(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024013516
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】繊維含有ペレットの製造方法および繊維含有ペレット
(51)【国際特許分類】
B29B 9/14 20060101AFI20240125BHJP
B29B 15/08 20060101ALI20240125BHJP
C08J 3/20 20060101ALI20240125BHJP
B29B 7/02 20060101ALI20240125BHJP
B29B 7/22 20060101ALI20240125BHJP
B29K 105/12 20060101ALN20240125BHJP
【FI】
B29B9/14
B29B15/08
C08J3/20 Z CER
C08J3/20 CEZ
B29B7/02
B29B7/22
B29K105:12
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022115661
(22)【出願日】2022-07-20
(71)【出願人】
【識別番号】591008199
【氏名又は名称】ビューテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100140671
【弁理士】
【氏名又は名称】大矢 正代
(72)【発明者】
【氏名】坂東 隆
(72)【発明者】
【氏名】杉原 一宏
(72)【発明者】
【氏名】山下 紗津稀
【テーマコード(参考)】
4F070
4F072
4F201
【Fターム(参考)】
4F070AA02
4F070AA15
4F070AA47
4F070AB26
4F070FA06
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4F072AB03
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4F072AB05
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4F201AC02
4F201AD05
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4F201BC17
4F201BC29
4F201BD02
4F201BK01
4F201BK15
4F201BK18
4F201BK73
4F201BL03
4F201BL33
4F201BL37
4F201BL42
4F201BL44
(57)【要約】
【課題】熱可塑性樹脂ペレットに対して所望の混合比で溶融混錬させることが可能な合成繊維を含有している繊維含有ペレットの製造方法、および、繊維含有ペレットを提供する。
【解決手段】繊維含有ペレットの製造方法として、合成繊維を含む繊維基材と繊維基材よりも融点の低い低融点繊維とを所定の割合で混合させながら裁断粉砕して粉砕混合物を生成する粉砕混合工程S1と、粉砕混合物を複数のダイス孔を有するダイス上に供給した上で、押圧部材により押圧することにより粉砕混合物をダイス孔に圧縮通過させてペレットに成形するペレット化工程S2と、を具備させ、ペレット化工程S2において、粉砕混合物のうちダイス孔の内周面に接する一部の低融点繊維の粉砕物のみを圧縮通過により溶融させつつダイス孔に通過させ、その後に表面だけ溶融した低融点繊維の粉砕物を固化させて殻状の外殻部を形成させる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成繊維を含む繊維基材と該繊維基材よりも融点の低い低融点繊維とを所定の割合で混合させながら裁断粉砕して粉砕混合物を生成する粉砕混合工程と、
前記粉砕混合物を複数のダイス孔を有するダイス上に供給した上で、押圧部材により押圧することにより前記粉砕混合物を前記ダイス孔に圧縮通過させてペレットに成形するペレット化工程と
を具備している繊維含有ペレットの製造方法であり、
前記ペレット化工程は、
前記粉砕混合物のうち前記ダイス孔の内周面に接する一部の前記低融点繊維の粉砕物のみを圧縮通過により溶融させつつ前記ダイス孔に通過させ、その後に表面だけ溶融した前記低融点繊維の粉砕物を固化させて殻状の外殻部を形成させる
ことを特徴とする繊維含有ペレットの製造方法。
【請求項2】
合成繊維を含む繊維基材の粉砕物と該繊維基材よりも融点の低い低融点繊維の粉砕物とが所定の割合で混合されており、円柱状に形成されている外周面の一部に前記低融点繊維の粉砕物の溶融固化物で形成された殻状の外殻部を備えている
ことを特徴とする繊維含有ペレット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成繊維が含有されている繊維含有ペレットの製造方法、および、合成繊維が含有されている繊維含有ペレットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車の内装部品として、合成繊維のような繊維と熱可塑性樹脂とが混合されている複合シートを、加熱軟化させてコールドプレスすることにより所定の形状に賦形したものがある。この複合シートの製造方法として、有機繊維の廃材を粉砕して生成したパウダー状の繊維(繊維パウダー)と熱可塑性樹脂とを混合した上で、加熱混錬して溶融させた後にシート状に成形することが提案されている(例えば、特許文献1)。しかしながら、特許文献1の技術では、繊維パウダーを乾燥させた上で、ニーダーやヒーターミキサーのような混錬機を使用して熱可塑性樹脂と一緒に加熱溶融させると共に混錬させ、その後に成形機に投入してシート状に形成しており、工程数が多く時間がかかる問題があった。
【0003】
そこで、粉砕解繊した繊維パウダー(粉砕繊維)を、熱可塑性樹脂ペレットと一緒に押出成形機に投入してシート状に成形することが考えられる。しかしながら、この場合、粉砕繊維の嵩比重が約0.1であるのに対して、熱可塑性樹脂ペレットの嵩比重が約0.7であり、両者間の嵩比重の差が大きいため、一緒に押出成形機のホッパーに投入すると、嵩比重の大きい熱可塑性樹脂ペレットが先に沈んでシリンダー(バレル)へ供給されてしまい、所望の混合比で溶融混錬させることが困難であった。
【0004】
更に別の方法として、ヘンシェル混合機のような羽根が高速回転する混合機に、繊維と熱可塑性樹脂ペレットとを所定の割合で投入して混合すると共に、高速撹拌による衝突により発生する熱によって熱可塑性樹脂を溶融させて繊維を含んだ溶融混錬物を生成する。その後、固化した溶融混錬物をハンマーミルのような粉砕機を使用して、押出成形機に投入可能な大きさまで粉砕して繊維樹脂混錬ペレットにする。この繊維樹脂混錬ペレットを押出成形に投入することにより、繊維と熱可塑性樹脂とを所望の混合比に近い混合比で溶融混錬させることが可能となる。
【0005】
しかしながら、上記のような製造方法では、多くの工程を必要とし、コストが増加するという問題があった。また、ヘンシェル混合機により溶融させる場合、熱可塑性樹脂が完全に溶融すると溶融混錬物が大きな塊になってしまい、粉砕機で粉砕し難くなってしまうため、大きな塊になる前にヘンシェル混合機を停止させる必要があり、手間がかかるという問題があった。また、ヘンシェル混合機では熱可塑性樹脂の溶融が急速に進むため、繊維の混合比を高くすると、繊維が均一に分散し難くなり、溶融混錬物において繊維が均一に分散していないことで、粉砕し難くなる。そのため、粉砕し易い溶融混錬物を得るためには、熱可塑性樹脂の種類、繊維の混合比、などが限られていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、上記の実情に鑑み、熱可塑性樹脂ペレットに対して所望の混合比で溶融混錬させることが可能な合成繊維を含有している繊維含有ペレットの製造方法、および、繊維含有ペレットの提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明に係る繊維含有ペレットの製造方法は、
「合成繊維を含む繊維基材と該繊維基材よりも融点の低い低融点繊維とを所定の割合で混合させながら裁断粉砕して粉砕混合物を生成する粉砕混合工程と、
前記粉砕混合物を複数のダイス孔を有するダイス上に供給した上で、押圧部材により押圧することにより前記粉砕混合物を前記ダイス孔に圧縮通過させてペレットに成形するペレット化工程と
を具備している繊維含有ペレットの製造方法であり、
前記ペレット化工程は、
前記粉砕混合物のうち前記ダイス孔の内周面に接する一部の前記低融点繊維の粉砕物のみを圧縮通過により溶融させつつ前記ダイス孔に通過させ、その後に表面だけ溶融した前記低融点繊維の粉砕物を固化させて殻状の外殻部を形成させる」
ことを特徴とする。
【0009】
ここで、繊維基材の合成繊維としては、ポリエステル、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、アクリル、ポリウレタン、レーヨンのようなセルロース系繊維、ナイロンやアラミドのようなポリアミド、を例示することができる。また、繊維基材は、一種類の合成繊維のみにより構成されていても良いし、複数種類の合成繊維のみにより構成されていても良いし、少なくとも一種類の合成繊維と天然繊維とにより構成されていても良い。天然繊維としては、コットン、ケナフ、ユーカリ、などの草木繊維、を例示することができる。
【0010】
また、低融点繊維としては、低融点のポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン系のホモポリマーやコポリマーやブロックコポリマー、スチレン、ナイロンやアラミドのようなポリアミド、を例示することができ、繊維基材よりも融点の低いものであれば良い。
【0011】
本構成の繊維含有ペレットの製造方法では、まず、粉砕混合工程において、合成繊維を含む繊維基材と低融点繊維とを均一になるように混合させながら裁断粉砕して粉砕混合物を生成するようにしている。そして、ペレット化工程において、粉砕混合物をペレット化する際に、ダイス孔の内周面に接する一部の低融点繊維の粉砕物のみを溶融固化させて殻状の外殻部を形成している。これにより、内部が塊とならずに粉砕混合物のままの繊維含有ペレットを製造することができる。
【0012】
本構成によれば、従来のように、ヘンシェル混合機を使用して繊維樹脂混錬ペレットを製造する場合と比較して、適度な大きさの溶融混錬物を生成したり、溶融混錬物を粉砕したりする必要はなく、繊維含有ペレットの製造にかかる工程数を少なくすることができ、従来よりもコストを低減させることができる。
【0013】
また、同じような形態の繊維基材と低融点繊維とを一緒に裁断粉砕して粉砕混合物を生成しているため、繊維基材の粉砕物(以下では、繊維基材粉砕物とも称する)と低融点繊維の粉砕物(以下では、低融点繊維粉砕物とも称する)とが均一に混合されている粉砕混合物を生成することができる。従って、繊維基材の種類や低融点繊維の種類などの選定、繊維基材と低融点繊維との混合比、などの自由度を従来よりも高くすることができ、より多彩な要望に対応することが可能な繊維含有ペレットを製造することができる。
【0014】
更に、ダイス孔を有するダイス上に供給された粉砕混合物を、押圧部材によりダイス孔へ押圧することによりペレット化しているため、粉砕混合物の供給量、押圧部材の押圧回数、ダイス孔の内径や長さ、ペレット切断の長さ、など適宜設定することにより、熱可塑性樹脂ペレットとの嵩比重の差が小さい繊維含有ペレットを製造することができる。従って、熱可塑性樹脂ペレットと一緒に押出成形機のホッパーに投入した場合、一方のみが多くバレルへ供給されるようなことはなく、投入した所望の混合比で溶融混錬させることが可能な繊維含有ペレットを製造することができる。
【0015】
そして、上記の製造方法で製造された繊維含有ペレットは、外周面の一部に溶融固化による外殻部が形成されるため、外殻部によって内部の粉砕混合物を保持することができ、粉砕混合物が飛散することはなく、取扱い、持ち運び、保管、などが容易である。また、外殻部が殻状であるため、押出成形機による溶融混錬時には、外殻部が簡単に破壊されることとなり、内部の粉砕混合物が拡散し易い。
【0016】
また、この繊維含有ペレットは、内部の粉砕混合物が溶融固化しておらず粉砕物のままであると共に、繊維基材粉砕物と低融点繊維粉砕物とが均一に混合されているため、押出成形機による溶融混錬時に、低融点繊維粉砕物が軟化することで繊維基材粉砕物が分散し易くなり、低融点繊維粉砕物と熱熱可塑性樹脂ペレットとが溶融している溶融樹脂に対しても繊維基材粉砕物が分散し易くなる。従って、通常の押出成形機を使用して、熱可塑性樹脂に繊維基材粉砕物(繊維)が均一に分散している押出成形品(例えば、複合シート)を製造することができる。
【0017】
本発明に係る繊維含有ペレットは、
「合成繊維を含む繊維基材の粉砕物と該繊維基材よりも融点の低い低融点繊維の粉砕物とが所定の割合で混合されており、円柱状に形成されている外周面の一部に前記低融点繊維の粉砕物の溶融固化物で形成された殻状の外殻部を備えている」
ことを特徴とする。
【0018】
本構成によれば、上記の繊維含有ペレットの製造方法により製造された繊維含有ペレットと同様の作用効果を奏することができる。
【発明の効果】
【0019】
以上のように、本発明の効果として、熱可塑性樹脂ペレットに対して所望の混合比で溶融混錬させることが可能な合成繊維を含有している繊維含有ペレットの製造方法、および繊維含有ペレットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】(a)は本発明の一実施形態である繊維含有ペレットを円柱の軸方向から示す説明図であり、(b)は(a)の繊維含有ペレットを斜視図で示す説明図であり、(c)は(b)の繊維含有ペレットの外周面の一部を拡大して示す説明図である。
【
図2】複数の発明例である各繊維含有ペレットの組成を示す表である。
【
図3】本発明の一実施形態である繊維含有ペレットの製造方法を示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の一実施形態である繊維含有ペレット1、及び、繊維含有ペレットの製造方法について、
図1~
図3を参照して詳細に説明する。まず、本実施形態の繊維含有ペレット1は、合成繊維を含む繊維基材を粉砕した繊維基材粉砕物と、繊維基材よりも融点の低い低融点繊維を粉砕した低融点繊維粉砕物と、で構成されている。
【0022】
この繊維含有ペレット1は、
図1に示すように、円柱状に形成されている。繊維含有ペレット1は、外周面の一部に低融点繊維粉砕物の溶融固化物で形成された殻状の外殻部1aと、繊維基材粉砕物と低融点繊維粉砕物とが混合されていると共に低融点繊維粉砕物が溶融していない粉砕物部1bと、を備えている。外殻部1aは、繊維含有ペレット1の外周面の40~90%の範囲を占めている。粉砕物部1bは、繊維含有ペレット1における外殻部1a以外の部位である。
【0023】
繊維基材(繊維基材粉砕物)に含まれている合成繊維としては、ポリエステル、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、アクリル、ポリウレタン、レーヨンのようなセルロース系繊維、ナイロンやアラミドのようなポリアミド、を例示することができる。なお、繊維基材は、一種類の合成繊維のみにより構成されていても良いし、複数種類の合成繊維のみにより構成されていても良いし、少なくとも一種類の合成繊維と天然繊維とにより構成されていても良い。天然繊維としては、コットン、ケナフ、ユーカリ、などの草木繊維、を例示することができる。この繊維基材として、合成繊維(化学繊維)が含まれている衣類や布地などを使用しても良い。
【0024】
低融点繊維(低融点繊維粉砕物)としては、繊維基材よりも融点の低いものであれば良く、低融点のポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン系のホモポリマーやコポリマーやブロックコポリマー、スチレン、ナイロンやアラミドのようなポリアミド、を例示することができる。低融点繊維粉砕物の軟化点としては、80~200℃、望ましくは、100~120℃、を例示することができる。
【0025】
この繊維含有ペレット1は、直径が5~7mm、長さが10~20mm、嵩比重が0.35~0.55である。繊維含有ペレット1を構成している繊維基材粉砕物や低融点繊維粉砕物のそれぞれの繊維の長さは10mm以下であり、それぞれの繊維の太さは2.0~7.0dtex(デシテックス)である。繊維基材粉砕物に対する低融点繊維粉砕物の割合は、5~20wt%である。
【0026】
また、繊維含有ペレット1の組成としては、
図2に示すような組成を例示することができる。なお、ここで使用している低融点繊維粉砕物は、繊維径が3.3dtexの低融点ポリエチレンテレフタレート(PET)の繊維である。発明例1,2は、繊維基材粉砕物がポリエチレンテレフタレートのみからなるものである。発明例3,4は、繊維基材粉砕物が、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステル、レーヨン、ポリプロピレン、の複数の合成繊維により構成されているものである。発明例5は、繊維基材粉砕物が、ポリエステルと天然繊維(例えば、コットン)とで構成されているものである。この発明例5のように、繊維基材粉砕物としては、合成繊維を含んでいるものであれば良く、合成繊維と天然繊維とにより構成されているものでも良い。なお、発明例3~5では、繊維の種類によって繊維径が異なっているため、全体の繊維径の範囲を記載している。
【0027】
続いて、繊維含有ペレット1の製造方法について、
図3(a)を参照して説明する。まず、粉砕混合工程S1において、合成繊維を含む繊維基材と、繊維基材よりも融点の低い低融点繊維と、を所定の割合で混合させながら裁断粉砕して粉砕混合物を生成する。
【0028】
詳述すると、例えば、フェルト状、織布状、または塊状、の繊維基材や低融点繊維を、所定の割合でスクリーン付きカッターミルのような粉砕機に投入し、粉砕機内部の回転刃と固定刃により連続的に粉砕する。この際に、繊維基材と低融点繊維とが粉砕混合される。そして、所定(ここでは、10mm)以下の長さまで粉砕されると、スクリーンを通って粉砕機から排出される。これにより、繊維基材の粉砕物(繊維基材粉砕物)と低融点繊維の粉砕物(低融点繊維粉砕物)とが混合された粉砕混合物が生成される。なお、生成された粉砕混合物の嵩比重は、約0.1である。
【0029】
本実施形態では、繊維基材に対して低融点繊維を5~20wt%の範囲、望ましくは、10~20wt%の範囲、の割合で粉砕機に投入する。低融点繊維の割合を上記の範囲内としている理由は、低融点繊維が上記の範囲よりも少ないと、繊維含有ペレット1の外周面における外殻部1aの割合が少なくなりすぎて充分な保形性を得られなくなると共に、押出成形機で熱可塑性樹脂ペレットと一緒に溶融混錬した時に繊維基材の分散性が悪くなるためである。詳述すると、低融点繊維粉砕物が少ない場合、熱可塑性樹脂ペレットと一緒に押出成形機へ投入できる嵩比重にするためには、同じダイスを使用する場合、ペレット化の際により強く繊維基材粉砕物を押し固める必要があり、溶融混錬時における繊維基材粉砕物の分散性が悪くなるためである。
【0030】
一方、低融点繊維が上記の範囲よりも多いと、相対的に繊維基材(繊維基材粉砕物)が少なくなることで、ペレット化する際に外部からの熱が内部に伝わり易くなり、内部の低融点繊維粉砕物まで溶融固化してしまう。これにより、押出成形機での溶融混錬時に、繊維含有ペレット1が離解分散され難くなり、離解分散されなかった繊維のままの状態で内部に存在すると、複合シートのような押出成形品の製造時にTダイに詰まり、押出方向の裂けや割れが入る不具合が生じるためである。
【0031】
次のペレット化工程S2では、生成した粉砕混合物を、複数のダイス孔を有するダイス上に供給した上で、押圧部材により押圧することにより粉砕混合物をダイス孔に圧縮通過させてペレット状の繊維含有ペレット1に成形する。
【0032】
このペレット化工程S2では、図示は省略するが、例えば、複数のダイス孔を有する円盤状のダイスと、押圧部材としてダイスの上面を転動するローラーと、ダイスの下面に沿って移動するカッターと、ダイスなどを所定温度に加熱するためのヒーターと、を備えた造粒装置を使用することができる。このローラーは、ダイスの中心軸の周りを周回するように設けられている。カッターは、ダイスの中心軸周りに回転するように設けられている。なお、造粒装置のダイスとしては、厚さが50mmで、ダイス孔の上端側の内径が6mmのものを例示することができる。
【0033】
ペレット化工程S2について詳述すると、まず、造粒装置において、ヒーターによりダイスの温度を所定温度(例えば、60~70℃)まで昇温させておく。そして、ダイス上に粉砕混合物を供給すると共に、ローラーを転動させる。ローラーの転動により、ダイス上に供給された粉砕混合物が、ダイス孔に押し込まれる。この際に、ローラーの転動により発生する摩擦熱、粉砕混合物がダイス孔の内周面を摺動することで発生する摩擦熱、などによりダイスの温度が上昇し、ダイス孔の内周面に接している粉砕混合物内の低融点繊維粉砕物が軟化溶融することとなる。
【0034】
なお、ダイスの温度は、低融点繊維(低融点繊維粉砕物)の割合に応じて異ならせるようにすることが望ましい。具体的には、低融点繊維粉砕物の割合が5wt%の場合はダイス外周温度を70℃に、低融点繊維粉砕物の割合が10wt%の場合はダイス外周温度を68℃に、低融点繊維粉砕物の割合が15wt%の場合はダイス外周温度を65℃に、低融点繊維粉砕物の割合が20wt%の場合はダイス外周温度を60℃に、する。これにより、ダイス孔において、混合粉砕物の内部まで低融点繊維粉砕物が溶融してしまうことを抑制しつつ、外周面における40~90%の範囲の低融点繊維粉砕物を溶融固化させることができる。
【0035】
ところで、上述したように、ローラーの転動などによる摩擦熱によりダイスの温度が上昇することとなるが、ダイスの温度が必要以上に高くなると、粉砕混合物がダイス孔を通る際に、ダイス孔の内周面に接する部位よりも中心側の低融点繊維粉砕物も軟化溶融してしまい、内部まで溶融固化した繊維含有ペレットになってしまう恐れがある。そのため、このペレット化工程S2に使用される造粒装置には、ダイスの温度が必要以上に高くならないようにするための冷却機構が設けられている。具体的には、冷却機構によってダイス孔の内周面の温度が、低融点繊維粉砕物の軟化点温度より5~10℃高い温度の範囲内に維持されるようにしている。これにより、粉砕混合物のうち、ダイス孔の内周面と接する低融点繊維粉砕物の一部のみが溶融し、内部の低融点繊維粉砕物が溶融しないようにすることができる。なお、冷却機構としては、ダイスの外周や、ダイスの上方を覆うケーシング(ローラーケーシング)、に対して、水冷ジャケットで囲んだり、外部から冷風を当てたりするものを例示できる。
【0036】
上記のように、ローラーの転動によりダイス孔に押し込まれた粉砕混合物は、押し固められながらダイス孔を通り、ダイス孔から柱状の状態で下方へ出てくる。そして、所定速度で回転しているカッターにより、所定(例えば、10~20mm)の長さに切断される。この際に、溶融した低融点繊維粉砕物が冷えて固化することにより殻状(薄層)の外殻部1aが形成される。これにより、外周面の40~90%の範囲に外殻部1aを有する繊維含有ペレット1が製造される。
【0037】
なお、外殻部1aの範囲を繊維含有ペレット1の外周面の40~90%の範囲としている理由は、外殻部1aがこの範囲よりも小さいと、内部の粉砕混合物(粉砕物部1b)が保持され難くなり、取扱い、持ち運び、保管、などの際にペレットが崩れてしまうためである。そして、崩れ難くするために粉砕混合物を強く押し固めると、嵩比重が大きくなると共にペレットが固まりすぎてしまい、押出成形機での溶融混錬時に繊維基材粉砕物が均一に分散しなくなるためである。一方、外殻部1aがこの範囲よりも大きいと、ペレットの内部まで低融点繊維粉砕物が溶融固化してしまい、押出成形機での溶融混錬時に溶融分散が困難となるためである。
【0038】
本実施形態では、繊維含有ペレット1の嵩比重が0.35~0.55の範囲内になるように、粉砕混合物の供給量とローラーの転動速度とがそれぞれ設定されている。繊維含有ペレット1の嵩比重を上記の範囲内としている理由は、嵩比重が上記の範囲よりも小さいと、熱可塑性樹脂ペレットと一緒に押出成形機のホッパーに投入した場合、嵩比重の大きい熱可塑性樹脂ペレットが多くバレルへ供給されてしまい、所望の混合比で溶融混錬させることができなくなるためである。一方、嵩比重が上記の範囲よりも大きいと、繊維含有ペレット1が固まりすぎてしまい、押出成形機での溶融混錬時に繊維含有ペレット1が十分に離解されず、繊維基材粉砕物が均一に分散しなくなるためである。
【0039】
続いて、本実施形態の繊維含有ペレット1の使用について説明する。繊維含有ペレット1を使用して、例えば、押出成形機により複合シートを製造する場合は、通常の押出成形機のホッパーに、繊維含有ペレット1と熱可塑性樹脂ペレットとを所定の割合で投入する。なお、熱可塑性樹脂ペレットの材質としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン系のホモポリマーやコポリマーやブロックコポリマー、スチレン、ナイロンやアラミドのようなポリアミド、を例示することができる。また、繊維含有ペレット1と熱可塑性樹脂ペレットとの混合比は、複合シートに要求される物性に応じて適宜設定すれば良い。
【0040】
押出成形機のホッパーに投入された繊維含有ペレット1と熱可塑性樹脂ペレットは、両者の間の嵩比重の差が小さいため、一方のみが多くバレルへ供給されるようなことはなく、投入した所望の混合比で両者が溶融混錬された後に、シート状に押し出される。
【0041】
この溶融混錬の際に、繊維含有ペレット1の外殻部1aが簡単に破壊され、内部の粉砕混合物が拡散し易くなると共に、粉砕混合物内の低融点繊維粉砕物が溶融することで繊維基材粉砕物が分散し易くなる。これにより、繊維基材粉砕物が塊となることはなく、低融点繊維粉砕物と熱可塑性樹脂ペレットとの溶融樹脂内に、繊維基材粉砕物が広く分散することとなる。因みに、繊維基材粉砕物が分散した溶融樹脂の溶融粘度(流動性)は、10~40MFR(メルトマスフローレイト)である。
【0042】
また、繊維含有ペレット1では、繊維基材粉砕物と低融点繊維粉砕物との間の所々に微細な隙間が形成されている。そのため、微細な隙間内の空気が押出成形機による混錬溶融時に、繊維基材粉砕物と一緒に分散することとなり、繊維基材粉砕物の繊維の周囲に微細な空気室が形成されることとなる。この空気室の存在により、物性に影響なく3~5wt%軽い複合シートを製造することができる。
【0043】
上記のように、繊維含有ペレット1を使用することで、通常の押出成形機でも熱可塑性樹脂に繊維(繊維基材粉砕物)が均一に分散している複合シートを容易に製造することができる。
【0044】
なお、押出成形機に投入する繊維含有ペレット1と熱可塑性樹脂ペレットとの割合によっては、熱可塑性樹脂に対して繊維(繊維基材粉砕物)が多く(例えば、35~40%)分散している複合シートを製造することもできる。また、複合シートに要求される物性に応じて、添加剤を投入しても良い。
【0045】
このように、本実施形態によれば、従来のように、ヘンシェル混合機を使用して繊維樹脂混錬ペレットを製造する場合と比較して、適度な大きさの溶融混錬物を生成したり、溶融混錬物を粉砕したりする必要はなく、繊維含有ペレット1の製造にかかる工程数を少なくすることができ、従来よりもコストを低減させることができる。
【0046】
また、同じような形態の繊維基材と低融点繊維とを一緒に裁断粉砕して粉砕混合物を生成しているため、繊維基材の粉砕物と低融点繊維の粉砕物とが均一に混合されている粉砕混合物を生成することができる。従って、繊維基材の種類や低融点繊維の種類などの選定、繊維基材と低融点繊維との配合比、などの自由度を従来よりも高くすることができ、より多彩な要望に対応することが可能な繊維含有ペレット1を製造することができる。
【0047】
更に、ダイス孔を有するダイス上に供給された粉砕混合物を、押圧部材としてのローラーによりダイス孔へ押圧することによりペレット化しているため、粉砕混合物の供給量、ローラーの転動速度(押圧回数)、ダイス孔の内径や長さ、ペレット切断の長さ、など適宜設定することにより、熱可塑性樹脂ペレットとの嵩比重の差が小さい繊維含有ペレット1を製造することができる。従って、熱可塑性樹脂ペレットと一緒に押出成形機のホッパーに投入した場合、一方のみが多くバレルへ供給されるようなことはなく、投入した所望の混合比で溶融混錬させることが可能な繊維含有ペレット1を製造することができる。
【0048】
更に、本実施形態によれば、繊維含有ペレット1には、外周面の一部に溶融固化による外殻部1aが形成されているため、外殻部1aによって内部の粉砕混合物(粉砕物部1b)を保持することができ、粉砕混合物が飛散することはなく、取扱い、持ち運び、保管、などが容易である。また、外殻部1aが殻状であるため、押出成形機による溶融混錬時には、外殻部1aが簡単に破壊されることとなり、内部の粉砕混合物が拡散し易い。
【0049】
また、本実施形態によれば、繊維含有ペレット1では、内部の粉砕混合物が溶融固化しておらず粉砕物のままであると共に、繊維基材粉砕物と低融点繊維粉砕物とが均一に混合されているため、押出成形機による溶融混錬時に、低融点繊維粉砕物が軟化溶融することで繊維基材粉砕物が分散し易くなり、低融点繊維粉砕物と熱熱可塑性樹脂ペレットとが溶融している溶融樹脂に対しても繊維基材粉砕物が分散し易くなる。従って、通常の押出成形機を使用して、熱可塑性樹脂に繊維基材粉砕物(繊維)が均一に分散している押出成形品(例えば、複合シート)を製造することができる。
【0050】
また、本実施形態によれば、繊維基材として回収した衣類などを使用することで、繊維含有ペレット1、ひいては、複合シート(複合成形品)、にかかるコストや環境にかかる負荷を低減させることができる。
【0051】
以上、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良および設計の変更が可能である。
【0052】
例えば、上記の実施形態では、繊維含有ペレット1を使用した複合成形品として、複合シートを示したが、これに限定するものではなく、丸棒、角棒、パイプ、型材、などとしても良い。
【符号の説明】
【0053】
1 繊維含有ペレット
1a 外殻部
1b 粉砕物部
S1 粉砕混合工程
S2 ペレット化工程