(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135235
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】ハニカム構造体の製造装置及び製造方法
(51)【国際特許分類】
B28B 11/08 20060101AFI20240927BHJP
B01J 35/57 20240101ALI20240927BHJP
【FI】
B28B11/08
B01J35/04 301F
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023045816
(22)【出願日】2023-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 龍輝
(72)【発明者】
【氏名】野呂 貴志
(72)【発明者】
【氏名】安井 正好
(72)【発明者】
【氏名】野口 信愛
【テーマコード(参考)】
4G055
4G169
【Fターム(参考)】
4G055AA08
4G055AB03
4G055AC10
4G055BA63
4G169AA01
4G169AA08
4G169AA11
4G169CA03
4G169DA06
4G169EA26
4G169FA01
4G169FB67
4G169FB79
4G169FB80
(57)【要約】
【課題】スリットの形成精度を向上させることができるハニカム構造体の製造装置を提供する。
【解決手段】本発明によるハニカム構造体の製造装置6は、ハニカム構造体素体7を保持するための保持部61と、保持部61に保持されたハニカム構造体素体7の外周面7aを加工して、開口部及びスリットを形成するための加工工具62と、ハニカム構造体素体7の両側の端面における特定のセル部の位置を検出する検出部63と、を備え、加工工具62は、所定の直線状の経路に沿って移動可能に設けられており、保持部61は、検出部63によって検出された両側の端面における特定のセル部が加工工具62の経路上に位置するように、ハニカム構造体素体7の姿勢を変更できるように構成されている。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周壁と、前記外周壁の内側に配設され、一方の端面から他方の端面まで延びる流路を形成する複数のセルを区画形成する隔壁と、を有するハニカム構造部を備えたハニカム構造体素体から、ハニカム構造体を製造するためのハニカム構造体の製造装置であって、前記ハニカム構造体素体には、特定のセル部が設けられており、前記ハニカム構造体には、前記特定のセル部の位置において前記ハニカム構造体の外周面から径方向内方に延び、かつ、前記セルの延伸方向に延びる複数のスリットが設けられており、前記スリットは、前記特定のセル部を径方向外方に向けて開放する前記外周面の開口部を有しており、
前記ハニカム構造体の製造装置は、
前記ハニカム構造体素体を保持するための保持部と、
前記保持部に保持された前記ハニカム構造体素体の外周面を加工して、前記開口部及び前記スリットを形成するための加工工具と、
前記ハニカム構造体素体の両側の端面における前記特定のセル部の位置を検出する検出部と、
を備え、
前記加工工具は、所定の直線状の経路に沿って移動可能に設けられており、
前記保持部は、前記検出部によって検出された前記両側の端面における前記特定のセル部が前記加工工具の前記経路上に位置するように、前記ハニカム構造体素体の姿勢を変更できるように構成されている、
ハニカム構造体の製造装置。
【請求項2】
前記特定のセル部は、前記外周壁の内側において隣接する所定個の前記セル間の前記隔壁が欠損された複数の欠損部を含んでいる、
請求項1に記載のハニカム構造体の製造装置。
【請求項3】
前記保持部が前記ハニカム構造体素体を保持しているとき、前記セルの延伸方向を第1軸とし、前記第1軸に直交するとともに、前記ハニカム構造体素体の径方向に係る前記加工工具の変位方向を第2軸とし、前記第1軸及び第2軸に直交する方向を第3軸としたとき、
前記保持部は、前記第1軸周りに前記ハニカム構造体素体を回転させ、前記第2軸周りに前記ハニカム構造体素体を回転させ、前記第3軸に沿って前記ハニカム構造体素体を平行移動させることで、前記ハニカム構造体素体の姿勢を変更する、
請求項1又は2に記載のハニカム構造体の製造装置。
【請求項4】
前記検出部は、前記ハニカム構造体素体の前記一方の端面を撮像する第1カメラと、前記ハニカム構造体素体の前記他方の端面を撮像する第2カメラと、前記第1カメラ及び前記第2カメラによって撮像された画像を解析して前記特定のセル部の位置を検出する解析部とを含んでいる、
請求項1又は2に記載のハニカム構造体の製造装置。
【請求項5】
前記解析部は、前記第1カメラ及び前記第2カメラによって撮像された画像を解析して、前記一方の端面及び前記他方の端面において前記特定のセル部を塞ぐ前記外周壁の厚みか、又は前記外周壁及び前記外周壁上に設けられた電極層の厚みを測定でき、
前記ハニカム構造体の製造装置は、
前記解析部によって測定された前記厚みに所定値を加えて、前記ハニカム構造体素体の外周面から径方向内方への前記加工工具の進入深さを調整し、調整した前記進入深さで前記加工工具が前記ハニカム構造体素体の外周面から径方向内方に進入するように制御する制御部
をさらに備える、
請求項4に記載のハニカム構造体の製造装置。
【請求項6】
前記ハニカム構造体の製造装置は、
前記セルの延伸方向に並ぶ複数の位置で前記ハニカム構造体素体の外周面位置を特定する外周面位置特定部をさらに備え、
前記制御部は、前記複数の位置で特定された前記外周面位置を基準として前記ハニカム構造体素体と前記加工工具との相対的な変位の制御を行う、
請求項5に記載のハニカム構造体の製造装置。
【請求項7】
外周壁と、前記外周壁の内側に配設され、一方の端面から他方の端面まで延びる流路を形成する複数のセルを区画形成する隔壁と、を有するハニカム構造部を備えたハニカム構造体素体から、ハニカム構造体を製造するためのハニカム構造体の製造方法であって、前記ハニカム構造体素体には、特定のセル部が設けられており、前記ハニカム構造体には、前記特定のセル部の位置において前記ハニカム構造体の外周面から径方向内方に延び、かつ、前記セルの延伸方向に延びる複数のスリットが設けられており、前記スリットは、前記特定のセル部を径方向外方に向けて開放する前記外周面の開口部を有しており、
前記ハニカム構造体素体を保持する工程と、
保持された前記ハニカム構造体素体の両側の端面における前記特定のセル部の位置を検出する工程と、
保持された前記ハニカム構造体素体の外周面を加工工具により加工して、前記開口部及び前記スリットを形成する工程と、
を含み、
前記加工工具は、所定の直線状の経路に沿って移動可能に設けられており、
前記スリットを形成するとき、検出された前記両側の端面における前記特定のセル部が前記加工工具の前記経路上に位置するように、前記ハニカム構造体素体の姿勢を変更する、
ハニカム構造体の製造方法。
【請求項8】
前記特定のセル部は、前記外周壁の内側において隣接する所定個の前記セル間の前記隔壁が欠損された複数の欠損部を含んでいる、
請求項7に記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項9】
前記ハニカム構造体素体が保持されているとき、前記セルの延伸方向を第1軸とし、前記第1軸に直交するとともに、前記ハニカム構造体素体の径方向に係る前記加工工具の変位方向を第2軸とし、前記第1軸及び第2軸に直交する方向を第3軸としたとき、
前記第1軸周りに前記ハニカム構造体素体を回転させ、前記第2軸周りに前記ハニカム構造体素体を回転させ、前記第3軸に沿って前記ハニカム構造体素体を平行移動させることで、前記ハニカム構造体素体の姿勢を変更する、
請求項7又は8に記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項10】
前記ハニカム構造体素体の前記一方の端面を第1カメラによって撮像し、前記ハニカム構造体素体の前記他方の端面を第2カメラによって撮像し、前記第1カメラ及び前記第2カメラによって撮像された画像を解析して前記特定のセル部の位置を検出する、
請求項7又は8に記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項11】
前記第1カメラ及び前記第2カメラによって撮像された画像を解析して、前記一方の端面及び前記他方の端面において前記特定のセル部を塞ぐ前記外周壁の厚みか、又は前記外周壁及び前記外周壁上に設けられた電極層の厚みを測定する工程をさらに含み、
前記スリットを形成するとき、測定された前記厚みに所定値を加えて、前記ハニカム構造体素体の外周面から径方向内方への前記加工工具の進入深さを調整し、調整した前記進入深さで前記ハニカム構造体素体の外周面から径方向内方に前記加工工具を進入させる、
請求項10に記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項12】
前記セルの延伸方向に並ぶ複数の位置で前記ハニカム構造体素体の外周面位置を特定する工程をさらに含み、
前記スリットを形成するとき、前記複数の位置で特定された前記外周面位置を基準として前記ハニカム構造体素体と前記加工工具との相対的な変位が行われる、
請求項11に記載のハニカム構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハニカム構造体の製造装置及び製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、導電性セラミックスからなるハニカム構造体に電極を配設し、通電によりハニカム構造体自体を発熱させることで、ハニカム構造体に担持された触媒をエンジン(内燃機関)の始動前に活性温度まで昇温させて、エンジンが始動直後の冷えた状態の際に排出される排気ガスの浄化を狙う電気加熱触媒(EHC)が知られている。
【0003】
下記の特許文献1に記載されているように、ハニカム構造体は、外周壁と外周壁の内側に配設された隔壁とを有する柱状のハニカム構造部と、電極を取り付けるための一対の電極部とを有している。電極及び電極部を通してハニカム構造部に電圧が印加されることで、ハニカム構造部が発熱される。電圧を印加したときのハニカム構造部の温度分布の偏りを抑制する等の目的のために、ハニカム構造部の外周壁から径方向内方に延び、かつ、ハニカム構造部のセルの延伸方向に延びる複数のスリットがハニカム構造部に形成されている。スリットは、リューター等の加工工具を用いて形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のようなハニカム構造体を効率的に製造するため、複数の欠損部が設けられたハニカム構造体素体を保持しておき、所定の直線状の経路に沿って移動可能に設けられた加工工具により欠損部の位置における外周壁を除去することが考えられる。欠損部は、外周壁の内側において隣接する所定個のセル間の隔壁が欠損された部分である。加工工具による外周壁の除去時に、ハニカム構造体素体の保持にずれがあると、スリットの形成精度が低下してしまう。
【0006】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、その目的の一つは、スリットの形成精度を向上させることができるハニカム構造体の製造装置及び製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
項目1.本発明は、一実施形態において、外周壁と、外周壁の内側に配設され、一方の端面から他方の端面まで延びる流路を形成する複数のセルを区画形成する隔壁と、を有するハニカム構造部を備えたハニカム構造体素体から、ハニカム構造体を製造するためのハニカム構造体の製造装置であって、ハニカム構造体素体には、特定のセル部が設けられており、ハニカム構造体には、特定のセル部の位置においてハニカム構造体の外周面から径方向内方に延び、かつ、セルの延伸方向に延びる複数のスリットが設けられており、スリットは、特定のセル部を径方向外方に向けて開放する外周面の開口部を有しており、ハニカム構造体の製造装置は、ハニカム構造体素体を保持するための保持部と、保持部に保持されたハニカム構造体素体の外周面を加工して、開口部及びスリットを形成するための加工工具と、ハニカム構造体素体の両側の端面における特定のセル部の位置を検出する検出部と、を備え、加工工具は、所定の直線状の経路に沿って移動可能に設けられており、保持部は、検出部によって検出された両側の端面における特定のセル部が加工工具の経路上に位置するように、ハニカム構造体素体の姿勢を変更できるように構成されている、ハニカム構造体の製造装置に関する。
【0008】
項目2.本発明は、特定のセル部は、外周壁の内側において隣接する所定個のセル間の隔壁が欠損された複数の欠損部を含んでいる、項目1に記載のハニカム構造体の製造装置に関していてよい。
【0009】
項目3.本発明は、保持部がハニカム構造体素体を保持しているとき、セルの延伸方向を第1軸とし、第1軸に直交するとともに、ハニカム構造体素体の径方向に係る加工工具の変位方向を第2軸とし、第1軸及び第2軸に直交する方向を第3軸としたとき、保持部は、第1軸周りにハニカム構造体素体を回転させ、第2軸周りにハニカム構造体素体を回転させ、第3軸に沿ってハニカム構造体素体を平行移動させることで、ハニカム構造体素体の姿勢を変更する、項目1又は2に記載のハニカム構造体の製造装置に関していてよい。
【0010】
項目4.本発明は、検出部は、ハニカム構造体素体の一方の端面を撮像する第1カメラと、ハニカム構造体素体の他方の端面を撮像する第2カメラと、第1カメラ及び第2カメラによって撮像された画像を解析して特定のセル部の位置を検出する解析部とを含んでいる、項目1から3までのいずれか1項に記載のハニカム構造体の製造装置に関していてよい。
【0011】
項目5.本発明は、解析部は、第1カメラ及び第2カメラによって撮像された画像を解析して、一方の端面及び他方の端面において特定のセル部を塞ぐ外周壁の厚みか、又は外周壁及び外周壁上に設けられた電極層の厚みを測定でき、ハニカム構造体の製造装置は、解析部によって測定された厚みに所定値を加えて、ハニカム構造体素体の外周面から径方向内方への加工工具の進入深さを調整し、調整した進入深さで加工工具がハニカム構造体素体の外周面から径方向内方に進入するように制御する制御部をさらに備える、項目4に記載のハニカム構造体の製造装置に関していてよい。
【0012】
項目6.本発明は、ハニカム構造体の製造装置は、セルの延伸方向に並ぶ複数の位置でハニカム構造体素体の外周面位置を特定する外周面位置特定部をさらに備え、制御部は、複数の位置で特定された外周面位置を基準としてハニカム構造体素体と加工工具との相対的な変位の制御を行う、項目5に記載のハニカム構造体の製造装置に関していてよい。
【0013】
項目7.本発明は、一実施形態において、外周壁と、外周壁の内側に配設され、一方の端面から他方の端面まで延びる流路を形成する複数のセルを区画形成する隔壁と、を有するハニカム構造部を備えたハニカム構造体素体から、ハニカム構造体を製造するためのハニカム構造体の製造方法であって、ハニカム構造体素体には、特定のセル部が設けられており、ハニカム構造体には、特定のセル部の位置においてハニカム構造体の外周面から径方向内方に延び、かつ、セルの延伸方向に延びる複数のスリットが設けられており、スリットは、特定のセル部を径方向外方に向けて開放する外周面の開口部を有しており、ハニカム構造体素体を保持する工程と、保持されたハニカム構造体素体の両側の端面における特定のセル部の位置を検出する工程と、保持されたハニカム構造体素体の外周面を加工工具により加工して、開口部及びスリットを形成する工程と、を含み、加工工具は、所定の直線状の経路に沿って移動可能に設けられており、スリットを形成するとき、検出された両側の端面における特定のセル部が加工工具の経路上に位置するように、ハニカム構造体素体の姿勢を変更する、ハニカム構造体の製造方法に関する。
【0014】
項目8.本発明は、特定のセル部は、外周壁の内側において隣接する所定個のセル間の隔壁が欠損された複数の欠損部を含んでいる、項目7に記載のハニカム構造体の製造方法に関していてよい。
【0015】
項目9.本発明は、ハニカム構造体素体が保持されているとき、セルの延伸方向を第1軸とし、第1軸に直交するとともに、ハニカム構造体素体の径方向に係る加工工具の変位方向を第2軸とし、第1軸及び第2軸に直交する方向を第3軸としたとき、第1軸周りにハニカム構造体素体を回転させ、第2軸周りにハニカム構造体素体を回転させ、第3軸に沿ってハニカム構造体素体を平行移動させることで、ハニカム構造体素体の姿勢を変更する、項目7又は8に記載のハニカム構造体の製造方法に関していてよい。
【0016】
項目10.本発明は、ハニカム構造体素体の一方の端面を第1カメラによって撮像し、ハニカム構造体素体の他方の端面を第2カメラによって撮像し、第1カメラ及び第2カメラによって撮像された画像を解析して特定のセル部の位置を検出する、項目7から9までのいずれか1項に記載のハニカム構造体の製造方法に関していてよい。
【0017】
項目11.本発明は、第1カメラ及び第2カメラによって撮像された画像を解析して、一方の端面及び他方の端面において特定のセル部を塞ぐ外周壁の厚みか、又は外周壁及び外周壁上に設けられた電極層の厚みを測定する工程をさらに含み、スリットを形成するとき、測定された厚みに所定値を加えて、ハニカム構造体素体の外周面から径方向内方への加工工具の進入深さを調整し、調整した進入深さでハニカム構造体素体の外周面から径方向内方に加工工具を進入させる、項目10に記載のハニカム構造体の製造方法に関していてよい。
【0018】
項目12.本発明は、セルの延伸方向に並ぶ複数の位置でハニカム構造体素体の外周面位置を特定する工程をさらに含み、スリットを形成するとき、複数の位置で特定された外周面位置を基準としてハニカム構造体素体と加工工具との相対的な変位が行われる、項目11に記載のハニカム構造体の製造方法に関していてよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明のハニカム構造体の製造装置の一実施形態によれば、保持部は、検出部によって検出された両側の端面における特定のセル部が加工工具の経路上に位置するように、ハニカム構造体素体の姿勢を変更できるように構成されているので、スリットの形成精度を向上させることができる。また、本発明のハニカム構造体の製造方法の一実施形態によれば、検出された両側の端面における特定のセル部が加工工具の経路上に位置するように、ハニカム構造体素体の姿勢を変更するので、スリットの形成精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施の形態によるハニカム構造体の製造装置により製造されるハニカム構造体を示す斜視図である。
【
図2】
図1の外周壁が露出されている位置でのスリット及びその周辺の断面図である。
【
図3】
図1の電極層が設けられている位置でのスリット及びその周辺の断面図である。
【
図4】
図2のスリットの変形例を示す説明図である。
【
図5】本発明の実施の形態によるハニカム構造体の製造装置を示す説明図である。
【
図6】
図5のハニカム構造体素体及びその周辺を示す斜視図である。
【
図7】特定のセル部としての1つの最外周セルの検出の一例を示す説明図である。
【
図8】
図6のハニカム構造体素体の姿勢変更の一例を示す説明図である。
【
図9】本発明の実施の形態によるハニカム構造体の製造方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。本発明は各実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、各実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施の形態に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態の構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【0022】
図1は、本発明の実施の形態によるハニカム構造体1の製造装置により製造されるハニカム構造体1を示す斜視図である。
図1に示すハニカム構造体1は、ハニカム構造部2と、複数のスリット3と、充填材4と、一対の電極層5と、を備えている。
【0023】
ハニカム構造部2は、セラミックス製の柱状の部材であり、外周壁20と、外周壁20の内側に配設され、一方の端面から他方の端面まで延びる流路を形成する複数のセル21aを区画形成する隔壁21とを有している。
【0024】
ハニカム構造部2の外形は、柱状である限り特に限定されず、例えば、端面が円形の柱状(円柱形状)、端面がオーバル形状の柱状、端面が多角形(四角形、五角形、六角形、七角形、八角形等)の柱状等の他の形状とすることができる。柱状とは、セル21aの延伸方向(ハニカム構造部2の軸方向)に厚みを有する立体形状と理解できる。ハニカム構造部2の軸方向長さとハニカム構造部2の端面の直径又は幅との比(アスペクト比)は任意である。柱状には、ハニカム構造部2の軸方向長さが端面の直径又は幅よりも短い形状(偏平形状)も含まれていてよい。
【0025】
ハニカム構造部2の大きさは、耐熱性を高める(外周壁20の周方向に入るクラックを抑制する)という理由により、端面の面積が2000~20000mm2であることが好ましく、5000~15000mm2であることが更に好ましい。
【0026】
セル21aの延伸方向に垂直な断面におけるセル21aの形状に制限はないが、四角形、六角形、八角形、又はこれらの組み合わせであることが好ましい。これ等のなかでも、四角形及び六角形が好ましい。セル形状をこのようにすることにより、ハニカム構造部2に排気ガスを流したときの圧力損失が小さくなり、触媒の浄化性能が優れたものとなる。
【0027】
セル21aを区画形成する隔壁21の厚みは、0.1~0.3mmであることが好ましく、0.1~0.2mmであることがより好ましい。隔壁21の厚みが0.1mm以上であることで、ハニカム構造部2の強度が低下するのを抑制可能である。隔壁21の厚みが0.3mm以下であることで、ハニカム構造部2を触媒担体として用いて、触媒を担持した場合に、排気ガスを流したときの圧力損失が大きくなるのを抑制できる。本発明において、隔壁21の厚みは、セル21aの延伸方向に垂直な断面において、隣接するセル21aの重心同士を結ぶ線分のうち、隔壁21を通過する部分の長さとして定義される。
【0028】
ハニカム構造部2は、セル21aの延伸方向に垂直な断面において、セル密度が40~150セル/cm2であることが好ましく、70~100セル/cm2であることが更に好ましい。セル密度をこのような範囲にすることにより、排気ガスを流したときの圧力損失を小さくした状態で、触媒の浄化性能を高くすることができる。セル密度が40セル/cm2以上であると、触媒担持面積が十分に確保される。セル密度が150セル/cm2以下であるとハニカム構造部2を触媒担体として用いて、触媒を担持した場合に、排気ガスを流したときの圧力損失が大きくなりすぎることが抑制される。セル密度は、外周壁20部分を除くハニカム構造部2の一つの端面部分の面積でセル数を除して得られる値である。
【0029】
ハニカム構造部2の外周壁20を設けることは、ハニカム構造部2の構造強度を確保し、また、セル21aを流れる流体が外周壁20から漏洩するのを抑制する観点で有用である。具体的には、外周壁20の厚みは好ましくは0.05mm以上であり、より好ましくは0.10mm以上、更により好ましくは0.15mm以上である。但し、外周壁20を厚くしすぎると高強度になりすぎてしまい、隔壁21との強度バランスが崩れて耐熱衝撃性が低下することから、外周壁20の厚みは好ましくは1.0mm以下であり、より好ましくは0.7mm以下であり、更により好ましくは0.5mm以下である。ここで、外周壁20の厚みは、厚みを測定しようとする外周壁20の箇所をセル21aの延伸方向に垂直な断面で観察したときに、当該測定箇所における外周壁20の接線に対する法線方向の厚みとして定義される。
【0030】
ハニカム構造部2は、セラミックス製であり、導電性を有することが好ましい。ハニカム構造部2は、通電してジュール熱により発熱可能である限り、体積抵抗率については特に制限はないが、体積抵抗率は0.1~200Ωcmであることが好ましく、1~200Ωcmがより好ましい。本発明において、ハニカム構造部2の体積抵抗率は、四端子法により25℃で測定した値とする。
【0031】
ハニカム構造部2の材質としては、限定的ではないが、アルミナ、ムライト、ジルコニア及びコージェライト等の酸化物系セラミックス、炭化珪素、窒化珪素及び窒化アルミ等の非酸化物系セラミックスからなる群から選択することができる。また、珪素-炭化珪素複合材や炭化珪素/グラファイト複合材等を用いることもできる。これらの中でも、耐熱性と導電性の両立の観点から、ハニカム構造部2の材質は、珪素-炭化珪素複合材又は炭化珪素を主成分とするセラミックスを含有していることが好ましい。ハニカム構造部2の材質が、珪素-炭化珪素複合材を主成分とするものであるというときは、ハニカム構造部2が、珪素-炭化珪素複合材(合計質量)を、全体の90質量%以上含有していることを意味する。ここで、珪素-炭化珪素複合材は、骨材としての炭化珪素粒子、及び炭化珪素粒子を結合させる結合材としての珪素を含有するものであり、複数の炭化珪素粒子が、炭化珪素粒子間に細孔を形成するようにして、珪素によって結合されていることが好ましい。ハニカム構造部2の材質が、炭化珪素を主成分とするものであるというときは、ハニカム構造部2が、炭化珪素(合計質量)を、全体の90質量%以上含有していることを意味する。
【0032】
ハニカム構造部2が珪素-炭化珪素複合材を含んでいる場合、ハニカム構造部2に含有される「骨材としての炭化珪素粒子の質量」と、ハニカム構造部2に含有される「結合材としての珪素の質量」との合計に対する、ハニカム構造部2に含有される「結合材としての珪素の質量」の比率が、10~40質量%であることが好ましく、15~35質量%であることが更に好ましい。
【0033】
隔壁21は多孔質としてもよい。多孔質とする場合、隔壁21の気孔率は、35~60%であることが好ましく、35~45%であることが更に好ましい。気孔率は、水銀ポロシメータにより測定した値である。
【0034】
ハニカム構造部2の隔壁21の平均細孔径は、2~15μmであることが好ましく、4~8μmであることが更に好ましい。平均細孔径は、水銀ポロシメータにより測定した値である。
【0035】
複数のスリット3は、ハニカム構造体1の外周面1aから径方向内方に延び、かつ、セル21aの延伸方向に延びている。スリット3は、周方向に互いに離間して配置されている。スリット3は、ハニカム構造部2の一方の端面から他方の端面までセル21aの延伸方向に延びている。周方向におけるスリット3の本数としては、2本以上12本以下であってもよい。スリット3の深さは、セル21aの延伸方向に垂直な断面において、ハニカム構造部2の半径の60%以下であることが好ましく、1%以上25%以下がより好ましい。スリット3の幅は、0.4mm以上2.0mm以下であってもよい。スリット3の深さは、外周壁20の外面20aからスリット3の先端までの距離と理解してよい。
【0036】
なお、外周壁20の外面20aがハニカム構造体1の外周面1aの少なくとも一部を構成している。より具体的には、外周壁20の外面20aが露出されている位置、すなわち外周壁20の外面20aが電極層5によって覆われていない位置では、外周壁20の外面20aがハニカム構造体1の外周面1aを構成している。一方、一対の電極層5が設けられている位置では、一対の電極層5の外面5aがハニカム構造体1の外周面1aを構成している。別の観点では、ハニカム構造体1の外観を観察したとき、複数のスリット3が表れている面をハニカム構造体1の外周面1aとして扱ってよい。ハニカム構造体1の外周面1aには、セル21aが開口するハニカム構造部2の端面は含まれないと理解してよい。
【0037】
充填材4は、スリット3に充填されている。充填材4は、スリット3の空間の少なくとも一部に充填されていることが好ましい。充填材4は、スリット3の空間の50%以上に充填されていることが好ましく、スリット3の空間の全部に充填されていることがより好ましい。
図1に示す態様では、充填材4は、スリット3の空間の全部に充填されており、ハニカム構造部2の両方の端面と一体の平面を形成し、ハニカム構造体1の外周面1aと一体の曲面を形成している。しかしながら、充填材4は、ハニカム構造部2の端面よりも軸方向の内側の位置まで充填されていてもよく、ハニカム構造体1の外周面1aよりも径方向又は幅方向の内側の位置まで充填されていてもよい。
【0038】
充填材4は、ハニカム構造部2の主成分が炭化珪素、又は珪素-炭化珪素複合材である場合、炭化珪素を20質量%以上含有することが好ましく、20~70質量%含有することが更に好ましい。これにより、充填材4の熱膨張係数を、ハニカム構造部2の熱膨張係数に近い値にすることができ、ハニカム構造部2の耐熱衝撃性を向上させることができる。充填材4は、シリカ、アルミナ等を30質量%以上含有するものであってもよい。
【0039】
一対の電極層5は、ハニカム構造部2の中心軸を挟んで、外周壁20の外面20a上において、セル21aの延伸方向に帯状に延びるように設けられている。図示はしないが、電極層5上には電極端子を設けることができる。これら電極端子及び電極層5を通してハニカム構造部2に電圧を印加して、ハニカム構造部2を発熱させることができる。
【0040】
一対の電極層5のそれぞれは、スリット3によって分離された第1部分電極層51及び第2部分電極層52を有している。すなわち、電極層5が設けられている位置では、スリット3は、電極層5から径方向内方に延び、電極層5の外面5aにおいて開口している。第1部分電極層51及び第2部分電極層52間においてもスリット3に充填材4が充填されていてよい。
【0041】
電極層5に電気を流しやすくする観点から、電極層5の体積抵抗率は、ハニカム構造部2の電気抵抗率の1/200以上、1/10以下であることが好ましい。
【0042】
電極層5の材質は、導電性セラミックス、金属、又は金属及び導電性セラミックスとの複合材(サーメット)を使用することができる。金属としては、例えばCr、Fe、Co、Ni、Si又はTiの単体金属又はこれらの金属よりなる群から選択される少なくとも一種の金属を含有する合金が挙げられる。導電性セラミックスとしては、限定的ではないが、炭化珪素(SiC)が挙げられ、珪化タンタル(TaSi2)及び珪化クロム(CrSi2)等の金属珪化物等の金属化合物が挙げられる。
【0043】
電極層5を有するハニカム構造体1の製造方法としては、まず、ハニカム乾燥体の側面に、セラミックス原料を含有する電極層形成原料を塗布し、乾燥させて、ハニカム乾燥体の中心軸を挟んで、外周壁20の外面20a上において、セル21aの延伸方向に帯状に延びるように一対の未焼成電極層を形成して、未焼成電極層付きハニカム乾燥体を作製する。次に、未焼成電極層付きハニカム乾燥体を焼成して一対の電極層5を有するハニカム焼成体を作製する。これにより、電極層5を有するハニカム構造体1が得られる。なお、一対の電極層5は必須の構成要素ではなく、ハニカム構造体1は一対の電極層5を備えていなくてもよい。
【0044】
次に、
図2は、
図1の外周壁20が露出されている位置でのスリット3及びその周辺の断面図である。
図2では、充填材4が充填される前の状態のスリット3を示している。
図2に示すように、スリット3は、欠損部30と、欠損部30に連通された外周壁溝部31とを有している。
【0045】
欠損部30は、外周壁20の内側において隣接する所定個のセル21a間の隔壁21が欠損された部分である。図中では、欠損された隔壁21を二点鎖線で示している。欠損部30は、外周壁20に隣接する最外周セル21a0と、ハニカム構造体1の径方向に関して最外周セル21a0の内側に位置する1つ又は複数の内側セル21a1とを有していてよい。図示の態様では、欠損部30は、隣接する3つのセル21a間の2つの隔壁21が欠損されることで形成されており、1つの最外周セル21a0と、2つの内側セル21a1とを有している。
【0046】
外周壁溝部31は、外周壁20を貫通している。すなわち、外周壁溝部31は、外周壁20の外面20aと内面20bとの間に設けられている。上述のように外周壁20が露出されている位置では、外周壁20の外面20aがハニカム構造体1の外周面1aを構成しており、外周壁溝部31又はスリット3は、欠損部30を径方向外方に向けて開放する外周面1aの開口部1bを有している。
【0047】
図2ではセル21aの延伸方向に直交する面において欠損部30及び外周壁溝部31を示している。これら欠損部30及び外周壁溝部31は、すなわちスリット3は、
図1で示したようにセル21aの延伸方向(
図2の紙面に直交する方向)に延在されている。
【0048】
欠損部30は、一部の隔壁21を欠損させた状態で製造されたハニカム構造体素体7(
図6及び
図8参照)を製造することによって形成できる。一部の隔壁21を欠損させた状態のハニカム構造体素体7を製造する方法としては、口金の一部を閉塞させることで隔壁21の一部を欠損させる方法がある。外周壁溝部31は、加工工具62を用いた加工によって形成することができる。加工工具62は、例えば円盤状砥石又はリューター等の切削工具であり得る。加工工具62は、ハニカム構造体素体7の外周壁20から径方向内方に向けてハニカム構造体素体7の内部に進入される。また、加工工具62は、ハニカム構造体素体7の内部に進入された状態でセル21aの延伸方向に移動される。
【0049】
次に、
図3は、
図1の電極層5が設けられている位置でのスリット3及びその周辺の断面図である。
図3では、充填材4が充填される前の状態のスリット3を示している。
図3に示すように、電極層5が設けられている位置では、スリット3は、外周壁溝部31に連通される電極層5に形成された電極層溝部32をさらに有している。
【0050】
電極層溝部32は、電極層5を貫通している。すなわち、電極層溝部32は、電極層5の外面5aと内面5bとの間に設けられている。上述のように電極層5が設けられている位置では、電極層5の外面5aがハニカム構造体1の外周面1aを構成しており、電極層溝部32又はスリット3は欠損部30を径方向外方に向けて開放する外周面1aの開口部1bを有している。
【0051】
電極層溝部32は、外周壁溝部31と同様に、加工工具62を用いた加工によって形成することができる。電極層5が設けられている位置では、加工工具62は、電極層5から径方向内方に向けてハニカム構造体素体7の内部に進入される。また、加工工具62は、ハニカム構造体素体7の内部に進入された状態でセル21aの延伸方向に移動される。加工工具62による加工によって、外周壁20及び電極層5を貫通する外周壁溝部31及び電極層溝部32を形成することができる。
【0052】
次に、
図4は、
図2のスリット3の変形例を示す説明図である。上述の
図2に示すスリット3は、外周壁20の内側において隣接する所定個のセル21a間の隔壁21が欠損された欠損部30と、欠損部30に連通された外周壁溝部31とを有していた。しかしながら、ハニカム構造部2の周方向位置によっては、スリット3は、1つの最外周セル21a0と、その1つの最外周セル21a0に連通された外周壁溝部31とを有していてよい。このようなスリット3は、隔壁21がハニカム構造部2の径方向に延びる位置に設けられることがある。なお、電極層5が設けられている位置においては、スリット3は、外周壁溝部31に連通される電極層5に形成された電極層溝部32をさらに有していてよい。
【0053】
スリット3に含まれる1つの最外周セル21a0は、通常セル又は不完全セルであってよい。
図4に示す態様では、スリット3に含まれる1つの最外周セル21a0は不完全セルである。通常セルは、例えば六角形等の所定形状を有するセル21aである。大多数のセル21aは通常セルである。不完全セルは、通常セルに対して不完全な形状を有するセル21aである。不完全セルは、外周壁20によって通常セルの一部又は大部分が削られたかのような形状を有している。不完全セルは、外周壁20に隣接する最外周位置に形成されている。
【0054】
図4に示すように、複数の不完全セルがハニカム構造部2の周方向に並んで形成されている。ハニカム構造部2の周方向に互いに隣接する2つの不完全セルは互いに異なる形状を有している。スリット3に含まれる1つの最外周セル21a0は、所定の領域内においてハニカム構造部2の周方向に連続的に並ぶ複数の不完全セルのうち、最も断面積が大きな不完全セルであってよい。また、スリット3に含まれる1つの最外周セル21a0は、所定の領域内においてハニカム構造部2の周方向に連続的に並ぶ複数の不完全セルのうち、ハニカム構造部2の周方向に関して中央に位置する不完全セルであってよい。
図4では、所定の領域内において9つの不完全セルがハニカム構造部2の周方向に連続的に並んでおり、ハニカム構造部2の周方向に関して中央に位置する5番目の不完全セルが、スリット3に含まれる1つの最外周セル21a0とされている。
【0055】
次に、
図5は本発明の実施の形態によるハニカム構造体1の製造装置6を示す説明図であり、
図6は
図5のハニカム構造体素体7及びその周辺を示す斜視図であり、
図7は特定のセル部70としての1つの最外周セル21a0の検出の一例を示す説明図であり、
図8は
図6のハニカム構造体素体7の姿勢変更の一例を示す説明図である。
【0056】
図5に示すハニカム構造体1の製造装置6は、ハニカム構造体素体7からハニカム構造体1(
図1参照)を製造するための装置である。
【0057】
図6に示すように、ハニカム構造体素体7は、外周壁20と、外周壁20の内側に配設され、一方の端面から他方の端面まで延びる流路を形成する複数のセル21aを区画形成する隔壁21と、を有するハニカム構造部2を備えている。ハニカム構造体素体7は、電極層5をさらに備えていてよい。ハニカム構造体素体7には、特定のセル部70が設けられている。特定のセル部70は、スリット3を設けるべき1つ又は複数のセル21aである。特定のセル部70は、外周壁20の内側において隣接する所定個のセル21a間の隔壁21が欠損された複数の欠損部30を含んでいてよい。欠損部30は、ハニカム構造体素体7の周方向に互いに離間されていてよい。また、特定のセル部70は、完全又は不完全な形状を有する1つの最外周セル21a0を含んでいてよい。しかしながら、ハニカム構造体素体7は、ハニカム構造体1とは異なり、スリット3及び充填材4を有していない。ハニカム構造体素体7には、
図2~
図4を用いて説明した外周壁溝部31及び電極層溝部32並びに開口部1bが設けられておらず、ハニカム構造体素体7の欠損部30及び1つの最外周セル21a0は、ハニカム構造体素体7の径方向に関して外周壁20(又は外周壁20及び電極層5)によって閉じられている。
図6の左上には、外周壁20及び電極層5によって閉じられた欠損部30を示している。
【0058】
図5に示すように、ハニカム構造体1の製造装置6は、載置台60、保持部61、加工工具62、検出部63、制御部64及び外周面位置特定部65を備えている。
【0059】
載置台60には、ハニカム構造体素体7が載置され得る。
図6に示すように、載置台60の上部には、上方に向かって開口するとともに底部に向かうにつれて幅が狭まる長手状の設置溝60aが設けられていてよい。ハニカム構造体素体7は、その軸方向が設置溝60aの長手方向に沿うとともに、その外周面7aが設置溝60aの内壁に接するように載置台60に載置され得る。載置台60には、ハニカム構造体素体7の軸方向が水平方向に延びるようにハニカム構造体素体7が載置され得る。載置台60は、上下に移動可能に設けられていてよい。載置台60は、保持部61によって保持されたハニカム構造体素体7から離れるように降下できる。また、載置台60は、加工されたハニカム構造体素体7を受けるように上昇できる。
【0060】
保持部61は、ハニカム構造体素体7を保持するためのものである。加工工具62は、保持部61に保持されたハニカム構造体素体7の外周面7aを加工して、開口部1b(並びに外周壁溝部31及び電極層溝部32)及びスリット3を形成するためのものである。検出部63は、ハニカム構造体素体7の両側の端面における特定のセル部70の位置を検出するためのものである。検出部63は、特定のセル部70として欠損部30及び/又は1つの最外周セル21a0を検出できる。加工工具62は、所定の直線状の経路62Pに沿って移動可能に設けられている。保持部61は、検出部63によって検出された両側の端面における特定のセル部70が加工工具62の経路62P上に位置するように、ハニカム構造体素体7の姿勢を変更できるように構成されている。このように保持部61がハニカム構造体素体7の姿勢を変更することで、スリット3の形成精度を向上させることができる。
【0061】
保持部61は、ハニカム構造体素体7の軸方向に係る両側からハニカム構造体素体7を挟持できる。保持部61は、ハニカム構造体素体7の両側の端面に押し当てられてよい。
【0062】
保持部61は、第1保持体611、第2保持体612及び基台613を有していてよい。第1保持体611及び第2保持体612は、基台613に支持されている。第1保持体611及び第2保持体612は互いに近づく方向に進退可能に設けられている。図示の態様では、第1保持体611が、第2保持体612に近づく方向及び第2保持体612から離れる方向に進退可能に設けられている。第2保持体612は、第1保持体611に対して固定的に設けられている。第1保持体611及び第2保持体612は、その間に載置台60が位置するように離間して配置されている。第1保持体611が第2保持体612に近づく方向に変位されることで、第1保持体611及び第2保持体612によってハニカム構造体素体7が挟持される。
【0063】
第1保持体611及び第2保持体612の先端部は、ハニカム構造体素体7の端面に押し当て可能に設けられている。第1保持体611及び第2保持体612の先端部は、ハニカム構造体素体7の径方向に関して特定のセル部70の内側においてハニカム構造体素体7の端面に押し当て可能に設けられていてよい。特に、第1保持体611及び第2保持体612の先端部は、ハニカム構造体素体7の径方向に関して欠損部30の内側においてハニカム構造体素体7の端面に押し当て可能に設けられていてよい。換言すると、第1保持体611及び第2保持体612の先端部は、特定のセル部70、特に欠損部30と重ならないようにハニカム構造体素体7の端面に押し当て可能に設けられていてよい。第1保持体611及び第2保持体612は、第1保持体611及び第2保持体612の中心軸とハニカム構造体素体7の中心軸とが同軸となるようにハニカム構造体素体7を挟持できる。換言すると、載置台60は、これらの中心軸が同軸となる位置にハニカム構造体素体7を位置させることができる。
【0064】
保持部61に保持されたハニカム構造体素体7と加工工具62とは相対的に変位可能に設けられていてよい。すなわち、保持部61に保持されたハニカム構造体素体7と加工工具62との一方が他方に対して変位可能に設けられていてもよいし、それらの両方が変位可能に設けられていてもよい。図示の態様では、保持部61は位置を固定するようにハニカム構造体素体7を保持でき、加工工具62が変位可能に設けられている。
【0065】
加工工具62は、回転駆動可能な円盤状砥石によって構成されており、保持部61に保持されたハニカム構造体素体7の上方に配置されている。加工工具62は、保持部61に保持されたハニカム構造体素体7の径方向、及び保持部61に保持されたハニカム構造体素体7のセル21aの延伸方向に移動可能に設けられている。ハニカム構造体素体7の径方向の移動は、上下方向の移動と理解してよい。加工工具62の直線状の経路62Pは、セル21aの延伸方向に沿う加工工具62の移動経路であってよい。
【0066】
加工工具62が回転駆動された状態で、加工工具62が下げられるとともにセル21aの延伸方向に移動されることで、ハニカム構造体素体7に1つの開口部1b、すなわち1つのスリット3を形成できる。1つのスリット3を形成した後、ハニカム構造体素体7の向き及び/又は加工工具62の位置を調整することで、他のスリット3を同様に形成できる。
【0067】
保持部61及び加工工具62の動作は制御部64によって制御されてよい。制御部64は、例えばコンピューター又は専用回路等のハードウェアによって構成されることができる。
【0068】
ハニカム構造体素体7の姿勢の調整には、ハニカム構造体素体7の向きの調整と、ハニカム構造体素体7の位置の調整とが含まれていてよい。
【0069】
図6に示すように、保持部61がハニカム構造体素体7を保持しているとき、セル21aの延伸方向を第1軸A1とし、第1軸A1に直交するとともに、ハニカム構造体素体7の径方向に係る加工工具62の変位方向(上下方向)を第2軸A2とし、第1軸A1及び第2軸A2に直交する方向を第3軸A3とする。このとき、保持部61は、第1軸A1周りにハニカム構造体素体7を回転させ、第2軸A2周りにハニカム構造体素体7を回転させ、第3軸A3に沿ってハニカム構造体素体7を平行移動させることで、ハニカム構造体素体7の姿勢を変更してよい。
【0070】
第1軸A1周りにハニカム構造体素体7を回転させることで、ハニカム構造体素体7の周方向に関する特定のセル部70の位置を調節できる。第2軸A2周りにハニカム構造体素体7を回転させることで、特定のセル部70の延在方向と加工工具62の経路62Pとの間の角度ずれを調節できる。第3軸A3に沿ってハニカム構造体素体7を平行移動させることで、特定のセル部70の延在方向と加工工具62の経路62Pと位置ずれを調節できる。
【0071】
これらを実現するために、第1保持体611及び第2保持体612は、第1軸A1(水平軸)周りに自転可能に設けられていてよい。また、第1保持体611及び第2保持体612は、第2軸A2周りに移動可能に基台613に支持されていてよい。また、第1保持体611及び第2保持体612は、第3軸A3に沿って移動可能に基台613に支持されていてよい。
【0072】
検出部63は、ハニカム構造体素体7の一方の端面を撮像する第1カメラ631と、ハニカム構造体素体7の他方の端面を撮像する第2カメラ632と、第1カメラ631及び第2カメラ632によって撮像された画像を解析して特定のセル部70の位置を検出する解析部633とを含んでいてよい。解析部633は、例えばコンピューター又は専用回路等のハードウェアによって構成されることができる。解析部633は、制御部64を構成するハードウェアが兼ねていてもよい。このように画像解析により、両側の端面における特定のセル部70の位置を特定できる。
【0073】
第1カメラ631及び第2カメラ632の撮像範囲は、ハニカム構造体素体7の端面全体であってもよいが、端面全体よりも狭い一部領域であってもよい。一部領域は、端面における加工工具62の経路62Pの位置を含んでいてよい。撮像範囲が一部領域であるとき、特定のセル部70のおおよその位置を制御部64に入力し、一部領域に特定のセル部70が含まれるように第1軸A1周りにハニカム構造体素体7を回転させてよい。
【0074】
解析部633は、撮像された画像における外周壁20及び隔壁21等の実部とセル21a等の空間部との輝度差から特定のセル部70の位置を検出できる。撮像された画像において、実部は、空間部と比較して高輝度であり得る。
【0075】
撮像された画像において、欠損部30は、外周壁20の内側で他に比べて広い空間部を有する部分として現れる。解析部633は、外周壁20の内側で所定面積以上の空間部を有する部分を特定することで、特定のセル部70として欠損部30の位置を特定することができる。また、撮像された画像において、欠損部30は、外周壁20の内側で所定形状の空間部を有する部分として現れる。解析部633は、外周壁20の内側で所定形状の空間部を有する部分を特定することで、特定のセル部70として欠損部30の位置を特定することができる。
【0076】
撮像された画像において、スリット3を設けるべき1つの最外周セル21a0は、周囲の最外周セル21a0よりも広い空間部を有する部分として現れる。解析部633は、複数の最外周セル21a0の中で所定面積以上の空間部を有する部分を特定することで、特定のセル部70としてスリット3を設けるべき1つの最外周セル21a0の位置を特定することができる。また、撮像された画像において、スリット3を設けるべき1つの最外周セル21a0は、外周壁20の内側で所定形状の空間部を有する部分として現れる。解析部633は、外周壁20の内側で所定形状の空間部を有する部分を特定することで、特定のセル部70としてスリット3を設けるべき1つの最外周セル21a0の位置を特定することができる。
【0077】
ここで、
図7を用いて、スリット3を設けるべき1つの最外周セル21a0の位置検出についてより詳細に説明する。
図7の(a)は9つの最外周セル21a0が隣接する位置の画像を示す説明図であり、
図7の(b)は8つの最外周セル21a0が隣接する位置の画像を示す説明図である。
【0078】
解析部633は、撮像された画像においてセル検出領域633aを設定できる。セル検出領域633aのサイズ及び位置は任意に設定できる。
図7の(a)及び(b)では、それらの全体がセル検出領域633aとされている。解析部633は、セル検出領域633a内において、スリット3を設けるべき1つの最外周セル21a0の位置を検出できる。スリット3を設けるべき1つの最外周セル21a0の位置をセル検出領域633a内において検出する方法として、以下の3つの方法を例として説明する。
【0079】
1つ目の方法は、セル面積と画像パターンから検出する方法である。
図7の(a)を用いてこの方法を説明する。解析部633は、一方の面の画像(例えば第1カメラ631の画像)にてセル検出領域633a内でセル面積が最大の最外周セル21a0を、スリット3を設けるべき1つの最外周セル21a0として検出する。図中では網掛けが施された最外周セル21a0が、スリット3を設けるべき1つの最外周セル21a0として検出される。その次に、解析部633は、スリット3を設けるべき1つの最外周セル21a0を中心に所定の枠内の画像パターン633bを記憶する。その次に、解析部633は、その画像パターン633bと同じ画像パターンを有する位置を他方の面の画像(例えば第2カメラ632の画像)にて検出し、画像パターンの中心に位置する最外周セル21a0を、他の面においてスリット3を設けるべき1つの最外周セル21a0として検出する。
【0080】
2つ目の方法は、セル面積から検出する方法である。
図7の(a)を用いてこの方法を説明する。解析部633は、両方の面の画像にてセル検出領域633a内でセル面積が最大の最外周セル21a0を、スリット3を設けるべき1つの最外周セル21a0として検出する。すなわち、1つ目の方法では、一方の面ではセル面積に基づいてスリット3を設けるべき1つの最外周セル21a0を検出し、他方の面では画像パターン633bに基づいてスリット3を設けるべき1つの最外周セル21a0を検出したが、2つ目の方法では画像パターン633bを生成する工程を省略し、他方の面でもセル面積に基づいてスリット3を設けるべき1つの最外周セル21a0を検出する。
【0081】
3つ目の方法は、セル数から検出する方法である。解析部633は、一方の面の画像(例えば第1カメラ631の画像)にてセル検出領域633a内で最外周セル21a0をすべて検出する。解析部633は、
図7の(a)のように奇数個の最外周セル21a0が検出された場合、その中央に位置する最外周セル21a0を、スリット3を設けるべき1つの最外周セル21a0として検出する。一方、解析部633は、
図7の(b)のように偶数個の最外周セル21a0が検出された場合、セル検出領域633a内で検出されたすべての最外周セル21a0のうち、両端に位置する最外周セル21a0(図中、丸で囲った1,8を付している最外周セル21a0)のセル面積を比較して、端部に位置するより大きな最外周セル21a0(丸で囲った8を付している最外周セル21a0)を特定する。また、解析部633は、セル検出領域633a内で検出されたすべての最外周セル21a0のうち、中央に位置する2つの最外周セル21a0(図中、丸で囲った4,5を付している最外周セル21a0)を検出するとともに、上述の端部に位置するより大きな最外周セル21a0側の最外周セル21a0(図中、丸で囲った5を付している最外周セル21a0)を、スリット3を設けるべき1つの最外周セル21a0として検出する。代替的に、両端に位置する最外周セル21a0のセル面積を比較することを省略し、中央に位置する2つの最外周セル21a0のいずれを、スリット3を設けるべき1つの最外周セル21a0として検出するかについて、予め設定していてもよい。
【0082】
一例ではあるが、解析部633により検出された特定のセル部70の位置を用いてのハニカム構造体素体7の姿勢変更は
図8に示す手順により行うことができる。まず、検出された両側の端面における特定のセル部70の位置に基づき、それらの特定のセル部70が加工工具62の経路62P又はその付近に位置するように第1軸A1周りにハニカム構造体素体7を回転させる(
図8の(a)参照)。ハニカム構造体素体7を回転させた後、検出された両側の端面における特定のセル部70の位置に基づき、両側の端面における特定のセル部70及びそれら特定のセル部70の間の中点Cの位置座標を特定する。これらの位置座標は、三次元空間内の座標であり得る。ハニカム構造体素体7の端面間距離は、検出部63による画像処理によって求められてもよいし、図示しない入力インターフェースを介して制御部64に入力されてもよい。その次に、ハニカム構造体素体7を第3軸A3に沿って平行移動させて、中点Cを加工工具62の経路62P上に位置させる(
図8の(b)参照)。その次に、第2軸A2周りにハニカム構造体素体7を回転させ、両側の特定のセル部70の座標を結んだ直線Lを経路62Pと平行とする(
図8の(c)参照)。中点Cと第2軸A2とが異なるとき、特定のセル部70の座標を結んだ直線Lは経路62Pからずれている。その次に、第3軸A3に沿ってハニカム構造体素体7を平行移動させて、両側の特定のセル部70が経路62P上に位置するようにする(
図8の(d)参照)。
【0083】
解析部633は、第1カメラ631及び第2カメラ632によって撮像された画像を解析して、ハニカム構造体素体7の一方の端面及び他方の端面において特定のセル部70を塞ぐ外周壁20の厚みTh1(
図2参照)か、又は外周壁20及び外周壁20上に設けられた電極層5の厚みTh2(外周壁20の厚みTh1に電極層5の厚みTh3を加えた厚み)(
図3参照)を測定できる。制御部64は、解析部633によって測定された厚みに所定値を加えて、ハニカム構造体素体7の外周面7aから径方向内方への加工工具62の進入深さを調整し、調整した進入深さで加工工具62がハニカム構造体素体7の外周面7aから径方向内方に進入するように制御してよい。
【0084】
解析部633は、外周壁20が露出されている位置において外周壁20の厚みTh1を測定してよい。解析部633は、外周壁20上に電極層5が設けられている位置において外周壁20及び電極層5の厚みTh2を測定してよい。解析部633は、加工工具62が進入する位置における厚みTh1,T2を測定してよい。
【0085】
制御部64は、解析部633によって測定された厚みTh1,T2に所定値を加えることで、ハニカム構造体素体7の外周面7aから径方向内方への加工工具62の進入深さを決定することができる。制御部64は、決定した加工工具62の進入深さまでハニカム構造体素体7に加工工具62が進入するように、保持部61に保持されたハニカム構造体素体7及び/又は加工工具62の変位を制御できる。図示の態様では、制御部64は、加工工具62の変位を制御する。
【0086】
加工工具62の進入深さを決定する際に厚みTh1,T2に加えられる所定値は、所定のインターフェースを介して制御部64に入力されてもよいし、制御部64に予め登録されていてもよい。
【0087】
所定値は、外周壁20の内面20bの内側まで加工工具62が進入されるように決定できる。
図2及び
図3に示すように、加工工具62の先端部分に曲面部62aが設けられているとき、少なくとも曲面部62aが外周壁20の内面20bの内側まで進入されるように所定値が決定できる。また、所定値は、スリット3の深さに応じて決定でき、加工工具62の進入方向の先に位置する隔壁21に加工工具62の先端部分が不必要に接触しないように決定できる。加工工具62の厚みをt(mm)とし、セル21a間のピッチをp(mm)としたとき、厚みTh1,T2に加えられる所定値(mm)は、t×0.1以上かつp×0.35以下であることが好ましい。所定値がt×0.1以上であることで、加工工具62の曲面部62aの形状がスリット3に残る虞を低減できる。所定値がp×0.35以下であることで、加工工具62の進入方向の先に位置する隔壁21に加工工具62の先端部分が不必要に接触する虞を低減できる。
【0088】
制御部64は、ハニカム構造体素体7の一方の端面における厚みTh1,T2がハニカム構造体素体7の他方の端面における厚みTh1,T2よりも厚いとき、より厚い厚みに所定値を加えて進入深さを調整する。これにより、ハニカム構造体素体7内への加工工具62の進入深さが不足することを回避でき、スリット3をより確実に形成できる。
【0089】
外周面位置特定部65は、セル21aの延伸方向に並ぶ複数の位置でハニカム構造体素体7の外周面位置を特定するためのものである。外周面位置特定部65は、例えばレーザー変位計等によって構成することができる。制御部64は、外周面位置特定部65によって特定された各位置の外周面位置を基準としてハニカム構造体素体7と加工工具62の相対的な変位の制御を行ってよい。制御部64は、ハニカム構造体素体7内に加工工具62を一度進入させた後、ハニカム構造体素体7及び加工工具62をセル21aの延伸方向に相対的に移動させる際に、ハニカム構造体素体7内への加工工具62の進入方向に関して加工工具62の位置を調整できる。
【0090】
次に、
図9は本発明の実施の形態によるハニカム構造体1の製造方法を示すフローチャートである。本発明の実施の形態によるハニカム構造体1の製造方法は、ハニカム構造体素体7(
図5等参照)から、ハニカム構造体1(
図1参照)を製造するための方法である。ハニカム構造体素体7及びハニカム構造体1については上述の通りである。限定はされないが、本発明の実施の形態によるハニカム構造体1の製造方法は、上述のハニカム構造体1の製造装置6を用いて実施することができる。
【0091】
図9に示すように、本発明の実施の形態によるハニカム構造体1の製造方法は、保持工程(ステップS1)、特定セル位置検出工程(ステップS2)、姿勢変更工程(ステップS3)及びスリット形成工程(ステップS6)を含んでいる。ハニカム構造体1の製造方法は、厚み測定工程(ステップS4)及び外周面位置特定工程(ステップS5)をさらに含んでいてよい。
【0092】
保持工程(ステップS1)は、ハニカム構造体素体7を保持する工程である。上述の保持部61によってハニカム構造体素体7を保持してよい。
【0093】
特定セル位置検出工程(ステップS2)は、保持されたハニカム構造体素体7の両側の端面における特定のセル部70の位置を検出する工程である。上述のように、特定のセル部70は、スリット3を設けるべき1つ又は複数のセル21aである。特定のセル部70は、欠損部30を含んでいてよい。また、特定のセル部70は、完全又は不完全な形状を有する1つの最外周セル21a0を含んでいてよい。特定のセル部70の位置を検出する方法は、上述の通りである。
【0094】
特定セル位置検出工程では、ハニカム構造体素体7の一方の端面を第1カメラ631によって撮像し、ハニカム構造体素体7の他方の端面を第2カメラ632によって撮像し、第1カメラ631及び第2カメラ632によって撮像された画像を解析して特定のセル部70の位置を検出することができる。
【0095】
姿勢変更工程(ステップS3)は、検出された両側の端面における特定のセル部70が加工工具62の経路62P上に位置するように、ハニカム構造体素体7の姿勢を変更する工程である。上述のように加工工具62は、所定の直線状の経路62Pに沿って移動可能に設けられている(
図6参照)。ハニカム構造体素体7の姿勢変更は、
図8を用いて説明した例のように実施できる。
【0096】
上述のように、ハニカム構造体素体7が保持されているとき、セル21aの延伸方向を第1軸A1とし、第1軸A1に直交するとともに、ハニカム構造体素体7の径方向に係る加工工具62の変位方向(上下方向)を第2軸A2とし、第1軸A1及び第2軸A2に直交する方向を第3軸A3とする。このとき、第1軸A1周りにハニカム構造体素体7を回転させ、第2軸A2周りにハニカム構造体素体7を回転させ、第3軸A3に沿ってハニカム構造体素体7を平行移動させることで、ハニカム構造体素体7の姿勢を変更してよい。
【0097】
厚み測定工程(ステップS4)は、第1カメラ631及び第2カメラ632によって撮像された画像を解析して、一方の端面及び他方の端面において特定のセル部70を塞ぐ外周壁20の厚みTh1(
図2参照)か、又は外周壁20及び外周壁20上に設けられた電極層5の厚みTh2(外周壁20の厚みTh1に電極層5の厚みTh3を加えた厚み)(
図3参照)を測定する工程である。スリット3を形成するとき、測定された厚みに所定値を加えて、ハニカム構造体素体7の外周面7aから径方向内方への加工工具62の進入深さを調整し、調整した進入深さでハニカム構造体素体7の外周面7aから径方向内方に加工工具62を進入させることができる。所定値については上述の通りである。
【0098】
外周面位置特定工程(ステップS5)は、セル21aの延伸方向に並ぶ複数の位置でハニカム構造体素体7の外周面位置を特定する工程である。スリット3を形成するとき、複数の位置で特定された各位置の外周面位置を基準としてハニカム構造体素体7と加工工具62との相対的な変位を行うことができる。
【0099】
スリット形成工程(ステップS6)は、保持されたハニカム構造体素体7の外周面7aを加工工具62により加工して、ハニカム構造体素体7に1つ開口部1b、すなわち1つのスリット3を形成する工程である。1つのスリット3を形成した後、ハニカム構造体素体7の向き及び/又は加工工具62の位置を調整することで、他のスリット3を同様に形成できる。
【0100】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0101】
1 :ハニカム構造体
1a :外周面
1b :開口部
2 :ハニカム構造部
20 :外周壁
21 :隔壁
21a :セル
3 :スリット
30 :欠損部
5 :電極層
6 :製造装置
61 :保持部
62 :加工工具
63 :検出部
64 :制御部
65 :外周面位置特定部
631 :第1カメラ
632 :第2カメラ
633 :解析部
7 :ハニカム構造体素体
7a :外周面
70 :特定のセル部