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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135192
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】車両相互間熱管理システム
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/6556 20140101AFI20240927BHJP
   B60L 50/60 20190101ALI20240927BHJP
   B60H 1/22 20060101ALI20240927BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20240927BHJP
   H01M 10/615 20140101ALI20240927BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20240927BHJP
   B60L 58/26 20190101ALN20240927BHJP
   B60L 58/27 20190101ALN20240927BHJP
【FI】
H01M10/6556
B60L50/60
B60H1/22 651Z
B60H1/22 671
H01M10/613
H01M10/615
H01M10/625
B60L58/26
B60L58/27
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023045756
(22)【出願日】2023-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000001845
【氏名又は名称】サンデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000383
【氏名又は名称】弁理士法人エビス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松村 尭之
(72)【発明者】
【氏名】石関 徹也
【テーマコード(参考)】
3L211
5H031
5H125
【Fターム(参考)】
3L211AA10
3L211AA11
3L211BA32
3L211DA21
5H031HH06
5H125AA01
5H125AC12
5H125CD05
5H125CD09
5H125EE51
5H125EE61
5H125FF24
5H125FF27
(57)【要約】
【課題】車両の運転開始直後に熱媒体の温調を行うことによる電力消費で、航続距離が減少することを抑制する。
【解決手段】搭載された熱媒体回路で熱管理を行う車両において、複数車両の相互間で熱管理を行うシステムであって、ステーションにて待機する複数の車両のうち、直近に運転を開始する予定の車両の一つを第1車両と特定し、前記ステーションに到着した直後の車両の一つを第2車両と特定し、前記第1車両における熱媒体回路の熱媒体と前記第2車両の熱媒体回路の熱媒体とを交換する指示を行うことを特徴とする車両相互間熱管理システムを提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
搭載された熱媒体回路で熱管理を行う車両において、複数車両の相互間で熱管理を行うシステムであって、
ステーションにて待機する複数の車両のうち、直近に運転を開始する予定の車両の一つを第1車両と特定し、
前記ステーションに到着した直後の車両の一つを第2車両と特定し、
前記第1車両における熱媒体回路の熱媒体と前記第2車両の熱媒体回路の熱媒体とを交換する指示を行うことを特徴とする車両相互間熱管理システム。
【請求項2】
特定した前記第2車両の熱媒体の管理温度を取得し、
当該管理温度に近い目標温度で熱媒体を管理する予定の車両を前記第1車両に特定することを特徴とする請求項1記載の車両相互間熱管理システム。
【請求項3】
前記車両は、前記熱媒体回路から熱媒体を取り出し且つ前記熱媒体回路に外部から熱媒体を導入するための熱媒体出し入れポートを有することを特徴とする請求項1記載の車両相互間熱管理システム。
【請求項4】
前記熱媒体出し入れポートは、前記第1車両と前記第2車両の相互間で接続可能であり、前記第1車両の熱媒体回路から取り出した熱媒体を前記第2車両の熱媒体回路に導入し、前記第2車両の熱媒体回路から取り出した熱媒体を前記第1車両の熱媒体回路に導入することを特徴とする請求項3記載の車両相互間熱管理システム。
【請求項5】
前記車両は、バッテリの電力で走行し、且つ前記バッテリの電力で駆動される冷媒回路と前記熱媒体回路によって熱管理が行われることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項記載の車両相互間熱管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数車両の相互間で熱管理を行う車両相互間熱管理システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
EV(Electric Vehicles:車両、以下、車両)における車両内の熱管理は、ヒートポンプ式の冷媒回路を駆動することで得られる放熱と吸熱やバッテリを含む車載機器の廃熱などを、車両に搭載された熱媒体回路を用いて各所に移動させることで行っている(下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-180136号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両の走行中は、熱媒体回路を循環する熱媒体は必要な温度に管理されている。これに対して、ステーションに駐車している車両は、冷媒回路や熱媒体回路が停止状態になっているので、熱媒体回路内の熱媒体は外気温に近づくように温度変化することになり、状況に応じては必要な管理温度からかけ離れた温度になってしまう。こうなると、車両が運転を再開する際に、充電された電力を使って冷媒回路や熱媒体回路を駆動し熱媒体の温度を必要な管理温度に温調する必要があり、充電した電力の一部が熱媒体の温調に使われることで、充電後の航続距離が減少してしまう問題が生じる。
【0005】
このような問題は、複数の車両を管理していて、充電した後の車両をしばらく放置することが頻繁に行われている、タクシー事業者やレンタカー事業者或いはカーシェア事業者などにおいて、特に顕在化する。なお、ここでの車両は、自身に搭載されたバッテリの電力で走行し且つそのバッテリの電力で駆動される冷媒回路と熱媒体回路で熱管理を行うものであれば、どのような形態であってもよい。
【0006】
本発明は、このような問題に対処することを課題としている。すなわち、車両の運転開始直後に熱媒体の温調を行うことによる電力消費で、航続距離が減少することを抑制すること、が本発明の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような課題を解決するために、本発明は、以下の構成を具備するものである。
搭載された熱媒体回路で熱管理を行う車両において、複数車両の相互間で熱管理を行うシステムであって、ステーションにて待機する複数の車両のうち、直近に運転を開始する予定の車両の一つを第1車両と特定し、前記ステーションに到着した直後の車両の一つを第2車両と特定し、前記第1車両における熱媒体回路の熱媒体と前記第2車両の熱媒体回路の熱媒体とを交換する指示を行うことを特徴とする車両相互間熱管理システム。
【発明の効果】
【0008】
このような特徴を備える本発明によると、運転開始予定の第1車両の熱媒体回路にはステーションに到着直後の第2車両における温調された熱媒体が導入されるので、車両の運転開始直後に熱媒体の温調を行うことによる電力消費で航続距離が減少することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態に係る車両相互間熱管理システムを示す参考図である。
図2】本発明の実施形態に係る車両相互間熱管理システムを示し、管理装置と車両との間の通信を説明する参考図である。
図3】本発明の実施形態に係る車両相互間熱管理システムとして機能する管理装置の機能を示すブロック図である。
図4】本発明の実施形態に係る車両相互間熱管理システムとして機能する管理装置が生成する管理テーブルの一例を示す参考図である。
図5】本発明の実施形態に係る車両相互間熱管理システムにおいて、第1車両と第2車両とを特定し、相互に熱交換をする場合の様子を説明する参考図である。
図6】本発明の実施形態に係る車両相互間熱管理システムにおいて、第1車両と第2車両との間で相互に熱交換をする場合の様子を説明する参考図である。
図7】本発明の実施形態に係る車両相互間熱管理システムにおける熱媒体の交換動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の説明において、同一の符号は同一の機能の部位を示しており、各図における重複説明は適宜省略する。
【0011】
図1は、本実施形態に係る車両相互間熱管理システムの一例を示す参考図である。本実施形態に係る車両相互間熱管理システムは、例えば、ステーション10に設置された管理装置100によって実現される。
【0012】
ステーション10は、例えば、タクシー事業者、レンタカー事業者、或いはカーシェア事業者等の複数の車両を管理する事業者によって運営され、管理装置100によって、ステーション10に駐車された複数の車両1の管理を行う。車両1は、バッテリから供給される電力で走行すると共に、バッテリから供給される電力で駆動される冷媒回路と熱媒体回路によって熱管理が行われる所謂電動車両である。管理装置100は、このような車両1の相互間における熱管理を行う。
【0013】
ステーション10は、前述の管理装置100と、管理装置100によって管理される車両1を駐車する駐車エリア30を備えている。駐車エリア30は、待機中の車両1を管理する待機車両管理エリア30A、出発するために必要な準備を行う出発準備エリア30B、出発する車両1を管理する出発車両管理エリア30C、到着した車両1を管理する到着車両管理エリア30Dと、を含んでいる。
【0014】
(ステーション10の駐車エリア30について)
待機車両管理エリア30Aには、車両1に搭載されたバッテリに電力を供給する充電設備(BC)31が複数備えられ、待機車両管理エリア30Aにおいて充電設備31から車両1のバッテリへの充電が行われる。また、待機車両管理エリア30Aにて待機中の車両1では、必要に応じて、車両1のバッテリから供給される電力、又は、充電設備31からバッテリを介して供給される電力によって熱媒体回路の熱媒体の温調を行うことができる。
【0015】
出発準備エリア30Bは、2台の車両間において熱媒体の交換を行い、一方の車両1から他方の車両1へ温調された熱媒体を供給することで出発準備を行う駐車エリアである。つまり、出発準備エリア30Bでは、出発予定の車両1において、走行開始後に熱媒体の温調に使われる電力がバッテリから消費されるのを抑制するために、出発準備として、出発予定の車両1における温調されていない熱媒体と、到着後の車両1における温調された熱媒体との交換が行われる。車両1の相互間の熱媒体の交換については後述する。
【0016】
出発車両管理エリア30Cは、ステーション10から出発する車両1を管理する駐車エリアであって、出発準備エリア30Bにて出発準備が完了した車両1が、例えば乗員の乗車や荷物の積載などのために一時的に停車する駐車エリアである。出発車両管理エリア30Cにおいては、車両1は温調された熱媒体の温度が変化するような長時間の駐車は行われず、直ちに出発することが前提となる。
【0017】
到着車両管理エリア30Dは、ステーション10に到着した車両1を管理する駐車エリアであって、到着した車両1が乗員の降車や荷下ろしなどのために一時的に停車する駐車エリアである。ここでも、到着した車両1の温調された熱媒体の温度が変化するような長時間の駐車は行われないのが前提となる。
【0018】
なお、前述した各エリアは、ステーション10の敷地内にスペースを区画して設ける必要はなく、後述する管理装置100が情報管理する仮想空間にて区別され、管理装置100がその区別を車両1毎に認識できる状態であれば、ステーション10の敷地内に存在する車両1はどのように配置されていてもよい。
【0019】
(管理装置100について)
管理装置100は、ステーション10に駐車された複数の車両1を管理する。具体的には、図2に示すように、管理装置100は、ステーション10に駐車された複数の車両1と無線通信を行うことにより車両1から当該車両1の各種情報を取得すると共に、管理装置100から複数の車両1に情報を送信することにより複数の車両1を一括管理する。
【0020】
なお、管理装置100は、ステーション10に駐車された複数の車両1だけでなく、ステーション10において管理され、ステーション10から出発した車両1の管理を行うこともできる。この場合、管理装置100は、ステーション10の外部を走行する車両1からネットワークNWを介して各種情報を取得すると共に、ネットワークNWを介してステーション10の外部を走行する車両1に情報を送信する。
【0021】
管理装置100は、例えば、CPU(Central Processing Unit)又はMPU(Micro Processing Unit)等のプロセッサや電気回路、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)等の記憶素子を備えた専用又は汎用のコンピュータによって構成することができる。したがって、管理装置100では、管理装置100が備えるプロセッサによって、以下の到着車両管理部101、熱媒体温度管理部102、バッテリ残量管理部103、運行スケジュール管理部104、第1車両特定部105、第2車両特定部106、及び、熱媒体交換指示部107の動作を実行することにより、複数の車両1の管理を行う。
【0022】
図3に、管理装置100が有する機能を示すブロック図を示す。
到着車両管理部101は、ステーション10に到着した車両1の到着時刻と共に、到着した際のバッテリの残存容量(SOC)及び熱媒体の温度を当該車両1から受信し、受信した情報を、当該車両1を管理するために付された車両番号と対応付けてRAM(不図示)に一時的に記憶しつつ、運行スケジュール管理部104に送信する。
【0023】
なお、到着車両管理部101は、ステーション10の外部を走行中の車両1から、当該車両1が走行している現在位置、目的地到着予定時刻、ステーションへの到着予定時刻、現在の残存容量、及び、現在の熱媒体温度などを受信することもできる。これにより、管理装置100では、ステーション10の外部を走行する車両1を管理すると共に、将来的に当該車両1を後述する第2車両の候補とすることができる。
【0024】
熱媒体温度管理部102は、ステーション10に駐車されている車両1から、当該車両1の現在の熱媒体の温度を所定の時間間隔で受信し、当該車両1の車両番号と対応付けてRAM(不図示)に一時的に記憶すると共に、運行スケジュール管理部104に送信する。
【0025】
バッテリ残量管理部103は、ステーション10に駐車されている車両1から、当該車両1の現在の残存容量を所定の時間間隔で受信し、当該車両1の車両番号と対応付けてRAM(不図示)に一時的に記憶すると共に、運行スケジュール管理部104に送信する。
【0026】
運行スケジュール管理部104は、前述の到着車両管理部101、熱媒体温度管理部102及びバッテリ残量管理部103から受信した各種情報に基づいて、ステーション10に駐車されている車両1に関する情報を記録した管理テーブルを生成し、RAMに記憶させる。運行スケジュール管理部104は、到着車両管理部101から新たな到着車両に関する情報を受信した際に管理テーブルを更新する。また、これに加えて、運行スケジュール管理部104は、管理テーブルを一定の周期で更新することで、周期的にステーション10に駐車された車両1の最新の情報を反映させることができる。
【0027】
図4に管理テーブルの一例を示す。図4に示すように、運行スケジュール管理部104によって生成される管理テーブルは、ステーション10に駐車されている車両1について、当該車両1の車両番号と共にステーション10に到着した到着時刻、ステーション10に待機している時間(到着時刻から計時)、現在の残存容量、現在の熱媒体温度、出発予定時刻、目標熱媒体温度(目標温度)、及び、駐車されているエリアを記録している。
【0028】
第1車両特定部105は、運行スケジュール管理部104によって生成された管理テーブルを参照し、ステーション10にて待機する複数の車両1のうち、温調された熱媒体の供給を受ける車両1を第1車両11として特定する。図5に示すように、例えば、第1車両特定部105は、ステーション10の待機車両管理エリア30Aに待機している複数の車両1のうち直近に運転を開始する予定の車両1の一つを、熱媒体の供給を受ける第1車両11として特定する。
【0029】
このとき、第1車両特定部105は、第1車両11を任意に特定することができるほか、管理テーブルを参照し、到着車両管理エリア30Dに到着した直後の車両の熱媒体の温度(走行中に管理されていた温度であり、以下、「管理温度」という)に近い目標熱媒体温度で熱媒体を管理する予定の車両1を第1車両11として特定することができる。
【0030】
第2車両特定部106は、運行スケジュール管理部104によって生成された管理テーブルを参照し、温調された熱媒体を有し、これを他の車両1に供給する車両を第2車両12として特定する。本実施形態では、第2車両特定部106は、図5に示すように、ステーション10に到着した直後の車両1、すなわち、到着車両管理エリア30Dに駐車された直後の車両1の一つを、熱媒体を供給する第2車両12として特定する。
【0031】
このとき、第2車両特定部106は、ステーション10に到着した直後の車両1が1台の場合は当該車両1を第2車両として特定する。また、到着車両管理エリア30Dに到着した直後の車両1が複数ある場合は、特定された第1車両11の目標熱媒体温度に近い管理温度の熱媒体を有する車両1を第2車両12として特定することができる。
【0032】
熱媒体交換指示部107は、前述の第1車両特定部105によって特定された第1車両11と第2車両特定部106によって特定された第2車両12との間で熱交換を行わせるように、第1車両11及び第2車両12に信号を送信する。
【0033】
このように構成された管理装置100によって、車両間の熱媒体の交換の指示に係る信号が送信されると、第1車両11は待機車両管理エリア30Aから、第2車両12は到着車両管理エリア30Dから、それぞれ出発準備エリア30Bに移動し、第1車両11と第2車両12との間で、熱媒体の交換が行われる。この際の第1車両11と第2車両12の移動は、管理装置100の指示信号による遠隔操作で移動装置又は車両自体を駆動させるか、或いは、管理者が指示信号に対応して手動運転で移動させる。
【0034】
図6に示すように、車両1は、車両1に搭載された熱媒体回路から熱媒体を取り出し、且つ、熱媒体回路に外部から熱媒体を導入するための熱媒体出し入れポート3を有している。つまり、熱媒体の交換は、複数の車両1の熱媒体出し入れポート3を、ホース等を介するか或いは直接相互間で接続することで行われる。
【0035】
図6に示す例において、第1車両11及び第2車両12は、バッテリBTの上面を覆うように熱媒体回路21,22を構成する熱媒体配管が取り廻されている。熱媒体回路21,22には、それぞれポンプPが設けられており、熱媒体回路21,22を循環する熱媒体はこのポンプPにより圧送される。熱媒体の交換時は、熱媒体回路21,22の双方のポンプPが動作してもよいし、何れか一方のポンプPのみが動作してもよい。
【0036】
すなわち、第1車両11と第2車両12とは、出発準備エリア30Bに移動した後に熱媒体出し入れポート3によって相互に接続される。この状態で、熱媒体回路21,22の一方又は双方のポンプPを作動させると、第2車両の熱媒体回路22における熱媒体が第1車両11の熱媒体回路21に流入すると共に、第1車両11の熱媒体回路21における熱媒体が第2車両12の熱媒体回路22に流入する。これにより、第1車両11の熱媒体と第2車両12の熱媒体との交換が行われる。図6において、温調された熱媒体を太線で、温調されていない熱媒体を細線で示している。
【0037】
このように構成された管理装置100(車両相互間熱管理システム)における車両間の熱媒体の交換の動作について図7のフローチャートを用いて説明する。
管理装置100では、ステーション10において、車両の出発予定が有るかを監視し(ステップS11のNO)、出発予定の車両が有る場合(ステップS11のYES)は、待機車両管理エリア30Aに待機している車両1のうち、出発予定の車両1が待機車両管理エリア30Aにて温調されているか否かを確認する。そして、出発予定の車両1の熱媒体が既に温調されている場合(ステップS12のNO)には、当該車両1を出発車両管理エリア30Cに移動させ、出発車両の候補とする(ステップS18)。
【0038】
一方、管理装置100は、出発予定の車両1の中で熱媒体が未温調の車両がある場合(ステップS12のYES)、これらの車両1から、直近に運転を開始する予定の車両を温調された熱媒体の供給を受ける車両として、第1車両11に特定する(ステップS13)。
【0039】
第1車両11が特定された後に、管理装置100は、ステーション10への到着車両があるかを監視し(ステップS14のNO)、到着車両管理エリア30Dに既に到着している車両1及び新たに到着した車両1がある場合には(ステップS14のYES)、到着車両管理エリア30Dに駐車されているこれらの車両1の熱媒体の温度を確認する(ステップS15)。
【0040】
管理装置100は、熱媒体の温度を確認した到着車両の中から、ステップS13において特定された第1車両11に熱媒体を供給する車両として第2車両12を特定する(ステップS16)。このとき、到着車両管理エリア30Dに駐車されている車両1が複数ある場合には、管理装置100は第1車両11の目標熱媒体温度に最も近い温度で管理された熱媒体を有する車両1を第2車両12として特定する。
【0041】
管理装置100は、第1車両11及び第2車両12を特定し、熱媒体の交換指示に係る信号を送信すると、特定された第1車両11を、待機車両管理エリア30Aから出発準備エリア30Bに移動させ、第2車両12を、到着車両管理エリア30Dから出発準備エリア30Bに移動させる(図5参照)。
【0042】
その後、第1車両11の熱媒体出し入れポート3と、第2車両12の熱媒体出し入れポート3とを相互に接続させ(図6参照)、接続が確認されたことをトリガとして、熱媒体の交換を開始する(ステップS17)。熱媒体の交換は、第2車両12の熱媒体回路22における熱媒体を第1車両11の熱媒体回路21に流入させ、第1車両11の熱媒体回路21における熱媒体を第2車両12の熱媒体回路22に流入させることで行われる。
【0043】
管理装置100は、第1車両11への熱媒体の供給、すなわち、第1車両11と第2車両12との間で熱媒体の交換が完了すると、第1車両11の熱媒体出し入れポート3と第2車両12の熱媒体出し入れポート3との接続を解除し、第1車両11を出発車両管理エリア30Cに移動させ、出発車両の候補とする(ステップS18)。なお、管理装置100は、例えば、第1車両11における熱媒体の温度の変化や、第2車両12からの熱媒体の供給を継続した時間、管理装置100から熱媒体の交換停止指示に係る信号を受け付けた場合などに熱媒体の交換が完了したと判定する。
【0044】
このように本実施形態に係る管理装置100(車両相互間熱管理システム)では、第1車両11及び第2車両12を特定し、ステーションに到着した直後の第2車両12で温調された熱媒体を、出発予定の第1車両11に供給することができる。
【0045】
ステーション10に到着直後の第2車両12の熱媒体は、バッテリ温調又は空調のために熱媒体に必要とされる最適な温度に調整されている。
一方、熱媒体が未温調の第1車両11は、前述した熱媒体の交換を行わない場合には、走行を開始した後に、バッテリに充電されている電力を消費して、バッテリを含む車載機器の温調や空調のために要求される温度に熱媒体を温調する必要がある。そこで、運転開始予定のある車両1を第1車両11とし、走行前に前述した熱媒体の交換を行うことで、走行を開始した後に熱媒体の温調のためにバッテリから消費される電力を抑制することができる。つまり、前述した熱媒体の交換を行うことで、車両1の運転開始直後に熱媒体の温調による電力消費で航続距離が減少することを抑制することができる。
【0046】
なお、本実施形態においては、ステーション10に配備された管理装置100が複数の車両1と相互に通信を行うことで車両相互間熱管理システムを実現する例について説明したが、この例に限られず、管理装置100がステーション10から離れた遠隔地に設けられてもよい。また、管理装置100の機能を車載ECU(Electronic Control Unit)に持たせることで、複数の車両1の通信用ECUが相互に通信を行うことにより互いに複数の車両間で熱管理を行うようにしてもよい。
【0047】
前述した車両間における熱媒体の交換は、熱媒体出し入れポートを備えた車両1同士であれば、上述のような事業者が運営するステーション10でなくても行うことができる。例えば、充電ステーションや、ユーザが利用する駐車場等の任意の場所において、複数の車両を所有するユーザが自己の所有する車両間で熱媒体の交換を行ったり、複数のユーザが互いに所有する車両間で熱媒体の交換を行ったりしてもよい。この場合、管理装置100に代えて、ユーザが所有するコンピュータや携帯機器等を用いて、各車両から残存容量や熱媒体の温度、目標熱媒体温度等の情報を取得することができる。
【0048】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成は上述した実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0049】
1:車両、3:熱媒体出し入れポート、10:ステーション
21,22:熱媒体回路、30:駐車エリア、30A:待機車両管理エリア
30B:出発準備エリア、30C:出発車両管理エリア
30D:到着車両管理エリア、31:充電設備(BC)、100:管理装置
101:到着車両管理部、102:熱媒体温度管理部、103:バッテリ残量管理部
104:運行スケジュール管理部、105:第1車両特定部
106:第2車両特定部、107:熱媒体交換指示部、BT:バッテリ、P:ポンプ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7