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特開2024-135225測量装置、測量方法および測量用プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135225
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】測量装置、測量方法および測量用プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01C 15/00 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
G01C15/00 103
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023045805
(22)【出願日】2023-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】100096884
【弁理士】
【氏名又は名称】末成 幹生
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 陽
(72)【発明者】
【氏名】古明地 隆浩
(57)【要約】
【課題】指定されたスキャン対象面において、要求されるスキャン密度が得られる技術を得る。
【解決手段】レーザースキャン機能を有した測量装置100を利用した測量方法であって、レーザースキャンの対象となるスキャン対象面の測量装置100に対する位置と向きのデータを取得し、前記スキャン対象面において要求されるレーザースキャン密度を要求スキャン密度として受け付け、予め定められたレーザースキャン条件による前記スキャン対象面に対するレーザースキャンを行った場合におけるレーザースキャン密度を推定スキャン密度として算出し、前記要求スキャン密度と前記推定スキャン密度の比較の結果に基づき、前記レーザースキャンのスキャン条件の変更を行う。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザースキャンを行う機能を有する測量装置であって、
前記レーザースキャンの対象となるスキャン対象面の当該測量装置に対する位置と向きのデータを得るスキャン対象面の受付部と、
前記スキャン対象面において要求されるレーザースキャン密度を要求スキャン密度として受け付ける要求スキャン密度受付部と、
予め定められたレーザースキャン条件による前記スキャン対象面に対するレーザースキャンを行った場合におけるレーザースキャン密度を推定スキャン密度として算出する推定スキャン密度算出部と、
前記要求スキャン密度と前記推定スキャン密度の比較の結果に基づき、前記レーザースキャンのスキャン条件の変更を行うスキャン条件変更部と
を備える測量装置。
【請求項2】
前記レーザースキャンを行う機能は、
水平回転する水平回転部と、
前記水平回転部に配置され、レーザースキャン光の放射と受光を行う光学部を備えた鉛直回転部と
により実現され、
前記水平回転の角度の方向において、(前記要求スキャン密度>前記推定スキャン密度)である場合に、レーザースキャン時における前記水平回転部の回転速度を前記予め定められたレーザースキャン条件に比較して遅くする請求項1に記載の測量装置。
【請求項3】
前記レーザースキャンを行う機能は、
水平回転する水平回転部と、
前記水平回転部に配置され、レーザースキャン光の放射と受光を行う光学部を備えた鉛直回転部と
により実現され、
前記水平回転の角度の方向において、(前記要求スキャン密度<前記推定スキャン密度)である場合に、レーザースキャン時における前記水平回転部の回転速度を前記予め定められたレーザースキャン条件に比較して速くする請求項1に記載の測量装置。
【請求項4】
前記レーザースキャンを行う機能は、
水平回転する水平回転部と、
前記水平回転部に配置され、レーザースキャン光の放射と受光を行う光学部を備え、鉛直回転する鉛直回転部と
により実現され、
前記鉛直回転の角度の方向において、(前記要求スキャン密度>前記推定スキャン密度)である場合に、レーザースキャン時における前記鉛直回転部の回転速度を前記予め定められたレーザースキャン条件に比較して遅くする、および/または前記レーザースキャン光の発光周波数を前記予め定められたレーザースキャン条件に比較して高くする請求項1に記載の測量装置。
【請求項5】
前記レーザースキャンを行う機能は、
水平回転する水平回転部と、
前記水平回転部に配置され、レーザースキャン光の放射と受光を行う光学部を備え、鉛直回転する鉛直回転部と
により実現され、
前記鉛直回転の角度の方向において、(前記要求スキャン密度<前記推定スキャン密度)である場合に、レーザースキャン時における前記鉛直回転部の回転速度を前記予め定められたレーザースキャン条件に比較して速くする、および/または前記レーザースキャン光の発光周波数を前記予め定められたレーザースキャン条件に比較して低くする請求項1に記載の測量装置。
【請求項6】
前記スキャン対象面の前記レーザースキャナ部に対する位置と向きのデータは、前記レーザースキャナ部による前記スキャン対象面に対する事前のレーザースキャンに基づき取得され、
前記事前のレーザースキャンは、前記レーザースキャンの対象となるスキャン対象面の当該測量装置に対する位置と向きのデータを得る時点以前の段階で行われる請求項1に記載の測量装置。
【請求項7】
レーザー光を用いた測量を行うトータルステーション部を備え、
前記スキャン対象面の前記レーザースキャナ部に対する位置と向きのデータは、前記トータルステーション部を用いた測量に基づき取得される請求項1に記載の測量装置。
【請求項8】
前記推定スキャン密度は、
前記予め定められたレーザースキャン条件と、前記スキャン対象面を記述する面の方程式に基づき算出される請求項1に記載の測量装置。
【請求項9】
レーザースキャンを利用した測量方法であって、
前記レーザースキャンの対象となるスキャン対象面の前記レーザースキャンを行う装置に対する位置と向きのデータを取得し、
前記スキャン対象面において要求されるレーザースキャン密度を要求スキャン密度として受け付け、
予め定められたレーザースキャン条件による前記スキャン対象面に対するレーザースキャンを行った場合におけるレーザースキャン密度を推定スキャン密度として算出し、
前記要求スキャン密度と前記推定スキャン密度の比較の結果に基づき、前記レーザースキャンのスキャン条件の変更を行う測量方法。
【請求項10】
レーザースキャンを利用した測量をコンピュータに実行させるプログラムであって、
コンピュータに
前記レーザースキャンの対象となるスキャン対象面の前記レーザースキャンを行う装置に対する位置と向きのデータを取得させ、
前記スキャン対象面において要求されるレーザースキャン密度を要求スキャン密度として受け付けさせ、
予め定められたレーザースキャン条件による前記スキャン対象面に対するレーザースキャンを行った場合におけるレーザースキャン密度を推定スキャン密度として算出させ、
前記要求スキャン密度と前記推定スキャン密度の比較の結果に基づき、前記レーザースキャンのスキャン条件の変更を行わせる測量用プログラム。
【請求項11】
レーザースキャンを利用した測量方法であって、
前記レーザースキャンの対象となるスキャン対象面の前記レーザースキャンを行う装置に対する位置と向きのデータを取得し、
予め定められたレーザースキャン条件による前記スキャン対象面に対するレーザースキャンを行った場合におけるレーザースキャン点の分布を求め、
該分布と予め定められたレーザースキャン点の分布との比較に基づき、前記レーザースキャンの条件の調整を行う測量方法。
【請求項12】
レーザースキャンを利用した測量をコンピュータに実行させるプログラムであって、
コンピュータに、
前記レーザースキャンの対象となるスキャン対象面の前記レーザースキャンを行う装置に対する位置と向きのデータを取得させ、
予め定められたレーザースキャン条件による前記スキャン対象面に対するレーザースキャンを行った場合におけるレーザースキャン点の分布を求めさせ、
該分布と予め定められたレーザースキャン点の分布との比較に基づき、前記レーザースキャンの条件の調整を行わせるプログラム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザースキャンの技術に関する。
【背景技術】
【0002】
水平回転部と鉛直回転部を組み合わせたレーザースキャン装置が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-056069号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
レーザースキャン装置を用いて建築物、工作物、地形等のレーザースキャンを行い、スキャン対象の3次元データを得る技術が知られている。ここで、スキャン対象面がレーザースキャン装置に正対している場合とそうでない場合、距離が同じであってもスキャン密度が違うものとなる。例えば、水平面上に設置されたレーザースキャン装置を用いて、当該水平面の離れた場所をレーザースキャンする場合、同じ距離であっても鉛直角方向のスキャン点の間隔は、正対面の場合よりも大きくなる。この問題は、スキャン対象面がレーザースキャン装置に対して、正対していない場合に生じる。
【0005】
ところで、施工管理上の規定等により、レーザースキャンを行う場所における単位面積当たりのスキャン点の密度(以下、スキャン密度)が決められている場合がある。例えば、「5cm×5cm平方に1点以上」、「10cm×10cm平方に1点以上」といった条件が要求される場合がある。
【0006】
上述にように、スキャン対象面のレーザースキャン装置に対する向きによって、距離が同じであってもスキャン密度に違いが生じる。よって、スキャン対象面のレーザースキャン装置に対する向きによって、上記の条件が満たされなくなる虞がある。また、スキャン密度は、同じスキャン条件であっても距離が遠くなる程小さくなる。
【0007】
この問題に対しては、多様な状況において、スキャン密度の条件が満たされるように、十分にスキャン密度が余裕をもって大きく(高く)なるように設定しておく方法が考えられる。しかしながら、この方法は、無駄なスキャンの発生、スキャン時間の増大、扱う点群のデータ量の増大、これら要因に起因するコストの増大や作業効率の悪化といった問題があり、効率的ではない。
【0008】
このような背景において、本発明は、指定されたスキャン対象面において、要求されるスキャン密度が得られる技術を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、レーザースキャンを行う機能を有する測量装置であって、前記レーザースキャンの対象となるスキャン対象面の当該測量装置に対する位置と向きのデータを得るスキャン対象面の受付部と、前記スキャン対象面において要求されるレーザースキャン密度を要求スキャン密度として受け付ける要求スキャン密度受付部と、予め定められたレーザースキャン条件による前記スキャン対象面に対するレーザースキャンを行った場合におけるレーザースキャン密度を推定スキャン密度として算出する推定スキャン密度算出部と、前記要求スキャン密度と前記推定スキャン密度の比較の結果に基づき、前記レーザースキャンのスキャン条件の変更を行うスキャン条件変更部とを備える測量装置である。
【0010】
本発明において、前記レーザースキャンを行う機能は、水平回転する水平回転部と、前記水平回転部に配置され、レーザースキャン光の放射と受光を行う光学部を備えた鉛直回転部とにより実現され、前記水平回転の角度の方向において、(前記要求スキャン密度>前記推定スキャン密度)である場合に、レーザースキャン時における前記水平回転部の回転速度を前記予め定められたレーザースキャン条件に比較して遅くする態様が挙げられる。ここで、(前記要求スキャン密度<前記推定スキャン密度)である場合に、レーザースキャン時における前記水平回転部の回転速度を前記予め定められたレーザースキャン条件に比較して速くする態様も可能である。
【0011】
本発明において、前記レーザースキャンを行う機能は、水平回転する水平回転部と、前記水平回転部に配置され、レーザースキャン光の放射と受光を行う光学部を備え、鉛直回転する鉛直回転部とにより実現され、前記鉛直回転の角度の方向において、(前記要求スキャン密度>前記推定スキャン密度)である場合に、レーザースキャン時における前記鉛直回転部の回転速度を前記予め定められたレーザースキャン条件に比較して遅くする、および/または前記レーザースキャン光の発光周波数を前記予め定められたレーザースキャン条件に比較して高くする態様が挙げられる。ここで、(前記要求スキャン密度<前記推定スキャン密度)である場合に、レーザースキャン時における前記鉛直回転部の回転速度を前記予め定められたレーザースキャン条件に比較して速くする、および/または前記レーザースキャン光の発光周波数を前記予め定められたレーザースキャン条件に比較して低くする態様も可能である。
【0012】
本発明において、前記スキャン対象面の前記レーザースキャナ部に対する位置と向きのデータは、前記レーザースキャナ部による前記スキャン対象面に対する事前のレーザースキャンに基づき取得され、前記事前のレーザースキャンは、前記レーザースキャンの対象となるスキャン対象面の当該測量装置に対する位置と向きのデータを得る時点以前の段階で行われる態様が挙げられる。
【0013】
本発明において、レーザー光を用いた測量を行うトータルステーション部を備え、前記スキャン対象面の前記レーザースキャナ部に対する位置と向きのデータは、前記トータルステーション部を用いた測量に基づき取得される態様が挙げられる。本発明において、前記推定スキャン密度は、前記予め定められたレーザースキャン条件と、前記スキャン対象面を記述する面の方程式に基づき算出される態様が挙げられる。
【0014】
本発明は、レーザースキャンを利用した測量方法であって、前記レーザースキャンの対象となるスキャン対象面の前記レーザースキャンを行う装置に対する位置と向きのデータを取得し、前記スキャン対象面において要求されるレーザースキャン密度を要求スキャン密度として受け付け、予め定められたレーザースキャン条件による前記スキャン対象面に対するレーザースキャンを行った場合におけるレーザースキャン密度を推定スキャン密度として算出し、前記要求スキャン密度と前記推定スキャン密度の比較の結果に基づき、前記レーザースキャンのスキャン条件の変更を行う測量方法である。
【0015】
本発明は、レーザースキャンを利用した測量をコンピュータに実行させるプログラムであって、コンピュータに前記レーザースキャンの対象となるスキャン対象面の前記レーザースキャンを行う装置に対する位置と向きのデータを取得させ、前記スキャン対象面において要求されるレーザースキャン密度を要求スキャン密度として受け付けさせ、予め定められたレーザースキャン条件による前記スキャン対象面に対するレーザースキャンを行った場合におけるレーザースキャン密度を推定スキャン密度として算出させ、前記要求スキャン密度と前記推定スキャン密度の比較の結果に基づき、前記レーザースキャンのスキャン条件の変更を行わせる測量用プログラムである。
【0016】
本発明は、レーザースキャンを利用した測量方法であって、前記レーザースキャンの対象となるスキャン対象面の前記レーザースキャンを行う装置に対する位置と向きのデータを取得し、予め定められたレーザースキャン条件による前記スキャン対象面に対するレーザースキャンを行った場合におけるレーザースキャン点の分布を求め、該分布と予め定められたレーザースキャン点の分布との比較に基づき、前記レーザースキャンの条件の調整を行う測量方法である。この測量方法は、プログラムの発明として把握することもできる。上記のレーザースキャン点の分布という概念には、レーザースキャン点の密度の分布、レーザースキャン点の並び方(不規則に並んでいるのか、等間隔に並んでいるのか等)が含まれる。
【発明の効果】
【0017】
本発明により、指定されたスキャン対象面において、要求されるスキャン密度が得られる技術が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施形態の概要を示す図である。
図2】測量装置の外観図である。
図3】測量装置のブロック図である。
図4】処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
1.第1の実施形態
(概要)
図1には、レーザースキャン機能を有する測量装置100を用いて、橋梁100のレーザースキャンを行う場合が示されている。橋梁100は立体構造であり、場所によって、測量装置100に対する向きと距離が異なる。他方において、スキャン密度が指定されている場合、全体に対して同じスキャン条件でレーザースキャンを行うことは非効率である。そこで、本実施形態では、希望する場所のレーザースキャンを要求されるスキャン密度で行うことができる技術を提供する。なお、レーザースキャンの対象は、橋梁100に限定されない。レーザースキャンの対象としては、建築物、工作物、地形等が挙げられる。
【0020】
(測量装置)
図2には、測量装置100が示されている。測量装置100は、トータルステーション部11とレーザースキャナ部12を複合化した構造を有する。測量装置100は、三脚13、三脚13の上部に固定されたベース部14,ベース部14上に支持され、水平回転が可能な水平回転部15を備える。水平回転部15は手動または電動での水平回転が可能である。水平回転部15には、トータルステーション部11の光学系を収納した仰角制御および俯角制御が可能な光学筒16が取り付けられている。
【0021】
光学筒16は、レーザー測距光を測量対象に向かって照射し、またその反射光を受光する光学系17を備える。光学系16は、望遠鏡の光学系も兼ねている。光学筒16の背後には、図示しない接眼部が配置され、この接岸部をオペレータが覗くことで、レーザー測距を行う対象点(測量点)の視準が行われる。光学筒16は、手動または電動での仰角制御および俯角制御が可能である。光学筒16の仰角および俯角は、エンコーダにより精密に計測される。
【0022】
水平回転部15の上部には、レーザースキャナ部12の光学系を備えた鉛直回転部18が配置されている。鉛直回転部18は、鉛直回転(水平方向を回転軸とする回転)が可能であり、レーザースキャン光の放射と、その反射光を受光する光学系19を備える。
【0023】
水平回転部15を水平回転させながら、鉛直回転部18を鉛直回転させ、その際に光学系19からレーザースキャン光をパルス発光させることで、レーザースキャンが行われる。
【0024】
水平回転部15の背面には、図示しないタッチパネルディスプレイにより構成された操作パネルが配置されている。作業員(ユーザ)は、この操作パネルを操作し、測量装置100に対する操作、各種データの入力を行う。
【0025】
(ブロック図)
図3は、測量装置100のブロック図である。測量装置100は、水平回転制御部110、鉛直回転制御部120、測距部130、測量データ取得部140、発光制御部150、レーザースキャン点群取得部160、演算部170を備える。
【0026】
平回転制御部110は、水平回転部15の水平回転を制御する。水平回転制御部110により、水平回転部15の水平回転の速度(rad/sや回転数/秒)の制御が行われる。水平回転部15の水平回転の回転角は、エンコーダにより精密に計測されている。
【0027】
鉛直回転制御部120は、レーザースキャナ部12の鉛直回転部18の鉛直回転を制御する。鉛直回転制御部120により、鉛直回転部18の鉛直回転の速度(rad/sや回転数/秒)の制御が行われる。鉛直回転部18の鉛直回転の回転角は、エンコーダにより精密に計測されている。
【0028】
測距部130は、トータルステーション部11のレーザー測位機能を得るためのもので、測距光の発光部と受光部、関係する光学系(符号17はその一部)を有し、また光波測距の原理に基づく測距光の反射点(測量対象点)までの距離の算出を行う。
【0029】
測量データ取得部140は、水平回転部15の水平回転角、光学筒16の仰角または俯角、および上記測量対象点までの距離を取得する。
【0030】
また、測量データ取得部140は、水平回転部15の水平回転角、光学筒16の仰角または俯角、および上記測量対象点までの距離から計測点の座標を得る。絶対座標系における測量装置の外部標定要素(位置と姿勢)が既知であれば、上記測量計測点の絶対座標系上における位置を求めることができる。これらの機能は、通常のトータルステーションの機能と同じである。
【0031】
発光制御部150は、鉛直回転部18から出射されるレーザースキャン光の発光制御を行う。当該レーザースキャン光の発光間隔(発光周波数)の制御は、発光制御部150により行われる。この発光間隔の制御は、発光素子の発光周波数を決めるクロック周波数を調整することで行われる。
【0032】
レーザースキャン点群取得部160は、図1のレーザースキャナ部12によるレーザースキャンによって得られる点群データ(レーザースキャン点群のデータ)を得る。レーザースキャン点群は、レーザースキャナ部12の光学原点から見た各スキャン点(レーザースキャン光の反射点)の方向と距離のデータとして得られる。なお、トータルステーション部11とレーザースキャナ部12の光学系の位置と姿勢の関係は既知であり、両者の測量データは比較が可能であり、また統合して扱うことができる。
【0033】
演算部170は、スキャン対象におけるスキャン点の密度の設定に係る演算を行う測量用演算装置である。演算部170はコンピュータであり、CPU、記憶装置、各種のインターフェースを備える。演算部170は、スキャン対象面の受付部101、スキャン対象面の算出部102、要求スキャン密度受付部103、推定スキャン密度算出部104、スキャン密度比較部105、スキャン条件変更部106を有する。これら機能部は、各機能部を実現するためのソフトウェアプログラムが演算部170を構成するコンピュータにより実行されることで実現される。これら機能部の一部または全部を専用のハードウェア(電子回路)で構成することも可能である。
【0034】
演算部170を測量装置100に内蔵させるのではなく、別構成として用意する形態も可能である。また、処理サーバ上で演算部170を構成し、そこで処理を行い、処理の結果を測量装置100に送信する形態も可能である。
【0035】
スキャン対象面の受付部101は、レーザースキャンの対象となるスキャン対象面を受け付ける。例えば、図1の橋脚501の内側の側面501Aがレーザースキャンの対象となるスキャン対象面として指定される。スキャン対象面の指定はユーザにより行われる。
【0036】
スキャン対象面の受付部101は、スキャン対象面の3Dデータも受け付ける。スキャン対象面の3Dデータは、図面データや測量データから得る。例えば、図1の橋梁500の3Dデータが既知である場合に、橋脚501の側面501Aがスキャン対象面として指定された場合、上記3Dデータから橋脚501の側面501Aの3Dデータを得る。
【0037】
また、スキャン対象面の3Dデータを測量装置100による測量により得ても良い。例えば、橋脚501の側面501Aがスキャン対象面として指定された場合に、橋脚501の側面501Aを対象としたトータルステーション部11によるレーザー測量を行う。この際、異なる3点以上の点の位置を測量し、この3点にフィッティングする面を算出することで、当該面の3Dデータを得る。また、橋脚501の側面501Aを対象としたレーザースキャナ部12によるレーザースキャンを行う。このレーザースキャンにより、当該面の3Dデータを得る。スキャン対象面の3Dデータを設計図面データや過去の測量データから得ても良い。
【0038】
スキャン対象面の算出部102は、レーザースキャンの対象となる対象面の測量装置100に対する位置と向きの関係を算出する。具体的には、測量装置100が扱う座標系における当該対象面を記述する面の方程式が求められる。この面の方程式が求まることで、測量装置100に対する当該対象面の位置関係と面の方向の関係を定量的に評価できるようになる。
【0039】
測量装置100が扱う座標系としては、測量装置100を原点とするローカル座標系、測量現場に設定されたローカル座標系、絶対座標系が挙げられる。絶対座標系は、地図やGNSSで利用される座標系である。測量現場に設定されたローカル座標系や絶対座標系を利用する場合は、予めその座標系における測量装置100の位置と姿勢を求めておく。
【0040】
要求スキャン密度受付部103は、指定されたスキャン対象面における要求されるスキャン密度を受け付ける。例えば、図1の橋梁500における要求されるスキャン密度が10cm×10cmの範囲に最低1点であるとする。この場合、1点/10cmが要求されるスキャン密度となる。この値は、ユーザにより選択あるいは入力される。
【0041】
推定スキャン密度算出部104は、指定されたスキャン対象面におけるスキャン密度を計算により推定する。この推定されたスキャン密度が推定スキャン密度となる。この計算は、その時点(スキャン対象面が指定された時点)において予め設定されているスキャン条件を用いて行われる。この予め定められたレーザースキャン条件としては、初期設定されたスキャン条件が挙げられる。
【0042】
例えば100m離れた正対面に垂直に入射するスキャン光の密度が(1点/10cm×10cm)となるように、水平回転部15の水平角速度、鉛直回転部18の鉛直回転速度、レーザースキャン光の発光周波数が初期設定条件として予め定められているとする。この場合、この初期設定条件が上記予め定められたスキャン条件として採用される。
【0043】
予め定められたレーザースキャン条件として、最後に変更されたスキャン条件を用いてもよい。例えば、上記の推定スキャン密度を算出する直前において設定されているスキャン条件を予め定められたレーザースキャン条件として用いることもできる。
【0044】
スキャン対象面の測量装置100に対する位置と向きは、スキャン対象面の算出部102の算出の結果から判っている。よって、上記スキャン条件を用いた当該スキャン対象面におけるスキャン点の分布は、計算により求めることができる。
【0045】
すなわち、測量装置100から照射される各スキャン光とスキャン対象面の交点は計算により求めることができる。具体的には、測量装置100を原点とする座標系において、スキャン対象面を記述する面の方程式を求め、この面とスキャン光の光軸の交点を求める。この交点の分布をシミュレートすることで、スキャン対象面におけるスキャン点の密度を推定することができる。こうして、推定スキャン密度が得られる。なお、このスキャン密度は、スキャン対象面で一様とならず、濃淡がある(例えば、近くで大きく、遠くで小さい)。
【0046】
スキャン密度比較判定部105は、要求スキャン密度と推定スキャン密度の値を比較判定する。この処理では、要求スキャン密度と推定スキャン密度の大小関係が比較され、この大小関係が規定の関係を満たすか否か、が判定される。推定スキャン密度には、幅があり(スキャン密度に上述した濃淡があるので)、要求スキャン密度と推定スキャン密度の比も一定値ではなく、幅がある。
【0047】
この例では、「要求スキャン密度>推定スキャン密度」であるか否か、が判定される。「要求スキャン密度>推定スキャン密度」である場合、要求条件を満たさない判定となる。なお、上記の判定では、スキャン対象面における推定スキャン密度の最小値が採用される。
【0048】
スキャン条件変更部106は、上記の比較によって得た要求スキャン密度と指定スキャン密度の値の差が是正されるように、推定スキャン密度の計算に用いるスキャン条件を変更する。この例では、「要求スキャン密度≦推定スキャン密度」となるように、スキャン条件を変更する。
【0049】
この例では、スキャン密度を測量装置100から見た水平角方向と鉛直角方向とで分けて考える。すなわち、「要求スキャン密度>推定スキャン密度」である場合、それが測量装置100から見て、水平角方向におけるものか、鉛直角方向におけるものか、を求める。これは、スキャン対象面におけるスキャン点の並び(分布)を見ることで調べることができる。なお、測量装置100に対するスキャン対象面の向きによっては、水平角方向と鉛直角方向の両方に関連する場合もあり得る。
【0050】
例えば、水平角方向における推定スキャン密度が要求スキャン密度よりも小さい場合、その時点(上記の判定時)におけるスキャン条件(例えば、初期設定時のスキャン条件や前回の変更時のスキャン条件)を、水平回転部15の水平回転速度を遅くしたスキャン条件に変更する。これにより、水平角方向におけるスキャン点の間隔が狭くなり、水平角方向における推定スキャン密度を高く(大きく)できる。
【0051】
また例えば、鉛直角方向における推定スキャン密度が要求スキャン密度よりも小さい場合、その時点におけるスキャン条件を、鉛直回転部18の鉛直回転速度を下げた(遅くした)スキャン条件に変更する。これにより、鉛直角方向におけるスキャン点の間隔が狭くなり、鉛直角方向における推定スキャン点の密度を高くできる。同様の効果は、スキャン光の発光周波数(パルス発光の周波数)を高くすることでも可能である。鉛直回転速度の変更と発光周波数の変更を組み合わせての鉛直角方向における推定スキャン点の密度の調整も可能である。
【0052】
(処理の手順の一例)
図4は、処理の手順の一例を示すフローチャートである。図4の処理を実行するプログラムは、適当な記憶媒体や演算部170を構成するコンピュータの記憶部に記憶され、演算部170のCPUにより実行される。
【0053】
ここでは、図1に示す状況での処理の一例を説明する。処理に先立ち、測量装置100を図1の測量現場に設置する。なお、この設置時に絶対座標系における測量装置100の位置と姿勢を取得しておく。
【0054】
処理が開始されると、まずスキャン対象面の受付が行われる(ステップS101)。ここでは、以下のようにしてスキャン対象面の受付が行われる。この例では、橋脚501の側面501Aがスキャン対象面としてユーザにより指定される。この場合、ユーザは測量装置100のトータルステーション機能を用いて、橋脚501の側面501Aの四隅の測量(レーザー測位)を行う。具体的には、図2の望遠鏡の機能(光学系17は望遠鏡の光学系を兼ねている)を用いて、橋脚501の側面501Aの4隅の点を視準し、この4隅の点の座標を測定する。この測定値が橋脚501の側面501Aの3D情報として測量装置100の側で受け付けられる。また、4隅が指定されることで、スキャン対象面の外縁が定められる。
【0055】
次に、スキャン対象面を算出する(ステップS102)。ここでは、ステップS101において受け付けたスキャン対象面の3D情報に基づき、測量装置100が得るレーザースキャンデータを記述する座標系におけるスキャン対象面の「面の方程式」を求める。ここでは、ステップS101において得たスキャン対象面となる側面501Aの4隅の点にフィッティングする面の方程式を求める。この処理は、スキャン対象面の算出部102において行われる。
【0056】
次に、要求スキャン密度の受付が行われる(ステップS103)。要求スキャン密度はユーザにより指定される。要求スキャン密度の値は、要求スキャン密度受付部103において受け付けられる。
【0057】
次に、推定スキャン密度の算出が行われる(ステップS104)。この処理では、測量装置100に初期設定されているスキャン条件を利用して、ステップS102において求められたスキャン対象面におけるスキャン密度が算出される。この処理は、推定スキャン密度算出部104において行われる。
【0058】
次に、ステップS103において受け付けた要求スキャン密度と、ステップS104において算出した(推定した)推定スキャン密度の比較判定が行われる(ステップS105)。この処理は、スキャン密度比較判定部105において行われる。
【0059】
この処理では、(要求スキャン密度>推定スキャン密度)であるか否かの判定が行われる。ここで、(要求スキャン密度>推定スキャン密度)であれば、ステップS106に進み、そうでなければ、ステップS107に進む。
【0060】
ステップS106では、ステップS103とS104の結果に基づき、スキャンの条件の変更が行われる。この処理は、スキャン条件変更部106において行われる。この処理では、(要求スキャン密度≦推定スキャン密度)となるようにスキャン条件の変更が行われる。
【0061】
ステップS106の後、ステップS107に進む。ステップS107では、この時点で設定されているスキャン条件(水平回転部15の水平回転速度、鉛直回転部18の鉛直回転速度、スキャン光の発光周波数)によるスキャン対象面に対するレーザースキャンを、測量装置100のレーザースキャナ部12のスキャン機能を用いて行う。この時点で設定されているスキャン条件は、ステップS105がNOの場合は、初期設定されたスキャン条件または最後に変更され設定されたスキャン条件であり、ステップS105がYESの場合はステップS106で変更されたスキャン条件である。
【0062】
例えば、図1の橋脚501の側面501Aがスキャン対象面であるとする。この場合、ステップS107でのレーザースキャンは、測量装置100を用いて、少なくとも当該側面501Aに対するレーザースキャンを行う。このレーザースキャンは、当該側面501Aに狙いを定めた選択的(限定的)なレーザースキャンであっても良いし、当該側面501Aを含むある程度広い範囲に対するレーザースキャン(他追えば、橋梁500に対するレーザースキャン)であってもよいし、更に広い範囲のレーザースキャンであってもよい。ただし、レーザースキャンの範囲を広くすると、無駄なレーザースキャンが増える。
【0063】
(優位性)
上記のレーザースキャンによれば、選択したスキャン対象面(例えば、橋脚501の側面501A)における実際のスキャン密度を要求される値以上に調整できる。測量装置100に対する面の向きと距離は橋梁500の各部において異なる。例えば、橋500の下面と橋脚500の側面では、測量装置100に対する面の向きが異なり、同じスキャン条件では、得られるスキャン密度が大きく異なる場合があり得る。
【0064】
本実施形態によれば、測量装置に対するスキャン対象面の向きの情報に基づき、所望のスキャン密度が得られるように、スキャン条件の調整が行われる。このため、測量装置に対するスキャン対象面の向きに応じて、要求されるスキャン密度が得られる技術が得られる。すなわち、指定されたスキャン対象面において、要求されるスキャン密度が得られる。またこの際、距離の情報も考慮されるので、距離の大小に関らず、要求されるスキャン密度を得ることができる。
【0065】
2.第2の実施形態
図4のステップS101として以下の態様を採用することもできる。この場合、測量装置100は、カメラを内蔵している。光学系17は、このカメラの光学系を兼ねている。
【0066】
ここでは、橋梁の橋脚の側面がスキャンの対象であるとする。また、橋梁に対する測量におけるレーザースキャンの条件(点の密度)が予めデータとして定められているとする。このデータは、さらに細かく橋梁の各部において個別に定められていても良い。また対象は橋梁に限定されず、各種の地形、河川、建物、道路といった対象毎にデータが用意されていてもよい。このデータは、測量装置100のデータベースまたは外部のデータベースに予め記憶されており、随時参照できるようにしておく。
【0067】
この場合、まず、スキャン対象面の受付を行う(ステップS101)。次に、上記カメラを用いてスキャン対象面(この場合は上記の橋脚の側面)の撮影を行う。なお、スキャン対象面の撮影の後にスキャン対象面の受付を行っても良い。
【0068】
次に、上記撮影画像の中からスキャン対象面を自動認識する。この場合だと、橋脚の側面が画像認識技術を用いて自動認識される。
【0069】
次に、画像認識された上記橋脚の側面から面算出用のポイントが自動検出される。例えば、当該面の4隅の点が自動検出される。そして、この自動検出されたポイントの測位がトータスステーションの機能を用いて自動で行われ、この測位データに基づき当該面に関する面の方程式が算出される(ステップS102)。
【0070】
次に、上記データベースを参照して、当該スキャン対象面の要求スキャン密度を取得する(ステップS103)。ステップS104以下の処理は、第1の実施形態と同じである。
【0071】
3.第3の実施形態
例えば、水平角方向における推定スキャン密度が要求スキャン密度よりも大きい場合、その時点(上記の判定時)におけるスキャン条件(例えば、初期設定時のスキャン条件や前回の変更時のスキャン条件)を、水平回転部15の水平回転速度を速くしたスキャン条件に変更する制御も可能である。
【0072】
例えば、水平方向において、(推定スキャン密度>>要求スキャン密度)である場合、水平方向におけるスキャンが過剰に細かく行われることを防ぐために、(推定スキャン密度<要求スキャン密度)とならない程度にスキャン時における水平回転部15の水平回転速度を速くする。これにより、水平方向における無駄なスキャンを減らし、スキャン時間の削減、データ量の削減、処理時間の向上を計る。
【0073】
例えば、水平方向において、(推定スキャン密度/要求スキャン密度)>3である場合に、(1≦推定スキャン密度/要求スキャン密度<1.5)程度となるように水平回転部15の水平回転速度を速くする。
【0074】
4.第4の実施形態
例えば、鉛直角方向における推定スキャン密度が要求スキャン密度よりも大きい場合、その時点(上記の判定時)におけるスキャン条件(例えば、初期設定時のスキャン条件や前回の変更時のスキャン条件)を、鉛直回転部18水平回転速度を速くしたスキャン条件に変更する制御も可能である。
【0075】
例えば、鉛直角方向において、(推定スキャン密度>>要求スキャン密度)である場合、鉛直角方向におけるスキャンが過剰に細かく行われることを防ぐために、(推定スキャン密度<要求スキャン密度)とならない程度にスキャン時における鉛直回転部18の鉛直回転速度を速くする。これにより、鉛直角方向における無駄なスキャンを減らし、スキャン時間の削減、データ量の削減、処理時間の向上を計る。
【0076】
例えば、鉛直角方向において、(推定スキャン密度/要求スキャン密度)>3である場合に、(1≦推定スキャン密度/要求スキャン密度<1.5)程度となるように鉛直回転部18の鉛直回転速度を速くする。
【0077】
同様の効果は、スキャン光の発光周波数を低くすることで得ることもできる。鉛直回転部18の鉛直回転速度とスキャン光の発光周波数の両方を調整し、(推定スキャン密度/要求スキャン密度の値)を調整することも可能である。
【0078】
5.第5の実施形態
レーザースキャンを行う機能を有する測量装置として、トータルステーションの機能を有さないレーザースキャン装置を採用することもできる。この場合に、スキャン対象面の3D情報を事前(ステップS101より前の段階)に行われる予備的なレーザースキャンにより得ても良い。この場合、初期設定値のスキャン条件でのレーザースキャンを行う。初期設定値のスキャン条件では、スキャン密度の要求値を満たしていない場合も有り得る。しかしながら、この予備的なレーザースキャンは、スキャン対象面の特定に利用される3Dデータを得るためのものであるので、スキャン密度の要求値を満たしていなくてもよい。なお、スキャン対象面の3Dデータを設計データや他の測量手段等から入手してもよいのは、第1の実施形態の場合と同じである。
【0079】
6.第6の実施形態
図2において、鉛直回転部18を備えず、トータルステーション部11のみを備えている構造の測量装置を利用することもできる。この構造は、通常のトータルステーションと同じである。
【0080】
このトータルステーションは、光学系17から出射される測位用のレーザー光を用い、水平回転部15の水平回転と光学筒16の鉛直回転(上下角の制御)により、対象面の上下左右方向における例えば格子状の点の測位を行うことで、レーザースキャンを行う。すなわち、対象のある範囲に対して、水平回転部15の水平回転角と光学筒16の上下角(仰角および/または俯角)を微調整しながら、格子状の点を順次測位する。例えば、20点m×20点の測位を行うことで、20点×20点のレーザースキャンデータが得られる。このレーザースキャンに本発明を適用することもできる。
【0081】
この場合、水平回転部15と光学筒16を少しずつ動かし、各点の測位が行われる。ここで、測量装置に対してスキャン対象面が正対しておらず傾いていても、スキャン対象面上で等間隔にスキャン点(計測点)が並ぶように、水平回転部15と光学筒16の動きを制御することで、スキャン対象面上でのスキャン点の並びを等間隔の格子状に配列させることができる。
【0082】
具体的には、以下のように処理を行う。この処理は制御コンピュータにより実行される。まず、測量装置100を原点とする座標系において、スキャン対象面を記述する面の方程式を求める。次に、初期設定条件(例えば、正対面上において、等間隔な格子状にスキャン点が分布するスキャン条件)を用いた場合における上記スキャン対象面とスキャン光の光軸の交点を求める。この交点の分布と等間隔の格子状の点の分布とを比較し、両者のズレを求める。このズレが解消されるように、水平回転部15と光学筒16の動きを制御しつつ、また所望の間隔となるように、1点1点の測定点の測位を行う。これにより、測量装置100に対して、スキャン対象面が傾いていても、スキャン点が等間隔の格子状のスキャン点が得られる。この方法は、スキャン対象面が曲面である場合にも適用できる。
【0083】
上記の処理は、レーザースキャンを利用した測量方法であって、前記レーザースキャンの対象となるスキャン対象面の前記レーザースキャンを行う装置に対する位置と向きのデータを取得し、予め定められたレーザースキャン条件による前記スキャン対象面に対するレーザースキャンを行った場合におけるレーザースキャン点の分布を求め、該分布と予め定められたレーザースキャン点の分布との比較に基づき、前記レーザースキャンの条件の調整を行う測量方法の一例である。
【0084】
7.第7の実施形態
スキャン対象面の指定を設計図面データや過去に得られた3Dデータ(以下、既知のデータ)上で行っても良い。この場合、スキャン対象の撮影画像や予備スキャンデータと、既知のデータとの関係を求めた上で、上記の既知のデータを利用したスキャン対象面の指定の受付が行われる。そして、指定されたスキャン対象面をスキャン対象の撮影画像や予備スキャンデータ上において特定し、図4のステップS102以下の処理が行われる。
【0085】
8.第8の実施形態
レーザースキャナ部12を用いたレーザースキャンでは、例えば測量装置からの距離が異なると、スキャン点の間隔に差が生じる。これは、測量装置に対して正対していないスキャン対象面や、正対していてもその正面とそこから離れた部分においても生じる。そこで、スキャン後にスキャン点が不足する領域において、トータルステーション部11を用いた補足測定を行いスキャン点の追加を行う。第6の実施形態で説明したように、トータルステーション部11を用いたレーザースキャンが可能である。この機能を利用して上記のスキャン点の追加を行う。
【0086】
9.その他
スキャン対象面は、平面に限定されず、曲面であってもよい。この場合、当該曲面における最も低スキャン密度となる部分において、要求スキャン密度が得られるように、スキャン条件の調整が行われる。
【0087】
スキャン対象面として、多面体の構造を対象として選択することもできる。この場合も最も低スキャン密度となる部分において、要求スキャン密度が得られるように、スキャン条件の調整が行われる。
【0088】
例示した測量装置100と異なる機構により、レーザースキャンを行う測量装置に本発明を適用することもできる。例えば、往復運動によりレーザースキャンを行う機構や電子的にスキャンを行う機構を採用した測量装置に本発明を適用することもできる。
【符号の説明】
【0089】
100…測量装置、11…トータルステーション部、12…レーザースキャナ部、13…三脚、14…ベース部、15…水平回転部、16…光学筒、17…光学系、18…鉛直回転部、19…光学系、500…橋梁、501…橋脚、510A…橋脚の側面。

図1
図2
図3
図4