(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135238
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】減衰バルブおよび緩衝器
(51)【国際特許分類】
F16F 9/348 20060101AFI20240927BHJP
F16F 9/32 20060101ALI20240927BHJP
F16F 9/508 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
F16F9/348
F16F9/32 L
F16F9/508
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023045828
(22)【出願日】2023-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】カヤバ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122323
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 憲
(72)【発明者】
【氏名】村田 貴夫
【テーマコード(参考)】
3J069
【Fターム(参考)】
3J069AA50
3J069CC13
3J069EE25
3J069EE28
3J069EE64
(57)【要約】
【課題】車両における乗心地を向上させ得る減衰バルブおよび緩衝器を提供する。
【解決手段】本発明の減衰バルブDVは、流路DPに設けられて、固定端に対する自由端の撓みが許容されるとともに固定端の軸方向への移動が許容される環状のリーフバルブ16と、流路DPに設けられるとともにリーフバルブ16に対して軸方向に隙間を介して対向した状態でリーフバルブ16と共に軸方向への移動が許容される環状のプレートバルブ14と、リーフバルブ16とプレートバルブ14とを軸方向に付勢してリーフバルブ16を軸方向で初期位置に位置決めるばね要素13,19と、初期位置に配置されたリーフバルブ16の自由端に対向する環状の対向座部6cとを備え、プレートバルブ14が軸方向へ移動して対向座部6cに対向するとプレートバルブ14と対向座部6cとによって流路DPの流路面積を制限する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流路に設けられて、内周或いは外周の一方が固定端とされ内周或いは外周の他方が自由端として前記固定端に対する前記自由端の撓みが許容されるとともに前記固定端の軸方向への移動が許容される環状のリーフバルブと、
前記流路に設けられるとともに、前記リーフバルブに対して軸方向に隙間を介して対向した状態で前記リーフバルブと共に軸方向への移動が許容される環状のプレートバルブと、
前記リーフバルブと前記プレートバルブとを軸方向に付勢して前記リーフバルブを軸方向で初期位置に位置決めるばね要素と、
前記リーフバルブが前記初期位置に配置されて撓まない状態にて前記リーフバルブの自由端に対向して前記リーフバルブとの間の前記流路の流路面積を制限する環状の対向座部とを備え、
前記プレートバルブが軸方向へ移動して前記対向座部に対向すると前記リーフバルブに代わり前記プレートバルブと前記対向座部とによって前記流路の流路面積を制限する
ことを特徴とする減衰バルブ。
【請求項2】
前記流路に対して前記リーフバルブおよび前記プレートバルブに対して直列に設けられて、前記リーフバルブよりも開弁圧が高く、前記プレートバルブが前記対向座部に対向するよりも前に開弁するメインバルブを備えた
ことを特徴とする請求項1に記載の減衰バルブ。
【請求項3】
前記メインバルブは、
ポートを有するバルブディスクと、
前記バルブディスクに積層されて前記ポートを開閉可能なメインリーフバルブとを有し、
前記プレートバルブは、前記リーフバルブと前記メインリーフバルブとの間に配置され、
前記リーフバルブと前記プレートバルブとの間に配置されて前記リーフバルブと前記プレートバルブとの間に前記隙間を設ける環状の間座を備え、
前記ばね要素は、前記メインリーフバルブと前記プレートバルブとの間に介装されて前記リーフバルブと前記プレートバルブとを反バルブディスク側へ向けて付勢する第1ばねと、前記リーフバルブの反バルブディスク側に配置されて前記リーフバルブと前記プレートバルブとをバルブディスク側へ向けて付勢する第2ばねとを有する
ことを特徴とする請求項2に記載の減衰バルブ。
【請求項4】
前記リーフバルブ、前記プレートバルブおよび前記間座とが外周に軸方向移動可能に嵌合されるカラーを備え、
前記第1ばねおよび前記第2ばねは、前記カラーの外周に配置される
ことを特徴とする請求項3に記載の減衰バルブ。
【請求項5】
アウターチューブと、前記アウターチューブ内に軸方向へ移動可能に挿入されるロッドと、前記アウターチューブに対する前記ロッドの移動によって液体が行き来する少なくとも2つの作動室とを有する緩衝器本体と、
前記作動室間に設けられた請求項1から4のいずれか一項に記載の減衰バルブとを備えた
ことを特徴とする緩衝器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、減衰バルブおよび緩衝器に関する。
【背景技術】
【0002】
緩衝器は、たとえば、車両における乗心地を向上する目的で、車両における車体と車軸との間に介装されて使用され、伸縮時に発揮する減衰力で車体および車輪の振動を抑制する。
【0003】
このような緩衝器は、たとえば、シリンダと、シリンダ内に移動自在に挿入されるピストンロッドと、シリンダ内に摺動自在に挿入されてシリンダ内を伸側室と圧側室とに区画するピストンと、シリンダ内に摺動自在に挿入されてシリンダ内の圧側室の下方に気室を区画するフリーピストンと、ピストンに設けられて伸側室と圧側室とを連通する減衰通路と、減衰通路に設けた減衰バルブとを備えている。
【0004】
近年、車両用の緩衝器には、車両における乗心地の向上のため、伸縮速度が低速よりも低い微低速域では減衰係数を高くし減衰力を伸縮の行程の切り換わりに対して速やかに立ち上げ、低速域では減衰係数を微低速域よりも小さくし、さらに、低速を超える中高速域では伸縮速度に比例するが低速域よりも減衰係数が小さくさせる減衰力特性の発揮が要望されている。
【0005】
このような要望に応えるために、減衰バルブは、環状であって内周側が固定されて外周側の撓みが許容されるリーフバルブと、リーフバルブの外周に非接触で対向する対向座部とを備えており、伸側室と圧側室とを行き交う作動油の流れに抵抗を与える。
【0006】
このように構成された減衰バルブでは、緩衝器の伸縮速度が微低速域にある場合、リーフバルブが然程撓まず対向座部との間の流路面積を極小さくするように制限するので、伸縮速度に応じて急激に立ち上がる減衰力特性が得られ、車両に適する減衰力特性を実現できる(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の減衰バルブは、リーフバルブと対向座部とを備えることにより緩衝器が微低速で伸縮する場合の減衰力特性を良好にし得るが、緩衝器の伸縮速度が低速域になると、リーフバルブが大きく撓んで流路面積を大きくするので減衰力の発生に寄与しなくなる。
【0009】
そのため、減衰バルブは、リーフバルブと対向座部とで構成されるバルブに加えて、緩衝器が高速で伸縮する場合に減衰力を発生するためのメインバルブを備える場合があるが、単にメインバルブを備えるだけでは緩衝器が低周波の大きな振幅で伸縮した場合における減衰力が不足してしまい、車両における乗心地を損なう可能性がある。
【0010】
そこで、本発明は、車両における乗心地を向上させ得る減衰バルブおよび緩衝器の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明の減衰バルブは、流路に設けられて、内周が固定端とされ外周が自由端として固定端に対する自由端の撓みが許容されるとともに固定端の軸方向への移動が許容される環状のリーフバルブと、流路に設けられるとともにリーフバルブに対して軸方向に隙間を介して対向した状態でリーフバルブと共に軸方向への移動が許容される環状のプレートバルブと、リーフバルブとプレートバルブとを軸方向に付勢してリーフバルブを軸方向で初期位置に位置決めるばね要素と、リーフバルブが初期位置に配置されて撓まない状態にてリーフバルブの自由端に対向してリーフバルブとの間の流路の流路面積を制限する環状の対向座部とを備え、プレートバルブが軸方向へ移動して対向座部6cに対向するとリーフバルブに代わりプレートバルブと対向座部とによって流路の流路面積を制限する。
【0012】
このように構成された減衰バルブによれば、緩衝器が低周波の大きな振幅で伸長した場合にはプレートバルブと対向座部とで流路の流路面積を小さく制限して緩衝器に振動を抑制するのに十分大きな減衰力を発生させ得る。
【0013】
また、本発明の緩衝器は、アウターチューブと、アウターチューブ内に軸方向へ移動可能に挿入されるロッドと、アウターチューブに対するロッドの移動によって液体が行き来する少なくとも2つの作動室とを有する緩衝器本体と、作動室間に設けられた減衰バルブを備えている。このように構成された緩衝器によれば、低周波の大きな振幅で伸長した場合にはプレートバルブと対向座部とで流路の流路面積を小さく制限して、振動を抑制するのに十分大きな減衰力を発生できる。
【0014】
また、減衰バルブは、流路に対してリーフバルブおよびプレートバルブに対して直列に設けられて、リーフバルブよりも開弁圧が高く、プレートバルブ14が対向座部に対向するよりも前に開弁するメインバルブを備えている。このように構成された減衰バルブによれば、緩衝器のピストン速度に応じて最適な減衰力を発生できより一層車両における乗心地を向上できる。
【0015】
さらに、減衰バルブにおけるメインバルブは、ポートを有するバルブディスクと、バルブディスクに積層されてポートを開閉可能なメインリーフバルブとを有し、プレートバルブは、リーフバルブとメインリーフバルブとの間に配置され、リーフバルブとプレートバルブとの間に配置されてリーフバルブとプレートバルブとの間に隙間を設ける環状の間座を備え、ばね要素は、メインリーフバルブとプレートバルブとの間に介装されてリーフバルブとプレートバルブとを反バルブディスク側へ向けて付勢する第1ばねと、リーフバルブの反バルブディスク側に配置されてリーフバルブとプレートバルブとをバルブディスク側へ向けて付勢する第2ばねとを備えている。
【0016】
このように構成された減衰バルブによれば、プレートバルブおよびリーフバルブが第1ばねおよび第2ばねによって挟持されており、バルブケースおよびメインリーフバルブをバルブディスクへ向けて付勢できるからメインリーフバルブの全体がバルブディスクから浮き上がって中速域における減衰力が低下してしまうのを抑制できる。
【0017】
また、減衰バルブは、リーフバルブ、プレートバルブおよび間座が外周に軸方向移動可能に嵌合されるカラーを備え、第1ばねおよび第2ばねがカラーの外周に配置されてもよい。このように構成された減衰バルブによれば、メインリーフバルブとバルブディスクとがカラーによって固定されるので、メインリーフバルブの全体がバルブディスクから浮き上がるのを防止でき、中速域における減衰力が低下してしまうのを抑制できるとともに、製品毎にばらつきの少ない減衰力を発生できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の減衰バルブおよび緩衝器によれば、車両における乗心地を向上させ得る。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施の形態の減衰バルブが適用された緩衝器の縦断面図である。
【
図2】本発明の一実施の形態の減衰バルブが適用された緩衝器の一部拡大断面図である。
【
図3】本発明の一実施の形態の減衰バルブの拡大断面図である。
【
図4】本発明の一実施の形態の減衰バルブが適用された緩衝器の減衰力特性を示した図である。
【
図5】本発明の一実施の形態の第1変形例における減衰バルブの拡大断面図である。
【
図6】本発明の一実施の形態の第2変形例における減衰バルブの拡大断面図である。
【
図7】本発明の一実施の形態の第3変形例における減衰バルブの拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図に示した実施の形態に基づき、本発明を説明する。
図1および
図2に示すように、第1の実施の形態における緩衝器Dは、アウターチューブとしてのシリンダ1と、シリンダ1内に移動可能に挿入されるロッド2とを有して伸縮可能な緩衝器本体Aと、緩衝器本体A内に設けられる二つの作動室としての伸側室R1と圧側室R2とを連通する流路としての減衰流路DPと、減衰通路DPに設けられた減衰バルブDVとを備えている。そして、この緩衝器Dの場合、図示しない車両における車体と車軸との間に介装されて使用され、車体および車輪の振動を抑制する。
【0021】
以下、緩衝器Dの各部について詳細に説明する。
図1に示すように、緩衝器本体Aは、アウターチューブとしての有底筒状のシリンダ1と、シリンダ1内に移動可能に挿入されるロッド2と、ロッド2に連結されてシリンダ1内に移動可能に挿入されるとともにシリンダ1内を作動室としての伸側室R1と圧側室R2とに区画するバルブディスクとしてのピストン3とを備えている。
【0022】
そして、ロッド2の
図1中上端となる基端には、ブラケット(図示せず)が設けられており、ロッド2が図外の前記ブラケットを介して車体と車軸の一方に連結される。また、シリンダ1の底部1aにもブラケット(図示せず)が設けられており、シリンダ1が図外の前記ブラケットを介して車体と車軸の他方に連結される。
【0023】
このようにして緩衝器Dは車体と車軸との間に介装される。そして、車両が凹凸のある路面を走行する等して車輪が車体に対して上下に振動すると、ロッド2がシリンダ1に出入りして緩衝器Dが伸縮するとともに、ピストン3がシリンダ1内を上下(軸方向)に移動する。
【0024】
また、緩衝器本体Aは、シリンダ1の上端を塞ぐとともに、内周にロッド2が摺動自在に挿通される環状のロッドガイド10を備えている。よって、シリンダ1内は、密閉空間とされている。そして、そのシリンダ1内のピストン3から見てロッド2とは反対側に、フリーピストン11が摺動自在に挿入されている。
【0025】
シリンダ1内におけるフリーピストン11の上側には液室Lが形成され、下側にはガス室Gが形成されている。さらに、液室Lは、ピストン3でロッド2側の伸側室R1とピストン3側の圧側室R2とに区画されており、伸側室R1と圧側室R2には、それぞれ液体が充填されている。なお、緩衝器本体A内に充填される液体は、作動油や水、水溶液、その他の液体等とされてもよい。その一方、ガス室Gには、エア、または窒素ガス等の気体が圧縮された状態で封入されている。
【0026】
そして、緩衝器Dの伸長作動時にロッド2がシリンダ1から退出し、その退出したロッド2の体積分シリンダ内容積が増加すると、フリーピストン11がシリンダ1内を上側へ移動してガス室Gを拡大させる。反対に、緩衝器Dの収縮作動時にロッド2がシリンダ1内へ侵入し、その侵入したロッド2の体積分シリンダ内容積が減少すると、フリーピストン11がシリンダ1内を下側へ移動してガス室Gを縮小させる。
【0027】
なお、フリーピストン11に替えて、ブラダ、またはベローズ等を利用して液室Lとガス室Gとを仕切っていてもよく、この仕切となる可動隔壁の構成は適宜変更できる。
【0028】
さらに、本実施の形態では、緩衝器Dが片ロッド、単筒型の緩衝器であり、緩衝器Dの伸縮時にフリーピストン(可動隔壁)11でガス室Gを拡大または縮小させて、シリンダ1に出入りするロッド2の体積補償をする。しかし、この体積補償のための構成も適宜変更できる。
【0029】
たとえば、フリーピストン(可動隔壁)11とガス室Gとを廃してシリンダ1の外周にアウターチューブを設け、シリンダ1とアウターチューブとの間に液体を貯留するリザーバを形成して、緩衝器を複筒型の緩衝器にする場合、リザーバによってシリンダ1に出入りするロッド2の体積補償をしてもよい。なお、リザーバは、シリンダ1とは別置き型のタンク内に形成されていてもよい。また、緩衝器Dは、ロッド2の中央にピストン3が装着されてシリンダ1の両端からロッド2の端部がシリンダ1外に突出する両ロッド型の緩衝器として構成されてもよい。
【0030】
ロッド2は、先端側の外径が2段階に縮径されており、先端側の最小径の小径部2aと、小径部2aより外径が大きく小径部2aの
図2中上側に設けられた中径部2bと、中径部2bより外径が大きく中径部2aの
図2中上側に設けられた大径部2cと、中径部2bと大径部2cとの境に設けられた段部2d、小径部2aの先端外周に設けられた螺子部2eとを備えている。
【0031】
本実施の形態の減衰バルブDVは、ロッド2に取り付けられて緩衝器Dにおけるピストン部に適用されている。より詳細には、減衰バルブDVは、流路としての減衰流路DPに対して直列に設けられるメインバルブMVとサブバルブSVとを備えている。
【0032】
つづいて、バルブディスクとしてのピストン3は、環状であってロッド2の中径部2bの外周に嵌合されており、ロッド2の螺子部2eに螺着されるピストンナット20によって、小径部2aの外周に嵌合されるサブバルブSVとともにロッド2に固定されている。より詳細には、ピストン3は、環状の本体部3aと、本体部3aの
図2中下端外周に設けられた筒部3bと、本体部3aの同一円周上に設けられて本体部3aを軸方向に貫く複数の伸側ポート3cと、本体部3aの前記伸側ポート3cよりも外周側の同一円周上に設けられて本体部3aを軸方向に貫く複数の圧側ポート3dと、本体部3aの
図2中下端の伸側ポート3cと圧側ポート3dとの間に設けられて伸側ポート3cを取り囲む環状の伸側弁座3eと、本体部3aの
図2中上端に設けられて伸側ポート3cを避けて圧側ポート3dの開口のみをそれぞれ個別に取り囲む花弁型の圧側弁座3fとを備えて構成されている。
【0033】
戻って、ピストン3の
図2中下面には、環状であってロッド2の中径部2bの外周に嵌合されて伸側ポート3cを開閉するメインリーフバルブとしての伸側メインリーフバルブ4が積層されている。伸側メインリーフバルブ4は、複数枚の環状板を積層して構成された積層リーフバルブとされている。そして、ロッド2の中径部2bの外周であって、伸側メインリーフバルブ4の
図2中下方には、伸側メインリーフバルブ4の撓みの支点の位置を設定する環状であって伸側メインリーフバルブ4より外径が小径な間座5が組み付けられている。さらに、ロッド2の小径部2aの外周であって間座5の
図2中下方には、環状のバルブケース6、第1ばね13、プレートバルブ14、間座15、リーフバルブ16、間座17、バルブストッパ18および第2ばね19が順に組み付けられている。
【0034】
また、ピストン3の
図2中上面には、環状であってロッド2の中径部2bの外周に嵌合されて圧側ポート3dを開閉する圧側バルブ7が積層されている。圧側バルブ7は、複数枚の環状板を積層して構成された積層リーフバルブとされている。また、ロッド2の中径部2bの外周であって、圧側バルブ7の
図2中上方には、圧側バルブ7の撓みの支点の位置を設定する環状であって圧側バルブ7より外径が小径な間座8と、圧側バルブ7が撓んで当接すると圧側バルブ7の撓み量を規制するバルブストッパ9が組み付けられている。
【0035】
そして、バルブストッパ9、間座8、圧側バルブ7、バルブディスクとしてのピストン3、伸側メインリーフバルブ4、間座5、バルブケース6、第1ばね13、プレートバルブ14、間座15、リーフバルブ16、間座17、バルブストッパ18および第2ばね19は、順にロッド2の外周に組み付けられた後、ロッド2の先端の螺子部2eに螺着されるピストンナット20とロッド2の段部2dとの間で挟持されてロッド2に取り付けられる。
【0036】
メインバルブMVは、バルブディスクとしてのピストン3と伸側メインリーフバルブ4とを備えて構成されている。また、ピストン3における伸側ポート3cは、減衰流路DPの一部を構成している。伸側メインリーフバルブ4は、後述するバルブケース6とピストン3とで挟持されて外周側の撓みが許容されており、ピストン3の
図2中下端に積層されてピストン3の伸側弁座3eに着座している。伸側メインリーフバルブ4を構成する環状板のうち、
図2中で最上方に積層されて伸側弁座3eに着座する環状板の外周には切欠オリフィス4aが設けられている。よって、伸側メインリーフバルブ4は、伸側弁座3eに着座した状態では伸側弁座3eにより取り囲まれている伸側ポート3cを切欠オリフィス4aのみを介して圧側室R2に連通させる。なお、伸側メインリーフバルブ4は、伸側弁座3eに着座した状態でも圧側ポート3dの入口については閉塞しない。
【0037】
そして、伸側メインリーフバルブ4は、伸側ポート3cを介して正面側に作用する伸側室R1の圧力と背面側に作用する圧側室R2との差圧が開弁圧に達すると外周を撓ませて伸側弁座3eから離間する。伸側メインリーフバルブ4は、伸側弁座3eから離間すると伸側弁座3eとの間に環状の隙間を形成し、当該隙間を介して伸側ポート3cを圧側室R2に連通させて伸側ポート3cを通過する液体の流れに抵抗を与える。本実施の形態の緩衝器Dでは、伸側メインリーフバルブ4は、緩衝器Dの伸長速度が高速域にある場合に開いて、伸側ポート3cを伸側室R1から圧側室R2へ向かう液体の流れに抵抗を与える。また、伸側メインリーフバルブ4は、伸側ポート3cを伸側室R1から圧側室R2へ向かう液体の流れのみを許容する一方通行の通路に設定している。
【0038】
また、伸側メインリーフバルブ4の内周が当接する本体部3aの当接面より伸側弁座3eの方が
図2中下方へ突出していて、両者の高さに差(高低差)が設けられていて、伸側メインリーフバルブ4は、ロッド2の外周に嵌合されて、ピストン3に重ねられると前記高低差によって外周が撓む。このように伸側メインリーフバルブ4には、予め初期撓みが与えられて伸側弁座3eに自身が発揮する弾発力で自身を押し付けている。よって、伸側室R1と圧側室R2との差圧による伸側メインリーフバルブ4を撓ませる力が前述の弾発力による押し付け力に打ち勝つようになるまで伸側メインリーフバルブ4は開弁せず、この開弁時の差圧が伸側メインリーフバルブ4の開弁圧となる。よって、伸側メインリーフバルブ4の開弁圧は、伸側メインリーフバルブ4の撓み剛性と伸側メインリーフバルブ4に与える初期撓み量によって調整できる。
【0039】
他方の圧側バルブ7は、複数の環状板を積層して構成された積層リーフバルブであって、ロッド2の中径部2bの外周に嵌合されてピストン3の
図2中上端に積層されてピストン3の圧側弁座3fに着座している。圧側バルブ7は、圧側弁座3fに着座した状態では伸側ポート3cに連通される孔7aを備えており、圧側弁座3fにより取り囲まれている圧側ポート3dのみを閉塞するが、伸側ポート3cについては閉塞しない。そして、圧側バルブ7は、圧側ポート3dを介して正面側に作用する圧側室R2の圧力と背面側に作用する伸側室R1との差圧が開弁圧に達すると外周を撓ませて圧側弁座3fから離間して圧側ポート3dを開放し、圧側ポート3dを通過する液体の流れに抵抗を与える。本実施の形態の緩衝器Dでは、圧側バルブ7は、緩衝器Dの収縮速度が高速域にある場合に開いて、圧側ポート3dを圧側室R2から伸側室R1へ向かう液体の流れに抵抗を与える。また、圧側バルブ7は、圧側ポート3dを圧側室R2から伸側室R1へ向かう液体の流れのみを許容する一方通行の通路に設定している。なお、圧側バルブ7の開弁圧は、伸側メインリーフバルブ4と同様に、圧側バルブ7の撓み剛性と圧側バルブ7に与える初期撓み量によって調整できる。
【0040】
なお、伸側メインリーフバルブ4における切欠オリフィス4aに代えて、或いは、切欠オリフィス4aに加えて、圧側バルブ7を構成する環状板のうち圧側弁座3fに着座する環状板の外周に切欠オリフィスを設けてもよいし、圧側弁座3fに切欠或いは打刻によって形成されるオリフィスを設けてもよい。
【0041】
なお、伸側メインリーフバルブ4および圧側バルブ7は、複数枚の環状板を積層して構成される積層リーフバルブとされているが、環状板の積層枚数は緩衝器Dに発生させた減衰力に応じて任意に変更でき、1枚の環状板のみで構成されるリーフバルブとされてもよい。また、伸側メインリーフバルブ4および圧側バルブ7は、リーフバルブ或いは積層リーフバルブ以外の構成のバルブとされてもよいが、薄い環状板を用いたリーフバルブ或いは積層リーフバルブとされることで緩衝器Dのピストン部の全長が長くならず緩衝器Dのストローク長を確保しやすくなるという利点を享受できる。
【0042】
また、伸側メインリーフバルブ4および圧側バルブ7は、それぞれ対応する間座5,8によって内周が支持されていて、間座5,8によって支持されていない外周側の撓みが許容される。よって、間座5,8の外径の設定によって、伸側メインリーフバルブ4および圧側バルブ7の撓みの支点の位置を変更できる。なお、間座5、8は、複数枚の環状のワッシャで構成されてもよい。また、バルブストッパ9は、圧側バルブ7が大きく撓んだ際に圧側バルブ7の外周に当接して圧側バルブ7のそれ以上の撓みを規制して圧側バルブ7を保護する。
【0043】
つづいて、サブバルブSVは、ロッド2の小径部2aの外周に装着される環状のバルブケース6、第1ばね13、プレートバルブ14、間座15、リーフバルブ16、間座17、バルブストッパ18および第2ばね19を備えて構成されている。
【0044】
バルブケース6は、環状であってロッド2の小径部2aの外周に嵌合するとともにピストン3の筒部3bの内周に嵌合する環状の嵌合部6aと、嵌合部6aの下端外周部から下方へ突出する筒状のケース部6bと、ケース部6bの内周に周方向に沿って設けられた内周側に突出する環状の対向座部6cとを備えている。そして、嵌合部6aと筒部3bとの間がシール50で塞がれており、嵌合部6aには、ケース部6bの内周側に開口して嵌合部6aを軸方向に貫通するポート6dが形成されている。ポート6dは嵌合部6aに対して2つ以上設けられていて、嵌合部6aの同一円周上に等間隔に設けられているが、流路面積を確保できればポート6dの設置数は1つであってもよい。また、ケース部6bの内方には、ロッド2の小径部2aの外周に装着される第1ばね13、プレートバルブ14、間座15およびリーフバルブ16が収容されている。
【0045】
バルブケース6の嵌合部6aをピストン3の筒部3b内に嵌合するとバルブケース6とピストン3との間に形成される空間Cは、伸側ポート3cおよび圧側ポート3dとを介して伸側室R1に連通され、ポート6dを介して圧側室R2に連通される。よって、ポート6dおよび前記空間Cは、伸側ポート3cとともに減衰流路DPを形成している。
【0046】
バルブケース6の嵌合部6aのポート6dの開口部よりも内周側には、ゴムリング、皿ばねやウェーブワッシャ等で形成された環状の第1ばね13が積層されている。第1ばね13は、ロッド2の小径部2aの外周に配置されており、軸方向に伸縮可能とされており、バルブケース6とプレートバルブ14との間に圧縮された状態で介装されて、プレートバルブ14を
図2中下方となる反バルブディスク側となる反ピストン側へ向けて付勢している。
【0047】
プレートバルブ14は、
図2および3に示すように、リーフバルブ16に比較して軸方向の厚みが厚い環状板で形成されており、ロッド2の小径部2aの外周に軸方向へ移動可能に装着されている。本実施の形態のプレートバルブ14は、外径が対向座部6cの内径よりも僅かに小径とされており、対向座部6cと干渉することなくロッド2の小径部2aに対して軸方向へ移動できる。プレートバルブ14の外周には、複数の切欠14aが形成されており、ロッド2の小径部2aの外周を軸方向へ移動して、プレートバルブ14が対向座部6cに径方向で対向すると減衰流路DPの流路面積を略切欠14aの断面積の総和に等しくするように制限する。
【0048】
プレートバルブ14の
図3中下方には、ロッド2の小径部2aの外周に軸方向へ移動可能に装着される環状の間座15が積層されている。間座15は、プレートバルブ14とリーフバルブ16との間に介装されており、外径がプレートバルブ14およびリーフバルブ16の上方の環状板16aの外径よりも小径な環状板で形成されている。また、間座15は、プレートバルブ14とリーフバルブ16との間に隙間を形成するとともに、後述するリーフバルブ16の自由端の
図3中上方への撓みの支点の位置を設定している。
【0049】
リーフバルブ16は、
図2および3に示すように、環状であって内周側がロッド2の小径部2aの外周に軸方向へ移動可能に装着されており、内周側を固定端とするとともに外周側を自由端として自由端である外周の撓みが許容された三枚の弾性を有する環状板16a,16b,16cを積層して構成されている。これら三枚の環状板16a,16b,16cのうちの中央の環状板16bの外径は、上下両端に位置する環状板16a,16cの外径よりも大きく、対向座部6cの内径よりも僅かに小さい。なお、リーフバルブ16を構成する環状板の枚数は、緩衝器Dで得たい減衰力に応じて任意に設定でき、複数でなくとも単数とされてもよい。なお、本実施の形態では、リーフバルブ16がロッド2の
図2中下端の外径が最も小さい小径部2aに嵌合されているので、リーフバルブ16の内径を小径部2aに合わせて小さくすることができ、リーフバルブ16の内外径差を長くできる。よって、少ない撓み量でもリーフバルブ16と対向座部6cとの間の流路面積を大きくできるようになり、リーフバルブ16に作用する応力の負担を軽減できる。
【0050】
リーフバルブ16の
図3中下方には、ロッド2の小径部2aの外周に軸方向へ移動可能に装着される環状の間座17が積層されている。間座17は、リーフバルブ16とバルブストッパ18との間に介装されており、外径がリーフバルブ16の下方の環状板16cおよびバルブストッパ18の外径よりも小径な環状板で形成されている。また、間座17は、リーフバルブ16とバルブストッパ18との間に隙間を形成するとともに、リーフバルブ16の自由端の
図3中下方への撓みの支点の位置を設定している。
【0051】
バルブストッパ18の内周側には、ゴムリング、皿ばねやウェーブワッシャ等で形成された環状の第2ばね19が積層されている。第2ばね19は、ロッド2の小径部2aの外周に配置されて軸方向に伸縮可能とされており、バルブストッパ18とピストンナット20との間に圧縮された状態で介装されて、バルブストッパ18を
図3中上方となるバルブディスク側となるピストン側へ向けて付勢している。
【0052】
第1ばね13と第2ばね19は、バルブケース6の嵌合部6aとロッド2に螺着されたピストンナット20との間に圧縮状態で介装されるとともに、ロッド2の小径部2aの外周に装着されて協働してばね要素を構成しており、プレートバルブ14、間座15、リーフバルブ16、間座17およびバルブストッパ18を軸方向の両側から挟持して、何ら外力が作用しない状態においてリーフバルブ16を軸方向で初期位置に位置決める。初期位置に配置されたリーフバルブ16は、軸方向中央の環状板16bの自由端の外周面をバルブケース6における対向座部6cに僅かな隙間を介して正対させる。なお、第1ばね13と第2ばね19は、緩衝器Dの伸長速度が高速に達すると、伸側室R1と圧側室R2との差圧によるプレートバルブ14およびリーフバルブ16を軸方向下方へ移動させる力によって伸縮して、リーフバルブ16の代わりにプレートバルブ14を対向座部6cに径方向で対向させる。
【0053】
このように、リーフバルブ16は、初期位置では、中央の環状板16bの外周面がバルブケース6に設けた対向座部6cの内周面に対向する位置に位置決めされる。また、本実施の形態では、リーフバルブ16は、内周が小径の間座15,17によって挟持されている。よって、リーフバルブ16は、間座15,17の外周縁を支点として外周側が
図2中上下方向へ弾性変形して撓むことができる。なお、間座15,17は、図示したところでは、それぞれ1枚の環状板で構成されているが、複数枚の環状板で構成されてもよい。
【0054】
プレートバルブ14は、リーフバルブ16と軸方向に隙間を空けて対向している。そして、リーフバルブ16の自由端が
図3中上方へ撓んでプレートバルブ14に当接すると、プレートバルブ14は、リーフバルブ16のそれ以上の上方側への撓みを規制するバルブストッパとしても機能する。また、バルブストッパ18は、リーフバルブ16と軸方向に隙間を空けて対向しており、リーフバルブ16の自由端が
図3中下方へ撓んでリーフバルブ16に当接するとリーフバルブ16のそれ以上の下方側への撓みを規制する。
【0055】
そして、バルブケース6、第1ばね13、プレートバルブ14、間座15、リーフバルブ16、間座17、バルブストッパ18および第2ばね19は、順番に、伸側メインリーフバルブ4の
図2中下方に積層されてロッド2の外周に嵌合された後、ロッド2の螺子部2eに螺着されるピストンナット20によってロッド2に取り付けられる。
【0056】
すると、前述したように、リーフバルブ16は、軸方向で初期位置に位置決めされて外周面を対向座部6cの内周面に正対させて、対向座部6cとの間に所定の僅かな環状隙間Pをあけて対向する。本実施の形態の緩衝器Dでは、リーフバルブ16の内周は、第1ばね13と第2ばね19とで挟持されて固定端とされており、リーフバルブ16の外周が、バルブケース6に設けられた対向座部6cに対して上下方向へ動ける自由端となっている。なお、間座15,17を構成する環状板の板厚或いは積層枚数の調整によって、初期位置におけるリーフバルブ16の環状板16bが対向座部6cの内周面と対向するように位置決めすればよい。
【0057】
そして、緩衝器Dが伸縮せず停止した状態では、プレートバルブ14およびリーフバルブ16が上方へも下方へも変位せずに第1ばね13と第2ばね19とにより初期位置に位置決めされるとともにリーフバルブ16は撓まない。このように、リーフバルブ16が初期位置に位置決めされて撓んでいない状態では、
図3に示すように、リーフバルブ16の環状板16bは、外周面を対向座部6cの内周面に正対させて、対向座部6cとの間に所定の環状隙間Pをあけて対向する。そして、本実施の形態の緩衝器Dでは、正対する環状板16bと対向座部6cとの間にできる環状隙間Pは非常に狭く、その環状隙間Pの開口面積は、前述の切欠オリフィス4aの開口面積よりも小さい。
【0058】
他方、緩衝器Dが動き出す(伸縮する)と、リーフバルブ16は撓み、リーフバルブ16の撓み量は伸縮速度の増加に応じて大きくなる。緩衝器Dの伸長速度が動き出しのような伸縮速度が0(ゼロ)に近い場合、伸側室R1と圧側室R2との圧力差が極小さいために、当該圧力差によりプレートバルブ14およびリーフバルブ16を軸方向へ移動させようとする力が小さいため、第1ばね13と第2ばね19とが伸縮せずにリーフバルブ16が初期位置に位置決めされた状態に維持される。
【0059】
そして、緩衝器Dの伸長速度が動き出しのような伸縮速度が0(ゼロ)に近い場合、リーフバルブ16の撓み量が非常に小さく、微低速域から低速域の間でリーフバルブ16が対向座部6cの内周面から対向し得なくなる程度に撓んでリーフバルブ16は開弁する。さらに、緩衝器Dの伸長速度が低速域、または高速域にある場合にはリーフバルブ16の外周部が間座17の外周を撓みの支点にして下側へと大きく撓む。反対に、緩衝器Dの収縮速度が低速域、または高速域にある場合にはリーフバルブ16の外周部が間座15の外周を撓みの支点にして上側へと大きく撓む。リーフバルブ16が撓んで対向座部6cから離間して開弁する際の伸側室R1と圧側室R2の差圧、つまり、リーフバルブ16の開弁圧は、伸側メインリーフバルブ4および圧側バルブ7の開弁圧より低く、伸縮速度が低速域にある場合、リーフバルブ16は前述の通り開弁するが、伸側メインリーフバルブ4および圧側バルブ7は開弁せず、液体は切欠オリフィス4aを介して伸側室R1と圧側室R2とを行き来する。
【0060】
なお、環状板16bが対向座部6cの内周面に正対した状態で環状隙間Pが略0になるようにすれば、緩衝器Dの動き出して直ぐに伸側室R1と圧側室R2とに差圧が生じるため、緩衝器Dの伸縮の切り換わりにおいて緩衝器Dが速やかに減衰力を発生できる。
【0061】
このようにリーフバルブ16は、緩衝器Dの伸長作動時では伸側室R1の圧力を受けて
図2中下方へ撓み、緩衝器Dの収縮作動時では圧側室R2の圧力を受けて
図2中上方へ撓む。なおリーフバルブ16の作動の説明においてリーフバルブ16の正面を高圧が作用する面としリーフバルブ16の背面を低圧が作用する面として説明することとする。したがって、本実施の形態の緩衝器Dでは、伸長作動時においてリーフバルブ16の正面とは高圧となる伸側室側を向く面となり背面とは低圧となる圧側室側を向く面となり、収縮作動時においてリーフバルブ16の正面とは高圧となる圧側室側を向く面となり背面とは低圧となる伸側室側を向く面となる。
【0062】
なお、緩衝器Dの伸縮速度が低速域、及び高速域では、リーフバルブ16の外周部が上下に撓み、上方或いは下方にずれたリーフバルブ16の環状板16bと対向座部6cとの間にできる環状隙間Pの開口面積が、切欠オリフィス4aの開口面積よりも大きくなる。
【0063】
また、リーフバルブ16の下側に位置するバルブストッパ18は、緩衝器Dの伸長作動時に減衰流路DPを流れる液体の流量が多くなってリーフバルブ16が大きく撓むと環状板16bの
図3中下端に当接してリーフバルブ16のそれ以上の
図3中下方への撓みを規制してリーフバルブ16を保護する。さらに、リーフバルブ16の上側に位置するプレートバルブ14は、緩衝器Dの収縮作動時に減衰流路DPを流れる液体の流量が多くなってリーフバルブ16が大きく撓むと環状板16bの
図3中上端に当接してリーフバルブ16の
図3中上面に当接してこれを支えてリーフバルブ16の
図3中上方側への撓みを抑制してリーフバルブ16を保護する。
【0064】
他方、緩衝器Dの伸長速度が高速になり、伸側室R1の圧力と圧側室R2の圧力との差が大きくなって、液体が減衰流路DPを伸側室R1から圧側室R2へ向かう際に、プレートバルブ14とリーフバルブ16とを
図3中下方へ押圧する力が大きくなると、プレートバルブ14とリーフバルブ16とが第2ばね19を押し縮めて下方へと移動し、プレートバルブ14の外周面が対向座部6cの内周面と正対するようになる。この状態では、伸側メインリーフバルブ4は開弁しているものの、減衰流路DPの流路面積がプレートバルブ14と対向座部6cとの間で絞られて制限されるので、減衰流路DPを通過する液体の流れに与えられる抵抗が大きくなる。このように、伸側メインリーフバルブ4、プレートバルブ14およびリーフバルブ16は、減衰流路DPに対して直列に配置されている。
【0065】
以下、本実施の形態に係る緩衝器Dの作動について説明する。緩衝器Dの伸長作動時には、ピストン3がシリンダ1内を上方へ移動して伸側室R1を圧縮する。緩衝器Dの伸長速度が微低速域にあって0に近い場合、伸側室R1の圧力が上昇するものの伸側室R1の圧力と圧側室R2の圧力との差圧が伸側メインリーフバルブ4の開弁圧に達しないため、伸側メインリーフバルブ4は開弁せず伸側ポート3cを閉塞したまま維持する。圧側バルブ7は、伸側室R1の圧力を背面側から受けて圧側ポート3dを閉塞する。緩衝器Dの伸長作動時のピストン速度が0に近い場合、第1ばね13および第2ばね19は殆ど伸縮せずリーフバルブ16を初期位置に位置決めした状態に維持する。また、緩衝器Dの伸長作動時のピストン速度が0に近い場合、伸側室R1の圧力が上昇するものの圧側室R2の圧力との差圧がリーフバルブ16の開弁圧に達しないためリーフバルブ16は撓んでも外周面を対向座部6cの内周の軸方向幅の範囲に対向させて閉弁状態となってリーフバルブ16と対向座部6cとの間の環状隙間Pの流路面積を極小さく維持する。さらに、緩衝器Dの伸長作動時のピストン速度が増加して微低速域から低速域にまで変化する間に、伸側室R1の圧力と圧側室R2の圧力との差圧がリーフバルブ16の開弁圧を超えるのでリーフバルブ16は、外周を対向座部6cの内周の軸方向幅の範囲から
図3中下方へ外れるようにして撓んで開弁しリーフバルブ16と対向座部6cとの間の環状隙間Pの流路面積を大きくする。なお、緩衝器Dの伸長作動時のピストン速度が低速域となっても、第1ばね13および第2ばね19は殆ど伸縮せずリーフバルブ16を略初期位置に位置決めした状態に維持する。
【0066】
そして、液体は、切欠オリフィス4a、伸側ポート3c、空間C、ポート6dおよび環状隙間Pを通過して伸側室R1から圧側室R2へ移動する。液体は、このように減衰流路DPを通過する際に、切欠オリフィス4aおよび環状隙間Pを通過するが微低速域における開弁状態のリーフバルブ16における環状隙間Pの流路面積は切欠オリフィス4aの流路面積よりも小さい。そのため、緩衝器Dの伸長作動時のピストン速度が微低速域にある場合、緩衝器Dは、主としてリーフバルブ16が液体に与える抵抗によって伸長を妨げる減衰力を発生する。したがって、緩衝器Dの伸長作動時のピストン速度が微低速域にある場合の緩衝器Dの伸側の減衰力特性(緩衝器Dの伸長作動時のピストン速度に対する減衰力の特性)は、
図4に示したように、ピストン速度が0近傍では減衰係数が非常に大きく立ち上がった後、リーフバルブ16の開弁によって減衰係数が小さくなる特性となる。
【0067】
緩衝器Dの伸長作動時のピストン速度が微低速域を超えて低速域にある場合、伸側室R1の圧力が上昇するものの圧側室R2の圧力との差圧が伸側メインリーフバルブ4の開弁圧に達しないため、伸側メインリーフバルブ4は未だ開弁せず伸側ポート3cを閉塞したまま維持する。圧側バルブ7は、伸側室R1の圧力を背面側から受けて圧側ポート3dを閉塞する。緩衝器Dの伸長作動時のピストン速度が低速域にある場合、伸側室R1の圧力と圧側室R2の圧力との差圧によっても第1ばね13および第2ばね19が殆ど伸縮せずリーフバルブ16を殆ど初期位置から変位させない。そして、緩衝器Dの伸長作動時のピストン速度が低速域にある場合、前記差圧がリーフバルブ16の開弁圧を超えるのでリーフバルブ16は、外周を対向座部6cの内周の軸方向幅の範囲から
図3中下方へ外れるようにして撓んで開弁しリーフバルブ16と対向座部6cとの間の環状隙間Pの流路面積を大きくする。よって、この場合も液体は、切欠オリフィス4a、伸側ポート3c、空間C、ポート6dおよび環状隙間Pを通過して伸側室R1から圧側室R2へ移動するが、環状隙間Pの流路面積が切欠オリフィス4aの流路面積よりも大きくなる。よって、緩衝器Dの伸長作動時のピストン速度が低速域にある場合、緩衝器Dは、主として切欠オリフィス4aが液体に与える抵抗によって伸長を妨げる減衰力を発生する。したがって、緩衝器Dの伸長作動時のピストン速度が微低速域にある場合の緩衝器Dの伸側の減衰力特性は、
図4に示したように、オリフィス特有の緩衝器Dの伸長作動時のピストン速度の2乗に比例する特性となるが、前記ピストン速度が微低速域にある場合に比較して減衰係数が小さくなる特性となる。
【0068】
さらに、緩衝器Dの伸長作動時のピストン速度が低速域を超えて中速域にある場合、伸側室R1の圧力と圧側室R2の圧力との差圧が伸側メインリーフバルブ4の開弁圧に達して、伸側メインリーフバルブ4が撓んで開弁して伸側ポート3cを開放する。圧側バルブ7は、伸側室R1の圧力を背面側から受けて圧側ポート3dを閉塞する。緩衝器Dの伸長作動時のピストン速度が中速域にある場合、伸側室R1の圧力と圧側室R2の圧力との差圧によってプレートバルブ14およびリーフバルブ16を下方へ押す力によって第1ばね13および第2ばね19が伸縮するが、プレートバルブ14は、下方へ変位しても外周面を対向座部6cの内周面に正対させる位置にまでは変位できない。また、リーフバルブ16は撓んでおり対向座部6cに対し軸方方向の下方へずれるため、減衰流路DPの流路面積を小さく制限しない。よって、この場合、減衰流路DPの流路面積を一番小さく制限するのは、伸側メインリーフバルブ4となる。よって、緩衝器Dの伸長作動時のピストン速度が中速域にある場合、緩衝器Dは、主として伸側メインリーフバルブ4が液体に与える抵抗によって伸長を妨げる減衰力を発生する。したがって、緩衝器Dの伸長速度が中速域にある場合の緩衝器Dの伸側の減衰力特性は、
図4に示したように、伸側メインリーフバルブ4の特有の緩衝器Dの伸長作動時のピストン速度に比例するような特性となるが、前記ピストン速度が低速域にある場合に比較して減衰係数がさらに小さくなる特性となる。
【0069】
そしてさらに、緩衝器Dの伸長作動時のピストン速度が中速域を超えて高速域に達する場合、伸側室R1の圧力と圧側室R2の圧力との差圧によってプレートバルブ14およびリーフバルブ16を下方へ押す力によって第1ばね13および第2ばね19が伸縮して、プレートバルブ14が外周面を対向座部6cの内周面に正対させる位置にまで変位する。緩衝器Dの伸長作動時のピストン速度が高速域に達する場合、伸側メインリーフバルブ4は開弁しており伸側ポート3cを開放している。圧側バルブ7は、伸側室R1の圧力を背面側から受けて圧側ポート3dを閉塞する。このように、緩衝器Dの伸長作動時のピストン速度が高速域にある場合、減衰流路DPの流路面積が一番小さくなるのはプレートバルブ14と対向座部6cとの間の隙間となり、プレートバルブ14が減衰流路DP中の流路面積のうちで最も流路面積を小さくするように制限する。緩衝器Dが低周波の大きな振幅で伸長する場合、緩衝器Dの伸長速度が高速域に達するが、このような場合には緩衝器Dは、主としてプレートバルブ14と対向座部6cとが液体に与える抵抗によって伸長を妨げる減衰力を発生する。したがって、緩衝器Dの伸長速度が高速域にある場合の緩衝器Dの伸側の減衰力特性は、
図4に示したように、プレートバルブ14と対向座部6cとで形成される絞り抵抗によって緩衝器Dの伸長作動時のピストン速度の二乗に比例する特性となるが、前記ピストン速度が中速域にある場合に比較して減衰係数が大きくなる特性となる。
【0070】
なお、緩衝器Dの伸長作動時において、プレートバルブ14およびリーフバルブ16がロッド2に対して軸方向で下方へ変位しても、プレートバルブ14およびリーフバルブ16が初期荷重が与えられた第1ばね13および第2ばね19によって挟持されており、バルブケース6および伸側メインリーフバルブ4をピストン3へ向けて付勢できるから伸側メインリーフバルブ4の全体がピストン3から浮き上がって中速域における減衰力が低下してしまうことはない。
【0071】
つづいて、緩衝器Dの収縮作動時には、ピストン3がシリンダ1内を下方へ移動して圧側室R2を圧縮する。緩衝器Dの収縮作動時のピストン速度が微低速域にあって0に近い場合、圧側室R2の圧力が上昇するものの伸側室R1の圧力との差圧が圧側バルブ7の開弁圧に達しないため、圧側バルブ7は開弁せず圧側ポート3dを閉塞したまま維持する。伸側メインリーフバルブ4は、圧側室R2の圧力を背面側から受けて伸側ポート3cを閉塞する。緩衝器Dの収縮作動時のピストン速度が0に近い場合、第1ばね13および第2ばね19は殆ど伸縮せずリーフバルブ16を初期位置に位置決めした状態に維持する。また、緩衝器Dの収縮作動時のピストン速度が0に近い場合、圧側室R2の圧力が上昇するものの伸側室R1の圧力との差圧がリーフバルブ16の開弁圧に達しないためリーフバルブ16は撓んでも外周面を対向座部6cの内周の軸方向幅の範囲に対向させて閉弁状態となってリーフバルブ16と対向座部6cとの間の環状隙間Pの流路面積を極小さく維持する。さらに、緩衝器Dの収縮作動時のピストン速度が増加して微低速域から低速域にまで変化する間に、圧側室R2の圧力と伸側室R1の圧力との差圧がリーフバルブ16の開弁圧を超えるのでリーフバルブ16は、外周を対向座部6cの内周の軸方向幅の範囲から
図3中上方へ外れるようにして撓んで開弁しリーフバルブ16と対向座部6cとの間の環状隙間Pの流路面積を大きくする。なお、緩衝器Dの収縮作動時のピストン速度が低速域となっても、第1ばね13および第2ばね19は殆ど伸縮せずリーフバルブ16を略初期位置に位置決めした状態に維持する。
【0072】
さらに、緩衝器Dの収縮作動時のピストン速度が増加して微低速域から低速域にまで変化する間に、圧側室R2の圧力と伸側室R1の圧力との差圧がリーフバルブ16の開弁圧を超えるのでリーフバルブ16は、外周を対向座部6cの内周の軸方向幅の範囲から
図3中上方へ外れるようにして撓んで開弁しリーフバルブ16と対向座部6cとの間の環状隙間Pの流路面積を大きくする。
【0073】
そして、液体は、環状隙間P、ポート6d、空間C、伸側ポート3cおよび切欠オリフィス4aを通過して圧側室R2から伸側室R1へ移動する。このように液体は、切欠オリフィス4aおよび環状隙間Pを通過するが微低速域における開弁状態のリーフバルブ16における環状隙間Pの流路面積は切欠オリフィス4aの流路面積よりも小さい。そのため、緩衝器Dの収縮作動時のピストン速度が微低速域にある場合、緩衝器Dは、主としてリーフバルブ16が液体に与える抵抗によって収縮を妨げる減衰力を発生する。したがって、緩衝器Dの収縮作動時のピストン速度が微低速域にある場合の緩衝器Dの圧側の減衰力特性は、
図4に示したように、前記ピストン速度が0近傍では減衰係数が非常に大きく立ち上がった後リーフバルブ16の開弁によって減衰係数が小さくなる特性となる。
【0074】
緩衝器Dの収縮作動時のピストン速度が微低速域を超えて低速域にある場合、圧側室R2の圧力が上昇するものの伸側室R1の圧力との差圧が圧側バルブ7の開弁圧に達しないため、圧側バルブ7は未だ開弁せず圧側ポート3dを閉塞したまま維持する。伸側メインリーフバルブ4は、圧側室R2の圧力を背面側から受けて伸側ポート3cを閉塞する。緩衝器Dの収縮作動時のピストン速度が低速域にある場合、圧側室R2の圧力と伸側室R1の圧力との差圧によっても第1ばね13および第2ばね19が殆ど伸縮せずリーフバルブ16を殆ど初期位置から変位させない。そして、緩衝器Dの収縮作動時のピストン速度が低速域にある場合、圧側室R2の圧力と伸側室R1の圧力との差圧がリーフバルブ16の開弁圧を超えるのでリーフバルブ16は、外周を対向座部6cの内周の軸方向幅の範囲から
図3中上方へ外れるようにして撓んで開弁しリーフバルブ16と対向座部6cとの間の環状隙間Pの流路面積を大きくする。よって、この場合も液体は、環状隙間P、ポート6d、空間C、伸側ポート3cおよび切欠オリフィス4aを通過して圧側室R2から伸側室R1へ移動するが、環状隙間Pの流路面積が切欠オリフィス4aの流路面積よりも大きくなる。よって、緩衝器Dの収縮作動時のピストン速度が低速域にある場合、緩衝器Dは、主として切欠オリフィス4aが液体に与える抵抗によって収縮を妨げる減衰力を発生する。したがって、緩衝器Dの収縮作動時のピストン速度が低速域にある場合の緩衝器Dの圧側の減衰力特性は、
図4に示したように、オリフィス特有の緩衝器Dの収縮作動時のピストン速度の2乗に比例する特性となるが、前記収縮速度が微低速域にある場合に比較して減衰係数が小さくなる特性となる。
【0075】
さらに、緩衝器Dの収縮作動時のピストン速度が低速域を超えて中速域以上に達する場合、圧側室R2の圧力と伸側室R1の圧力との差圧が圧側バルブ7の開弁圧に達して、圧側バルブ7が撓んで開弁して圧側ポート3dを開放する。伸側メインリーフバルブ4は、圧側室R2の圧力を背面側から受けて伸側ポート3cを閉塞する。緩衝器Dの収縮作動時のピストン速度が中高速域にある場合、圧側室R2の圧力と伸側室R1の圧力との差圧によってプレートバルブ14およびリーフバルブ16を上方へ押す力によって第1ばね13および第2ばね19が伸縮して、リーフバルブ16が対向座部6cと軸方向へずれた位置に変位して、減衰流路DPの流路面積を小さく制限しなくなる。液体は、環状隙間P、ポート6d、空間C、圧側ポート3dおよび圧側バルブ7と圧側弁座3fとの間を通過して圧側室R2から伸側室R1へ移動する。緩衝器Dの収縮作動時のピストン速度が中高速域にある場合、リーフバルブ16が上方へ移動して対向座部6cと軸方向にてずれた位置に配置されるため、環状隙間Pにおける流路面積よりも圧側バルブ7と圧側弁座3fとの間の隙間における流路面積の方が小さくなる。よって、緩衝器Dの収縮速度が中速域にある場合、緩衝器Dは、主として圧側バルブ7が液体に与える抵抗によって収縮を妨げる減衰力を発生する。したがって、緩衝器Dの収縮速度が中高速域にある場合の緩衝器Dの圧側の減衰力特性は、
図4に示したように、圧側バルブ7の特有の緩衝器Dの収縮作動時のピストン速度に比例するような特性となるが、前記ピストン速度が低速域にある場合に比較して減衰係数がさらに小さくなる特性となる。
【0076】
なお、
図5に示すように第1変形例の減衰バルブDV1のように、バルブストッパ18の代わりに、リーフバルブ16の下方であって間座17の下方にプレートバルブ21を設ける場合、緩衝器Dの収縮作動時のピストン速度が中速域を超えて高速域に達する場合、圧側室R2の圧力と伸側室R1の圧力との差圧によってプレートバルブ21を上方へ押す力によって第1ばね13および第2ばね19が伸縮して、プレートバルブが外周面を対向座部6cの内周面に正対させる位置にまで変位する。このようにバルブストッパ18の代わりにプレートバルブ21を設けると、緩衝器Dの収縮作動時のピストン速度が高速域に達する場合、減衰流路DPの流路面積が一番小さくなるのはプレートバルブ21と対向座部6cとの間の隙間となり、プレートバルブ21が減衰流路DP中の流路面積のうち最も流路面積を小さくするように制限する。よって、緩衝器Dの収縮作動時のピストン速度が高速域にある場合の緩衝器Dの圧側の減衰力特性をプレートバルブ21と対向座部6cとで形成される絞り抵抗によって緩衝器Dの収縮作動時のピストン速度の二乗に比例する特性として、伸長速度が中速域にある場合に比較して減衰係数が大きくなる特性とすることができる。なお、環状板16bが対向座部6cの内周面に正対した状態で環状隙間Pが略0になるように設定する場合には、緩衝器Dの動き出して直ぐに伸側室R1と圧側室R2とに差圧が生じるため、緩衝器Dは、伸縮の切り換わりにおいて速やかに減衰力を発生できる。
【0077】
本実施の形態の緩衝器Dは、以上の通り作動する。そして、本実施の形態の減衰バルブDVは、減衰流路(流路)DPに設けられて、内周が固定端とされ外周が自由端として固定端に対する自由端の撓みが許容されるとともに固定端の軸方向への移動が許容される環状のリーフバルブ16と、減衰流路(流路)DPに設けられるとともにリーフバルブ16に対して軸方向に隙間を介して対向した状態でリーフバルブ16と共に軸方向への移動が許容される環状のプレートバルブ14と、リーフバルブ16とプレートバルブ14とを軸方向に付勢してリーフバルブ16を軸方向で初期位置に位置決める第1ばね13と第2ばね19(ばね要素)と、リーフバルブ16が初期位置に配置されて撓まない状態にてリーフバルブ16の自由端に対向してリーフバルブ16との間の減衰流路(流路)DPの流路面積を制限する環状の対向座部6cとを備え、プレートバルブ14が軸方向へ移動して対向座部6cに対向するとリーフバルブ16に代わりプレートバルブ14と対向座部6cとによって減衰流路(流路)DPの流路面積を制限する。
【0078】
このように構成された減衰バルブDVによれば、緩衝器Dが微低速で伸長する場合にはリーフバルブ16と対向座部6cとを対向させて減衰力特性を良好にし得るとともに、緩衝器Dの伸長作動時のピストン速度が高速域になるとプレートバルブ14を対向座部6cに対向させて減衰流路(流路)DPの流路面積を小さく制限できる。よって、本実施の形態の減衰バルブDVは、緩衝器Dが低周波の大きな振幅で伸長した場合にはプレートバルブ14と対向座部6cとで減衰流路(流路)DPの流路面積を小さく制限して緩衝器Dに振動を抑制するのに十分大きな減衰力を発生させ得る。よって、本実施の形態の減衰バルブDVによれば、緩衝器Dが低周波の大きな振幅で伸長した場合であっても、車両における乗心地を向上させ得る。また、リーフバルブ16とプレートバルブ14とに対して弁座として機能する対向座部6cを1つ設けることで緩衝器Dの伸長作動時のピストン速度が微低速時と高速時とで異なる減衰力特性を得ることができ、バルブの構造が簡易となる。
【0079】
また、本実施の形態の緩衝器Dは、シリンダ(アウターチューブ)1と、シリンダ(アウターチューブ)1内に軸方向へ移動可能に挿入されるロッド2と、シリンダ(アウターチューブ)1に対するロッド2の移動によって液体が行き来する少なくとも伸側室(作動室)R1と圧側室(作動室)R2とを有する緩衝器本体Aと、伸側室(作動室)R1と圧側室(作動室)R2との間に設けられた減衰バルブDVを備えている。このように構成された緩衝器Dによれば、緩衝器Dが低周波の大きな振幅で伸長した場合にはプレートバルブ14と対向座部6cとで減衰流路(流路)DPの流路面積を小さく制限して緩衝器Dに振動を抑制するのに十分大きな減衰力を発生させ得る。よって、本実施の形態の緩衝器Dによれば、低周波の大きな振幅で伸長した場合であっても、車両における乗心地を向上させ得る。
【0080】
なお、緩衝器Dの収縮作動時におけるピストン速度が微低速時と高速時とで最適な減衰力を発生させたい場合、減衰バルブDVのプレートバルブ14とバルブストッパ18を入れ替えて緩衝器Dの収縮作動時のピストン速度が高速となるとプレートバルブ14が対向座部6cに対向する構造とすればよい。この場合、メインバルブMVは、圧側バルブ7とされて、減衰流路DPは伸側ポート3cの代わりに圧側ポート3dを含んで構成されることになる。
【0081】
なお、緩衝器Dが低周波の大きな振幅で収縮する場合にも緩衝器Dに大きな減衰力を発生させたい場合には、
図5に示した減衰バルブDV1のようにリーフバルブ16の反ピストン側にプレートバルブ21を設ければよい。また、緩衝器Dが低周波の大きな振幅で収縮する場合に圧側室R2の圧力によってプレートバルブ14がピストン側へ向けて上方へ押されて上方へ変位するので、バルブケース6のケース部6bの内周であって対向座部6cよりも
図6中上方に第2の対向座部6eを設けて置き、プレートバルブ14が上方へ変位した際にプレートバルブ14が第2の対向座部に対向して減衰流路DPの流路面積を圧側バルブ7よりも小さく制限するようにしてもよい。この場合も緩衝器Dが高速で伸長する場合と収縮する場合の両方で減衰力を大きくして、緩衝器Dが低周波の大きな振幅で伸縮する場合の振動を抑制できる。
【0082】
また、本実施の形態の減衰バルブDVは、減衰流路(流路)DPに対してリーフバルブ16およびプレートバルブ14に対して直列に設けられて、リーフバルブ16よりも開弁圧が高く、プレートバルブ14が対向座部6cに対向するよりも前に開弁するメインバルブMVを備えている。このように構成された減衰バルブDVによれば、リーフバルブ16によって緩衝器Dのピストン速度が微低速域で伸縮する際の減衰力を発生し、メインバルブMVによって緩衝器Dのピストン速度が中速域の減衰力を発生し、プレートバルブ14によって緩衝器Dのピストン速度が高速域の減衰力を発生できる。よって、本実施の形態の減衰バルブDVによれば、緩衝器Dのピストン速度に応じて最適な減衰力を発生できより一層車両における乗心地を向上できる。
【0083】
また、本実施の形態における減衰バルブDVでは、メインバルブMVは、伸側ポート(ポート)3cを有するピストン(バルブディスク)3と、ピストン(バルブディスク)3に積層されて伸側ポート(ポート)3cを開閉可能な伸側メインリーフバルブ(メインリーフバルブ)4とを有し、プレートバルブ14は、リーフバルブ16と伸側メインリーフバルブ(メインリーフバルブ)4との間に配置され、リーフバルブ16とプレートバルブ14との間に配置されてリーフバルブ16とプレートバルブ14との間に隙間を設ける環状の間座15を備え、ばね要素は、伸側メインリーフバルブ(メインリーフバルブ)4とプレートバルブ14との間に介装されてリーフバルブ16とプレートバルブ14とを反バルブディスク側へ向けて付勢する第1ばね13と、リーフバルブ16の反バルブディスク側に配置されてリーフバルブ16とプレートバルブ14とをバルブディスク側へ向けて付勢する第2ばね19とを備えている。
【0084】
このように構成された本実施の形態における減衰バルブDVによれば、プレートバルブ14およびリーフバルブ16が第1ばね13および第2ばね19によって挟持されており、バルブケース6および伸側メインリーフバルブ4をピストン(バルブディスク)3へ向けて付勢できるから伸側メインリーフバルブ4の全体がピストン(バルブディスク)3から浮き上がって中速域における減衰力が低下してしまうのを抑制できる。また、リーフバルブ16がロッド2の小径部2aの外周に直接嵌合される構造を採用できるので、リーフバルブ16の内外径差を長くして、リーフバルブ16の撓み量に対する流路面積の増加量を大きくできるから、リーフバルブ16の開弁時の応力を低減できリーフバルブ16の疲労を軽減できる。
【0085】
なお、
図7に示した第3変形例の減衰バルブDV2のように、第1ばね13、プレートバルブ14、間座15、リーフバルブ16、間座17、バルブストッパ18および第2ばね19の内周にロッド2の小径部2aの外周に嵌合する筒状のカラー22を設けて、ピストンナット20とロッド2の段部2dとで、圧側バルブ7、ピストン3、伸側メインリーフバルブ4、バルブケース6およびカラー22を挟み込んでロッド2の外周に固定してもよい。このように減衰バルブDV2は、リーフバルブ16、プレートバルブ14および間座15とが外周に軸方向移動可能に嵌合されるカラー22を備え、第1ばね13および第2ばね19がカラー22の外周に配置されている。このように構成された減衰バルブDV2では、カラー22の外周にてプレートバルブ14、間座15およびリーフバルブ16が軸方向に移動できるとともに第1ばね13と第2ばね19とでリーフバルブ16を初期位置に位置決めできる。よって、減衰バルブDV2によれば、伸側メインリーフバルブ(メインリーフバルブ)4とピストン(バルブディスク)3とがロッド2に対して固定的に保持されるので、伸側メインリーフバルブ(メインリーフバルブ)4の全体がピストン(バルブディスク)3から浮き上がるのを防止でき、中速域における減衰力が低下してしまうのを抑制できる。また、ピストンナット20の締め付けトルク管理によってカラー22を介して伸側メインリーフバルブ4に対して安定した軸力を作用させ得るので、減衰バルブDV2は、伸側メインリーフバルブ4が液体の流れに与える抵抗を設計通りに設定でき、製品毎にばらつきの少ない減衰力を発生できる。
【0086】
なお、カラー22を備える場合、伸側メインリーフバルブ4のピストン(バルブディスク)3からの浮き上がりを阻止できるので、緩衝器Dの伸長作動時にプレートバルブ14をバルブケース6から軸方向へ後退するように変位させて対向座部6cに対向させて減衰力を大きくするのであれば、第1ばね13の代わりに間座を設置して、第1ばね13の代わりの間座、プレートバルブ14、間座15、リーフバルブ16、間座17、バルブストッパ18を第2ばね19のみでバルブケース6側へ付勢する構造を採用してもよい。また、カラー22を備える場合、減衰バルブDVが
図2に示したプレートバルブ14とバルブストッパ18の位置を入れ替えして緩衝器Dの収縮作動時にプレートバルブ14により減衰力を発生させる場合、第2ばね19の代わりに間座を設置して、バルブストッパ18、間座15、リーフバルブ16、間座17、プレートバルブ14および第2ばね19の代わりの間座を第1ばね13のみで反バルブケース側へ付勢する構造を採用してもよい。
【0087】
また、このように本実施の形態の緩衝器Dでは、主としてリーフバルブ16で減衰力を発生する速度域を微低速域とし、主として切欠オリフィス4aで減衰力を発生する速度域を低速域とし、主として伸側メインリーフバルブ4および圧側バルブ7で減衰力を発生する速度域を中速域とし、主としてプレートバルブ14,21で減衰力を発生する速度域を高速域としているが、微低速、低速、中速および高速を区分する速度については設計者が任意に設定できる。
【0088】
なお、本実施の形態ではリーフバルブ16は、内周側を固定端とするとともに外周側を自由端として固定端に対する自由端の撓みが許容されており、外周面を対向座部6cの内周面に対向させており、プレートバルブ14が変位した際にプレートバルブ14の外周が対向座部6cに対向するようにしているが、リーフバルブの外周側を固定端とするとともに内周側を自由端として固定端に対する自由端の撓みを許容するようにし、リーフバルブの内周面に対向する外周面を持つように対向座部を設けて、プレートバルブについても軸方向へ変位した際に内周面を対向座部の外周面に対向するようにしてもよい。
【0089】
また、
図1に示したところでは、二つの作動室を伸側室R1と圧側室R2としているが、緩衝器Dがシリンダの外周にアウターチューブとしてアウターシェルを備えてシリンダとアウターシェルとの間にリザーバを備える複筒型緩衝器とされる場合には、圧側室とリザーバとの間に減衰バルブDVを設けてもよい。よって、減衰流路DPは、伸側室R1と圧側室R2とを連通してもよいし、圧側室とリザーバとを連通してもよい。
【0090】
以上、本発明の好ましい実施の形態を詳細に説明したが、特許請求の範囲から逸脱しない限り、改造、変形、及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0091】
1・・・シリンダ(アウターチューブ)、2・・・ロッド、3・・・ピストン(バルブディスク)、3c・・・伸側ポート(ポート)、4・・・伸側メインリーフバルブ、6c・・・対向座部、13・・・第1ばね(ばね要素)、14,21・・・プレートバルブ、15、17・・・間座、16・・・リーフバルブ、19・・・第2ばね、22・・・カラー、D・・・緩衝器、DP・・・減衰流路(流路)、DV・・・減衰バルブ、MV・・・メインバルブ、R1・・・伸側室(作動室)、R2・・・圧側室(作動室)