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特開2024-135189光学検査方法、光学検査プログラム、及び、光学検査装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135189
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】光学検査方法、光学検査プログラム、及び、光学検査装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/57 20060101AFI20240927BHJP
   G01N 21/27 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
G01N21/57
G01N21/27 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】25
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023045753
(22)【出願日】2023-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】391016358
【氏名又は名称】東芝情報システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】大野 博司
(72)【発明者】
【氏名】加納 宏弥
(72)【発明者】
【氏名】神川 卓大
(72)【発明者】
【氏名】岡野 英明
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 さゆり
(72)【発明者】
【氏名】平川 千紗
(72)【発明者】
【氏名】大野 啓文
(72)【発明者】
【氏名】高木 義昭
【テーマコード(参考)】
2G059
【Fターム(参考)】
2G059AA05
2G059BB08
2G059EE02
2G059EE11
2G059EE13
2G059FF01
2G059HH02
2G059KK04
2G059MM01
(57)【要約】
【課題】 物体の情報を取得し得る光学検査方法を提供すること。
【解決手段】 実施形態によれば、光学検査方法は、物点からの少なくとも2つの異なる波長スペクトルを含む光を、波長選択部により選択的に通過させ、波長スペクトルの光を受光できる少なくとも2つのカラーチャンネルを有する撮像部によって物点を撮像させること、物点に対する少なくとも2つのカラーチャンネルでの受光データに基づいて、少なくとも2つの異なる波長スペクトルの光をそれぞれ異なる方向を持つ信号ベクトルとすること、信号ベクトルの方向に基づいて物点における光の方向分布の広がりを推定処理することを含む。
【選択図】 図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物点からの少なくとも2つの異なる波長スペクトルを含む光を波長選択部により選択的に通過させ、前記波長スペクトルの光を受光できる少なくとも2つのカラーチャンネルを有する撮像部によって前記物点を撮像させること、
前記物点に対する前記少なくとも2つのカラーチャンネルでの受光データに基づいて、前記少なくとも2つの異なる波長スペクトルの光をそれぞれ異なる方向を持つ信号ベクトルとすること、
前記信号ベクトルの方向に基づいて前記物点における前記光の方向分布の広がりを推定処理すること、
を含む、光学検査方法。
【請求項2】
前記信号ベクトルは、前記少なくとも2つのカラーチャンネルの画素値を互いに直交する座標上に取った色座標空間における点を終点とするベクトルである、
請求項1に記載の光学検査方法。
【請求項3】
前記推定処理することは、前記受光データによる撮像画像とリファレンス画像とを照合して、前記物点における前記光の方向分布の広がりを推定処理することを含む、
請求項1又は請求項2に記載の光学検査方法。
【請求項4】
照明光は少なくとも2つの異なる第1の波長スペクトルと第2の波長スペクトルを持つとし、前記第1の波長スペクトルの光に含まれない少なくとも一つの波長の光を遮蔽する第1の波長選択領域と、前記第2の波長スペクトルの光に含まれない少なくとも一つの波長の光を遮蔽する第2の波長選択領域とを有する波長選択部に前記照明光を通過させ、物点に前記照明光を照射させるとともに、
撮像部の撮像開口を通過した光によって画像として写される前記物点を含む物体面を境界として、前記撮像部に近い側を撮像側とし、前記撮像部から遠い側を照明側とし、
前記物点に対し、前記第1の波長選択領域に対応する第1の照明側立体角と、前記第2の波長選択領域に対応する第2の照明側立体角とを規定し、
前記物点に対し、前記撮像開口に対応する撮像開口立体角を規定し、
前記第1の照明側立体角あるいは前記第2の照明側立体角のどちらか一方が前記撮像開口立体角と共通領域を持たないようにして、前記第1の波長スペクトルの光及び前記第2の波長スペクトルの光を受光できる少なくとも2つのカラーチャンネルを有する前記撮像部によって前記物点を撮像させること、
前記物点に対する前記少なくとも2つのカラーチャンネルでの受光データに基づいて、前記第1の波長スペクトルの光及び前記第2の波長スペクトルの光をそれぞれ異なる方向を持つ信号ベクトルとすること、
前記信号ベクトルの方向に基づいて前記物点における前記光の方向分布の広がりを推定処理すること、
を含む、光学検査方法。
【請求項5】
前記少なくとも2つの異なる波長スペクトルの光を、光拡散部によって拡散させて通過させた後、さらに前記波長選択領域を通過させること、を含む、
請求項4に記載の光学検査方法。
【請求項6】
前記少なくとも2つの異なる波長スペクトルの光を合波させた後、さらに前記光拡散部を通過させること、を含む、
請求項5に記載の光学検査方法。
【請求項7】
物点からの少なくとも2つの異なる波長スペクトルの光を波長選択部により選択的に通過させ、前記波長スペクトルの光を受光できる少なくとも2つのカラーチャンネルを有する撮像部によって前記物点を撮像させ、
前記物点に対する前記少なくとも2つのカラーチャンネルでの受光データに基づいて、前記少なくとも2つの異なる波長スペクトルの光をそれぞれ異なる方向を持つ信号ベクトルとし、
前記信号ベクトルの方向に基づいて前記物点における前記光の方向分布の広がりを推定処理させる、
ことをコンピュータに実行させる、光学検査プログラム。
【請求項8】
照明光は少なくとも2つの異なる第1の波長スペクトルと第2の波長スペクトルを持つとし、前記第1の波長スペクトルの光に含まれない少なくとも一つの波長の光を遮蔽する第1の波長選択領域と、前記第2の波長スペクトルの光に含まれない少なくとも一つの波長の光を遮蔽する第2の波長選択領域とを有する波長選択部に前記照明光を通過させ、物点に前記照明光を照射させるとともに、
撮像部の撮像開口を通過した光によって画像として写される前記物点を含む物体面を境界として、前記撮像部に近い側を撮像側とし、前記撮像部から遠い側を照明側とし、
前記物点に対し、前記第1の波長選択領域に対応する第1の照明側立体角と、前記第2の波長選択領域に対応する第2の照明側立体角とを規定し、
前記物点に対し、前記撮像開口に対応する撮像開口立体角を規定し、
前記第1の照明側立体角あるいは前記第2の照明側立体角のどちらか一方が前記撮像開口立体角と共通領域を持たないようにして、前記第1の波長スペクトルの光及び前記第2の波長スペクトルの光を受光できる少なくとも2つのカラーチャンネルを有する前記撮像部によって前記物点を撮像させること、
前記物点に対する前記少なくとも2つのカラーチャンネルでの受光データに基づいて、前記第1の波長スペクトルの光及び前記第2の波長スペクトルの光をそれぞれ異なる方向を持つ信号ベクトルとすること、
前記信号ベクトルの方向に基づいて前記物点における前記光の方向分布の広がりを推定処理すること、
をコンピュータに実行させる、光学検査プログラム。
【請求項9】
請求項7又は請求項8に記載の光学検査プログラムを実装する処理部を有する、光学検査装置。
【請求項10】
物点からの少なくとも2つの異なる波長スペクトルの光を波長選択部により選択的に通過させ、前記波長スペクトルの光を受光できる少なくとも2つのカラーチャンネルを有する撮像部によって前記物点を撮像させ、
前記物点に対する前記少なくとも2つのカラーチャンネルでの受光データに基づいて、前記少なくとも2つの異なる波長スペクトルの光をそれぞれ異なる方向を持つ信号ベクトルとし、
前記信号ベクトルの方向に基づいて前記物点における前記光の方向分布の広がりを推定処理する、
処理部を有する、光学検査装置。
【請求項11】
前記少なくとも2つの異なる波長スペクトルの光に対する前記信号ベクトルが、互いに線形独立になるように構成された光学系を有する、
請求項10に記載の光学検査装置。
【請求項12】
前記処理部によって制御される前記カラーチャンネルを有する前記撮像部と、
前記物点からの前記少なくとも2つの異なる波長スペクトルを含む光を選択的に通過させる前記波長選択部と、
前記波長選択部は前記物点と前記撮像部との間に備えるとし、
前記波長選択部を通過せずに撮像可能となる光を遮蔽する遮蔽部と
を有する、請求項10に記載の光学検査装置。
【請求項13】
前記波長選択部は、
前記少なくとも2つの異なる波長スペクトルを含む光のうちの第1の波長スペクトルの光に含まれない少なくとも一つの波長の光を遮蔽する第1の波長選択領域と、第2の波長スペクトルの光に含まれない少なくとも一つの波長の光を遮蔽する第2の波長選択領域と、
を有し、
前記遮蔽部は、前記第1の波長選択領域と前記第2の波長選択領域との間に設けられ、前記第1の波長スペクトルの光および前記第2の波長スペクトルの光を遮蔽する遮蔽領域を有する、
請求項12に記載の光学検査装置。
【請求項14】
少なくとも2つの異なる波長スペクトルを含む照明光のうちの第1の波長スペクトルの光に含まれない少なくとも一つの波長の光を遮蔽する第1の波長選択領域と、第2の波長スペクトルの光に含まれない少なくとも一つの波長の光を遮蔽する第2の波長選択領域と、を有し、物点に向けて前記照明光を通過させる波長選択部と、
前記物点からの反射光の、前記第1の波長スペクトルの光と前記第2の波長スペクトルの光とを、それぞれ異なる方向の信号ベクトルとして受光するカラーチャンネルを有するイメージセンサーを有する撮像部と、
前記イメージセンサーで前記物点からの光を受光する撮像開口を規定する遮蔽部と、
を備え、
前記撮像開口を通過した光によって画像として写される前記物点を含む物体面を境界として、前記撮像部に近い側を撮像側とし、前記撮像部から遠い側を照明側とし、
前記物点に対し、前記第1の波長選択領域に対応する第1の照明側立体角と、前記第2の波長選択領域に対応する第2の照明側立体角とを規定し、
前記物点に対し、前記撮像開口に対応する撮像開口立体角を規定し、
前記遮蔽部は、前記第1の照明側立体角あるいは前記第2の照明側立体角のどちらか一方が前記撮像開口立体角と共通領域を持たないように、前記撮像開口を規定する、
光学検査装置。
【請求項15】
少なくとも2つの異なる波長スペクトルを含む照明光のうちの第1の波長スペクトルの光に含まれない少なくとも一つの波長の光を遮蔽する第1の波長選択領域と、第2の波長スペクトルの光に含まれない少なくとも一つの波長の光を遮蔽する第2の波長選択領域と、を有し、物点に向けて前記照明光を通過させる波長選択部と、
前記物点からの、
前記第1の波長スペクトルの光を受光する第1のカラーチャンネルと、
前記第2の波長スペクトルの光を受光する第2のカラーチャンネルと
を各画素に有し、前記第1の波長スペクトルの光及び前記第2の波長スペクトルの光をそれぞれ異なる信号として受光するイメージセンサーと、
前記物点に対する前記イメージセンサーの画素において、前記物点における光の方向分布の広がりに応じ、前記第1のカラーチャンネルと前記第2のカラーチャンネルの画素値の大小関係が変化するように、前記イメージセンサーで受光する光の撮像開口を設定する遮蔽部と、
を備える、光学検査装置。
【請求項16】
前記照明光を少なくとも2つの異なる方向の光に分岐するように拡散させた後、前記波長選択部に入射させる光拡散部を備える照明部を備える、
請求項14又は請求項15に記載の光学検査装置。
【請求項17】
前記波長選択部は、前記イメージセンサーあるいは前記照明部の少なくとも一方に設けられる、
請求項16に記載の光学検査装置。
【請求項18】
前記波長選択部を通過する光を結像する照明用光学素子を備える、
請求項14又は請求項15に記載の光学検査装置。
【請求項19】
平行光を照射する照明部を備える、
請求項14又は請求項15に記載の光学検査装置。
【請求項20】
前記波長選択部は、
互いに異なる複数の波長選択領域が並べられた第1のセットと、
前記第1のセットと同じ配列で前記複数の波長選択領域が並べられた第2のセットと
を有する、
請求項14又は請求項15に記載の光学検査装置。
【請求項21】
前記イメージセンサーで前記物体面を撮像させ、
前記撮像した撮像画像に基づいて、背景画像を作成させ、
前記撮像画像から前記背景画像を差し引いて、背景除去画像を作成させる、
処理部を有する、請求項14に記載の光学検査装置。
【請求項22】
光を結像する照明用光学素子を備え、
前記照明用光学素子の焦点面には、前記波長選択部が配置される、
請求項14又は請求項15に記載の光学検査装置。
【請求項23】
前記物点と前記イメージセンサーとの間、あるいは、前記波長選択部と前記イメージセンサーとの間、あるいは、前記物点と前記波長選択部との間の少なくとも1つに設けられ、前記第1の波長スペクトルの光と前記第2の波長スペクトルの光を前記イメージセンサーに結像できる結像光学素子を備える、
請求項14又は請求項15に記載の光学検査装置。
【請求項24】
照明側焦点面を有し、前記波長選択部が前記照明側焦点面あるいはその近傍に配置される凹面ミラーと、
白色光を射出する光源と、
を有し、
前記波長選択部の前記第1の波長選択領域は、前記照明側焦点面の焦点に設けられ、
前記波長選択部の前記第2の波長選択領域は、前記照明側焦点面の焦点から離れた位置に設けられる、
請求項14又は請求項15に記載の光学検査装置。
【請求項25】
第1の波長スペクトルの光と、前記第1の波長スペクトルの光とは異なる第2の波長スペクトルの光と、前記第1の波長スペクトルの光及び前記第2の波長スペクトルの光とは異なる第3の波長スペクトルの光を含む照明光を、物点を含む物体面に照射したとき、
前記第1の波長スペクトルの光を通過させ、その波長スペクトルに含まれない少なくとも一つの波長を持つ光を遮蔽する第1の波長選択領域と、
前記第2の波長スペクトルの光を通過させ、その波長スペクトルに含まれない少なくとも一つの波長を持つ光を遮蔽する第2の波長選択領域と、
前記第3の波長スペクトルの光を通過させ、その波長スペクトルに含まれない少なくとも一つの波長を持つ光を遮蔽する第3の波長選択領域と、
を有する波長選択部と、
前記物点からの、
前記第1の波長スペクトルの光を受光する第1のカラーチャンネルと、
前記第2の波長スペクトルの光を受光する第2のカラーチャンネルと
前記第3の波長スペクトルの光を受光する第3のカラーチャンネルと
を各画素に有し、前記第1の波長スペクトルの光、前記第2の波長スペクトルの光、前記第3の波長スペクトルの光をそれぞれ異なる信号ベクトルとして受光するイメージセンサーと
を備え、
前記物体面の前記物点に対する前記イメージセンサーの画素において、
前記物点における光の方向分布の広がりに応じ、前記第1のカラーチャンネルと前記第2のカラーチャンネルと前記第3のカラーチャンネルの画素値の大小関係が変化するように、前記波長選択部と前記イメージセンサーは配置された、
光学検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、光学検査方法、光学検査プログラム、及び、光学検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な産業において物体の非接触での検査が重要となっている。従来方法では、分光した光線の色(波長スペクトル)を光線方向と一対一に対応させ、色を特定することにより光線の方向を同定し、物体面あるいは物体内の情報を取得する手法がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】“Color ranging method for high speed low-cost 3D surface profile measurement” U.S. patent 5,675,407
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】W. L. Hows, “Rainbow schlieren and its application,” Applied Optics, vol. 23, No. 14, 1984
【非特許文献2】H. Ohno, “One-shot three-dimensional measurement method with the color mapping of light direction,” OSA Continuum, Vol. 4, Issue 3, 2021
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、物体内で光が様々な方向に散乱、拡散、あるいは回折される場合でも、物体面あるいは物体内等の物体の情報を取得し得る光学検査方法、光学検査プログラム、及び、光学検査装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態によれば、光学検査方法は、物点からの少なくとも2つの異なる波長スペクトルを含む光を波長選択部により選択的に通過させ、波長スペクトルの光を受光できる少なくとも2つのカラーチャンネルを有する撮像部によって物点を撮像させること、物点に対する少なくとも2つのカラーチャンネルでの受光データに基づいて、少なくとも2つの異なる波長スペクトルの光をそれぞれ異なる方向を持つ信号ベクトルとすること、信号ベクトルの方向に基づいて物点における光の方向分布の広がりを推定処理することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1実施形態に係る光学検査装置を示す概略図。
図2】第1のカラーチャンネル、第2のカラーチャンネル、第3のカラーチャンネルに対応する色座標をそれぞれB,R,Gとする色座標空間上の、第1の色ベクトル及び第2の色ベクトルを示す概略図。
図3】第1実施形態に係る光学検査装置を用いて物体の物体面の情報を取得するためのフローチャート。
図4】第1実施形態の変形例1による色座標空間において、標準物体を撮像部で撮像した参照画像における第1の物点に対する色ベクトルの方向を第1の参照方向とし、第2の物点に対する色ベクトルの方向を第2の参照方向として示すとともに、撮像した画像の色ベクトルを示す概略図。
図5】第1実施形態の変形例1に係る光学検査装置を用いて物体の物体面の情報を取得するためのフローチャート。
図6】第1実施形態の変形例2に係る光学検査装置を示す概略図。
図7】第1実施形態の変形例3に係る光学検査装置を示す概略図。
図8】第1実施形態の変形例3に係る光学検査装置によるBRG色座標空間における色ベクトルの一例。
図9】第2実施形態に係る光学検査装置を示す概略図。
図10図9に示す光学検査装置の物体面に対して照明側及び撮像側を模式的に示す概略図。
図11】第2実施形態の変形例1に係る光学検査装置の照明部を示す概略図。
図12】第2実施形態の変形例2に係る光学検査装置の照明部を示す概略図。
図13】第3実施形態に係る光学検査装置を示す概略図。
図14】第3実施形態の変形例1に係る光学検査装置の波長選択部を示す概略図。
図15】第3実施形態の変形例1に係る光学検査装置の微小欠陥の画像の抽出手法を示すフローチャート。
図16】白色プラスチック板上の微小欠陥を撮像したものと、その背景除去画像を示す図。
図17】第3実施形態の変形例2に係る光学検査装置を示す概略図。
図18】第4実施形態に係る光学検査装置を示す概略図。
図19】第4実施形態の変形例1に係る光学検査装置の照明部を示す概略図。
図20】第4実施形態の変形例2に係る光学検査装置の波長選択部を示す概略図。
図21図20に示す波長選択部のXXI-XXI線に沿う断面図。
図22】第5実施形態に係る光学検査装置を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に,各実施の形態について図面を参照しつつ説明する。図面は模式的または概念的なものであり,各部分の厚みと幅との関係,部分間の大きさの比率などは,必ずしも現実のものと同一とは限らない。また,同じ部分を表す場合であっても,図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。本願明細書と各図において,既出の図に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0009】
本明細書において、光は電磁波の一種であり、ガンマ線、X線、紫外線、可視光、赤外線、電波なども含まれるとする。本実施形態において、光は可視光であるとし、例えば波長は400nmから750nmの領域にあるとする。
【0010】
(第1実施形態)
以下、第1実施形態に係る光学検査装置10について、図1から図3を参照して説明する。
【0011】
図1には、本実施形態に係る光学検査装置10の模式的な断面図を示す。本実施形態に係る光学検査装置10は、撮像部12と波長選択部14と遮蔽部16と処理部18とを備える。ただし、撮像部12は、イメージセンサー22を備える。撮像部12が波長選択部14及び遮蔽部16の少なくとも一方を含む場合もある。
【0012】
物体Oの表面あるいは物体Oの内部における点を物点と呼ぶ。以下では、特に断らない限り、物点は物体Oの表面上にあるとする。
【0013】
本明細書において、物点を光で撮像するという意味は、物点からの光が撮像部12のイメージセンサー22上の像点に結像され、イメージセンサー22の画素によって受光されるという意味で用いる。ただし、イメージセンサー22は、エリアセンサーでもよく、ラインセンサーでもよく、光を受光信号に変換できるものならばなんでもよい。また、受光信号は、単に信号、信号値、画素値と呼ぶこともある。また、“光で物点を撮像する”と同じ意味として、光を撮像すると述べることもある。
【0014】
撮像部12における結像レンズ等の結像光学系の図示を省略する。撮像部12は、物点O1,O2からの光を光軸OAに沿ってイメージセンサー22の像点に写す。また、撮像部12の光軸OA上とは、撮像部12から光軸OAに沿って射出された光を仮に想定した場合、その光が通る経路上という意味である。そのため、光がミラーやビームスプリッターなどで折り返された場合、光軸OAに沿うとはその光線経路に沿った経路上という意味である。また、特に、ビームスプリッター(図示せず)で二つの光線に分岐される場合、光軸OA上は2つの分岐された経路上の両方を意味する。
【0015】
本明細書において、物点O1,O2を撮像可能な状態とは、物点O1,O2に対応する像点が、撮像部12におけるイメージセンサー22上あるいはイメージセンサー22の近傍に位置することを意味する。ここで、像点がイメージセンサー22上に載ると、像がはっきりと撮像され、像点がイメージセンサー22から離れると、像はぼやけて撮像される。
【0016】
波長選択部14は、第1の波長選択領域31と第2の波長選択領域32とを備える。第1の波長選択領域31と第2の波長選択領域32は、互いに異なる波長スペクトルの光を通過させる。ここで光を通過させるとは、撮像対象である物体の物点からの光を撮像部12のイメージセンサー22に到達させ、イメージセンサー22で撮像可能な状態にすることである。一方、波長選択部14を通過しなかった光は波長選択部14で遮蔽される。ここで、光を遮蔽するとは、物体からの光を、撮像部12のイメージセンサー22で撮像可能ではない状態にすることを意味する。
【0017】
波長選択部14の第1の波長選択領域31を通過する波長スペクトルを第1の波長スペクトルとし、第2の波長選択領域32を通過する波長スペクトルを第2の波長スペクトルとする。ここで、例えば第1の波長スペクトルを波長400nmから500nmまでの範囲で有意な光強度を有するものとし、これを青(B)光と呼ぶ。青光はピーク波長が450nm近傍にあるものとする。また、例えば第2の波長スペクトルを波長600nmから700nmまでの範囲で有意な光強度を有するものとし、これを赤(R)光と呼ぶ。赤光はピーク波長が650nm近傍にあるものとする。ただし、波長スペクトルはこの限りではなく、なんでもよい。例えば、単一波長を持つものでもよい。また、波長選択領域31、32の各形状は何でもよい。例えば、波長選択領域31、32は同心円でもよく、ストライプ状でもよく、回転対称形でもよく、多角形でもよく、放射状でもよく、楕円でもよい。図1中の波長選択領域31、32は、それぞれ例えば略矩形で、光軸OAに交差する方向に並べられている。つまり、光軸OAと波長選択領域31、32は互いに交わる関係にある。図1中では、光軸OAに対して、第2の波長選択領域32が交差する。
【0018】
遮蔽部16は、例えば波長選択部14の外側に設けられ、波長選択部14を通過せずに撮像可能となる光を遮蔽する。遮蔽部16は、少なくとも第1の波長スペクトルと第2の波長スペクトルを持つ光を遮蔽する。つまり、遮蔽部16は、第1の波長スペクトルと第2の波長スペクトルを重ね合わせた波長スペクトルが有意な光強度を持つ波長範囲を遮蔽する。
【0019】
ある波長スペクトルの補色は、その当該波長スペクトルが有意な光強度を持つ波長範囲を含まない波長領域において有意な光強度を持つとする。
【0020】
撮像部12のイメージセンサー22ではカラー画像を取得し、処理部18ではイメージセンサー22で撮像されたカラー画像を処理する。ここで、イメージセンサー22は、少なくとも第1の波長スペクトルと第2の波長スペクトルをそれぞれ異なる信号ベクトルとして受光できる2つのカラーチャンネル成分を各画素に備えるとする。これらのカラーチャンネルを、それぞれ、第1のカラーチャンネル(Bチャンネル)、第2のカラーチャンネル(Rチャンネル)とする。第1のカラーチャンネルは青光に対して強い信号を受けるとし、第2のカラーチャンネルは赤光に対して強い信号を受けるとする。
【0021】
画像の各画素において、各カラーチャンネルの画素値を成分とするベクトルを色ベクトルあるいは信号ベクトルと呼ぶ。例えば、ある画素において、第1のカラーチャンネル、第2のカラーチャンネル、第3のカラーチャンネルの画素値がそれぞれ、b,r,gであった場合、色ベクトルあるいは信号ベクトルを(b,r,g)と表すことができる。また、各カラーチャンネルの画素値を互いに直交する座標上に取った座標空間を色座標空間と呼ぶ。色ベクトル(信号ベクトル)の成分の数、つまり、次元の数は2以上の自然数であればなんでもよく、2でも3でも4でもそれ以上でもよい。特に、撮像部12のイメージセンサー22にハイパースペクトルカメラを用いた場合は、次元数は3よりも大きな数となる。
【0022】
処理部18は、撮像部12のイメージセンサー22を制御するとともに、後述する、光の方向分布の広がり推定処理を実行する処理を行う。
【0023】
処理部18は、例えば、コンピュータ等から構成され、プロセッサ(処理回路)及び記憶媒体を備える。プロセッサは、CPU(Central Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、マイコン、FPGA(Field Programmable Gate Array)及びDSP(Digital Signal Processor)等のいずれかを含む。記憶媒体には、メモリ等の主記憶装置に加え、非一時的な補助記憶装置が含まれ得る。記憶媒体としては、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、磁気ディスク、光ディスク(CD-ROM、CD-R、DVD等)、光磁気ディスク(MO等)、及び、半導体メモリ等の書き込み及び読み出しが随時に可能な不揮発性メモリが挙げられる。
【0024】
処理部18では、プロセッサ及び記憶媒体のそれぞれは、1つのみ設けられてもよく、複数設けられてもよい。処理部18では、プロセッサは、記憶媒体等に記憶されるプログラム等を実行することにより、処理を行う。また、処理部18のプロセッサによって実行されるプログラムは、インターネット等のネットワークを介して処理部18に接続されたコンピュータ(サーバ)、又は、クラウド環境のサーバ等に格納されてもよい。この場合、プロセッサは、ネットワーク経由でプログラムをダウンロードする。本実施形態に係る、処理部18は、例えば、後述する光学検査プログラムを実装する。
【0025】
処理部18では、イメージセンサー22からの画像取得、イメージセンサー22から取得した画像に基づく各種算出処理は、プロセッサ等によって実行され、記憶媒体が、データ記憶部として機能する。
【0026】
また、処理部18による処理の少なくとも一部が、クラウド環境に構成されるクラウドサーバによって実行されてもよい。クラウド環境のインフラは、仮想CPU等の仮想プロセッサ及びクラウドメモリによって、構成される。ある一例では、イメージセンサー22からの画像取得、イメージセンサー22から取得した画像に基づく各種算出処理が、仮想プロセッサによって実行され、クラウドメモリが、データ記憶部として機能する。
【0027】
なお、本実施形態では、処理部18は、イメージセンサー22を制御するとともに、イメージセンサー22から得た像データに対して各種の演算を行う。
【0028】
処理部18では、イメージセンサー22で取得したカラー画像の各画素における2つのカラーチャンネルの受光信号強度(画素値)から、第1の波長スペクトルの光と第2の波長スペクトルの光を区別する。さらに、処理部18では、各カラーチャンネルの画素値にもとづき、第1の波長スペクトルの光と第2の波長スペクトルの光が同時に撮像されたか、あるいはどちらか一方のみが撮像されたかを識別することができる。つまり、処理部18では、各画素において、第1の波長スペクトルのみが撮像されたか、あるいは、第2の波長スペクトルのみが撮像されたか、あるいはそれらが同時に撮像されたか、あるいは、どちらも撮像されていないか、のいずれかを識別することができる。
【0029】
以上の構成のもとで、本実施形態に係る光学検査装置10の動作原理について述べる。
【0030】
図1において、物体Oの表面上に第1の物点O1と第2の物点O2を取る。ただし、これに限らず、物体Oの内部に第1の物点O1及び第2の物点O2を取ってもよい。第1の物点O1及び第2の物点O2は物体Oの表面あるいは内部であればどこでもよい。
【0031】
第1の物点O1は標準面上にあるとする。標準面には微小欠陥などの欠陥が存在せず、ほぼ鏡面であるとする。つまり、標準面に光を入射したとき、反射光は正反射成分が主となる。ただし、この限りではなく、標準面としてどのような性状の面としてもよい。一方、第2の物点O2には微小な数10マイクロメートルサイズ以下の凹凸欠陥があるとする。これはつまり、波長スケール(例えば450nm、650nm)の数10倍以下のスケールである。このような欠陥を微小欠陥と呼ぶ。微小欠陥に光を入射すると、一般的に光は散乱される。散乱は、幾何光学的な反射によって生じることもあるが、回折によって生じることもある。ここでは、このような回折現象も含めて散乱と呼ぶ。物体Oが不透明である場合、散乱は物体Oの表面で起こる。散乱は、一つの光線である入射光が少なくとも2つの異なる方向の光線に分岐する現象であるとも言える。一方、鏡面に光を入射すると正反射が生じる。正反射光は、面の法線方向に対する入射角と反射角が等しくなり、反射光は分岐せずに一つの光線となる。また、物体Oが透明体であり、透明体の中に微小欠陥がある場合、微小欠陥に入射光した一つの光線は、散乱によって少なくとも2つの光線に分岐する。一方、物体O内に微小な欠陥が存在しない透明体に入射した光は、その屈折率分布が連続である場合は分岐せずに透過する。また、屈折率分布が不連続である場合は、不連続面においてフレネル反射を起こし、その不連続界面に対して入射方向とは逆の方向へと反射される成分が生じる。つまり、微小欠陥が存在しない場合、光線は最大で2つの異なる方向の光線に分岐する。しかし、反射光成分が生じたとしても、撮像側とは逆の方向に進むので、撮像部12には到達しない。以上により、入射光線は微小欠陥で散乱され、散乱によって2つの異なる方向の光線(散乱光)に分岐される。
【0032】
任意の物点における光の方向分布のことを光線方向分布と呼ぶ。特に、物体Oの表面での反射光の強度分布の方向依存性はBRDF(Bidirectional Reflectance Distribution Function)で記述することができる。以降では、特に断らない限り、物点は物体Oの表面上とし、イメージセンサー22での撮像は物体Oの表面で反射した光によって為されるとする。ただし、物点が物体O内にあり、光が物体O内を透過してイメージセンサー22に到達する場合も、基本的に反射の場合と同様の効果を期待できる。
【0033】
第1の物点O1におけるBRDFを第1のBRDFとし、第2の物点O2におけるBRDFを第2のBRDFとする。第1の物点O1は標準面上にあり、第2の物点O2には微小欠陥があるため、第1のBRDFは第2のBRDFに比べて(角度)分布が狭い。言い換えれば、第2のBRDFは第1のBRDFに比べて分布が広い。このように、微小欠陥が存在すると、一般的に、BRDFは分布が広がる。ただし、この限りではなく、逆でもよい。少なくとも、微小欠陥の存在の有無によってBRDFの分布は異なる。
【0034】
第1の物点O1で反射された光は、BRDFの分布が狭いため、本実施形態では、波長選択部14の第1の波長選択領域31のみを通過する。そして、第1の物点O1で反射された光は、第1の波長選択領域31のみを通過して第1の波長スペクトルを有する光となる。一方、第2の物点O2から反射された光は、BRDFの分布が広いため、波長選択部14の第1の波長選択領域31および第2の波長選択領域32の両方の領域を通過する。このため、第2の物点O2で反射された光は、第1の波長選択領域31を通過した第1の波長スペクトルと第2の波長選択領域32を通過した第2の波長スペクトルとが重ね合わされた波長スペクトルの光となる。
【0035】
撮像部12のイメージセンサー22は、処理部18により制御されて、第1の物点O1と第2の物点O2を含む領域を撮像する。このとき、撮像画像の第1の物点O1に対する画素において、第1の波長スペクトルの光を受光する第1のカラーチャンネルの画素値が、第2の波長スペクトルの光を受光する第2のカラーチャンネルの画素値に比べて大きな値を持つ。一方、第2の物点O2に対する画素においては、第1の波長スペクトルの光を受光する第1のカラーチャンネルと、第2の波長スペクトルの光を受光する第2のカラーチャンネルとの両方の画素値が有意な値を持つ。つまり、処理部18は、各画素におけるカラーチャンネルの画素値の比率に基づき、BRDFの分布の広がりに関する情報を得ることができる。
【0036】
遮蔽部16は、波長選択部14を通過せずに撮像部12で撮像可能な状態になる光を遮蔽する。もし、遮蔽部16が存在しなければ、波長選択部14を通過せずに第1のカラーチャンネルあるいは第2のカラーチャンネルで受光される光が存在し得る。そうすると、各画素におけるカラーチャンネルの画素値の比率に基づき、BRDFの分布の広がりに関する情報を得ることが困難になる。つまり、遮蔽部16はBRDFの分布の広がりに関する情報を得るために必要と言える。言い換えれば、遮蔽部16があることによって、処理部18は、環境に左右されず、精度の良いBRDFの分布の広がり推定が可能になる効果があると言える。
【0037】
撮像部12のイメージセンサー22で撮像される画像において、第1の物点O1に対応する画素における色ベクトルを第1の色ベクトルとし、第2の物点O2に対応する画素における色ベクトルを第2の色ベクトルとする。図2に示すように、第1のカラーチャンネル、第2のカラーチャンネル、第3のカラーチャンネルに対応する色座標をそれぞれ、B、R、Gとし、色座標空間を取る。各色ベクトルは、ある画素における第1のカラーチャンネルの画素値、第2のカラーチャンネルの画素値、及び、第3のカラーチャンネルの画素値をそれぞれ大きさとする。図2において第1の色ベクトルと第2の色ベクトルは、BRDFの分布がそれぞれ異なるため、ベクトルの方向が互いに異なる。つまり、処理部18は、色ベクトルの方向に基づき、各物点O1,O2のBRDFの分布の広がりを識別することができると言える。
【0038】
つまり、第1の波長選択領域31と第2の波長選択領域32とを通過する互いに異なる波長スペクトルの光は、それぞれ2つの異なる方向を持つ信号ベクトル(色ベクトル)となる。第1の波長選択領域31を通過する波長スペクトルの光の信号ベクトルを、第1の基本色ベクトルとする。第2の波長選択領域32を通過する波長スペクトルの光の信号ベクトルを、第2の基本色ベクトルとする。
【0039】
撮像部12のイメージセンサー22で撮像される画像の色ベクトルは、それらの基本色ベクトル(第1の基本色ベクトルと第2の基本色ベクトル)のそれぞれに係数を掛けたものの足し合わせ(線形結合)となる。そして、ベクトルの線形独立性という数学的な性質に基づくと、第1の基本色ベクトルと第2の基本色ベクトル、そしてそれらに0でない係数を掛けて足し合わせた線形結合ベクトルは、互いに方向が異なることを示すことができる。そのため、処理部18は、色ベクトルの方向から、各物点O1、O2からの光が第1の波長選択領域31または第2の波長選択領域32のどちらかを通過したか、あるいはその両方を通過したかを識別することができる。
【0040】
ここで、色ベクトル(信号ベクトル)の線形独立性を用いることができるのは、遮蔽部16により、波長選択部14を通過した第1の波長スペクトルおよび第2の波長スペクトルの光のみで撮像画像の信号ベクトルを構成できるからである。一方、遮蔽部16が無ければ、波長選択部14を通過しないで撮像部12のイメージセンサー22に到達する光も撮像部12のイメージセンサー22で撮像される可能性がある。つまり、遮蔽部16があることにより、イメージセンサー22で撮像された光は波長選択部14を通過した光であると断定することができる。一方、遮蔽部16が存在しない場合、色ベクトルの方向が異なっていても、イメージセンサー22で撮像された光が通過した経路の推定が難しくなる。ただし、このような遮蔽が完全ではなくても、波長選択部14を通過しないでイメージセンサー22で撮像される光を減らすことにより、イメージセンサー22で撮像された光が通過した経路の推定の精度が高くなるという効果がある。
【0041】
また、第1の波長選択領域31と第2の波長選択領域32を通過する光の2つの色ベクトル(信号ベクトル)の方向が異なるならば、第1の波長スペクトルと第2の波長スペクトルに重なる領域があってもよい。これは、方向が異なる2つのベクトルを線形結合したベクトルには、数学的に、線形独立性が適用できるからである。つまり、第1の基本色ベクトルと第2の基本色ベクトルの方向が互いに異なれば、それらに0でない係数を掛けて線形結合したベクトルの方向も、基本色ベクトルのものと異なる。このため、処理部18は、第1の波長スペクトルの光と第2の波長スペクトルの光と、それらを重ね合わせた光を、色ベクトルの方向の違いから識別することができる。そのため、波長選択領域31、34を通過する光の波長スペクトルは重なりがあっても良く、波長選択領域31、32としてさまざまなものを適用できるという効果がある。
【0042】
これにより、少なくとも2つの異なる第1の波長スペクトルと第2の波長スペクトルを持つ光に対し、第1の波長選択領域31は前記第1の波長スペクトルの光に含まれない少なくとも一つの波長の光を遮蔽し、第2の波長選択領域は前記第2の波長スペクトルの光に含まれない少なくとも一つの波長の光を遮蔽すればよいことになる。
【0043】
このように、本実施形態に係る光学検査装置10の処理部18を用いる物体の情報取得処理は、図3に示すように行われる。処理部18は、まず、第1の物点O1及び第2の物点O2を含む領域を、遮蔽部16で適宜の光を遮蔽しながら、波長選択部14を通してイメージセンサー22で撮像させ、像データを取得する(ステップST101)。そして、処理部18は、取得した像データを処理する。処理部18は、取得した像データの各カラーチャンネルの画素値に基づいて、第1の物点O1に対応する画素における第1の色ベクトルを算出するとともに、第2の物点O2に対応する画素における第2の色ベクトルを算出する(ステップST102)。そして、処理部18は、第1の物点O1における第1のBRDFの分布の広がり、及び、第2の物点O2における第1のBRDFの分布の広がりを識別する。すなわち、処理部18は、第1の物点O1の表面性状及び第2の物点O2の表面性状を判定する(ステップST103)。
【0044】
以上で述べたように、本実施形態に係る光学検査装置10により、色ベクトルの方向に基づいてBRDFの分布の広がりを識別できる。なぜならば、「波長選択部14を通過しない光は遮蔽されるように構成された撮像部12によって、波長選択部14の少なくとも2つの異なる波長選択領域31,32を通過する2つの波長スペクトルの光のうち、少なくともどちらか一つの波長スペクトルの光を用いて物点O1,O2を撮像したとき、2つの異なる波長スペクトルの光をそれぞれ異なる方向を持つ信号ベクトルとして受光するカラーチャンネルで撮像した画像を取得できる」からである。
【0045】
本実施形態に係る光学検査方法は、物点O1,O2からの少なくとも2つの異なる波長スペクトルを含む光を少なくとも2つの異なる波長スペクトルの光を波長選択部14により選択的に通過させ、波長スペクトルの光を受光できる少なくとも2つのカラーチャンネルを有する撮像部12によって物点O1,O2を撮像させること、物点O1,O2に対する少なくとも2つのカラーチャンネルでの受光データに基づいて、少なくとも2つの異なる波長スペクトルの光をそれぞれ異なる方向を持つ信号ベクトルとすること、信号ベクトルの方向に基づいて物点O1,O2における光の方向分布の広がりを推定処理することを含む。本実施形態に係る光学検査方法プログラムは、上記の光学検査方法に係る処理を、コンピュータに実行させることにより行う。
このため、光学検査方法又は光学検査プログラムを用いることで、物点O1,O2におけるBRDFの分布の広がりを識別でき、物点O1,O2の表面性状を判定することができる。
信号ベクトルは、少なくとも2つのカラーチャンネルの画素値を互いに直交する座標上に取った色座標空間における点を終点とするベクトルである。
【0046】
以上説明したように、本実施形態によれば、物体O内で光が様々な方向に散乱、拡散、あるいは回折される場合でも、物体Oの情報を取得し得る光学検査方法、光学検査プログラム、及び、光学検査装置10を提供することができる。
【0047】
(変形例1)
光学検査装置10の変形例1について、図4及び図5を用いて説明する。
【0048】
標準物体(図示せず)は、微小欠陥の無い標準面のみの面を持つものとする。そして、標準物体を撮像部12のイメージセンサー22で撮像したものを参照画像とする。図4に示すように、参照画像における第1の物点O1に対する色ベクトルの方向を第1の参照方向とし、これを予め処理部18の記憶媒体に記憶させておく。同様に、第2の物点O2に対する色ベクトルの方向を第2の参照方向とし、これを予め処理部18の記憶媒体に記憶させておく。
【0049】
そして、第1の参照方向と撮像した第1の色ベクトルの方向(図2参照)とが、誤差を考慮して実質的に一致するか否かを処理部18において判定する。同様に、第2の参照方向と撮像した第2の色ベクトルの方向(図2参照)とが、誤差を考慮して実質的に一致するか否かを処理部18において判定する。第1の色ベクトルの方向が第1の参照方向と実質的に一致すれば、第1の物点O1は標準面上にあると言える。同様に、第2の色ベクトルの方向が第2の参照方向と実質的に一致すれば、第2の物点O2は標準面上にあると言える。あるいは、第1の物点O1と第2の物点O2のうち、どちらかの物点において、色ベクトルの方向が参照方向と異なれば、処理部18は、BRDFの分布が標準面のものと異なることがわかる。言い換えれば、処理部18は、光の方向分布の広がりが標準面でのものと異なることがわかる。これにより、処理部18は、その物点において微小欠陥が存在すると推定することができる。
【0050】
同様に、処理部18は、さまざまなBRDFに対する色ベクトルを参照方向として予め処理部18の記憶媒体に記憶させておけば、処理部18は、撮像した色ベクトルの方向と参照方向とを照合することにより、物点O1,O2におけるBRDFの広がりを推定できるという効果がある。BRDFは、微小欠陥の種類の違いによって大きく異なる。そのため、処理部18は、BRDFの違いを識別することにより、微小欠陥の種類を推定できるという効果がある。
【0051】
このように、本実施形態に係る光学検査装置10の処理部18を用いる物体の情報取得処理は、図5に示すように、行われる。処理部18は、まず、第1の物点O1及び第2の物点O2を含む領域を、遮蔽部16で適宜の光を遮蔽しながら、波長選択部14を通してイメージセンサー22で撮像させ、像データを取得する(ステップST101)。そして、処理部18は、取得した像データを処理する。処理部18は、取得した像データの各カラーチャンネルの画素値に基づいて、第1の物点O1に対応する画素における第1の色ベクトルを算出するとともに、第2の物点O2に対応する画素における第2の色ベクトルを算出する(ステップST102)。そして、処理部18は、第1の物点O1に対応する画素における第1の色ベクトルと、第1の参照方向との方向を比較するとともに、第2の物点O2に対応する画素における第2の色ベクトルと、第2の参照方向との方向を比較する(ST103a)。そして、処理部18は、第1の物点O1における表面性状を判定するとともに、第2の物点O2の表面性状を判定する(ステップST103)。
【0052】
したがって、上述した本実施形態に係る光学検査方法において、推定処理することは、受光データによる撮像画像とリファレンス画像とを照合して、物点O1,O2における光の方向分布の広がりを推定処理することを含む。
このため、光学検査方法を用いることで、物点O1,O2におけるBRDFの分布の広がりを推定し、物点O1,O2の表面性状を判定することができる。
【0053】
(変形例2)
光学検査装置10の変形例2について、図6を用いて説明する。
【0054】
図6に示すように、遮蔽部16は、波長選択部14の第1の波長選択領域31と第2の波長選択領域32との間(境界)に波長遮蔽領域16aを配置しても良い。本変形例2では、光軸OAが波長選択部14の第2の波長選択領域32と遮蔽部16の波長遮蔽領域16aとの境界にあるとする。波長遮蔽領域16aは、遮蔽部16と同様に機能する。すなわち、遮蔽部16の波長遮蔽領域16aは、第1の波長スペクトルの光、及び、第2の波長スペクトルの光を含む全ての波長の光が波長遮蔽領域16aで波長選択部14を通過することを防止する。第1の物点O1は標準面上にあるとし、第2の物点O2には微小欠陥があるとする。
【0055】
本変形例2の遮蔽領域16aにより、例えば、第1の物点O1からの光が第1の波長選択領域31と第2の波長選択領域32とを同時に通過することを防ぐことができる。
【0056】
波長遮蔽領域16aが配置されない場合において、第1の物点O1からの光が第1の波長選択領域31と第2の波長選択領域32の境界(図1参照)を通過すると、それに対する色ベクトルは第2の物点O2のもの同じになる。そのため、第1の物点O1のBRDFの分布の広がりと第2の物点O2のBRDFの分布の広がりとは同じと推定されてしまう。一方、波長遮蔽領域16aを適切に設けることにより、第1の物点O1からの光を、第1の波長選択領域31または第2の波長選択領域32のどちらか一方で通過させることができる。つまり、光学検査装置10は、遮蔽領域16aを設けることにより、処理部18で、第1の物点O1と第2の物点O2のBRDFの分布の違いを確実に推定できるという効果がある。
【0057】
(変形例3)
光学検査装置10の変形例3について、図7及び図8を用いて説明する。
【0058】
図7に示すように、波長選択部14が第3の波長選択領域33を備えていても良い。第3の波長選択領域33は、第1の波長選択領域31と第2の波長選択領域32との間(あるいは境界)に設けられる。図7中の第3の波長選択領域33は、変形例2の図6中の遮蔽領域16aの代わりに配置される。
【0059】
第1の波長選択領域31、第2の波長選択領域32、及び、第3の波長選択領域33を通過した光は、それぞれ互いに異なる波長スペクトルの光となる。また、それぞれの波長スペクトルの光が撮像部12のイメージセンサー22で撮像されると、互いに異なる方向を持つ色ベクトルとなる。ここで、色ベクトルの次元は、波長選択領域の数をNとすると、N次元とする。本変形例3では、Nは3であるため、色ベクトルの次元は3次元とする。すなわち、本変形例3では、イメージセンサー22は、物点O1,O2からの、第1の波長スペクトルの光を受光する第1のカラーチャンネルと、第2の波長スペクトルの光を受光する第2のカラーチャンネルと、第3の波長スペクトルの光を受光する第3のカラーチャンネルとを各画素に有し、第1の波長スペクトルの光、第2の波長スペクトルの光、第3の波長スペクトルの光をそれぞれ異なる信号ベクトルとして受光する。そして、物体面Oの物点O1,O2に対するイメージセンサー22の画素において、物点O1,O2における光の方向分布の広がりに応じ、第1のカラーチャンネルと第2のカラーチャンネルと第3のカラーチャンネルの画素値の大小関係が変化するように、波長選択部14とイメージセンサー22は配置されている。
【0060】
第1の物点O1における第1のBRDFの光が、第1の波長選択領域31と第3の波長選択領域33との境界を通過する。また、第2の物点O2における第2のBRDFの光が第1の波長選択領域31、第2の波長選択領域32、及び、第3の波長選択領域33を通過する。このとき、第1の物点O1の第1の色ベクトルは、第2の物点O2の第2の色ベクトルと方向が異なる。そのため、処理部18は、第1の物点O1と第2の物点O2のBRDFの分布の広がりが異なることが正しく推定される。一方、第3の波長選択領域33が無い場合、第1の波長選択領域31と第2の波長選択領域32との境界(図1参照)を通過する光によって、処理部18は、1の物点O1と第2の物点O2のBRDFの分布の広がりが同じと推定する可能性が生じる。つまり、本変形例3によって、波長選択部14が第1の波長選択領域31及び第2の波長選択領域32に加えて、第3の波長選択領域33を有することにより、処理部18は、第1の物点O1と第2の物点O2のBRDFの分布の違いを確実に推定できるという効果がある。
【0061】
第1の波長スペクトルに対応する色ベクトルを第1の基本色ベクトルとし、第2の波長スペクトルに対応する色ベクトルを第2の基本色ベクトルとし、第3の波長スペクトルに対応する色ベクトルを第3の基本色ベクトルとする。例えば、第1の物点O1からの光が、第1の波長選択領域31、あるいは第3の波長選択領域33、あるいは第1の波長選択領域31と第3の波長選択領域33の境界のいずれかを通過する場合、BRG色座標空間における色ベクトルは図8に示すようなる。つまり、第1の基本色ベクトルと第3の基本色ベクトルで張られる面上に色ベクトルの終点が位置するようになる。同様に、第1の物点O1からの光が、第3の波長選択領域33、あるいは第2の波長選択領域32、あるいは第3の波長選択領域33と第2の波長選択領域32の境界を通過する場合、色ベクトルは第3の基本色ベクトルと第2の基本色ベクトルで張られる面上にベクトルの終点が位置するようになる。一方、第2の物点O2における色ベクトルは、第1の基本色ベクトル、第2の基本色ベクトル、第3の基本色ベクトルの、いずれも0でない係数を掛けたものの線形結合となる。このとき、第2の物点O2の色ベクトルの方向は、ベクトルの線形独立性により、第1の物点O1の色ベクトルの方向とは異なることが示される。つまり、本変形例3により、処理部18は、第1の物点O1と第2の物点O2の光線の方向分布の広がりを識別できるという効果がある。
【0062】
一方、第1の波長選択領域31、第2の波長選択領域32、及び、第3の波長選択領域33を通過した光が撮像部12のイメージセンサー22で撮像されたとき、それぞれの信号ベクトルが互いに“線形独立ではない”信号ベクトル(色ベクトル)となる場合を考える。例えば、第1波長選択領域31を通過した光が青光であり、第2の波長選択領域32を通過した光が赤光であり、第3の波長選択領域33を通過した光が青光と赤光を足し合わせた青赤光であるとする。このとき、青光と赤光と青赤光に対する3つの信号ベクトルは互いに線形独立ではない。つまり、青赤光の信号ベクトルは、青光と赤光の信号ベクトルの線形結合で表せる。そのため、物点からの光が青光と赤光の2つの光を含むのか、あるいは青赤光の一つの光を含むのか、どちらであるかを区別することができない。そのため、撮像部12で青赤光を受光したとき、光が散乱して分岐するということを想定していなければ(考慮していなければ)、光は第3の波長領域33を通過したとしか見做せないことになる。一方、光が散乱して分岐することを想定していれば、光が第3の波長領域33を通過したか、あるいは、第1と第2の波長領域31、32を通過したか、のいずれかであることを推測することができる。これにより、微小欠陥によって生じる光の方向分布の光がりを見逃すことがなくなる。つまり、微小欠陥を見逃すことを防止できるという効果がある。
【0063】
このように、波長選択領域を通過する少なくとも2つの異なる波長スペクトルの光に対する複数の信号ベクトルが互いに線形独立になるように光学系が構成される。ここで、線形独立になるように光学系が構成されるとは、波長選択領域や、撮像部、あるいは照明の位置関係や、それぞれの形状や特性を適宜設定し、信号ベクトルを線形独立にすることである。
【0064】
(第2実施形態)
以下、本実施形態に係る光学検査装置10について、図9及び図10を参照して説明する。本実施形態に係る光学検査装置10の基本的な構成は第1実施形態の光学検査装置10と同様であるが、一部異なる部分や差分について以下に述べる。このため、第1実施形態で説明した部材と同一の部材又は同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、詳しい説明を省略する。
【0065】
図9には、本実施形態に係る光学検査装置10の模式的な断面図を示す。本実施形態に係る光学検査装置10は、撮像部12と、波長選択部14と、物体面Oを照明する照明部40とを備える。
【0066】
撮像部12は、処理部18で制御されるイメージセンサー22と、イメージセンサー22の開口22aを調整する撮像側遮蔽部16とを有する。撮像部12は、図示しないが、結像光学素子を有し得る。撮像部12のイメージセンサー22の開口22aには撮像側遮蔽部16が設けられる。撮像側遮蔽部16は、物点O1,O2に対するイメージセンサー22の画素において、物点O1,O2における光の方向分布の広がりに応じ、第1のカラーチャンネルと第2のカラーチャンネルの画素値の大小関係が変化するように、イメージセンサー22で受光する光の撮像開口22aを設定する。
【0067】
また、波長選択部14は、光軸OA上に沿って撮像部12のイメージセンサー22から物点O1,O2よりも離れたところに配置する。すなわち、本実施形態では、物点O1,O2と撮像部12との間には、波長選択部14がない。波長選択部14は、照明部40が備えていてもよい。
【0068】
照明部40は、本実施形態では、照明光を拡散させる光拡散部42をさらに備えている。
【0069】
照明光は、特別な光源を用意しても良いが、その必要は必ずしもない。例えば、オフィスなどの環境光や太陽光などの自然光でよい。すなわち、照明光の光源は必ずしも必要ではない。
【0070】
本実施形態において、照明光は、光拡散部42の上方に設置された天井灯からの環境光とする。光拡散部42と天井との距離は十分に遠く、数メートルほど離間されていると、光拡散部42には平行度の高いビーム状の白色光が到達する。
【0071】
光拡散部42は、光拡散部42に入射した一つの光線を、少なくとも2つの異なる方向の光に分岐する。つまり、光拡散部42は、光拡散部42に入射した光を拡散光DLとして拡散させる。拡散は、例えば、微小凹凸による回折現象によるものでもよい。あるいは、拡散は、光の吸収・発光現象、光の吸収・蛍光現象、屈折率媒質による幾何学的な屈折現象、反射散乱体による光の散乱現象、透明散乱体あるいは白色散乱体による光の散乱現象など、どのような現象によるものでもよい。本実施形態において、光拡散部42は擦りガラスを用いるとする。つまり、光拡散部42としての擦りガラスは、入射した光を拡散させて発散角を広げ、光を拡散光DLとして透過させるものとする。
【0072】
本実施形態に係る光学検査装置10の動作を説明する。
【0073】
例えば環境光からの照明光は、光拡散部42に到達し、拡散されて拡散光DLとして透過する。そして、透過された拡散光DLは、波長選択部14の第1の波長選択領域31および第2の波長選択領域32の両方に到達する。第1の波長選択領域31を通過した光は、第1の波長スペクトルの光となり、第2の波長選択領域32を通過した光は、第2の波長スペクトルの光となる。第1の波長スペクトルの光は、例えば、波長400nmから550nmまでの範囲で有意な光強度を有するものとし、例えば青光である。また、例えば第2の波長スペクトルを波長500nmから700nmまでの範囲で有意な光強度を有するものとし、例えば赤光である。ただし、波長スペクトルはこの限りではなく、なんでもよい。第1の波長選択領域31および第2の波長選択領域32を通過した波長スペクトルの光は、例えば、単一波長を持つものでもよい。
【0074】
撮像部12のイメージセンサーは、第1の波長スペクトルの光と第2の波長スペクトルの光とを、それぞれ異なる方向の色ベクトル(信号ベクトル)として受光する。第1の波長スペクトルの光の信号ベクトルを、第1の基本色ベクトルとする。第2の波長スペクトルの光の信号ベクトルを、第2の基本色ベクトルとする。処理部18は、第1の波長スペクトルと第2の波長スペクトルを色ベクトルの方向の違いによって識別することができる。
【0075】
図10には、図9で示した断面図において、撮像部12の物体面O(撮像部12によって画像に写される面(物点O1,O2を含む))を境界とし、撮像側と照明側とをそれぞれ上下に同時に模式的に描いた。ここで、物体面O上の法線方向のうち、撮像側(イメージセンサー22側)を向く法線方向を撮像側法線方向とする。一方、物体面O上の法線方向のうち、照明側を向く法線方向を照明側法線方向とする。そして、撮像側法線方向を基準とする立体角を撮像側立体角とし、照明側法線方向を基準とする立体角を照明側立体角とする。図10は、物体O(図9参照)が光を表面反射する場合、実際の照明側を物体面Oに対して鏡面対称なものとして仮想的に描いていることになる。一方、物体Oが透明で光を透過する場合、実際の断面図と見做せる。
【0076】
本明細書において、撮像側立体角と照明側立体角を比較する場合、どちらか一方の立体角の、物点O1,O2に点対称となる立体角を考え、それを他方と比較する。例えば、物点O1,O2における撮像側立体角と照明側立体角が等しいという意味は、物点O1,O2に対して両者が点対称となることを意味する。
【0077】
第1の波長選択領域31を通過する第1の波長スペクトルの光が第1の物点O1に到達する照明側立体角を第1-1の照明側立体角α11とする。また、第2の波長選択領域32を通過する第2の波長スペクトルの光が第1の物点O1に到達する照明側立体角を第1-2の照明側立体角α12とする。第1の物点O1から撮像部12のイメージセンサー22の開口22aに到達する光の撮像側立体角を第1-1の撮像側立体角β11とする。また、第1の物点O1から撮像側遮蔽部16に到達する光の撮像側立体角を第1-2の撮像側立体角β12とする。図10のように水平な物体面を取り、物体面に対して照明側立体角を折り返し、撮像側で照明側立体角と撮像側立体角とを比較したときに、第1-1の撮像側立体角β11は、第1-1の照明側立体角α11に含まれるとする(第1-2の照明側立体角α11≧第1-2の撮像側立体角β11)。同様に、図10のように水平な物体面を取り、物体面に対して照明側立体角を折り返し、撮像側で照明側立体角と撮像側立体角とを比較したときに、第1-2の撮像側立体角β12は、第1-2の照明側立体角α12を含むとする(第1-2の照明側立体角α12≦第1-2の撮像側立体角β12)。つまり、図10中の第1-2の照明側立体角α12を物体面Oで折り返して撮像側で第1-2の照明側立体角α12と第1-1の撮像側立体角β11の両者を比較したときに、共通領域を持たない。
【0078】
物点O1,O2から撮像部12のイメージセンサー22の開口(撮像開口)22aに到達する光線が占める立体角を撮像開口立体角βと呼ぶ。例えば、第1-1の撮像側立体角β11は、第1の物点O1における撮像開口立体角βである。
【0079】
第1の波長選択領域31を通過する第1の波長スペクトルの光が第2の物点O2に到達する照明側立体角を第2-1の照明側立体角α21とする。また、第2の波長選択領域32を通過する第2の波長スペクトルの光が第2の物点O2に到達する照明側立体角を第2-2の照明側立体角α22とする。
【0080】
第1の物点O1は物体O(図9参照)の標準面上にあるとする。第2の物点O2は物体O(図9参照)の微小欠陥上にあるとする。
【0081】
第1の物点O1に、第1-1の照明側立体角α11内の第1の波長スペクトルの光線を入射したとき、反射光はほぼ正反射に近い第1-1の光線方向分布(BRDF)となる。第1の物点O1に、第1-2の照明側立体角α12内の第2の波長スペクトルの光線を入射したとき、反射光はほぼ正反射に近い第1-2の光線方向分布(BRDF)となる。また、第2の物点O2に第2-1の照明側立体角α21内あるいは第2-2の照明側立体角α22内の光線を入射したとき、いずれの場合も反射光はランバーシアン(ランバート反射)に近い第2の光線方向分布(BRDF)となる。ここで、第1-1の光線方向分布、第1-2の光線方向分布は、第2の光線方向分布に比べて分布が狭い。
【0082】
第1-1の光線方向分布が占める立体角は、例えば、第1-1の撮像側立体角β11および第1-2の撮像側立体角β12と共通領域を持つ。第1-2の光線方向分布が占める立体角は、例えば、第1-2の撮像側立体角β12に含まれる。つまり、第1-2の光線方向分布が占める立体角は、第1-1の撮像側立体角β11と共通領域を持たない。そのため、第1の物点O1は第1の波長スペクトルの光のみでイメージセンサー22に撮像される。つまり、第1の物点O1は、第2の波長スペクトルの光でイメージセンサー22に撮像されない。これは、第1-2の撮像側立体角β12を通る第2の波長スペクトルの光が遮蔽部16で遮蔽されることによるものである。
【0083】
第2の光線方向分布は第1-1の光線方向分布及び第1-2の光線方向分布に比べて分布が広い。そして、第2-1の照明側立体角α21の第1の波長スペクトル、および、第2-2の照明側立体角α22の第2の波長スペクトルはいずれも、第2の物点O2で反射されて第2の光線方向分布となる。第2の光線方向分布が占める立体角は、第2の物点O2から撮像開口22aに到達する光線が占める立体角と共通領域を持つ。これにより、第2の物点O2は第1の波長スペクトルおよび第2の波長スペクトルの光の両方で撮像される。
【0084】
したがって、撮像画像の第1の物点O1に対する画素において、第1の波長スペクトルの光を受光する第1のカラーチャンネルの画素値が、第2の波長スペクトルの光を受光する第2のカラーチャンネルの画素値に比べて大きな値を持つ。一方、第2の物点O2に対する画素においては、第1の波長スペクトルの光を受光する第1のカラーチャンネルと、第2の波長スペクトルの光を受光する第2のカラーチャンネルとの両方の画素値が有意な値を持つ。つまり、処理部18は、各画素におけるカラーチャンネルの画素値の比率に基づき、BRDFの分布の広がりに関する情報を得ることができる。したがって、第1実施形態の図2及び図3を用いて説明したように、処理部18は、第1の物点O1の表面性状及び第2の物点O2の表面性状を判定することができる。
【0085】
以上により、処理部18は、第1の物点O1と第2の物点O2のBRDFの違いを、第1の色ベクトルと第2の色ベクトルの方向の違いとして識別できるという効果がある。これにより、処理部18は、物体Oの微小欠陥の有無を識別できるという効果がある。もし、処理部18において、標準面と微小欠陥に対する色ベクトルのリファレンス(参照方向)をあらかじめ取得していれば、処理部18が撮像された色ベクトルの方向をリファレンスと照合することにより、処理部18は、対象となる物点O1,O2が標準面上かあるいは微小欠陥上かのいずれかを識別することができるという効果がある。したがって、第1実施形態の図4及び図5を用いて説明したように、処理部18は、第1の物点O1の表面性状及び第2の物点O2の表面性状を判定することができる。
【0086】
もし、本実施形態において、撮像側遮蔽部16が存在しない場合、つまり、第1-2の光線方向分布(BRDF)を有する第2の波長スペクトルの光が撮像部12のイメージセンサー22の開口22aに到達できる場合、第1の物点O1は第2の波長スペクトルの光で撮像される。言い換えれば、撮像側遮蔽部16が存在せず、撮像側遮蔽部16により開口22aの大きさが調整されていない場合、つまり、第1-2の光線方向分布(BRDF)が占める立体角が第1-2の撮像側立体角β12(この場合は0)よりも大きくなる場合、第1の物点O1は、第1の波長スペクトルの光および第2の波長スペクトルの光の両方で撮像されることになる。このとき、処理部18は、第1の物点O1における第1の色ベクトルと、第2の物点O2における第2の色ベクトルとを識別することが困難となる。なぜならば、このとき、第1の色ベクトルと第2の色ベクトルはそれぞれ、第1の波長スペクトルの光および第2の波長スペクトルの光の両方の重ね合わせになるからである。そのため、第1の色ベクトルの方向と第2の色ベクトルの方向が近くなったり、両者が一致したりする。一方、撮像側遮蔽部16が存在し、開口22aが調整されている場合、つまり、第1-2の光線方向分布(BRDF)を有する第2の波長スペクトルの光が撮像側遮蔽部16で遮蔽される場合、第1の物点O1がイメージセンサー22に第2の波長スペクトルで撮像されることは無くなる。そのため、第1の色ベクトルと第2の色ベクトルは、ベクトルの線形独立性に基づき、一致することは無い。つまり、第1の色ベクトルと第2の色ベクトルの方向は必ず異なり、両者が一致することも無くなる。そのため、処理部18は、第1の色ベクトルと第2の色ベクトルとの方向の違いを識別することができ、光の方向分布の違いを識別できるという効果がある。これに基づき、処理部18は、物体面Oにおける微小欠陥の有無を識別することができるという効果がある。
【0087】
上で述べたことを言い換えると、次のようになる。つまり、照明光は少なくとも2つの異なる第1の波長スペクトルと第2の波長スペクトルを持つとし、前記第1の波長スペクトルの光に含まれない少なくとも一つの波長の光を遮蔽する第1の波長選択領域31と、前記第2の波長スペクトルの光に含まれない少なくとも一つの波長の光を遮蔽する第2の波長選択領域32とを有する波長選択部14を通過させる。そして、前記第1の波長スペクトルの光及び前記第2の波長スペクトルの光を物点O1,O2に照射させるとともに、前記撮像部12の撮像開口22aを通過した光によって画像として写される前記物点O1,O2を含む前記物体面を境界として、前記撮像部12に近い側を撮像側とし、前記撮像部から遠い側を照明側とする。さらに、前記物点O1,O2に対し、前記第1の波長選択領域31に対応する第1(第1-1)の照明側立体角α11と、前記第2の波長選択領域32に対応する第2(第1-2)の照明側立体角α12とを規定し、前記物点O1,O2に対し、前記撮像開口22aに対応する撮像開口立体角βを規定し、前記第1(第1-1)の照明側立体角α11あるいは前記第2(第1-2)の照明側立体角α12のどちらか一方が前記撮像開口立体角βと共通領域を持たないようにして、前記第1の波長スペクトルの光及び前記第2の波長スペクトルの光を受光できる少なくとも2つのカラーチャンネルを有する撮像部12によって前記物点O1,O2を撮像させる。これらにより、物体面Oにおける微小欠陥の有無を識別することができるという効果がある。
【0088】
本実施形態において、第1の物点O1および第2の物点O2は両方とも、第1の波長スペクトルの光で撮像される。これにより、処理部18は、各物点O1,O2における物体の存在の有無に関する情報を青光で取得できるという効果がある。つまり、各物点O1,O2において、物体Oが存在すれば、処理部18で認識できるという効果がある。また、処理部18が、第1の物点O1と第2の物点O2を第1の波長スペクトルの光で撮像したとき、両者の色ベクトル(第1の色ベクトル及び第2の色ベクトル)の信号強度から各物点O1,O2の反射率の違いが処理部18で識別できるという効果がある。
【0089】
以上により、光学検査装置10は、「互いに異なる照明側立体角α1(α11,α12),α2(α21,α22)と互いに異なる波長スペクトル(青光、赤光)をそれぞれ持つ少なくとも2つの照明光を用いて、どちらか一つの照明光の照明側立体角α1(α11,α12),α2(α21,α22)と等しい撮像側立体角(β11,β12)からの光が遮蔽されるように構成された撮像部12で物体Oを撮像し、2つの異なる波長スペクトルの光をそれぞれ異なる方向を持つ信号ベクトルとして受光するカラーチャンネルで撮像した画像に基づき、物点からの光の方向分布の違いを識別できる」という効果がある。
【0090】
あるいは、本実施形態に係る光学検査方法は、「波長選択部14の少なくとも2つの異なる波長選択領域31,32を通過する2つの波長スペクトルの光のうち、少なくともどちらか一つの波長スペクトルの光の照明側立体角α11が撮像開口立体角βと共通領域を持ち、かつ、他方の波長スペクトルの光の照明側立体角α12が撮像開口立体角βと共通領域を持たないように構成された撮像部12によって、2つの異なる波長スペクトルの光をそれぞれ異なる方向を持つ信号ベクトルとして受光するカラーチャンネルで撮像した画像に対し、画像にもとづき、物点O1,O2における光の方向分布の広がりを推定処理する」、ことを含む。
【0091】
本実施形態に係る光学検査方法は、照明光が少なくとも2つの異なる第1の波長スペクトルと第2の波長スペクトルを持つとし、前記第1の波長スペクトルの光に含まれない少なくとも一つの波長の光を遮蔽する第1の波長選択領域31と、前記第2の波長スペクトルの光に含まれない少なくとも一つの波長の光を遮蔽する第2の波長選択領域32とを有する波長選択部14に前記照明光を通過させ、物点O1、O2に照明光を照射させるとともに、撮像部12の撮像開口22aを通過した光によって画像として写される物点O1,O2を含む物体面Oを境界として、撮像部12に近い側を撮像側とし、撮像部12から遠い側を照明側とし、物点O1,O2に対し、第1の波長選択領域31に対応する第1の照明側立体角α11,α21と、第2の波長選択領域32に対応する第2の照明側立体角α12,α22とを規定し、物点O1,O2に対し、撮像開口22aに対応する撮像開口立体角βを規定し、第1の照明側立体角α11,α21あるいは第2の照明側立体角α12,α22のどちらか一方が撮像開口立体角βと共通領域を持たないようにして、第1の波長スペクトルの光及び第2の波長スペクトルの光を受光できる少なくとも2つのカラーチャンネルを有する撮像部12によって、物点O1,O2を撮像させること、物点O1,O2に対する少なくとも2つのカラーチャンネルでの受光データに基づいて、第1の波長スペクトルの光及び第2の波長スペクトルの光をそれぞれ異なる方向を持つ信号ベクトルとすること、信号ベクトルの方向に基づいて物点O1,O2における光の方向分布の広がりを推定処理すること、を含む。本実施形態に係る光学検査方法プログラムは、上記の光学検査方法に係る処理を、コンピュータに実行させることにより行う。本実施形態に係る光学検査装置10は、上記の光学検査方法に係る処理を処理部18に処理させることにより行う。
このため、光学検査方法、光学検査プログラム、又は、光学検査装置10を用いることで、物点O1,O2におけるBRDFの分布の広がりを識別でき、物点O1,O2の表面性状を判定することができる。
【0092】
光学検査方法において、少なくとも2つの異なる波長スペクトルの光を拡散させる光拡散部42を通過させた後、さらに波長選択領域14を通過させること、を含む。
光拡散部42により、発散角を広げて波長選択部14に照明光を入射することができる。
【0093】
本実施形態に係る光学検査装置10は、波長選択部14と、イメージセンサー22と、遮蔽部16とを有する。波長選択部14は、少なくとも2つの異なる波長スペクトルの光を含む照明光が入射される。波長選択部14は、第1の波長スペクトルの光、及び、第2の波長スペクトルの光を、物点O1,O2を含む物体面Oに照射する。イメージセンサー22は、各画素において、物点からの第1の波長スペクトルの光を受光する第1のカラーチャンネルと、第2の波長スペクトルの光を受光する第2のカラーチャンネルとを有し、第1の波長スペクトルの光及び第2の波長スペクトルの光をそれぞれ異なる信号として受光する。遮蔽部16は、イメージセンサー22に光が入射する領域を調整することにより、物体面Oの物点O1,O2に対するイメージセンサー22の画素において、物点O1,O2のBRDFの分布の広がりに応じて、異なる信号ベクトルを受光する。例えば、第1のカラーチャンネルの画素値及び第2のカラーチャンネルの画素値の一方が他方に比べて大きな値を持つ第1のモードと、第1のカラーチャンネルの画素値と第2のカラーチャンネルの画素値との両方が有意な値を持つ第2のモードのような、2つのモードの信号ベクトルをBRDFの分布の広がりに応じて受光する。このため、イメージセンサー22が第1のモードで信号を受信するか、第2のモードで信号を受信するかによって、物点O1,O2におけるBRDFの分布の広がりを識別でき、物点O1,O2の表面性状を判定することができる。
【0094】
以上説明したように、本実施形態によれば、物体O内で光が様々な方向に散乱、拡散、あるいは回折される場合でも、物体Oの情報を取得し得る光学検査方法、光学検査プログラム、及び、光学検査装置10を提供することができる。
【0095】
(変形例1)
変形例1について、図11を用いて説明する。
【0096】
第2実施形態に係る光学検査装置10において、照明部40は、環境光とともに、又は、環境光に代えて、図11に示すように光源44を用いてもよい。
【0097】
光源44は例えばレーザー光源でよい。この場合、撮像部12のイメージセンサー22は、環境光よりも明るく物体Oの像を撮像できる。そうすると、撮像画像の画素値が大きくなり、暗電流ノイズなどの画素値のノイズに強くなるため、S/Nが向上するという効果がある。
【0098】
レーザー光源44は一般的に単色であるため、光拡散部42として蛍光体を用いるとよい。例えば、レーザー光源を青光とし、蛍光体が青光を吸収し、緑光を発光するものでよい。蛍光体は、発光時にさまざまな方向に光を射出することができる。
【0099】
光源44は例えば白色LEDでもよい。ただし、白色LEDは、多くの場合、複数の青色の点光源と、緑色あるいは赤色の蛍光体から構成されることが多い。ここで、蛍光体は光拡散部42として機能し得る。それゆえ、白色LEDは光源44と光拡散部42を一体としたものと見做してもよい。ただし、光拡散部42を光源44と離間して配置することにより、物点により近いところで光を拡散できる。そのため、光源44としての白色LEDは、より様々な立体角の照明光を生成することができる。
【0100】
あるいは、照明光源44は、例えば、LD光源、ハロゲンランプ、キセノンランプなど、光を発するものならばなんでもよい。
【0101】
さらに、照明光源44は、光拡散部42により、より均斉度が高い照明光を生みだすことができる。また、光拡散部42によって照明光を拡散する拡散光DLとすることにより、環境光からの光の輝度を低減できる。そうすることによって、光学検査装置10は、特定の照明側立体角に環境光がイメージセンサー22に入射し、処理部18で処理する色ベクトルを極端に変化させるようなノイズ光となることを防ぐことができるという効果がある。
【0102】
また、光拡散部42があることにより、特別な光源がなくても、環境光の光を波長選択部14の全体に到達させ、さまざまな立体角の照明光を生成することができるという効果がある。
【0103】
(変形例2)
変形例2について、図12を用いて説明する。
【0104】
図12には、光源44として、異なる波長スペクトルを持つ第1の光源44a、第2の光源44b、および、ビームスプリッター44cを備える例を示す。第1の光源44aおよび第2の光源44bからの光はビームスプリッター44cによって合波(2つの異なる光線経路の光を同一経路上の光とすること)される。ビームスプリッター44cは、無偏光ビームスプリッター(ハーフミラー)でもよく、偏光ビームスプリッターでもよく、ダイクロイックミラーでもよい。ビームスプリッター44cは、これに限らず、2つの光を合光できるものならばなんでもよい。偏光ビームスプリッターを用いる場合、撮像部12のイメージセンサー22に偏光方向を感知できる偏光カメラを用いれば、偏光情報も色情報と同様に利用することで、物点における光の方向分布に関する情報をさらにロバストに得ることができる。また、2つの光源44a,44bにより、例えば、波長スペクトルにおいて2つの離間したピークを持つ波長スペクトルを新たに生成することができる。あるいは、2つの光源44a,44bの光強度を適切に調整することもできる。これにより、例えば、第1の波長スペクトルの色ベクトルの方向と、第2の波長スペクトルの色ベクトルの方向とを大きく異ならせることができ、処理部18が光の方向分布に関する情報をより正確に取得することができる。
【0105】
また、例えば処理部18は、2つの光源44a、44bを電気的に点灯あるいは消灯させてもよい。処理部18は、このような2つの光源44a、44bそれぞれに対して例えば独立にON/OFFを制御することができる。本実施形態は、波長選択部14によって光の方向と波長スペクトルを対応させている。そのため、処理部18がこのように2つの光源44a、44bを独立にON/OFFを制御することで、処理部18は、光の方向分布を時系列で変化させることができる。これにより、処理部18は、光の方向分布と波長スペクトルの対応関係をより明確化させることができるという効果がある。また、光源44a、44bのON/OFFを制御する処理部18は、波長スペクトルが類似した2つの光の間のクロストークを低減できるという効果がある。
【0106】
(第3実施形態)
本実施形態に係る光学検査装置10について、図13を参照して説明する。本実施形態に係る光学検査装置10は基本的に第1実施形態の光学検査装置10と同じである。第1実施形態の光学検査装置10との差分について述べる。
【0107】
図13には、本実施形態の光学検査装置10の模式的な断面図を示す。図13において、第2実施形態の図10と同様に、撮像部12の物体面Oを基準とし、物体面Oの上下に撮像側と照明側とを同時に描いた。撮像部12によって第1の物点O1は第1の像点I1に写され、第2の物点O2は第2の像点I2に写される。本実施形態では、撮像部12はイメージセンサー22と結像光学素子24とを備える。また、光学検査装置10は、照明側に、白色LED光源44と照明用レンズ46とを有する照明部40を備える。
【0108】
波長選択部14は、第1の波長選択領域31、第2の波長選択領域32、第3の波長選択領域33を備える。第1の波長選択領域31は、第2の波長選択領域32と第3の波長選択領域33との間に設けられる。また、第1の波長選択領域31は光軸OAと交差する。第1の波長スペクトルは第1の波長選択領域31を通過し、第2の波長スペクトルは第2の波長選択領域32を通過し、第3の波長スペクトルは第3の波長選択領域33を通過する。第1の波長スペクトルを青光(B)とし、第2の波長スペクトルを赤光(R)とし、第3の波長スペクトルを緑光(G)とする。第1の波長スペクトル、第2の波長スペクトル、第3の波長スペクトルはそれぞれ、波長450nm,650nm,550nmにピークを持つ。
【0109】
撮像部12のイメージセンサー22はエリアセンサーとする。ただし、イメージセンサー22は、その限りではなく、ラインセンサーなど画像を取得できるものならば何でもよい。イメージセンサー22は、3チャンネルの異なるカラーチャンネル(B、R、G)を備える。
【0110】
撮像部12のイメージセンサー22で撮像される画像において、第1の波長スペクトル、第2の波長スペクトル、第3の波長スペクトルの光は互いに方向が異なる色ベクトル(信号ベクトル)となる。これらを、それぞれ、第1の基本色ベクトル、第2の基本色ベクトル、第3の基本色ベクトルとする。ここで、第1の基本色ベクトルと第2の基本色ベクトルとの線形結合(0でない係数をそれぞれにかけて足し合わせたもの)は、第1の基本色ベクトルと第2の基本色ベクトルと第3の基本色ベクトルとの線形結合とは方向が必ず異なる。つまり、数学的な線形独立性により、両者は必ず方向が異なり、処理部18で識別できる。つまり、これら3つの基本色ベクトルは互いに線形独立であるため、処理部18で識別できる。
【0111】
結像光学素子24は、例えば結像レンズである。図13において、結像光学素子24としての結像レンズは模式的に一つのレンズで代表して描いているが、複数のレンズから構成される組レンズであってもよい。あるいは、結像光学素子24は、凹面ミラーや凸面ミラー、あるいはそれらの組み合わせでもよい。つまり、結像光学素子24は、物体Oの一点、つまり物点O1,O2から発した光線群を共役な像点I1,I2に集める機能を有する光学素子であればなんでもよい。結像光学素子24によって物体Oの表面の物点O1,O2から発した光線群が像点I1,I2に集められる(集光される)ことを結像という。あるいは、結像は、物点O1,O2が像点(物点の共役点)I1,I2に移されるともいう。また、十分に遠い物点から発せられた光線群が結像光学素子24によって移される共役点の集合面を、結像光学素子24の焦点面と呼ぶ。また、焦点面に垂直な線であり、結像光学素子24の中心を通るものを光軸OAとする。このとき、この光線によって移される物点O1,O2の共役な像点I1,I2を焦点と呼ぶ。
【0112】
本実施形態において、結像光学素子(結像レンズ)24と物点O1,O2との光軸OAに沿った間に波長選択部14が配置される。
【0113】
照明側において、照明用レンズ46として例えばフレネルレンズを用いるとする。照明用レンズ46の焦点に置かれた白色LED光源44からの光は、フレネルレンズ46によって平行光の照明光となって物体Oに向けて照射される。これにより、第1の物点O1では第1-1の照明側立体角α11を持つ白色光が入射する。第2の物点O2では第2-1の照明側立体角α21を持つ白色光が入射する。第1-1の照明側立体角α11と第2-1の照明側立体角α21は等しいとする。ここで、白色光は、第1の波長スペクトル、第2の波長スペクトル、第3の波長スペクトルを全て含むとする。
【0114】
撮像側において、第1の物点O1から第1の波長選択領域31に到達する光線が占める立体角を第1-1の撮像側立体角β11とし、第1の物点O1から第2の波長選択領域32に到達する光線が占める立体角を第1-2の撮像側立体角β12とする。また、第2の物点O2から第1の波長選択領域31に到達する光線が占める立体角を第2-1の撮像側立体角β21とし、第2の波長選択領域32に到達する光線が占める立体角を第2-2の撮像側立体角β22とする。そして、第2の物点O2から第3の波長選択領域33に到達する光線が占める立体角を第2-3の撮像側立体角β23とする。
【0115】
図13のように水平な物体面を取り、物体面に対して照明側立体角を折り返して撮像側で照明側立体角と撮像側立体角とを比較したときに、第1-1の照明側立体角α11は第1-1の撮像側立体角β11に含まれる(第1-1の照明側立体角α11≦第1-1の撮像側立体角β11)。同様に、図13のように水平な物体面を取り、物体面に対して照明側立体角を折り返して撮像側で照明側立体角と撮像側立体角とを比較したときに、第2-1の照明側立体角α21は、第2-2の撮像側立体角β22に含まれる(第2-1の照明側立体角α21≦第2-1の撮像側立体角β21)。
【0116】
本実施形態に係る光学検査装置10の動作を次に述べる。
【0117】
第1の物点O1は標準面上にあり、第2の物点O2は微小欠陥上にあるとする。そのため、第1の物点O1の光線方向分布は比較的狭く、第2の物点O2の光線方向分布は比較的広い。ただし、その限りではなく、微小欠陥によっては第2の物点O2の光線方向分布のほうが第1の物点O1の光線方向分布も狭くなっていてもよい。
【0118】
第1の物点O1に第1-1の照明側立体角α11を持つ光線が入射すると、第1-1の光線方向分布(BRDF)を持つ光線が通過する。つまり、第1-1の光線方向分布を持つ光線が第1-1の撮像側立体角β11と第1-2の撮像側立体角β12とを通過する。そして、第1-1の光線方向分布を持つ光線のうち、第1の波長スペクトルの光は第1の波長選択領域31を通過し、第2の波長スペクトルの光は第2の波長選択領域32を通過する。そして、処理部18は、撮像部12のイメージセンサー22によって第1の物点O1を第1の波長スペクトルの光と第2の波長スペクトルの光で撮像する。撮像画像における第1の物点O1に対する第1の像点I1の色ベクトルを第1の色ベクトルとする。
【0119】
一方、第2の物点O2に第2-1の照明側立体角α21を持つ光線が入射すると、第2-1の光線方向分布(BRDF)を持つ光線が通過する。つまり、第2-1の光線方向分布を持つ光線は、第2-1の撮像側立体角β21と第2-2の撮像側立体角β22と第2-3の撮像側立体角β23を通過する。そして、第2-1の光線方向分布を持つ光線は、第1の波長選択領域31、第2の波長選択領域32、さらに第3の波長選択領域33を同時に通過し、撮像部12のイメージセンサー22によって第2の物点O2が第1の波長スペクトルの光と第2の波長スペクトルの光と第3の波長スペクトルの光で撮像される。撮像画像における第2の物点O2に対する第2の像点I2の色ベクトルを第2の色ベクトルとする。
【0120】
第1の基本色ベクトル(第1の波長選択領域31を通過する波長スペクトルの光の信号ベクトル)、第2の基本色ベクトル(第2の波長選択領域32を通過する波長スペクトルの光の信号ベクトル)、第3の基本色ベクトル(第3の波長選択領域33を通過する波長スペクトルの光の信号ベクトル)の方向が互いに線形独立性であるため、第1の物点O1と第2の物点O2におけるそれぞれの色ベクトル(第1の色ベクトルと第2の色ベクトル)は互いに方向が異なる。これにより、処理部18は、第1の物点O1と第2の物点O2のそれぞれにおける光線方向分布の違いを識別できるという効果がある。処理部18が光線方向分布の違いを識別できれば、処理部18は、微小欠陥の有無に関する情報を得ることができる。また、処理部18で標準面と微小欠陥におけるそれぞれの光線方向分布に対する参照色ベクトルを予め用意し、記憶媒体等に記憶させておけば、処理部18は、参照色ベクトルと撮像された色ベクトルとの照合により、各物点O1、O2が標準面上にあるか微小欠陥上にあるかのいずれかを識別することができる(図4及び図5参照)。
【0121】
本実施形態は、波長選択部14と物体面Oとの距離を調整することにより、それぞれの波長選択領域31,32,33に対する撮像側立体角を変化させることができる。そのため、処理部18は、所望のレンジと感度で、物点O1,O2における光線方向分布の広がりに関する情報を取得できるという効果がある。
【0122】
以上説明したように、本実施形態によれば、物体O内で光が様々な方向に散乱、拡散、あるいは回折される場合でも、物体Oの情報を取得し得る光学検査方法、光学検査プログラム、及び、光学検査装置10を提供することができる。
【0123】
(変形例1)
図14を用いて変形例1について説明する。
【0124】
本実施形態に係る光学検査装置10の変形例1について述べる。本変形例1において、図14で示すように、波長選択部14の波長選択領域31,32,33は、同じものを繰り返して配置する。このため、波長選択部14は、互いに異なる複数の波長選択領域31,32,33が並べられた第1のセット141と、第1のセット141と同じ配列で複数の波長選択領域31,32,33が並べられた第2のセット142とを有し、第1のセット141と第2のセット142とが同一面上に並べられている。図示しないが、波長選択部14は、第1のセット141と同じ配列で複数の波長選択領域31,32,33が並べられた第3のセットをさらに有することも好適である。
【0125】
第1の波長選択領域31、第2の波長選択領域32、第3の波長選択領域33はそれぞれ、第1の波長スペクトルの光、第2の波長スペクトルの光、第3の波長スペクトルの光を通過させる。第1の波長スペクトル、第2の波長スペクトル、第3の波長スペクトルはそれぞれ、波長450nm,550nm,650nmにピークを持つ青光(B)、緑光(G)、赤光(R)である。このように、波長選択部14は、第1の波長選択領域31、第2の波長選択領域32、第3の波長選択領域33が周期的に繰り返す配置とすることにより、撮像部12のイメージセンサー22で必要なカラーチャンネル数を抑えつつ、光学検査装置10は、物体面Oの検査範囲を広げることができるという効果がある。また、波長選択部14が撮像画像に背景ノイズとして写り込んだとき、その背景ノイズは周期性を持つ。そのため、処理部18は、その周期性を利用して物体面情報と背景ノイズを切り分けて物体面Oの情報を識別することができるという効果がある。
【0126】
撮像画像を用いた光学検査において、微小欠陥のみの画像が抽出できれば検査が容易になる。そこで、処理部18は、微小欠陥以外が写った背景画像を予め用意し、元の撮像画像から差し引くことにする。ここで、背景画像は、標準平面を予め撮像したものでもよいし、あるいは、予め何らかの方法で作成したものでもよい。
【0127】
撮像部12のイメージセンサー22で取得される撮像画像は、R、G、Bの3チャンネルのカラー画像(RGB画像)である。この3チャンネルのカラー画像に基づいて、さまざまな信号ベクトルをつくることができる。つまり、物点に対する少なくとも2つのカラーチャンネルでの受光データに基づいて、信号ベクトルをつくることができる。信号ベクトルのつくり方は、どのようなものでもよい。たとえば、R、G、Bの3チャンネルのカラー画像の3つのチャンネルの画素値をそのままベクトル成分とする信号ベクトルとしてもよい。この場合は、RGBカラースケールを用いて1チャンネルのRGB画像に変換することができる。RGB画像は、3チャンネルのカラー画像をさまざまなデバイスに表示する際に、一般的に用いられることが多い。あるいは、RGB画像から、色相(Hue)、彩度(Saturation・Chroma)、明度(Value・Brightness)の3つの成分からなるHSV色空間に変換することもでき、それらの各成分をベクトルの成分とする信号ベクトルをつくることもできる。このとき、それぞれ1チャンネルとなる色相画像、彩度画像、明度画像を得ることができる。本実施形態において、色相は信号ベクトルの方向と強い相関を持つ。あるいは、RGB画像は、3つのチャンネルの画素値をそのままベクトル成分とする信号ベクトルからグレースケールを用いて1チャンネルのモノクロ画像にもできる。あるいは、これらに限らず、さまざまな1チャンネルの画像に変換できる。ここでは、処理部18は、HSV色空間の色相画像に変換する。このとき、各画素の画素値をI(m,n)とする。ここでmとnは2次元画像の位置座標を表す整数である。
【0128】
色相画像の各位置(m,n)において、色ベクトルは第1の基本色ベクトル、第2の基本色ベクトル、第3の基本色ベクトルの線形結合となる。標準面上の物点O1において、光の方向分布に対応する色ベクトルは第1の基本色ベクトル、第2の基本色ベクトル、第3の基本色ベクトルのうち、2つの基本色ベクトルの組み合わせたものとなる。つまり、3つの基本色ベクトルから2つの基本色ベクトルの組み合わせを選び、それら2つの基本色ベクトルに0でない係数を掛けて線形結合したものとなる。つまり、第1の基本色ベクトルと第2の基本色ベクトル、第2の基本色ベクトルと第3の基本色ベクトル、第3の基本色ベクトルと第1の基本色ベクトルの3つの組み合わせに対する線形結合となる。
【0129】
また、標準面上の物点O1において、光の方向分布に対応する色ベクトルは第1の基本色ベクトル、第2の基本色ベクトル、第3の基本色ベクトルのうち、1つの基本色ベクトルによるものとなることもあり得る。
【0130】
一方、微小欠陥上の物点において、光の方向分布に対応する色ベクトルは、第1の基本色ベクトル、第2の基本色ベクトル、第3の基本色ベクトルの全ての基本色ベクトルの組み合わせとなる。ここで、第1の基本色ベクトル、第2の基本色ベクトル、第3の基本色ベクトルはそれぞれ方向が異なり、線形独立であるので、線形独立性に基づき、第1の物点O1と第2の物点O2におけるそれぞれの色ベクトルはそれぞれ方向が異なる。
【0131】
これにより、処理部18は、各物点O1,O2が標準面上にあるか微小欠陥上にあるかを色ベクトルの方向から識別することができる。
【0132】
処理部18は、イメージセンサー22で取得した撮像画像に基づいて背景画像を作成する。背景画像として、撮像画像の各画素における色ベクトルが、第1の基本色ベクトル、第2の基本色ベクトル、第3の基本色ベクトルの全ての基本色ベクトルの組み合わせの場合、画素値を0とする。また、そうでない場合の色ベクトルをI(m,n)とする。ここで、mとnは2次元画像の位置座標を表す整数である。
【0133】
そうすると、図15のプロセスフローに示すように、処理部18が元の撮像画像から背景画像を差し引くことにより、微小欠陥の画像のみが残る。つまり、処理部18は、不要な背景画像を除去することができる。
【0134】
図16には、実際に白色プラスチック板上の微小欠陥を撮像したもの(左図)とその背景除去画像(右図)とを示す。
【0135】
以上で述べた処理部18による背景除去処理は、画素ごとに行える。そのため、処理部18(計算機)などで処理を行う場合、処理の並列化による高速化が可能という効果がある。
【0136】
また、以上で述べた背景画像は、微小欠陥が無い標準面を持つ標準物体を撮像したものと一致する。そのため、あらかじめ標準物体を撮像したものを背景画像とすることもできる。この場合、背景画像を作成するという処理が省かれるため、処理部18は、背景除去画像を作成する処理をさらに高速化することができるという効果がある。
【0137】
(変形例2)(多波長開口を焦点面に配置)
本実施形態の光学検査装置10の変形例2を述べる。
【0138】
図17には、本変形例2の光学検査装置10の模式的な断面図を示す。本変形例2において、波長選択部14は結像光学素子24の焦点面に配置される。なお、波長選択部14は、図13に示す光学検査装置10の波長選択部14と同じ構造である。また、第1の波長選択領域31を光軸OAが交差する。
【0139】
これにより、第1の物点O1の第1-1の撮像側立体角β11と、第2の物点O2の第2-1の撮像側立体角β21が等しくなる。同様に、第1の物点O1の第1-2の撮像側立体角β12と、第2の物点O2の第2-2の撮像側立体角β22も等しくなる。つまり、第1の物点O1と第2の物点O2において、各波長選択領域31,32,33に到達する光線の立体角がそれぞれ等しくなる。
【0140】
一方、照明側においても、第1の物点O1と第2の物点O2に入射する照明光の立体角は互いに等しい。つまり、第1の物点O1の第1-1の照明側立体角α11と、第2の物点O2の第2-1の照明側立体角α21は等しい。
【0141】
以上により、物体Oの表面が平面である場合、標準面上の物点からの光は全て同じ撮像側立体角を通過する。また、同様に、任意の物点において、BRDFが同じとなる微小欠陥からの光は全て同じ撮像側立体角を通過する。これにより、処理部18は、全ての物点O1,O2の色ベクトルを同じ基準で検査できるという効果がある。つまり、全ての物点O1,O2において、処理部18は、同一の参照方向を用いて色ベクトルの方向から光の方向分布に関する情報を得ることができる。これにより、処理部18は、処理を簡略化でき、高速化もできるという効果がある。
【0142】
(第4実施形態)
以下、本実施形態に係る光学検査装置10について、図18を参照して説明する。本実施形態に係る光学検査装置10は基本的に第2実施形態の光学検査装置10(図9及び図10参照)と同じであるが、差分について述べる。
【0143】
図18には、本実施形態に係る光学検査装置10の模式的な断面図を示す。本実施形態に係る光学検査装置10は、照明側に、波長選択部14と、照明部40とを有する。照明部40は、光拡散部42と、照明用光学素子48とを備える。また、光学検査装置10は、撮像側に結像光学素子24と、撮像側遮蔽部16とを備える。
【0144】
照明用光学素子48は、光を結像する結像光学素子でよい。つまり、物点からの光を像点に結像するものでよい。照明用光学素子48としては、例えば、レンズ、複数のレンズから構成される組レンズ、凹レンズ、凸レンズ、GRINレンズ、凹面ミラー、放物面ミラー、リフレクターなどでよい。つまり、照明用光学素子48としては、光を結像するものならばなんでもよい。ただし、この限りではなく、照明用光学素子48は、非結像系の光学素子でもよい。照明用光学素子48は、例えば、CPC(Compound Parabolic Concentrator;複合放物面型集光器)や全反射レンズなどでよい。ただし、照明用光学素子48として用いる非結像系の光学素子は、点から発した光線群を平行光に変換する機能を有するものとする。このような点を照明側の焦点、あるいは照明側焦点とする。そして、そのような点は少なくとも1つあるとし、その点が載る面を照明側焦点面とする。つまり、照明用光学素子48は、照明側焦点面を有するものとする。照明側焦点面と直交し、かつ、照明用光学素子の中心を通るものを照明側光軸OAとする。
【0145】
本実施形態において、照明光学素子48はフレネルレンズとする。フレネルレンズは、大きな有効径を備え、かつ薄いという特徴がある。
【0146】
波長選択部14は、照明用光学素子48の照明側焦点面あるいはその近傍に配置される。なお、波長選択部14は、図13に示す光学検査装置10の波長選択部14と同じ構造である。また、第1の波長選択領域31を照明側光軸OAが交差する。
【0147】
光拡散部42は、照明用光学素子48から照明側光軸OAに沿って波長選択部14よりも離れた位置に配置される。本実施形態では、光拡散部42からの光がフレネルレンズによって物点O1,O2へと結像されるように、光拡散部42を配置する。ただし、この限りではなく、光拡散部42は、照明用光学素子48から照明側光軸OAに沿って波長選択部14よりも離れた位置であればどこでもよい。
【0148】
光拡散部42には環境光からの白色光が到達し、波長選択部14に向けて白色光を拡散する。ただし、本実施形態では、波長選択部14に到達しない環境光は、遮蔽されるように構成されている。光拡散部42はここでは擦りガラスであるとする。ただし、光拡散部42は、光を拡散するものならばなんでもよく、蛍光体が塗布された板や、散乱体が塗布された板、表面に粗面を持つ板、多孔質な透明板などでもよい。
【0149】
撮像部12のイメージセンサー22は、撮像側遮蔽部16の間に撮像開口22aが形成される。撮像側遮蔽部16に到達した光は遮蔽される。つまり、撮像開口22aに到達しない物点O1,O2からの光はイメージセンサー22上に結像されない。
【0150】
本実施形態に係る光学検査装置10の動作を述べる。
【0151】
第1の物点O1は物体Oの標準面上にあり、第2の物点O2は物体Oの微小欠陥上にあるとする。標準面のBRDFは鏡面反射によるものに近いとし、微小欠陥のBRDFと比較して分布が狭いとする。
【0152】
波長選択部14は、第1の波長選択領域31と第2の波長選択領域32とを備えており、それぞれ第1の波長スペクトルの光と第2の波長スペクトルの光を通過させる。第1の波長スペクトルは青光であり、第2の波長スペクトルは赤光とする。撮像部12のイメージセンサー22で撮像した画像において、第1の波長スペクトルに対する第1の基本色ベクトルと第2の波長スペクトルに対する第2の基本色ベクトルは互いに方向が異なるとする。波長選択部14を通過した光によってイメージセンサー22で撮像された画像における色ベクトルは、第1の基本色ベクトルと第2の基本色ベクトルの線形結合となる。
【0153】
環境光は白色光であり、光拡散部42の第1の光拡散点D1と第2の光拡散点D2で拡散される。つまり、これらの光拡散点D1,D2において、入射後の環境光の発散角は広がる。これにより、波長選択部14に入射する光の方向のバリエーションを増加させることができる。
【0154】
一方、光拡散部42が無い場合、波長選択部14に直接到達する環境光の光の方向は、ほぼ平行に近くなる。そのため、さまざまな方向の光を物点O1、O2に入射させることができない。つまり、光拡散部42があることにより、物点O1、O2にさまざまな照明側立体角を光線の抜け無しに生成することができるという効果がある。
【0155】
第1の光拡散点D1と第2の光拡散点D2で拡散された拡散光は、波長選択部14を通過し、照明用光学素子48によってそれぞれ第1の物点O1と第2の物点O2へと入射する。ここで、波長選択部14は照明用光学素子48の焦点面に配置されている。そのため、第1の物点O1と第2の物点O2における照明側立体角は一致する。つまり、第1-1の照明側立体角α11は第2-1の照明側立体角α21に一致し、第1-2の照明側立体角α12は第2-2の照明側立体角α22に一致する。
【0156】
第1-1の照明側立体角α11を物体面Oで折り返して撮像側で第1-1の照明側立体角α11と撮像側立体角βとの両者を比較したとき、第1-1の照明側立体角α11は、撮像側の撮像開口立体角βを含む(第1-1の照明側立体角α11≧撮像開口立体角β)。一方、第1-2の照明側立体角α12を物体面Oで折り返して撮像側で第1-2の照明側立体角α12と撮像開口立体角βとの両者を比較したとき、第1-2の照明側立体角α12は、撮像側の撮像開口立体角βと共通領域を持たない。第1-1の照明側立体角α11の光が第1の物点O1に入射すると、第1-1の光線方向分布(BRDF)の光線が反射される。第1-2の照明側立体角α12の光が第1の物点O1に入射すると、第1-2の光線方向分布(BRDF)の光線が反射される。第1-2の光線方向分布(BRDF)が占める撮像側立体角は、撮像開口立体角βと共通領域を持たない。一方、第1-1の光線方向分布が占める撮像側立体角は、撮像開口立体角βと共通領域を持つ。これにより、波長選択部14からの光が第1の物点O1に入射すると、第1の波長スペクトルの光のみで第1の物点O1がイメージセンサー22で撮像される。すなわち、波長選択部14からの光が第1の物点O1に入射すると、第2の波長スペクトルの光は、開口22aが調整された遮蔽部16により遮蔽される。
【0157】
第2-1の照明側立体角α21の光あるいは第2-2の照明側立体角α22の光が第2の物点O2に入射すると、いずれの場合も第2の光線方向分布(BRDF)の光線が反射される。第2の光線方向分布が占める撮像側立体角は、撮像開口立体角βと共通領域を持つ。これにより、波長選択部14からの光が第2の物点O2に入射すると、第1の波長スペクトルの光および第2の波長スペクトルの光の両方で第2の物点O2がイメージセンサー22で撮像される。
【0158】
以上により、第1の物点O1の第1の色ベクトルと第2の物点O2の第2の色ベクトルは、互いに方向が異なる。これにより、処理部18は、各物点O1,O2における光の方向分布の広がりの違いを識別できるという効果がある。処理部18は、各物点O1,O2において、標準面あるいは微小欠陥のBRDFに対する参照色ベクトルを予め用意し、記憶媒体等に記憶させておけば、処理部18は、その参照色ベクトルと撮像画像の色ベクトルを照合することにより、光の方向分布の広がりについて詳細な情報を取得することができるという効果がある。
【0159】
本実施形態において、波長選択部14は照明用光学素子48の焦点面に配置されている。そのため、第1の物点O1と第2の物点O2における照明側立体角は一致する。それにより、各物点O1,O2のBRDFの入射光を等しくすることができる。つまり、各物点O1,O2のBRDFを同じ入射条件で比較できる。これにより、光学検査装置10は、検査精度を向上させることができるという効果がある。
【0160】
本実施形態において、各物点O1,O2の光線方向分布の広がりの違いを処理部18が識別できるのは次の理由による。つまり、「波長選択部14の少なくとも一つの波長選択領域が照明側焦点より離れた場所に配置され、その照明側立体角が撮像開口立体角βと共通領域を持たない」からである。これにより、第2の波長スペクトルで物点が結像されたか否かで、処理部18が光の方向分布の広がりを識別できるという効果がある。
【0161】
以上説明したように、本実施形態によれば、物体O内で光が様々な方向に散乱、拡散、あるいは回折される場合でも、物体Oの情報を取得し得る光学検査方法、光学検査プログラム、及び、光学検査装置10を提供することができる。
【0162】
(変形例1)
図19には、本実施形態の変形例1に係る光学検査装置10の照明部40の模式的な断面図を示す。
【0163】
本変形例1において、光学検査装置10は、照明側に照明部40を備える。照明部40は、LED光源44と、光拡散部42と、照明用光学素子50と、放熱部52とを備える。
【0164】
本実施形態の照明用光学素子50は、例えば放物面ミラーであり、照明側焦点面50aを持つ。放物面ミラーは凹面ミラーの一形態である。
【0165】
LED光源44は、例えば青色LED44aと蛍光体44bとを有する。蛍光体44bは光を拡散させる光拡散部として用いられ、青色LED44a上に設けられる。このため、LED光源44により白色拡散光が照射される。
【0166】
波長選択部14は、少なくとも第1の波長選択領域31(図13参照)と第2の波長選択領域32(図13参照)とを備え、それぞれ第1の波長スペクトルの光と第2の波長スペクトルの光を通過させる。なお、第1の波長選択領域31を光軸OAが交差する。波長選択部14は、照明側焦点面50aあるいはその近傍に配置される。また、第2の波長選択領域32は、照明側の焦点から離れた位置に配置される。これにより、「波長選択部14の少なくとも一つの波長選択領域32が照明側焦点50bより離れた場所に配置され、その照明側立体角が撮像開口立体角と共通領域を持たない」ように構成される。
【0167】
本変形例1では、光拡散部42は、白色拡散板を備えている。白色拡散板42は、入射した光をランバート反射させる。白色拡散板42とLED光源44との間には、照明側の光軸OAに沿って、つまり、光線経路に沿って、波長選択部14が配置される。例えば、白色拡散板42と波長選択部14とは一体化される。本変形例では、LED光源44からの白色光のうち、第1の波長スペクトルの光、及び、第2の波長スペクトルの光はいったん波長選択部14を通過し、白色拡散板42によって反射され、もう一度、波長選択部14を通過する。つまり、本変形例1では、照明側光軸OAに沿って、波長選択部14を挟むように白色拡散板42が2つ配置されるのと等価な状況である。
【0168】
放熱部52は、LED光源44からの熱を照明部40の外部へと放熱する。
【0169】
以上の構成により、照明部40は、LED光源44からの光を、波長選択部14を通過し、さらに白色拡散板42を拡散しながら通過する第1の波長スペクトルの光及び第2の波長スペクトルの光と、白色拡散板42で反射され、波長選択部14を通過して照明用光学素子50により反射する第1の波長スペクトルの光及び第2の波長スペクトルの光との光が、物点O1,O2を含む物体面Oに照射される。このため、本変形例1では、照明部40は、第1の波長スペクトルの光及び第2の波長スペクトルの光をそれぞれ異なる方向に向けて物体Oに照射することができるという効果がある。また、本変形例1のような、照明用光学素子50として、放物面ミラーのようなリフレクターを用いることにより、照明部40は、レンズを用いた場合と比べて、多くの光束を照明として有効に使えるという効果がある。また、このようなリフレクターを用いることにより、照明部40は、レンズと比べて色収差が発生しないという効果がある。これにより、光学検査装置10は、照明側立体角の方向精度を向上させることができる。
【0170】
(変形例2)
図20には、第4実施形態の変形例2に係る光学検査装置10の波長選択部14の上面図を示し、図21には、図20中のXXI-XXI線に沿う断面図を示す。
【0171】
本変形例2では、照明側の波長選択部14として、中心が同心円状であり、外側は120°回転対称なものとする。言い換えれば、中心は軸対称であり、その外側は方位角方向に変化するものとする。波長選択部14は、第1の波長選択領域31、第2の波長選択領域32で同心円の中心部が構成され、第3の波長選択領域33、第4の波長選択領域34、第5の波長選択領域35でその外側の120°回転対称な領域が構成される。なお、第1の波長選択領域31の外周側に、第2の波長選択領域32が設けられる。また、第2の波長選択領域32の外周側に、第3の波長選択領域33、第4の波長選択領域34、第5の波長選択領域35が、周方向に120°の間隔ごとに設けられる。
【0172】
光学検査装置10は、このような波長選択部14を用いることで、処理部18で光の方向分布(BRDF)の広がりに関する情報を得られるだけでなく、光の方向分布の方位角方向に関する情報も得ることができる。つまり、処理部18は、より詳細なBRDF分布が取得できるという効果がある。これにより、光学検査装置10は、検査の精度が向上するという効果がある。
【0173】
また、本変形例2は照明側の波長選択部14について述べたが、図20及び図21に示す波長選択部14を撮像側の波長選択部(図1図6図7図9図10図13図17図18図19参照)として用いてもよい。それにより、上記と同様の効果を得ることができる。
【0174】
(第5実施形態)
以下、本実施形態に係る光学検査装置10について、図22を参照して説明する。図22には本実施形態の光学検査装置10の斜視図を示す。なお、図22では、光学検査装置10の処理部18の図示を省略する。光学検査装置10は、基本的には図13に示す第3実施形態と同じである。以下は差分について述べる。
【0175】
本実施形態に係る光学検査装置10は、物体面Oに対して照明側と撮像側の両方にそれぞれ波長選択部14a,14bを備える。すなわち、光学検査装置10は、照明側波長選択部14aと、撮像側波長選択部14bとを備える。物体Oの表面(物体面O)は平面であるとする。また、標準面はほぼ鏡面とする。
【0176】
撮像部12は、イメージセンサー22と結像光学素子24とを有する。撮像部12のイメージセンサー22はラインセンサーとする。
【0177】
照明側波長選択部14aと撮像側波長選択部14bは、正反射条件において補色の関係となるように構成される。つまり、物体Oの表面が鏡面であるとき、照明側波長選択部14aを通過する波長スペクトルの光は、物体Oの表面で正反射され、撮像側波長選択部14bで遮蔽される。一方、物体Oの表面が鏡面でなく、粗面であるとき、照明側波長選択部14aを通過する波長スペクトルの光は、物体Oの表面で散乱され、BRDFが広がり、撮像側波長選択部14bを一部の波長スペクトルの光が透過する。
【0178】
照明側波長選択部14aと撮像側波長選択部14bは、どちらもラインセンサー22の長手方向に沿う方向に延長される、複数の波長選択領域を備える。照明側波長選択部14aと撮像側波長選択部14bは、どちらも各波長選択領域の長手方向に直交する方向に波長選択領域が並べて設けられ、複数の波長選択領域は全体としてストライプ状に配列されている。波長選択部14a,14b上において、波長選択領域が変化する方向に沿う方向を配列方向とする。また、撮像側波長選択部14bの外側には、撮像側遮蔽部16が設けられる。
【0179】
撮像側の結像光学素子24の光軸OAを含み、かつ、照明側波長選択部14a及び撮像側波長選択部14bの配列方向を含む断面に光線を投影すると、照明部40からの光は物点Oへと集光する光(集光光)となる。これを第1の断面S1とする。一方、第1の断面S1に直交する断面を第2の断面S2とする。第2の断面S2に光線を投影すると、照明部40からの光は集光光ではなく、逆に発散する拡散光(発散光)となる。
【0180】
照明側波長選択部14aおよび撮像側波長選択部14bはそれぞれ複数の波長選択領域を備えており、各波長選択領域はストライプ状であるため、第1の断面S1において波長選択領域が複数配置されることになる。つまり、第1の断面S1は照明側波長選択部14aおよび撮像側波長選択部14bの波長選択領域を並べる方向が含まれている。
【0181】
照明部40から射出された光のうち、照明側波長選択部14aの各波長選択領域に対応する波長スペクトルの光は、照明側波長選択部14aを通過して物体Oの表面を照射し、照射野Fを形成する。さらに、物体Oの表面の第1の物点O1に微小欠陥がある場合、撮像側波長選択部14bの各波長選択領域に対応する波長スペクトルの光が撮像側波長選択部14bを通過して第1の物点O1をラインセンサー(イメージセンサー)22上に結像する。一方、第1の物点O1が標準面上にある場合、照明は撮像側波長選択部14bで遮蔽される。これは、照明側波長選択部14aと撮像側波長選択部14bの波長選択領域が補色の関係に構成(配置)されているからである。
【0182】
第1の断面S1に光線を投影したとき、第1のBRDFの分布の広がりによって、撮像側波長選択部14bの波長選択領域を通過する光が変化する。一方、第2の断面S2に光線を投影したものを考えると、照明部40からの光は拡散光であるので撮像部12での画角は広くなることがわかる。つまり、本実施形態により、ラインセンサー22の長手方向の画角を広く有効に使用できるという効果がある。また、撮像側波長選択部14bを撮像部12(結像光学素子24及びラインセンサー22)の前面に配置する構成により、どのような撮像部12(つまりカメラ)に対しても本光学系を容易に組むことができる。
【0183】
本実施形態により、物点Oにおける光の方向分布の広がりに関する情報が得られる。これにより、処理部18は、物体Oの表面の性状あるいは形状の検査が可能となる。
【0184】
以上説明したように、本実施形態によれば、物体O内で光が様々な方向に散乱、拡散、あるいは回折される場合でも、物体Oの情報を取得し得る光学検査方法、光学検査プログラム、及び、光学検査装置10を提供することができる。
【0185】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、物体O内で光が様々な方向に散乱、拡散、あるいは回折される場合でも、物体Oの情報を取得し得る光学検査方法、光学検査プログラム、及び、光学検査装置10を提供することができる。
【0186】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0187】
10…光学検査装置、12…撮像部、14…波長選択部、16…遮蔽部、18…処理部、22…イメージセンサー、22a…撮像開口、24…結像光学素子、31-35…波長選択領域、40…照明部、42…光拡散部、44…光源、46…照明用レンズ、48…照明用光学素子、50…照明用光学素子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図15
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