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  • 特開-亜塩素酸水の製造方法 図1
  • 特開-亜塩素酸水の製造方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135166
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】亜塩素酸水の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 11/08 20060101AFI20240927BHJP
   C02F 1/72 20230101ALI20240927BHJP
【FI】
C01B11/08
C02F1/72 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023045716
(22)【出願日】2023-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】523102737
【氏名又は名称】株式会社吉川
(74)【代理人】
【識別番号】100087664
【弁理士】
【氏名又は名称】中井 宏行
(72)【発明者】
【氏名】富重 光宏
【テーマコード(参考)】
4D050
【Fターム(参考)】
4D050AA20
4D050AB46
4D050BB09
4D050BC10
4D050BD02
(57)【要約】      (修正有)
【課題】製造時の安全性、製造コストが格段に向上した亜塩素酸水の製造方法を提供する。
【解決手段】亜塩素酸の製造方法は、次亜塩素酸粉末に特定の処理水を加えて生成した次亜塩素酸水に、過酸化水素水を混合させ、自然反応させることで亜塩素酸水を生成する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
次亜塩素酸水に過酸化水素水を混合させることで亜塩素酸水を製造することを特徴とする、亜塩素酸水の製造方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記次亜塩素酸水は、次亜塩素酸粉末に特定の処理水を加えることで生成している、亜塩素酸水の製造方法。
【請求項3】
請求項1において、
前記特定の処理水は、金属イオンの溶け込んだミネラル水である、亜塩素酸水の製造方法。
【請求項4】
請求項1または2または3において、
前記亜塩素酸水と前記過酸化水素水は、同一の容器に混合して自然反応によって製造することを特徴とする、亜塩素酸水の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は亜塩素酸水を工業的に安価に量産できる新規な製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
亜塩素酸水は、次亜塩素酸水や次亜塩素酸ナトリウムと比べると、殺菌剤としては高い反応性を有するものとは言えないが、緩やかな反応性に富み、選択力の高い効力と、長い持続性を持つ。
このため、これまでの塩素酸化物系の薬剤が苦手として来た、有機物が多く存在する汚れた環境下でも、選択的に脂質膜や特定のアミノ酸に対して、ゆっくりと、かつ持続的に、殺菌効果を発揮することができる。
また、細菌類や真菌類に対する殺菌効果やウイルス類の不活化効果が、次亜塩素酸水に比べて安全性が高いことから、加工食品類の原材料の殺菌剤としての用途などが種々研究されている。
【0003】
次の特許文献1,2には、亜塩素酸水を工業的に製造する方法が開示され、提案されている。
すなわち、特許文献1は、塩素酸ナトリウム水溶液と硫酸とを反応させて塩素酸を発生させ、これに過酸化水素水を加えて亜塩素酸水を生成することを特徴としている。
また、特許文献2は、塩を電気分解して塩素酸塩またはその水溶液を得る工程に、塩素酸塩またはその水溶液を還元して亜塩素酸を含む水溶液を製造する工程を加えて、亜塩素酸水を製造することを特徴としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5201555号公報
【特許文献2】特開2022-121439号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1による製造方法では、pH値を2.3~3.4に維持した、酸性度の高い硫酸を用いるため製造時に細心の注意が必要である。
また、特許文献2による製造方法では、塩化ナトリウムを電気分解する方法を用いるために、電気分解装置が必須となる、という問題があった。
これに対して本発明は劇薬である強硫酸を用いず、また、電気分解方法を用いない新規で安価な亜塩素酸水の製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による亜塩素酸水の製造方法は、次亜塩素酸水に過酸化水素水を混合させることで亜塩素酸水を製造することを特徴とするものである。
この場合に使用する次亜塩素酸水は、次亜塩素酸粉末に、純粋や精製水は使用せずに、金属イオンの溶け込んだミネラル水を加える。
【発明の効果】
【0007】
本発明による亜塩素酸水の製造方法では、劇薬である強硫酸を用いないので製造時の安全性が格段に向上する。
また、電気分解方法を用いないので、電気分解のための設備も必要とせず、そのために製造コストを著しく安価にできる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】分析試験成績書の分析試験結果を示す表である。
図2図1の分析試験成績表で使用した亜塩素酸水と同じ濃度のものを数ケ月自然放置した後の濃度変化を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施例では、次亜塩素酸と過酸化水素水とを同一の容器に混合し自然反応によって亜塩素酸水を得た。
このときの化学反応式は次のようになる。
HClO + 2H → HClO + HO + H↑ + O

次亜塩素酸(HClO)と過酸化水素(H2)を混合すると、水素ガス(H)と、酸素ガス(O)が発生したので、ガスの発生が終了するまで自然放置した(約24時間)。
有害な塩素は発生せず、無臭であった。
また、生成された亜塩素酸水は無色であった。
【0010】
亜塩素酸水は、次亜塩素酸水とは異なり、水溶液中のpHによって分子活性種が変わることがない。
亜塩素酸水の主たる有効成分である亜塩素酸(HClO)は、水溶液中では、解離状態の亜塩素酸(H・ClO -)と平衡関係を維持しているが、この亜塩素酸の活性分子種は、塩素過酸化ラジカル(ClOO・)といわれ、分子型の殺菌材料である。
また、この塩素過酸化ラジカルは、ガス化合物である二酸化塩素(ClO)より熱力学的にもエネルギーが低く、水溶液中に永く存在する。
また、塩素過酸化ラジカルは、塩素ラジカルやヒドロキシラジカルとも異なり、水溶液中では、常に水分子と相互作用を引き起こすため、より熱力学的に長寿命のラジカルとして存在し、水溶液中の水和電子を受けることによって、解離状態の亜塩素酸に変換され、その一連の流れはサイクル反応と呼ばれている。
【0011】
本発明の製造方法では、次亜塩素酸水は、粉末の次亜塩素酸を特定の処理水に溶解させたものを使用する。
ここで、特定の処理水は純水や精製水は望ましくなく、金属イオンが溶け込んだミネラルウォーターが望ましい。また、一般の水道水でも可能である。
これは、本発明者も正しい理論分析は出来ていないが、純水を用いて製造した亜塩素酸水は、純水中でのラジカル結合のため、水素と塩素の結合が緩み、それぞれが水素ガス、塩素ガスとして揮発するので、亜塩素酸の成分量が減少してしまう。しかしこれに対して、ミネラルウォーターや水道水を用いたものでは、水溶液中に金属イオンがあるため、水素と塩素の結合が緩んで容易に分離することはなく、安定化した状態が維持されるものと思われる。
【0012】
つまり、処理水としてミネラル水や水道水を用いたものでは、亜塩素酸水中の浮遊イオンが水溶液中の金属イオンに作用して無くなり、亜塩素酸水の安定性が向上するものと思われる。
【0013】
本発明による亜塩素酸水の製造方法では、硫酸を用いないので製造時の安全性が格段に向上する。また原料となる次亜塩素酸や過酸化水素水は工業原料として市販されているので原料コストが抑えられ、電気分解装置も使用しないので、設備コストも著しく抑えられる。
【0014】
このようにして製造された亜塩素酸水は適宜希釈して日常生活用の殺菌、消毒剤として利用でき、また食品添加剤としても利用できる。
【実施例0015】
実験例として、次亜塩素酸水50cc(濃度は2.4%)に、過酸化水素水100cc(濃度3.0%)を混合して自然反応させ、24時間後には、亜塩素酸水150ccが得られた。濃度は、1.4%であった。
【0016】
本発明による亜塩素酸水の製造方法に基づいて製造された亜塩素酸水溶液を、一般財団法人日本食品分析センターにおいて分析試験したところ、図1に示す分析試験結果が得られた。
また、かくして製造された、1.4%相当の濃度の亜塩素酸水を、3ケ月自然放置し、同様に一般財団法人日本食品分析センターにおいて濃度変化を計測したところ、濃度が1.9%に上昇したことが確認された(図2)。
【0017】
この結果から、本発明によって製造された亜塩素酸水は、自然放置によっても濃度低下はなく、かえって濃度が上昇した結果を得ている。
自然放置した場合に濃度が低下する場合は、生成した亜塩素酸水は他の物質に変化するために安定性が良いとは言えないが、濃度が上昇していることは、水分が蒸発した結果であると推察しても、それほど水溶液が減っていないので、安定した効果を呈していることが確認された。
図1
図2