(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135241
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】空気調和システム、制御装置、制御方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
F24F 11/80 20180101AFI20240927BHJP
【FI】
F24F11/80
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023045832
(22)【出願日】2023-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】505461072
【氏名又は名称】日本キヤリア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 明人
(72)【発明者】
【氏名】杉崎 智子
【テーマコード(参考)】
3L260
【Fターム(参考)】
3L260AA04
3L260AB03
3L260BA02
3L260CA12
3L260CA23
3L260CB63
3L260FA03
(57)【要約】
【課題】空間の温度の偏りを抑制することができる空気調和システム、制御装置、制御方法およびプログラムを提供することである。
【解決手段】実施形態の空気調和システムは、第1室内機と、床温度センサと、第2室内機と、制御部と、を持つ。第1室内機は、空間の上部から空間の内部に対して温度調整された風を吹き出す。床温度センサは、第1室内機の下方の床面の温度である床温度に対応する信号を出力する。第2室内機は、空間の床下から空間の内部に対して温度調整された風を吹き出す。制御部は、床温度センサを使用して取得された床温度に基づいて第2室内機の運転を制御する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空間の上部から前記空間の内部に対して温度調整された風を吹き出す第1室内機と、
前記第1室内機の下方の床面の温度である床温度に対応する信号を出力する床温度センサと、
前記空間の床下から前記空間の内部に対して温度調整された風を吹き出す第2室内機と、
前記床温度センサを使用して取得された前記床温度に基づいて前記第2室内機の運転を制御する制御部と、を有する、
空気調和システム。
【請求項2】
複数の前記第1室内機と、
前記複数の第1室内機に対応する複数の前記床温度センサと、を有し、
前記複数の第1室内機のうち、予め指定された主たる前記第1室内機は、前記複数の床温度センサが計測した前記床温度の平均値である平均床温度を算出し、
前記制御部は、前記平均床温度に基づいて前記第2室内機の運転を制御する、
請求項1に記載の空気調和システム。
【請求項3】
空間の上部から前記空間の内部に対して温度調整された風を吹き出す第1室内機と、前記第1室内機の下方の床面の温度である床温度に対応する信号を出力する床温度センサと、前記空間の床下から前記空間の内部に対して温度調整された風を吹き出す第2室内機と、を有する空気調和システムの制御装置であって、
前記床温度センサを使用して取得された前記床温度に基づいて前記第2室内機の運転を制御する、
制御装置。
【請求項4】
空間の上部から前記空間の内部に対して温度調整された風を吹き出す第1室内機と、前記第1室内機の下方の床面の温度である床温度に対応する信号を出力する床温度センサと、前記空間の床下から前記空間の内部に対して温度調整された風を吹き出す第2室内機と、を有する空気調和システムの制御方法であって、
前記床温度センサを使用して取得された前記床温度に基づいて前記第2室内機の運転を制御するステップを有する、
制御方法。
【請求項5】
空間の上部から前記空間の内部に対して温度調整された風を吹き出す第1室内機と、前記第1室内機の下方の床面の温度である床温度に対応する信号を出力する床温度センサと、前記空間の床下から前記空間の内部に対して温度調整された風を吹き出す第2室内機と、を有する空気調和システムのコンピュータに、
前記床温度センサを使用して取得された前記床温度に基づいて前記第2室内機の運転を制御するステップを実行させる、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、空気調和システム、制御装置、制御方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
第1室内機と、第2室内機と、を有する空気調和システムが提案されている。第1室内機は、空間の上部から空間の内部に対して温度調整された風を吹き出す。第2室内機は、空間の床下から空間の内部に対して温度調整された風を吹き出す。空気調和システムには、空間の温度の偏りを抑制することが求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、空間の温度の偏りを抑制することができる空気調和システム、制御装置、制御方法およびプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の空気調和システムは、第1室内機と、床温度センサと、第2室内機と、制御部と、を持つ。第1室内機は、空間の上部から空間の内部に対して温度調整された風を吹き出す。床温度センサは、第1室内機の下方の床面の温度である床温度に対応する信号を出力する。第2室内機は、空間の床下から空間の内部に対して温度調整された風を吹き出す。制御部は、床温度センサを使用して取得された床温度に基づいて第2室内機の運転を制御する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】実施形態の空気調和システムによる空気調和制御の概要を説明するための模式図。
【
図2】実施形態の空気調和システムの全体構成を示すブロック図。
【
図3】複数の天井吹出し式室内機および床吹出し式室内機に対するアドレス設定の説明図。
【
図4】天井吹出し式室内機の動作を示すフローチャート。
【
図5】床吹出し式室内機の動作を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施形態の空気調和システム、制御装置、制御方法およびプログラムを、図面を参照して説明する。
【0008】
図1は、実施形態における空気調和システム1による空気調和制御の概要を説明するための模式図である。
図1には、空間Sを含む建築物の一部分の垂直断面図が示されている。例えば、建築物はオフィスビルであり、空間Sはオフィスである。空気調和システム1は、空間Sの空気を調和するシステムである。空気調和システム1は、天井吹出し式室内機(第1室内機)20と、床吹出し式室内機(第2室内機)10と、室外機と、リモコン(リモートコントローラ)25と、を有する。
【0009】
天井吹出し式室内機20は、天井吹出し式空気調和装置の室内機である。天井吹出し式室内機20は、熱交換器や送風機などを含む。例えば、天井吹出し式室内機20は、天井カセット形4方向吹出しタイプの室内機である。複数の天井吹出し式室内機20が、空間Sの天井に間隔を置いて設置されている。複数の天井吹出し式室内機20は、空間Sにおいて偏りなく均等に分布するように設置されている。
【0010】
床吹出し式室内機10は、床吹出し式空気調和装置の室内機である。床吹出し式室内機10は、熱交換器や送風機などを含む。床吹出し式室内機10は、空間Sの天井裏に設置されている。空間Sの側壁には、垂直ダクト40が設置されている。空間Sの床下は、二重床になっており、床下給気チャンバー45として機能する。床下給気チャンバー45の代わりに、水平ダクトが設置されてもよい。空間Sの床面には、複数の吹出し口50が設けられている。床吹出し式室内機10から吐出された空気は、垂直ダクト40および床下給気チャンバー45を通り、複数の吹出し口50から空間Sに吹き出される。
【0011】
室外機30は、建築物の外側に設置される。室外機30は、圧縮機や四方弁、熱交換器、膨張弁などを含む。室外機30に対して、複数の天井吹出し式室内機20および床吹出し式室内機10が、冷媒配管35を介して並列に接続され、冷凍サイクル装置が形成されている。空気調和システム1は、マルチ型の空気調和システムである。
【0012】
空気調和システム1は、天井吹出し式空気調和装置に加えて、床吹出し式空気調和装置を有する。これにより、空間Sの上下の温度差が小さくなる。足元が暖められるので、快適性が高まる。設定温度が抑えられるので、エネルギー消費量が抑制される。
【0013】
図2は、実施形態の空気調和システム1の全体構成を示すブロック図である。
リモコン25は、空気調和システム1の設定に関するユーザの入力を受け付ける入力インタフェースである。リモコン25は、空気調和システム1の電源のオンおよびオフに関する入力を受け付ける。リモコン25は、空間Sの設定温度に関する入力を受け付ける。リモコン25は、入力情報に対応する信号を、天井吹出し式室内機20に出力する。
【0014】
天井吹出し式室内機20は、吸込温度センサ21と、床温度センサ22と、第1制御部23と、を有する。
吸込温度センサ21は、空間Sから天井吹出し式室内機20に吸い込まれる空気の温度(吸込温度)を計測する。吸込温度センサ21は、吸込温度に対応する信号を出力する。
【0015】
床温度センサ(輻射温度センサ)22は、
図1に示されるように、天井吹出し式室内機20のパネルに装着される。床温度センサ22は、天井吹出し式室内機20の下方における床面の輻射温度を床温度として計測する。床温度センサ22は、自身の直下を中心とする直径7.5m程度の円形領域における床温度の平均値を計測する。床温度センサ22は、床温度に対応する信号を出力する。
【0016】
図3は、複数の天井吹出し式室内機20および床吹出し式室内機10に対するアドレス設定の説明図である。空気調和システム1に含まれる複数の天井吹出し式室内機20および床吹出し式室内機10は、同じ通信回線によりグループ接続されている。グループ接続された全ての機器に、グループアドレスが設定されている。例えば、グループアドレスが「1」の機器が親機に指定され、グループアドレスが「2」の機器が子機に指定される。複数の天井吹出し式室内機20のうちの一つが親機(主たる第1室内機)である。複数の天井吹出し式室内機20のうちの残りと、床吹出し式室内機10とが子機である。リモコン25は、入力情報に対応する信号を親機に出力する。親機は、リモコン25に入力された情報を全ての子機に出力する。
【0017】
第1制御部23は、リモコン25または親機から出力された設定温度に対応する信号を受信する。第1制御部23は、吸込温度センサ21から出力された吸込温度に対応する信号を受信する。第1制御部23は、設定温度および吸込温度に基づいて、天井吹出し式室内機20の運転を制御する。複数の天井吹出し式室内機20の運転が、それぞれの第1制御部23により個別に制御される。
【0018】
複数の天井吹出し式室内機20の第1制御部23は、それぞれの床温度センサ22から出力された床温度に対応する信号を受信する。天井吹出し式室内機20の子機は、床温度センサ22の信号を親機に出力する。親機の第1制御部23は、全ての床温度センサ22の信号を受信し、その信号に基づいて、空間Sの床温度の平均値(平均床温度)を算出する。親機の第1制御部23は、算出した平均床温度に対応する信号を、床吹出し式室内機10に出力する。
【0019】
前述されたように、空気調和システム1に含まれる機器はグループ接続されている。グループ接続された全ての機器に、温度通信(フィードバック)アドレスが設定されている。例えば、温度通信アドレスが「1」の機器が平均床温度の送信元に指定され、制御温度アドレスが「2」の機器が平均床温度の送信先に指定される。制御温度アドレスが「0」の機器は、温度通信の対象外に指定される。すなわち、親機が平均床温度の送信元であり、床吹出し式室内機10が平均床温度の送信先である。床吹出し式室内機10は、親機が算出した平均床温度の情報を受信する。
【0020】
図2に示されるように、床吹出し式室内機10は、第2制御部(制御部、制御装置)11を有する。第2制御部11は、床温度センサ22を使用して取得された床温度(平均床温度)に基づいて、床吹出し式室内機10の運転を制御する。
第2制御部11は、親機から出力された設定温度の情報を受信する。第2制御部11は、親機から出力された平均床温度の情報を受信する。第2制御部11は、設定温度および平均床温度に基づいて、床吹出し式室内機10の運転を制御する。
【0021】
第1制御部23および第2制御部11は、例えば、バスで接続されたCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサと、メモリ、及び補助記憶装置等を備える。第1制御部23および第2制御部11は、例えば補助記憶装置からプログラムを読み出して実行する。補助記憶装置は、例えば磁気ハードディスク装置又は半導体記憶装置等の記憶媒体を用いて構成される。例えば、補助記憶装置は、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)等の不揮発性のメモリを用いて構成される。
【0022】
第1制御部23および第2制御部11の全て又は一部は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、PLD(Programmable Logic Device)、又はFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアを用いて実現されてもよい。プログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、例えばフレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置である。プログラムは、電気通信回線を介して送信されてもよい。
【0023】
空気調和システム1の制御方法について説明する。
以下には空気調和システム1が暖房運転を行う場合を例にして説明する。空気調和システム1は、これと同様に冷房運転を行うことも可能である。以下には各温度の具体例を括弧内に表示する場合がある。
【0024】
図4は、天井吹出し式室内機20の動作を示すフローチャートである。
天井吹出し式室内機20の第1制御部23は、設定温度を取得する(S12)。
詳しくは、リモコン25は、ユーザにより入力された空間Sの設定温度に対応する信号を出力する。天井吹出し式室内機20の親機は、その信号をリモコン25から受信する。親機の第1制御部23は、その信号から設定温度を取得する。例えば、親機は設定温度として23℃を取得する。親機は、取得した設定温度を子機に送信する。
【0025】
第1制御部23は、第1目標温度TS1を算出する(S14)。
第1目標温度TS1は、空間Sの上部温度の目標値である。暖気の上昇の影響により、空間Sの上部温度は、空間Sの高さ方向の中間部の温度(中間温度)より高くなる。第1目標温度TS1は、設定温度(23℃)から補正値1aを減算した温度である。補正値1aは、例えば空間Sの温まりやすさに対応して設定される。本実施形態における補正値1aは例えば0℃であり、第1目標温度TS1は23℃である。
【0026】
第1制御部23は、吸込温度Tbを取得する(S16)。
詳しくは、吸込温度センサ21は、天井吹出し式室内機20の吸込温度に対応する信号を出力する。第1制御部23は、その信号を吸込温度センサ21から受信して、吸込温度Tbを取得する。複数の天井吹出し式室内機20の第1制御部23が、それぞれの吸込温度センサ21から信号を受信して、それぞれの吸込温度Tbを取得する。例えば、一つの天井吹出し式室内機20の第1制御部23は、吸込温度として10℃を取得する。
【0027】
第1制御部23は、床温度Tfを取得する(S18)。
詳しくは、床温度センサ22は、天井吹出し式室内機20の下方の床温度に対応する信号を出力する。第1制御部23は、その信号を床温度センサ22から受信して、床温度Tfを取得する。複数の天井吹出し式室内機20の第1制御部23が、それぞれの床温度センサ22から信号を受信して、それぞれの下方の床温度Tfを取得する。
【0028】
第1制御部23は、自身の所属する天井吹出し式室内機20が親機であるか判断する(S20)。
詳しくは、第1制御部23は、天井吹出し式室内機20に設定されたグループアドレスを参照して、自身が親機であるか判断する。天井吹出し式室内機20が子機(S20の判断がNo)の場合、すなわち本実施形態においてグループアドレスが1でない場合に、第1制御部23は、取得した床温度Tfを親機に送信する(S22)。
【0029】
天井吹出し式室内機20が親機(S20の判断がYes)の場合、すなわち本実施形態においてグループアドレスが1である場合に、第1制御部23は、平均床温度Tfaを算出する(S24)。平均床温度Tfaは、親機および全ての子機が取得した床温度Tfの平均値である。例えば、親機が算出した平均床温度Tfaは8℃である。
【0030】
親機の第1制御部23は、算出した平均床温度Tfaの送信先を判断する。平均床温度Tfaの送信先は、空気調和システム1に含まれる機器に設定された温度通信アドレスを参照して判断される。前述されたように、本実施形態において温度通信アドレスが2である床吹出し式室内機10が平均床温度Tfaの送信先である。平均床温度Tfaの送信元である親機の第1制御部23は、床吹出し式室内機10に平均床温度Tfaを送信する(S24)。
【0031】
第1制御部23は、第1制御対象温度TA1を設定する(S26)。
第1制御対象温度TA1は、第1目標温度TS1に近づける制御の対象になる空間Sの温度である。前述されたように、第1目標温度TS1は、空間Sの上部温度の目標値である。天井吹出し式室内機20は空間Sの天井に設置されるので、天井吹出し式室内機20の吸込温度Tbは空間Sの上部温度である。第1制御部23は、吸込温度Tbから補正値1bを減算して、第1制御対象温度TA1を設定する。補正値1bは、例えば天井吹出し式室内機20の設置高さに対応して設定される。例えば、一つの天井吹出し式室内機20の吸込温度Tbは10℃であり、補正値1bは0℃であり、第1制御対象温度TA1は10℃である。
【0032】
第1制御部23は、通常温度制御を実施する(S28)。
詳しくは、第1制御部23は、第1目標温度TS1(23℃)と第1制御対象温度TA1(10℃)との差分に基づいて、天井吹出し式室内機20の運転を制御する。前述されたように、第1目標温度TS1は設定温度から算出され、第1制御対象温度TA1は吸込温度Tbから算出される。
【0033】
通常温度制御の具体例は以下の通りである。第1制御部23の補助記憶装置には、室外機30に含まれる圧縮機の出力に関するテーブルが記録されている。テーブルには、第1目標温度TS1(23℃)と第1制御対象温度TA1(10℃)との差分に対応する圧縮機の出力が記録されている。第1制御部23は、テーブルを参照し、第1目標温度TS1と第1制御対象温度TA1との差分から、圧縮機の出力を求める。第1制御部23は、求めた圧縮機の出力に基づいて圧縮機を駆動し、天井吹出し式室内機20の運転を制御する。これにより、第1制御対象温度TA1(10℃)が第1目標温度TS1(23℃)に接近する。第1制御部23は、圧縮機の出力に代えて、または圧縮機の出力と共に、室外機30に含まれる膨張弁の開度を求めて、天井吹出し式室内機20の運転を制御してもよい。
【0034】
第1制御部23は、運転終了の要否を判断する(S30)。
リモコン25は、ユーザにより入力された空気調和システム1の電源のオンおよびオフの指示に対応する信号を出力する。天井吹出し式室内機20の親機は、その信号をリモコン25から受信する。親機の第1制御部23は、その信号から電源のオンおよびオフの指示を取得する。電源オフの指示を取得した(S30の判断がYesの)場合に、親機の第1制御部23は、電源オフの指示を子機に送信する。親機および子機の第1制御部23は、それぞれの天井吹出し式室内機20の運転を終了する。親機が電源オフの指示を取得していない(S30の判断がNoの)場合、親機および子機の第1制御部23は、S16以下の処理を繰り返す。
【0035】
図5は、床吹出し式室内機10の動作を示すフローチャートである。
床吹出し式室内機10の第2制御部11は、設定温度を取得する(S42)。
詳しくは、第2制御部11は、天井吹出し式室内機20の親機から、設定温度(23℃)の情報を取得する。
【0036】
第2制御部11は、第2目標温度TS2を算出する(S44)。
第2目標温度TS2は、空間Sの下部温度の目標値である。暖気の上昇の影響により、空間Sの下部温度は、空間Sの中間温度より低くなる。第2目標温度TS2は、設定温度(23℃)から補正値2aを減算した温度である。補正値2aは、例えば空間Sの温まりやすさに対応して設定される。本実施形態における補正値2aは例えば0℃であり、第2目標温度TS2は23℃である。第2目標温度TS2の補正値2aおよび第1目標温度TS1の補正値1aは、同じでもよいし、異なってもよい。
【0037】
第2制御部11は、平均床温度Tfaを取得する(S46)。
詳しくは、第2制御部11は、平均床温度Tfaの送信元である天井吹出し式室内機20の親機から、平均床温度Tfa(8℃)の情報を取得する。
【0038】
第2制御部11は、第2制御対象温度TA2を設定する(S48)。
第2制御対象温度TA2は、第2目標温度TS2に近づける制御の対象になる空間Sの温度である。前述されたように、第2目標温度TS2は、空間Sの下部温度の目標値である。平均床温度Tfaは、空間Sの下部温度である。第2制御部11は、平均床温度Tfa(8℃)から補正値2bを減算して、第2制御対象温度TA2を設定する。補正値2bは、例えば空間Sの高さに対応して設定される。本実施形態における補正値2bは例えば0℃であり、第2制御対象温度TA2は8℃である。
【0039】
第2制御部11は、通常温度制御を実施する(S50)。
詳しくは、第2制御部11は、第2目標温度TS2(23℃)と第2制御対象温度TA2(8℃)との差分に基づいて、床吹出し式室内機10の運転を制御する。前述されたように、第2目標温度TS2は設定温度から算出され、第2制御対象温度TA2は平均床温度Tfaから算出される。第2制御部11は、床温度センサ22を使用して取得された床温度(平均床温度Tfa)に基づいて、床吹出し式室内機10の運転を制御する。
【0040】
通常温度制御の具体例は以下の通りである。第2制御部11の補助記憶装置には、室外機30に含まれる圧縮機の出力に関するテーブルが記録されている。テーブルには、第2目標温度TS2(23℃)と第2制御対象温度TA2(8℃)との差分に対応する圧縮機の出力が記録されている。第2制御部11は、テーブルを参照し、第2目標温度TS2と第2制御対象温度TA2との差分から、圧縮機の出力を求める。第2制御部11は、求めた圧縮機の出力に基づいて圧縮機を駆動し、床吹出し式室内機10の運転を制御する。これにより、第2制御対象温度TA2(8℃)が第2目標温度TS2(23℃)に接近する。第2制御部11が求めた圧縮機の出力と、第1制御部23が求めた圧縮機の出力とが異なる場合には、高い方の出力に基づいて圧縮機を駆動すればよい。第2制御部11は、圧縮機の出力に代えて、または圧縮機の出力と共に、室外機30に含まれる膨張弁の開度を求めて、床吹出し式室内機10の運転を制御してもよい。
【0041】
第2制御部11は、運転終了の要否を判断する(S52)。
第2制御部11は、天井吹出し式室内機20の親機から、電源のオンおよびオフの指示を取得する。電源オフの指示を取得した(S52の判断がYesの)場合、第2制御部11は、床吹出し式室内機10の運転を終了する。電源オフの指示を取得していない(S52の判断がNoの)場合、第2制御部11は、S46以下の処理を繰り返す。
【0042】
比較例の空気調和システム1は、床温度センサ22の代わりに、リモートサーモセンサを有する。リモートサーモセンサは、空間Sの側壁に設置される。リモートサーモセンサは、空間Sの側壁から離れた中央付近の温度を検知することができない。比較例の空気調和システム1では、空間Sの中央付近の温度が設定温度に近づくように制御することが困難である。また、空間Sの中央部の床面にリモートサーモセンサを設置すると、空間Sの使用の妨げになる。
【0043】
実施形態の空気調和システム1は、天井吹出し式室内機20と、床温度センサ22と、床吹出し式室内機10と、第2制御部11と、を持つ。天井吹出し式室内機20は、空間Sの上部から空間Sの内部に対して温度調整された風を吹き出す。床温度センサ22は、天井吹出し式室内機20の下方の床面の温度である床温度に対応する信号を出力する。床吹出し式室内機10は、空間Sの床下から空間Sの内部に対して温度調整された風を吹き出す。第2制御部11は、床温度センサ22を使用して取得された床温度に基づいて床吹出し式室内機10の運転を制御する。
【0044】
天井吹出し式室内機20は、空間Sの側壁から離れた中央付近の天井に設置される。床温度センサ22は、空間Sの側壁から離れた中央付近の床面の温度を検出する。床吹出し式室内機10は、空間Sの中央付近の床温度が設定温度に近づくように制御される。これにより、空間Sの温度の偏りを抑制することができる。
【0045】
空気調和システム1は、複数の天井吹出し式室内機20と、複数の天井吹出し式室内機20に対応する複数の床温度センサ22と、を有する。複数の天井吹出し式室内機20のうち、予め指定された天井吹出し式室内機20の親機は、複数の床温度センサ22を使用して取得された床温度の平均値である平均床温度Tfaを算出する。第2制御部11は、平均床温度Tfaに基づいて、床吹出し式室内機10の運転を制御する。
【0046】
複数の天井吹出し式室内機20が、空間Sの天井に均等に分布するように設置される。複数の床温度センサ22により、空間Sの広範囲の床温度が検知される。複数の床温度センサ22を使用して平均床温度Tfaを算出することにより、空間Sの平均床温度Tfaが精度良く検知される。平均床温度Tfaに基づいて床吹出し式室内機10の運転を制御することにより、空間Sの温度の偏りが抑制される。
【0047】
空気調和システム1の機器は、グループアドレスにより親機および子機に指定される。天井吹出し式室内機20の親機は、複数の床温度センサ22の測定結果から平均床温度Tfaを算出する。空気調和システム1の機器は、温度通信アドレスにより平均床温度Tfaの送信元および送信先に指定される。天井吹出し式室内機20の親機は、平均床温度Tfaを床吹出し式室内機10に送信する。形態の異なる機器の間で制御対象温度を送受信することができる。このように、グループ内の機器が通信や演算機能を備えて連携制御を実施する。上位コントローラの導入などの計装負荷の増加が抑制される。空気調和システム1のコストの増加を抑制することができる。
【0048】
上述した実施形態における空気調和システム1の一部を、コンピュータで実現するようにしてもよい。その場合、この機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、上述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに上述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよく、PLD(Programmable Logic Device)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアを用いて実現されるものであってもよい。
【0049】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、床温度センサ22を使用して取得された床温度に基づいて床吹出し式室内機10の運転を制御する第2制御部11を持つ。これにより、空間Sの温度の偏りを抑制することができる。
【0050】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0051】
S…空間、Tfa…平均床温度、1…空気調和システム、10…床吹出し式室内機(第2室内機)、11…第2制御部、20…天井吹出し式室内機(第1室内機)、22…床温度センサ。