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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135203
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】光触媒コーティング剤の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 37/04 20060101AFI20240927BHJP
   B01J 35/39 20240101ALI20240927BHJP
   C09D 1/00 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
B01J37/04 102
B01J35/02 J
C09D1/00
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023045769
(22)【出願日】2023-03-22
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-01-29
(71)【出願人】
【識別番号】000126676
【氏名又は名称】株式会社アデランス
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】中川 陽平
(72)【発明者】
【氏名】一ノ瀬 柾聡
(72)【発明者】
【氏名】菅原 文隆
【テーマコード(参考)】
4G169
4J038
【Fターム(参考)】
4G169AA02
4G169AA03
4G169AA08
4G169AA14
4G169BA04A
4G169BA04B
4G169BA48A
4G169CA07
4G169CA10
4G169CA11
4G169DA06
4G169EA01X
4G169EA01Y
4G169EA02X
4G169EA02Y
4G169EA03Y
4G169EB18Y
4G169EC22X
4G169EC22Y
4G169FB05
4G169FB23
4G169HA10
4G169HB02
4G169HB03
4G169HC06
4G169HD02
4G169HD05
4G169HE01
4G169HE12
4G169HF10
4J038HA211
4J038KA09
4J038KA12
4J038KA20
4J038MA08
(57)【要約】
【課題】酸化チタンの微粒子の本来の機能が十分に発現される光触媒コーティング剤の製造を実現する。
【解決手段】ルチル型酸化チタン粒子を含有する光触媒コーティング剤を製造するにあたり、ルチル型酸化チタン粒子をビーズミルによって水系媒体に分散させ、生成する水系分散液の透過率を測定する。透過率の測定結果を、ルチル型酸化チタン粒子の良好な分散状態を示す基準透過率と対比して、分散させる工程の終点を決める。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ルチル型酸化チタン粒子を分散質に含む水系分散液の光触媒コーティング剤を製造する方法であって、
ルチル型酸化チタン粒子をビーズミルによって水系媒体に分散させる工程と、
前記水系媒体に分散させる工程で生成する水系分散液の透過率を測定する工程と、を含み、
前記水系分散液の透過率の測定結果を、粒子形状を維持したまま水系媒体に分散しているルチル型酸化チタン粒子の水系分散液の予め特定されている透過率と対比して、前記水系媒体に分散させる工程の終点を決める、
光触媒コーティング剤の製造方法。
【請求項2】
前記分散させる工程で得られた前記水系分散液を、アナターゼ型酸化チタン粒子の水系分散液と混合する工程をさらに含み、
前記分散させる工程は、水系媒体中に添加されているルチル型酸化チタン粒子を再分散させる工程である、請求項1に記載の光触媒コーティング剤の製造方法。
【請求項3】
前記透過率が波長550nmの光の透過率である、請求項1に記載の光触媒コーティング剤の製造方法。
【請求項4】
前記ビーズミルのメディア粒子に、粒径が100μm以下のジルコニアビーズを用いる、請求項1に記載の光触媒コーティング剤の製造方法。
【請求項5】
前記ルチル型酸化チタン粒子が、金属を担持しているルチル型酸化チタン粒子、非球状のルチル型酸化チタン粒子、および、金属を担持している非球状のルチル型酸化チタン粒子、からなる群から選ばれる一種以上の粒子である、請求項1に記載の光触媒コーティング剤の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光触媒コーティング剤の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
酸化チタンの微粒子は、光触媒として有用であり、水系媒体中に分散された水系分散液の状態で光触媒コーティング剤として利用され得る。一方で、酸化チタンの微粒子は、水系媒体中で凝集しやすい。よって、当該水系分散液において酸化チタンの微粒子の本来の光触媒機能を発現させるために、酸化チタンの微粒子を水系媒体中に微分散させる技術が検討されている。
【0003】
当該技術としては、縮合リン酸塩またはトリメチルシロキシケイ酸などの分散剤の存在下で、ジルコニアビーズを用いるサンドミルによって酸化チタンの微粒子を水系媒体中に分散させる技術が知られている(例えば特許文献1、2参照)。あるいは、上記の技術として、塩基性の水系媒体を用い、かつビーズミルの回転速度を制御することによって酸化チタンの微粒子を水系媒体中に分散させる技術が知られている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7-257923号公報
【特許文献2】特開平9-208438号公報
【特許文献3】特開2012-250237号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方で、酸化チタンの微粒子には、様々な特定の粒子形状を有し得る。ビーズミルによる分散は、比較的穏和な条件で行われる分散の方法であるが、過剰に実施されると、酸化チタンの微粒子の形状が損なわれ、その結果、光触媒コーティング剤において酸化チタンの微粒子本来の光触媒機能の発現が不十分になることがある。このように、従来の技術は、光触媒コーティング剤の製造において酸化チタンの微粒子を水系媒体へ適切に分散させる観点から検討の余地が残されている。
【0006】
本発明の一態様は、酸化チタンの微粒子の本来の光触媒機能が十分に発現される光触媒コーティング剤の製造を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る光触媒コーティング剤の製造方法は、ルチル型酸化チタン粒子を分散質に含む水系分散液の光触媒コーティング剤を製造する方法であって、ルチル型酸化チタン粒子をビーズミルによって水系媒体に分散させる工程と、前記水系媒体に分散させる工程で生成する水系分散液の透過率を測定する工程と、を含み、前記水系分散液の透過率の測定結果を、粒子形状を維持したまま水系媒体に分散しているルチル型酸化チタン粒子の水系分散液の予め特定されている透過率と対比して、前記水系媒体に分散させる工程の終点を決める。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、酸化チタンの微粒子の本来の機能が十分に発現される光触媒コーティング剤の製造を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係る光触媒コーティング剤の製造方法の一例を示すフロー図である。
図2】本発明の一実施形態で使用される、ビーズミルによる酸化チタンの微粒子の分散液製造装置の構成を模式的に示す図である。
図3】本発明の一実施形態に係るルチル型酸化チタン粒子を水系媒体に分散させる工程の一例を示すフロー図である。
図4】本発明の一実施形態において分散に供する原分散液中のルチル型酸化チタン粒子の粒度分布の一例を示す図である。
図5】本発明の一実施形態において分散に供する原分散液から採取したルチル型酸化チタン粒子の状態の一例の電子顕微鏡写真を示す図である。
図6】本発明の一実施形態においてルチル型酸化チタン粒子が適切に分散されている分散液中のルチル型酸化チタン粒子の粒度分布の一例を示す図である。
図7】本発明の一実施形態において適切に分散されている分散液から採取したルチル型酸化チタン粒子の状態の一例の電子顕微鏡写真を示す図である。
図8】ルチル型酸化チタン粒子Aの水系分散液における酸化チタン粒子濃度と透過率との関係を示す図である。
図9】ルチル型酸化チタン粒子Bの水系分散液における酸化チタン粒子濃度と透過率との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態について、詳細に説明する。本発明の一実施形態に係る光触媒コーティング剤の製造方法は、ルチル型酸化チタン粒子を分散質に含む水系分散液の光触媒コーティング剤を製造する方法である。当該製造方法は、分散工程と透過率測定工程とを含む。
【0011】
〔分散工程〕
分散工程は、ルチル型酸化チタン粒子をビーズミルによって水系媒体に分散させる工程である。
【0012】
分散工程に供されるルチル型酸化チタン粒子は、光触媒として用いられ得るルチル型酸化チタン粒子から適宜に選ぶことができる。
【0013】
ルチル型酸化チタン粒子の粒子形状は、様々な形状であってよく、球状などの回転対称性を有する形状であってもよい。本実施形態では、高いアスペクト比を有するような高い異方性を有する形状のルチル型酸化チタン粒子であっても、その粒子形状が維持された状態で水系媒体中に良好に分散することが可能である。また、本実施形態では、担体としてのルチル型酸化チタン粒子も、その粒子形状と表面状態とが実質的に維持された状態で良好に分散することが可能である。本実施形態に供されるルチル型酸化チタン粒子の形状は一種でもそれ以上でもよい。当該ルチル型酸化チタン粒子の例には、金属を担持しているルチル型酸化チタン粒子、非球状のルチル型酸化チタン粒子、および、金属を担持している非球状のルチル型酸化チタン粒子、が含まれる。当該金属は、光触媒としての機能の観点から適宜に選ばれ得る。当該金属の例には、鉄、白金、銅、銀、パラジウム、ロジウム、金およびニッケルが含まれる。当該ルチル型酸化チタン粒子が担持する成分は、金属に代えて酸化ニッケルなどの金属酸化物であってもよく、リンおよび窒素などの非金属成分であってもよい。
【0014】
分散工程に供されるルチル型酸化チタン粒子の粒径は、限定されず、例えば体積基準のメジアン径(D50)で0.2~0.5μmであってよい。本実施形態では、ナノオーダの微粒子でも良好に分散することが可能である。このような観点から、当該ルチル型酸化チタン粒子の粒径は、好ましくは体積基準のメジアン径(D50)で0.25~0.4μmであってよい。ルチル型酸化チタン粒子の粒径は、動的光散乱法などの、当該粒径に応じた公知の方法によって測定することが可能であるが、カタログ値であってもよい。
【0015】
ビーズミルのメディア粒子(ビーズ)には、ビーズミル用の種々のビーズを適用可能である。ビーズの材質は、ビーズの嵩密度による粉砕効率、および、ビーズからの許容されるコンタミネーションなどの観点から適宜に決めることが可能である。ビーズの粒径は、大きすぎると、ルチル型酸化チタン粒子との接触性が不十分となってルチル型酸化チタン粒子の分散が不十分になることがある。また、ビーズの粒径は、小さすぎると接触時にルチル型酸化チタン粒子に与えるエネルギーが小さく、ルチル型酸化チタン粒子の分散が不十分になることがある。ルチル型酸化チタン粒子を十分に分散させる観点から、ビーズの粒径は、30μm以上であることが好ましく、100μm以下であることが好ましく、50μm以下であることがより好ましい。上記の観点から、本実施形態におけるビーズには、粒径が100μm以下のジルコニアビーズを用いることが好ましい。
【0016】
分散工程における分散媒である水系媒体は、水を主成分とする液体である。水系媒体は、水そのものであってもよいし、水と水溶性有機溶剤との混合溶媒であってもよい。また、水系媒体は、本発明の効果が得られる範囲において、添加剤をさらに含有していてもよい。添加剤の種類および量は、本発明の効果および当該添加剤による効果との両方が得られる範囲において適宜に決めてよい。
【0017】
分散工程におけるルチル型酸化チタン粒子の水系媒体への分散は、ビーズミルを用いて実施される。たとえば、分散工程は、水系媒体中にルチル型酸化チタン粒子が添加されている原料スラリー(以下、「ルチル原分散液」とも言う)を、ビーズを収容している粉砕室に供給し、粉砕室においてルチル原分散液をビーズとともに攪拌機構で高速回転させて攪拌することによって実施される。ビーズミルによる分散は、バッチ式であってもよいが、分散工程の効率向上の観点から、ルチル原分散液を粉砕室に循環供給する連続式であることが好ましい。
【0018】
ルチル原分散液は、分散工程に際してルチル型酸化チタン粒子を水系媒体中に添加して生成してもよく、市販品であってもよく、市販品の混合物であってもよく、市販品の希釈液であってもよい。市販品のルチル原分散液を分散工程に供すること、すなわち分散工程が水系媒体中に添加されているルチル型酸化チタン粒子を再分散させる工程であること、は、ルチル型酸化チタン粒子の高い分散性を有する水系分散液を簡易かつ安定して取得する観点から好ましい。
【0019】
〔透過率測定工程〕
透過率測定工程は、分散工程で生成する水系分散液の透過率を測定する工程である。当該水系分散液の透過率は、分光光度計によって測定することが可能であり、水系分散液中のルチル型酸化チタン粒子の分散状態が反映される波長であればよい。このような観点によれば、透過率の測定波長は、例えば380~780nmの範囲から適宜に決められ得る。一方、透過率測定工程においては、水系分散液の状態を目視でも確認し得ることが、品質安定性および作業効率の向上の観点から好ましい。このような観点から、透過率の測定波長は、可視光線のピークに近い波長であることが好ましく、よって当該透過率は波長550nmの光の透過率であることが好ましい。
【0020】
透過率測定工程は、水系分散液のサンプルを採取し、当該サンプルの透過率を測定することで実施可能である。あるいは、透過率測定工程は、流路中の水系分散液の透過率を、流路に配置されている透明窓を介して分光光度計によって測定することによって実施してもよい。
【0021】
[分散工程の終点の決定]
分散工程の終点は、水系分散液の透過率の測定結果を、粒子形状を維持したまま水系媒体に分散しているルチル型酸化チタン粒子の水系分散液の予め特定されている透過率(以下、「基準透過率」とも言う)と対比することによって決定される。分散工程の終点は、分散工程に供されている水系分散液の透過率が、基準透過率と実質的に同じになった時、と決定され得る。基準透過率については後にさらに説明する。
【0022】
〔製造方法におけるその他の工程〕
本実施形態の製造方法は、本発明の効果が得られる範囲において、前述の分散工程および透過率測定工程以外の他の工程をさらに含んでいてもよい。たとえば、本実施形態の製造方法は、前述の分散工程で得られた水系分散液を、アナターゼ型酸化チタン粒子の水系分散液(アナタースゾル)と混合する工程をさらに含んでもよい。光触媒コーティング剤には、ルチル型酸化チタン粒子に加えてアナターゼ型酸化チタン粒子が分散されている。アナターゼ型酸化チタン粒子の水系分散液をさらに混合することは、本発明の好ましい一実施形態である。
【0023】
アナターゼ型酸化チタン粒子の水系分散液をルチル型酸化チタン粒子の水系分散液に混合する時期は、限定されない。アナターゼ型酸化チタン粒子は、水系媒体中において、その製造時の分散状態を保ちやすい。したがって、アナターゼ型酸化チタン粒子の水系分散液は、前述した分散工程および透過率測定工程の後、すなわち所期の分散状態に調整されたルチル型酸化チタン粒子の水系分散液に混合することが好ましい。
【0024】
また、本実施形態の製造方法は、光触媒コーティング剤中の任意成分を添加する工程をさらに含んでいてもよい。当該任意成分を添加する時期は、本発明の効果が得られる範囲において適宜に決めてよい。したがって、当該任意成分は、分散工程に供されるルチル原分散液に添加されてもよいし、所期の分散状態に調整されたルチル型酸化チタン粒子の水系分散液に添加されてもよい。あるいは、アナターゼ型酸化チタン粒子の水系分散液がさらに添加される場合には、アナターゼ型酸化チタン粒子の水系分散液に任意成分を添加してもよい。あるいは、アナターゼ型酸化チタン粒子の水系分散液をルチル型酸化チタン粒子の水系分散液に混合した後の混合分散液に任意成分を添加してもよい。任意成分の種類および量は、本発明の効果と光触媒コーティング剤における任意成分による効果との両方の効果が得られる範囲において、適宜に決めてよい。
【0025】
〔製造方法の具体例〕
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照してさらに説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る光触媒コーティング剤の製造方法の一例を示すフロー図である。
【0026】
ステップS21において、ルチル型酸化チタン粒子を水系媒体に分散する。このステップS21において、前述した分散工程および透過率測定工程が実施され、分散工程の終点が決定され、所期の分散状態に調整されたルチル型酸化チタンの水系分散液(以下「ルチル分散液」とも言う)が得られる。
【0027】
次いで、ステップS22において、ルチル分散液に、アナターゼ型酸化チタン粒子の水系分散液(「アナターゼ分散液」とも言う)を混合する。ルチル分散液とアナターゼ分散液との混合は、スラリー同士を混合可能な通常の攪拌装置によって実施され得る。
【0028】
[ルチル分散液の調製]
<分散液の製造装置例>
次に、ルチル分散液の調製について説明する。図2は、本発明の一実施形態で使用される、ビーズミルによる酸化チタンの微粒子の分散液製造装置の構成を模式的に示す図である。図2に示されるように、分散液製造装置1は、ホールディングタンク10、ポンプ20およびビーズミル30を有している。ホールディングタンク10は、タンク内を攪拌可能な撹拌機11を有している。
【0029】
ホールディングタンク10は、管41によってポンプ20と接続されている。管41の上流側には、管41の流路を開閉可能な弁51が配置されている。
【0030】
ポンプ20は、管42によってビーズミル30と接続されている。
【0031】
ビーズミル30は、管43によってホールディングタンク10と接続されている。管43の下流側には、管43の流路を開閉可能な弁54が配置されている。弁54とビーズミル30との間の管43からは、管45が分岐している。管45には、管45の流路を開閉可能な弁53が配置されている。
【0032】
ホールディングタンク10中の液は、ポンプ20を介してビーズミル30に供給され、その後ホールディングタンク10に戻ってくる。このように、分散液製造装置1は、ホールディングタンク10のスラリーをビーズミル30に循環供給可能に構成されている。
【0033】
<分散液の調製例>
図3は、本発明の一実施形態に係るルチル型酸化チタン粒子を水系媒体に分散させる工程の一例を示すフロー図である。
【0034】
ステップS211において、ルチル分散液をタンク、ビーズミル間で循環させる。たとえば、ホールディングタンク10に、ルチル型酸化チタン粒子の水系分散液の市販品をルチル原分散液として収容し、撹拌機11を作動させる。弁53を閉じ、弁51、54を開く。次いで、ビーズミル30を作動させる。ビーズミル30の回転数が分散条件のそれに達したら、ポンプ20を作動させてルチル原分散液を循環させる。こうして分散工程を開始する。
【0035】
ステップS212において、循環しているルチル原分散液を採取する(サンプリング)。たとえば、弁53を開き、ビーズミル30からホールディングタンク10に戻るルチル原分散液を管45から採取する。
【0036】
ステップS213において、ルチル原分散液の透過率を測定する。たとえば、上記のようにしてサンプリングしたルチル原分散液を、不図示の分光光度計にセットし、当該ルチル原分散液における波長550nmの光の透過率を分光光度計で測定する。
【0037】
ステップS214において、ルチル原分散液の透過率が特定の範囲内か否かを判定する。「特定の範囲」とは、粒子形状を維持したまま水系媒体に分散しているルチル型酸化チタン粒子の水系分散液の予め特定されている透過率(基準透過率)と実質的に同じ透過率の範囲であり、例えば、特定の透過率値(%)+2(%)の範囲である。「特定の範囲」については後述する。
【0038】
ステップS213で測定したルチル原分散液の透過率が特定の範囲内であれば、分散工程を終了し、ルチル原分散液をルチル型酸化チタン粒子の水系分散液として取得する。たとえば、ビーズミル30を停止し、撹拌機11を停止し、弁54を閉じるとともに弁53を開いて、管45からルチル型酸化チタン粒子の水系分散液を、別途用意した容器内に収容する。
【0039】
ステップS213で測定したルチル原分散液の透過率が特定の範囲に至らない場合には、ステップS211に戻り、ステップS211からステップS214を繰り返して分散工程と透過率測定工程とを続行する。
【0040】
ルチル型酸化チタン粒子の水系分散液を分散液製造装置1から取り出した後には、分散液製造装置1を洗浄する。たとえば、ホールディングタンク10に十分量の蒸留水を収納し、撹拌機11を作動させ、弁51を開く。次いで、ポンプ20を運転し、蒸留水を循環させつつビーズミル30を適当な回転数で一定時間運転する。最後に弁53を開いて流路中の液体を管45から排出する。
【0041】
洗浄後の蒸留水は、適切に分散されているルチル型酸化チタン粒子を含有しているため、当該ルチル型酸化チタン粒子の濃度に応じて、ルチル型酸化チタン粒子の水系分散液として適宜に利用してもよい。
【0042】
〔基準透過率〕
「基準透過率」は、粒子形状を維持したまま水系媒体に分散しているルチル型酸化チタン粒子の水系分散液の予め特定されている透過率である。たとえば、基準透過率は、ルチル型酸化チタン粒子が最も良好な状態で分散しているときのルチル型酸化チタン粒子の水系分散液の透過率である。基準透過率は、水系分散液中のルチル型酸化チタン粒子の粒度分布および状態から決定することが可能である。水系分散液中のルチル型酸化チタン粒子の粒度分布は、例えば動的光散乱法などの、水系分散液中の分散質の粒度分布を測定可能な公知の技術によって測定することが可能である。また、水系分散液中のルチル型酸化チタン粒子の状態は、例えば以下のようにして確認することが可能である。まず、ルチル型酸化チタン粒子の水系分散液を、必要に応じて適宜に希釈してカーボンテープなどの基材上に滴下し、熱乾燥し、オスミウムコートを施して試料を作製する。当該試料を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察することによってルチル型酸化チタン粒子の状態を確認することが可能である。
【0043】
基準透過率は、例えば以下のように決定され得る。まず、前述した分散液製造装置を用いて分散条件を適宜に調整しつつルチル原分散液の透過率を測定し、そのときの粒度分布および粒子の状態を測定する。粒度分布におけるD50が十分に低下し、かつSEM画像から粒子の形状が維持されているときの透過率が、当該分散液製造装置のその分散条件における基準透過率、として決定され得る。以下、基準透過率の決定についてより詳しく説明する。
【0044】
まず、ルチル原分散液を用意する。たとえば、ルチル型酸化チタン粒子の水系分散液の市販品の水希釈液を用意する。当該市販品のルチル型酸化チタン粒子は、細長なロッド形状の粒子形状を有し、粒子の長手方向における端部の表面に鉄化合物を担持している。当該市販品は、ルチル型酸化チタン粒子と水とのみからなる水分散液であり、添加剤を含有していない。当該市販品を蒸留水で希釈し、また分散安定性のため、分散剤としてアニオン系界面活性剤を1.25質量%添加して、ルチル型酸化チタン粒子を1質量%含有する水系分散液を調製する。得られた水系分散液を「ルチル原分散液1」とする。なお、分散剤は添加しなくてもよい。
【0045】
ルチル原分散液1におけるルチル型酸化チタン粒子の粒度分布の一例を図4に示す。また、ルチル原分散液1から前述の試料を作製し、当該試料におけるルチル型酸化チタン粒子の状態の一例のSEM写真を図5に示す。図4に示されるように、ルチル原分散液1におけるルチル型酸化チタン粒子のD50は約0.3μmであり、D90は約0.8μmである。いずれもナノオーダの粒子であり、一見、十分に微分散されているように見える。一方、図5に示されるように、ルチル原分散液1におけるルチル型酸化チタン粒子では、個々の一次粒子の境界が一部不明瞭となっており、一部の一次粒子が凝集した二次粒子の形態となっている。
【0046】
ルチル原分散液1を、図1に示す分散液製造装置で分散処理を連続して施す。ビーズには直径0.05mmのジルコニアビーズを用いる。ビーズ量、ビーズミル30の運転条件および循環流量を固定し、例えば20分間などの特定の間隔で分散処理中のルチル原分散液を管45から採取する。採取したルチル原分散液1の550nmの光の透過率を分光光度計で測定する。透過率の測定では、必要に応じてルチル原分散液1を希釈してよい。
【0047】
特定の処理時間t1で分散処理したときのルチル原分散液1におけるルチル型酸化チタン粒子の粒度分布の一例を図6に示す。また、このときのルチル原分散液1から作製した試料におけるルチル型酸化チタン粒子の状態の一例のSEM写真を図7に示す。なお、このときのルチル原分散液1の透過率をT1とする。
【0048】
図6に示されるように、ルチル原分散液1中のルチル型酸化チタン粒子はさらに微分散されており、D50は約0.07μmであり、D90は約0.16μmである。また、図7のSEM画像から明らかなように、個々のルチル型酸化チタン粒子の形状はロッド状となっており、一次粒子まで十分に分散されている。このときの透過率T1は基準透過率になり得る。
【0049】
さらに一定時間経過後の処理時間t2(例えばt1の一時間度)まで分散処理したときのルチル原分散液1についても、同様に透過率、粒度分布および粒子形状のSEM観察を行う。この場合、透過率T2は透過率T1よりも高く(より透明に)なるが、粒度分布は微減となり、SEM画像からは一次粒子の状態が確認される傾向がある。この場合、透過率T2も基準透過率になり得る。このようにして、前述の「特定の範囲」、すなわち、粒子形状を維持したまま水系媒体に分散しているルチル型酸化チタン粒子の水系分散液の予め特定されている透過率(基準透過率)と実質的に同じ透過率の範囲、を決定することができる。
【0050】
なお、基準透過率は、ルチル型酸化チタン粒子の種類のみならず、分散条件によっても異なる。よって、同じルチル型酸化チタン粒子であっても異なる分散条件で分散工程を実施する場合には、当該分散条件に応じた基準透過率を決定すればよい。
【0051】
前述のルチル型酸化チタン粒子の水系分散液の透過率は、スラリー濃度と相関性を有している。よって、基準透過率の決定あるいはルチル原分散液1の透過率の測定において、当該透過率測定の試料を適宜に希釈してもよい。
【0052】
図8は、ルチル型酸化チタン粒子Aの水系分散液における酸化チタン粒子濃度と透過率との関係を示す図である。図9は、ルチル型酸化チタン粒子Bの水系分散液における酸化チタン粒子濃度と透過率との関係を示す図である。
【0053】
ルチル型酸化チタン粒子Aは、白金化合物を表面に担持するルチル型酸化チタン粒子である。市販品であるルチル型酸化チタン粒子Aの水系分散液を蒸留水で希釈して、1質量%のルチル型酸化チタン粒子Aの水系分散液のルチル原分散液Aを調製する。得られたルチル原分散液Aを図1の分散液製造装置1で分散処理し、さらにルチル型酸化チタン粒子Aの水系分散液の当該分散条件における基準透過率Aが予め決定されている。
【0054】
こうして基準透過率Aを有するルチル型酸化チタン粒子Aの水系分散液(スラリー濃度1質量%)を蒸留水で10倍、25倍および50倍にそれぞれ希釈し、これらの希釈液の透過率を分光光度計で測定する。図8の横軸はこのときの希釈率を表しており、図8中お黒丸は、これらの希釈液の透過率の測定値を表している。
【0055】
一方で比較例として、ルチル原分散液A、すなわち分散工程を施す前の分散液を同様に蒸留水で10倍、25倍および50倍にそれぞれ希釈し、これらの希釈液の透過率の測定値を図8中の黒三角で示している。図8から明らかなように、黒丸のプロットは、直線的な相関性を有しており、この点で黒三角のプロットとは異なっている。
【0056】
また、ルチル型酸化チタン粒子Bは、前述したロッド状の、鉄を担持しているルチル型酸化チタン粒子である。市販品であるルチル型酸化チタン粒子Bの水系分散液を蒸留水で希釈して、2質量%のルチル型酸化チタン粒子Bの水系分散液のルチル原分散液Bを調製する。得られたルチル原分散液Bを図1の分散液製造装置1で分散処理し、さらにルチル型酸化チタン粒子Bの当該分散条件における水系分散液の基準透過率Bが予め決定されている。
【0057】
こうして基準透過率Bを有するルチル型酸化チタン粒子Bの水系分散液(スラリー濃度2質量%)を蒸留水で10倍、25倍および50倍にそれぞれ希釈し、これらの希釈液の透過率を分光光度計で測定する。図9の横軸はこのときの希釈率を表しており、図9中お黒丸は、これらの希釈液の透過率の測定値を表している。
【0058】
一方で比較例として、ルチル原分散液B、すなわち分散工程を施す前の分散液を同様に蒸留水で10倍、25倍および50倍にそれぞれ希釈し、これらの希釈液の透過率の測定値を図9中の黒三角で示している。図8と同様に図9からも明らかなように、黒丸のプロットは、直線的な相関性を有しており、この点で黒三角のプロットとは異なっている。
【0059】
このように、基準透過率を満足するルチル型酸化チタン粒子の水系分散液の透過率は、ルチル型酸化チタン粒子の濃度に対して直線的な相関性を有する。当該濃度における上記の透過率を測定することによって、透過率の測定対象とした水系分散液が基準透過率を満たすか否かを確認することが可能である。この場合、特定の分散条件における基準透過率を満足する水系分散液の透過率と、当該水系分散液におけるルチル型酸化チタン粒子の濃度との相関は、通常、予め求められている。ただし、ルチル型酸化チタン粒子およびその水系分散液中の濃度が同じであれば、他の分散条件による透過率と濃度との相関関係に基づいて上記の確認を行ってもよい。
【0060】
〔光触媒コーティング剤の用途〕
上記のように製造される光触媒コーティング剤は、自然光または室内光など光の照射によって有機成分を分解または無害化するコーティングのための塗料として好適に用いられる。よって、内装用または外装用の塗料として種々の物品の表面に塗布し、塗膜を形成することにより、消臭、防汚および除菌などの様々な効果を得ることが可能となる。
【0061】
本実施形態で製造される光触媒コーティング剤では、ルチル型酸化チタン粒子が、実質的に一次粒子の状態まで分散されている。したがって、従来の市販品を原料として製造された光触媒コーティング剤に比べて、本実施形態における光触媒コーティング剤は、透明性に優れ、また光触媒機能にも優れることが期待される。
【0062】
〔まとめ〕
以上の説明から明らかなように、本発明の第一の態様における光触媒コーティング剤の製造方法は、ルチル型酸化チタン粒子を分散質に含む水系分散液の光触媒コーティング剤を製造する方法であって、ルチル型酸化チタン粒子をビーズミルによって水系媒体に分散させる工程と、水系媒体に分散させる工程で生成する水系分散液の透過率を測定する工程と、を含み、水系分散液の透過率の測定結果を、粒子形状を維持したまま水系媒体に分散しているルチル型酸化チタン粒子の水系分散液の予め特定されている透過率と対比して、水系媒体に分散させる工程の終点を決める。第一の態様によれば、酸化チタンの微粒子の本来の機能が十分に発現される光触媒コーティング剤を製造することができる。
【0063】
本発明の第二の態様における光触媒コーティング剤の製造方法は、第一の態様において、分散させる工程で得られた水系分散液を、アナターゼ型酸化チタン粒子の水系分散液と混合する工程をさらに含み、分散させる工程は、水系媒体中に添加されているルチル型酸化チタン粒子を再分散させる工程である。第二の態様は、ルチル型酸化チタン粒子の高い分散性を有する水系分散液を簡易かつ安定して製造する観点からより一層効果的である。
【0064】
本発明の第三の態様における光触媒コーティング剤の製造方法は、第一の態様または第二の態様において、上記の透過率が波長550nmの光の透過率である。第三の態様は、分散させる工程における品質安定性および作業効率の向上の観点からより一層効果的である。
【0065】
本発明の第四の態様における光触媒コーティング剤の製造方法は、第一の態様から第三の態様のいずれかにおいて、ビーズミルのメディア粒子に、粒径が100μm以下のジルコニアビーズを用いる。第四の態様は、分散させる工程におけるルチル型酸化チタン粒子を十分に微分散させる観点からより一層効果的である。
【0066】
本発明の第五の態様における光触媒コーティング剤の製造方法は、第一の態様から第四の態様のいずれかにおいて、ルチル型酸化チタン粒子が、金属を担持しているルチル型酸化チタン粒子、非球状のルチル型酸化チタン粒子、および、金属を担持している非球状のルチル型酸化チタン粒子、からなる群から選ばれる一種以上の粒子である。第五の態様は、光触媒コーティング剤における光触媒機能を高める観点からより一層効果的である。
【0067】
前記構成によれば、アナターゼ型酸化チタン粒子に比べて水系媒体への微分散が困難なルチル型酸化チタン粒子を実質的に一次粒子の状態に水系媒体中に分散させることができ、光触媒コーティング剤における光触媒機能を最大限まで発現させることが可能となる。このような効果は、人々の暮らしにおける衛生面の改善をもたらすことが期待され、例えば、国連が提唱する持続可能な開発目標(SDGs)の人々の健康的な生活の確保を目指す目標3等の達成に貢献することが期待される。
【0068】
本発明は、上述した各実施形態に限定されず、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態も、本発明の技術的範囲に含まれる。
【実施例0069】
本発明の一実施例について以下に説明する。
【0070】
[実施例1]
前述したルチル型酸化チタン粒子Bの水分散液の市販品に前述のアニオン界面活性剤を1.25質量%の濃度となるように添加、混合し、得られたルチル原分散液Bを、図1に示されるような分散液製造装置1を用いて、予め決定されている基準透過率を満足するまで分散工程に供した。こうして、ルチル型酸化チタン粒子Bの水系分散液を得た。
【0071】
次いで、得られたルチル型酸化チタン粒子Bの水系分散液と、別途調製したアナターゼ型酸化チタン粒子の水系分散液とを混合し、光触媒コーティング剤1を製造した。光触媒コーティング剤1中のルチル型酸化チタン粒子Bの含有量は0.2質量%であり、アナターゼ型酸化チタン粒子の含有量は0.5質量%である。また、光触媒コーティング剤1中のアニオン界面活性剤の含有量は0.025質量%である。
【0072】
[比較例1]
ルチル型酸化チタン粒子Bの水系分散液に代えてルチル原分散液Bを用いる以外は実施例1と同様にして、光触媒コーティング剤C1を製造した。
【0073】
[評価]
(1)透過率
光触媒コーティング剤1およびC1のそれぞれについて、以下のようにして透過率を測定した。まず、光触媒コーティング剤1およびC1のそれぞれを、純水を用いて、分散状態が反映される適当な倍率(例えば10倍)に希釈する。そして、得られた希釈液の、波長550nmの光の透過率を分光光度計で計測する。透過率が50%以上であれば透明性について実用上十分に良好と言える。透過率が50%以上である場合を「透明」と評価し、50%未満である場合を「白っぽい」と評価する。結果を下記表1に示す。
【0074】
なお、透過率の上記の評価基準(透過率50%)は、以下のようにして決められる。二以上の組成のそれぞれで、前述の分散工程に供した分散光触媒コーティング剤(光触媒コーティング剤1に相当)と当該分散工程に供していない未分散光触媒コーティング剤(光触媒コーティング剤C1に相当)とを調製する。複数の希釈率(例えば10倍、25倍および50倍など)を適宜に設定し、各光触媒コーティング剤を各希釈率で希釈する。各組成で同じ希釈率同士の分散光触媒コーティング剤と未分散光触媒コーティング剤との透明性を目視で確認する。このようにして、いずれの組成においても実質的に透明と言える透過率を決定し、上記の評価基準とする。
【0075】
(2)光触媒機能
光触媒コーティング剤1およびC1のそれぞれについて、以下のようにして光触媒機能を測定した。まず、それぞれの光触媒コーティング剤を塗布した試験板に試験セル(内径40mm、高さ3cm)をシリコングリースで固定する。試験セル内にメチレンブルー試験液(0.010±0.001mmol/L)35mL±0.3mLを注入し、ガラスカバーで蓋をする。飽和吸着状態に達するまでメチレンブルーの吸着作業を繰り返す。吸着作業中の吸光度がメチレンブルー試験液吸光度より低い場合はメチレンブルー吸着液(0.020±0.002mmol/L)を取り換え繰り返す。吸光度が当該試験液吸光度より高ければ吸着作業を完了とする。吸着作業の完了後、測定作業に移る。試験液の初期吸光スペクトル(λ=664nm)を測定し、紫外線照射によるメチレンブルーの分解を分光光度計により吸光度減少量として測定する。光触媒コーティング剤1およびC1の吸光度減少量を互いに比較したときの吸光度減少量の高低で光触媒機能を評価する。結果を下記表1に示す。
【0076】
【表1】
【0077】
[考察]
表1から明らかなように、光触媒コーティング剤1は、透過率が高く、光触媒機能が高かった。これは、ルチル型酸化チタン粒子が実質的に一次粒子まで分散し、ルチル型酸化チタン粒子による透過率が最も高まり、かつ光触媒コーティング剤1のルチル型酸化チタン粒子の表面積が最も広くなっているため、と考えられる。
【0078】
光触媒コーティング剤C1は、光触媒コーティング剤1に比べて、透過率が低く、また光触媒機能が低かった。これは、ルチル型酸化チタン粒子の分散が不十分で、光触媒コーティング剤C1において凝集粒子の状態で存在するため、と考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明は、浮遊性または揮発性の有機成分の分解または除去に有効な光触媒コーティング剤の製造に利用することができる。
【符号の説明】
【0080】
1 分散液製造装置
10 ホールディングタンク
11 撹拌機
20 ポンプ
30 ビーズミル
41~43、45 管
51、53、54 弁
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【手続補正書】
【提出日】2023-08-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ルチル型酸化チタン粒子を分散質に含む水系分散液の光触媒コーティング剤を製造する方法であって、
ルチル型酸化チタン粒子をビーズミルによって水系媒体に分散させる工程と、
前記水系媒体に分散させる工程で生成する水系分散液の透過率を測定する工程と、を含み、
前記水系分散液の透過率の測定結果を、粒子形状を維持したまま水系媒体に分散しているルチル型酸化チタン粒子の水系分散液の予め特定されている透過率と対比して、前記水系媒体に分散させる工程の終点を決める、
光触媒コーティング剤の製造方法。
【請求項2】
前記分散させる工程で得られた、前記分散させる工程の後の前記水系分散液を、アナターゼ型酸化チタン粒子の水系分散液と混合する工程をさらに含み、
前記分散させる工程は、水系媒体中に添加されているルチル型酸化チタン粒子を再分散させる工程である、請求項1に記載の光触媒コーティング剤の製造方法。
【請求項3】
前記透過率が波長550nmの光の透過率である、請求項1に記載の光触媒コーティング剤の製造方法。
【請求項4】
前記ビーズミルのメディア粒子に、粒径が100μm以下のジルコニアビーズを用いる、請求項1に記載の光触媒コーティング剤の製造方法。
【請求項5】
前記ルチル型酸化チタン粒子が、金属を担持しているルチル型酸化チタン粒子、非球状のルチル型酸化チタン粒子、および、金属を担持している非球状のルチル型酸化チタン粒子、からなる群から選ばれる一種以上の粒子である、請求項1に記載の光触媒コーティング剤の製造方法。
【手続補正書】
【提出日】2023-11-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ルチル型酸化チタン粒子を分散質に含む水系分散液の光触媒コーティング剤を製造する方法であって、
ルチル型酸化チタン粒子をビーズミルによって水系媒体に分散させる工程と、
前記水系媒体に分散させる工程で生成する水系分散液の透過率を測定する工程と、を含み、
前記水系分散液の透過率の測定結果を、粒子形状を維持したまま一次粒子に対応する粒径で水系媒体に分散しているルチル型酸化チタン粒子の水系分散液の予め特定されている透過率と対比して実質的に同じになった時を、前記水系媒体に分散させる工程の終点め、かつ、
前記分散させる工程で得られた、前記分散させる工程の後の前記水系分散液を、アナターゼ型酸化チタン粒子の水系分散液と混合する工程をさらに含む、
光触媒コーティング剤の製造方法。
【請求項2】
記分散させる工程は、水系媒体中に添加されているルチル型酸化チタン粒子を再分散させる工程である、請求項1に記載の光触媒コーティング剤の製造方法。
【請求項3】
前記透過率が波長550nmの光の透過率である、請求項1に記載の光触媒コーティング剤の製造方法。
【請求項4】
前記ビーズミルのメディア粒子に、粒径が100μm以下のジルコニアビーズを用いる、請求項1に記載の光触媒コーティング剤の製造方法。
【請求項5】
前記ルチル型酸化チタン粒子が、金属を担持しているルチル型酸化チタン粒子、非球状のルチル型酸化チタン粒子、および、金属を担持している非球状のルチル型酸化チタン粒子、からなる群から選ばれる一種以上の粒子である、請求項1に記載の光触媒コーティング剤の製造方法。