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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135180
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】巻線機器
(51)【国際特許分類】
   H01F 30/10 20060101AFI20240927BHJP
   H01F 27/08 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
H01F30/10 S
H01F30/10 C
H01F30/10 A
H01F27/08 150
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023045742
(22)【出願日】2023-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000003942
【氏名又は名称】日新電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】前地 洋明
(72)【発明者】
【氏名】松原 克夫
【テーマコード(参考)】
5E050
【Fターム(参考)】
5E050BA03
5E050JA01
(57)【要約】
【課題】巻線機器に発生する渦電流損を低減する。
【解決手段】1次巻線(11)と、2次巻線(12)と、1次巻線および2次巻線が巻回された環状の鉄心(13)と、1次巻線に接続された第1伝熱板(14)と、2次巻線に接続された第2伝熱板(15)と、を備え、1次巻線および2次巻線は、鉄心の、互いに異なる位置に巻回され、第1伝熱板および第2伝熱板は、1次巻線と2次巻線とに挟まれた領域には位置しない。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1次巻線と、
2次巻線と、
前記1次巻線および前記2次巻線が巻回された環状の鉄心と、
前記1次巻線に接続された第1伝熱板と、
前記2次巻線に接続された第2伝熱板と、を備え、
前記1次巻線および前記2次巻線は、前記鉄心の、互いに異なる位置に巻回され、
前記第1伝熱板および前記第2伝熱板は、前記1次巻線と前記2次巻線とに挟まれた領域には位置しない、巻線機器。
【請求項2】
前記第1伝熱板に接続された第1冷却機構と、
前記第2伝熱板に接続された第2冷却機構と、をさらに備え、
前記第1冷却機構および前記第2冷却機構は、前記鉄心に対して互いに逆側に位置する、請求項1に記載の巻線機器。
【請求項3】
前記第1伝熱板および前記第2伝熱板は、前記1次巻線および前記2次巻線の一方から他方へ向かう方向に平行であるように配されている、請求項1に記載の巻線機器。
【請求項4】
前記第1伝熱板は、前記1次巻線の内側に接するように配され、
前記第2伝熱板は、前記2次巻線の内側に接するように配されている、請求項1に記載の巻線機器。
【請求項5】
前記鉄心に接続された鉄心伝熱板をさらに備え、
前記鉄心伝熱板は、前記1次巻線および前記2次巻線の一方から他方へ向かう方向に平行であるように配されている、請求項1に記載の巻線機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、巻線機器に関する。
【背景技術】
【0002】
巻線を備える巻線機器では、巻線に電流が流れたときに生じるジュール熱などを効率よく冷却することが求められている。下記特許文献1には、内側巻線および外側巻線と、鉄心と、内側巻線を冷却する第1冷却ジャケットと、外側巻線を冷却する第2冷却ジャケットとを備える変圧器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2023-14684号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の変圧器では、1次巻線と2次巻線とが同心状に配されている。さらに、1次巻線と2次巻線との間での漏れ磁束が、第1冷却ジャケットおよび第2冷却ジャケットに鎖交する。このため、大きな渦電流損が発生する可能性がある。
【0005】
本開示の一態様は、巻線間に発生する漏れ磁束に起因する渦電流損を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本開示の一態様に係る巻線機器は、1次巻線と、2次巻線と、前記1次巻線および前記2次巻線が巻回された環状の鉄心と、前記1次巻線に接続された第1伝熱板と、前記2次巻線に接続された第2伝熱板と、を備え、前記1次巻線および前記2次巻線は、前記鉄心の、互いに異なる位置に巻回され、前記第1伝熱板および前記第2伝熱板は、前記1次巻線と前記2次巻線とに挟まれた領域には位置しない。
【発明の効果】
【0007】
本開示の一態様によれば、巻線間に発生する漏れ磁束に起因する渦電流損を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示の一実施形態に係る変圧器の外観を示す斜視図である。
図2】本開示の一実施形態に係る変圧器を、Y軸方向に見たX-Z平面図である。
図3図2にIII-III線として表された位置での変圧器の切断部端面図である。
図4図2にIV-IV線として表された位置での変圧器の切断部端面図である。
図5】1次巻線および2次巻線の構成を示す斜視図である。
図6図4に示した断面での、1次巻線と2次巻線との間隙に生じる漏れ磁束を表す端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の一実施形態について、詳細に説明する。以下の説明において、図面には、互いに直行するX軸、Y軸、およびZ軸の座標軸を示している。この座標軸において、変圧器1の高さ方向をZ軸方向とし、Z軸に直行する平面において変圧器1(巻線機器)の奥行方向をY軸方向とし、Z軸およびY軸と互いに直行する方向をX軸方向とする。
【0010】
〔変圧器1〕
図1は、本開示の一実施形態に係る変圧器1の外観を示す斜視図である。図2は、変圧器1を、Y軸方向から見たX-Z平面図である。図3は、図2にIII-III線として表された位置での変圧器1の切断部端面図である。図4は、図2にIV-IV線として表された位置での変圧器1の切断部端面図である。変圧器1は、本開示に係る巻線機器の一例である。ただし、本開示に係る巻線機器は、巻線、鉄心、鉄心伝熱板、冷却機構、および巻線が発する熱を冷却機構に伝熱する伝熱板を有する物であれば特に限定されない。
【0011】
図1から図4に示すように、変圧器1は、1次巻線11と、2次巻線12と、鉄心13と、第1伝熱板14と、第2伝熱板15と、鉄心伝熱板16と、第1冷却機構17と、第2冷却機構18と、を備える。
【0012】
〔1次巻線11および2次巻線12〕
1次巻線11および2次巻線12は、それぞれ鉄心13に巻回される巻線である。1次巻線11および2次巻線12は、導電材で形成されており、例えばリッツ線などの被覆された導電線を用いて構成される。1次巻線11および2次巻線12は、例えば角環状に鉄心13に巻回されていてよい。
【0013】
1次巻線11および2次巻線12の各部寸法は、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向に、それぞれ互いに略同寸法であってよい。また、1次巻線11および2次巻線12の外観も、互いに略同形であってよい。1次巻線11および2次巻線12の、各部寸法および外観が互いに同じであれば、1次巻線11と2次巻線12とを同一の部材として製造できる。したがって、例えば1次巻線11の外側に2次巻線12が巻回される場合と比較して、1次巻線11および2次巻線12の製造コストを低減できる。
【0014】
1次巻線11は、封止樹脂111により封止されていてもよい。また、2次巻線12は、封止樹脂121により封止されていてもよい。封止樹脂111および封止樹脂121は、例えばエポキシ樹脂などの合成樹脂と、アルミナまたはシリカなどのフィラーとを含んでいてよい。封止樹脂111および封止樹脂121は、例えばモールド注型によって形成されていてよい。
【0015】
〔鉄心13〕
鉄心13は、1次巻線11および2次巻線12が巻回された環状のコアである。鉄心13は、例えば角環状であってよい。鉄心13は、例えば、珪素鋼板、フェライト、アモルファス合金、またはナノ結晶軟磁性材料などの強磁性材料を用いて構成されていてよい。
【0016】
鉄心13は、帯状の材料を渦巻き状に巻いた構造を有していてよい。この場合、鉄心13の厚さ方向が、帯状の材料の平面に沿う方向に含まれる。この場合、鉄心13においては、厚さ方向における熱伝導性が、帯状の材料の平面に沿わない方向における熱伝導性よりも高くなる。ただし、鉄心13の構造はこれに限られない。また、鉄心13は、上下方向における中央において、上下に分割可能である。
【0017】
1次巻線11および2次巻線12は、鉄心13の互いに異なる位置に巻回されている。これは、1次巻線11と、2次巻線12とが、鉄心13における任意の部位を共有しないと換言できる。図1において、1次巻線11は、鉄心13の手前側の部位に配されている。2次巻線12は、鉄心13の奥行側の部位に配されている。このとき、1次巻線11および2次巻線12は、Y-Z平面における鉄心13の対角線の交点を中心として、互いに対向する位置に配される。ただし、1次巻線11と2次巻線12との位置関係はこれに限られない。
【0018】
〔第1伝熱板14および第2伝熱板15〕
第1伝熱板14は、1次巻線11が発する熱を第1冷却機構17に熱伝導するための板状部材である。第1伝熱板14は、1次巻線11に接続されている。第2伝熱板15は、2次巻線12が発する熱を第2冷却機構18に熱伝導するための板状部材である。第2伝熱板15は、2次巻線12に接続されている。第1伝熱板14および第2伝熱板15は、高い熱伝導性を有する金属で形成されてよい。第1伝熱板14および第2伝熱板15を形成する金属の具体例として、銅またはアルミニウムが挙げられる。
【0019】
図5は、1次巻線11、2次巻線12、第1伝熱板14および第2伝熱板15の構成を示す斜視図である。第1伝熱板14および第2伝熱板15は、1次巻線11と2次巻線12とに挟まれた、他の領域よりも漏れ磁束が大きい領域には位置しない。
【0020】
第1伝熱板14および第2伝熱板15は、1次巻線11および2次巻線12の一方から他方へ向かう方向に平行であるように配されていてよい。ただし、第1伝熱板14および第2伝熱板15の配置はこれに限られない。
【0021】
また、変圧器1が備える第1伝熱板14および第2伝熱板15の数は、それぞれ2枚である。図1などに示すように、2枚の第1伝熱板14は、互いに平行であるように配されていてよい。また、2枚の第2伝熱板15は、互いに平行であるように配されていてよい。ただし、第1伝熱板14および第2伝熱板15の数および位置関係は、上記の例に限られない。
【0022】
図1などに示したように、第1伝熱板14は、1次巻線11の内側に接するように配されていてよい。また、第2伝熱板15は、2次巻線12の内側に接するように配されていてよい。これにより、第1伝熱板14が1次巻線11の外側に接し、第2伝熱板15が2次巻線12の外側に接する場合と比較して、鉄心伝熱板16と第1伝熱板14および第2伝熱板15との間の距離が近くなるため、後述する第1連結板171を小さくできる。ただし、第1伝熱板14は、1次巻線11の外側に接していてもよい。また、第2伝熱板15は、2次巻線12の外側に接していてもよい。
【0023】
第1伝熱板14と1次巻線11とは、例えば第1伝熱板14と1次巻線11とを接触させた状態で、それらを封止樹脂111で固定することで互いに接続されてよい。第2伝熱板15と2次巻線12とについても、封止樹脂121で固定することで互いに接続されてよい。
【0024】
第1伝熱板14の、1次巻線11に当接する面、および、第2伝熱板15の、2次巻線12に当接する面に、高熱伝導樹脂または高熱伝導プリプレグにより絶縁層(不図示)が形成されていてもよい。この場合、1次巻線11で発生した熱を、絶縁層を介して第1冷却機構17に効率よく伝えることができる。また、2次巻線12で発生した熱を、絶縁層を介して第2伝熱板15に効率よく伝えることができる。
【0025】
〔鉄心伝熱板16〕
鉄心伝熱板16は、鉄心13が発する熱を、第1冷却機構17および第2冷却機構18に熱伝導するための板状部材である。鉄心伝熱板16は、鉄心13に接続されている。鉄心伝熱板16は、高い熱伝導性を有する金属で形成されてよい。鉄心伝熱板16を形成する金属の具体例として、銅またはアルミニウムが挙げられる。
【0026】
本実施形態においては、変圧器1が備える鉄心伝熱板16の数は2組4枚である。2組の鉄心伝熱板16は、鉄心13を挟むように、かつ互いに平行であるように配されている。さらに、1組の鉄心伝熱板16は、上下2分割可能な鉄心13の、上下の部位のそれぞれに対応して、上下に配置されている。また、図3に示すように、鉄心伝熱板16は、1次巻線11および2次巻線12の一方から他方へ向かう方向に平行であるように配されていてもよい。ただし、鉄心伝熱板16の数および配置はこれに限られない。
【0027】
鉄心13と鉄心伝熱板16とは、高熱伝導プリプレグにより接着されていてもよい。これにより、鉄心13から鉄心伝熱板16への熱伝導性を向上させると共に、鉄心伝熱板16の接触による鉄心13の損傷を防ぐことができる。
【0028】
〔第1冷却機構17および第2冷却機構18〕
第1冷却機構17は、第1伝熱板14および鉄心伝熱板16から伝導された熱を外部に放熱する冷却機構である。第1冷却機構17は、第1連結板171および第1放熱部172を備える。第2冷却機構18は、第2伝熱板15および鉄心伝熱板16から伝導された熱を外部に放熱する冷却機構である。第2冷却機構18は、第2連結板181および第2放熱部182を備える。
【0029】
第1連結板171および第2連結板181は、高い熱伝導性を有する金属で形成された板状の部材であってよい。第1連結板171および第2連結板181の材料の具体例として、銅またはアルミニウムが挙げられる。また、第1連結板171および第2連結板181の材料は、第1伝熱板14および鉄心伝熱板16の材料と同じであっても異なっていてもよい。
【0030】
第1連結板171は、第1伝熱板14および鉄心伝熱板16の端部に接続される。第2連結板181は、第2伝熱板15および鉄心伝熱板16の端部に接続される。第1伝熱板14および鉄心伝熱板16の端部への第1連結板171の接続、並びに、第2伝熱板15および鉄心伝熱板16の端部への第2連結板181の接続の方法は、例えばボルト締めであってよいが、これに限られない。
【0031】
上述したとおり、変圧器1は、第1伝熱板14および上側の鉄心伝熱板16をそれぞれ2枚備える。本実施形態では、第1伝熱板14および上側の鉄心伝熱板16の、それぞれの一方が接続される第1連結板171と、他方が接続される第1連結板171とが互いに別体となっている。ただし、これらの第1連結板171は互いに一体であってもよい。
【0032】
また、上述したとおり、変圧器1は、第2伝熱板15および下側の鉄心伝熱板16をそれぞれ2枚備える。本実施形態では、第2伝熱板15および下側の鉄心伝熱板16の、それぞれの一方が接続される第2連結板181と、他方が接続される第2連結板181とが互いに別体となっている。ただし、これらの第2連結板181は互いに一体であってもよい。
【0033】
第1放熱部172は、第1連結板171に重畳される。第1放熱部172は、第1連結板171を介して第1伝熱板14および上側の鉄心伝熱板16から伝導された熱を外部に放熱する。第2放熱部182は、第2連結板181に重畳される。第2放熱部182は、第2連結板181を介して第2伝熱板15および下側の鉄心伝熱板16から伝導された熱を外部に放熱する。
【0034】
第1放熱部172および第2放熱部182は、図1に示すように、複数の放熱フィンを備えるヒートシンクであってよい。この場合、第1放熱部172は、空気が放熱フィンに沿って流れることにより、1次巻線11および鉄心13で発生した熱を当該空気と熱交換して当該熱を冷却するように構成されている。また、第2放熱部182は、空気が放熱フィンに沿って流れることにより、2次巻線12および鉄心13で発生した熱を当該空気と熱交換して当該熱を冷却するように構成されている。この場合、第1冷却機構17は、第1放熱部172に送風するための送風機構をさらに備えていてもよい。また、第2放熱部182は、第2放熱部182に送風するための送風機構をさらに備えていてもよい。
【0035】
ただし、第1冷却機構17および第2放熱部182は、図1に示したヒートシンクに限定されない。例えば第1冷却機構17および第2放熱部182は、熱を水などの液体に放熱する液冷機構であってもよい。
【0036】
第1連結板171と第1放熱部172との間、および、第2連結板181と第2放熱部182との間には、熱伝導性を向上させるグリスが塗布されていてよい。これにより、第1伝熱板14および鉄心伝熱板16から第1放熱部172までの熱伝導性、並びに、第2伝熱板15および鉄心伝熱板16から第2放熱部182までの熱伝導性を向上させることができる。
【0037】
第1伝熱板14および鉄心伝熱板16を、第1放熱部172に直接接続する場合、第1伝熱板14および鉄心伝熱板16の端面の高さおよび角度を高い精度で合わせることが求められる。そこで、変圧器1の製作では、第1伝熱板14および鉄心伝熱板16の位置および角度を規定する治具を使い、当該位置および角度が所定の精度となるよう仕上げる。さらに、第1伝熱板14および鉄心伝熱板16を、第1連結板171を介して第1放熱部172に接続することで、鉄心13および鉄心伝熱板16と一体化することができるので、変圧器1の組み立てが容易になる。同じ理由で、第2伝熱板15および鉄心伝熱板16を、第2連結板181を介して第2放熱部182に接続することで、変圧器1の組み立てが容易になる。
【0038】
ただし、変圧器1においては、第1連結板171および第2連結板181は省略されてもよい。第1伝熱板14および鉄心伝熱板16を第1放熱部172に直接接続可能な場合は、第1伝熱板14および鉄心伝熱板16を第1放熱部172に直接接続したほうが、熱伝導性が高くなる。また、第2伝熱板15および鉄心伝熱板16の端面を第2伝熱板15および鉄心伝熱板16を第2放熱部182に直接接続可能な場合は、第2伝熱板15および鉄心伝熱板16を第2放熱部182に直接接続したほうが、熱伝導性が高くなる。
【0039】
第1冷却機構17および第2冷却機構18は、鉄心13に対して互いに逆側に位置してよい。これにより、第1冷却機構17および第2冷却機構18のそれぞれからの放熱量を均一化し、効率よく放熱できる。ただし、第1冷却機構17および第2冷却機構18の位置関係は、必ずしもこれに限られない。
【0040】
〔効果〕
図6は、図4に示した断面での、1次巻線11と2次巻線12との間隙に生じる漏れ磁束130を表す断面図である。視認性を考慮し、図6においては、図4に現れていた構成要素の一部を省略している。
【0041】
上述したとおり、第1伝熱板14および第2伝熱板15は、1次巻線11と2次巻線12とに挟まれた領域には位置しない。具体的には、第1伝熱板14および第2伝熱板15は、図6の紙面に垂直な方向における、紙面よりも手前側および奥側にそれぞれ位置する。このため、1次巻線11と2次巻線12とに挟まれた領域に第1伝熱板14および第2伝熱板15が位置する場合と比較して、1次巻線11と2次巻線12との間隙に生じる漏れ磁束130が、第1伝熱板14および第2伝熱板15に鎖交しにくくなる。したがって、漏れ磁束130が第1伝熱板14および第2伝熱板15に鎖交することに起因する渦電流損が低減される。
【0042】
また、上述したとおり、変圧器1においては、第1伝熱板14および第2伝熱板15は、1次巻線11および2次巻線12の一方から他方へ向かう方向に平行であるように配されていてよい。この場合、漏れ磁束130が、第1伝熱板14および第2伝熱板15に、より鎖交しにくくなる。
【0043】
また、上述したとおり、変圧器1においては、鉄心伝熱板16が、1次巻線11および2次巻線12の一方から他方へ向かう方向に平行であるように配されていてよい。この場合、漏れ磁束130が、第1伝熱板14および第2伝熱板15に加えて、鉄心伝熱板16にも鎖交しにくくなる。
【0044】
また、1次巻線11と2次巻線12とを同心状に巻いた場合、外側に位置する巻線の長さは、内側に位置する巻線の大きさによって限定される。すなわち、外側に位置する巻線の線路長を、内側に位置する巻線の線路長よりも長くする必要がある。しかし、線路長を長くすることで、線路における抵抗損が大きくなる。
【0045】
変圧器1においては、1次巻線11と、2次巻線12と、が互いに異なる位置に配される。これにより、1次巻線11および2次巻線12の長さは、相互の巻線の大きさによって限定されない。したがって、巻線の線路長を短くし、線路長に起因する抵抗損を低減できる。
〔まとめ〕
【0046】
本開示は、以下のようにも表現される。
【0047】
本開示の態様1に係る巻線機器は、1次巻線と、2次巻線と、前記1次巻線および前記2次巻線が巻回された環状の鉄心と、前記1次巻線に接続された第1伝熱板と、前記2次巻線に接続された第2伝熱板と、を備え、前記1次巻線および前記2次巻線は、前記鉄心の、互いに異なる位置に巻回され、前記第1伝熱板および前記第2伝熱板は、前記1次巻線と前記2次巻線とに挟まれた領域には位置しない。
【0048】
本開示の態様2に係る巻線機器は、態様1において、前記第1伝熱板に接続された第1冷却機構と、前記第2伝熱板に接続された第2冷却機構と、をさらに備え、前記第1冷却機構および前記第2冷却機構は、前記鉄心に対して互いに逆側に位置する。
【0049】
本開示の態様3に係る巻線機器は、態様1または2において、前記第1伝熱板および前記第2伝熱板は、前記1次巻線および前記2次巻線の一方から他方へ向かう方向に平行であるように配されている。
【0050】
本開示の態様4に係る巻線機器は、態様1から3のいずれかにおいて、前記第1伝熱板は、前記1次巻線の内側に接するように配され、前記第2伝熱板は、前記2次巻線の内側に接するように配されている。
【0051】
本開示の態様5に係る巻線機器は、態様1から4のいずれかにおいて、前記鉄心に接続された鉄心伝熱板をさらに備え、前記鉄心伝熱板は、前記1次巻線および前記2次巻線の一方から他方へ向かう方向に平行であるように配されている。
【0052】
本開示は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本開示の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0053】
1 変圧器
11 1次巻線
12 2次巻線
13 鉄心
14 第1伝熱板
15 第2伝熱板
16 鉄心伝熱板
17 第1冷却機構
18 第2冷却機構
図1
図2
図3
図4
図5
図6