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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024013515
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/06 20060101AFI20240125BHJP
【FI】
G03G15/06 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022115660
(22)【出願日】2022-07-20
(71)【出願人】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中植 隆久
(72)【発明者】
【氏名】石野 正人
(72)【発明者】
【氏名】玉木 友浩
(72)【発明者】
【氏名】岡本 季明
【テーマコード(参考)】
2H073
【Fターム(参考)】
2H073AA01
2H073BA02
2H073BA13
2H073BA36
2H073BA45
2H073CA02
(57)【要約】
【課題】非磁性一成分現像方式を用いる構成において、簡易な構成で画像濃度ムラ等の画像不具合を抑制しつつ、トナー消費量の増加を抑制可能な画像形成装置を提供する。
【解決手段】画像形成装置は、像担持体と、帯電装置と、露光装置と、現像装置と、現像電圧電源と、制御部と、を備える。現像装置は、トナーのみからなる非磁性一成分現像剤を収容する現像容器と、外周面にトナー層が形成される現像剤担持体と、現像剤担持体にトナーを供給するトナー供給部材と、現像剤担持体の外周面に形成されるトナー層の層厚を規制する規制ブレードと、を有する。制御部は、現像装置の累積駆動時間が長くなるにつれて、供給電圧Vsdcを基準供給電圧よりも大きくし、現像電圧Vdcを基準現像電圧よりも小さくすることにより供給電圧Vsdcと現像電圧Vdcとの電位差Vsdc-Vdcを大きくする現像電圧Vdcおよび供給電圧Vsdcの可変制御を実行する。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に感光層が形成される像担持体と、
前記像担持体を所定の表面電位に帯電させる帯電装置と、
前記帯電装置により帯電された前記像担持体の表面を露光して帯電を減衰させた静電潜像を形成する露光装置と、
トナーのみからなる非磁性一成分現像剤を収容する現像容器と、
前記像担持体に所定の押圧力で圧接され、外周面に前記トナーを担持することによりトナー層が形成される現像剤担持体と、
前記現像剤担持体に所定の押圧力で圧接され、前記現像剤担持体に前記トナーを供給するトナー供給部材と、
前記現像剤担持体の外周面に接触して前記現像剤担持体の外周面に形成される前記トナー層の層厚を規制する規制ブレードと、
を有し、前記静電潜像が形成された前記像担持体に前記トナーを供給する現像装置と、
前記現像剤担持体に現像電圧を印加し、前記トナー供給部材に供給電圧を印加する現像電圧電源と、
を備えた画像形成装置において、
前記制御部は、前記現像装置の使用開始時からの累積駆動時間が長くなるにつれて、前記供給電圧Vsdcを基準供給電圧よりも大きくし、前記現像電圧Vdcを基準現像電圧よりも小さくすることにより前記供給電圧Vsdcと前記現像電圧Vdcとの電位差Vsdc-Vdcを大きくする前記現像電圧Vdcおよび前記供給電圧Vsdcの可変制御を実行することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記供給電圧Vsdcの変化幅の絶対値|ΔVsdc|と前記現像電圧Vdcの変化幅の絶対値|ΔVdc|が、|ΔVsdc|≧|ΔVdc|を満たすことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記現像装置の使用開始時から前記現像容器内の前記トナーが無くなるまでの期間である前記現像装置の寿命の16%に到達した後に、前記現像電圧Vdcおよび前記供給電圧Vsdcの可変制御を実行することを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記現像装置の使用開始時からの累積印刷枚数をカウントする印刷枚数カウント部を備え、
前記制御部は、前記累積印刷枚数に基づいて前記現像装置の寿命を推定することを特徴とする請求項3に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、プリンター、ファクシミリ等の電子写真プロセスを用いた画像形成装置に関し、特に、非磁性一成分現像方式の現像装置を備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を利用した複写機、プリンター、ファクシミリ、それらの複合機などの画像形成装置において使用される現像装置は、現像剤にトナーとキャリアとを使用した二成分現像方式、キャリアを使用せずにトナーのみを使用した一成分現像方式のものが知られている。
【0003】
非磁性トナーを用いる非磁性一成分現像方式の現像装置では、現像剤規制部材としての規制ブレードが現像剤担持体である現像ローラーの表面に接触するように配置されている。そしてトナーが現像ローラーの表面に設けられた微細な凹凸によって搬送され、余分なトナーは規制ブレードですり切られることでトナー薄層が形成される。また、規制ブレードの下をトナーが通過する際に現像ローラーの表面とトナーが摩擦帯電する。そして、感光体と現像ローラーを接触回転させ、現像ローラーの表面のトナーは電界により感光体に現像される。
【0004】
上述したような非磁性一成分現像方式においては、現像ローラー上のトナー層が一層あるいは二層からなる薄層であるため、いわゆるベタ画像等のトナー消費量の多い高印字率の画像を印字した場合には、現像後の現像ローラー上にはほとんどトナーが無くなってしまい、次の現像を有効に行うためには現像ローラー上に十分な量のトナーを供給する必要がある。現像ローラー上へのトナー供給が不十分な場合は、ベタ画像よりも後れて形成される画像領域中であって、ベタ画像の位置から現像ローラーの回転周期だけ後れた位置にベタ画像の残像(現像ゴースト)が発生することがある。
【0005】
そこで、適正なトナー薄層を形成しつつ、現像ゴースト等の画像欠陥の発生を防止する方法が提案されており、例えば特許文献1には、トナー供給ローラーに印加する供給バイアスの絶対値を、現像ローラーに印加する現像バイアスの絶対値よりも大きく、且つその電圧差を200V~500Vの範囲内に設定することによって、画像カスレ及び濃度追随性を向上させるようにした現像装置が開示されている。
【0006】
特許文献2には、温湿度検知手段の検知出力に応じて、高温高湿環境では現像バイアスより供給バイアスを大きくして現像ローラーへのトナー供給量を増加させ、低温低湿環境では現像バイアスと供給バイアスを同じ、もしくは現像バイアスを大きくして現像ローラーへのトナー供給量を減少させる制御を行う現像装置が開示されている。
【0007】
特許文献3には、キャリブレーションにより感光体上のベタ画像またはハーフトーン画像の濃度を読み取り、それらの画像が適正濃度になるように現像バイアスと供給バイアスを可変する制御を行う現像装置および現像方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平6-301281号公報
【特許文献2】特開2006-349760号公報
【特許文献3】特開2006-221102号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1の方法では、電位を調整する構成はシンプルであるが、現像装置内のトナーの消費に伴う供給ローラーから現像ローラーへ供給可能なトナー供給量の変化に対して対応できず、耐久印刷の後半において画像カスレや追随性不良が発生するおそれがあった。
【0010】
特許文献2の方法は、環境変動に起因するトナー供給量の変化への対応を課題としており、トナーが規制ブレードを繰り返し通過することによるトナー劣化によりトナーの流動性が低下し、供給ローラーから現像ローラーに供給するトナー量が減少してしまう現象に対して効果的ではなかった。特許文献3の方法では、キャリブレーションを実行するために高価な濃度センサーが必要となり、画像形成装置のコストアップに繋がるという問題点があった。
【0011】
本発明は、上記問題点に鑑み、非磁性一成分現像方式を用いる構成において、簡易な構成で画像濃度ムラ等の画像不具合を抑制しつつ、感光体へのトナー供給量を一定にしてトナー消費量の増加を抑制可能な画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために本発明の第1の構成は、像担持体と、帯電装置と、露光装置と、現像装置と、現像電圧電源と、制御部と、を備えた画像形成装置である。像担持体は、表面に感光層が形成される。帯電装置は、像担持体を所定の表面電位に帯電させる。露光装置は、帯電装置により帯電された像担持体の表面を露光して帯電を減衰させた静電潜像を形成する。現像装置は、トナーのみからなる非磁性一成分現像剤を収容する現像容器と、像担持体に所定の押圧力で圧接され、外周面にトナーを担持することによりトナー層が形成される現像剤担持体と、現像剤担持体に所定の押圧力で圧接され、現像剤担持体にトナーを供給するトナー供給部材と、現像剤担持体の外周面に接触して現像剤担持体の外周面に形成されるトナー層の層厚を規制する規制ブレードと、を有し、静電潜像が形成された像担持体にトナーを供給する。現像電圧電源は、現像剤担持体に現像電圧を印加し、トナー供給部材に供給電圧を印加する。制御部は、現像装置および現像電圧電源を制御する。制御部は、現像装置の使用開始時からの累積駆動時間が長くなるにつれて、供給電圧Vsdcを基準供給電圧よりも大きくし、現像電圧Vdcを基準現像電圧よりも小さくすることにより供給電圧Vsdcと現像電圧Vdcとの電位差Vsdc-Vdcを大きくする現像電圧Vdcおよび供給電圧Vsdcの可変制御を実行する。
【0013】
本発明の第1の構成によれば、供給電圧Vsdcと現像電圧Vdcの電位差Vsdc-Vdcを現像装置の累積駆動時間に応じて大きくすることで、ベタ画像の濃度追随性を向上させることができる。また、供給電圧Vsdcを大きくするときは現像電圧Vdcを小さくすることで、トナー供給部材から現像剤担持体へのトナー供給量を増加させて濃度維持性を向上しつつ、現像剤担持体から像担持体上へ移動するトナー量を安定させてトナー消費量の増加を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係る画像形成装置1の概略構成を示す側面断面図
図2】本実施形態の画像形成装置1の画像形成部30の概略構成を示す側面断面図
図3】感光体ドラム31と現像部33の現像ローラー331との接触部周辺を上方から見た平面図
図4】現像部33における現像ローラー331と規制ブレード334との接触部分周辺の断面拡大図
図5】現像ローラー331と供給ローラー332の当接部分の断面拡大図
図6】本実施形態の画像形成装置1に用いられる制御経路の一例を示すブロック図
図7】累積印刷枚数に対する現像電圧Vdcと供給電圧Vsdcの変化量(補正量)を示すグラフ
図8】耐久印刷試験におけるVsdc-VdcとΔIDとの関係を示すグラフ
図9】耐久印刷試験におけるVdcとIDおよびトナー消費量との関係を示すグラフ
図10】現像ローラー331の表面自由エネルギーを変化させたときの現像ローラー331に印加する現像電圧と画像濃度(1D)との関係を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0015】
(1.画像形成装置1の全体構成)
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る画像形成装置1の概略構成を示す側面断面図である。なお、図1において右側を画像形成装置1の前側、左側を後側とする。
【0016】
画像形成装置1(ここではモノクロプリンター)は、略直方体形状の筐体構造を有する本体ハウジング10、本体ハウジング10内に収容される給紙部20、画像形成部30および定着部40を含む。本体ハウジング10の前面側には前カバー11が、後面側には後カバー12が各々備えられている。画像形成部30および定着部40の各ユニットは、後カバー12が開放されることで、本体ハウジング10の後面側から出し入れ可能となる。また、本体ハウジング10の上面には、画像形成後のシートが排出される排紙部13が備えられている。尚、以下の説明において、「シート」との用語は、コピー用紙、コート紙、OHPシート、厚紙、葉書、トレーシングペーパーや画像形成処理を受ける他のシート材料を意味する。
【0017】
給紙部20は、画像形成処理が施されるシートを収容する給紙カセット21を含む。給紙カセット21は、その一部が本体ハウジング10の前面から更に前方に突出している。給紙カセット21のうち、本体ハウジング10内に収容されている部分の上面は、給紙カセット天板21Uによって覆われている。給紙カセット21には、シートの束が収容される用紙収容空間、シートの束を給紙のためにリフトアップするリフト板等が備えられている。給紙カセット21の後端側の上部には用紙繰出部21Aが設けられている。この用紙繰出部21Aには、給紙カセット21内のシート束の最上層のシートを1枚ずつ繰り出すための給紙ローラー21Bが配置されている。
【0018】
画像形成部30は、給紙部20から送り出されるシートにトナー像(現像剤像)を形成する画像形成動作を行う。画像形成部30は、感光体ドラム31と、感光体ドラム31の周囲に配置された、帯電部32、露光部35、現像部33および転写ローラー34を含む。
【0019】
感光体ドラム31(像担持体)は、回転軸と、回転軸周りに回転する外周面(ドラム本体)と、を備える。感光体ドラム31の外周面には、例えば公知の有機(OPC)感光体で構成され、外周面に電荷発生層、電荷輸送層等で構成される感光層が形成される。感光層は、後述する帯電部32により均一に帯電された後、露光部35により光照射されて帯電を減衰させた静電潜像が形成され、現像部33により静電潜像を顕在化したトナー像が担持される。
【0020】
帯電部32(帯電装置)は、感光体ドラム31の外周面に対して所定の間隔を置いて配置され、感光体ドラム31の外周面を非接触の状態で均一に帯電させる。具体的には、帯電部32は、チャージワイヤー321およびグリッド電極322(いずれも図2参照)を有する。チャージワイヤー321は、感光体ドラム31の回転軸方向に延びる線状の電極であり、感光体ドラム31との間でコロナ放電を発生させる。グリッド電極322は、感光体ドラム31の回転軸方向に延びる格子状の電極であり、チャージワイヤー321と感光体ドラム31との間に配設される。帯電部32は、チャージワイヤー321に所定の電流値の電流を流すことでコロナ放電を発生させ、且つ、グリッド電極322に所定電圧を印加することで、グリッド電極322に対向する感光体ドラム31の外周面を、所定の表面電位に均一に帯電させる。
【0021】
露光部35(露光装置)は、レーザー光源とミラーやレンズ等の光学系機器とを有し、感光体ドラム31の外周面に、パーソナルコンピューター等の外部装置から与えられる画像データに基づき変調された光を照射する。これにより、露光部35は、感光体ドラム31の外周面に、画像データに基づく画像に対応する静電潜像を形成する。
【0022】
現像部33(現像装置)は、本体ハウジング10に着脱可能であり、感光体ドラム31の外周面に非磁性一成分のトナー(現像剤)を供給することにより、感光体ドラム31の外周面に形成された静電潜像を現像する。静電潜像を現像するとは、静電潜像を顕在化したトナー像(現像剤像)を形成することを示す。現像部33の詳細な構成については後述する。
【0023】
転写ローラー34は、感光体ドラム31の外周面に形成されたトナー像をシート上に転写させるためのローラーである。具体的には、転写ローラー34は、軸周りに回転し、感光体ドラム31の回転方向における現像ローラー331よりも下流側の位置で、感光体ドラム31の外周面と対向する外周面を有する。転写ローラー34は、感光体ドラム31の外周面との間のニップ部を通過するシートに、感光体ドラム31の外周面に担持されているトナー像を転写する。当該転写の際、転写ローラー34にはトナーと逆極性の転写電圧が印加される。
【0024】
定着部40は、シートに転写されたトナー像を、シート上に定着させる定着処理を行う。定着部40は、定着ローラー41と加圧ローラー42とを有する。定着ローラー41は、加熱源を内部に備え、シートに転写されたトナーを所定温度で加熱する。加圧ローラー42は、定着ローラー41に対して圧接され、定着ローラー41との間に定着ニップ部を形成する。トナー像が転写されたシートが定着ニップ部に通紙されると、トナー像は、定着ローラー41による加熱、および加圧ローラー42による押圧によりシート上に定着される。
【0025】
本体ハウジング10内には、シートを搬送するための主搬送路22Fおよび反転搬送路22Bが備えられている。主搬送路22Fは、給紙部20の用紙繰出部21Aから画像形成部30および定着部40を経由して、本体ハウジング10上面の排紙部13に対向して設けられている排紙口14まで延びている。反転搬送路22Bは、シートに対して両面印刷を行う場合に、片面印刷されたシートを主搬送路22Fにおける画像形成部30の上流側に戻すための搬送路である。
【0026】
主搬送路22Fは、感光体ドラム31および転写ローラー34によって形成される転写ニップ部を、下方から上方に向かって通過するように延設される。また、主搬送路22Fの、転写ニップ部よりも上流側には、レジストローラー対23が配置されている。シートは、レジストローラー対23にて一旦停止され、スキュー矯正が行われた後、画像転写のための所定のタイミングで転写ニップ部に送り出される。主搬送路22Fおよび反転搬送路22Bの適所には、シートを搬送するための搬送ローラーが複数配置されている。排紙口14の近傍には排紙ローラー対24が配置されている。
【0027】
反転搬送路22Bは、反転ユニット25の外側面と、本体ハウジング10の後カバー12の内面との間に形成されている。尚、反転ユニット25の内側面には、転写ローラー34およびレジストローラー対23の一方のローラーが搭載されている。後カバー12および反転ユニット25は、それらの下端に設けられた支点部121の軸回りに各々回動可能である。反転搬送路22Bにおいてジャム(紙詰まり)が発生した場合、後カバー12が開放される。主搬送路22Fでジャムが発生した場合、或いは感光体ドラム31のユニットや現像部33が外部に取り出される場合には、後カバー12に加えて反転ユニット25も開放される。
【0028】
(2.画像形成部30の構成)
図2は、本実施形態の画像形成装置1における画像形成部30の断面図である。図3は、感光体ドラム31と現像部33の現像ローラー331との接触部周辺を上方から見た平面図である。図4は、現像部33における現像ローラー331と規制ブレード334との接触部分周辺の断面拡大図である。図5は、現像ローラー331と供給ローラー332の当接部分の断面拡大図である。
【0029】
図2および図3に示すように、現像部33は、現像ハウジング330(現像容器)と、現像ローラー331(現像剤担持体)と、供給ローラー332と、攪拌パドル333と、規制ブレード334と、を備える。
【0030】
現像ハウジング330は、内部にトナーのみからなる非磁性一成分現像剤を収容すると共に、現像ローラー331、供給ローラー332、規制ブレード334等を収容する。現像ハウジング330は、攪拌された状態の現像剤(トナー)を収容する攪拌室335を備える。攪拌室335には攪拌パドル333が配置される。攪拌パドル333は、攪拌室335内のトナーを攪拌する。
【0031】
現像ローラー331は、回転軸331aと、ローラー部331bを備える。回転軸331aは、現像ハウジング330の軸受部(不図示)に回転可能に支持される。ローラー部331bは、回転軸331aの外周面に積層される円筒状の部材であり、基材ゴム(例えばシリコーンゴム)の表面にウレタン等の凹凸のあるコーティング材によってコート層を積層した構成である。ローラー部331bは、回転軸331aの回転に伴って回転軸331aと一体的に回転する。ローラー部331bの表面には、所定厚さのトナー層(現像剤層)が形成される。トナー層は、後述する規制ブレード334により層厚が規制(所定厚さに均一に調整)される。トナー層は、規制ブレード334との当接により生じる静電気により帯電する。
【0032】
現像ローラー331は、感光体ドラム31と対向する位置において、感光体ドラム31の回転方向(図2の時計回り方向)における上流側から下流側に向かう方向(図2の反時計回り方向)に回転する。つまり、現像ローラー331は、感光体ドラム31と対向する位置では、感光体ドラム31と同方向に回転する。
【0033】
供給ローラー332は、現像ローラー331に対向して配置される。供給ローラー332は、攪拌室335に収容された現像剤を外周面に保持する。また、供給ローラー332は、外周面に保持した現像剤を現像ローラー331に供給する。
【0034】
供給ローラー332は、現像ローラー331と対向する位置において、現像ローラー331の回転方向(図2の反時計回り方向)における下流側から上流側に向かう方向(図2の反時計回り方向)に回転する。つまり、供給ローラー332は、現像ローラー331と対向する位置では、現像ローラー331と逆方向に回転する。供給ローラー332から現像ローラー331にトナーを移動させるために、供給ローラー332に所定の供給電圧(直流電圧)が印加される。
【0035】
現像ローラー331は、供給ローラー332から現像剤の供給を受けると共に、外周面にトナー層を保持する。そして、現像ローラー331は、感光体ドラム31に現像剤を供給する。現像ローラー331および供給ローラー332の軸方向(図2の紙面と直交する方向)の長さは、感光体ドラム31の軸方向長さと略同一である。現像ローラー331から感光体ドラム31にトナーを移動させるために、現像ローラー331に所定の現像電圧(直流電圧)が印加される。
【0036】
画像形成部30には、現像ハウジング330を挟んで感光体ドラム31と反対側(図2の右下側、図3の下側)に、押圧部材361と押圧バネ362から成る押圧機構36が配置されている。押圧機構36は、現像ハウジング330の長手方向の2箇所(感光体ドラム31の軸方向中央からそれぞれ85mmの位置)に配置されている。画像形成部30に現像部33を装着すると、現像ハウジング330に押圧部材361が圧接されて感光体ドラム31に近づく方向(図2の左上方向、図3の上方向)に押圧され、現像ローラー331が感光体ドラム31に所定の押圧力で押圧される。なお、現像部33および感光体ドラム31には現像ローラー331と感光体ドラム31との間の距離を規制する機構、即ち、感光体ドラム31に対する現像ローラー331の押圧力を規制する機構は存在しない。
【0037】
規制ブレード334は、金属製の薄板状の部材である。規制ブレード334は、基端部334aが現像ハウジング330に固定され、先端部334bが自由端となるよう構成される。規制ブレード334は、感光体ドラム31と現像ローラー331とが対向する位置よりも現像ローラー331の回転方向における上流側の位置で現像ローラー331の外周面に接触する。
【0038】
規制ブレード334は撓み変形可能であり、現像ローラー331の周方向において規制ブレード334と現像ローラー331の接触部分(ニップ)が存在する。規制ブレード334は、所定の規制圧およびニップ幅Wで現像ローラー331(ローラー部331b)の外周面に当接する。
【0039】
規制ブレード334の材質は、例えばステンレス(SUS304)であり、本実施形態では自由長を10mmとしている。規制ブレード334の先端部334bには曲げ加工が施され、湾曲部分334cが形成される。この湾曲部分334cが現像ローラー331の外周面に当接する。湾曲部分334cの曲率半径は0.1mm以上である。
【0040】
図4に示すように、規制ブレード334が一定の規制圧(接触線圧)で現像ローラー331に当接するので、現像ローラー331の外周面に担持されたトナー層が均一な厚さに調整される。これにより、規制ブレード334は、現像ローラー331の外周面トナーの量を規制する。また、規制ブレード334は、現像ローラー331の外周面に担持されたトナーを摩擦することで、トナーを帯電させる。規制ブレード334の現像ローラー331に対する接触線圧とは、規制ブレード334と現像ローラー331の外周面との接触位置における規制ブレード334の単位長さ当たりの接触圧である。
【0041】
図5に示すように、現像ローラー331と供給ローラー332の当接部分(ニップ部)では現像ローラー331が供給ローラー332に喰い込んだ構成となっている。また、現像ローラー331の回転方向に対しニップ部の下流側(図5の右上側)にはトナー溜まりTが形成されている。
【0042】
現像ローラー331と供給ローラー332がニップ部で線接触していると、トナー溜まりTが形成されずトナー供給性が著しく低下することが知られている。そこで、現像ローラー331と供給ローラー332が適度な喰い込み量になるように現像ローラー331と供給ローラー332の軸間距離、直径および硬度を設計する必要がある。現像ローラー331は感光体ドラム31という硬い部材と接触するためアスカーC硬度で50~80程度に設計する。そのため、現像ローラー331が供給ローラー332に喰い込んだ構成にするためには、供給ローラー332の硬度を現像ローラー331より下げる必要がある。
【0043】
供給ローラー332と現像ローラー331との間に電位差を発生させることで、電界エネルギーやファンデルワールス力により供給ローラー332から現像ローラー331へトナーが供給される。ここで、供給ローラー332と現像ローラー331の抵抗値が高い場合、実効電界が小さくなり、トナー供給性能が低下する。トナーの帯電量を維持し、感光体ドラム31への現像性を担保するためには、現像ローラー331の抵抗値は1×10Ω~1×10Ω程度が望ましい。即ち、現像ローラー331の抵抗値の範囲内で、トナー供給性を担保できる実効電界とするためには、供給ローラー332の抵抗値が1×10Ω以上、1×10Ω以下である必要がある。ベタ画像の濃度追随性(画像の先端と後端の濃度差がないこと)を向上させるためには、供給ローラー332を現像ローラー331に押圧する力である圧縮荷重を最適な範囲にすることも重要である。
【0044】
(3.画像形成装置1の制御経路)
図6は、本実施形態の画像形成装置1に用いられる制御経路の一例を示すブロック図である。なお、画像形成装置1を使用する上で装置各部の様々な制御がなされるため、画像形成装置100全体の制御経路は複雑なものとなる。そこで、ここでは制御経路のうち、本発明の実施に必要となる部分を重点的に説明する。
【0045】
メインモーター50は、制御部90からの出力信号により給紙ローラー21B、感光体ドラム31、現像部33内の現像ローラー331、供給ローラー332、攪拌パドル333、定着部40内の定着ローラー41等を所定の回転速度で回転駆動する。
【0046】
電圧制御回路51は、帯電電圧電源52、現像電圧電源53、転写電圧電源54と接続され、制御部90からの出力信号によりこれらの各電源を作動させる。電圧制御回路51からの制御信号によって、帯電電圧電源52は帯電部32内のチャージワイヤー321に帯電電圧を印加する。現像電圧電源53は現像部33内の現像ローラー331に現像電圧を印加し、供給ローラー332に供給電圧を印加する。転写電圧電源54は転写ローラー34に転写電圧を印加する。
【0047】
画像入力部60は、画像形成装置1にパソコン等から送信される画像データを受信する受信部である。画像入力部60より入力された画像信号はデジタル信号に変換された後、一時記憶部94に送出される。
【0048】
機内温湿度センサー61は、画像形成装置1内部の温度および湿度、特に現像部33周辺の温度および湿度を検知するものであり、画像形成部30の近傍に配置される。
【0049】
操作部70には、液晶表示部71、各種の状態を示すLED72が設けられており、画像形成装置1の状態を示したり、画像形成状況や印刷部数を表示したりするようになっている。画像形成装置1の各種設定はパソコンのプリンタードライバーから行われる。
【0050】
制御部90は、中央演算処理装置としてのCPU(Central Processing Unit)91、読み出し専用の記憶部であるROM(Read Only Memory)92、読み書き可能な記憶部であるRAM(Random Access Memory)93、一時的に画像データ等を記憶する一時記憶部94、カウンター95、画像形成装置1内の各装置に制御信号を送信したり操作部70からの入力信号を受信したりする複数(ここでは2つ)のI/F(インターフェイス)96を少なくとも備えている。
【0051】
ROM92には、画像形成装置1の制御用プログラムや、制御上の必要な数値等、画像形成装置1の使用中に変更されることがないようなデータ等が収められている。RAM93には、画像形成装置1の制御途中で発生した必要なデータや、画像形成装置1の制御に一時的に必要となるデータ等が記憶される。
【0052】
一時記憶部94は、パソコン等から送信される画像データを受信する画像入力部60より入力され、デジタル信号に変換された画像信号を一時的に記憶する。カウンター95は、印刷枚数を累積してカウントする。
【0053】
また、制御部90は、画像形成装置1における各部分、装置に対し、CPU91からI/F96を通じて制御信号を送信する。また、各部分、装置からその状態を示す信号や入力信号がI/F96を通じてCPU91に送信される。制御部90が制御する各部分、装置としては、例えば、画像形成部30、定着部40、メインモーター50、電圧制御回路51、画像入力部60、操作部70等が挙げられる。
【0054】
(4.現像電圧および供給電圧の可変制御)
以下、本実施形態の画像形成装置1の特徴部分である、現像ローラー331に印加する現像電圧および供給ローラー332に印加する供給電圧の可変制御について説明する。耐久印刷によって現像部33内のトナーの劣化、消費が進むと、トナーの流動性が変化し、供給ローラー332から現像ローラー331へのトナー供給量が減少する。その結果、ベタ画像において濃度追随性の低下や濃度ムラが発生する。
【0055】
一方、供給ローラー332から現像ローラー331へのトナー供給量が多すぎると、現像部33内のトナー消費量が増加する。その結果、予め設定された現像部33の寿命(現像部33内のトナーが無くなるまでの期間)を達成できない。
【0056】
そこで、本実施形態の画像形成装置1では、現像部33の使用開始からの累積駆動時間(累積印刷枚数)に応じて現像電圧および供給電圧の可変制御を行うことで、現像部33のトナー消費量を一定に維持しつつ、ベタ画像において濃度追随性の低下や濃度ムラの発生を抑制する。以下、現像電圧および供給電圧の可変制御について詳細に説明する。
【0057】
先ず、現像電圧および供給電圧を変化させて耐久印刷試験を行い、現像電圧および供給電圧の可変制御による濃度追随性の低下や濃度ムラの抑制効果、現像部33のトナー消費量の安定化効果を検証した。試験機として、図1に示したような画像形成装置1(京セラドキュメントソリューションズ社製)を用いた。
【0058】
現像ローラー331は、基材層として層厚3.5mmのシリコーンゴム層にウレタンコーティグを施した外径13mm、軸方向長さ232mm、抵抗値7.1[logΩ]のローラー部331bと、シャフト径6mmの回転軸331aとを有し、アスカーC硬度が55°であるローラー(NICK社製)を用い、現像ローラー331の線速を195mm/secとした。アスカーC硬度は定圧荷重器(CL-150、高分子計器社製)を用いて測定した。抵抗値は現像ローラー331を金属ローラーに接触させて回転させ、100Vの直流電圧を印加して測定した。
【0059】
感光体ドラム31は、外径24mm、感光層膜厚22μmの正帯電単層OPC感光体ドラム(京セラドキュメントソリューションズ社製)を用いた。
【0060】
図7は、耐久印刷試験において用いる、累積印刷枚数に対する現像電圧Vdcと供給電圧Vsdcの変化量(補正量)を示すグラフである。図7では、現像部33の寿命の目標値が1500枚である場合の現像電圧Vdc(実線)と供給電圧Vsdc(破線)の補正を示している。より詳細には、耐久初期の供給電圧Vsdcを400Vとし、1500枚印刷後の供給電圧Vsdcの最大変化幅(ΔVsdc)が0V、25V、50V、100Vである場合を示した。同様に、耐久初期の現像電圧Vdcを300Vとし、1500枚印刷後の現像電圧Vdcの最大変化幅(ΔVdc)が0V、25V、50V、100Vである場合を示した。
【0061】
図7に示すように、耐久初期の供給電圧Vsdcは400V、現像電圧Vdcは300V、電位差ΔV(Vsdc-Vdc)は100Vである。初期から250枚(現像部33の寿命の16%)までは、トナーは初期性能が維持できているため、ベタ画像の濃度追随性はほとんど変化しない。そのため、供給電圧Vsdcは一定に維持され、現像電圧Vdcも変化しない。
【0062】
250枚以降は、現像部33内のトナーの劣化や消費が進み、トナー流動性が変化する。そのため、累積印刷枚数が増加するにつれて供給電圧Vsdcを高くして現像ローラー331へのトナー供給量を増加させる。また、感光体ドラム31へのトナー供給量(現像量)を一定にするために、累積印刷枚数が増加するにつれて現像電圧Vdcを低くする。
【0063】
試験方法としては、テスト画像としてISO/IEC19752に規定された標準データをA4サイズで出力した。そして、図7に示したように供給電圧Vdcと現像電圧Vdcを変化させてテスト画像を1500枚印刷したときの濃度追随性、濃度維持性、トナー消費量を比較した。
【0064】
濃度追随性は、画像の先端と後端の濃度ムラ(ΔID)がΔID<0.2(濃度ムラと認識できるレベル)を満たす場合を○、ΔID≧0.2である場合を×とした。濃度維持性は、画像濃度(ID)がID≧1.2(濃度低下が認識できるレベル)を満たす場合を○、ID<1.2である場合を×とした。トナー消費量は、テスト画像1枚当たりのトナー消費量が20mg/枚以下である場合を○、20mg/枚を超える場合を×とした。結果を表1に示す。
【0065】
【表1】
【0066】
表1から明らかなように、ベタ画像の濃度追随性は、供給電圧Vsdcと現像電圧Vdcとの電位差(Vsdc-Vdc)が、(Vsdc-Vdc)≧175[V]を満たさないと、1500枚印刷したときに濃度ムラの規格であるΔID<0.2を満足できないことが確認された。Vsdc-VdcとΔIDとの関係を図8に示す。図8のドット領域は濃度追随性がΔID<0.2を満たさない範囲である。
【0067】
また、濃度維持性は、現像電圧VdcがVdc≧250[V]を満たさないと、濃度の規格であるID≧1.2を満足できないことが確認された。さらに、トナー消費量は、現像電圧VdcがVdc≦275[V]を満たさないと、現状のトナー消費量である20mg/枚以下を満足できないことが確認された。VdcとIDおよびトナー消費量との関係を図9に示す。図9のドット領域は濃度維持性がID<1.2を満たさない範囲であり、斜線領域はトナー消費量が20mg/枚以下を満たさない範囲である。
【0068】
即ち、ベタ画像の濃度追随性、濃度維持性、およびトナー消費量の全てについて規格を満足させるためには、(Vsdc-Vdc)≧175、250≦Vdc≦275を満たすように供給電圧Vsdcと現像電圧Vdcを設定(表1のハッチング領域)することが必要である。
【0069】
濃度追随性を満足させるために電位差(Vsdc-Vdc)を175Vに調整しながら現像部33の寿命を通じて濃度維持性、トナー消費量を満足させるためには、図7に示すように供給電圧Vsdcの最大変化量ΔVsdcと、現像電圧Vdcの最大変化量ΔVdcを累積印刷枚数に応じて変化させる必要があり、それぞれの電圧の変化量(傾き)の絶対値|ΔVsdc|、|ΔVdc|が|ΔVsdc|≧|ΔVdc|の関係を満たすように(図7のハッチング領域)調整しないと成立しないことが確認された。この理由は、以下のように考えられる。
【0070】
電位差(Vsdc-Vdc)を大きくしていくと、現像ローラー331上のトナー搬送量が上昇する。ここで、電位差(Vsdc-Vdc)を大きくする前と同一の現像電圧Vdcを印加すると、感光体ドラム31上へのトナー移動量(現像量)が増加する。そこで、トナー搬送量が増加した分だけ現像電圧Vdcを下げることで感光体ドラム31上へ移動するトナー量を安定させる必要がある。現像電圧Vdcの方が供給電圧Vsdcよりも感光体ドラム31への現像性に対する感度が高いため、現像電圧Vdcの変化量|ΔVdc|を供給電圧Vsdcの変化量|ΔVsdc|以下とする必要がある。
【0071】
以上の結果より、供給電圧Vsdcと現像電圧Vdcの電位差(Vsdc-Vdc)を累積印刷枚数に応じて大きくすることでベタ画像の濃度追随性を向上させることができる。また、供給電圧Vsdcを大きくするときは現像電圧Vdcを小さくするとともに、供給電圧の変化幅の絶対値|ΔVsdc|と現像電圧の変化幅の絶対値|ΔVdc|が|ΔVsdc|≧|ΔVdc|を満たすようにする。これにより、供給ローラー332から現像ローラー331へのトナー供給量を増加させて濃度維持性を向上しつつ、現像ローラー331から感光体ドラム31上へ移動するトナー量を安定させてトナー消費量の増加を抑制することができる。
【0072】
また、トナーの流動性が変動し難い現像部33の使用開始時には供給電圧Vsdcおよび現像電圧Vdcを変化させず、現像部33の寿命の16%に到達した時点から供給電圧Vsdcと現像電圧Vdcの電位差(Vsdc-Vdc)を累積印刷枚数に応じて大きくする。これにより、現像部33の使用初期における不必要な電圧制御を省略して制御を簡素化するとともに、供給ローラー332から現像ローラー331へのトナー供給量が不必要に増加することによるトナー消費量の増加を抑制することができる。
【0073】
現像部33の寿命は現像ハウジング330内に収容されるトナー量によって変化し、現像ハウジング330内のトナー収容量が多くなるほど現像部33の寿命が長くなる。ここで、トナー収容量が多くなるほどトナーの劣化は進行し難くなる。即ち、トナー収容量が多くなるほどトナー劣化が抑制され、ベタ画像の濃度追随性、濃度維持性、およびトナー消費量が規格を満たさなくなる累積印刷枚数も増加する。従って、現像部33の寿命の長さ(トナー収容量)に係わらず、現像部33の寿命の16%以降で現像電圧Vdcおよび供給電圧Vsdcの可変制御を実行することでベタ画像の濃度追随性、濃度維持性、およびトナー消費量の規格を満たすことができる。例えば、現像部33の寿命の目標値が3000枚である場合は、現像電圧Vdcおよび供給電圧Vsdcの可変制御を累積印刷枚数480枚以降で実行すればよい。
【0074】
(5.その他の構成)
図10は、現像ローラー331の表面自由エネルギーを変化させたときの現像ローラー331に印加する現像電圧と画像濃度(1D)との関係を示すグラフである。表面自由エネルギー(surface free energy)とは、固体における液体での表面張力に当たるもので、固体の表面自体がもつ分子のエネルギーのことである。図10において、現像ローラー331の表面自由エネルギーが12mJ/mの場合を◇のデータ系列、21mJ/mの場合を□のデータ系列、30mJ/mの場合を△のデータ系列で示している。
【0075】
図10に示すように、現像ローラー331の表面自由エネルギーが高くなるほど現像電圧の使用可能領域OWは狭くなる傾向にある。これは、現像ローラー331の表面自由エネルギーが高くなるにつれてハーフトーン画像の白抜けが発生する現像ローラー331の押圧力の上限値が低下するためである。現像ローラー331の表面自由エネルギーは5mj/m以上27mj/m以下が好ましい。
【0076】
また、規制ブレード334によって規制されるトナーの量は、現像ローラー331の外周面の接触面積率によっても変化する。現像ローラー331の外周面の接触面積率とは、現像ローラー331の外周面の面積に対する当該外周面における凹部(非接触部)を除いた領域の面積の占める割合である。つまり、現像ローラー331の周面の接触面積率は、現像ローラー331の外周面と規制ブレード334との見掛け上の接触面積に対する、真の接触面積を表すものである。接触面積率は4.5~10%が好ましく、6~8%がより好ましい。
【0077】
規制ブレード334の規制圧は10~60N/mが好ましく、15~25N/mがより好ましい。なお、現像ローラー331の製法は特に限定されず、現像ローラー331の表面粗さは粒子を含むコート層をコーティングして調整してもよいし、研磨のみで粗さを調整してもよい。
【0078】
また、本実施形態では粉砕法により製造されたトナー(粉砕トナー)、重合法により製造されたトナー(重合トナー)の両方を使用することができる。重合トナーは円形度が高い真球形状のため付着力が低く、現像性が良いため使用可能領域OWが広い。そのため、本発明は重合トナーに比べて低コストである粉砕トナーを用いる非磁性一成分現像方式において特に有効である。
【0079】
また、本実施形態では中心粒径が6.0~8.0μmのトナーで良好な結果が得られることを確認している。中心粒径の範囲の選択理由は、中心粒径が6.0μmより小さくなるとトナーの製造コストアップにつながり、8.0μmより大きいとトナー消費量が増えて定着性が悪化し、好ましくないためである。
【0080】
また、本実施形態では円形度が0.93~0.97のトナーで良好な結果が得られることを確認している。円形度が0.93以下の場合は画像品質が低下する傾向にある。円形度が0.97以上である場合は製造コストが大幅にアップするため、それぞれ好ましくない。
【0081】
また、本実施形態では90℃における溶融粘度が100,000Pa・s以下のトナーで良好な結果が得られることを確認している。90℃における溶融粘度が100,000Pa・sを超える場合はトナーの定着性が悪くなるため、省エネルギーの観点から好ましくない。
【0082】
また、感光体ドラム31と現像ローラー331の線速差は1.1~1.6倍(現像ローラー331のほうが感光体ドラム31よりも表面速度が速い)の範囲で同様の結果が得られることを確認している。線速差が1.1倍より小さくなると白紙部にトナーが付着するカブリが発生するため好ましくない。一方、線速差が1.6倍以上では現像部33の駆動トルクや振動、トナーの機械的ストレスが増加するため、装置の寿命の観点から好ましくない。
【0083】
また、感光体ドラム31の表面電位V0は500~800V、露光後電位VLは70~200Vの範囲で同様の結果が得られることを確認している。
【0084】
その他、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、上記実施形態では、画像形成装置1の例として、モノクロプリンターについて説明したが、例えば、タンデム方式やロータリー式のカラープリンターにも適用できる。また、複写機、ファクシミリ或いはこれらの機能を備えた複合機等の画像形成装置にも適用できる。ただし、感光体ドラム31と、非磁性一成分現像方式の現像部33を備える必要はある。
【0085】
また、上記実施形態における感光体ドラム31は、支持体として円筒状の素管を利用したが、他の形状の支持体を利用しても良い。他の形状としては、板状、無端ベルト状であってもよい。また、上記実施形態における感光体ドラム31は、感光層としてアモルファスシリコンを利用したが、例えば、支持体からの電荷の注入を阻止する電荷注入阻止層を有しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明は、非磁性トナーを用いた非磁性一成分現像方式の現像装置を備えた画像形成装置に利用可能である。本発明の利用により、非磁性一成分現像方式における画像の白抜けやクリーニング不良を効果的に抑制可能な画像形成装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0087】
1 画像形成装置
30 画像形成部
31 感光体ドラム(像担持体)
32 帯電部(帯電装置)
33 現像部(現像装置)
330 現像ハウジング(現像容器)
331 現像ローラー(現像剤担持体)
332 供給ローラー(トナー供給部材)
334 規制ブレード
35 露光部(露光装置)
90 制御部
95 カウンター(印刷枚数カウント部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10