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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135191
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】包装袋、包装袋の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B65D 33/22 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
B65D33/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023045755
(22)【出願日】2023-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】313004403
【氏名又は名称】株式会社フジシール
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】図師 良明
(72)【発明者】
【氏名】吉田 寛
(72)【発明者】
【氏名】和田 奈央子
(72)【発明者】
【氏名】節田 征矢
【テーマコード(参考)】
3E064
【Fターム(参考)】
3E064AA05
3E064BA01
3E064BA26
3E064BB03
3E064BC04
3E064EA30
3E064GA02
3E064HH04
(57)【要約】
【課題】製袋機による製造が可能な、紙製かつ部分透明の包装袋を提供する。
【解決手段】包装袋(100)は、紙基材(21)で構成された、表面及び内面を有する袋本体(10)と、紙基材(21)の一部である第1領域に透明化剤を含侵させてなる透明化部(8)と、紙基材(21)の内面の少なくとも一部にヒートシール剤を塗布してなるヒートシール層(22)と、を備え、包装袋(100)を製袋するために、紙基材(21)において第1領域を除く領域に形成されたヒートシール層(22)がヒートシールされてなる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙基材で構成された、表面及び内面を有する袋本体と、
前記紙基材の一部である第1領域に透明化剤を含侵させてなる透明化部と、
前記紙基材の前記内面の少なくとも一部にヒートシール剤を塗布してなるヒートシール層と、を備え、
自包装袋を製袋するために、前記紙基材において前記第1領域を除く領域に形成された前記ヒートシール層がヒートシールされてなる、包装袋。
【請求項2】
前記内面は前記表面よりも粗面であり、
前記透明化剤は、前記内面に含侵されてなる、請求項1に記載の包装袋。
【請求項3】
前記透明化剤は、前記表面及び前記内面に含侵されてなる、請求項1または2に記載の包装袋。
【請求項4】
前記透明化部は、前記ヒートシール層がヒートシールされるヒートシール位置から離隔されている、請求項1または2に記載の包装袋。
【請求項5】
袋本体を構成する、表面及び内面を有する紙基材を準備する工程と、
前記紙基材の一部である第1領域に透明化剤を含侵させて透明化部を形成する工程と、
前記紙基材の前記内面の少なくとも一部にヒートシール剤を塗布してなるヒートシール層を形成する工程と、
前記紙基材において前記第1領域を除く領域に形成された前記ヒートシール層をヒートシールして製袋する工程と、を含む、包装袋の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、包装袋、包装袋の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒートシール性フィルム(シーラント層)を内面に積層した積層フィルムを使用する各種包装用の袋(平パウチ、スタンディングパウチ、サイドガセットパウチ、又はピロー包装袋など)が知られている。これらの包装袋は、透明なプラスチック製フィルムを使用することによって収容物(商品)を透視可能にする。
【0003】
一方で、プラスチックによる海洋汚染、化石燃料の枯渇の問題、又はCO等の温暖化ガス削減への環境対応などから、プラスチックの代替材料として紙基材の使用が検討されている。紙基材については、透明化剤を塗布することにより透視可能な部分を形成できる。そのような紙基材を用いた包装袋を開示する文献として特許文献1、2が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-1163号
【特許文献2】特開2000-85868号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1、2に開示されるような封筒は、糊貼りによって製造されるものであり、広く使用されている、プラスチックの積層フィルムをヒートシールして製袋する製袋機を使って製造できなかった。
【0006】
本開示は、上記課題を鑑み、製袋機による製造が可能な、紙製かつ部分透明の包装袋、該包装袋の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係る包装袋は、前記の課題を解決するために、紙基材で構成された、表面及び内面を有する袋本体と、前記紙基材の一部である第1領域に透明化剤を含侵させてなる透明化部と、前記紙基材の前記内面の少なくとも一部にヒートシール剤を塗布してなるヒートシール層と、を備え、自包装袋を製袋するために、前記紙基材において前記第1領域を除く領域に形成された前記ヒートシール層がヒートシールされてなる。
【0008】
本開示の一態様に係る包装袋の製造方法は、袋本体を構成する、表面及び内面を有する紙基材を準備する工程と、前記紙基材の一部である第1領域に透明化剤を含侵させて透明化部を形成する工程と、前記紙基材の前記内面の少なくとも一部にヒートシール剤を塗布してなるヒートシール層を形成する工程と、前記紙基材において前記第1領域を除く領域に形成された前記ヒートシール層をヒートシールして製袋する工程と、を含む。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、製袋機による製造が可能な、紙製かつ部分透明の包装袋、該包装袋の製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示に係る包装袋の正面図である。
図2】包装袋の断面模式図(図1におけるAA線断面模式図)を示す。
図3】本開示に係る包装袋の断面模式図を示す。
図4】本開示に係る包装袋の製造方法を示すフローチャートである。
図5】本開示に係るピロー包装袋の斜視図である。
図6】本開示に係るピロー包装袋を製造するためのシートの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の一実施形態について、図1等を参照しながら詳細に説明する。図1は、本開示に係る包装袋100の正面図である。図1において、XYZ座標が記載されている。X軸は、包装袋100の幅方向を示す。Y軸は、包装袋100の厚み方向を示す。Z軸は、包装袋100の高さ方向を示す。包装袋100の外側の面を「表面」、内側の面を「内面」と規定する。「下限値XXX~上限値YYY」で表される数値範囲は、下限値XXX以上上限値YYY以下を意味する。
【0012】
(包装袋)
図1および図2を参照して、包装袋100の構成について説明する。図1は、包装袋100の正面図である。図2は、包装袋100の断面模式図(図1におけるAA線断面模式図)を示す。図1および図2は、内容物が封入されていない状態の包装袋100を示す。図1及び図2において、包装袋100は、袋本体10及びチャック20を有する。包装袋100は、チャック20を有していなくてもよいが、以下ではチャック20を有しているものとして説明する。
【0013】
最初に、本開示に係る包装袋100の構成を説明すると、次のとおりである。包装袋100は、紙基材21で構成された、表面及び内面を有する袋本体と、紙基材21の一部である第1領域に透明化剤を含侵させてなる透明化部8と、紙基材21の内面の少なくとも一部にヒートシール剤を塗布してなるヒートシール層22と、を備える。そして、包装袋100は、製袋するために、紙基材21において第1領域を除く領域に形成されたヒートシール層22がヒートシールされてなる。
【0014】
袋本体10は、主として紙基材21で構成されており、包装袋100の本体をなす。図1において、袋本体10は、縦長の矩形状で図示されているが、包装袋のデザイン性を高めるために、多角形(正方形、台形三角形、又は五角形等)、楕円形又は瓢箪型等の曲線部を有する形状で形成されていてもよい。以下の説明では、袋本体10は、縦長の矩形状であるものとして説明する。
【0015】
袋本体10は、第1シート1及び第2シート2により構成される。第1シート1及び第2シート2は、互いに対向し、同形である。第1シート1及び第2シート2は、Z軸に平行な、右端部4a及び左端部4b、並びに、X軸方向に平行な下端部5において互いにヒートシールにより接着する。右端部4a、左端部4b、及び下端部5における第1シート1と第2シート2との接着幅は、例えば5~20mmであるが、接着が維持されるのであれば適宜の幅でよく、幅が変化するものであってもよい。第1シート1及び第2シート2は、X軸方向に平行な上端部6を有している。袋本体10に内容物が充填された後、上端部6がヒートシールによって接着されることにより、袋本体10が密封される。
【0016】
図1において、第1シート1及び第2シート2は、下端部5において互いに接着されている。しかしながら、袋本体10に内容物が充填される前の時点において、第1シート1及び第2シート2は、下端部5ではなく、上端部6において互いに接着されていてよい。この場合、袋本体10に内容物が充填された後で、第1シート1及び第2シート2を下端部5において接着することにより袋本体10を密封できる。
【0017】
袋本体10は、4つの角部を有する。角部は、直角及び曲線の何れで構成されてもよい。袋本体10は、底マチを有し、自立型に構成されてもよい。袋本体10は、左右にマチを有するサイドガセット型であってもよい。底マチ又はサイドガセットのマチを構成するシートにおいても紙基材21がヒートシール層を有してよい。
【0018】
第1シート1及び第2シート2は、1枚のシートを折り曲げて構成したものであってもよい。この場合、下端部5、上端部6、右端部4a、又は左端部4bにおいて、第1シート1及び第2シート2を接着しなくてよい。
【0019】
第1シート1及び第2シート2は、内面の対向する位置にチャック20を有する。チャック20は、右端部4aから左端部4bに至るまで、X軸に平行に設けられている。図1において、チャック20は、包装袋100の上方側に設けられているが、包装袋100の中央付近、又は下方側に設けられてもよい。以下の説明では、チャック20は、包装袋100の上方側に設けられているものとして説明する。
【0020】
包装袋100は、チャック20の下方に切り離し部7を有してよい。チャック20は、プラスチックからなる。包装袋100は、切り離し部7において、または切り離し部7を起点としてチャック20を含む上部側を切り離すことができ、これにより、包装袋100における切り離し部7の下側部分を再生可能紙としてリサイクルできる。
【0021】
切り離し部7は、第1シート1及び第2シート2に設けられ、第1シート1における切り離し部7と、第2シート2における切り離し部7とは、互いに対向する位置に設けられる。切り離し部7は、ハーフカット線7A、又は切欠き部7B等であってよい。切り離し部7は、チャック20を含む包装袋100の上部側を切り離すことを容易にするための形状又は構造を有する部分であればよい。
【0022】
図1では、切り離し部7の一例として、X軸方向に平行なハーフカット線7A及びV字状の切欠き部7B(所謂Vノッチ)を示している。切欠き部7Bは、右端部4aの外縁及び/又は左端部4bの外縁に設けられてもよい。切欠き部7Bは、右端部4a及び左端部4bにおける第1シート1と第2シート2との接着幅を超えない程度に形成される。また、ハーフカット線7A及び切欠き部7Bの両方を設ける場合には、切欠き部7Bは、ハーフカット線7Aの右端部及び/又は左端部に設けられることが好ましい。包装袋100は、切欠き部7Bに替えて、切込み(所謂Iノッチ)を有してもよい。
【0023】
包装袋100は、切り離し部7を有していなくてもよい。チャック20の下側部分を再生可能紙としてリサイクルするときには、例えばハサミを使ってチャック20の下側を切断してよい。ただし、包装袋100に切り離し部7が設けられていることにより、ハサミ等を使用することなく、チャック20の下側部分を容易に切り離すことができる。
【0024】
包装袋100は、第1シート1及び/又は第2シート2に透明化部8を有する。透明化部8は、透明化剤を塗布することで透明化剤が含侵されるとともに、透明化剤層23(後述)が形成されてなる。透明化部8は、透明化剤が含侵されていない部分よりも透明度が高く、透明化部8を通して包装袋100の内容物を外部に視認可能とする。透明化部8は、紙基材21の全面には形成されず、紙基材21の一部である第1領域に透明化剤を含侵させてなる。図1において、第1領域は、透明化部8が形成されている領域である。
【0025】
次に、図2を参照して、第1シート1及び第2シート2はそれぞれ、紙基材21と、紙基材21の内面にヒートシール層22と、を有する。
【0026】
さらに、第1シート1は、透明化剤層23を有する。図2では、第1シート1における紙基材21の表面及び内面に透明化剤層23が形成され、第2シート2における紙基材21の表面及び内面には透明化剤層23は形成されていない。しかしながら、透明化剤層23は、第2シート2における紙基材21の表面及び/又は内面に形成されてもよい。透明化剤層23は、第1シート1及び/又は第2シート2における紙基材21の表面及び内面の何れか一方の面のみに形成されてもよい。
【0027】
さらに、第1シート1及び/又は第2シート2は、紙基材21の表面の全体又は一部に印刷層24を有してもよい。図2では不図示であるが、印刷層24は、その上面にニス層が形成されていてもよい。
【0028】
第1シート1及び第2シート2は、内面の対向する位置にチャック20を有する。図2は、チャック20が閉じたときの様子を示す。以下、各部構成について具体的に説明する。
【0029】
(紙基材)
紙基材21は、袋本体10に強度を与える、包装袋100の主構造体である。紙基材21は、木材パルプ等の製紙用天然繊維を用いて公知の抄紙機にて製造されてよい。抄紙条件は特に限定されない。製紙用天然繊維は、針葉樹パルプ若しくは広葉樹パルプ等の木材パルプ、マニラ麻パルプ、サイザル麻パルプ、亜麻パルプ等の非木材パルプ、又はそれらのパルプに化学変性を施したパルプ等であってよい。紙基材21は、ノンコート紙、基材の片側が処理されている片艶クラフト紙、晒しクラフト紙、又は未晒しクラフト紙等から選定されてよい。特に、後述する透明化剤塗布による透明性の向上、また、表面の印刷適性の観点から、紙基材21は、片艶の晒クラフト紙が好ましい。紙基材21は、例えば30g/m~120g/m、好ましくは、40g/m~100g/mの坪量であってよい。
【0030】
(ヒートシール層)
ヒートシール層22は、紙基材21の内面の少なくとも一部にヒートシール剤を塗布してなる。ヒートシール層22は、紙基材21の内面全面に形成されてよく、透明化剤層23上に重ねて形成されてもよい。ヒートシール層22は、透明化剤層23上に形成されていなくてもよい。ヒートシール層22は、少なくとも、紙基材21の内面における、透明化剤が含侵された第1領域を除く領域に形成される。包装袋100は、第1領域を除く領域に形成されたヒートシール層22がヒートシールされることにより製袋される。
【0031】
ヒートシール層22は、水性コーティング剤を紙基材21に塗布し、その後に水性コーティング剤を乾燥させることで形成される。水性コーティング剤は、ヒートシール性の樹脂等が水に分散した状態(ディスパージョン、サスペンション、又はエマルションの状態)で紙基材21に塗布される。これにより、ヒートシール層22が塗布された紙基材21を紙としてリサイクルするときに、ヒートシール層22の再離解性を高めることができる。
【0032】
水性コーティング剤の樹脂成分として、オレフィン系共重合樹脂を含むものが使用できる。オレフィン系共重合樹脂は、ポリエチレン系樹脂が好ましく、例えば、エチレン‐酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン‐(メタ)アクリル共重合樹脂、エチレン‐塩化ビニル共重合樹脂、エチレン‐酢酸ビニル‐塩化ビニル共重合樹脂、エチレン‐酢酸ビニル‐アクリル共重合樹脂である。水性コーティング剤の主成分は、エチレン‐酢酸ビニル共重合樹脂が好適である。エチレン‐酢酸ビニル共重合樹脂は、アクリル酸エステル、又はアクリル酸等の他の重合成分を含んでもよい。
【0033】
水性コーティング剤の主成分として、エチレン‐アクリル酸共重合体を用いるものであってもよい。また、当該主成分として、エチレンメタクリル酸共重合物の金属塩、エチレン・アクリル系共重合物の金属塩、又はエチレン・ウレタン系共重合物の金属塩等のアイオノマーを用いるものであってもよい。
【0034】
水性コーティング剤は、ブロッキング防止剤として、カオリン、タルク、重炭酸カルシウム、酸化チタン、シリカ等の顔料、中空等のビーズ、又はマイクロカプセル等が添加されてもよい。水性コーティング剤は、滑剤として、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、脂肪酸アミドワックス等の合成ワックス、又は、カルバナワックス等の天然ワックスが添加されてもよい。
【0035】
水性コーティング剤は、例えば、「三井化学株式会社製 ケミパールSタイプ、Vタイプ」、「東洋インキ株式会社 アクワTOP HSワニス」、「DIC株式会社 HYDBAR、HYDRECT」、「星光PMC株式会社 SEIKOAT」、又は「東洋インキ株式会社 水性SAシリーズ」などが用いられてよい。
【0036】
水性コーティング剤は、一例として、フレキソ印刷又はグラビア印刷法等により紙基材21に塗布される。水性ヒートシール剤をフレキソ印刷方式で紙基材21に塗布することにより、表面の粗い紙基材21に対してもムラ等が少なく適切に水性ヒートシール剤を塗布できる。また、水性ヒートシール剤をグラビア印刷方式で紙基材21に塗布することにより、フレキソ印刷に比べ、一回の印刷でより多くの水性コーティング剤を紙基材21に塗布できる。
【0037】
ヒートシール層22は、一例として、乾燥後の塗布量が1g/m~15g/m程度で厚みが1μm~15μm、特に2μm~15μmである。ヒートシール層22の厚みが2μm以上であると、紙基材21に対するチャック20の接着力を高く保持できる。ヒートシール層22の厚みは15μm以上であってもよいが、ヒートシール剤の材料費又は包装袋100の樹脂成分の比率等を考慮すると、15μm以下であることが好ましい。
【0038】
ヒートシール層22は、水性コーティング剤に限らず、溶剤系のコーティング剤を紙基材21に塗布乾燥して形成されてもよい。溶剤系のコーティング剤は、水性コーティング剤で例示したヒートシール性の樹脂成分を有機溶剤に溶解し、ブロッキング防止剤、滑剤等の添加剤を加えた溶液でよい。
【0039】
(透明化剤層)
透明化剤層23は、紙基材21に透明化剤を塗布するとともに含侵させてなる。透明化剤は、紙基材21に塗布されると、一部は紙基材21の繊維の隙間に含侵するとともに、一部は表面層として形成される。紙基材21の繊維の隙間に含侵した部分は、紙基材21の繊維の隙間を埋めて光の透過性を向上させる。表面層を形成した部分は、紙基材21の表面を平滑にし、光の乱反射を抑制することによって、紙基材21の透視性を向上させる。
【0040】
紙基材21における透明化剤が含侵された領域が図1の透明化部8となる。透明化剤は、図2に示すように、紙基材21の両面から塗布し含侵させてよい。両面から含侵させることで紙基材21の厚さ方向に亘って繊維の隙間に透明化剤が埋められるため、透明性が向上する。紙基材21の内面が表面よりも粗面であって、一方の面のみに透明化剤を含侵させる場合には、透明化剤は、好ましくは内面に含侵される。これは、粗面(内面)の方が艶面(表面)よりも透明化剤が含侵しやすく、透明化部8の透明度を高めることが可能なためである。
【0041】
透明化剤層23が紙基材21の表面側に形成される場合、透明化剤層23は、印刷層24の上面に形成されてもよいし、印刷層24が形成されていない紙基材21の表面に形成されてもよい。また、透明化剤層23は、その上面にニス層(不図示)が形成されてもよい。印刷層24は、透明化剤層23の上面(表面)に形成さてもよい。透明化剤層23にデザイン印刷(印刷層24)を重ねて形成することにより意匠性が向上する。
【0042】
透明化剤層23は、紙基材21に透明化剤(透明化樹脂)を含侵させてなる。透明化樹脂は、例えば、石油系炭化水素系樹脂、ロジン系樹脂、オレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、パラフィンワックス又はフッ素樹脂を含むもの等の1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよく、さらに添加剤を加えたものでもよい。透明化樹脂は、水性エマルジョン又は有機溶剤溶液の状態で塗布される。透明化樹脂は、例えば、石油系炭化水素系樹脂である脂環族飽和炭化水素系樹脂からなる「大和化学工業株式会社 クラリテンDC」、又は「東洋インキ株式会社 LG-WRマーク剤」などが用いられてよい。
透明化剤層23は、所望の透明度が得られるように、透明化樹脂の種類、及び/又は、付与量等を適宜調整して形成される。透明化剤層23は、必要な部分にのみ透明化樹脂を紙基材21に含侵させる方法で形成されてよい。透明化剤層23は、種々の印刷方法(たとえば、フレキソ印刷、インクジェット印刷、グラビア印刷、オフセット印刷、グラビアオフセット印刷、シルクスクリーン印刷)により透明化樹脂を紙基材21に含侵させる方法で形成されてもよい。
【0043】
透明化剤として、エマルジョン又は溶液を塗布乾燥するタイプだけでなく、紫外線又は電子線で硬化させるタイプも使用できるが、紙基材21をリサイクル使用する場合は、リサイクル時の離解適性のよい、エマルジョン又は溶液を塗布し乾燥するタイプが好ましい。特に脂環族飽和炭化水素系樹脂等の石油系炭化水素系樹脂が好ましい。塗布方法としては、ヒートシール剤と連続してグラビア印刷により行うことが好ましい。
【0044】
透明化剤層23は、一例として、片艶晒クラフト紙の坪量50g/m~70g/mの場合、塗布量が乾燥後重量で2g/m~15g/m程度で、好ましくは、3g/m~12g/mである。透明化剤塗布量が少ないと透明性に劣る。透明化剤の塗布量が多いと、塗布乾燥性に劣り、透明化剤の塗布部分と非塗布部分との間でシートの厚み及び/又は硬さの差が大きくなり、製袋等の加工適性も悪くなる。
【0045】
(透明性について)
本開示において、透明化剤層23は、包装袋の内容物を視認可能なように「隠ぺい力60%以下」の透明性を有するものとする。あるサンプルの隠ぺい力は以下のように算出される。
【0046】
最初にサンプルを準備する。そのサンプルを基準黒の上に重ね(オーバーブラック)、その上に分光測色計(製品名:X-rite RM200QCポータブル色差計、X-rite社製)を配置する。そして、その分光測色計によって三刺激値YBを測定する。続いて、基準白の上にサンプルを重ね(オーバーホワイト)、そのサンプルの上に配置された分光測色計によって三刺激値YWを測定する。次に、三刺激値YBおよび三刺激値YWを以下に示す式に代入することにより、各サンプルの隠ぺい力を算出する。基準黒および基準白として白黒台帳(薄物)(大文字洋紙店社製)を使用した。
【0047】
隠ぺい力=(YB/YW)×100
以下、隠ぺい力について、表1を参照してより具体的に説明する。表1は、隠ぺい力に係る試験結果を示す表である。
【0048】
【表1】
(比較例1、2)
紙基材として、晒クラフト紙(片艶)「サンカヨウ60g/m(王子マテリア(株)製)」及び「白銀50g/m(日本製紙(株)製)」を用いた。これら紙基材に対して透明化剤を塗布していないサンプルをそれぞれ比較例1、2とした。
【0049】
(実施例1)
紙基材として、晒クラフト紙(片艶)「サンカヨウ60g/m(王子マテリア(株)製)」を用いた。グラビア印刷機により、透明化剤「クラリテンDC(大和化学工業製)」を紙基材の両面(艶面及び粗面)に塗布して部分透明紙を作成した。
【0050】
(実施例2~4)
紙基材として、晒クラフト紙(片艶)「白銀50g/m(日本製紙(株)製)」を用いた。グラビア印刷機により、透明化剤「クラリテンDC(大和化学工業製)」を紙基材の艶面及び/又はざら面(粗面)に塗布して3種類の部分透明紙を作成した。
【0051】
(実施例5)
紙基材として、晒クラフト紙(片艶)「白銀50g/m(日本製紙(株)製)」を用いた。グラビア印刷機により、透明化剤「クラリテンDC(大和化学工業(株)製)」を紙基材の片面の一部領域に塗布した。続いて、ヒートシール剤「東洋モートン(株)EA-700」を前記片面の前記一部領域を含む略全面に塗布した。こうして、透明化剤を片面に塗布し、かつその透明化剤にヒートシール剤を塗布した部分透明紙を作成した。
【0052】
(実施例6)
紙基材として、晒クラフト紙(片艶)「白銀50g/m(日本製紙(株)製)」を用いた。グラビア印刷機により、透明化剤「クラリテンDC(大和化学工業(株)製)」を紙基材の片面の一部領域に塗布した。続いて、ヒートシール剤「東洋モートン(株)EA-700」を前記片面の前記一部領域を含む略全面に塗布した。続いて、グラビア印刷機上で紙基材を反転し、前記片面の反対面の一部領域(前記一部領域に略重なる領域)に透明化剤を塗布し、さらに透明化剤の表面を覆うように透明ニスを塗布した。こうして、透明化剤を両面に塗布し、かつ、一方の面の透明化剤にヒートシール剤を塗布し、他方の面の透明化剤に透明ニスを塗布した部分透明紙を作成した。
【0053】
実施例1~6において、透明化剤は、片面当たり乾燥後重量で約5g/mになるように塗布されている。
【0054】
表1より、次の結果が得られた。
・透明化剤を塗布した実施例1~6では、透明化剤を塗布しなかった比較例1、2よりも、隠ぺい力が顕著に低くなった。
・透明化剤の両面塗布(実施例4、6)では、透明化剤の片面塗布(実施例2、3、5)よりも隠ぺい力が低くなった。
・紙基材の粗面に透明化剤を塗布すると(実施例3)、紙基材の艶面に透明化剤を塗布する(実施例2)よりも隠ぺい力が低くなった。
・同じ紙基材「白銀50g/m(日本製紙(株)製)」を用いた実施例1~4と実施例5、6とを比較すると、ヒートシール剤を透明化剤上に塗布することにより隠ぺい力は高くなった。
・表1の最下段に示す「差(%) 基材単体-加工基材」は、比較例の隠ぺい力から実施例の隠ぺい力を引いた値を示す。例えば、実施例1の場合、比較例1の隠ぺい力は74.8%であり、実施例1の隠ぺい力は44.4%であるため、差(%)は30.4%となる。比較例2と実施例2~4もそれぞれ差を算出している。この差より明らかなように、透明化剤を塗布することにより、隠ぺい力は大きく低下する。
【0055】
このように、透明化剤を片面塗布するか両面塗布するか、片面塗布する場合に艶面及び粗面の何れの面に透明化剤を塗布するか、などの要因に応じて隠ぺい力が変化することが表1より示される。本開示においては、前述したように、透明化剤層23は、包装袋の内容物を視認可能なように「隠ぺい力60%以下」の透明性を有するものとする。
【0056】
(印刷層)
紙基材21の表面に印刷層24が形成されてよい。印刷層24は、フレキソ印刷又はグラビア印刷法等によって形成されてよい。印刷層24は、包装袋100に包装される商品を識別するための商品説明、各種デザイン、又は識別コードなどが印刷された層である。印刷層24は、カラー印刷でもよいし、白黒印刷でもよい。印刷層24は、第1シート1又は第2シート2の一方の表面のみに形成されていてもよい。印刷層24は、その上面に透明化剤層23及び/又はニス層が形成されてもよい。印刷層24は、透明化剤層23の上面に形成してもよい。印刷層24及びニス層は、公知の方法により、公知の材料を用いて形成されてよい。印刷層24は、ヒートシール剤及び透明化剤と連続してグラビア印刷により形成されるのが好ましい。
【0057】
(チャック)
チャック20は、ヒートシール層22を介して紙基材21に接着する。チャック20は、例えば、線状の突起部が設けられたチャック突起部20aと、線状の溝部が設けられたチャック溝部20bとから構成される。チャック突起部20aは第1シート1の内面に貼り付けられ、チャック溝部20bは第2シート2の内面に貼り付けられている。
【0058】
チャック20は、ヒートシール層22に対してヒートシール可能な材料により構成される。一例として、ヒートシール層22がポリエチレン系樹脂からなる場合、チャック20もポリエチレン系樹脂から形成される。すなわち、ヒートシール層22の材質とヒートシール層22へ貼り付けられるチャック20の面の材質とが、同じ系統の樹脂であることが好ましい。この点は、本質的には、ヒートシール層22とチャック20の接着面が溶融又は加熱軟化した状態で親和性が高いことを意味する。
【0059】
図2では、チャック突起部20aとチャック溝部20bとを簡易に表したチャック20を例示したが、チャック20は、各種公知の形態を使用してよい。チャック20は、咬合する突起部、溝部の形状、接着面を広幅にした形状、又は、突起部と溝部とを2列設けた形状など、種々の形態を使用してよい。
【0060】
袋本体10とチャック20は、ヒートシールバー等で押圧する熱接着が好ましいが、超音波接着などの公知の方法により接着されてよい。
【0061】
(アンカーコート層)
包装袋100は、紙基材21とヒートシール層22との間にアンカーコート層を有してもよい。アンカーコート層は、紙基材21へのヒートシール剤の浸透を防ぎ、かつ、紙基材21とヒートシール剤との接着性を向上することで、ヒートシール剤の性能を活かすことができる。アンカーコート剤は、例えば、塩酢ビ系樹脂、塩素化ポリオレフィン系樹脂、又はアクリル系樹脂等を主成分にするものであってよい。アンカーコート剤は、紙基材21及び/又はヒートシール層22に合わせて選定されてよい。アンカーコート剤は、水に分散した状態(ディスパージョン、サスペンション、又はエマルションの状態)で、又は有機溶剤の溶解した状態で、フレキソ印刷又はグラビア印刷等によって紙基材21に塗布されるのが好ましい。
【0062】
(変形例)
包装袋100の一変形例である、本開示に係る包装袋300を図3により説明する。図3は、本開示に係る包装袋300の断面模式図を示す。なお、既に説明した内容についてはその説明を省略する。
【0063】
包装袋300は、紙基材21の内面にヒートシール層22が形成されている。ヒートシール層22は、紙基材21の内面の一部分のみに形成されている。具体的に、包装袋300では、ヒートシール層22aが包装袋300の上端部6に形成され、ヒートシール層22bが包装袋300の下端部5に形成され、ヒートシール層22bは、一部がヒートシールによって接着されている。その他の箇所にはヒートシール層22は形成されていない。
【0064】
そして、紙基材21の内面におけるヒートシール層22が形成されていない領域に透明化剤層23が形成される。透明化剤層23は、第1シート1において、紙基材21の表面、紙基材21の内面、及び紙基材21の表面に形成された印刷層24の上面に形成されている。具体的に、第1シート1において、紙基材21の表面には印刷層24a、印刷層24b、及び印刷層24cが形成されている。印刷層24aの上面には透明化剤層23は形成されていない。印刷層24bは、上面全域にわたって透明化剤層23が形成されている。印刷層24cは、上面の一部に透明化剤層23が形成されている。紙基材21の内面の透明化剤層23は、紙基材21の表面における透明化剤の塗布領域に対応する位置に部分的に形成されている。この構成によれば、透明性に濃淡が与えられ、包装袋300がより印象的なデザインを有するように仕上がる。
【0065】
このように、透明化剤層23は、種々の形態で包装袋300に設けられる。なお、図3では、第1シート1側にのみ透明化剤層23が形成されているが、透明化剤層23は、第2シート2側に形成されてもよい。
【0066】
以上、本開示に係る包装袋を説明した。本開示に係る包装袋は、前述の構成を備えることにより、以下の効果を奏する。以下、その効果を説明する。
【0067】
最初に、従来の封筒について説明する。従来の封筒は、紙基材に対して透明化剤を塗布することにより透視可能な部分を形成し、糊貼りにより封筒として製造されるものであった。そのため、このような封筒材料を、プラスチックフィルムをヒートシールして製袋する製袋機又は製袋充填機に使用して包装袋を製造することはできなかった。
【0068】
これに対して、本開示に係る包装袋は、紙基材21の内面の少なくとも一部にヒートシール剤を塗布してなるヒートシール層22を備える。従って、本開示に係る包装袋は、プラスチックの積層フィルムで製袋されるパウチと同じように多種多様のパウチ製造に使用されている製袋機を使って製袋できる。製袋機は、巻き取られた長尺のシートを繰り出して、袋状にヒートシールで貼り合わせて連続して高速で製袋できる。
【0069】
さらに、本開示に係る包装袋では、透明化剤を紙基材21に複数回塗布してよく、例えば、紙基材21の表面及び内面それぞれに1回ずつ透明化剤を塗布する。これにより、本開示に係る包装袋は、一方の面に透明化剤を塗布する場合よりも紙基材の厚さ方向に亘って繊維の隙間に透明化剤が埋められるため透明化部8の透明度を高めることができる。紙基材21の表面及び内面において透明化剤の含侵の程度が異なる場合には、透明度のコントラストが得られ、そのコントラストが包装袋のデザイン性を高める。さらに、紙基材21の表面及び内面に透明化剤層23を形成し、かつ、一方又は両方の透明化剤を文字やデザイン等の模様で印刷塗布し、その形成領域を一部重畳させるなどにより、透かし模様に濃淡を与え、包装袋がより印象的なデザインを有するように仕上がりうる。当然に、本開示に係る包装袋は、紙基材21の表面及び内面の何れか一方のみに透明化剤を塗布することによっても、透明化剤を両面ともに塗布しない場合よりも包装袋のデザインに変化をもたらすことができる。
【0070】
また、紙基材21において透明化剤を塗布する位置に工夫を凝らすことにより、収容物(商品)の見え方をより印象的にし、その結果、商品訴求力を高めることもできる。さらに、商品を取り出したときに、表面に形成された透明化部8を通して裏面側に印刷されたデザインを視認することもでき、包装袋単体としての魅力も向上する。このような包装袋は、商品の付加価値を高める。
【0071】
(製造方法)
次に、本開示に係る包装袋の製造方法を説明する。図4は、本開示に係る包装袋の製造方法を示すフローチャートである。
【0072】
最初に、S10にて、袋本体10を構成する、表面及び内面を有する紙基材21を準備する。続いて、S20にて、紙基材21の一部である第1領域に透明化剤を含侵させて透明化部8を形成する。次に、紙基材21の内面の少なくとも一部にヒートシール剤を塗布してなるヒートシール層22を形成する。最後に、S40にて、紙基材21において第1領域を除く領域に形成されたヒートシール層22をヒートシールして製袋する。S20及びS30は印刷機により行われる。S40は製袋機により行われる。S20とS30は、順序が逆でもよい。例えば、透明化剤を塗布する領域とヒートシール剤を塗布する領域が重畳しない場合には、S30、S20の順序で行われてもよい。
【0073】
本開示に係る包装袋は、製袋機を用いて製造できる。包装袋の製造工程において、限定されないが、S20の前に、印刷層24の少なくとも一部を紙基材21に印刷してもよい。印刷内容は、文字であってもよいし、絵柄であってもよく、位置の基準点を与えるマークとしての役割を果たす。色数は、1色でもよいし、4色でもよい。印刷層24の印刷位置に合わせて、ヒートシール層22、透明化剤層23、及び印刷層24を形成することができ、その結果、ヒートシール層22、透明化剤層23、及び印刷層24を正確に位置決めできる。
【0074】
印刷機による印刷は、グラビア印刷及びフレキソ印刷の何れであってもよいが、一度の印刷でより多くの塗布量を確保でき、生産効率を高めうるという点ではグラビア印刷が好ましい。
【0075】
包装袋の折り目となる位置(底マチ、包装袋の外縁部など)には、この位置に透明部分が必要な場合を除き、透明化剤層23を形成しないことが好ましい。この位置に透明化剤層23を形成すると、折り目に起因する筋が透明化部8に生じ、透明化部8のデザイン性を損なう可能性がある。
【0076】
(強度試験)
本願発明者らは、透明化剤とヒートシール剤とを重ね塗りしたときの強度試験を行った。その結果、透明化剤とヒートシール剤とを重ね塗りすると強度が低下すること、それゆえ、紙基材においてヒートシールを行わない(ヒートシール位置を除く)領域に透明化剤を含侵させるのが好ましいことを見出した。
【0077】
以下、紙基材にヒートシール剤のみを塗布したときの強度試験(実施例)、及び、紙基材に、透明化剤とヒートシール剤とを重ね塗りしたときの強度試験(比較例)の結果を表2に示す。この強度試験は、ヒートシール剤をヒートシールした後に、第1シートから第2シートを引き剥がすときの力(N(ニュートン))を測定するものである。実施例及び比較例では、共通に、以下の条件を設定した。
・サンプル作成:ヒートシール試験機(テスター産業株式会社製、型番:TP‐701‐B ヒートシールテスター)
・ヒートシール条件:上バーの温度は表2に記載のとおりであり、下バーの温度はすべて80℃。1秒、0.3MPa。
・紙基材:坪量50g/mの純白ロール紙(日本製紙株式会社 型番:白銀)。
・オートグラフ試験:オートグラフ試験機(株式会社島津製作所製、型番:AG-500NX Plus)。
・オートグラフ試験条件:200m/min、試験すき間100mm、サンプル巾15mm、T型剥離。
・試験回数:各5回。
・(実施例)紙基材にヒートシール剤(東洋モートン株式会社EA-700)を塗布。
・(比較例)紙基材に透明化剤(大和化学工業株式会社製クラリテンDC)、及びヒートシール剤(東洋モートン株式会社EA-700)を塗布。
・ヒートシール剤は2.5~5g/mで塗布、透明化剤は5g/mで塗布。
【0078】
(試験結果)
前述の試験条件に基づく試験結果を表2に示す。第1シートと第2シートを引き剥がすときの強度は2N以上を維持できていれば容易に剥離しないが、実施例では、上バー80℃~140℃での条件すべてにおいて3.71N以上の実用性のある試験結果が得られた。
【0079】
【表2】
これに対して、比較例では、上バー80℃~120℃において、第1シートと第2シートは接着しなかった(表2中の「ND」)。つまり、上バー80℃~120℃の温度範囲においては、第1シートと第2シートとをヒートシール剤で接着しようとしても、接着に必要な強度が得られなかった。また、第1シートと第2シートとを接着させようとすると、上バー温度は130℃以上とする必要があり、実施例よりも温度条件を高く設定する必要があることが分かった。
【0080】
以上の結果より、透明化剤とヒートシール剤とを重ね塗りすると接着強度が低下すること、それゆえ、紙基材においてヒートシールを行わない(ヒートシール位置を除く)領域に透明化剤を含侵させることが好ましいことが分かる。
【0081】
さらに、透明化部8は、ヒートシール層22がヒートシールされるヒートシール位置から離隔されていることが好ましい。ヒートシールバーで押圧する熱接着(ヒートシール)において、ヒートシールバーの熱は、ヒートシール対象とする領域以外にも伝達しうる。このとき、透明化剤樹脂とヒートシール位置とが隣接している場合、透明化剤樹脂に不要な熱が伝わる。透明化剤樹脂は耐熱性が低いことから、その不要な熱が透明化剤樹脂に負の影響を与えうる。このような理由から、透明化部8とヒートシール位置との間に何も塗布しない境界領域を適宜の幅で設け、透明化部8をヒートシール位置から離隔させる構成も、包装袋の好ましい製造方法の一つと言える。
【0082】
(ピロー包装袋)
次に、本開示に係るピロー包装袋500について、図5及び図6を参照して説明する。図5は、本開示に係るピロー包装袋500の斜視図である。符号501に示す図は、ピロー包装袋500の正面斜視図である。符号502に示す図は、ピロー包装袋500の背面斜視図である。なお、ピロー包装とは、一枚のシートを背中合わせで筒状にした状態でシール(合掌貼り)し、所定の長さで端部をシールして切断した形状の包装形態をいう。既に説明した内容についてはその説明を省略する。
【0083】
図5を参照して、ピロー包装袋500は、袋本体50、端部52、及び透明化部58を備え、内容物59(商品)を内部に収容する。端部52は、ピロー包装袋500の両端と、背面におけるピロー包装袋500の両端間とに形成された部分であり、ヒートシールによって接着されてなる。図5において、ヒートシール塗布領域56は、ヒートシール剤が塗布されて、ヒートシール層が形成された領域である。ヒートシール塗布領域56は、端部52が形成された領域よりも幅広に形成される。透明化部58は、内容物59の少なくとも一部が見える位置及び/又は大きさに形成される。
【0084】
図6は、本開示に係るピロー包装袋500を製造するためのシート600の一例を示す図である。図6において、XY座標が記載されている。X軸は、シート600の延在する方向を示す。Y軸は、X軸に対して垂直な方向を示す。
【0085】
シート600は、一枚のシートであり、透明化剤塗布領域53、非塗布領域54、及びヒートシール塗布領域56が規則的に形成されている。
【0086】
透明化剤塗布領域53は、透明化剤が塗布されて、シート600に透明化剤層が形成された領域である。透明化剤塗布領域53は、X軸方向に沿って一定の間隔で形成されている。図6において、透明化剤塗布領域53は略長方形で形成されているが、透明化剤塗布領域53は、多角形(正方形、台形三角形、又は五角形等)、楕円形又は瓢箪型等の曲線部を有する形状で形成されていてもよい。
【0087】
非塗布領域54は、透明化剤塗布領域53の周囲を囲むように形成された、透明化剤塗布領域53及びヒートシール塗布領域56を含まない領域である。図6において、非塗布領域54は外縁が長方形に形成されているが、非塗布領域54は、多角形(正方形、台形三角形、又は五角形等)、楕円形又は瓢箪型等の曲線部を有する形状で形成されていてもよい。
【0088】
ヒートシール塗布領域56は、シート600において、透明化剤塗布領域53及び非塗布領域54が形成されていない領域に形成される。
【0089】
図6において、線L1及び線L2はそれぞれ、X軸と平行に延び、シート600からピロー包装袋500を製造するときの折り目となる。線L3は、Y軸と平行に延び、シート600をヒートシールした後の切断予定位置を示す。
【0090】
シート600は、内容物59(不図示)を包み込むように線L1及び線L2において折り曲げられ、折り曲げられた後のフィルムの重なった部分がヒートシールされる。そして、シート600は、隣り合う2つの非塗布領域54の間に形成されたヒートシール塗布領域56がヒートシールされた後で、線L3に沿って切断される。
【0091】
このように、本開示に係る包装袋は、図5を一例として示すピロー包装袋500にも適用でき、そのようなピロー包装袋500は、製袋機(例えば横ピロー包装機)により製造できる。
【0092】
なお、背面で合掌貼りシールを行ったピロー包装袋を先述したが、本開示に係る構成は、合掌貼りに替えて両端の表面と裏面をシールする封筒貼り製袋にも適用できる。封筒貼りの場合は、貼り合わせ部分の表面側にもヒートシール剤塗布領域(ヒートシール層)を設けてよい。
【0093】
以上、図5~6を参照して説明したように、本開示に係る包装袋は、ピロー包装袋などの様々な種類の包装袋に適用できる。
【0094】
〔まとめ〕
本開示の態様1に係る包装袋は、紙基材で構成された、表面及び内面を有する袋本体と、前記紙基材の一部である第1領域に透明化剤を含侵させてなる透明化部と、前記紙基材の前記内面の少なくとも一部にヒートシール剤を塗布してなるヒートシール層と、を備え、自包装袋を製袋するために、前記紙基材において前記第1領域を除く領域に形成された前記ヒートシール層がヒートシールされてなる。
【0095】
前記の構成によれば、本開示の態様1に係る包装袋では、透明化剤を含侵させてなる前記第1領域を除く領域に形成されたヒートシール層がヒートシールされてなることから、製袋機による製造が可能な、紙製かつ部分透明の包装袋を実現できる。
【0096】
本開示の態様2に係る包装袋は、前記の態様1において、前記内面は前記表面よりも粗面であり、前記透明化剤は、前記内面に含侵されてなる。
【0097】
粗面(内面)の方が艶面(表面)よりも透明化剤が含侵しやすく、透明化部の透明度を高めることができる。
【0098】
本開示の態様3に係る包装袋は、前記の態様1または2において、前記透明化剤は、前記表面及び前記内面に含侵されてなる。
【0099】
前記紙基材の表面及び内面から透明化剤を含侵させることにより、本開示の態様3に係る包装袋は、透明化部における透明性を向上させられる。
【0100】
本開示の態様4に係る包装袋は、前記の態様1から3の何れかにおいて、前記透明化部は、前記ヒートシール層がヒートシールされるヒートシール位置から離隔されている。
【0101】
ヒートシールバーで押圧する熱接着(ヒートシール)において、ヒートシールバーの熱は、ヒートシール対象とする領域以外にも伝達しうる。このとき、透明化剤樹脂(透明化部)がヒートシール位置に隣接している場合、透明化剤樹脂に不要な熱が伝わる。透明化剤樹脂は耐熱性が低いことから、その不要な熱が透明化剤樹脂に負の影響を与えうる。
【0102】
本開示の態様4に係る包装袋は、前記の構成を備えることにより、そのような影響を回避できる。
【0103】
本開示の態様5に係る包装袋の製造方法は、袋本体を構成する、表面及び内面を有する紙基材を準備する工程と、前記紙基材の一部である第1領域に透明化剤を含侵させて透明化部を形成する工程と、前記紙基材の前記内面の少なくとも一部にヒートシール剤を塗布してなるヒートシール層を形成する工程と、前記紙基材において前記第1領域を除く領域に形成された前記ヒートシール層をヒートシールして製袋する工程と、を含む。
【0104】
前記の構成によれば、本開示の態様5に係る包装袋の製造方法は、前記態様1に係る包装袋を提供できる。
【0105】
本開示は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本開示の技術的範囲に含まれる。さらに、それぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
【符号の説明】
【0106】
1 第1シート
2 第2シート
8、58 透明化部
10、50 袋本体
20 チャック
21 紙基材
22、22a、22b ヒートシール層
23 透明化剤層
24、24a、24b、24c 印刷層
50g 坪量
53 透明化剤塗布領域
54 非塗布領域
56 ヒートシール塗布領域
100、300 包装袋
500 ピロー包装袋
600 シート
図1
図2
図3
図4
図5
図6