ポリシリコン膜51,52および53を室温にて形成してもよい。成膜原料としてSiH4を用いる場合、ゲート電極41、ソース電極42およびドレイン電極43中のNiがより効果的に作用し、ポリシリコン膜51,52および53の材料(SiH4)の分解がより一層促進される。よって、室温にてポリシリコン膜51,52および53を容易に形成することができる。
【0077】
本実施形態のように、プラグ71,72および73はWのみからなってもよい。同様に、プラグ形成工程では、Wのみからなるプラグ71,72および73を形成してもよい。この場合、ポリシリコンが触媒となり、開口62a,62bおよび62cそれぞれの内部にプラグ71,72および73それぞれをより好適に形成することができる。
【0078】
本実施形態のように、開口62a,62bおよび62cの深さDと開口幅Aとの比(D/A)は2以上であってもよい。同様に、開口形成工程では、開口62a,62bおよび62cの深さDと開口幅Aとの比(D/A)を2以上としてもよい。本実施形態のトランジスタ10およびその製造方法によれば、このようにアスペクト比が大きい開口62a,62bおよび62cであってもプラグ71,72および73を埋め込むことができる。
【0079】
本実施形態のように、ゲート電極41、ソース電極42およびドレイン電極43は組成中にNiを含み、半導体積層部30は、III族窒化物半導体を含みゲート電極41と接触する電子供給層32、III族窒化物半導体を含みソース電極42と接触する第1高濃度n型半導体領域33、およびIII族窒化物半導体を含みドレイン電極43と接触する第2高濃度n型半導体領域34を有してもよい。組成中にNiを含む電極は、例えば低いドーパント濃度を有するか若しくはアンドープであるIII族窒化物半導体とはショットキ接触を成すが、例えば高濃度n型GaNといった高濃度n型III族窒化物半導体との間では十分に低いコンタクト抵抗を有する。従って、本実施形態のトランジスタ10によれば、ゲート電極41、ソース電極42およびドレイン電極43が組成中にNiを含む場合であっても、これらの電極と半導体積層部30との好適な接触形態を得ることができる。
【0080】
本実施形態のように、半導体積層部30は、第1高濃度n型半導体領域33と第2高濃度n型半導体領域34との間に設けられたチャネル層31と、チャネル層31よりも大きいバンドギャップを有する電子供給層32と、を有してもよい。この場合、HEMTを得ることができる。
[変形例]
【0081】
図8は、上記実施形態の一変形例として、配線形状を示す平面図である。なお、
図8では、2個のトランジスタ10AがX方向に並んで設けられている。各トランジスタ10Aは、配線82に代えて配線82Aを備え、且つ、ゲート配線85およびドレイン配線86を備える点で上記実施形態のトランジスタ10と相違し、他の点において上記実施形態のトランジスタ10と一致する。なお、各トランジスタ10Aのドレイン電極43(
図1を参照)および配線83は互いに共通である。
【0082】
ゲート配線85およびドレイン配線86は、誘電体層62上に設けられた金属製(例えばAl製)の膜である。ゲート配線85およびドレイン配線86は、2個のトランジスタ10にわたってX方向に延在している。また、ゲート配線85およびドレイン配線86は、平面視にて2個のトランジスタ10を間に挟む位置に設けられている。ゲート電極41に対応する配線81のY方向における一端は、ゲート配線85に接続されている。ドレイン電極43に対応する配線83のY方向における一端は、ゲート配線85に接続されている。ゲート配線85およびドレイン配線86は、配線形成工程において、配線81,82Aおよび83と同時に形成されてもよい。
【0083】
配線82Aは、平面形状において上記実施形態の配線82と相違し、他の点において配線82と一致する。配線82Aは、ソース電極42に沿って延在する配線部分821と、配線81と配線83との間に設けられ、Y方向に延びる配線部分822とを含む。配線部分821と配線部分822とは、配線81の他端付近において一体的に連結され、それにより配線82AはU字状といった平面形状を呈する。言い換えると、配線82Aは、配線81を三方より囲んでいる。
【0084】
一般的に、基板20の裏面22に設けられた配線84は基準電位(GND電位)とされ、それによりソース電極42の電位もまた基準電位となる。従って、配線82,82Aの電位もまた基準電位となる。例えば、トランジスタ10を高周波数帯において使用する場合、ゲート信号に重畳するノイズを低減することが求められる。本変形例のように、ゲート電極41に対応する配線81を、ソース電極42に対応する配線82Aによって挟むことにより、配線82Aがシールド作用を奏し、ゲート信号に重畳するノイズを低減することができる。
【0085】
本開示によるトランジスタおよびトランジスタの製造方法は、上述した実施形態に限られるものではなく、他に様々な変形が可能である。例えば、上記実施形態ではゲート電極41、ソース電極42およびドレイン電極43の全てにポリシリコン膜、プラグおよび配線が設けられているが、ゲート電極41、ソース電極42およびドレイン電極43のうち一つの電極または二つの電極に、ポリシリコン膜、プラグおよび配線が設けられてもよい。
【0086】
また、上記実施形態ではゲート電極41、ソース電極42およびドレイン電極43がNiを含んでいるが、それらの上にポリシリコン膜を形成可能であれば、Niを含んでいなくてもよい。
【符号の説明】
【0087】
10,10A…トランジスタ
20…基板
21…主面
22…裏面
30…半導体積層部
30a,30b…凹部
31…チャネル層
31a…チャネル領域
32…電子供給層
33…第1高濃度n型半導体領域
34…第2高濃度n型半導体領域
41,44…ゲート電極
42,45…ソース電極
43,46…ドレイン電極
51,52,53,54…ポリシリコン膜
61…誘電体層
61a…ゲート開口
61b…ソース開口
61c…ドレイン開口
62…誘電体層
62a,62b,62c…開口
71,72,73…プラグ
74…W膜
81,82,82A,83,84…配線
85…ゲート配線
86…ドレイン配線
91…開口
441…Ni層
442…Au層
451,461…Ti層
452,462…Al層
453,463…Mo層
454,464…Au層
821,822…配線部分
A…開口幅
D…深さ