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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135236
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】車両用空調システム
(51)【国際特許分類】
   B60H 3/00 20060101AFI20240927BHJP
   F24F 8/167 20210101ALI20240927BHJP
   B01D 53/04 20060101ALI20240927BHJP
   B01D 53/26 20060101ALI20240927BHJP
   C04B 35/468 20060101ALI20240927BHJP
   B60H 3/06 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
B60H3/00 A ZAB
F24F8/167
B01D53/04 110
B01D53/26 230
C04B35/468
B60H3/06 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023045821
(22)【出願日】2023-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 浩貴
【テーマコード(参考)】
3L211
4D012
4D052
【Fターム(参考)】
3L211BA04
3L211BA09
3L211BA11
3L211DA72
3L211DA74
3L211DA78
4D012BA01
4D012BA02
4D012BA03
4D012CA01
4D012CA03
4D012CA10
4D012CB02
4D012CG01
4D012CG03
4D012CH05
4D052AA08
4D052CE00
4D052DA05
4D052HA00
4D052HA01
4D052HA27
4D052HA49
4D052HB05
(57)【要約】
【課題】消費電力を抑えつつ再生時の加熱効率を高め、しかも小型化が可能な車両用空調システムを提供する。
【解決手段】空気が流通可能な空調ダクト10と、空調ダクト10内に配置されるエバポレータ20と、空調ダクト10内のエバポレータ20よりも上流側に配置される調湿デバイス30とを備える車両用空調システムである。調湿デバイス30は、外周壁32と、外周壁32の内側に配設され、第1端面33aから第2端面33bまで延びる流路となる複数のセル34を区画形成する隔壁35とを有し、少なくとも隔壁35がPTC特性を有する材料で構成されたハニカム構造体31と、隔壁35の表面上に形成された除湿層36とを含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気が流通可能な空調ダクトと、
前記空調ダクト内に配置されるエバポレータと、
前記空調ダクト内の前記エバポレータよりも上流側に配置される調湿デバイスと
を備え、
前記調湿デバイスは、外周壁と、前記外周壁の内側に配設され、第1端面から第2端面まで延びる流路となる複数のセルを区画形成する隔壁とを有し、少なくとも前記隔壁がPTC特性を有する材料で構成されたハニカム構造体と、前記隔壁の表面上に形成された除湿層とを含む、車両用空調システム。
【請求項2】
前記空調ダクトは、前記エバポレータと前記調湿デバイスとの間に、前記空気を前記エバポレータに流入させる第1経路と、前記空気を車両外に排出させる第2経路とを有し、
前記空気の流れを前記第1経路と前記第2経路との間で切替え可能な切替えバルブを更に備える、請求項1に記載の車両用空調システム。
【請求項3】
PCT特性を有する前記材料のキュリー点が80~200℃である、請求項1又は2に記載の車両用空調システム。
【請求項4】
前記調湿デバイスは、前記ハニカム構造体に設けられた一対の電極を更に含む、請求項1又は2に記載の車両用空調システム。
【請求項5】
前記調湿デバイスは、前記一対の電極に接続された端子を更に含む、請求項4に記載の車両用空調システム。
【請求項6】
PTC特性を有する前記材料はチタン酸バリウムを主成分とし、鉛を実質的に含まない材料で構成されている、請求項1又は2に記載の車両用空調システム。
【請求項7】
PTC特性を有する前記材料の25℃における体積抵抗率が0.5~30Ω・cmである、請求項1又は2に記載の車両用空調システム。
【請求項8】
前記ハニカム構造体は、前記隔壁の厚さが0.30mm以下、セル密度が100セル/cm2以下、且つセルピッチが1.0mm以上である、請求項1又は2に記載の車両用空調システム。
【請求項9】
前記ハニカム構造体は、前記隔壁の厚さが0.08~0.36mm、セル密度が2.54~140セル/cm2、前記セルの開口率が0.70以上である、請求項1又は2に記載の車両用空調システム。
【請求項10】
前記除湿層は除湿材を含有する、請求項1又は2に記載の車両用空調システム。
【請求項11】
前記除湿層は、二酸化炭素及び/又は揮発成分を吸着する機能を有する機能材を含有する、請求項1又は2に記載の車両用空調システム。
【請求項12】
前記除湿層は触媒を含有する、請求項1又は2に記載の車両用空調システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用空調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車などの各種車両において、車室環境の向上に対する要求が高まっている。具体的な要求としては、車室内のCO2を低減して運転者の眠気を抑制すること、車室内を調湿すること、及び車室内のにおい成分やアレルギー誘因成分などの有害な揮発成分を除去することなどが挙げられる。このような要求に有効な対策として換気が挙げられるが、換気は、冬場のヒーターエネルギーを大きくロスする要因となり、冬場のエネルギー効率の低下を招く。特に電気自動車(BEV:Battery Electric Vehicle)では、そのエネルギーロスにより、航続距離が大幅に減少するという問題がある。
【0003】
上記の問題を解決する方法として、車室の空気中の水蒸気、CO2などの除去対象成分を吸着材などの機能材に捕捉した後、加熱によって除去対象成分を反応又は離脱させて車外に放出し、機能材を再生する車両用空調システムが知られている(例えば、特許文献1及び2)。
【0004】
また、車両用空調システムにおいて、車室内の除湿は、空調ダクト内に配置されるエバポレータ(蒸発器)によって行われている。エバポレータは、空気を露点以下に冷却することで空気中の水分を凝集させて車外に排出することができる。しかしながら、エバポレータでは結露が生じ易いため、埃などが付着することでカビも発生し易い。このような状態のエバポレータを空気が流通すると、車室内の環境が損なわれるとともに、運転者のアレルギー症状を引き起こす可能性もある。また、エバポレータの結露によって通風抵抗も増大してしまう。
【0005】
そこで、特許文献3には、エバポレータの上流側の空調ダクト内に除湿剤を充填した除湿剤充填箱(除湿部)を配置することが提案されている。また、特許文献4には、エバポレータの上流側の空調ダクト内にデシカント方式の除湿装置(除湿部)を配置することが提案されている。さらに、特許文献5には、エバポレータの上流側の空調ダクト内に吸湿部材を含む吸湿ユニット(除湿部)を配置することが提案されている。これらの技術によれば、エバポレータに流入する空気の水分を予め少なくすることができるため、エバポレータの結露が抑制される。また、水分を吸湿した除湿部は、ヒーターなどで加熱することによって再生することもできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2017-528316号公報
【特許文献2】特開2020-104774号公報
【特許文献3】特開2004-291863号公報
【特許文献4】特開2017-43309号公報
【特許文献5】特開2020-196406号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献3の除湿剤充填箱は除湿剤が充填されているため、空気が除湿剤充填箱の内部を流通する際の抵抗(通風抵抗)が大きい。そのため、空調ダクト内に設置される通風機(ファン)の出力を上げる必要があり、消費電力が大きくなる。
特許文献4のデシカント方式の除湿装置は、除湿部材を再生するためにヒーターを別途設ける必要があるため、装置が大型化してしまう。また、除湿部材を直接加熱できるわけではないため、除湿部材の加熱(再生)効率も十分であるとはいえない。
特許文献5の吸湿ユニットは、吸湿部材がデシカントロータによって構成されているため、特許文献4と同様の問題がある。
【0008】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、消費電力を抑えつつ再生時の加熱効率を高め、しかも小型化が可能な車両用空調システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、車両用空調システムについて鋭意研究を行った結果、所定のハニカム構造体と、ハニカム構造体の所定の位置に形成された除湿層とを含む調湿デバイスを、空調ダクト内のエバポレータよりも上流側に配置することにより、上記の課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、以下のように例示される。
【0010】
[1] 空気が流通可能な空調ダクトと、
前記空調ダクト内に配置されるエバポレータと、
前記空調ダクト内の前記エバポレータよりも上流側に配置される調湿デバイスと
を備え、
前記調湿デバイスは、外周壁と、前記外周壁の内側に配設され、第1端面から第2端面まで延びる流路となる複数のセルを区画形成する隔壁とを有し、少なくとも前記隔壁がPTC特性を有する材料で構成されたハニカム構造体と、前記隔壁の表面上に形成された除湿層とを含む、車両用空調システム。
【0011】
[2] 前記空調ダクトは、前記エバポレータと前記調湿デバイスとの間に、前記空気を前記エバポレータに流入させる第1経路と、前記空気を車両外に排出させる第2経路とを有し、
前記空気の流れを前記第1経路と前記第2経路との間で切替え可能な切替えバルブを更に備える、[1]に記載の車両用空調システム。
【0012】
[3] PCT特性を有する前記材料のキュリー点が80~200℃である、[1]又は[2]に記載の車両用空調システム。
【0013】
[4] 前記調湿デバイスは、前記ハニカム構造体に設けられた一対の電極を更に含む、[1]~[3]のいずれか一つに記載の車両用空調システム。
【0014】
[5] 前記調湿デバイスは、前記一対の電極に接続された端子を更に含む、[4]に記載の車両用空調システム。
【0015】
[6] PTC特性を有する前記材料はチタン酸バリウムを主成分とし、鉛を実質的に含まない材料で構成されている、[1]~[5]のいずれか一つに記載の車両用空調システム。
【0016】
[7] PTC特性を有する前記材料の25℃における体積抵抗率が0.5~30Ω・cmである、[1]~[6]のいずれか一つに記載の車両用空調システム。
【0017】
[8] 前記ハニカム構造体は、前記隔壁の厚さが0.30mm以下、セル密度が100セル/cm2以下、且つセルピッチが1.0mm以上である、[1]~[7]のいずれか一つに記載の車両用空調システム。
【0018】
[9] 前記ハニカム構造体は、前記隔壁の厚さが0.08~0.36mm、セル密度が2.54~140セル/cm2、前記セルの開口率が0.70以上である、[1]~[7]のいずれか一つに記載の車両用空調システム。
【0019】
[10] 前記除湿層は除湿材を含有する、[1]~[9]のいずれか一つに記載の車両用空調システム。
【0020】
[11] 前記除湿層は、二酸化炭素及び/又は揮発成分を吸着する機能を有する機能材を含有する、[1]~[10]のいずれか一つに記載の車両用空調システム。
[0000]
[12] 前記除湿層は触媒を含有する、[1]~[11]のいずれか一つに記載の車両用空調システム。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、消費電力を抑えつつ再生時の加熱効率を高め、しかも小型化が可能な車両用空調システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施形態に係る車両用空調システムの全体概略構成図である。
図2A】本発明の実施形態に係る車両用空調システム及び空調デバイスの再生方法に用いられる空調デバイスの流路方向に平行な断面の模式図である。
図2B図2Aの空調デバイスにおけるa-a’線の断面の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の実施形態に係る車両用空調システムは、空気が流通可能な空調ダクトと、空調ダクト内に配置されるエバポレータと、空調ダクト内のエバポレータよりも上流側に配置される調湿デバイスとを備える。また、調湿デバイスは、外周壁と、外周壁の内側に配設され、第1端面から第2端面まで延びる流路となる複数のセルを区画形成する隔壁とを有し、少なくとも隔壁がPTC特性を有する材料で構成されたハニカム構造体と、隔壁の表面上に形成された除湿層とを含む。本発明の実施形態に係る車両用空調システムは、除湿層をハニカム構造体の隔壁の表面上に設けた調湿デバイスを用いているため、空気が調湿デバイスを流通する際の通風抵抗が増加し難く、消費電力を抑えることができる。また、本発明の実施形態に係る車両用空調システムは、ハニカム構造体が、電圧をかけて電流を流すと発熱するヒーターエレメントとして機能するため、除湿層の再生処理時にハニカム構造体の熱によって除湿層を直接加熱することができる。したがって、再生処理時の加熱効率を高めることができるとともに、ヒーターなどを別途設ける必要がないためシステムの小型化も可能となる。
【0024】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施形態に対し変更、改良などが適宜加えられたものも本発明の範囲に入ることが理解されるべきである。
【0025】
本発明の実施形態に係る車両用空調システムは、車両における空調システムとして好適に利用可能である。車両としては、特に限定されないが、自動車及び電車が挙げられる。自動車としては、特に限定されないが、ガソリン車、ディーゼル車、CNG(圧縮天然ガス)やLNG(液化天然ガス)などを用いるガス燃料車、燃料電池自動車、プラグインハイブリッド自動車、電気自動車が挙げられる。これらの中でも、消費電力の低減が特に要求される電気自動車に用いるのに好適である。
【0026】
図1は、本発明の実施形態に係る車両用空調システムの全体概略構成図である。図2Aは、本発明の実施形態に係る車両用空調システムに用いられる調湿デバイスの流路方向に平行な断面の模式図である。図2Bは、図2Aの調湿デバイスにおけるa-a’線の断面の模式図である。
【0027】
図1に示されるように、本発明の実施形態に係る車両用空調システム100は、空気が流通可能な空調ダクト10と、空調ダクト10内に配置されるエバポレータ20と、空調ダクト10内のエバポレータ20よりも上流側に配置される調湿デバイス30とを備える。空調ダクト10は、調湿デバイス30の下流側において、空気を車室に流入させる第1経路10aと、空気を車両外に排出させる第2経路10bとを有することができる。エバポレータ20は、第1経路10a内に配置することができる。
車両用空調システム100は、空気の流れを第1経路10aと第2経路10bとの間で切替え可能な切替バルブ40を更に備えることができる。また、車両用空調システム100は、調湿デバイス30及び切替バルブ40を制御するための制御部50を更に備えることができる。
【0028】
図2A及び2Bに示されるように、調湿デバイス30は、外周壁32と、外周壁32の内側に配設され、第1端面33aから第2端面33bまで延びる流路となる複数のセル34を区画形成する隔壁35とを有し、少なくとも隔壁35がPTC特性を有する材料で構成されたハニカム構造体31と、隔壁35の表面上に形成された除湿層36とを含む。調湿デバイス30は、一対の電極37a,37b、一対の電極37a,37bに接続された端子38を更に含むことができる。
【0029】
上記のような構成を有する車両用空調システム100では、車室又は車外からの空気が、空調ダクト10を通って調湿デバイス30に流入し、調湿デバイス30を通過する間に除湿層36で空気中の水分が捕捉(除去)される。そして、水分が低減された空気は、第1経路10aを通ってエバポレータ20に流入する。エバポレータ20に流入する空気は、調湿デバイス30によって水分が低減されているため、エバポレータ20の結露が抑制される。エバポレータ20を流通した空気は車室に戻る。
一方、除湿層36の性能は、水分の捕捉量が多くなるにつれて徐々に低下するため、除湿層36を再生しなければならない。除湿層36の再生は、一対の電極37a,37bに対して電圧印加を行い、ハニカム構造体31を加熱することにより行われる。ハニカム構造体31の加熱によって除湿層36が直接的に加熱されるため、除湿層36に捕捉された水分が除湿層36から効率的に脱離又は反応して放出され、第2経路10bを通って車外に排出される。
【0030】
以下、車両用空調システム100の各構成要素について詳細に説明する。
【0031】
(1.空調ダクト10)
空調ダクト10は、空気が流通可能な流路である。空調ダクト10の上流側は、車室又は外気導入口に接続されている。空調ダクト10は、車室又は車外からの空気を流入させるとともに、調湿デバイス30を通過した空気を車室に流入又は車外に排出させる。したがって、空調ダクト10は、エバポレータ20と調湿デバイス30との間に、空気をエバポレータ20に流入させる第1経路10aと、空気を車両外に排出させる第2経路10bとを有することが好ましい。
【0032】
空調ダクト10内には、空気の流れを第1経路10aと第2経路10bとの間で切替え可能な切替バルブ40を有することができる。切替バルブ40としては、電気で駆動し、流路を切換える機能を有するバルブであれば特に限定されず、電磁弁及び電動弁などを用いることができる。たとえば、切替バルブ40は、回転軸に支持された開閉ドアと、回転軸を回動操作するモータなどのアクチュエータを備える。アクチュエータは制御部によって制御可能に構成することができる。
また、空調ダクト10内には、車室からの空気を調湿デバイス30に流入させるための通風機(図示していない)を備えることができる。通風機の位置は、特に限定されないが、例えば、調湿デバイス30の上流側に設けることができる。
【0033】
(2.エバポレータ20)
エバポレータ20は、空気の除湿及び冷却を行う装置である。エバポレータ20としては、特に限定されず、公知のものを用いることができる。エバポレータ20は、例えば、フィンを有する扁平チューブから構成され、コンプレッサやコンデンサなどに接続されて冷凍サイクルを構成する。
【0034】
(3.調湿デバイス30)
調湿デバイス30は、図2A及び2Bに示されるように、外周壁32と、外周壁32の内側に配設され、第1端面33aから第2端面33bまで延びる流路となる複数のセル34を区画形成する隔壁35とを有するハニカム構造体31と、隔壁35の表面上に形成された除湿層36とを含む。調湿デバイス30は、ハニカム構造体31に設けられた一対の電極37a,37bを更に含むことができる。また、調湿デバイス30は、一対の電極37a,37bに接続された端子38を更に含むことができる。
(3-1.ハニカム構造体31)
ハニカム構造体31の形状は、特に限定されない。例えば、ハニカム構造体31の流路方向(セル34が延びる方向)に直交する断面の外形を、四角形(長方形、正方形)、五角形、六角形、七角形、八角形などの多角形、円形、オーバル形状(卵形、楕円形、長円形、角丸長方形など)などにすることができる。なお、端面(第1端面33a及び第2端面33b)は、当該断面と同一の形状である。また、断面及び端面が多角形の場合、角部を面取りしてもよい。
【0035】
セル34の形状は、特に限定されないが、ハニカム構造体31の流路方向に直交する断面において、四角形、五角形、六角形、七角形、八角形などの多角形、円形、オーバル形状にすることができる。これらの形状は、単一であってもよいし、又は二種以上を組み合わせてもよい。また、これらの形状の中でも四角形又は六角形が好ましい。このような形状のセル34を設けることにより、空気が流通する際の圧力損失を小さくすることができる。
【0036】
ハニカム構造体31は、複数のハニカムセグメントと、複数のハニカムセグメントの外周側面同士間を接合する接合層とを有するハニカム接合体であってもよい。ハニカム接合体を用いることにより、クラックの発生を抑えながら空気の流量確保に重要なセル34の総断面積を増やすことが可能となる。
なお、接合層は、接合材を用いて形成することができる。接合材としては、特に限定されないが、セラミックス材料に、水などの溶媒を加えてペースト状にしたものを用いることができる。接合材は、PTC特性を有する材料を含有してもよく、外周壁32及び隔壁35と同一の材料を含有してもよい。接合材は、ハニカムセグメント同士を接合する役割に加えて、ハニカムセグメントを接合した後の外周コート材として用いることも可能である。
【0037】
ハニカム構造体31の強度確保、空気がセル34を通過する際の圧力損失の低減、機能材の担持量確保、及び、セル34内を流れる空気との接触面積の確保等の観点から、隔壁35の厚さ、セル密度、及びセルピッチ(又はセル34の開口率)を好適に組み合わせることが望ましい。
本明細書においてセル密度とは、ハニカム構造体31の一方の端面(第1端面33a又は第2端面33b)の面積(外周壁32を除く隔壁35及びセル34の合計面積)でセル数を除して得られる値である。
本明細書においてセルピッチとは、以下の計算によって求められる値を指す。まず、セル数で、ハニカム構造体31の一方の端面(第1端面33a又は第2端面33b)の面積(外周壁32を除く隔壁35及びセル34の合計面積)を除して1セル当たりの面積を算出する。次いで、1セル当たりの面積の平方根を算出し、これをセルピッチとする。
本明細書においてセル34の開口率とは、ハニカム構造体31の流路方向に直交する断面において、隔壁35によって区画されるセル34の合計面積を、一方の端面(第1端面33a又は第2端面33b)の面積(外周壁32を除く隔壁35及びセル34の合計面積)で除して得られた値である。なお、セル34の開口率を算出するに当たり、一対の電極37a,37b及び除湿層36は考慮しない。
【0038】
十分な量の機能材を担持する観点で有利な実施形態においては、隔壁35の厚さが0.30mm以下、セル密度が100セル/cm2以下、且つセルピッチが1.0mm以上である。好ましい実施形態においては、隔壁35の厚さが0.20mm以下、セル密度が70セル/cm2以下、且つセルピッチが1.2mm以上である。より好ましい実施形態においては、隔壁35の厚さが0.13mm以下、セル密度が65セル/cm2以下、且つセルピッチが1.3mm以上である。
【0039】
ハニカム構造体31の強度を確保すること、及び電気抵抗を低く保つ観点から、隔壁35の厚さの下限は、0.010mm以上であることが好ましく、0.020mm以上であることがより好ましく、0.030mm以上であることが更に好ましい。
ハニカム構造体31の強度を確保すること、電気抵抗を低く保つこと、及び表面積を増やして反応、吸着、離脱を促進する観点から、セル密度の下限は、30セル/cm2以上であることが好ましく、35セル/cm2以上であることがより好ましく、40セル/cm2以上であることが更に好ましい。
ハニカム構造体31の強度を確保すること、電気抵抗を低く保つこと、及び表面積を増やして反応、吸着、離脱を促進する観点から、セルピッチの上限は、2.0mm以下であることが好ましく、1.8mm以下であることがより好ましく、1.6mm以下であることが更に好ましい。
【0040】
圧力損失の低減と強度の維持とを両立する観点で有利な実施形態においては、隔壁35の厚さが0.08~0.36mm、セル密度が2.54~140セル/cm2、セル34の開口率が0.70以上である。好ましい実施形態においては、隔壁35の厚さが0.09~0.35mm、セル密度が15~100セル/cm2、セル34の開口率が0.80以上である。より好ましい実施形態においては、隔壁35の厚さが0.14~0.30mm、セル密度が20~90セル/cm2、セル34の開口率が0.85以上である。
【0041】
ハニカム構造体31の強度を確保する観点から、セル34の開口率の上限は、0.94以下であることが好ましく、0.92以下であることがより好ましく、0.90以下であることが更に好ましい。
【0042】
外周壁32の厚さは、特に限定されないが、次の観点に基づいて決定することが好ましい。まず、ハニカム構造体31を補強するという観点から、外周壁32の厚さは、好ましくは0.05mm以上、より好ましくは0.06mm以上、更に好ましくは0.08mm以上である。一方、電気抵抗を大きくして初期電流を抑える観点、及び空気が流通する際の圧力損失を低減する観点から、外周壁32の厚さは、好ましくは1.0mm以下、より好ましくは0.5mm以下、更に好ましくは0.4mm以下、更により好ましくは0.3mm以下である。
本明細書において外周壁32の厚さとは、流路方向に直交する断面において、外周壁32と最も外周側のセル34又は隔壁35との境界からハニカム構造体31の側面までの、当該側面の法線方向の長さを指す。
【0043】
ハニカム構造体31の流路方向の長さ及び流路方向に直交する断面積は、要求される調湿デバイス30のサイズに合わせて調整すればよく、特に限定されない。例えば、所定の機能を確保しつつコンパクトな調湿デバイス30に用いられる場合、ハニカム構造体31は、流路方向の長さを2~20mm、流路方向に直交する断面積を10cm2以上とすることができる。なお、流路方向に直交する断面積の上限値は、特に限定されないが、例えば、300cm2以下である。
【0044】
ハニカム構造体31を構成する隔壁35は、通電によって発熱可能な材料で構成されており、具体的にはPTC(Positive Temperature Coefficient)特性を有する材料で構成される。必要に応じて外周壁32も隔壁35と同様にPTC特性を有する材料で構成されていてもよい。このような構成とすることにより、発熱する隔壁35(及び必要に応じて外周壁32)からの伝熱によって除湿層36を直接加熱することが可能である。また、PTC特性を有する材料は、温度が上昇してキュリー点を超えると、急激に抵抗値が上昇して電気が流れ難くなるという特性を有する。そのため、隔壁35(及び必要に応じて外周壁32)が高温になったときに、これらに流れる電流が制限されるので、ハニカム構造体31の過剰な発熱が抑制される。したがって、過剰な発熱に起因する除湿層36の熱劣化を抑制することも可能である。
【0045】
PTC特性を有する材料の25℃における体積抵抗率の下限は、適度な発熱を得る観点からは、0.5Ω・cm以上であることが好ましく、1Ω・cm以上であることがより好ましく、5Ω・cm以上であることが更に好ましい。PTC特性を有する材料の25℃における体積抵抗率の上限は、低い駆動電圧で発熱させるという観点からは、30Ω・cm以下であることが好ましく、18Ω・cm以下であることがより好ましく、16Ω・cm以下であることが更に好ましい。本明細書において、PTC特性を有する材料の25℃における体積抵抗率はJIS K6271:2008に従って測定される。
【0046】
通電発熱可能であり、且つPTC特性を有するという観点から、外周壁32及び隔壁35は、チタン酸バリウム(BaTiO3)を主成分とする材料から構成されていることが好ましい。また、この材料は、Baの一部が希土類元素で置換されたチタン酸バリウム(BaTiO3)系結晶粒子を主成分とする材料で構成されるセラミックスであることがより好ましい。なお、本明細書において「主成分」とは、成分全体に占める割合が50質量%を超える成分のことを意味する。BaTiO3系結晶粒子の含有量は、蛍光X線分析により求めることができる。その他の結晶粒子についても、この方法と同様にして測定することができる。
【0047】
Baの一部が希土類元素で置換されたBaTiO3系結晶粒子の組成式は、(Ba1-xx)TiO3で表すことができる。組成式中、Aは一種以上の希土類元素を表し、0.0001≦x≦0.010である。
Aは、希土類元素であれば特に限定されないが、好ましくはLa、Ce、Pr、Nd、Eu、Gd、Dy、Ho、Er、Y及びYbからなる群から選択される一種以上であり、より好ましくはLaである。xは、室温における電気抵抗が高くなり過ぎることを抑制する観点から、好ましくは0.001以上、より好ましくは0.0015以上である。一方、xは、焼結不足となって室温における電気抵抗が高くなりすぎることを抑制する観点から、好ましくは0.009以下である。
Baの一部が希土類元素で置換されたBaTiO3系結晶粒子のセラミックスにおける含有量は、主成分となる量であれば特に限定されないが、好ましくは90質量%以上、より好ましくは92質量%以上、より好ましくは94質量%以上である。なお、BaTiO3系結晶粒子の含有量の上限値は、特に限定されないが、一般的に99質量%、好ましくは98質量%である。
このBaTiO3系結晶粒子の含有量は、蛍光X線分析によって測定することができる。その他の結晶粒子についても、この方法と同様にして測定することができる。
【0048】
外周壁32及び隔壁35に用いられる材料は、環境負荷を軽減するという観点から、鉛(Pb)を実質的に含まないことが望ましい。具体的には、外周壁32及び隔壁35は、Pb含有量が、好ましくは0.01質量%以下、より好ましくは0.001質量%以下、更に好ましくは0質量%である。Pb含有量が少ないことにより、例えば、発熱中の隔壁35に接触させることで加温された空気をヒトなどの生物に安全に当てることができる。なお、外周壁32及び隔壁35において、Pb含有量は、PbOに換算すると、好ましくは0.03質量%未満、より好ましくは0.01質量%未満、更に好ましくは0質量%である。鉛の含有量は、ICP-MS(誘導結合プラズマ質量分析)により求めることができる。
【0049】
外周壁32及び隔壁35を構成する材料のキュリー点は、常温(25℃)の抵抗から2倍以上の抵抗値になったときの温度範囲にあることが好ましい。キュリー点がこのような温度範囲にあれば、調湿デバイス30が高温になったときに、これらに流れる電流が制限されるので、調湿デバイス30の過剰な発熱が効率的に抑制される。したがって、過剰な発熱に起因する除湿層36の熱劣化を抑制することができる。
外周壁32及び隔壁35を構成する材料のキュリー点の下限は、除湿層36を効率良く加熱する観点から、好ましくは80℃以上、より好ましくは100℃以上、更に好ましくは110℃以上、特に好ましくは125℃以上である。また、キュリー点の上限については、車室又は車室近傍に置かれる部品としての安全性の観点から、好ましくは200℃以下、より好ましくは190℃以下、更に好ましくは180℃以下、特に好ましくは150℃以下である。
【0050】
外周壁32及び隔壁35を構成する材料のキュリー点は、シフターの種類及び添加量によって調整可能である。例えば、チタン酸バリウム(BaTiO3)のキュリー点は約120℃であるが、Ba及びTiの一部をSr、Sn及びZrの一種以上で置換することにより、キュリー点を低温側にシフトさせることができる。
【0051】
本明細書において、キュリー点は以下の方法により測定される。試料を測定用の試料ホルダーに取りつけ、測定槽(例:MINI-SUBZERO MC-810P エスペック株式会社製)内に装着して、10℃から昇温したときの温度変化に対する試料の電気抵抗の変化を、直流抵抗計(例:マルチメーター3478A YOKOGAWA HEWLETT PACKARD,LTD製)を用いて測定する。測定により得られた電気抵抗-温度プロットにより、抵抗値が室温(20℃)における抵抗値の2倍になるときの温度をキュリー点とする。
【0052】
(3-2.一対の電極37a,37b)
一対の電極37a,37bの位置は、特に限定されないが、図2Aに示されるように、第1端面33a及び第2端面33bに設けることができる。また、一対の電極37a,37bは、セル34が延びる方向に平行な一対の外周壁32に設けてもよい。
一対の電極37a,37bの間に電圧を印加することで、ジュール熱によりハニカム構造体31を発熱させることが可能となる。
【0053】
一対の電極37a,37bとしては、特に限定されないが、例えば、Cu、Ag、Al、Ni及びSiから選択される少なくとも一種を含有する金属又は合金を使用することができる。また、PTC特性を有する外周壁32及び/又は隔壁35とオーミック接触が可能なオーミック電極を使用することもできる。オーミック電極は、例えば、ベース金属としてAl、Au、Ag及びInから選択される少なくとも一種を含有し、ドーパントとしてn型半導体用のNi、Si、Zn、Ge、Sn、Se及びTeから選択される少なくとも一種を含有するオーミック電極を使用することができる。また、一対の電極37a,37bは、1層構造としてもよいし、2層以上の積層構造としてもよい。一対の電極37a,37bが2層以上の積層構造を有する場合、各層の材質は、同じ種類であってもよいし、異なる種類であってもよい。
【0054】
一対の電極37a,37bの厚さは、一対の電極37a,37bの形成方法に応じて適宜設定することができる。一対の電極37a,37bの形成方法としては、スパッタリング、蒸着、電解析出、化学析出のような金属析出法が挙げられる。また、電極ペーストを塗布した後、焼き付ける方法や、溶射によっても一対の電極37a,37bを形成することもできる。さらに、金属板又は合金板を接合することによって一対の電極37a,37bとしてもよい。
【0055】
一対の電極37a,37bの厚さは、例えば、電極ペーストの焼付けでは5~30μm程度、スパッタリング及び蒸着のような乾式めっきでは100~1000nm程度、溶射では10~100μm程度、電解析出及び化学析出のような湿式めっきでは5~30μm程度とすることが好ましい。また、金属板又は合金板の接合では、それらの厚さを5~100μm程度とすることが好ましい。
【0056】
(3-3.端子38)
端子38は、一対の電極37a,37bに接続され、一対の電極37a,37bの少なくとも一部に設けられる。端子38を設けることにより、外部電源との接続が容易になる。端子38は、外部電源に接続された導線に接続される。
【0057】
端子38の材質としては、特に限定されないが、例えば、金属とすることができる。金属としては、単体金属及び合金などを採用することもできるが、耐食性、電気抵抗率及び線膨張率の観点から、例えば、Cr、Fe、Co、Ni、Cu、Al及びTiよりなる群から選択される少なくとも一種を含む合金とすることが好ましく、ステンレス鋼及びFe-Ni合金、リン青銅がより好ましい。
【0058】
端子38の大きさ及び形状は、特に限定されない。例えば、図2Aに示されるように、外周壁32上の一対の電極37a,37bの全体に端子38を設けることができる。また、端子38は、外周壁32上の一対の電極37a,37bの一部に設けてもよいし、外周壁32上の一対の電極37a,37bの外縁よりも外側に延出するように設けてもよい。さらに、端子38は、隔壁35上の一対の電極37a,37bの一部に設けてもよく、一部のセル34を塞ぐように設けてもよい。
また、端子38の厚さは、特に限定されないが、例えば、0.01~10mm、典型的に0.05~5mmである。
【0059】
端子38と一対の電極37a,37bとの接続方法は、電気的に接続されていれば特に限定されず、例えば、拡散接合、機械的な加圧機構、溶接などによって接続することができる。
【0060】
調湿デバイス30において、一対の電極37a,37bの体積抵抗率[Ω・cm]をρ1、一対の電極37a,37bの厚さ[mm]をt1、隔壁35の体積抵抗率[Ω・cm]をρ2、隔壁35の厚さ[mm]をt2、端子38の体積抵抗率[Ω・cm]をρ3、端子38の厚さ[mm]をt3とする。
この場合、調湿デバイス30は、(ρ1/t1)/(ρ2/t2)が0.003以下である。このような範囲に(ρ1/t1)/(ρ2/t2)の値を制御することにより、一対の電極37a,37bの電気抵抗が、ハニカム構造体31の基材(隔壁35)の電気抵抗よりも十分に低くなる。その結果、一対の電極37a,37bから隔壁35へ電流が均一に広がり易くなるため、電流の偏りが抑制され、調湿デバイス30内の温度分布を均一にすることができる。この効果を安定して確保する観点から、(ρ1/t1)/(ρ2/t2)は、0.001以下が好ましく、0.0001以下がより好ましい。なお、(ρ1/t1)/(ρ2/t2)の値は小さいほど上記の効果が得られ易いため、その下限値は特に限定されないが、例えば、0.0000001である。
【0061】
また、調湿デバイス30は、(ρ1/t1)/(ρ3/t3)が0.02以上である。このような範囲に(ρ1/t1)/(ρ3/t3)の値を制御することにより、端子38からの電流が一対の電極37a,37bに均一に広がり易くなる。その結果、一対の電極37a,37bから隔壁35へも電流が均一に広がり易くなるため、電流の偏りが抑制され、調湿デバイス30内の温度分布を均一にすることができる。なお、(ρ1/t1)/(ρ3/t3)が0.02未満であると、端子内で電流を広げる前に一対の電極37a,37bの一部に電流が流れるため、電流の偏りが生じてしまう。上記の効果を安定して確保する観点から、(ρ1/t1)/(ρ3/t3)は、1以上が好ましく、10以上がより好ましい。なお、(ρ1/t1)/(ρ3/t3)の値は大きいほど上記の効果が得られ易いため、その上限値は特に限定されないが、例えば、5000である。
【0062】
ここで、本明細書において一対の電極37a,37bの厚さは、全ての電極37a,37bの厚さの平均値を指す。また、隔壁35の厚さとは、流路方向に直交する断面において、隣接するセル34の重心同士を線分で結んだときに当該線分が隔壁35を横切る長さを指す。隔壁35の厚さは、全ての隔壁35の厚さの平均値を指す。さらに、端子38の厚さは、全ての端子38の厚さの平均値を指す。
一対の電極37a,37b及び端子38の厚さは、流路方向に平行な断面において測定することができる。或いは、一対の電極37a,37b及び端子38に用いた材料の厚さを、一対の電極37a,37b及び端子38の厚さとしてもよい。また、隔壁35の厚さは、流路方向に直交する断面において測定することができる。
【0063】
一対の電極37a,37b、隔壁35及び端子38の体積抵抗率は、25℃における体積抵抗率を指す。25℃における体積抵抗率はJIS K6271:2008に従って測定される。
【0064】
調湿デバイス30において、端子38が一対の電極37a,37bと接触する面の面積[mm2]をS1、ハニカム構造体31の第1端面33a又は第2端面33bの面積[mm2]をS2とする。
この場合、調湿デバイス30は、S1/S2が0.010以上であることが好ましい。このような範囲にS1/S2の値を制御することにより、端子38からハニカム構造体31に電流が流れる領域の面積(通電面積)を大きくすることができるため、電流の偏りが抑制され、調湿デバイス30内の温度分布を均一にし易くなる。この効果を安定して確保する観点から、S1/S2は、0.050以上がより好ましく、0.150以上が更に好ましい。他方、S1/S2が大きいと、空気が流れる領域(セル34)の面積が小さくなる。そのため、S1/S2は0.430以下が好ましく、0.300以下がより好ましく、0.250以下が更に好ましい。
【0065】
ここで、本明細書において、ハニカム構造体31の第1端面33a又は第2端面33bの面積とは、外周壁32、セル34及び隔壁35から構成される第1端面33a又は第2端面33bの面積のことを指す。
【0066】
調湿デバイス30は、必要に応じて、一対の電極37a,37bと端子38との間に中間材を更に備えることができる。
このような構造を有する調湿デバイス30において、端子38が中間材と接触する面の面積[mm2]をS3、中間材が一対の電極37a,37bと接触する面の面積[mm2]をS4とする。
この場合、調湿デバイス30は、S4/S3が0.50~2.00であることが好ましい。このような範囲にS4/S3の値を制御することにより、一対の電極37a,37bと端子38との間の電流の流れをスムーズにすることができるため、電流の偏りが抑制され、調湿デバイス30内の温度分布を均一にし易くなる。S4/S3が2.00よりも大きくなると、上記の効果(電力の偏りによる局所発熱の抑制効果)は得られる一方で、中間材によって空気の流れが阻害されてしまうため、除湿層36と空気との接触面積が低下し、除湿層36の性能が十分に得られ難い。また、S4/S3が0.50未満であると、上記の効果(電力の偏りによる局所発熱の抑制効果)が得られ難い。上記の効果を安定して確保する観点から、S4/S3は、0.50~1.20がより好ましく、0.80~1.20が更に好ましい。
【0067】
なお、中間材は、一対の電極37a,37bと端子38との間の接続の構造的な自由度を高めるための部材である。
中間材の材質としては、特に限定されず、上記した端子38の材質と同様にすることができる。また、中間材は、上記した端子38の材質と異なっていてもよい。この場合、中間材は、はんだ、ろう材、導電性接着剤などから形成することができる。
【0068】
中間材の大きさ及び形状は、特に限定されない。例えば、外周壁32上の一対の電極37a,37bの全体に中間材を設けることができる。また、中間材は、外周壁32上の一対の電極37a,37bの一部に設けてもよいし、外周壁32上の一対の電極37a,37bの外縁よりも外側に延出するように設けてもよい。さらに、中間材は、隔壁35上の一対の電極37a,37bの一部に設けてもよく、一部のセル34を塞ぐように設けてもよい。
中間材の厚さは、特に限定されず、例えば、端子38の厚さと同程度とすることができる。
【0069】
中間材と端子38及び一対の電極37a,37bとの接続方法は、電気的に接続されていれば特に限定されず、例えば、拡散接合、機械的な加圧機構、溶接などによって接続することができる。
【0070】
(3-4.除湿層36)
除湿層36は、水蒸気を吸着する機能を有する層である。
除湿層36は、隔壁35(最外周のセル34の場合は、最外周のセル34を区画形成する隔壁35及び外周壁32)の表面上に設けることができる。このように除湿層36を設けることにより、再生時に除湿層36を加熱し易くなるため、除湿層36による所望の機能を再生させることができる。
【0071】
除湿層36は、除湿機能を確保する観点から、除湿材を含有する。除湿材は、水分を-20~40℃で吸着し、60℃以上の高温で離脱することが可能な機能を有することが好ましい。
除湿材としては、特に限定されないが、アルミノケイ酸塩、シリカゲル、シリカ、酸化グラフェン、高分子吸着材、ポリスチレンスルホン酸及び金属有機構造体(MOF:Metal Organic Framework)が挙げられる。これらは、単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0072】
アルミノケイ酸塩としては、AFI型、CHA型又はBEA型のゼオライト;アロフェン、イモゴライトなどの多孔質粘土鉱物を用いることが好ましい。また、アルミノケイ酸塩は、非晶質であることがより好ましい。
【0073】
シリカゲルとしては、A型シリカゲルを用いることが好ましい。
高分子吸着材としては、ポリアクリル酸系高分子鎖を有するものが好ましい。例えば、高分子吸着材として、アポリアクリル酸ナトリウムなどを用いることができる。
金属有機構造体は、金属イオンと有機分子(有機配位子)とを含む結晶性のハイブリッド材料である。金属イオンは、親水性を有する金属イオン(例えば、アルミニウムイオン)であることが好ましい。
【0074】
除湿層36は、二酸化炭素及び/又は揮発成分を吸着する機能を有する機能材を含有することができる。このような機能材を含有させることにより、空気の除湿効果に加えて空気の浄化効果を得ることができる。
機能材は、二酸化炭素及び/又は揮発成分を-20~40℃で吸着し、60℃以上の高温で離脱することが可能な機能を有することが好ましい。
このような機能を有する機能材としては、ゼオライト、シリカゲル、活性炭、アルミナ、シリカ、低結晶性粘土、非晶質アルミニウムケイ酸塩複合体などが挙げられる。機能材の種類は、除去対象成分の種類に応じて適宜選択すればよい。機能材は一種を単独使用してもよく、二種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0075】
なお、車室の空気中に含まれる揮発成分は、例えば、揮発性有機化合物(VOC)や、VOC以外のにおい成分などである。揮発成分の具体例としては、アンモニア、酢酸、イソ吉草酸、ノネナール、ホルムアルデヒド、トルエン、キシレン、パラジクロロベンゼン、エチルベンゼン、スチレン、クロルピリホス、フタル酸ジ-n-ブチル、テトラデカン、フタル酸ジ-2-エチルヘキシル、ダイアジノン、アセトアルデヒド、N-メチルカルバミン酸-2-(1-メチルプロピル)フェニルなどが挙げられる。
【0076】
除湿層36は、触媒を含有することができる。触媒を含有させることにより、酸化還元反応などを促進させて二酸化炭素及び/又は揮発成分を浄化することができる。このような機能を有する触媒としては、Pt、Pd、Agなどの金属触媒、CeO2、ZrO2などの酸化物触媒などが挙げられる。触媒は一種を単独使用してもよく、二種以上を組み合わせて使用してもよい。また、触媒は、上記の除湿材や機能材と組み合わせて用いることができる。
【0077】
除湿層36の厚さは、セル34の大きさに応じて決定すればよく、特に限定されない。例えば、除湿層36の厚さは、空気との接触を十分確保する観点から、好ましくは20μm以上、より好ましくは25μm以上、更に好ましくは30μm以上である。一方、隔壁35や外周壁32から除湿層36が剥離することを抑制する観点から、除湿層36の厚さは、好ましくは400μm以下、より好ましくは380μm以下、更に好ましくは350μm以下である。
【0078】
除湿層36の厚さは、以下の手順で測定する。ハニカム構造体31の流路方向に平行な任意の断面を切り出し、走査型電子顕微鏡などで50倍程度の断面画像を取得する。また、この断面は、ハニカム構造体31の流路に直交する断面における重心位置を通るようにする。断面画像から視認される各除湿層36について、断面積をセル34の流路方向の長さで除することで厚さを算出する。この計算を当該断面画像から視認される全ての除湿層36について行い、全体の平均値を除湿層36の厚さとする。
【0079】
調湿デバイス30内で所望の機能を発揮するという観点から、除湿層36の量は、ハニカム構造体31の容積に対して、50~500g/Lであることが好ましく、100~400g/Lであることがより好ましく、150~350g/Lであることが更に好ましい。なお、ハニカム構造体31の容積は、ハニカム構造体31の外形寸法により定まる値である。
【0080】
(3-5.調湿デバイス30の製造方法)
調湿デバイス30の製造方法は、特に限定されず、公知の方法に準じて行うことができる。以下、調湿デバイス30を製造する方法について例示的に説明する。
調湿デバイス30を構成するハニカム構造体31の製造方法は、成形工程及び焼成工程を含む。
成形工程では、BaCO3粉末、TiO2粉末、及び希土類の硝酸塩又は水酸化物の粉末を含むセラミックス原料を含有する坏土を成形し、相対密度が60%以上のハニカム成形体を作製する。
セラミックス原料は、所望する組成となるように各粉末を乾式混合することによって得ることができる。
坏土は、セラミックス原料に、分散媒、バインダ、可塑剤及び分散剤を添加して混練することによって得ることができる。坏土には、シフター、金属酸化物、特性改善剤、導電体粉末などの添加剤を必要に応じて含有させてもよい。
セラミックス原料以外の成分の配合量は、ハニカム成形体の相対密度が60%以上となるような量であれば特に限定されない。
【0081】
ここで、本明細書において「ハニカム成形体の相対密度」とは、セラミックス原料全体の真密度に対するハニカム成形体の密度の割合のことを意味する。具体的には、以下の式によって求めることができる。
ハニカム成形体の相対密度(%)=ハニカム成形体の密度(g/cm3)/セラミックス原料全体の真密度(g/cm3)×100
ハニカム成形体の密度は、純水を媒体とするアルキメデス法により測定することができる。また、セラミックス原料全体の真密度は、各原料の質量を合計した値(g)を、各原料の実の体積を合計した値(cm3)で除することによって求めることができる。
【0082】
分散媒としては、水、又は水とアルコールなどの有機溶媒との混合溶媒などを挙げることができるが、特に水を好適に用いることができる。
【0083】
バインダとしては、メチルセルロース、ヒドロキシプロポキシルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコールなどの有機バインダを例示することができる。特に、メチルセルロース及びヒドロキシプロポキシルセルロースを併用することが好適である。バインダは一種を単独で使用してもよいし、二種以上を組み合わせて使用してもよいが、アルカリ金属元素を含有していないことが好ましい。
【0084】
可塑剤としては、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリカルボン酸系高分子、アルキルリン酸エステルなどを例示することができる。
【0085】
分散剤には、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、エチレングリコール、デキストリン、脂肪酸石鹸、ポリアルコールなどの界面活性剤を用いることができる。分散剤は、一種を単独で使用するものであっても、二種以上を組み合わせて使用するものであってもよい。
【0086】
ハニカム成形体は、坏土を押出成形することによって作製することができる。押出成形に際しては、所望の全体形状、セル形状、隔壁厚さ、セル密度などを有する口金を用いることができる。
【0087】
押出成形によって得られるハニカム成形体の相対密度は、60%以上、好ましくは65%以上である。このような範囲にハニカム成形体の相対密度を制御することにより、ハニカム成形体を緻密化し、室温における電気抵抗を低下させることが可能となる。なお、ハニカム成形体の相対密度の上限値は、特に限定されないが、一般に80%、好ましくは75%である。
【0088】
ハニカム成形体は、焼成工程の前に乾燥させることができる。乾燥方法としては、特に限定されないが、例えば、熱風乾燥、マイクロ波乾燥、誘電乾燥、減圧乾燥、真空乾燥、凍結乾燥などの従来公知の乾燥方法を用いることができる。これらの中でも、成形体全体を迅速かつ均一に乾燥することができる点で、熱風乾燥と、マイクロ波乾燥又は誘電乾燥とを組み合わせた乾燥方法が好ましい。
【0089】
焼成工程は、1150~1250℃で保持した後、20~600℃/時の昇温速度で1360~1430℃の最高温度に昇温させて0.5~10時間保持することを含む。
ハニカム成形体を1360~1430℃の最高温度で0.5~10時間保持することにより、Baの一部が希土類元素で置換されたBaTiO3系結晶粒子を主成分とするハニカム構造体31を得ることができる。
また、1150~1250℃で保持することにより、焼成過程で生成するBa2TiO4結晶粒子が除去され易くなるため、ハニカム構造体31を緻密化させることができる。
さらに、1150~1250℃から1360~1430℃の最高温度までの昇温速度を20~600℃/時とすることにより、1.0~10.0質量%のBa6Ti1740結晶粒子をハニカム構造体31に生成させることができる。
【0090】
1150~1250℃での保持時間は、特に限定されないが、好ましくは0.5~10時間である。このような保持時間とすることにより、焼成過程で生成するBa2TiO4結晶粒子が安定して除去され易くなる。
【0091】
焼成工程は、昇温時に900~950℃で0.5~5時間保持することを含むことが好ましい。900~950℃で0.5~5時間保持することにより、BaCO3が効率良く分解し、所定の組成を有するハニカム構造体31が得られ易くなる。
【0092】
なお、焼成工程の前には、バインダを除去するための脱脂工程を行ってもよい。脱脂工程の雰囲気は、有機成分を完全に分解するために大気雰囲気とすることが好ましい。
また、焼成工程の雰囲気も、電気特性の制御と製造コストの観点から大気雰囲気とすることが好ましい。
焼成工程や脱脂工程に用いられる焼成炉としては、特に限定されないが、電気炉、ガス炉などを用いることができる。
【0093】
このようにして得られたハニカム構造体31に、一対の電極37a,37bを形成する。一対の電極37a,37bは、スパッタリング、蒸着、電解析出、化学析出のような金属析出法によって形成することができる。また、一対の電極37a,37bは、電極ペーストを塗布した後、焼き付けることによっても形成することもできる。さらに、一対の電極37a,37bは、溶射によって形成することもできる。一対の電極37a,37bは単層で構成してもよいが、組成の異なる複数の電極層で構成することもできる。以下、一対の電極37a,37bの代表的な形成方法を説明する。
【0094】
まず、電極材、有機バインダ及び分散媒を含む電極スラリーを調製し、ハニカム構造体31の第1端面33a又は第2端面33bに塗布する。分散媒は、水、有機溶媒(例:トルエン、キシレン、エタノール、n-ブタノール、酢酸エチル、酢酸ブチル、テルピネオール、ジヒドロテルピネオール、テキサノール、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテル)又はこれらの混合液とすることができる。ハニカム構造体31の外周の余分なスラリーをブロー及び拭き取りによって除去する。その後、スラリーを乾燥させることによってハニカム構造体31の第1端面33a又は第2端面33bに一対の電極36a,36bを形成することができる。乾燥は、例えば120~600℃程度の温度にヒーターエレメントを加熱しながら行うことができる。塗布、スラリー除去、及び乾燥の一連の工程は1回のみ実施してもよいが、複数回繰り返すことによって所望の厚さの一対の電極36a,36bを設けることができる。
【0095】
次に、一対の電極37a,37bの所定の位置に端子38を配置し、一対の電極37a,37bと端子38とを接続する。一対の電極37a,37bと端子38との接続方法としては、上述の方法を用いることができる。
なお、端子38の設置は、下記の除湿層36を形成した後に行ってもよい。
【0096】
次いで、ハニカム構造体31の隔壁35などの表面に除湿層36を形成する。
除湿層36の形成方法は、特に限定されないが、例えば、以下の工程により形成可能である。除湿材、有機バインダ及び分散媒を含むスラリーにハニカム構造体31を所定時間浸漬し、ハニカム構造体31の端面及び外周の余分なスラリーをブロー及び拭き取りによって除去する。分散媒は、水、有機溶媒(例:トルエン、キシレン、エタノール、n-ブタノール、酢酸エチル、酢酸ブチル、テルピネオール、ジヒドロテルピネオール、テキサノール、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテル)又はこれらの混合液とすることができる。その後、スラリーを乾燥させることによって隔壁35の表面に除湿層36を形成することができる。乾燥は、例えば120~600℃程度の温度にハニカム構造体31を加熱しながら行うことができる。浸漬、スラリー除去、及び乾燥の一連の工程は1回のみ実施してもよいが、複数回繰り返すことによって所望の厚さの除湿層36を隔壁35などの表面に設けることができる。
【0097】
(4.制御部50)
制御部50は、調湿デバイス30及び切替バルブ40を制御する部分であり、調湿デバイス30及び切替バルブ40と電気的に接続されている。制御部50は、調湿デバイス30の一対の電極37a,37bに電圧を印加するためのバッテリーなどの電源(図示していない)を制御することにより、ハニカム構造体31の加熱状態を調整することができる。また、制御部50は、空気が第1経路10a又は第2経路10bに流通するように切替バルブ40を制御することができる。また、制御部50は、通風機(図示していない)にも電気的に接続させて通風機を制御することもできる。
【0098】
制御部50としては、特に限定されないが、一般にECU(Engine (electronic) Control Unit)である。ECUは、各種演算処理を実行するCPU、その制御に必要なプログラムやデータが記憶されたROM、CPUでの演算結果などが一時的に記憶されるRAM、外部との間で信号を入出力するための入出力ポートを備える。
【0099】
制御部50は、除湿モードの場合、第1経路10aを空気が流通するように切替バルブ40を切替え、通風機を起動させる。このように制御することにより、車室中の空気の除湿が行われる。このとき、調湿デバイス30は加熱しない。具体的には、車室からの空気は、空調ダクト10を通って調湿デバイス30に流入し、調湿デバイス30を通過する間に車室中の空気に含まれる水分が除湿層36によって捕捉される。そして、調湿デバイス30から流出した除湿された空気は、第1経路10aを通ってエバポレータ20を流通して車室へと返送される。
【0100】
制御部50は、除湿層36の再生モードの場合、第2経路10bを空気が流通するように切替バルブ40を切替え、一対の電極37a,37bに電圧を印加するとともに通風機を起動させる。このように制御することにより、除湿層36の再生が行われる。具体的には、車室からの空気は、空調ダクト10を通って調湿デバイス30に流入し、調湿デバイス30を通過する間に、除湿層36に捕捉された水分を離脱させる。そして、調湿デバイス30から流出した水分を含む空気は、第2経路10bを通って車外へと排出される。
【0101】
除湿層36の再生モードにおいて、除湿層36に捕捉された水分の離脱を促進するため、除湿材の種類に応じて離脱温度以上に除湿層36を加熱することが好ましい。例えば、除湿層36を70~150℃に加熱することがより好ましく、80~140℃に加熱することが更に好ましく、90~130℃に加熱することが更により好ましい。
【0102】
上記の制御を安定して行う観点から、調湿デバイス30は車室に近い位置に配置されることが望ましい。したがって、感電防止などの観点から、調湿デバイス30の駆動電圧が60V以下であることが好ましい。調湿デバイス30に用いられているハニカム構造体31は、室温における電気抵抗が低いため、この低い駆動電圧でのハニカム構造体31の加熱が可能である。なお、駆動電圧の下限は、特に限定されないが、10V以上であることが好ましい。駆動電圧が10V未満であると、ハニカム構造体31の加熱時の電流が大きくなるため、導線を太くする必要がある。
【符号の説明】
【0103】
10 空調ダクト
10a 第1経路
10b 第2経路
20 エバポレータ
30 調湿デバイス
31 ハニカム構造体
32 外周壁
33a 第1端面
33b 第2端面
34 セル
35 隔壁
36 除湿層
37a,37b 一対の電極
38 端子
40 切替バルブ
50 制御部
100 車両用空調システム
図1
図2A
図2B