(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135164
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】電力制御装置
(51)【国際特許分類】
H02M 3/28 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
H02M3/28 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023045713
(22)【出願日】2023-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100135703
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 英隆
(72)【発明者】
【氏名】安井 寛幸
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AA14
5H730AS01
5H730BB21
5H730CC12
5H730CC17
5H730EE01
5H730FD11
5H730FG05
5H730FG22
5H730FV02
5H730FV07
(57)【要約】
【課題】使用中の電源装置に適した制御方式を用いて電力変換回路が動作しているか否かをユーザが把握できるようにする。
【解決手段】電力変換回路13は、入力電圧を出力電圧に変換する。電圧センサ12は、入力電圧を測定する。制御回路14は、複数の制御方式のうちのいずれかを用いて電力変換回路13を制御可能である。制御回路14は、入力電圧の時間的変化に基づいて、複数の制御方式のうちで、電力変換回路13を最も高効率で動作させる制御方式を選択する。出力装置15は、電力変換回路13を最も高効率で動作させる制御方式を示す第1の通知信号を出力する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力電圧を出力電圧に変換する電力変換回路と、
前記入力電圧を測定する電圧センサと、
複数の制御方式のうちのいずれかを用いて前記電力変換回路を制御可能な制御回路であって、前記入力電圧の時間的変化に基づいて、前記複数の制御方式のうちで、前記電力変換回路を最も高効率で動作させる制御方式を選択する制御回路と、
前記電力変換回路を最も高効率で動作させる制御方式を示す第1の通知信号を出力する出力装置と、を備える、
電力制御装置。
【請求項2】
前記制御回路は、前記選択した制御方式を用いて前記電力変換回路を制御する、
請求項1記載の電力制御装置。
【請求項3】
前記複数の制御方式は、第1の制御方式及び第2の制御方式を含み、
前記電力変換回路が前記第1の制御方式で制御されているとき、前記制御回路は、前記入力電圧の時間的変化に基づいて、前記第1の制御方式及び前記第2の制御方式のいずれがより高効率であるかを判断し、
前記第2の制御方式が前記第1の制御方式よりも高効率であると判断されたとき、前記出力装置は、前記第2の制御方式を示す第2の通知信号を出力する、
請求項1記載の電力制御装置。
【請求項4】
前記制御回路は、前記第1の制御方式から前記第2の制御方式に切り換えて前記電力変換回路を制御する、
請求項3記載の電力制御装置。
【請求項5】
前記複数の制御方式は、定電圧制御及び最大電力点追従(MPPT)制御を含む、
請求項1~4のうちの1つに記載の電力制御装置。
【請求項6】
前記制御回路は、前記入力電圧が第1のしきい値より高く、かつ、現在時刻が夜間である場合、前記電力変換回路を最も高効率で動作させる制御方式として前記定電圧制御を選択する、
請求項5記載の電力制御装置。
【請求項7】
前記制御回路は、
所定時間期間にわたる前記入力電圧の変動回数が第2のしきい値より小さい場合、前記電力変換回路を最も高効率で動作させる制御方式として前記MPPT制御を選択し、
前記変動回数が前記第2のしきい値以上である場合、前記電力変換回路を最も高効率で動作させる制御方式として前記定電圧制御を選択する、
請求項5記載の電力制御装置。
【請求項8】
前記制御回路は、
前記電力変換回路のパラメータに対する前記入力電圧の応答時間が第3のしきい値より短い場合、前記電力変換回路を最も高効率で動作させる制御方式として前記MPPT制御を選択し、
前記応答時間が前記第3のしきい値以上である場合、前記電力変換回路を最も高効率で動作させる制御方式として前記定電圧制御を選択する、
請求項5記載の電力制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電力制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、再生可能エネルギーへの関心の高まりから、太陽電池及び風力発電機などの利用が進んでいる。
【0003】
例えば、特許文献1は、風力発電装置及び太陽光発電装置を並列に接続してなる複合発電システムを開示している。本システムは、風力発電装置及び太陽光発電装置にそれぞれDC/DC変換装置を直列に接続するとともに、これら風力発電装置及び太陽光発電装置の直流電力を時分割して出力させることにより、風力発電装置又は太陽光発電装置の直流出力を交互に選択する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
DC/DC変換器のような電力変換回路を動作させるためのさまざまな制御方式が知られている。電力変換回路を最も高効率で動作させる制御方式は、電力変換回路に電力を供給している電源装置の種類(例えば、太陽電池、風力発電機)に応じて異なる。本発明者は、電力変換回路が互いに異なる複数の電源装置のうちのいずれかから電力供給を受ける可能性がある場合、使用中の電源装置に適した制御方式を用いて電力変換回路が動作しているか否かをユーザが把握できず、電力変換回路が最高効率よりも低い効率で動作するおそれがある、という課題を新たに発見した。
【0006】
本開示は、電力変換回路を備える電力制御装置であって、使用中の電源装置に適した制御方式を用いて電力変換回路が動作しているか否かをユーザが把握することができる電力制御装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様によれば、
入力電圧を出力電圧に変換する電力変換回路と、
前記入力電圧を測定する電圧センサと、
複数の制御方式のうちのいずれかを用いて前記電力変換回路を制御可能な制御回路であって、前記入力電圧の時間的変化に基づいて、前記複数の制御方式のうちで、前記電力変換回路を最も高効率で動作させる制御方式を選択する制御回路と、
前記電力変換回路を最も高効率で動作させる制御方式を示す第1の通知信号を出力する出力装置と、を備える。
【0008】
本開示の一態様によれば、
前記制御回路は、前記選択した制御方式を用いて前記電力変換回路を制御する。
【0009】
前記複数の制御方式は、第1の制御方式及び第2の制御方式を含み、
前記電力変換回路が前記第1の制御方式で制御されているときに、前記制御回路は、前記入力電圧の時間的変化に基づいて、前記第1の制御方式及び前記第2の制御方式のいずれがより高効率であるかを判断し、
前記第2の制御方式が前記第1の制御方式よりも高効率であると判断されたとき、前記出力装置は、前記第2の制御方式を示す第2の通知信号を出力する。
【0010】
本開示の一態様によれば、
前記制御回路は、前記第1の制御方式から前記第2の制御方式に切り換えて前記電力変換回路を制御する。
【0011】
本開示の一態様によれば、
前記複数の制御方式は、定電圧制御及び最大電力点追従(MPPT)制御を含む。
【0012】
本開示の一態様によれば、
前記制御回路は、前記入力電圧が第1のしきい値より高く、かつ、現在時刻が夜間である場合、前記電力変換回路を最も高効率で動作させる制御方式として前記定電圧制御を選択する。
【0013】
本開示の一態様によれば、
前記制御回路は、
所定時間期間にわたる前記入力電圧の変動回数が第2のしきい値より小さい場合、前記電力変換回路を最も高効率で動作させる制御方式として前記MPPT制御を選択し、
前記変動回数が前記第2のしきい値以上である場合、前記電力変換回路を最も高効率で動作させる制御方式として前記定電圧制御を選択する。
【0014】
本開示の一態様によれば、
前記制御回路は、
前記電力変換回路のパラメータに対する前記入力電圧の応答時間が第3のしきい値より短い場合、前記電力変換回路を最も高効率で動作させる制御方式として前記MPPT制御を選択し、
前記応答時間が前記第3のしきい値以上である場合、前記電力変換回路を最も高効率で動作させる制御方式として前記定電圧制御を選択する。
【発明の効果】
【0015】
本開示の一態様によれば、使用中の電源装置に適した制御方式を用いて電力変換回路が動作しているか否かをユーザが把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】実施形態に係る電力制御装置1を含むシステムの構成を示すブロック図である。
【
図2】
図1の太陽電池2によって発生される電圧及び電力の特性を概略的に示す図である。
【
図3】
図1の風力発電機3によって発生される電圧及び電力の特性を概略的に示す図である。
【
図4】
図1の制御回路14によって実行される電力制御処理を示すフローチャートである。
【
図5】
図4のステップS3(制御方式決定処理)のサブルーチンを示すフローチャートである。
【
図6】
図5のステップS11(現在時刻に基づく決定処理)のサブルーチンを示すフローチャートである。
【
図7】
図5のステップS12(電圧変動に基づく決定処理)のサブルーチンを示すフローチャートである。
【
図8】
図5のステップS13(電圧応答に基づく決定処理)のサブルーチンを示すフローチャートである。
【
図9】
図8のステップS41における応答時間Trの測定を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る電力制御装置を含むシステムについて説明する。各図面にわたって、同じ符号は同様の構成要素を示す。
【0018】
[実施形態]
[実施形態の構成]
図1は、実施形態に係る電力制御装置1を含むシステムの構成を示すブロック図である。
図1のシステムは、電力制御装置1、太陽電池2、風力発電機3、及び負荷装置4を含む。電力制御装置1は、太陽電池2又は風力発電機3から入力電圧の供給を受け、入力電圧を所定の出力電圧に変換して負荷装置4に供給する。太陽電池2及び風力発電機3は、電源装置の一例である。太陽電池2及び風力発電機3は、直流電圧を出力する。風力発電機3は、交流電動機及び整流回路を備えてもよい。負荷装置4は、直流電圧で動作する。
【0019】
電力制御装置1は、スイッチ11、電圧センサ12、電力変換回路13、制御回路14、出力装置15、及び入力装置16を備える。
【0020】
スイッチ11は、太陽電池2及び風力発電機3の一方を選択的に電力変換回路13に接続する。これにより、太陽電池2又は風力発電機3の出力電圧は、電力変換回路13に入力電圧として供給される。スイッチ11は、ユーザによって手動で切り換えられてもよく、外部装置からの制御信号に応じて電子的に切り換えられてもよい。
【0021】
電圧センサ12は、電力変換回路13の入力電圧を測定する。
【0022】
電力変換回路13は、太陽電池2又は風力発電機3から供給された入力電圧を、所望の出力電圧に変換して負荷装置4に供給する。電力変換回路13は、一次側回路21、トランス22、及び二次側回路23を備えるDC/DCコンバータである。一次側回路21は、制御回路14の制御下で動作する1つ又は複数のスイッチング素子を含み、直流の入力電圧を交流電圧に変換してトランス22の一次巻線に印加する。トランス22は、一次巻線に交流電圧が印加されたとき、二次巻線に交流電圧を発生する。二次側回路23は、整流回路及び平滑化回路を含み、トランス22の二次巻線に発生した交流電圧を直流の出力電圧に変換する。
【0023】
制御回路14は、複数の制御方式のうちのいずれかを用いて電力変換回路13を制御する。複数の制御方式は、例えば、定電圧制御及び最大電力点追従(Max Power Point Tracking:MPPT)制御を含む。制御回路14は、入力装置16を介して取得されるユーザ入力に応じて、負荷装置4への電力供給を開始又は停止するように電力変換回路13を制御する。制御回路14は、電圧センサ12によって測定された入力電圧の時間的変化に基づいて、複数の制御方式のうちで、電力変換回路13を最も高効率で動作させる制御方式を選択する。また、制御回路14は、現在時刻を供給するクロック14aと、電圧センサ12によって測定された入力電圧の履歴を格納するメモリ14bとを備える。
【0024】
出力装置15は、制御回路14によって選択された、電力変換回路13を最も高効率で動作させる制御方式を示す通知信号を出力する。出力装置15は、視覚的な通知信号を発生する表示器であってもよく、聴覚的な通知信号を発生するブザー又はスピーカであってもよい。また、出力装置15は、通信回線を介して遠隔の装置に接続された通信インターフェースであってもよい。この場合、遠隔の装置は、表示器、ブザー、スピーカなどを備える。
【0025】
入力装置16は、負荷装置4への電力供給の開始及び停止を指示するユーザ入力を取得して制御回路14に送る。また、入力装置16は、複数の制御方式のうちのいずれかを指定するユーザ入力を取得して制御回路14に送る。入力装置16は、キーボード及びポインティングデバイスを備えてもよく、通信回線を介して遠隔の装置に接続された通信インターフェースを備えてもよい。
【0026】
ユーザは、出力装置15から出力された通知信号を参照し、入力装置16を用いて、電力変換回路13を最も高効率で動作させる制御方式を指定してもよい。この場合、制御回路14は、入力装置16を介して取得されたユーザ入力によって指定された制御方式を用いて電力変換回路13を制御する。また、制御回路14は、制御回路14自体によって選択された制御方式(電力変換回路13を最も高効率で動作させる制御方式)を用いて電力変換回路13を自動的に制御してもよい。
【0027】
[実施形態の動作]
まず、
図2及び
図3を参照して、太陽電池2及び風力発電機3を高効率で動作させるための電力変換回路の制御方式について説明する。
【0028】
図2は、
図1の太陽電池2によって発生される電圧及び電力の特性を概略的に示す図である。概して、太陽電池では、日射の強さに応じて発生する電力の最大値が変化し、ピーク点P1,P2に示すように、発生する電力の最大値が変化すると、電力が最大化される電圧も変化する。日射の強さは気象に応じて変化するが、比較的、変化速度は緩慢である。従って、太陽電池2の発電効率を最大化するために、制御回路14は、望ましくは、動作電圧を変動させることで最大電力点を探索するMPPT制御を用いて電力変換回路13を制御する。制御回路14は、一次側回路21のデューティ比を変化させることにより、電力変換回路13の動作電圧(入力電圧)を変化させる。デューティ比を低下させると入力電圧は増大し、デューティ比を増大させると入力電圧は低下する。
【0029】
図3は、
図1の風力発電機3によって発生される電圧及び電力の特性を概略的に示す図である。概して、風力発電機では、風速に応じて発生する電力の最大値が変化し、ピーク点P11,P12に示すように、発生する電力の最大値が変化しても、電力が最大化される電圧は変化しない。風力発電機3では風速によって発電可能な電力が大きく変化するので(風速の3乗)、MPPT制御では発電電力を有効に活用することができない。風力発電機3の発電電力に対して電力変換回路13で変換する電力が小さすぎると、風車の回転数が大きくなりすぎてしまい、風力発電機3を傷つけてしまう可能性がある。反対に、風力発電機3の発電電力に対して電力変換回路13で変換する電力が大きすぎると、風車の回転を抑制してしまい、発電効率が落ちてしまう。従って、風力発電機3の発電効率を最大化するために、制御回路14は、望ましくは、定電圧制御を用いて電力変換回路13を制御する。
【0030】
定電圧動作点の電圧は、例えば、電力変換回路13の動作電圧を意図的に変動させ、最大電力となったときの電圧として決定されてもよい。また、定電圧動作点の電圧は、このような決定処理を複数回にわたって実行し、決定された複数の電圧の平均値又は最頻値として決定されてもよい。定電圧動作点の電圧は、電力制御装置1の設計時又は製造時に予め決定されてもよく、電力制御装置1の以前の動作時に決定されてもよい。定電圧動作点の電圧は、不揮発性メモリ(図示せず)に格納される。
【0031】
1つの電力変換回路13を用いて太陽電池2によって発生された電力及び風力発電機3によって発生された電力の両方を変換する場合、上記の問題から、電力変換回路13の制御方式を切り換えることが望ましい。すなわち、太陽電池2によって発生された電力を変換する場合、MPPT制御を用いて電力変換回路13を制御し、風力発電機3によって発生された電力を変換する場合、定電圧制御を用いて電力変換回路13を制御する。これにより、再生可能エネルギーを最大限に活用することができる。そのため、システムの稼働前に、システムが具備する不揮発性メモリなどに、使用される電源装置の種類を予め記憶させることが考えられる。しかし、システム施工者の人為的ミスなどにより設定を間違えた場合、ユーザは設定の誤りを認識できず、その結果、発電効率が落ちた状態を長期間にわたって継続してしまう可能性がある。例えば、太陽電池2によって発生された電力を変換する際に定電圧制御を用いて電力変換回路13を制御する場合、
図2の点P3に示すように、必ずしも最大電力点で動作させることができない可能性がある。一方、風力発電機3によって発生された電力を変換する際にMPPT制御を用いて電力変換回路13を制御する場合、最大電力点を決定するための無駄な探索を継続してしまう可能性がある。MPPT制御において最大電力点を探索している間は、電力変換回路13は最大効率で動作しない。加えて、一般的に日射の変化は緩慢であり、MPPT制御の制御周期は低速である。風力発電機3のように電力カーブが頻繁に変化する環境でMPPT制御を行うと、最大電力点の探索が完了せず、常に探索を継続するような動作となり、効率よく発電することができない。
【0032】
従って、電力変換回路13の制御方式を切り換えるために、使用中の電源装置に適した制御方式を用いて電力変換回路13が動作しているか否かをユーザが把握することが求められる。以下、この課題を解決する実施形態に係る電力制御装置1の動作について説明する。
【0033】
図4は、
図1の制御回路14によって実行される電力制御処理を示すフローチャートである。
【0034】
ステップS1において、制御回路14は、負荷装置4への電力供給の開始を指示するユーザ入力を入力装置16から取得したか否かを判断し、YESのときはステップS2に進み、NOのときはステップS1を繰り返す。
【0035】
ステップS2において、制御回路14は、電圧センサ12によって測定された現在の入力電圧Vinがしきい値Vthを超えているか否かを判断し、YESのときはステップS3に進み、NOのときは処理を終了する。しきい値Vthは、0Vに設定されてもよく、電力変換回路13が動作可能な最低電圧の近傍に設定されてもよい。
【0036】
ステップS3において、制御回路14は、制御方式決定処理を実行し、使用中の電源装置に適した制御方式、すなわち、電力変換回路13を最も高効率で動作させる制御方式を決定する。
【0037】
ステップS4において、制御回路14は、使用中の電源装置に適した制御方式を示す通知信号を出力装置15から出力させることでユーザに通知する。
【0038】
ステップS5において、制御回路14は、入力装置16を介して取得されたユーザ入力に応じて、使用中の電源装置に適した制御方式を用いて電力変換回路13を制御する。また、制御回路14は、使用中の電源装置に適した制御方式を用いて電力変換回路13を自動的に制御してもよい。
【0039】
ステップS6において、制御回路14は、負荷装置4への電力供給の停止を指示するユーザ入力を入力装置16から取得したか否かを判断し、YESのときは処理を終了し、NOのときはステップS3に戻る。
【0040】
電力変換回路13の始動後にステップS4を実行するとき、制御回路14は、使用中の電源装置に適した制御方式が使用中の制御方式とは異なる場合にのみ通知信号(又は警告)を出力装置15から出力させてもよい。
【0041】
図5は、
図4のステップS3(制御方式決定処理)のサブルーチンを示すフローチャートである。制御回路14は、ステップS11~S13を並列に実行する。ステップS11において、制御回路14は、現在時刻に基づく決定処理を実行する。ステップS12において、制御回路14は、電圧履歴に基づく決定処理を実行する。ステップS13において、制御回路14は、電圧応答に基づく決定処理を実行する。
【0042】
図6は、
図5のステップS11(現在時刻に基づく決定処理)のサブルーチンを示すフローチャートである。
【0043】
ステップS21において、制御回路14は、クロック14aから現在時刻を取得する。
【0044】
ステップS22において、制御回路14は、現在時刻が夜間であるか否かを判断し、YESのときはステップS23に進み、NOのときは
図5の処理に戻る。
【0045】
ステップS23において、制御回路14は、定電圧制御を、使用中の電源装置に適した制御方式として決定する。夜間にしきい値Vthを超える入力電圧Vinが発生している場合、太陽電池2ではなく風力発電機3からの入力電圧が電力変換回路13に印加されていると考えられる。
【0046】
一方、夜間にしきい値Vthを超える入力電圧Vinが発生していない場合、太陽電池2が使用されているのか、それとも、風力発電機3が使用されかつ無風状態にあるのか判断できない。この場合、制御回路14は、使用中の電源装置に適した制御方式として、予め決められたいずれかの制御方式を設定するか、最後に使用された制御方式を設定する。
【0047】
図7は、
図5のステップS12(電圧変動に基づく決定処理)のサブルーチンを示すフローチャートである。
【0048】
ステップS31において、制御回路14は、メモリ14bから、入力電圧Vinの履歴を読み出す。
【0049】
ステップS32において、制御回路14は、所定時間期間にわたる入力電圧Vinの変動回数Nvを計算する。例えば、制御回路14は、3分間にわたる入力電圧Vinの平均値Vavを計算し、しきい値V1=Vav×0.5及びV2=Vav×1.5を設定し、入力電圧Vinがしきい値V1又はV2を交差する回数を変動回数Nvとして計算してもよい。
【0050】
ステップS33において、制御回路14は、変動回数Nvがしきい値Nth(例えば、Nth=10)未満であるか否かを判断し、YESのときはステップS34に進み、NOのときはステップS35に進む。
【0051】
ステップS34において、制御回路14は、MPPT制御を、使用中の電源装置に適した制御方式として決定する。前述したように、一般的に日射の変化は緩慢であるので、変動回数Nvがしきい値Nthである場合、太陽電池2からの入力電圧が電力変換回路13に印加されていると考えられる。
【0052】
ステップS35において、制御回路14は、定電圧制御を、使用中の電源装置に適した制御方式として決定する。風力の変化は日射の変化よりも頻繁であるので、変動回数Nvがしきい値Nth以上である場合、風力発電機3からの入力電圧が電力変換回路13に印加されていると考えられる。
【0053】
図8は、
図5のステップS13(電圧応答に基づく決定処理)のサブルーチンを示すフローチャートである。
【0054】
ステップS41において、制御回路14は、一次側回路21のデューティ比Dを100%から0%に変更し、入力電圧Vinの応答時間Trを測定する。
【0055】
図9は、
図8のステップS41における応答時間Trの測定を説明するための図である。電源装置の負荷(すなわち、電力変換回路13に流れる電流)が大きくなると、電源装置の出力電圧が低下する。太陽電池2は、負荷の変動に対して、ほぼ瞬時に応答するが、風力発電機3は、負荷の変動に対して、より長い応答時間を有する。従って、制御回路14は、例えば、一次側回路21のデューティ比Dを100%から0%に変更してから、入力電圧Vinが所定のしきい値V0(例えば、定格電圧の90%)に達するまでの応答時間Trを測定する。
【0056】
図8のステップS42において、制御回路14は、応答時間Trがしきい値Tth未満であるか否かを判断し、YESのときはステップS43に進み、NOのときはステップS44に進む。しきい値Tthは、例えば、100ミリ秒に設定される。
【0057】
ステップS43において、制御回路14は、MPPT制御を、使用中の電源装置に適した制御方式として決定する。
【0058】
ステップS44において、制御回路14は、定電圧制御を、使用中の電源装置に適した制御方式として決定する。
【0059】
[実施形態の効果]
実施形態に係る電力制御装置1によれば、電力変換回路13を最も高効率で動作させる制御方式を示す通知信号を出力するので、ユーザは、使用中の電源装置に適した制御方式を把握し、この制御方式を用いて電力変換回路を制御することができる。制御回路14は、例えば電力変換回路13の始動時に、電力変換回路13を最も高効率で動作させる制御方式を用いて電力変換回路13を自動的に制御してもよい。
【0060】
実施形態に係る電力制御装置1によれば、制御回路14は、ある制御方式を用いて電力変換回路13を制御している場合、入力電圧の時間的変化に基づいて、電力変換回路13をより高効率で動作させる他の制御方式を選択してもよい。電力変換回路13をより高効率で動作させる制御方式を示す通知信号を出力することで、ユーザは、使用中の電源装置に適した制御方式を用いて電力変換回路が動作しているか否かを把握することができる。使用中の電源装置に適した制御方式を用いて電力変換回路が動作していない場合、ユーザは、電力変換回路13をより高効率で動作させる制御方式を用いて電力変換回路13を動作させることができる。制御回路14は、電力変換回路13をより高効率で動作させる制御方式を用いて電力変換回路13を自動的に制御してもよい。
【0061】
実施形態に係る電力制御装置1によれば、1つの電力変換回路13に複数の電源装置を接続したシステムにおいて、予め設定された電源装置が実際に接続されているかを判別し、間違っている場合に警告することができる。実施形態に係る電力制御装置1によれば、このようなシステムにおいて、接続される電源装置を予め設定する必要がない。
【0062】
[他の実施形態]
制御回路14は、
図5のステップS11~S13のうちの1つ又は2つのみを実行してもよい。
【0063】
電源装置は、風力発電機3に限らず、水力発電機などのように、モータを含む他の発電機を備えてもよい。モータを含む発電機は、風力発電機3と同様に
図3に示すような特性を有し、定電圧制御を用いて電力変換回路13を高効率で動作させることができる。
【0064】
電力変換回路13は、
図1に示すようにスイッチ11を介して複数の電源装置に接続されることに代えて、スイッチ11を介することなく、未知の1つの電源装置に接続されてもよい。
【0065】
電力変換回路13は、
図1に示すようなトランス22を備える絶縁型コンバータに限らず、トランスを含まない非絶縁型コンバータであってもよい。
【0066】
負荷装置4が交流電圧で動作する場合、電力制御装置1は、DC/DCコンバータである電力変換回路13に代えて、DC/ACインバータを備えてもよい。
【0067】
図4のステップS2のしきい値Vthは、予め設定されてもよく、電力制御装置1の設置後に、入力電圧Vinの履歴に基づいて計算されてもよい。また、
図7のステップS33のしきい値Nthは、予め設定されてもよく、電力制御装置1の設置後に、入力電圧Vinの履歴及び変動回数Nvの履歴に基づいて計算されてもよい。また、
図8のステップS42のしきい値Tthは、予め設定されてもよく、電力制御装置1の設置後に、使用中の電源装置の実際の応答時間Trに基づいて計算されてもよい。
【0068】
制御回路14、出力装置15、及び入力装置16は、電力制御装置1に一体化されることに限定されず、通信回線を介して電力変換回路13から遠隔して設けられてもよい。
【0069】
[実施形態のまとめ]
本開示の第1の態様によれば、
入力電圧を出力電圧に変換する電力変換回路と、
前記入力電圧を測定する電圧センサと、
複数の制御方式のうちのいずれかを用いて前記電力変換回路を制御可能な制御回路であって、前記入力電圧の時間的変化に基づいて、前記複数の制御方式のうちで、前記電力変換回路を最も高効率で動作させる制御方式を選択する制御回路と、
前記電力変換回路を最も高効率で動作させる制御方式を示す第1の通知信号を出力する出力装置と、を備える。
【0070】
本開示の第2の態様によれば、第1の態様において、
前記制御回路は、前記選択した制御方式を用いて前記電力変換回路を制御する。
【0071】
本開示の第3の態様によれば、第1又は第2の態様において、
前記複数の制御方式は、第1の制御方式及び第2の制御方式を含み、
前記電力変換回路が前記第1の制御方式で制御されているときに、前記制御回路は、前記入力電圧の時間的変化に基づいて、前記第1の制御方式及び前記第2の制御方式のいずれがより高効率であるかを判断し、
前記第2の制御方式が前記第1の制御方式よりも高効率であると判断されたとき、前記出力装置は、前記第2の制御方式を示す第2の通知信号を出力する。
【0072】
本開示の第4の態様によれば、第3の態様において、
前記制御回路は、前記第1の制御方式から前記第2の制御方式に切り換えて前記電力変換回路を制御する。
【0073】
本開示の第5の態様によれば、第1~第4のうちの1つの態様において、
前記複数の制御方式は、定電圧制御及び最大電力点追従(MPPT)制御を含む。
【0074】
本開示の第6の態様によれば、第5の態様において、
前記制御回路は、前記入力電圧が第1のしきい値より高く、かつ、現在時刻が夜間である場合、前記電力変換回路を最も高効率で動作させる制御方式として前記定電圧制御を選択する。
【0075】
本開示の第7の態様によれば、第5の態様において、
前記制御回路は、
所定時間期間にわたる前記入力電圧の変動回数が第2のしきい値より小さい場合、前記電力変換回路を最も高効率で動作させる制御方式として前記MPPT制御を選択し、
前記変動回数が前記第2のしきい値以上である場合、前記電力変換回路を最も高効率で動作させる制御方式として前記定電圧制御を選択する。
【0076】
本開示の第8の態様によれば、第5の態様において、
前記制御回路は、
前記電力変換回路のパラメータに対する前記入力電圧の応答時間が第3のしきい値より短い場合、前記電力変換回路を最も高効率で動作させる制御方式として前記MPPT制御を選択し、
前記応答時間が前記第3のしきい値以上である場合、前記電力変換回路を最も高効率で動作させる制御方式として前記定電圧制御を選択する。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本開示の態様に係る電力制御装置は、1つの電力変換回路を用いて複数の電源装置によって発生された電力の両方を変換するマルチソースパワーコンディショナに適用可能である。
【符号の説明】
【0078】
1 電力制御装置
2 太陽電池
3 風力発電機
4 負荷装置
11 スイッチ
12 電圧センサ
13 電力変換回路
14 制御回路
14a クロック
14b メモリ
15 出力装置
16 入力装置
21 一次側回路
22 トランス
23 二次側回路