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特開2024-135237電極、二次電池、電池パック及び車両
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135237
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】電極、二次電池、電池パック及び車両
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/131 20100101AFI20240927BHJP
   H01M 4/485 20100101ALI20240927BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20240927BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20240927BHJP
   H01M 10/0568 20100101ALI20240927BHJP
   H01M 50/284 20210101ALI20240927BHJP
   H01M 50/249 20210101ALI20240927BHJP
   H01M 50/296 20210101ALI20240927BHJP
【FI】
H01M4/131
H01M4/485
H01M4/36 C
H01M4/62 Z
H01M10/0568
H01M50/284
H01M50/249
H01M50/296
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023045822
(22)【出願日】2023-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】休石 紘史
(72)【発明者】
【氏名】笹川 哲也
(72)【発明者】
【氏名】小板橋 惟子
(72)【発明者】
【氏名】盛本 さやか
【テーマコード(参考)】
5H029
5H040
5H050
【Fターム(参考)】
5H029AJ02
5H029AJ05
5H029AJ06
5H029AK01
5H029AK02
5H029AK03
5H029AL03
5H029AM02
5H029AM03
5H029AM04
5H029AM07
5H029AM09
5H029AM12
5H029AM16
5H029DJ09
5H029EJ07
5H040AA36
5H040AS07
5H040AT06
5H040AY05
5H040AY08
5H040DD08
5H050AA07
5H050AA12
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA02
5H050CA03
5H050CA05
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB03
5H050DA13
5H050EA12
5H050EA14
5H050FA17
5H050FA18
5H050HA04
5H050HA05
(57)【要約】
【課題】 実施形態は、サイクル性能及び出力性能に優れる電極、該電極を含む二次電池、該二次電池を含む電池パック、該電池パックを含む車両を提供することを目的とする。
【解決手段】
実施形態によると、電極が提供される。電極は、無機粒子13と、ニオブチタン酸化物粒子11と、ニオブチタン酸化物粒子の表面の少なくとも一部を被覆する無機粒子含有層12とを含む。無機粒子13の平均粒子径は、無機粒子含有層12の厚さよりも大きい。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機粒子と、ニオブチタン酸化物粒子と、前記ニオブチタン酸化物粒子の表面の少なくとも一部を被覆する無機粒子含有層とを含み、
前記無機粒子の平均粒子径は、前記無機粒子含有層の厚さよりも大きい、電極。
【請求項2】
前記無機粒子含有層の厚さが0.001μm以上0.4μm以下の範囲内である、請求項1に記載の電極。
【請求項3】
前記無機粒子の平均粒子径が0.4μm以上1μm以下の範囲内である、請求項1に記載の電極。
【請求項4】
前記ニオブチタン酸化物粒子の表面は、前記無機粒子含有層によって被覆されていない部分を含み、前記電極の表面において、前記無機粒子含有層によって被覆されていない部分の少なくとも一部が露出している、請求項1に記載の電極。
【請求項5】
前記無機粒子は、Al、Ti、Si、Zr及びMgからなる群より選択される少なくとも一種の元素を含有する金属酸化物及び固体電解質からなる群より選択される少なくとも一種を含む、請求項1に記載の電極。
【請求項6】
前記無機粒子含有層は、Al、Ti、Si、Zr及びMgからなる群より選択される少なくとも一種の元素を含有する金属酸化物を含む粒子、及び、固体電解質含有粒子からなる群より選択される少なくとも一種を含む、請求項1に記載の電極。
【請求項7】
前記無機粒子は固体電解質を含み、かつ、前記無機粒子含有層は固体電解質含有粒子を含む、請求項1に記載の電極。
【請求項8】
正極と、負極と、非水電解質とを含み、
前記非水電解質はフッ素原子を含み、
前記正極及び前記負極のうち少なくとも一方は、請求項1に記載の電極である、二次電池。
【請求項9】
請求項8に記載の二次電池を具備する電池パック。
【請求項10】
通電用の外部端子と、
保護回路と
を更に具備する請求項9に記載の電池パック。
【請求項11】
複数の前記二次電池を具備し、
前記二次電池が、直列、並列、又は直列及び並列を組み合わせて電気的に接続されている請求項9に記載の電池パック。
【請求項12】
請求項9に記載の電池パックを搭載した車両。
【請求項13】
前記車両の運動エネルギーを回生エネルギーに変換する機構を含む請求項12に記載の車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電極、二次電池、電池パック及び車両に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池などの非水電解質電池においては、充放電サイクルに伴って電極の放電容量が低下する課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-11929号公報
【特許文献2】特開2012-209064号公報
【特許文献3】特開2021-44221号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
実施形態は、サイクル性能及び出力性能に優れる電極、該電極を含む二次電池、該二次電池を含む電池パック、該電池パックを含む車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態によると、電極が提供される。電極は、無機粒子と、ニオブチタン酸化物粒子と、ニオブチタン酸化物粒子の表面の少なくとも一部を被覆する無機粒子含有層とを含む。無機粒子の平均粒子径は、無機粒子含有層の厚さよりも大きい。
【0006】
他の実施形態によれば、実施形態の電極を含む二次電池が提供される。
【0007】
他の実施形態によれば、実施形態の二次電池を含む電池パックが提供される。
【0008】
他の実施形態によれば、実施形態の電池パックを含む車両が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態に係る電極の一例を概略的に示す断面図。
図2】実施形態に係る電極の一例における、活物質粒子近傍を示す拡大図。
図3】参考例に係る電極の一例を概略的に示す断面図。
図4】第1粒子についてのHAADF-STEM像を概略的に示す図。
図5】実施形態に係る二次電池の一例を概略的に示す断面図。
図6図5に示す二次電池のA部を拡大した断面図。
図7】実施形態に係る二次電池の他の例を模式的に示す部分切欠斜視図。
図8図7に示す二次電池のB部を拡大した断面図。
図9】実施形態に係る組電池の一例を概略的に示す斜視図。
図10】実施形態に係る電池パックの一例を概略的に示す分解斜視図。
図11図10に示す電池パックの電気回路の一例を示すブロック図。
図12】実施形態に係る車両の一例を概略的に示す部分透過図。
図13】実施形態に係る車両における電気系統に関する制御システムの一例を概略的に示した図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施の形態について適宜図面を参照して説明する。なお、実施の形態を通して共通の構成には同一の符号を付すものとし、重複する説明は省略する。また、各図は実施の形態の説明とその理解を促すための模式図であり、その形状や寸法、比などは実際の装置と異なる個所があるが、これらは以下の説明と公知の技術とを参酌して、適宜設計変更することができる。
【0011】
(第1の実施形態)
電極のサイクル性能及び出力性能が低下する要因の一つとして、電極中のニオブチタン酸化物が劣化することが挙げられる。ニオブチタン酸化物の劣化は、例えば、副反応によって生じたフッ酸が、ニオブチタン酸化物と接触することにより生じ得る。
【0012】
本発明者らは、鋭意研究した結果、無機粒子がフッ酸を捕捉(トラップ)できることを見出した。ただし、電極に無機粒子を含有させるのみでは、フッ酸が無機粒子に捕捉されずにニオブチタン酸化物に接近した場合に、ニオブチタン酸化物が劣化するのを避けられない。
【0013】
本発明者らは、この結果を踏まえて更に研究した結果、第1の実施形態に係る電極を実現した。
【0014】
第1の実施形態によると、電極が提供される。第1の実施形態に係る電極は、無機粒子と、ニオブチタン酸化物粒子と、ニオブチタン酸化物粒子の表面の少なくとも一部を被覆する無機粒子含有層とを含む。無機粒子の平均粒子径は、無機粒子含有層の厚さよりも大きい。
【0015】
無機粒子及び無機粒子含有層のそれぞれは、フッ酸を捕捉(トラップ)することができる。
【0016】
そのため、無機粒子は、ニオブチタン酸化物粒子にフッ酸が接近するのを抑制できる。また、フッ酸が無機粒子に捕捉されずにニオブチタン酸化物粒子に接近した場合にも、無機粒子含有層がフッ酸を捕捉できる。よって、係る電極によれば、フッ酸がニオブチタン酸化物粒子に接触することを抑制できる結果、ニオブチタン酸化物の劣化を抑制できる。したがって、サイクル性能及び出力性能の向上に寄与する。
【0017】
さらに、当該電極において、無機粒子の平均粒子径は、無機粒子含有層の厚さよりも大きい。よって、無機粒子の平均粒子径が小さくなりすぎないため、電極の製造工程において無機粒子同士が凝集しにくい。そのため、無機粒子が電極内に均一に存在できるため、フッ酸を効率的に捕捉できる。その結果、ニオブチタン酸化物の劣化を抑制できる。したがって、サイクル性能及び出力性能の向上に寄与する。
【0018】
また、無機粒子含有層の厚さは、無機粒子の平均粒子径よりも小さい。そのため、無機粒子含有層が厚くなりすぎることに起因するイオン伝導性の低下を抑制できる。その結果、出力性能を高めることができる。
【0019】
無機粒子含有層の厚さが厚いと、フッ酸捕捉能が大きくなる傾向がある一方で、無機粒子含有層の厚さが薄い場合と比較して活物質粒子の電子伝導性が低くなり得る。
【0020】
一方、無機粒子は、平均粒子径が大きいほど、無機粒子同士が凝集することを抑制できるため、無機粒子が電極中に均一に分散できる傾向にある。また、電極は、導電剤をさらに含み得る。無機粒子の凝集を抑制することで導電剤が無機粒子に吸着しにくくなり、導電剤の分散性を向上できる。よって、出力性能の向上に寄与する。したがって、無機粒子含有層の厚さが厚い場合にも、平均粒子径が大きい無機粒子と組み合わせることにより、電極としての出力性能を高く保つことができる。
【0021】
係る電極は、無機粒子の平均粒子径が無機粒子含有層の厚さよりも大きい。そのため、無機粒子含有層の厚さの増加に伴う電子伝導性の低下に対する、無機粒子および導電剤の分散性が高いことによる出力性能向上効果が大きい。よって、出力性能を高く保つことができる。
【0022】
なお、無機粒子含有層の厚さが薄い場合には、活物質粒子の電子伝導性が高く保たれ得る。そのため、無機粒子含有層の厚さよりも大きい限り、比較的小さな平均粒子径を有する無機粒子と組み合わせた場合にも、無機粒子の平均粒子径が小さいことに起因する出力性能の低下に対する、無機粒子含有層が薄いことによる電子伝導性向上効果を大きくできる。よって、電極としての出力性能を高く保つことができる。
【0023】
以下、実施形態に係る電極を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0024】
係る電極は、例えば、非水電解質電池用であり得る。非水電解質電池は、例えば、アルカリ金属イオンをキャリアイオンとする非水電解質電池であり得る。例えば、リチウム電池(リチウムイオン電池)であり得る。係る電極は、例えば、二次電池用であり得る。
【0025】
非水電解質電池の製造工程においては、水が不可避不純物として混入しやすい。電極と組み合わせる非水電解質として、フッ素原子を含有する非水電解質を用いた場合、水と非水電解質とが副反応を生じ、非水電解質の分解産物として、フッ酸(フッ化水素、HF)が生成し得る。非水電解質の詳細については、後述する。
【0026】
フッ酸は、電極に含まれる材料に接触した際に、例えば遷移金属を溶出させることがある。溶出した遷移金属は、例えば、電極上に堆積し得る。そのほか、フッ酸は、電極を電解質と組み合わせた場合に、電解質と反応してフッ化リチウムを形成し得る。フッ化リチウムは、例えば、電極上に堆積し得る。電極上に堆積したこれらの物質は、抵抗上昇の要因となり得る。
【0027】
係る電極は、無機粒子及び無機粒子含有層を含む。そのため、遷移金属の溶出、及び、フッ化リチウムの形成を抑制できる。したがって、電極の出力性能を向上できる。
【0028】
図1は、電極の一例を概略的に示す断面図である。図2は、電極の一例における、活物質粒子近傍を示す拡大図である。図1及び図2では、便宜的に、活物質含有層に含まれ得る導電剤及び結着剤の描写を省略している。
【0029】
電極3は、集電体3aと、集電体3a上に形成された活物質含有層3bとを含む。活物質含有層3bは、第1粒子10と、無機粒子13とを含む。第1粒子10は、ニオブチタン酸化物粒子11と、ニオブチタン酸化物粒子11の表面の少なくとも一部を被覆する無機粒子含有層12とを含む。
【0030】
図2に示すように、第1粒子10は、露出部14を含み得る。露出部14は、ニオブチタン酸化物粒子11の表面のうち、無機粒子含有層12によって被覆されていない部分である。換言すれば、露出部14は、第1粒子10の表面のうち、ニオブチタン酸化物粒子11の表面が露出している部分である。図2が図示する第1粒子10は露出部14を含んでいるが、第1粒子10は、露出部を含んでいなくてもよい。すなわち、ニオブチタン酸化物粒子11の表面のすべてが、無機粒子含有層12によって被覆されていてもよい。
【0031】
第1粒子10が露出部14を含んでいると、イオン伝導性を高く保つことができ、出力性能を向上できるため、好ましい。
【0032】
第1粒子10が露出部14を含んでいる場合、電極3の表面において、ニオブチタン酸化物粒子11の表面の少なくとも一部が露出し得る。電極3の表面とは、活物質含有層3bの主面のうち、集電体3aと接していない側の主面であり得る。
【0033】
参考例に係る電極について、図3を参照して説明する。
【0034】
図3は、参考例に係る電極の一例を概略的に示す断面図である。図3では、便宜的に、活物質含有層に含まれ得る導電剤及び結着剤の描写を省略している。参考例に係る電極30は、集電体3aと、集電体3a上に形成された活物質含有層30bとを含む。活物質含有層30bは、ニオブチタン酸化物粒子11と、無機粒子13とを含む。
【0035】
図3に示すように、参考例に係る電極30において、ニオブチタン酸化物粒子11の表面には無機粒子含有層が存在しない。そのため、ニオブチタン酸化物粒子11の表面の全面が露出している。したがって、無機粒子13により捕捉されなかったフッ酸がニオブチタン酸化物粒子11に接近した場合には、当該フッ酸はニオブチタン酸化物粒子11の表面に接触し得る。その結果、ニオブチタン酸化物粒子が劣化し得る。
【0036】
以下、実施形態に係る電極を、さらに詳細に説明する。
【0037】
実施形態に係る電極は、集電体と活物質含有層とを含むことができる。活物質含有層は、集電体の片面又は両面に形成され得る。活物質含有層は、第1粒子と、無機粒子とを含む。第1粒子は、ニオブチタン酸化物粒子と、ニオブチタン酸化物粒子の表面の少なくとも一部を被覆する無機粒子含有層とを含む。
【0038】
ニオブチタン酸化物は、活物質として機能し得る。第1粒子は、ニオブチタン酸化物粒子を含むため、活物質粒子であり得る。活物質含有層は、活物質として、第1粒子を単独で含んでもよく、第1粒子と、1種又は2種以上の他の活物質とを混合した混合物を含んでもよい。
【0039】
活物質含有層は、第1粒子を含む活物質と、無機粒子と、任意に導電剤及び結着剤とを含むことができる。
【0040】
ニオブチタン酸化物粒子と、無機粒子含有層とを含む第1粒子の平均粒子径は、0.5μm以上2.0μm以下の範囲内であることが好ましい。第1粒子の平均粒子径が0.5μm以上であると第1粒子の表面エネルギーを低くできるため、例えば、スラリー調製における分散工程時の凝集を抑制できる。第1粒子の平均粒子径が2.0μm以下であると、第1粒子のLi固体内拡散性を高くできる。そのため、活物質のLi固体内拡散性を高くできる。
【0041】
ニオブチタン酸化物粒子が含むニオブチタン酸化物の例として、単斜晶型ニオブチタン酸化物が挙げられる。
【0042】
上記単斜晶型ニオブチタン酸化物の例として、LixTi1-yM1yNb2-zM2z7+δで表される化合物が挙げられる。ここで、M1は、Zr,Si,及びSnからなる群より選択される少なくとも1つである。M2は、V,Ta,及びBiからなる群より選択される少なくとも1つである。組成式中のそれぞれの添字は、0≦x≦5、0≦y<1、0≦z<2、-0.3≦δ≦0.3である。単斜晶型ニオブチタン酸化物の具体例として、LixNb2TiO7(0≦x≦5)が挙げられる。
【0043】
単斜晶型ニオブチタン酸化物の他の例として、LixTi1-yM3y+zNb2-z7-δで表される化合物が挙げられる。ここで、M3は、Mg,Fe,Ni,Co,W,Ta,及びMoより選択される少なくとも1つである。組成式中のそれぞれの添字は、0≦x≦5、0≦y<1、0≦z<2、-0.3≦δ≦0.3である。
【0044】
無機粒子含有層の形態は特に限定されないが、例えば、ニオブチタン酸化物粒子の表面に、無機材料を含有する粒子が集合して、ニオブチタン酸化物粒子表面の少なくとも一部を被覆している形態であり得る。無機材料を含有する粒子は、一次粒子であってもよく、または一次粒子が集合した二次粒子の形態であってもよい。
【0045】
無機粒子含有層は、ニオブチタン酸化物粒子の表面の一部を被覆していてもよく、またはニオブチタン酸化物粒子の表面のすべてを被覆していてもよい。無機粒子含有層がニオブチタン酸化物粒子の表面のすべてを被覆していない場合、ニオブチタン酸化物粒子の表面は、無機粒子含有層によって被覆されていない部分を含み得る。ニオブチタン酸化物の表面が無機粒子含有層によって被覆されていない部分を含む場合、電極の表面において、無機粒子含有層によって被覆されていない部分の少なくとも一部が露出し得る。
【0046】
無機粒子含有層の厚さは、0.0005μm以上0.7μm以下の範囲内にすることができる。無機粒子含有層の厚さは、0.001μm以上0.4μm以下の範囲内であることが好ましい。無機粒子含有層の厚さが0.001μm以上であると、フッ酸に対する耐久性を高くできる。具体的には、無機粒子含有層が捕捉できるフッ酸量が増加するため、無機粒子含有層が捕捉できるフッ酸量を超えたフッ酸が、ニオブチタン酸化物粒子と接触することを抑制できる。無機粒子含有層の厚さが0.4μm以下であると、抵抗上昇を抑制できる。無機粒子含有層の厚さの下限は、例えば、0.0010μmにすることができる。
【0047】
無機粒子含有層の厚さは、0.01μm以上0.35μm以下の範囲内であると、より好ましい。無機粒子含有層の厚さは、0.05μm以上0.3μm以下の範囲内であると、さらに好ましい。
【0048】
無機粒子含有層の質量は、ニオブチタン酸化物粒子の質量に対して1質量%以上20質量%以下の範囲内であることが好ましい。1質量%以上であると、フッ化水素がニオブチタン酸化物粒子と接触することを抑制できる。20質量%以下であると、界面抵抗の上昇を抑制できる。
【0049】
無機材料を含有する粒子は、Al、Ti、Si、Zr及びMgからなる群より選択される少なくとも一種の元素を含有する金属酸化物を含む粒子、及び、固体電解質含有粒子からなる群より選択される少なくとも一種を含むことが好ましい。
【0050】
無機粒子含有層は、金属酸化物を含む粒子を単独で含んでもよく、固体電解質含有粒子を単独で含んでもよく、金属酸化物を含む粒子と固体電解質含有粒子の両方を含んでもよい。金属酸化物を含む粒子の種類は、1種又は2種以上にすることができる。固体電解質含有粒子の種類は、1種又は2種以上にすることができる。
【0051】
金属酸化物を含む粒子は、固体電解質をさらに含んでもよい。固体電解質含有粒子は、金属酸化物をさらに含んでもよい。
【0052】
金属酸化物の例としては、例えば、Al、TiO、SiO、ZrO及びMgOを挙げることができる。金属酸化物の種類は、1種又は2種以上にすることができる。
【0053】
固体電解質は、Liイオン伝導性を有する固体物質である。ここでいうLiイオン伝導性を有するとは、25℃で1×10-6 S/cm以上のリチウムイオン伝導度を示すことを指す。固体電解質としては、例えば、酸化物系固体電解質、又は硫化物系固体電解質を挙げることができる。固体電解質の具体例は、下記のとおりである。
【0054】
酸化物系固体電解質としては、NASICON(Sodium (Na) Super Ionic Conductor)型構造を有するリチウムリン酸固体電解質を用いることができる。例えば、一般式Li1+xMα2(PO4)3で表されるリチウムリン酸固体電解質を用いることが好ましい。上記一般式中のMαは、例えば、チタン(Ti)、ゲルマニウム(Ge)、ストロンチウム(Sr)、ジルコニウム(Zr)、スズ(Sn)、アルミニウム(Al)、及びカルシウム(Ca)からなる群より選択される1以上である。添字xは、0≦x≦2の範囲内にある。
【0055】
NASICON型構造を有するリチウムリン酸固体電解質の他の例としては、Li1+xAlxTi2-x(PO4)3で表され0.1≦x≦0.5であるLATP化合物;Li1+xAlyMβ2-y(PO4)3で表されMβはTi,Ge,Sr,Zr,Sn,及びCaからなる群より選択される1以上であり0≦x≦1及び0≦y≦1である化合物;Li1+xAlxGe2-x(PO4)3で表され0≦x≦2である化合物;及び、Li1+xAlxZr2-x(PO4)3で表され0≦x≦2である化合物;Li1+x+yAlxMγ2-xSiy3-y12で表されMγはTi及びGeからなる群より選択される1以上であり0<x≦2、0≦y<3である化合物;Li1+2xZr1-xCax(PO4)3で表され0≦x<1である化合物を挙げることができる。
【0056】
また、酸化物系固体電解質の例としては、上記リチウムリン酸固体電解質の他にも、LixPOyzで表され2.6≦x≦3.5、1.9≦y≦3.8、及び0.1≦z≦1.3であるアモルファス状のLIPON化合物(例えば、Li2.9PO3.30.46);ガーネット型構造のLa5+xxLa3-xMδ212で表されAはCa,Sr,及びBaからなる群より選択される1以上でMδはNb及びTaからなる群より選択される1以上であり0≦x≦0.5である化合物;Li3Mδ2-x212で表されMδはNb及びTaからなる群より選択される1以上でありLはZrを含み得0≦x≦0.5である化合物;Li7-3xAlxLa3Zr312で表され0≦x≦0.5である化合物;Li5+xLa3Mδ2-xZrx12で表されMδはNb及びTaから成る群より選択される1以上であり0≦x≦2であるLLZ化合物(例えば、Li7La3Zr212);及びペロブスカイト型構造を有しLa2/3-xLixTiO3で表され0.3≦x≦0.7である化合物が挙げられる。
【0057】
上記化合物のうち1以上を固体電解質として用いることができる。上記固体電解質を2以上用いてもよい。
【0058】
無機粒子含有層は、固体電解質含有粒子を含むことが好ましい。固体電解質含有粒子を含む無機粒子含有層は、高いイオン伝導性を有することができる。したがって、出力性能を高くすることができる。
【0059】
実施形態に係る電極が、例えば、第1粒子を負極活物質として含む場合は、他の活物質の例には、ラムスデライト構造を有するチタン酸リチウム(例えばLi2+yTi37、0≦y≦3)、スピネル構造を有するチタン酸リチウム(例えば、Li4+xTi512、0≦x≦3)、二酸化チタン(TiO2)、アナターゼ型二酸化チタン、ルチル型二酸化チタン、五酸化ニオブ(Nb25)、ホランダイト型チタン複合酸化物、直方晶型(orthorhombic)チタン複合酸化物、及び単斜晶型ニオブチタン酸化物が挙げられる。単斜晶型ニオブチタン酸化物としては、例えば、先に説明したのと同じものを用いることができる。
【0060】
上記直方晶型チタン含有複合酸化物の例として、Li2+a 2-bTi6-cII d14+σで表される化合物が挙げられる。ここで、Mは、Sr,Ba,Ca,Mg,Na,Cs,Rb及びKからなる群より選択される少なくとも1つである。MIIはZr,Sn,V,Nb,Ta,Mo,W,Y,Fe,Co,Cr,Mn,Ni,及びAlからなる群より選択される少なくとも1つである。組成式中のそれぞれの添字は、0≦a≦6、0≦b<2、0≦c<6、0≦d<6、-0.5≦σ≦0.5である。直方晶型チタン含有複合酸化物の具体例として、Li2+aNa2Ti614(0≦a≦6)が挙げられる。
【0061】
無機粒子の平均粒子径は、0.3μm以上2.0μm以下の範囲内にすることができる。無機粒子の平均粒子径は、0.4μm以上1.0μm以下の範囲内であることが好ましい。無機粒子の平均粒子径が0.4μm以上であると、無機粒子1個当たりの捕捉できるフッ酸の量を多くすることができる。さらに、電極の製造工程において、無機粒子同士が凝集することを抑制できるため、無機粒子が電極中に均一に分散できる。無機粒子の平均粒子径が1.0μm以下であると、無機粒子の質量当たりの個数を多くできる。また、電極中の微細な隙間にも、均一に無機粒子を分布させることができる。そのため、平均粒子径が0.4μm以上1.0μm以下の範囲内である無機粒子は、効率的にフッ酸を捕捉できる。
【0062】
無機粒子の平均粒子径は、0.4μm以上0.9μm以下の範囲内であると、より好ましい。無機粒子の平均粒子径は、0.4μm以上0.8μm以下の範囲内であると、さらに好ましい。
【0063】
無機粒子は、一次粒子であってもよいし、一次粒子が凝集した二次粒子であってもよいし、又は一次粒子と二次粒子との混合物であってもよい。
【0064】
無機粒子は、Al、Ti、Si、Zr及びMgからなる群より選択される少なくとも一種の元素を含有する金属酸化物及び固体電解質からなる群より選択される少なくとも一種を含むことが好ましい。無機粒子は、上記のうち、金属酸化物のみを含んでもよく、固体電解質のみを含んでもよく、金属酸化物及び固体電解質の両方を含んでもよい。
【0065】
金属酸化物及び固体電解質としては、先に説明した種類のものを用いることができる。
【0066】
無機粒子は、固体電解質を含むことが好ましい。固体電解質を含む無機粒子は、高いイオン伝導性を有することができる。したがって、電極の出力性能を高くすることができる。
【0067】
無機粒子と無機粒子含有層は、同じ物質からなっていてもよく、または互いに異なる物質を含んでいてもよい。無機粒子は固体電解質を含み、かつ、無機粒子含有層は固体電解質含有粒子を含むことが好ましい。
【0068】
導電剤は、集電性能を高め、且つ、活物質と集電体との接触抵抗を抑えるために配合される。導電剤の例には、気相成長カーボン繊維(Vapor Grown Carbon Fiber;VGCF)、アセチレンブラックなどのカーボンブラック、黒鉛、カーボンナノチューブ及びカーボンナノファイバーのような炭素質物が含まれる。これらの1つを導電剤として用いてもよく、或いは、2つ以上を組み合わせて導電剤として用いてもよい。あるいは、導電剤を用いる代わりに、活物質粒子の表面に、炭素コートや電子導電性無機材料コートを施してもよい。
【0069】
結着剤は、分散された活物質の間隙を埋め、また、活物質と集電体を結着させるために配合される。結着剤の例には、ポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoro ethylene;PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(polyvinylidene fluoride;PVdF)、フッ素系ゴム、スチレンブタジェンゴム(styrene-butadiene rubber;SBR)、ポリアクリル酸化合物、イミド化合物、カルボキシメチルセルロース(carboxymethyl cellulose;CMC)、及びCMCの塩が含まれる。これらの1つを結着剤として用いてもよく、或いは、2つ以上を組み合わせて結着剤として用いてもよい。
【0070】
活物質含有層中の活物質、無機粒子、導電剤及び結着剤の配合割合は、電極の用途に応じて適宜変更することができる。例えば、電極を二次電池の負極として用いる場合は、活物質(負極活物質)、無機粒子、導電剤及び結着剤を、それぞれ、68質量%以上96質量%以下、1質量%以上10質量%以下、2質量%以上30質量%以下及び2質量%以上30質量%以下の割合で配合することが好ましい。無機粒子の量を1質量%以上とすることにより、フッ酸トラップ効果を担保できる。導電剤の量を2質量%以上とすることにより、活物質含有層の集電性能を向上させることができる。また、結着剤の量を2質量%以上とすることにより、活物質含有層と集電体との結着性が十分となり、優れたサイクル性能を期待できる。一方、無機粒子の量は、10質量%以下にすることが電子伝導性担保の点で好ましい。導電剤及び結着剤はそれぞれ30質量%以下にすることが高容量化を図る上で好ましい。
【0071】
活物質中の第1粒子の割合は、80質量%以上であることが好ましい。活物質中の第1粒子の割合は、100質量%にすることができる。
【0072】
集電体は、活物質にリチウム(Li)が挿入及び脱離される電位において電気化学的に安定である材料が用いられる。例えば、活物質が負極活物質として用いられる場合は、集電体は、銅、ニッケル、ステンレス又はアルミニウム、或いは、Mg、Ti、Zn、Mn、Fe、Cu、及びSiから選択される一以上の元素を含むアルミニウム合金から作られることが好ましい。集電体の厚さは、5μm以上20μm以下であることが好ましい。このような厚さを有する集電体は、電極の強度と軽量化のバランスをとることができる。
【0073】
また、集電体は、その表面に活物質含有層が形成されていない部分を含むことができる。この部分は、集電タブとして働くことができる。
【0074】
<電極の作製方法>
電極は、例えば、次の方法により作製することができる。
【0075】
まず、ニオブチタン酸化物粒子と、無機粒子含有層とを含む第1粒子を作製する。次いで、第1粒子を含む活物質、無機粒子、導電剤及び結着剤を溶媒に懸濁して、スラリーを調製する。スラリーの溶媒としては、例えば水、N-メチルピロリドン(NMP)を用いることができる。このスラリーを、集電体の片面又は両面に塗布する。次いで、塗布したスラリーを乾燥させて、活物質含有層と集電体との積層体を得る。その後、この積層体にプレスを施す。このようにして、電極を作製する。
【0076】
スラリーの調製における懸濁時に、ビーズミルによる攪拌を行ってもよい。後述する第1粒子の作製において露出部の形成を行う場合は、懸濁用の攪拌条件は、ガラスビーズ直径2mm程度、充填率50%程度、攪拌速度3000rpm程度、攪拌時間1時間程度とすることが好ましい。上記の条件とすることにより、攪拌強度が強くなりすぎないため、第1粒子が過度に削られることに起因して無機粒子含有層の厚さが薄くなりすぎることを抑制できる。
【0077】
或いは、電極は、次の方法により作製してもよい。まず、第1粒子を含む活物質、無機粒子、導電剤及び結着剤を混合して、混合物を得る。次いで、この混合物をペレット状に成形する。次いで、これらのペレットを集電体上に配置することにより、電極を得ることができる。
【0078】
(第1粒子の作製方法)
第1粒子は、例えば、以下のようにして作製できる。
【0079】
まず、溶媒に無機粒子含有層前駆体を溶解又は分散させて、無機粒子含有層前駆体溶液を調製する。
【0080】
溶媒としては、例えば、水を用いることができる。溶媒に、硝酸、ポリビニルアルコール(PVA)をさらに添加してもよい。硝酸を添加することにより、無機粒子含有層前駆体に含有される金属元素を、溶媒中に溶解しやすくできる。PVAを添加することにより、分散性を保持できる。硝酸及びPVAの濃度は、それぞれ0.01質量%以上0.05質量%以下、0.1質量%以上20質量%以下の範囲内にすることができる。
【0081】
無機粒子含有層前駆体としては、所望の無機粒子含有層に含有される元素を含む材料を用いることができる。例えば、所望の無機粒子含有層に含有される金属元素を含むアルコキシド又は硝酸塩を用いることができる。また、所望の無機粒子含有層がリン(P)を組成に含む場合、リン(P)源として、例えば、リン酸二水素アンモニウムを用いることができる。これらの材料を、所望の無機粒子含有層の組成となるようなモル比で混合し、溶媒に溶解又は分散させることにより、無機粒子含有層前駆体溶液を得ることができる。
【0082】
無機粒子含有層前駆体溶液に、ニオブチタン酸化物粒子を添加して攪拌し、分散液を調製する。攪拌後の分散液から溶媒を除去し、乾燥粉を得る。乾燥粉を焼成することにより、ニオブチタン酸化物粒子表面上に、無機粒子含有層が形成された第1粒子を作製できる。
【0083】
無機粒子含有層前駆体溶液とニオブチタン酸化物粒子の混合割合は、例えば、焼成後に得られる無機粒子含有層の質量が、ニオブチタン酸化物粒子の質量に対して1質量%以上20質量%以下となるような割合にすることができる。1質量%以上とすると、焼成後に無機粒子含有層が形成されやすくできる。20質量%以下とすると、過剰な無機粒子含有層の形成を抑制できる。
【0084】
焼成条件は特に制限されないが、焼成温度は600℃以上1000℃以下にすることが好ましい。焼成時間は、5時間以上10時間以下にすることが好ましい。焼成時間は、焼成温度に応じて変化させることができる。
【0085】
(露出部の形成)
上記のようにして得られた第1粒子に、露出部を形成してもよい。露出部は、例えば、第1粒子をビーズミルに供することにより、形成できる。ビーズミルとしては、例えば湿式ビーズミルを用いることができる。
【0086】
露出部形成用のビーズミルは、例えば、以下のような条件で行うことができる。ビーズミルに用いるガラスビーズの直径は、2mm以上10mm以下の範囲内にすることが好ましい。ガラスビーズの直径が2mm以上であると、粉砕力を担保できる。ガラスビーズの直径が10mm以下であると、粉砕効率を高くできる。ビーズミルにおけるガラスビーズの充填率は、50%以上80%以下の範囲内にすることが好ましい。ガラスビーズの充填率が50%以上であると、粉砕効率を高くできる。ガラスビーズの充填率が80%以下であると、ビーズの移動効率が高く、結果として粉砕効率を高くできる。ビーズミルは、1000rpm以上3000rpm以下で行うことが好ましい。1000rpm以上であると、粉砕効率を高くできる。3000rpm以下であると、第1粒子が過剰に粉砕されることを抑制できる。攪拌時間は、30分以上60分以下にすることが好ましい。30分以上であると、露出部を形成しやすくできる。60分以下であると、第1粒子が過剰に粉砕されることを抑制できる。
【0087】
あらかじめ露出部を形成した一次粒子を、前述のスラリーの調製に用いることができる。または、以下のようにして、スラリーの調製と同時に露出部の形成を行うこともできる。
【0088】
まず、溶媒に、露出部の形成を行っていない第1粒子と、無機粒子とを添加して、第1のビーズミルを行う。第1のビーズミル条件を、上記の露出部形成用の条件とすることで、第1粒子に露出部を形成する。次いで、導電剤と、結着剤としてのCMCとを添加し、第2のビーズミルを行う。第2のビーズミル条件は、先に説明した懸濁用の攪拌条件とする。最後にCMC以外の種類の結着剤をさらに添加して攪拌することで、スラリーを調製できる。または、露出部の形成を行っていない第1粒子を含む活物質、無機粒子、導電剤及び結着剤を溶媒に添加し、露出部形成用の条件でビーズミルを行うことによっても、スラリーを調製できる。以上のようにして、露出部を含む一次粒子を含有するスラリーを調製することができる。
【0089】
<活物質の各種測定方法>
次に、活物質の組成及び構造の測定方法を説明する。
【0090】
電池に組み込まれている電極に含まれる活物質について測定を行う場合は、以下のように電池から電極を取り出した後、電極から活物質を取り出して、測定に供する。
【0091】
(電極の取り出し)
まず、電極に含まれるニオブチタン酸化物から、リチウムイオンを完全に放出した状態にする。例えば、負極について測定を行う場合、電池を完全に放電状態にする。但し、完全放電状態の電池においても、負極中のニオブチタン酸化物粒子内に、リチウムイオンが僅かに残留することがある。
【0092】
次に、アルゴンを充填したグローブボックス中で電池を分解し、測定対象の活物質を含んだ電極を取り出す。次いで、取り出した電極を、適切な溶媒で洗浄する。ここで使用する溶媒は、当該電池が非水電解質電池であれば、非水電解質が含む有機溶媒、例えばエチルメチルカーボネートなどを用いることが好ましい。
【0093】
(活物質の取り出し)
取り出した電極を適宜裁断し、溶媒中に漬け、超音波をかける。溶媒としては、アルコール、NMPなどの有機溶媒を用いることが好ましい。これにより、集電箔から活物質含有層を剥離することができる。次に、剥離した活物質含有層を溶媒に分散して得られた分散液を、遠心分離に供する。これにより、カーボン等の導電剤を含む活物質含有層の粉末から、活物質を分離することができる。
【0094】
(第1粒子の特定)
分離した活物質に、ニオブチタン酸化物を含む粒子が含まれることは、誘導結合プラズマ(Inductively Coupled Plasma:ICP)発光分光法により特定できる。ICP分析は、具体的には以下のように行うことができる。前述の方法で分離した活物質を酸に溶解させて、測定試料を調製する。調製した測定試料に対して、ICP発光分光法による分析を行い、測定試料中の単位重量あたりの各元素の濃度を測定する。ICP分析機器の例としては、エスアイアイ・ナノテクノロジー社製SPS-3520UVまたはこれと等価な機能を有する装置を挙げることができる。この測定結果から、活物質に含まれる金属元素の組成比を算出することができる。この組成比から、活物質に、ニオブチタン酸化物を含む粒子が含まれることを特定できる。
【0095】
ニオブチタン酸化物を含む粒子が無機粒子含有層をさらに含むことは、以下のようにして特定できる。前述の方法で分離した活物質を透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope:TEM)観察し、エネルギー分散型X線分光(Energy Dispersive X-ray Spectroscopy:EDX)測定による元素マッピングを行うことにより、ニオブチタン酸化物を含む粒子のうち、無機粒子含有層をさらに含む粒子を判別できる。
【0096】
ニオブチタン酸化物を含む粒子のうち、無機粒子含有層をさらに含む粒子を、第1粒子として特定できる。
【0097】
(ニオブチタン酸化物粒子と無機粒子含有層との判別)
ニオブチタン酸化物粒子と無機粒子含有層は、活物質中の第1粒子を、透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope:TEM)観察することによって判別できる。
【0098】
TEM観察には、高角散乱環状暗視野走査透過顕微鏡法(High-angle Annular Dark Field Scanning Transmission Electron Microscope:HAADF-STEM)像を用いることが好ましい。HAADF-STEMとは、高角側に散乱した透過電子を検出して観察する手法であり、原子量に比例したコントラストを得ることができる。第1粒子では、ニオブチタン複合酸化物を含むニオブチタン酸化物粒子が、無機粒子含有層よりも多くのNb元素を含み得る。そのため、第1粒子についてのHAADF-STEM像では、ニオブチタン酸化物粒子を無機粒子含有層に対して暗く観察することができる。これによって、無機粒子含有層とニオブチタン酸化物粒子とをコントラストの差から明瞭に判別できる。
【0099】
(無機粒子含有層の厚さの測定方法)
図4を参照しながら、無機粒子含有層の厚さの測定方法を記載する。図4は、第1粒子についてのHAADF-STEM像を概略的に示す図である。
【0100】
まず、TEM観察像から任意の第1粒子10を選択する。次に、選択した第1粒子10について、HAADF-STEM観察を行う。得られたHAADF-STEM像において、ニオブチタン酸化物粒子11と無機粒子含有層12とをコントラストから判別することができる。
【0101】
第1粒子10についてのHAADF-STEM像において、ニオブチタン酸化物粒子11の表面上の1点を点Rと設定する。点Rは、無機粒子含有層12の最内部にあり得る。次に、ニオブチタン酸化物粒子11における、点Rについての接線rを引く。点Rの接線rに垂直な線sを引く。その線sと、第1粒子10の最外部とが交わる点を点Sとする。点Sは、無機粒子含有層12の最外部にあり得る。同様の作業を同一の第1粒子10において行い、第1粒子10における最も大きな距離RSを、当該第1粒子の無機粒子含有層12の厚さとする。同様の操作を10個の第1粒子に対して行い、その平均値を無機粒子含有層12の厚さと定義する。
【0102】
ニオブチタン酸化物粒子11の表面において、無機粒子含有層12が形成されていない部分が、露出部14であり得る。
【0103】
(FE-TEM)
第1粒子が露出部を含むことは、第1粒子の電界放射型分析透過電子顕微鏡(Field-Emission Transmission Electron Microscope:FE-TEM)観察によって判別することができる。
【0104】
第1粒子の表面を、倍率100万倍程度の高倍率にて、FE-TEM観察する。第1粒子において、ニオブチタン酸化物粒子の表面上に他の組成の化合物がない部分を、露出部と定義できる。
【0105】
<無機粒子の平均粒子径の測定>
無機粒子の平均粒子径は、電極の断面についてのTEM観察により測定できる。
【0106】
電池に組み込まれている電極について測定を行う場合には、先に説明したのと同様にして、電池から電極を取り出し、測定に供する。
【0107】
電極の断面を、倍率1500倍にて、TEM観察する。観察視野内の粒子のうち、先に説明した固体電解質に含有される元素を含む粒子を、固体電解質含有粒子として特定できる。例えば、粒子がAl、Ti及びPを含む場合、当該粒子は、リチウムリン酸固体電解質であるLATP化合物を含むことを特定できる。また、観察視野内の粒子のうち、先に説明した金属酸化物に含有される元素を含む粒子を、金属酸化物を含む粒子として特定できる。例えば、Alを含む粒子をAl含有粒子、Siを含む粒子をSiO含有粒子、Tiを含む粒子をTiO含有粒子、Zrを含む粒子をZrO含有粒子、Mgを含む粒子をMgO含有粒子として、それぞれ特定できる。さらに、TEM-EDX測定で、先に説明した金属酸化物に含有される金属元素以外の金属元素を含まないことを特定することによって、測定対象の粒子に含有される金属酸化物の種類を判別できる。例えば、測定対象の粒子に、Ti以外の金属元素が含まれていなければ、当該粒子がTiOを含むことを特定できる。上記の固体電解質含有粒子、及び、金属酸化物を含む粒子を、無機粒子として特定できる。観察視野内の5個の無機粒子について粒子径を測定し、平均値を平均粒子径とする。
【0108】
第1の実施形態に係る電極は、無機粒子と、ニオブチタン酸化物粒子と、ニオブチタン酸化物粒子の表面の少なくとも一部を被覆する無機粒子含有層とを含む。無機粒子の平均粒子径は、無機粒子含有層の厚さよりも大きい。そのため、係る電極は、サイクル性能及び出力性能を向上できる。
【0109】
(第2の実施形態)
第2の実施形態によると、負極と、正極と、電解質とを含む二次電池が提供される。正極及び負極のうち少なくとも一方が、第1の実施形態に係る電極である。つまり、係る二次電池は、第1の実施形態に係る電極を含む。
【0110】
係る二次電池は、正極と負極との間に配されたセパレータを更に具備することもできる。負極、正極及びセパレータは、電極群を構成することができる。電解質は、電極群に保持され得る。
【0111】
また、係る二次電池は、電極群及び電解質を収容する外装部材を更に具備することができる。
【0112】
さらに、係る二次電池は、負極に電気的に接続された負極端子及び正極に電気的に接続された正極端子を更に具備することができる。
【0113】
係る二次電池は、例えばリチウム二次電池であり得る。また、二次電池は、非水電解質を含んだ非水電解質二次電池を含む。
【0114】
以下、負極、正極、電解質、セパレータ、外装部材、負極端子及び正極端子について詳細に説明する。
【0115】
1)負極
負極は、負極集電体と、負極活物質含有層とを含むことができる。負極集電体及び負極活物質含有層は、それぞれ、第1の実施形態に係る電極が含むことのできる集電体及び活物質含有層であり得る。負極活物質含有層は、ニオブチタン酸化物粒子と無機粒子含有層とを含む第1粒子を、負極活物質として含み得る。
【0116】
負極の詳細のうち、第1の実施形態について説明した詳細と重複する部分は、省略する。
【0117】
負極活物質含有層の密度(集電体を含まず)は、1.8g/cm3以上2.8g/cm3以下であることが好ましい。負極活物質含有層の密度がこの範囲内にある負極は、エネルギー密度と電解質の保持性とに優れている。負極活物質含有層の密度は、2.1g/cm3以上2.6g/cm3以下であることがより好ましい。
【0118】
負極は、例えば、第1の実施形態に係る電極と同様の方法により作製することができる。
【0119】
2)正極
正極は、正極集電体と、正極活物質含有層とを含むことができる。正極活物質含有層は、正極集電体の片面又は両面に形成され得る。正極活物質含有層は、正極活物質と、任意に導電剤及び結着剤を含むことができる。
【0120】
正極活物質としては、例えば、酸化物又は硫化物を用いることができる。正極は、正極活物質として、1種類の化合物を単独で含んでいてもよく、或いは2種類以上の化合物を組み合わせて含んでいてもよい。酸化物及び硫化物の例には、Li又はLiイオンを挿入及び脱離させることができる化合物を挙げることができる。
【0121】
このような化合物としては、例えば、二酸化マンガン(MnO2)、酸化鉄、酸化銅、酸化ニッケル、リチウムマンガン複合酸化物(例えばLixMn24又はLixMnO2;0<x≦1)、リチウムニッケル複合酸化物(例えばLixNiO2;0<x≦1)、リチウムコバルト複合酸化物(例えばLixCoO2;0<x≦1)、リチウムニッケルコバルト複合酸化物(例えばLixNi1-yCoy2;0<x≦1、0<y<1)、リチウムマンガンコバルト複合酸化物(例えばLixMnyCo1-y2;0<x≦1、0<y<1)、スピネル構造を有するリチウムマンガンニッケル複合酸化物(例えばLixMn2-yNiy4;0<x≦1、0<y<2)、オリビン構造を有するリチウムリン酸化物(例えばLixFePO4;0<x≦1、LixFe1-yMnyPO4;0<x≦1、0<y≦1、LixCoPO4;0<x≦1)、硫酸鉄(Fe2(SO4)3)、バナジウム酸化物(例えばV25)、及び、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物(LixNi1-y-zCoyMnz2;0<x≦1、0<y<1、0<z<1、y+z<1)が含まれる。
【0122】
上記のうち、正極活物質としてより好ましい化合物の例には、スピネル構造を有するリチウムマンガン複合酸化物(例えばLixMn24;0<x≦1)、リチウムニッケル複合酸化物(例えばLixNiO2;0<x≦1)、リチウムコバルト複合酸化物(例えばLixCoO2;0<x≦1)、リチウムニッケルコバルト複合酸化物(例えばLixNi1-yCoy2;0<x≦1、0<y<1)、スピネル構造を有するリチウムマンガンニッケル複合酸化物(例えばLixMn2-yNiy4;0<x≦1、0<y<2)、リチウムマンガンコバルト複合酸化物(例えばLixMnyCo1-y2;0<x≦1、0<y<1)、リチウムリン酸鉄(例えばLixFePO4;0<x≦1)、及び、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物(LixNi1-y-zCoyMnz2;0<x≦1、0<y<1、0<z<1、y+z<1)が含まれる。これらの化合物を正極活物質に用いると、正極電位を高めることができる。
【0123】
電池の電解質として常温溶融塩を用いる場合、リチウムリン酸鉄、LixVPO4F(0≦x≦1)、リチウムマンガン複合酸化物、リチウムニッケル複合酸化物、リチウムニッケルコバルト複合酸化物、又はこれらの混合物を含む正極活物質を用いることが好ましい。これらの化合物は常温溶融塩との反応性が低いため、サイクル寿命を向上させることができる。常温溶融塩の詳細については、後述する。
【0124】
正極活物質の一次粒径は、100nm以上1μm以下であることが好ましい。一次粒径が100nm以上の正極活物質は、工業生産上の取り扱いが容易である。一次粒径が1μm以下の正極活物質は、リチウムイオンの固体内拡散をスムーズに進行させることが可能である。
【0125】
正極活物質の比表面積は、0.1m2/g以上10m2/g以下であることが好ましい。0.1m2/g以上の比表面積を有する正極活物質は、Liイオンの吸蔵・放出サイトを十分に確保できる。10m2/g以下の比表面積を有する正極活物質は、工業生産の上で取り扱い易く、かつ良好な充放電サイクル性能を確保できる。
【0126】
結着剤は、分散された正極活物質の間隙を埋め、また、正極活物質と正極集電体とを結着させるために配合される。結着剤の例には、ポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoro ethylene;PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(polyvinylidene fluoride;PVdF)、フッ素系ゴム、ポリアクリル酸化合物、イミド化合物、カルボキシメチルセルロース(carboxymethyl cellulose;CMC)、及びCMCの塩が含まれる。これらの1つを結着剤として用いてもよく、或いは、2つ以上を組み合わせて結着剤として用いてもよい。
【0127】
導電剤は、集電性能を高め、且つ、正極活物質と正極集電体との接触抵抗を抑えるために配合される。導電剤の例には、気相成長カーボン繊維(Vapor Grown Carbon Fiber;VGCF)、アセチレンブラックなどのカーボンブラック及び黒鉛のような炭素質物が含まれる。これらの1つを導電剤として用いてもよく、或いは、2つ以上を組み合わせて導電剤として用いてもよい。また、導電剤を省略することもできる。
【0128】
正極活物質含有層において、正極活物質及び結着剤は、それぞれ、80質量%以上98質量%以下、及び2質量%以上20質量%以下の割合で配合することが好ましい。
【0129】
結着剤の量を2質量%以上にすることにより、十分な電極強度が得られる。また、結着剤は、絶縁体として機能し得る。そのため、結着剤の量を20質量%以下にすると、電極に含まれる絶縁体の量が減るため、内部抵抗を減少できる。
【0130】
導電剤を加える場合には、正極活物質、結着剤及び導電剤は、それぞれ、77質量%以上95質量%以下、2質量%以上20質量%以下、及び3質量%以上15質量%以下の割合で配合することが好ましい。
【0131】
導電剤の量を3質量%以上にすることにより、上述した効果を発揮することができる。また、導電剤の量を15質量%以下にすることにより、電解質と接触する導電剤の割合を低くすることができる。この割合が低いと、高温保存下において、電解質の分解を低減することができる。
【0132】
正極集電体は、アルミニウム箔、又は、Mg、Ti、Zn、Ni、Cr、Mn、Fe、Cu及びSiから選択される一以上の元素を含むアルミニウム合金箔であることが好ましい。
【0133】
アルミニウム箔又はアルミニウム合金箔の厚さは、5μm以上20μm以下であることが好ましく、15μm以下であることがより好ましい。アルミニウム箔の純度は99質量%以上であることが好ましい。アルミニウム箔又はアルミニウム合金箔に含まれる鉄、銅、ニッケル、及びクロムなどの遷移金属の含有量は、1質量%以下であることが好ましい。
【0134】
また、正極集電体は、その表面に正極活物質含有層が形成されていない部分を含むことができる。この部分は、正極集電タブとして働くことができる。
【0135】
正極は、例えば、以下の方法により作製することができる。まず、正極活物質、導電剤及び結着剤を溶媒に懸濁してスラリーを調製する。このスラリーを、集電体の片面又は両面に塗布する。次いで、塗布したスラリーを乾燥させて、活物質含有層と集電体との積層体を得る。その後、この積層体にプレスを施す。このようにして、電極を作製する。
【0136】
或いは、電極は、次の方法により作製してもよい。まず、第1粒子を含む活物質、無機粒子、導電剤及び結着剤を混合して、混合物を得る。次いで、この混合物をペレット状に成形する。次いで、これらのペレットを集電体上に配置することにより、電極を得ることができる。
【0137】
正極は、例えば、第1の実施形態に係る電極と同様の方法により作製することもできる。正極が第1の実施形態に係る電極である場合、第1粒子に含まれるニオブチタン酸化物が正極活物質として機能し得る。当該正極と組み合わせる負極は、第1の実施形態に係る電極でなくてもよい。例えば、第1の実施形態で説明した無機粒子含有層又は無機粒子を含まない負極と組み合わせることができる。
【0138】
3)電解質
電解質としては、例えば、非水電解質を用いることができる。非水電解質としては、例えば液状非水電解質、ゲル状非水電解質又は高分子固体電解質を用いることができる。液状非水電解質は、溶質としての電解質塩を有機溶媒に溶解することにより調製される。ゲル状非水電解質は、液状非水電解質と高分子材料とを複合化することにより調製される。高分子固体電解質は、電解質塩を高分子材料に溶解し、固体化することによって調製される。非水電解質の種類は、1種又は2種以上にすることができる。
【0139】
電解質塩の濃度は、0.5 mol/L以上2.5 mol/L以下であることが好ましい。
【0140】
非水電解質は、フッ素原子を含み得る。フッ素原子を含有する非水電解質としては、例えば、フッ素原子を含有する電解質塩を含有する非水電解質が挙げられる。
【0141】
非水電解質が含み得る電解質塩の例には、過塩素酸リチウム(LiClO4)、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF4)、六フッ化砒酸リチウム(LiAsF6)、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiCF3SO3)、及びビストリフルオロメチルスルホニルイミドリチウム(LiN(CF3SO2)2)のようなリチウム塩、及び、これらの混合物が含まれる。電解質塩は、高電位でも酸化し難いものであることが好ましく、LiPF6が最も好ましい。上記のうち、フッ素原子を含有する電解質塩としては、例えば、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF4)、六フッ化砒酸リチウム(LiAsF6)、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiCF3SO3)、又はビストリフルオロメチルスルホニルイミドリチウム(LiN(CF3SO2)2)が挙げられる。電解質塩の種類は、1種又は2種以上にすることができる。
【0142】
有機溶媒の例には、プロピレンカーボネート(propylene carbonate;PC)、エチレンカーボネート(ethylene carbonate;EC)、ビニレンカーボネート(vinylene carbonate;VC)のような環状カーボネート;ジエチルカーボネート(diethyl carbonate;DEC)、ジメチルカーボネート(dimethyl carbonate;DMC)、メチルエチルカーボネート(methyl ethyl carbonate;MEC)のような鎖状カーボネート;テトラヒドロフラン(tetrahydrofuran;THF)、2メチルテトラヒドロフラン(2-methyl tetrahydrofuran;2MeTHF)、ジオキソラン(dioxolane;DOX)のような環状エーテル;ジメトキシエタン(dimethoxy ethane;DME)、ジエトキシエタン(diethoxy ethane;DEE)のような鎖状エーテル;γ-ブチロラクトン(γ-butyrolactone;GBL)、アセトニトリル(acetonitrile;AN)、及びスルホラン(sulfolane;SL)が含まれる。これらの有機溶媒は、単独で、又は混合溶媒として用いることができる。
【0143】
ゲル状非水電解質が含む高分子材料の例には、ポリフッ化ビニリデン(polyvinylidene fluoride;PVdF)、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile;PAN)、ポリエチレンオキサイド(polyethylene oxide;PEO)、又はこれらの混合物が含まれる。
【0144】
或いは、非水電解質としては、液状非水電解質、ゲル状非水電解質及び高分子固体電解質の他に、リチウムイオンを含有した常温溶融塩(イオン性融体)又は無機固体電解質等を用いてもよい。非水電解質は、上記のうち1種を単独で含んでもよく、又は2種以上を含んでもよい。上記の非水電解質のうち、常温溶融塩又は無機固体電解質は、液状非水電解質、ゲル状非水電解質又は高分子固体電解質と混合して用いてもよい。
【0145】
常温溶融塩(イオン性融体)は、有機物カチオンとアニオンとの組合せからなる有機塩の内、常温(15℃以上25℃以下)で液体として存在し得る化合物を指す。常温溶融塩には、単体で液体として存在する常温溶融塩、電解質塩と混合させることで液体となる常温溶融塩、有機溶媒に溶解させることで液体となる常温溶融塩、又はこれらの混合物が含まれる。一般に、二次電池に用いられる常温溶融塩の融点は、25℃以下である。また、有機物カチオンは、一般に4級アンモニウム骨格を有する。
【0146】
無機固体電解質は、Liイオン伝導性を有する固体物質である。ここでいうLiイオン伝導性を有するとは、25℃で1×10-6 S/cm以上のリチウムイオン伝導度を示すことを指す。無機固体電解質としては、例えば、酸化物系固体電解質、又は硫化物系固体電解質を挙げることができる。無機固体電解質の具体例は、下記のとおりである。
【0147】
酸化物系固体電解質としては、NASICON(Sodium (Na) Super Ionic Conductor)型構造を有し、一般式Li1+xMα2(PO4)3で表されるリチウムリン酸固体電解質を用いることが好ましい。上記一般式中のMαは、例えば、チタン(Ti)、ゲルマニウム(Ge)、ストロンチウム(Sr)、ジルコニウム(Zr)、スズ(Sn)、アルミニウム(Al)、及びカルシウム(Ca)からなる群より選択される1以上である。添字xは、0≦x≦2の範囲内にある。
【0148】
NASICON型構造を有するリチウムリン酸固体電解質の具体例としては、Li1+xAlxTi2-x(PO4)3で表され0.1≦x≦0.5であるLATP化合物;Li1+xAlyMβ2-y(PO4)3で表されMβはTi,Ge,Sr,Zr,Sn,及びCaからなる群より選択される1以上であり0≦x≦1及び0≦y≦1である化合物;Li1+xAlxGe2-x(PO4)3で表され0≦x≦2である化合物;及び、Li1+xAlxZr2-x(PO4)3で表され0≦x≦2である化合物;Li1+x+yAlxMγ2-xSiy3-y12で表されMγはTi及びGeからなる群より選択される1以上であり0<x≦2、0≦y<3である化合物;Li1+2xZr1-xCax(PO4)3で表され0≦x<1である化合物を挙げることができる。
【0149】
また、酸化物系固体電解質としては、上記リチウムリン酸固体電解質の他にも、LixPOyzで表され2.6≦x≦3.5、1.9≦y≦3.8、及び0.1≦z≦1.3であるアモルファス状のLIPON化合物(例えば、Li2.9PO3.30.46);ガーネット型構造のLa5+xxLa3-xMδ212で表されAはCa,Sr,及びBaからなる群より選択される1以上でMδはNb及びTaからなる群より選択される1以上であり0≦x≦0.5である化合物;Li3Mδ2-x212で表されMδはNb及びTaからなる群より選択される1以上でありLはZrを含み得0≦x≦0.5である化合物;Li7-3xAlxLa3Zr312で表され0≦x≦0.5である化合物;Li5+xLa3Mδ2-xZrx12で表されMδはNb及びTaから成る群より選択される1以上であり0≦x≦2であるLLZ化合物(例えば、Li7La3Zr212);及びペロブスカイト型構造を有しLa2/3-xLixTiO3で表され0.3≦x≦0.7である化合物が挙げられる。
【0150】
上記化合物のうち1以上を固体電解質として用いることができる。上記固体電解質を2以上用いてもよい。
【0151】
4)セパレータ
セパレータは、例えば、ポリエチレン(polyethylene;PE)、ポリプロピレン(polypropylene;PP)、セルロース、若しくはポリフッ化ビニリデン(polyvinylidene fluoride;PVdF)を含む多孔質フィルム、又は合成樹脂製不織布から形成される。安全性の観点からは、ポリエチレン又はポリプロピレンから形成された多孔質フィルムを用いることが好ましい。これらの多孔質フィルムは、一定温度において溶融し、電流を遮断することが可能なためである。
【0152】
5)外装部材
外装部材としては、例えば、ラミネートフィルムからなる容器、又は金属製容器を用いることができる。
【0153】
ラミネートフィルムの厚さは、例えば、0.5mm以下であり、好ましくは、0.2mm以下である。
【0154】
ラミネートフィルムとしては、複数の樹脂層とこれらの樹脂層間に介在した金属層とを含む多層フィルムが用いられる。樹脂層は、例えば、ポリプロピレン(polypropylene;PP)、ポリエチレン(polyethylene;PE)、ナイロン、及びポリエチレンテレフタレート(polyethylene terephthalate;PET)等の高分子材料を含んでいる。金属層は、軽量化のためにアルミニウム箔又はアルミニウム合金箔からなることが好ましい。ラミネートフィルムは、熱融着によりシールを行うことにより、外装部材の形状に成形され得る。
【0155】
金属製容器の壁の厚さは、例えば、1mm以下であり、より好ましくは0.5mm以下であり、更に好ましくは、0.2mm以下である。
【0156】
金属製容器は、例えば、アルミニウム又はアルミニウム合金等から作られる。アルミニウム合金は、マグネシウム、亜鉛、及びケイ素等の元素を含むことが好ましい。アルミニウム合金は、鉄、銅、ニッケル、及びクロム等の遷移金属を含む場合、その含有量は100質量ppm以下であることが好ましい。
【0157】
外装部材の形状は、特に限定されない。外装部材の形状は、例えば、扁平型(薄型)、角型、円筒型、コイン型、又はボタン型等であってもよい。外装部材は、電池寸法や電池の用途に応じて適宜選択することができる。
【0158】
6)負極端子
負極端子は、リチウムの酸化還元電位に対し1V以上3V以下の電位範囲(vs.Li/Li)において電気的に安定であり、かつ導電性を有する材料から形成することができる。具体的には、負極端子の材料としては、銅、ニッケル、ステンレス若しくはアルミニウム、又は、Mg,Ti,Zn,Mn,Fe,Cu,及びSiからなる群より選択される少なくとも1種の元素を含むアルミニウム合金が挙げられる。負極端子の材料としては、アルミニウム又はアルミニウム合金を用いることが好ましい。負極端子は、負極集電体との接触抵抗を低減するために、負極集電体と同様の材料からなることが好ましい。
【0159】
7)正極端子
正極端子は、リチウムの酸化還元電位に対し3V以上4.5V以下の電位範囲(vs.Li/Li)において電気的に安定であり、且つ導電性を有する材料から形成することができる。正極端子の材料としては、アルミニウム、或いは、Mg、Ti、Zn、Mn、Fe、Cu及びSiからなる群より選択される少なくとも1種の元素を含むアルミニウム合金が挙げられる。正極端子は、正極集電体との接触抵抗を低減するために、正極集電体と同様の材料から形成されることが好ましい。
【0160】
次に、実施形態に係る二次電池について、図面を参照しながらより具体的に説明する。
【0161】
図5は、二次電池の一例を概略的に示す断面図である。図6は、図5に示す二次電池のA部を拡大した断面図である。
【0162】
図5及び図6に示す二次電池100は、図5に示す袋状外装部材2と、図5及び図6に示す電極群1と、図示しない電解質とを具備する。電極群1及び電解質は、袋状外装部材2内に収納されている。電解質(図示しない)は、電極群1に保持されている。
【0163】
袋状外装部材2は、2つの樹脂層とこれらの間に介在した金属層とを含むラミネートフィルムからなる。
【0164】
図5に示すように、電極群1は、扁平状の捲回型電極群である。扁平状で捲回型である電極群1は、図6に示すように、負極3と、セパレータ4と、正極5とを含む。セパレータ4は、負極3と正極5との間に介在している。
【0165】
負極3は、負極集電体3aと負極活物質含有層3bとを含む。負極3のうち、捲回型の電極群1の最外殻に位置する部分は、図6に示すように負極集電体3aの内面側のみに負極活物質含有層3bが形成されている。負極3におけるその他の部分では、負極集電体3aの両面に負極活物質含有層3bが形成されている。
【0166】
正極5は、正極集電体5aと、その両面に形成された正極活物質含有層5bとを含んでいる。
【0167】
図5に示すように、負極端子6及び正極端子7は、捲回型の電極群1の外周端近傍に位置している。この負極端子6は、負極集電体3aの最外殻に位置する部分に接続されている。また、正極端子7は、正極集電体5aの最外殻に位置する部分に接続されている。これらの負極端子6及び正極端子7は、袋状外装部材2の開口部から外部に延出されている。袋状外装部材2の内面には、熱可塑性樹脂層が設置されており、これが熱融着されていることにより、開口部が閉じられている。
【0168】
実施形態に係る二次電池は、図5及び図6に示す構成の二次電池に限らず、例えば図7及び図8に示す構成の電池であってもよい。
【0169】
図7は二次電池の他の例を模式的に示す部分切欠斜視図である。図8は、図7に示す二次電池のB部を拡大した断面図である。
【0170】
図7及び図8に示す二次電池100は、図7及び図8に示す電極群1と、図7に示す外装部材2と、図示しない電解質とを具備する。電極群1及び電解質は、外装部材2内に収納されている。電解質は、電極群1に保持されている。
【0171】
外装部材2は、2つの樹脂層とこれらの間に介在した金属層とを含むラミネートフィルムからなる。
【0172】
電極群1は、図8に示すように、積層型の電極群である。積層型の電極群1は、負極3と正極5とをその間にセパレータ4を介在させながら交互に積層した構造を有している。
【0173】
電極群1は、複数の負極3を含んでいる。複数の負極3は、それぞれが、負極集電体3aと、負極集電体3aの両面に担持された負極活物質含有層3bとを備えている。また、電極群1は、複数の正極5を含んでいる。複数の正極5は、それぞれが、正極集電体5aと、正極集電体5aの両面に担持された正極活物質含有層5bとを備えている。
【0174】
各負極3の負極集電体3aは、その一辺において、いずれの表面にも負極活物質含有層3bが担持されていない部分を含む。この部分は、負極集電タブ3cとして働く。図8に示すように、負極集電タブ3cは、正極5と重なっていない。また、複数の負極集電タブ3cは、帯状の負極端子6に電気的に接続されている。帯状の負極端子6の先端は、外装部材2の外部に引き出されている。
【0175】
また、図示しないが、各正極5の正極集電体5aは、その一辺において、いずれの表面にも正極活物質含有層5bが担持されていない部分を含む。この部分は、正極集電タブとして働く。負極集電タブ3cが正極5と重なっていないのと同様に、正極集電タブは、負極3と重なっていない。また、正極集電タブは、負極集電タブ3cに対し電極群1の反対側に位置する。正極集電タブは、帯状の正極端子7に電気的に接続されている。帯状の正極端子7の先端は、負極端子6とは反対側に位置し、外装部材2の外部に引き出されている。
【0176】
第2の実施形態に係る二次電池は、第1の実施形態に係る電極を含んでいる。そのため、係る実施形態によれば、サイクル性能及び出力性能を向上した二次電池を提供できる。
【0177】
(第3の実施形態)
第3の実施形態によると、組電池が提供される。係る組電池は、第2の実施形態に係る二次電池を複数個具備している。
【0178】
係る組電池において、各単電池は、電気的に直列若しくは並列に接続して配置してもよく、又は直列接続及び並列接続を組み合わせて配置してもよい。
【0179】
次に、実施形態に係る組電池の一例について、図面を参照しながら説明する。
【0180】
図9は、組電池の一例を概略的に示す斜視図である。図9に示す組電池200は、5つの単電池100a~100eと、4つのバスバー21と、正極側リード22と、負極側リード23とを具備している。5つの単電池100a~100eのそれぞれは、第2の実施形態に係る二次電池である。
【0181】
バスバー21は、例えば、1つの単電池100aの負極端子6と、隣に位置する単電池100bの正極端子7とを接続している。このようにして、5つの単電池100は、4つのバスバー21により直列に接続されている。すなわち、図9の組電池200は、5直列の組電池である。例を図示しないが、電気的に並列に接続されている複数の単電池を含む組電池では、例えば、複数の負極端子同士がバスバーにより接続されるとともに複数の正極端子同士がバスバーにより接続されることで、複数の単電池が電気的に接続され得る。
【0182】
5つの単電池100a~100eのうち少なくとも1つの電池の正極端子7は、外部接続用の正極側リード22に電気的に接続されている。また、5つの単電池100a~100eうち少なくとも1つの電池の負極端子6は、外部接続用の負極側リード23に電気的に接続されている。
【0183】
第3の実施形態に係る組電池は、第2の実施形態に係る二次電池を含んでいる。したがって、優れたサイクル性能及び出力性能を達成できる。
【0184】
(第4の実施形態)
第4の実施形態によると、電池パックが提供される。この電池パックは、第3の実施形態に係る組電池を具備している。この電池パックは、第3の実施形態に係る組電池の代わりに、単一の第2の実施形態に係る二次電池を具備していてもよい。
【0185】
係る電池パックは、保護回路を更に具備することができる。保護回路は、二次電池の充放電を制御する機能を有する。或いは、電池パックを電源として使用する装置(例えば、電子機器、自動車等)に含まれる回路を、電池パックの保護回路として使用してもよい。
【0186】
また、係る電池パックは、通電用の外部端子を更に具備することもできる。通電用の外部端子は、外部に二次電池からの電流を出力するため、及び/又は二次電池に外部からの電流を入力するためのものである。言い換えれば、電池パックを電源として使用する際、電流が通電用の外部端子を通して外部に供給される。また、電池パックを充電する際、充電電流(自動車などの動力の回生エネルギーを含む)は通電用の外部端子を通して電池パックに供給される。
【0187】
次に、実施形態に係る電池パックの一例について、図面を参照しながら説明する。
【0188】
図10は、電池パックの一例を概略的に示す分解斜視図である。図11は、図10に示す電池パックの電気回路の一例を示すブロック図である。
【0189】
図10及び図11に示す電池パック300は、収容容器31と、蓋32と、保護シート33と、組電池200と、プリント配線基板34と、配線35と、図示しない絶縁板とを備えている。
【0190】
図10に示す収容容器31は、長方形の底面を有する有底角型容器である。収容容器31は、保護シート33と、組電池200と、プリント配線基板34と、配線35とを収容可能に構成されている。蓋32は、矩形型の形状を有する。蓋32は、収容容器31を覆うことにより、上記組電池200等を収容する。収容容器31及び蓋32には、図示していないが、外部機器等へと接続するための開口部又は接続端子等が設けられている。
【0191】
組電池200は、複数の単電池100と、正極側リード22と、負極側リード23と、粘着テープ24とを備えている。
【0192】
複数の単電池100の少なくとも1つは、第2の実施形態に係る二次電池である。複数の単電池100の各々は、図11に示すように電気的に直列に接続されている。複数の単電池100は、電気的に並列に接続されていてもよく、直列接続及び並列接続を組み合わせて接続されていてもよい。複数の単電池100を並列接続すると、直列接続した場合と比較して、電池容量が増大する。
【0193】
粘着テープ24は、複数の単電池100を締結している。粘着テープ24の代わりに、熱収縮テープを用いて複数の単電池100を固定してもよい。この場合、組電池200の両側面に保護シート33を配置し、熱収縮テープを周回させた後、熱収縮テープを熱収縮させて複数の単電池100を結束させる。
【0194】
正極側リード22の一端は、組電池200に接続されている。正極側リード22の一端は、1以上の単電池100の正極と電気的に接続されている。負極側リード23の一端は、組電池200に接続されている。負極側リード23の一端は、1以上の単電池100の負極と電気的に接続されている。
【0195】
プリント配線基板34は、収容容器31の内側面のうち、一方の短辺方向の面に沿って設置されている。プリント配線基板34は、正極側コネクタ342と、負極側コネクタ343と、サーミスタ345と、保護回路346と、配線342a及び343aと、通電用の外部端子350と、プラス側配線(正側配線)348aと、マイナス側配線(負側配線)348bとを備えている。プリント配線基板34の一方の主面は、組電池200の一側面と向き合っている。プリント配線基板34と組電池200との間には、図示しない絶縁板が介在している。
【0196】
正極側コネクタ342に、正極側リード22の他端22aが電気的に接続されている。負極側コネクタ343に、負極側リード23の他端23aが電気的に接続されている。
【0197】
サーミスタ345は、プリント配線基板34の一方の主面に固定されている。サーミスタ345は、単電池100の各々の温度を検出し、その検出信号を保護回路346に送信する。
【0198】
通電用の外部端子350は、プリント配線基板34の他方の主面に固定されている。通電用の外部端子350は、電池パック300の外部に存在する機器と電気的に接続されている。通電用の外部端子350は、正側端子352と負側端子353とを含む。
【0199】
保護回路346は、プリント配線基板34の他方の主面に固定されている。保護回路346は、プラス側配線348aを介して正側端子352と接続されている。保護回路346は、マイナス側配線348bを介して負側端子353と接続されている。また、保護回路346は、配線342aを介して正極側コネクタ342に電気的に接続されている。保護回路346は、配線343aを介して負極側コネクタ343に電気的に接続されている。更に、保護回路346は、複数の単電池100の各々と配線35を介して電気的に接続されている。
【0200】
保護シート33は、収容容器31の長辺方向の両方の内側面と、組電池200を介してプリント配線基板34と向き合う短辺方向の内側面とに配置されている。保護シート33は、例えば、樹脂又はゴムからなる。
【0201】
保護回路346は、複数の単電池100の充放電を制御する。また、保護回路346は、サーミスタ345から送信される検出信号、又は、個々の単電池100若しくは組電池200から送信される検出信号に基づいて、保護回路346と外部機器への通電用の外部端子350(正側端子352、負側端子353)との電気的な接続を遮断する。
【0202】
サーミスタ345から送信される検出信号としては、例えば、単電池100の温度が所定の温度以上であることを検出した信号を挙げることができる。個々の単電池100若しくは組電池200から送信される検出信号としては、例えば、単電池100の過充電、過放電及び過電流を検出した信号を挙げることができる。個々の単電池100について過充電等を検出する場合、電池電圧を検出してもよく、正極電位又は負極電位を検出してもよい。後者の場合、参照極として用いるリチウム電極を個々の単電池100に挿入する。
【0203】
なお、保護回路346としては、電池パック300を電源として使用する装置(例えば、電子機器、自動車等)に含まれる回路を用いてもよい。
【0204】
また、この電池パック300は、上述したように通電用の外部端子350を備えている。したがって、この電池パック300は、通電用の外部端子350を介して、組電池200からの電流を外部機器に出力するとともに、外部機器からの電流を、組電池200に入力することができる。言い換えると、電池パック300を電源として使用する際には、組電池200からの電流が、通電用の外部端子350を通して外部機器に供給される。また、電池パック300を充電する際には、外部機器からの充電電流が、通電用の外部端子350を通して電池パック300に供給される。この電池パック300を車載用電池として用いた場合、外部機器からの充電電流として、車両の動力の回生エネルギーを用いることができる。
【0205】
なお、電池パック300は、複数の組電池200を備えていてもよい。この場合、複数の組電池200は、直列に接続されてもよく、並列に接続されてもよく、直列接続及び並列接続を組み合わせて接続されてもよい。また、プリント配線基板34及び配線35は省略してもよい。この場合、正極側リード22及び負極側リード23を通電用の外部端子350の正側端子352と負側端子353としてそれぞれ用いてもよい。
【0206】
このような電池パックは、例えば大電流を取り出したときにサイクル性能が優れていることが要求される用途に用いられる。この電池パックは、具体的には、例えば、電子機器の電源、定置用電池、各種車両の車載用電池として用いられる。電子機器としては、例えば、デジタルカメラを挙げることができる。この電池パックは、車載用電池として特に好適に用いられる。
【0207】
第4の実施形態に係る電池パックは、第2の実施形態に係る二次電池又は第3の実施形態に係る組電池を備えている。したがって、係る電池パックは、優れたサイクル性能及び出力性能を達成できる。
【0208】
(第5の実施形態)
第5の実施形態によると、車両が提供される。この車両は、第4の実施形態に係る電池パックを搭載している。
【0209】
係る車両において、電池パックは、例えば、車両の動力の回生エネルギーを回収するものである。車両は、この車両の運動エネルギーを回生エネルギーに変換する機構(Regenerator:再生器)を含んでいてもよい。
【0210】
車両の例としては、例えば、二輪乃至四輪のハイブリッド電気自動車、二輪乃至四輪の電気自動車、アシスト自転車、及び鉄道用車両が挙げられる。
【0211】
車両における電池パックの搭載位置は、特には限定されない。例えば、電池パックを自動車に搭載する場合、電池パックは、車両のエンジンルーム、車体後方又は座席の下に搭載することができる。
【0212】
車両は、複数の電池パックを搭載してもよい。この場合、それぞれの電池パックが含む電池同士は、電気的に直列に接続されてもよく、電気的に並列に接続されてもよく、又は直列接続及び並列接続を組み合わせて電気的に接続されてもよい。例えば、各電池パックが組電池を含む場合は、組電池同士が電気的に直列に接続されてもよく、又は電気的に並列に接続されてもよく、直列接続及び並列接続を組み合わせて電気的に接続されてもよい。或いは、各電池パックが単一の電池を含む場合は、それぞれの電池同士が電気的に直列に接続されてもよく、電気的に並列に接続されてもよく、又は直列接続及び並列接続を組み合わせて電気的に接続されてもよい。
【0213】
次に、実施形態に係る車両の一例について、図面を参照しながら説明する。
【0214】
図12は、車両の一例を概略的に示す部分透過図である。
【0215】
図12に示す車両400は、車両本体40と、第4の実施形態に係る電池パック300とを含んでいる。図12に示す例では、車両400は、四輪の自動車である。
【0216】
この車両400は、複数の電池パック300を搭載してもよい。この場合、電池パック300が含む電池(例えば、単電池または組電池)は、直列に接続されてもよく、並列に接続されてもよく、直列接続及び並列接続を組み合わせて接続されてもよい。
【0217】
図12では、電池パック300が車両本体40の前方に位置するエンジンルーム内に搭載されている例を図示している。上述したとおり、電池パック300は、例えば、車両本体40の後方又は座席の下に搭載してもよい。この電池パック300は、車両400の電源として用いることができる。また、この電池パック300は、車両400の動力の回生エネルギーを回収することができる。
【0218】
次に、図13を参照しながら、実施形態に係る車両の実施態様について説明する。
【0219】
図13は、車両における電気系統に関する制御システムの一例を概略的に示した図である。図13に示す車両400は、電気自動車である。
【0220】
図13に示す車両400は、車両本体40と、車両用電源41と、車両用電源41の上位の制御装置である車両ECU(ECU:Electric Control Unit;電気制御装置)42と、外部端子(外部電源に接続するための端子)43と、インバータ44と、駆動モータ45とを備えている。
【0221】
車両400は、車両用電源41を、例えばエンジンルーム、自動車の車体後方又は座席の下に搭載している。なお、図13に示す車両400では、車両用電源41の搭載箇所については概略的に示している。
【0222】
車両用電源41は、複数(例えば3つ)の電池パック300a、300b及び300cと、電池管理装置(BMU:Battery Management Unit)411と、通信バス412とを備えている。
【0223】
電池パック300aは、組電池200aと組電池監視装置301a(例えば、VTM:Voltage Temperature Monitoring)とを備えている。電池パック300bは、組電池200bと組電池監視装置301bとを備えている。電池パック300cは、組電池200cと組電池監視装置301cとを備えている。電池パック300a~300cは、前述の電池パック300と同様の電池パックであり、組電池200a~200cは、前述の組電池200と同様の組電池である。組電池200a~200cは、電気的に直列に接続されている。電池パック300a、300b、及び300cは、それぞれ独立して取り外すことが可能であり、別の電池パック300と交換することができる。
【0224】
組電池200a~200cのそれぞれは、直列に接続された複数の単電池を備えている。複数の単電池の少なくとも1つは、第2の実施形態に係る二次電池である。組電池200a~200cは、それぞれ、正極端子413及び負極端子414を通じて充放電を行う。
【0225】
電池管理装置411は、組電池監視装置301a~301cとの間で通信を行い、車両用電源41に含まれる組電池200a~200cに含まれる単電池100のそれぞれについて電圧及び温度などに関する情報を収集する。これにより、電池管理装置411は、車両用電源41の保全に関する情報を収集する。
【0226】
電池管理装置411と組電池監視装置301a~301cとは、通信バス412を介して接続されている。通信バス412では、1組の通信線が複数のノード(電池管理装置411と1つ以上の組電池監視装置301a~301cと)で共有されている。通信バス412は、例えばCAN(Control Area Network)規格に基づいて構成された通信バスである。
【0227】
組電池監視装置301a~301cは、電池管理装置411からの通信による指令に基づいて、組電池200a~200cを構成する個々の単電池の電圧及び温度を計測する。ただし、温度は1つの組電池につき数箇所だけで測定することができ、全ての単電池の温度を測定しなくてもよい。
【0228】
車両用電源41は、正極端子413と負極端子414との間の電気的な接続の有無を切り替える電磁接触器(例えば図13に示すスイッチ装置415)を有することもできる。スイッチ装置415は、組電池200a~200cへの充電が行われるときにオンになるプリチャージスイッチ(図示せず)、及び、組電池200a~200cからの出力が負荷へ供給されるときにオンになるメインスイッチ(図示せず)を含んでいる。プリチャージスイッチ及びメインスイッチのそれぞれは、スイッチ素子の近傍に配置されたコイルに供給される信号によりオン又はオフに切り替わるリレー回路(図示せず)を備えている。スイッチ装置415等の電磁接触器は、電池管理装置411又は車両400全体の動作を制御する車両ECU42からの制御信号に基づいて、制御される。
【0229】
インバータ44は、入力された直流電圧を、モータ駆動用の3相の交流(AC)の高電圧に変換する。インバータ44の3相の出力端子は、駆動モータ45の各3相の入力端子に接続されている。インバータ44は、電池管理装置411又は車両全体の動作を制御するための車両ECU42からの制御信号に基づいて、制御される。インバータ44が制御されることにより、インバータ44からの出力電圧が調整される。
【0230】
駆動モータ45は、インバータ44から供給される電力により回転する。駆動モータ45の回転によって発生する駆動力は、例えば差動ギアユニットを介して車軸および駆動輪Wに伝達される。
【0231】
また、図示はしていないが、車両400は、回生ブレーキ機構(リジェネレータ)を備えている。回生ブレーキ機構は、車両400を制動した際に駆動モータ45を回転させ、運動エネルギーを電気エネルギーとしての回生エネルギーに変換する。回生ブレーキ機構で回収した回生エネルギーは、インバータ44に入力され、直流電流に変換される。変換された直流電流は、車両用電源41に入力される。
【0232】
車両用電源41の負極端子414には、接続ラインL1の一方の端子が接続されている。接続ラインL1の他方の端子は、インバータ44の負極入力端子417に接続されている。接続ラインL1には、負極端子414と負極入力端子417との間に電池管理装置411内の電流検出部(電流検出回路)416が設けられている。
【0233】
車両用電源41の正極端子413には、接続ラインL2の一方の端子が、接続されている。接続ラインL2の他方の端子は、インバータ44の正極入力端子418に接続されている。接続ラインL2には、正極端子413と正極入力端子418との間にスイッチ装置415が設けられている。
【0234】
外部端子43は、電池管理装置411に接続されている。外部端子43は、例えば、外部電源に接続することができる。
【0235】
車両ECU42は、運転者などの操作入力に応答して電池管理装置411を含む他の管理装置及び制御装置とともに車両用電源41、スイッチ装置415、及びインバータ44等を協調制御する。車両ECU42等の協調制御によって、車両用電源41からの電力の出力及び車両用電源41の充電等が制御され、車両400全体の管理が行われる。電池管理装置411と車両ECU42との間では、通信線により、車両用電源41の残容量など、車両用電源41の保全に関するデータ転送が行われる。
【0236】
第5の実施形態に係る車両は、第4の実施形態に係る電池パックを搭載している。したがって、係る車両は、電池パックのサイクル性能及び出力性能が高いため、車両の信頼性が高い。
【実施例0237】
以下に実施例を説明するが、実施形態は、以下に記載される実施例に限定されるものではない。
【0238】
(実施例1)
<第1粒子の作製>
第1粒子は、以下に説明するように、無機粒子含有層前駆体溶液中にニオブチタン酸化物粒子を添加し、焼成することにより作製した。
【0239】
<第1溶液の調製>
500mLの水に、硝酸1gと、ポリビニルアルコール20質量%溶液10gとを添加し、10分間スターラーで攪拌した。ここに、チタニウムテトライソプロポキシド(Titanium tetraisopropoxide)12gを添加して1時間攪拌した。さらに、硝酸リチウム2.6g、リン酸二水素アンモニウム9g、硝酸アルミニウム九水和物4gを添加して30分間攪拌した。かくして、第1溶液を得た。
【0240】
<無機粒子含有層の形成>
無機粒子含有層前駆体溶液として、先に調製した第1溶液を準備した。第1溶液に、ニオブチタン酸化物粒子を添加した。このとき、焼成後に得られる無機粒子含有層の質量が、ニオブチタン酸化物粒子の質量に対して3質量%となるような割合で添加した。この分散液を1時間攪拌した。攪拌後、200℃に加熱して蒸発乾固させ、乾燥粉を得た。乾燥粉をアルミナるつぼに移し、電気炉にて700℃で8時間焼成した。かくして、ニオブチタン酸化物粒子表面上に、無機粒子含有層が形成された第1粒子を得た。無機粒子含有層は、固体電解質含有粒子を含有していた。固体電解質は、Li1.3Al0.3Ti1.7(POで表される組成を有する酸化物系固体電解質であった。かくして、第1粒子を得た。
【0241】
<負極の作製>
負極活物質粒子として第1粒子88質量%、導電剤としてアセチレンブラック4質量%、結着剤としてカルボキシメチルセルロース(CMC)2質量%及びスチレンブタジエンラバー(SBR)2質量%、無機粒子4質量%を、溶媒としての純水に加えて混合した。無機粒子としては、平均粒子径が0.5μmであり、固体電解質を含む粒子を用いた。固体電解質は、Li1.3Al0.3Ti1.7(POで表される組成を有する酸化物系固体電解質であった。混合物を攪拌容器に入れ、さらにφ2mmのガラスビーズを充填率60%となるように加えて、1500rpmで3分間攪拌し、スラリーを得た。攪拌後のスラリーを、厚さ12μmのアルミニウム箔からなる集電体の片面に塗布し、100℃のホットプレート上で乾燥した。もう一方の面にもスラリーを塗布し、100℃のホットプレート上で乾燥した。その後、プレスすることにより負極を得た。得られた負極は、集電体の両面に負極活物質含有層が形成されている、両面負極であった。
【0242】
<正極の作製>
正極活物質としてリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物(LiNi0.8Co0.1Mn0.12)を90質量%、導電剤として、アセチレンブラック5質量%、結着剤として、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)5質量%を、溶媒としてのN-メチルピロリドン(NMP)に加えて混合し、スラリーを調製した。厚さ12μmのアルミニウム箔からなる集電体の片面に塗布し、120℃の恒温槽内で乾燥した。その後、プレスすることにより正極を得た。得られた正極は、集電体の片面に正極活物質含有層が形成されている、片面正極であった。
【0243】
<電極群の作製>
片面正極、セパレータ、両面負極、セパレータ、片面正極をこの順で積層し、積層体を得た。片面正極は、スラリーが塗布された側がセパレータと対向するようにして積層した。セパレータとしては、15μm厚のポリエチレン製多孔質フィルムを用いた。積層体を80℃で加熱プレスすることにより、扁平状の電極群を作製した。得られた電極群を、ナイロン層/アルミニウム層/ポリエチレン層の3層構造を有し、厚さが0.1mmであるラミネートフィルムからなるパックに収納し、120℃で16時間、真空中で乾燥した。
【0244】
<非水電解質の調製及び二次電池の作製>
プロピレンカーボネート(PC)及びジエチルカーボネート(DEC)の混合溶媒(体積比率1:2)に、電解質としてLiPFを1mol/L濃度で溶解させることで、非水電解質を得た。非水電解質の調製は、アルゴンボックス内で実施した。
【0245】
電極群を収納したラミネートフィルムパック内に非水電解質を注入した後、パックをヒートシールにより完全密閉した。これにより、300mAh容量の二次電池を得た。
【0246】
(実施例2)
焼成後に得られる無機粒子含有層の質量が、ニオブチタン酸化物粒子の質量に対して10質量%となるように、第1溶液へのニオブチタン酸化物粒子の添加割合を調整した。また、無機粒子の平均粒子径を1.0μmに変更した。上記のこと以外は実施例1と同様にして、二次電池を作製した。
【0247】
(実施例3)
焼成後に得られる無機粒子含有層の質量が、ニオブチタン酸化物粒子の質量に対して0.5質量%となるように、第1溶液へのニオブチタン酸化物粒子の添加割合を調整した。また、無機粒子の平均粒子径を0.9μmに変更した。上記のこと以外は実施例1と同様にして、二次電池を作製した。
【0248】
(実施例4)
焼成後に得られる無機粒子含有層の質量が、ニオブチタン酸化物粒子の質量に対して15質量%となるように、第1溶液へのニオブチタン酸化物粒子の添加割合を調整した。また、無機粒子の平均粒子径を0.9μmに変更した。上記のこと以外は実施例1と同様にして、二次電池を作製した。
【0249】
(実施例5)
焼成後に得られる無機粒子含有層の質量が、ニオブチタン酸化物粒子の質量に対して0.05質量%となるように、第1溶液へのニオブチタン酸化物粒子の添加割合を調整した。また、無機粒子の平均粒子径を0.8μmに変更した。上記のこと以外は実施例1と同様にして、二次電池を作製した。
【0250】
(実施例6)
無機粒子の平均粒子径を1.0μmに変更した。上記のこと以外は実施例1と同様にして、二次電池を作製した。
【0251】
(実施例7)
無機粒子の平均粒子径を0.4μmに変更した。上記のこと以外は実施例1と同様にして、二次電池を作製した。
【0252】
(実施例8)
無機粒子の平均粒子径を2.0μmに変更した。上記のこと以外は実施例1と同様にして、二次電池を作製した。
【0253】
(実施例9)
無機粒子の平均粒子径を0.3μmに変更した。上記のこと以外は実施例1と同様にして、二次電池を作製した。
【0254】
(実施例10)
負極の作製において、ガラスビーズを添加せずに攪拌を行ったこと以外は、実施例2と同様にして、二次電池を作製した。
【0255】
(実施例11)
無機粒子含有層前駆体溶液として、第1溶液の代わりに、市販の98%アルミニウムイソプロポキシド溶液を準備した。また、無機粒子を、平均粒子径が0.5μmであるAl粒子に変更した。上記のこと以外は実施例1と同様にして、二次電池を作製した。
【0256】
(実施例12)
無機粒子含有層前駆体溶液として、第1溶液の代わりに、市販の97%チタニウムテトライソプロポキシド溶液を準備した。また、無機粒子を、平均粒子径が0.5μmであるTiO粒子に変更した。上記のこと以外は実施例1と同様にして、二次電池を作製した。
【0257】
(実施例13)
無機粒子含有層前駆体溶液として、第1溶液の代わりに、市販の70%ジルコニウムプロポキシド溶液を準備した。また、無機粒子を、平均粒子径が0.5μmであるZrO粒子に変更した。上記のこと以外は実施例1と同様にして、二次電池を作製した。
【0258】
(実施例14)
無機粒子含有層前駆体溶液として、第1溶液の代わりに、硫酸マグネシウム水溶液を準備した。硫酸マグネシウム水溶液は、以下のようにして調製した。水100gに20gの硫酸マグネシウム七水和物を投入し、攪拌して硫酸マグネシウム水溶液を得た。また、無機粒子を、平均粒子径が0.5μmであるMgO粒子に変更した。上記のこと以外は実施例1と同様にして、二次電池を作製した。
【0259】
(比較例1)
第1粒子の作製を省略した。負極の作製においては、負極活物質粒子として、ニオブチタン酸化物粒子を用いた。上記のこと以外は実施例1と同様にして、二次電池を作製した。
【0260】
(比較例2)
負極の作製において無機粒子の添加を省略したこと以外は、実施例1と同様にして、二次電池を作製した。
【0261】
(比較例3)
焼成後に得られる無機粒子含有層の質量が、ニオブチタン酸化物粒子の質量に対して15質量%となるように、第1溶液へのニオブチタン酸化物粒子の添加割合を調整した。また、無機粒子の平均粒子径を0.5μmに変更した。上記のこと以外は実施例1と同様にして、二次電池を作製した。
【0262】
(比較例4)
第1粒子の作製を省略した。負極の作製においては、負極活物質粒子として、ニオブチタン酸化物粒子を用いた。また、無機粒子の平均粒子径を1.0μmに変更した。さらに、平均粒子径が0.5μmである固体電解質含有粒子を5質量%添加した。固体電解質は、Li1.3Al0.3Ti1.7(POで表される酸化物系固体電解質であった。
【0263】
作製した二次電池のサイクル性能及び出力性能を、以下の方法で評価した。
<サイクル試験>
得られた二次電池について、25℃で1Cレートの定電流で3.0Vまで充電した。その後、1.5Vまで1Cレートで放電した。この充放電を1サイクルとした。1サイクル目の放電時に、放電容量を測定した。次いで、上記の充放電を、合計200サイクル繰り返した。200サイクル目の放電時に、放電容量を測定した。200サイクル目の放電容量を1サイクル目の放電容量で割って100を乗じた値を、容量維持率(%)とした。
<0℃放電性能試験>
25℃で1Cレートの定電流で3.0Vまで充電した後、0℃で1.5Vまで1Cレートで放電した。放電時に、放電容量を測定した。得られた放電容量を0℃放電容量(mAh)とした。
【0264】
これらの測定結果を、表1に示す。なお、第1粒子の作製を省略した比較例についての無機粒子含有層の種類及び無機粒子含有層の厚さ、及び、無機粒子を添加しなかった比較例についての無機粒子の種類及び無機粒子の平均粒子径は、「-」で示した。
【0265】
【表1】
【0266】
無機粒子と、第1粒子とを含み、かつ、無機粒子の平均粒子径が無機粒子含有層の厚さよりも大きい電極を含む実施例の二次電池は、いずれも、容量維持率及び0℃放電容量の両方が高い値であった。すなわち、サイクル性能及び出力性能の両方に優れていた。
【0267】
第1粒子の作製、すなわち、ニオブチタン酸化物粒子表面への無機粒子含有層の形成を省略した比較例1及び比較例4は、容量維持率が低い値であった。これは、無機粒子により捕捉されなかったフッ酸がニオブチタン酸化物粒子に接近した場合に、当該フッ酸がニオブチタン酸化物粒子表面に接触し、その結果、ニオブチタン酸化物粒子が劣化したために、サイクル性能が低下したものと考えられる。
【0268】
比較例4は、無機粒子含有層の形成を省略した代わりに、固体電解質含有粒子をさらに添加した例であるが、実施例と比較してサイクル性能が低かった。このことから、固体電解質含有粒子が、ニオブチタン酸化物粒子表面に層状に形成されていない場合、すなわち、ニオブチタン酸化物粒子から離れて存在する場合には、ニオブチタン酸化物粒子にフッ酸が接触するのを抑制する効果が低いと考えられる。
【0269】
無機粒子の添加を省略した比較例2は、容量維持率が低い値であった。これは、比較例2の電極ではフッ酸が無機粒子により捕捉されないために、電極中の第1粒子に接近するフッ酸量が、実施例の電極よりも多かったためであると考えられる。その結果、例えば、第1粒子の露出部から、ニオブチタン酸化物粒子表面に接触するフッ酸の量が増加したと考えられる。また、無機粒子含有層が捕捉できるフッ酸量を超えたフッ酸が、第1粒子に接近することにより、ニオブチタン酸化物粒子と接触するフッ酸量が増加したと考えられる。その結果、ニオブチタン酸化物が劣化したために、サイクル性能が低下したものと考えられる。
【0270】
無機粒子含有層の厚さが無機粒子の平均粒子径よりも大きい比較例3は、実施例と比較して0℃放電容量が低い値であった。すなわち、実施例と比較して出力性能が低かった。比較例3は、無機粒子の平均粒子径が、無機粒子含有層の厚さと比較して相対的に小さいことに起因して、電極の製造工程における無機粒子及び導電剤の分散性が低下したために、電極内における無機粒子及び導電剤の存在の均一性が低下したと考えられる。また、比較例3の活物質粒子は、無機粒子含有層の厚さが無機粒子の平均粒子径よりも大きいことに起因して、相対的に活物質粒子の電子伝導性が低い。これらによって、比較例3は、出力性能が低下したと考えられる。
【0271】
実施例1~3と、無機粒子含有層の厚さが0.7μmである実施例4とを比較すると、実施例1~3は、0℃放電容量が特に高かった。これは、実施例1~3は、無機粒子含有層の厚さが0.4μm以下であることにより、抵抗上昇を抑制する効果が高かったためと考えられる。したがって、無機粒子含有層の厚さが0.4μm以下である第1粒子を含む電極は、出力性能に特に優れることが明らかとなった。
【0272】
また、実施例1~3と、無機粒子含有層の厚さが0.0005μmである実施例5とを比較すると、実施例1~3は、容量維持率が特に高かった。これは、実施例1~3は、無機粒子含有層の厚さが0.0010μm以上であることにより、フッ酸に対する耐久性が高かったためと考えられる。したがって、無機粒子含有層の厚さが0.0010μm以上である第1粒子を含む電極は、サイクル性能に特に優れることが明らかとなった。
【0273】
実施例1、6,7と、無機粒子の平均粒子径が2.0μmである実施例8及び無機粒子の平均粒子径が0.3μmである実施例9とを比較すると、実施例1、6,7は、容量維持率が特に高かった。この結果から、実施例1、6,7が含む、平均粒子径が0.4μm以上1.0μm以下である無機粒子は、フッ酸トラップ能を発揮するために好適な無機粒子径の範囲内であると考えられる。したがって、無機粒子の平均粒子径が0.4μm以上1.0μm以下の範囲内である電極は、サイクル性能に特に優れることが明らかとなった。
【0274】
実施例10は、負極の作製において、ガラスビーズを添加せずに攪拌を行ったこと以外は、実施例2と同様に作製した二次電池である。攪拌時にガラスビーズを添加した実施例2が含む第1粒子は、無機粒子含有層の表面の一部が削られることによってニオブチタン酸化物粒子の表面の一部が露出していたと考えられる。すなわち、露出部を備える第1粒子であったと考えられる。このような実施例2は、攪拌時にガラスビーズを添加しなかった実施例10と比較して、0℃放電容量が特に高かった。このことから、露出部を備える第1粒子を含む電極は、出力性能に特に優れることが明らかとなった。
【0275】
実施例11は、無機粒子含有層がAlを含有する金属酸化物を含む粒子を含み、かつ、無機粒子としてAl粒子を含む電極である。実施例12は、無機粒子含有層がTiを含有する金属酸化物を含む粒子を含み、かつ、無機粒子としてTiO粒子を含む電極である。実施例13は、無機粒子含有層がZrを含有する金属酸化物を含む粒子を含み、かつ、無機粒子としてZrO粒子を含む電極である。実施例14は、無機粒子含有層がMgを含有する金属酸化物を含む粒子を含み、かつ、無機粒子としてMgO粒子を含む電極である。このような実施例11~14は、容量維持率及び0℃放電容量の両方が高い値であった。すなわち、サイクル性能及び出力性能の両方に優れていた。
【0276】
このことから、無機粒子含有層は、Al、Ti、Zr及びMgからなる群より選択される少なくとも一種の元素を含有する金属酸化物を含む粒子を含む場合にも、サイクル性能及び出力性能を向上できることが明らかとなった。また、無機粒子としてAl、Ti、Zr及びMgからなる群より選択される少なくとも一種の元素を含有する金属酸化物を含む場合にも、サイクル性能及び出力性能を向上できることが明らかとなった。
【0277】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、電極が提供される。電極は、無機粒子と、ニオブチタン酸化物粒子と、ニオブチタン酸化物粒子の表面の少なくとも一部を被覆する無機粒子含有層とを含む。無機粒子の平均粒子径は、無機粒子含有層の厚さよりも大きい。そのため、係る電極は、サイクル性能及び出力性能を向上できる。
【0278】
以下に、実施形態に係る発明を付記する。
【0279】
<1> 無機粒子と、ニオブチタン酸化物粒子と、前記ニオブチタン酸化物粒子の表面の少なくとも一部を被覆する無機粒子含有層とを含み、
前記無機粒子の平均粒子径は、前記無機粒子含有層の厚さよりも大きい、電極。
【0280】
<2> 前記無機粒子含有層の厚さが0.001μm以上0.4μm以下の範囲内である、<1>に記載の電極。
【0281】
<3> 前記無機粒子の平均粒子径が0.4μm以上1μm以下の範囲内である、<1>又は<2>に記載の電極。
【0282】
<4> 前記ニオブチタン酸化物粒子の表面は、前記無機粒子含有層によって被覆されていない部分を含み、前記電極の表面において、前記無機粒子含有層によって被覆されていない部分の少なくとも一部が露出している、<1>~<3>のいずれか1項に記載の電極。
【0283】
<5> 前記無機粒子は、Al、Ti、Si、Zr及びMgからなる群より選択される少なくとも一種の元素を含有する金属酸化物及び固体電解質からなる群より選択される少なくとも一種を含む、<1>~<4>のいずれか1項に記載の電極。
【0284】
<6> 前記無機粒子含有層は、Al、Ti、Si、Zr及びMgからなる群より選択される少なくとも一種の元素を含有する金属酸化物を含む粒子、及び、固体電解質含有粒子からなる群より選択される少なくとも一種を含む、<1>~<5>のいずれか1項に記載の電極。
【0285】
<7> 前記無機粒子は固体電解質を含み、かつ、前記無機粒子含有層は固体電解質含有粒子を含む、<1>~<6>のいずれか1項に記載の電極。
【0286】
<8> 正極と、負極と、非水電解質とを含み、
前記非水電解質はフッ素原子を含み、
前記正極及び前記負極のうち少なくとも一方は、<1>~<7>のいずれか1項に記載の電極である、二次電池。
【0287】
<9> <8>に記載の二次電池を具備する電池パック。
【0288】
<10> 通電用の外部端子と、
保護回路と
を更に具備する<9>に記載の電池パック。
【0289】
<11> 複数の前記二次電池を具備し、
前記二次電池が、直列、並列、又は直列及び並列を組み合わせて電気的に接続されている<9>又は<10>に記載の電池パック。
【0290】
<12> <9>~<11>のいずれか1項に記載の電池パックを搭載した車両。
【0291】
<13> 前記車両の運動エネルギーを回生エネルギーに変換する機構を含む<12>に記載の車両。
【0292】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0293】
1…電極群、2…外装部材、3…電極(負極)、3a…集電体(負極集電体)、3b…活物質含有層(負極活物質含有層)、3c…負極集電タブ、4…セパレータ、5…正極、5a…正極集電体、5b…正極活物質含有層、6…負極端子、7…正極端子、10…第1粒子、11…ニオブチタン酸化物粒子、12…無機粒子含有層、13…無機粒子、14…露出部、21…バスバー、22…正極側リード、22a…他端、23…負極側リード、23a…他端、24…粘着テープ、30…電極、30b…活物質含有層、31…収容容器、32…蓋、33…保護シート、34…プリント配線基板、35…配線、40…車両本体、41…車両用電源、42…電気制御装置、43…外部端子、44…インバータ、45…駆動モータ、100…二次電池、200…組電池、200a…組電池、200b…組電池、200c…組電池、300…電池パック、300a…電池パック、300b…電池パック、300c…電池パック、301a…組電池監視装置、301b…組電池監視装置、301c…組電池監視装置、342…正極側コネクタ、343…負極側コネクタ、345…サーミスタ、346…保護回路、342a…配線、343a…配線、350…通電用の外部端子、352…正側端子、353…負側端子、348a…プラス側配線、348b…マイナス側配線、400…車両、411…電池管理装置、412…通信バス、413…正極端子、414…負極端子、415…スイッチ装置、416…電流検出部、417…負極入力端子、418…正極入力端子、L1…接続ライン、L2…接続ライン、W…駆動輪。
図1
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