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特開2024-135169偏光型エンコーダ、およびその偏光遮光板
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  • 特開-偏光型エンコーダ、およびその偏光遮光板 図1
  • 特開-偏光型エンコーダ、およびその偏光遮光板 図2
  • 特開-偏光型エンコーダ、およびその偏光遮光板 図3
  • 特開-偏光型エンコーダ、およびその偏光遮光板 図4
  • 特開-偏光型エンコーダ、およびその偏光遮光板 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135169
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】偏光型エンコーダ、およびその偏光遮光板
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/347 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
G01D5/347 110A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023045719
(22)【出願日】2023-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000203634
【氏名又は名称】多摩川精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119264
【弁理士】
【氏名又は名称】富沢 知成
(72)【発明者】
【氏名】濱 信治
【テーマコード(参考)】
2F103
【Fターム(参考)】
2F103BA37
2F103CA02
2F103DA13
2F103EA12
2F103EB33
2F103EC14
(57)【要約】      (修正有)
【課題】偏光型エンコーダの高分解能化を可能とする技術を提供すること。
【解決手段】偏光型エンコーダ10は、光源1と、偏光方向を回転により変化させる偏光ディスク2と、スリットパターン3を有し偏光ディスク2からの偏光光を受ける偏光遮光板4と、偏光遮光板4からの偏光光を検出するフォトセンサ5と、フォトセンサ5による検出光を処理して角度データを生成する信号処理手段6とから構成され、その偏光遮光板4におけるスリットパターン3が異なる三以上の偏光光を出射する構成とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、
偏光方向を回転により変化させる偏光ディスクと、
スリットパターンを有し偏光ディスクからの偏光光を受ける偏光遮光板と、
該偏光遮光板からの偏光光を検出するフォトセンサと、
該フォトセンサによる検出光を処理して角度データを生成する信号処理手段とを備えてなる偏光型エンコーダにおける偏光遮光板であって、
該スリットパターンは異なる三以上の偏光光を出射する
ことを特徴とする、偏光型エンコーダの偏光遮光板。
【請求項2】
前記スリットパターンが回転角度により異なる偏光光を出射するよう形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の偏光型エンコーダの偏光遮光板。
【請求項3】
前記スリットパターンが、中心と、該中心から外方へ広がる広がり形態とからなることを特徴とする、請求項2に記載の偏光型エンコーダの偏光遮光板。
【請求項4】
前記広がり形態が同心円状の形態であることを特徴とする、請求項3に記載の偏光型エンコーダの偏光遮光板。
【請求項5】
請求項4に記載の偏光遮光板を備えていることを特徴とする、偏光型エンコーダ。
【請求項6】
フォトセンサがイメージセンサまたはラインセンサであることを特徴とする、請求項5に記載の偏光型エンコーダ。
【請求項7】
フォトセンサが、複数の受光素子の配列からなるセンサアレイの構造を有することを特徴とする、請求項5に記載の偏光型エンコーダ。












【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は偏光型エンコーダ、およびその偏光遮光板に係り、特に、偏光型エンコーダの高分解能化技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光学式エンコーダの分解能は日進月歩で向上しており、市販品においても25bit以上の分解能の物が主流になっている。従前はパターンの刻まれたディスクが用いられてきた。現在はそれに替わる方式として、直線的な偏光効果のあるディスクと受光素子との間に、同じく偏光効果のあるグレーティングを置くことによってシャッター効果を発生せしめ、それによって正弦波状の波形が得られる、という原理を応用した偏光型エンコーダが開発されている(特開2016-53562、特開2018-128276など)。この方式の場合、得られた2相の正弦波を処理することにより、角度情報を得ている。
【0003】
かかる方式の偏光型エンコーダに関する特許出願等は、上記文献の他にもなされている。たとえば後掲特許文献1には、光源の光強度を一定に保つ光学式エンコーダとして、偏光方向が回転により変化する光学スケール、光学スケールを介した入射光を検出する検出部、および光源の発光を制御する制御部を備え、検出部は第1偏光方向に分離された光の強度を検出する第1検出部、第2偏光方向に分離された光の強度を検出する第2検出部、第3偏光方向に分離された光の強度を検出する第3検出部、入射光の強度を検出する第4検出部からなり、制御部は第4検出部で検出される入射光の強度が予め設定した光強度の範囲内となるように光源の光強度をフィードバック制御する、という構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-7753号公報「光学センサ及び光学式エンコーダ」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記各文献開示技術がとるスリットとグレーティングを用いる現状の方式では、高分解能化を求めてその延長線上を進めても、既に限界に到達しつつあると考えられる。
【0006】
図5は、従来の偏光型エンコーダの構成および作用を示す説明図である(なお図中の「赤外LED」は光源51の例である)。すなわち、当該方式の偏光型エンコーダ510においては、一つのフォトセンサ55においてある単一方向の偏光方位角の光しか捉えられない。加えて、偏光遮光板54のスリットパターン53は直線のみであり、そのため、ある程度の面積が必要となる。そうすると、光源51の投影面積との関係から得られる出力波形はせいぜい4相程度までとなり、波形分割にも限界がある。したがって、さらなる分解能向上を図ることは現状の方式では困難であり、全く新しい方式によるブレークスルーが求められる。
【0007】
そこで本発明が解決しようとする課題は、かかる従来技術の限界を踏まえ、偏光型エンコーダの高分解能化を可能とする新たなる方式、技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明者は上記課題について検討した結果、異なる三以上の偏光方位角の光を透過させるスリットパターンを有する偏光遮光板という着想を得るに至った。つまり、上述の従来技術では2相の正弦波を処理して角度情報を得ているところ、このグレーティングのスリットを、たとえば検光子の円周状に設けるパターンとすることで、その接線上に偏光が発生し、受光する位置で位相がずれた正弦波信号が発生するため、受光素子を多数配置することで多相の正弦波が得られ、分解能を向上させることができる。かかる発案に基づいて本発明を完成するに至った。すなわち、上記課題を解決するための手段として本願で特許請求される発明、もしくは少なくとも開示される発明は、以下の通りである。
【0009】
〔1〕 光源と、偏光方向を回転により変化させる偏光ディスクと、スリットパターンを有し偏光ディスクからの偏光光を受ける偏光遮光板と、該偏光遮光板からの偏光光を検出するフォトセンサと、該フォトセンサによる検出光を処理して角度データを生成する信号処理手段とを備えてなる偏光型エンコーダにおける偏光遮光板であって、該スリットパターンは異なる三以上の偏光光を出射することを特徴とする、偏光型エンコーダの偏光遮光板。
〔2〕 前記スリットパターンが回転角度により異なる偏光光を出射するよう形成されていることを特徴とする、〔1〕に記載の偏光型エンコーダの偏光遮光板。
〔3〕 前記スリットパターンが、中心と、該中心から外方へ広がる広がり形態とからなることを特徴とする、〔2〕に記載の偏光型エンコーダの偏光遮光板。
〔4〕 前記広がり形態が同心円状の形態であることを特徴とする、〔3〕に記載の偏光型エンコーダの偏光遮光板。
【0010】
〔5〕 〔4〕に記載の偏光遮光板を備えていることを特徴とする、偏光型エンコーダ。
〔6〕 フォトセンサがイメージセンサまたはラインセンサであることを特徴とする、〔5〕に記載の偏光型エンコーダ。
〔7〕 フォトセンサが、複数の受光素子の配列からなるセンサアレイの構造を有することを特徴とする、〔5〕に記載の偏光型エンコーダ。
【発明の効果】
【0011】
本発明の偏光型エンコーダ、およびその偏光遮光板は上述のように構成されるため、これらによれば、偏光型エンコーダの分解能を従来よりも飛躍的に高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の偏光型エンコーダ、およびその偏光遮光板の構成を概念的に示す説明図である。
図2】本発明の偏光型エンコーダの偏光遮光板におけるスリットパターンの構成を概念的に示す説明図である。
図3】本発明に係る偏光遮光板のスリットパターンの構成例の一部を示す説明図である。
図4】本発明の偏光型エンコーダおよびその偏光遮光板の構成例について、その作用を示す説明図である。
図5】従来の偏光型エンコーダの構成および作用を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面により本発明を詳細に説明する。
図1は、本発明の偏光型エンコーダ、およびその偏光遮光板の構成を概念的に示す説明図である。図示するように本発明偏光型エンコーダ10は、光源1と、偏光方向を回転により変化させる偏光ディスク2と、スリットパターン3を有し偏光ディスク2からの偏光光を受ける偏光遮光板4と、偏光遮光板4からの偏光光を検出するフォトセンサ5と、フォトセンサ5による検出光を処理して角度データを生成する信号処理手段6とから構成され、その偏光遮光板4におけるスリットパターン3が異なる三以上の偏光光を出射することを、特徴的な構成とする。すなわち本発明の基礎は、かかる構成の偏光遮光板4である。
【0014】
かかる構成の本発明偏光型エンコーダ10では、光源1から照射された光は、これが入射する偏光ディスク2の回転によって偏光方向が変化せしめられ、偏光方向の変化した偏光光は偏光遮光板4に入射してスリットパターン3による処理がなされ、かかる処理がなされて出射した偏光光はフォトセンサ5によって検出され、フォトセンサ5による検出光は信号処理手段6において処理され、これにより角度データが生成する、という各作用が起きる。
【0015】
この中で特に、偏光遮光板4による偏光光の処理においては、本発明の特徴たるスリットパターン3の構成によって、異なる三以上の偏光光が出射せしめられる。これにより本発明によれば、偏光遮光板4での処理後に三相以上の正弦波すなわち多相正弦波が生じてフォトセンサ5により検出されるため、多相出力を得ることができ、分解能の向上が可能となる。
【0016】
上記の作用を得るために本発明に係るスリットパターン3は、偏光遮光板4上の回転角度によって異なる偏光光を出射するよう形成されている。その具体的な構成について、以下、図2等により説明する。
【0017】
図2は、本発明の偏光型エンコーダの偏光遮光板におけるスリットパターンの構成を概念的に示す説明図である。図示するように本偏光型エンコーダの偏光遮光板4は、具体的には、そのスリットパターン3が、中心7と、そこから外方へ広がる広がり形態8とからなる構成とすることができる。かかる構成によって、偏光遮光板4上の回転角度によって異なる偏光光を出射することができる。なお、スリットパターン3におけるスリットピッチは光源の波長以下とする。
【0018】
図3は、本発明に係る偏光遮光板のスリットパターンの構成例の一部を示す説明図である。図示するように本発明に係るスリットパターン23は、その広がり形態28として同心円状の形態を用いたものとすることができる。かかる構成により、広がり形態28の各部位ではスリットの接線方向の偏光光のみが通される。
【0019】
円は、各部位すなわち各周方向位置(回転角度)によって接線の方向が異なる。たとえば、同心円状である本広がり形態28中のある部位A(点A)を任意に決め、そこから5°CW方向にずれた部位B(点B)、10°CCW方向にずれた部位C(点C)に着目した場合、これら三つの各部位A、B、Cにおける接線の方向は、みな異なる。そうすると、偏光遮光板24に入射してきた偏光光は、各部位A、B、Cの接線方向と同一の方向を有する偏光光のみが部位(スリット)をフォトセンサ側へと通過するため、通過後の偏光光の位相はみな異なるものとなる。
【0020】
円をなす点は無限であり、仮に360°の1°ごとに部位を規定した場合であっても180もの異なる位相の正弦波が偏光遮光板24通過後に存在し得ることとなり、相当多数の正弦波が得られることとなる。すなわち、同心円状の広がり形態28を有する本スリットパターン23によれば、位相が少しずつずれた極めて多数の正弦波を得ることが可能である。したがって、フォトセンサとしてかかる多数の正弦波に対応可能な構造・構成のものを用いることにより、多数の位相の出力が得られ、偏光型エンコーダの高分解能化が可能となる。
【0021】
なお、同心円状の広がり形態28を有する本スリットパターン23においては、同一の円周方向上位置(回転角度)、つまり中心27からの同一半径上位置であれば、接線方向は同一であり、したがって偏光遮光板24を通過することにより生じる偏光光の位相は同一である。たとえば部位Aが半径r上にある場合、同じ半径r上の別の部位0.5A、1.5A等を通過した偏光光の位相はみな部位Aのそれと同一である。
【0022】
したがって、同一位相の正弦波を得られるスリットパターン23上の範囲は、中心27から広がり形態28の周縁までの範囲であり、広がり形態28を形成する全てのスリットすなわち全ての同心円において、部位が同一の半径r上である限り、同一位相の正弦波を得ることができる。
【0023】
図4は、本発明の偏光型エンコーダおよびその偏光遮光板の構成例について、その作用を示す説明図である。図示するように本偏光型エンコーダ210は光源21と、偏光方向を回転により変化させる偏光ディスク22と、スリットパターン23を有していて偏光ディスク22からの偏光光を受ける偏光遮光板24と、偏光遮光板24からの偏光光を検出するフォトセンサ25と、フォトセンサ25による検出光を処理して角度データを生成する信号処理手段26とから構成される。図示するように、光源21としては赤外LEDを、またフォトセンサ25としてはセンサアレイ等を好適に用いることができる。
【0024】
偏光遮光板24のスリットパターン23としては上述した同心円状の広がり形態を有するものが用いられ、それによって、偏光遮光板24の通過後には位相が異なる多数の偏光光が得られる。偏光光は、センサアレイ等の狭いピッチで配列された多数の受光素子からなるフォトセンサ25に受光され、多相正弦波が得られ、信号処理手段26(信号処理回路)での処理によって、高分解能の角度データが生成される。
【0025】
狭いピッチで配列された受光素子により構成されるフォトセンサ25としては、センサアレイの他、イメージセンサやラインセンサ等を好適に用いることができる。センサアレイの場合、用いられる受光素子数は、300*300=90000 あるいはそれ以上であり、単純には9万相もの位相に対応可能である。対応可能な位相数が仮に3万相だとしても、分解能としては32bitにもなり、従来技術の限界である15bitレベルとは比較にならないほど高分解能である。なお、センサアレイ等は本発明に用いるフォトセンサの一例であり、受光素子を3個、あるいは数個程度用いる構成であっても、本発明の範囲内である。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明の偏光型エンコーダ、およびその偏光遮光板によれば、偏光型エンコーダを従来よりも飛躍的に高分解能化することができる。したがって、エンコーダ製造・使用分野、および関連する全分野において、産業上利用性が高い発明である。
【符号の説明】
【0027】
1、21…光源
2、22…偏光ディスク
3、23…スリットパターン
4、24…偏光遮光板
5、25…フォトセンサ
6、26…信号処理手段
7、27…中心
8、28…広がり形態
10、210…偏光型エンコーダ
51…光源
52…偏光ディスク
53…スリットパターン
54…偏光遮光板
55…フォトセンサ
56…信号処理回路
510…偏光型エンコーダ
図1
図2
図3
図4
図5