(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135246
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】無線制御装置、無線制御システム、無線制御方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H04W 24/02 20090101AFI20240927BHJP
H04W 24/08 20090101ALI20240927BHJP
H04W 16/06 20090101ALI20240927BHJP
H04W 72/566 20230101ALI20240927BHJP
H04W 16/18 20090101ALI20240927BHJP
【FI】
H04W24/02
H04W24/08
H04W16/06
H04W72/566
H04W16/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023045840
(22)【出願日】2023-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】水口 修平
(72)【発明者】
【氏名】柳澤 慶
(72)【発明者】
【氏名】関 佐和香
(72)【発明者】
【氏名】細尾 絵梨
(72)【発明者】
【氏名】竹川 雅之
(72)【発明者】
【氏名】谷沢 康太
(72)【発明者】
【氏名】吉川 英希
(72)【発明者】
【氏名】網中 洋明
(72)【発明者】
【氏名】小林 航生
【テーマコード(参考)】
5K067
【Fターム(参考)】
5K067BB03
5K067EE22
5K067JJ72
(57)【要約】
【課題】異常対象のユーザが端末の通信状況を改善できる位置まで移動可能か判定した結果に基づいて無線システムを制御して、他のユーザへの影響を最適化する。
【解決手段】無線制御装置(20)は、無線通信システム(100)の通信エリア(500)内の電波環境が所定の基準よりも悪い領域の端末(602)を検知する検知部(21)と、端末がその端末の通信状況を改善できる位置まで移動できる状態か判定する判定部(22)と、判定結果に基づいて制御を実行する制御部(23)とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線通信システムの通信エリア内の電波環境が所定の基準よりも悪い領域に端末が存在することを検知する検知部と、
前記検知された端末がその端末の通信状況を改善できる位置まで移動できる状態か否かを判定する判定部と、
前記判定部の判定結果に基づいて、前記端末の通信状況の改善のための前記無線通信システムの制御を実行する制御部と、
を備えている無線制御装置。
【請求項2】
前記判定部は、前記端末がその端末の通信状況を改善できる位置まで移動できない状態である場合に、前記端末が移動できない要因をさらに判定し、
前記制御部は、前記要因に基づいて、前記無線通信システムの制御を実行する、請求項1に記載の無線制御装置。
【請求項3】
前記無線通信システムの制御は、前記無線通信システムの通信リソースを、前記端末との通信に優先して割り当てる制御である、請求項1に記載の無線制御装置。
【請求項4】
前記無線通信システムの制御は、前記端末以外の他の端末に対して優先して前記端末の通信状況が改善するように、前記通信エリアを調整する制御である、請求項1に記載の無線制御装置。
【請求項5】
前記無線通信システムは、複数の無線子局を備えており、
前記無線通信システムの制御は、前記複数の無線子局が、単一のセルを構成するか、複数のセルを構成するかを切り替える制御である、請求項1に記載の無線制御装置。
【請求項6】
前記通信エリア内の電波環境マップを読み込む読込部と、
前記通信エリア内の端末から位置情報を取得する取得部と、をさらに備え、
前記検知部は、前記電波環境マップと前記位置情報に基づいて、前記領域に端末が存在することを検知する、請求項1に記載の無線制御装置。
【請求項7】
前記通信エリア内の電波環境マップを読み込む読込部と、
前記通信エリア内を撮像するカメラから撮像情報を取得する取得部と、をさらに備え、
前記検知部は、前記電波環境マップと前記撮像情報に基づいて、前記領域に端末が存在することを検知する、請求項1に記載の無線制御装置。
【請求項8】
無線通信システムの通信エリア内の電波環境が所定の基準よりも悪い領域に端末が存在することを検知する検知手段と、
前記検知された端末がその端末の通信状況を改善できる位置まで移動できる状態か否かを判定する判定手段と、
前記判定手段の判定結果に基づいて、前記端末の通信状況の改善のための前記無線通信システムの制御を実行する制御手段と、
を備えている無線制御システム。
【請求項9】
無線通信システムの通信エリア内の電波環境が所定の基準よりも悪い領域に端末が存在することを検知する検知処理と、
前記検知された端末がその端末の通信状況を改善できる位置まで移動できる状態か否かを判定する判定処理と、
前記判定処理の判定結果に基づいて、前記端末の通信状況の改善のための前記無線通信システムの制御を実行する制御処理と、
を実行する無線制御方法。
【請求項10】
コンピュータに、
無線通信システムの通信エリア内の電波環境が所定の基準よりも悪い領域に端末が存在することを検知する検知処理と、
前記検知された端末がその端末の通信状況を改善できる位置まで移動できる状態か否かを判定する判定処理と、
前記判定処理の判定結果に基づいて、前記端末の通信状況の改善のための前記無線通信システムの制御を実行する制御処理と、
を実行させる、無線制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線制御装置、無線制御システム、無線制御方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信システムに関して、交通事故などの異常状態において通信ネットワークの優先制御や通信ネットワーク接続の優先度変更を行う技術が開示されている。(例えば特許文献1、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-62469号公報
【特許文献2】特開2006-93818号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
通信ネットワークにおいてユーザが電波環境の悪い領域にいた場合、通常はユーザ自身が移動することによってより良い電波環境を獲得することができる。しかしながら、交通事故などの異常状態においてはユーザが移動できない状況が発生する。この移動できないユーザの電波環境を整えるためには、通信エリアのカバレッジ変更などで達成可能であるが、この変更を行った場合、他のユーザが悪影響を受けることがある。
【0005】
特許文献1に記載の基地局装置においては、トラフィックデータの解析によって異常発生が判断されると、優先制御指示部によって異常が検知されたデータを送信したUEが優先制御対象となる。しかしながら、特許文献1においては異常の対象となるユーザが端末の通信状況を改善できる位置まで移動可能か判定し、この判定結果に基づいて基地局装置の制御していない。
【0006】
また、特許文献2に記載の通信ネットワークにおいては、事故を検出して接続要求を発したとき、優先度設定手段が事故通報機能部の優先度の範囲を定めて事故通報機能部のみを通信ネットワークに接続する。この特許文献2においても異常の対象となるユーザが端末の通信状況を改善できる位置まで移動可能か判定し、この判定結果に基づいて通信ネットワークの制御していない。
【0007】
したがって、特許文献1、特許文献2に開示された技術において異常が発生すると、他のユーザへの影響を配慮よりも異常対象への接続が優先されるという問題があった。
【0008】
本発明の一態様は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、その目的の一例は、異常の対象となるユーザが端末の通信状況を改善できる位置まで移動可能か判定し、この判定結果に基づいて無線通信システムを制御することにより、他のユーザへの影響を最適化するという無線制御技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様に係る無線制御装置は無線通信システムの通信エリア内の電波環境が所定の基準よりも悪い領域に端末が存在することを検知する検知部と、前記検知された端末がその端末の通信状況を改善できる位置まで移動できる状態か否かを判定する判定部と、前記判定部の判定結果に基づいて、前記端末の通信状況の改善のための前記無線通信システムの制御を実行する制御部と、を備えている。
【0010】
本発明の一態様に係る無線制御システムは、無線通信システムの通信エリア内の電波環境が所定の基準よりも悪い領域に端末が存在することを検知する検知手段と、前記検知された端末がその端末の通信状況を改善できる位置まで移動できる状態か否かを判定する判定手段と、前記判定部の判定結果に基づいて、前記端末の通信状況の改善のための前記無線通信システムの制御を実行する制御手段と、を備えている。
【0011】
本発明の一態様に係る無線制御方法は、無線通信システムの通信エリア内の電波環境が所定の基準よりも悪い領域に端末が存在することを検知する検知処理と、前記検知された端末がその端末の通信状況を改善できる位置まで移動できる状態か否かを判定する判定処理と、前記判定部の判定結果に基づいて、前記端末の通信状況の改善のための前記無線通信システムの制御を実行する制御処理と、
を実行する。
【0012】
本発明の一態様に係るプログラムは、コンピュータに、無線通信システムの通信エリア内の電波環境が所定の基準よりも悪い領域に端末が存在することを検知する検知処理と、前記検知された端末がその端末の通信状況を改善できる位置まで移動できる状態か否かを判定する判定処理と、前記判定部の判定結果に基づいて、前記端末の通信状況の改善のための前記無線通信システムの制御を実行する制御処理と、を実行させる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一態様によれば、異常の対象となるユーザが端末の通信状況を改善できる位置まで移動可能か判定し、この判定結果に基づいて無線通信システムを制御することにより、他のユーザへの影響を最適化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態1に係る無線制御装置の構成を示すブロック図である。
【
図2】本発明の実施形態1に係る無線通信制御方法の流れを示すフロー図である。
【
図3】本発明の実施形態1に係る無線制御システムの構成を示すブロック図である。
【
図4】本発明の実施形態2に係る無線通信システム及び無線制御装置の構成を示すブロック図である。
【
図5】本発明の実施形態2に係る無線制御方法の流れを示すフロー図である。
【
図6】本発明の実施形態3に係る無線通信システム及び無線制御装置の構成を示すブロック図である。
【
図7】本発明の実施形態4に係る無線通信システム及び無線制御装置の構成を示すブロック図である。
【
図8】本発明の実施形態5に係る無線通信システム及び無線制御装置の構成を示すブロック図である。
【
図9】本発明の実施形態6に係る無線通信システム及び無線制御装置の構成を示すブロック図である。
【
図10】本発明の実施形態7に係る無線通信システム及び無線制御装置の構成を示すブロック図である。
【
図11】本発明の実施形態7に係る無線制御方法の流れを示すフロー図である。
【
図12】本発明の実施形態8に係る無線通信システム及び無線制御装置の構成を示すブロック図である。
【
図13】本発明のソフトウェアによる実現例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
〔例示的実施形態1〕
本発明の第1の例示的実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。本例示的実施形態は、後述する例示的実施形態の基本となる形態である。
【0016】
(無線制御装置の構成)
本例示的実施形態に係る無線制御装置20の構成について、
図1を参照して説明する。
図1は、無線制御装置20の構成を示すブロック図である。
【0017】
無線制御装置20は、無線通信システムの通信エリア内の電波環境が所定の基準よりも悪い領域に端末が存在する場合、その端末の存在を検知する検知部21を有している。検知部21は端末の存在を位置情報によって検知してもよい。位置情報は例えばGPS等で取得した情報を通信によって受信してもよい。検知部21は、通信エリア内の電波環境マップと位置情報から電波環境が所定の基準よりも悪い領域における端末の存在を検知してもよい。また検知部21は、カメラからの映像情報を取得して、取得した映像情報と電波環境マップとから電波環境が所定の基準よりも悪い領域における端末の存在を検知してもよい。ここで、電波環境とは、通信エリアにおいて実際に測定された電波強度に基づいて作成したものであってよく、シミュレーションの結果によって予測されたものでもよい。
【0018】
無線制御装置20は、検知された端末がその端末の通信状況を改善できる位置まで移動できる状態か否かを判定する判定部22を有している。
【0019】
無線制御装置20は、判定部22の判定結果に基づいて、端末の通信状況を改善するため、無線通信システムの制御を実行する制御部23を備えている。制御部23は、端末の通信状況を改善するための無線通信システムの制御として、端末の通信状況が改善するように、前記通信エリアを調整してよい。また制御部23は、端末の通信状況を改善するための無線通信システムの制御として、無線通信システムの通信リソースを、前記端末との通信に優先して割り当ててもよい。さらに制御部23は、端末の通信状況を改善するための無線通信システムの制御として、単一のセル構成と、複数のセル構成とを切り替えてよい。
【0020】
なお、制御部は判定部22の判定結果に基づいて、現状の無線通信システムの状態を維持する制御してもよい。これは、検知された端末がその端末の通信状況を改善できる位置まで移動できない状態であっても、その端末の通信状況を変えることによって、他の端末の通信状況が悪くなり、その結果として他の端末に対する影響が大きい場合がある。このような場合は、現状の無線通信システムの状態を維持するよう制御できる。この維持する制御についても「端末の通信状況を改善するための無線通信システムの制御」に含まれる。
【0021】
(無線通信制御方法の流れ)
本例示的実施形態に係る無線制御方法S1の流れについて、
図2を参照して説明する。
図2は、無線通信制御方法S1の流れを示すフロー図である。
【0022】
まず、ステップS201によって無線制御方法が開始される。次に、ステップS202によって端末が検知部21によって検知される。この端末は通信エリア内の電波環境が所定の基準よりも悪い領域に存在する場合に検知部21によって検知される。ここで、所定の基準としては、例えば、RSSI等の電波強度やアンテナピクトの状態などを用いることができ、電波環境が所定の基準よりも悪い領域とは、通信エリアの最も外側の領域や、通信エリア外領域である場合を含む。また、通信エリアによっては、山間部やビルの谷間など特定の領域において所定の基準よりも悪い領域が存在する場合もある。
【0023】
さらに、一つの無線システムにおいて複数の無線子局がそれぞれの通信エリアをセルとして形成している場合、これらのセルが重複する領域において干渉が発生して、電波環境が所定の基準よりも悪い領域が形成される場合がある。また、複数の無線システムが同じ周波数帯域を利用している場合には、それらの無線システム間において干渉が発生して、電波環境が所定の基準よりも悪い領域が形成される場合もある。
【0024】
次に、ステップS203において検知された端末において、その端末の通信状況を改善できる位置まで移動できる状態か否かが判定部22によって判定される。ここで通信状況を改善できるとは、単に通信状態が良くなった程度のものは含まず、端末によって所望の通信ができる状況にあるものが該当する。
【0025】
例えば、交通事故が発生した場合において、通信端末が自動車に搭載されている車載カメラの映像等に基づいて、自動車が自走できないと判断した場合は、その端末の通信状況を改善できる位置まで移動できないと判断することができる。
【0026】
また、端末を持ったユーザが電車に乗車しており、その電車がトラブル等で止まってしまった場合も、ユーザが電車内から移動できないため、その端末の通信状況を改善できる位置まで移動できないと判定できる。この場合において、ユーザが列車に乗車しているとの判断は、ユーザの移動履歴(移動の軌跡やスピードなど)から列車に乗車していることを判定してよい。また、車両の中に識別信号を出して、その情報を受信しているかいないかを上位システムに通知することによって判定してもよい。また、列車が移動できるか否かの判断は、鉄道の運行管理システムと連携して判定してもよい。
【0027】
携帯電話であれば、本来、人間が所有しているものでありその端末の通信状況を改善できる位置まで移動することが可能である。しかしながら、携帯電話が路上に落ちている場合、その端末の通信状況を改善できる位置まで移動できないと判定することができる。
【0028】
この後ステップS204において、ステップS203において判定された判定結果に基づいて、無線通信システムの制御が実行される。無線通信システムの制御は、上述したように様々な制御が行われてよい。この制御が行われた後に無線制御方法S1は終了する。(ステップS205)
【0029】
(無線制御システムの構成)
本例示的実施形態に係る無線制御システム10の構成について、
図3を参照して説明する。
図3は、無線制御システム10の構成を示すブロック図である。第1の例示的実施形態における無線制御システム10は、例えばローカル5G(generation)による無線通信回線を利用してよい。
【0030】
無線制御システム10は、検知手段11と、判定手段12と、制御手段13とを有している。検知手段11は、無線通信システムの通信エリア内の電波環境が所定の基準よりも悪い領域に端末が存在する場合、その端末の存在を検知する。判定手段12は、検知された端末がその通信状況を改善できる位置まで移動できる状態か否かを判定する。制御手段13は、判定手段12の判定結果に基づいて、前記端末の通信状況の改善のための前記無線通信システムの制御を実行する。
【0031】
以上のように、本例示的実施形態に係る無線制御装置20は、無線通信システムの通信エリア内の電波環境が所定の基準よりも悪い領域に端末が存在することを検知する検知部21と、検知された端末がその通信状況を改善できる位置まで移動できる状態か否かを判定する判定部22と、判定部22の判定結果に基づいて、端末の通信状況の改善のための前記無線通信システムの制御を実行する制御部23とから構成されている。このため、本例示的実施形態に係る無線制御装置20によれば、異常の対象となるユーザが端末の通信状況を改善できる位置まで移動可能か判定し、この判定結果に基づいて無線通信システムを制御することにより、他のユーザへの影響を最適化することができる。
【0032】
〔例示的実施形態2〕
本発明の第2の例示的実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0033】
(無線通信システム及び無線制御装置の構成)
本例示的実施形態に係る無線通信システム100及び無線制御装置200の構成について、
図4を参照して説明する。
図4は、無線通信システム100及び無線制御装置200の構成を示すブロック図である。第2の例示的実施形態における無線通信システム100は、例えばローカル5Gによる無線通信回線であってよい。
【0034】
無線通信システム100は、基地局300と無線子局400を含む。基地局300は、無線通信システム100を制御する無線制御装置200と接続されている。本例示的実施形態においては、無線制御装置200が基地局300とは別の構成として接続されているが、基地局300に無線制御装置200が含まれていてもよい。
無線制御装置200は、無線通信システム100の通信エリア500内の電波環境が所定の基準よりも悪い領域に端末602が存在することを検知する検知部201を備えている。無線制御装置200は、検知部201によって検知された端末602がその通信状況を改善できる位置まで移動できる状態か否かを判定する判定部202も備えている。無線制御装置200は、判定部202の判定結果に基づいて、端末602の通信状況改善のため、無線通信システム100の制御を実行する制御部203も備えている。
【0035】
基地局300には、無線子局400が接続されている。無線子局400は通信エリアにセル500を形成するように制御されている。本例示的実施形態においては、単一の無線子局400が示されているが、通常は複数の無線子局が配置されることが多い。無線子局の通信エリア500には、電波環境が良い領域に存在する端末601と、通信エリア500の最も外側の領域に存在する端末602が例示的に示されている。通信エリア500の最も外側の領域はセルエッジとも称され、電波環境が悪い領域である。即ち、端末602は電波環境が所定の基準よりも悪い領域に存在する。また
図4には図示されていないが、通信エリア500の外側に存在する端末についても、電波環境が所定の基準よりも悪い領域に存在する端末に該当する。
【0036】
本例示的実施形態の判定部202は、端末602がその通信状況を改善できる位置まで移動できない状態である場合に、端末602が移動できない要因を判定する。この要因の判定には、監視カメラの映像等を利用することが可能である。端末が移動できない要因の例として、例示的実施形態1で説明した列車などが異常停止した場合に乗り合わせた乗客が保持する通信端末が該当する。異常停止した列車においては、多くの乗客が通信端末を保持している可能性が高い。また、列車は安全確認が優先であり、簡単に動くことができない。
【0037】
他の要因の例としては、交通事故や故障によって自走できない自動車やバイクなどの車両に設置された通信端末が該当する。交通事故や故障は、その発生場所や規模によって大規模な交通渋滞を引き起こすこともあり、多くの車両が巻き込まれる可能性もある。また、交通事故や故障によって自走できない自動車やバイクは短時間で復旧することができないこともある。上記以外に他の端末が移動できない要因の例として、怪我をして動けない状態にある歩行者が保持する通信端末が該当する。このようなケースにおいては単独の通信端末が該当する場合が多い。怪我の程度が軽い場合は比較的早い段階で移動が可能となるケースも考えられる。
本例示的実施形態の制御部203は、判定部202が判定した要因に基づいて無線通信システムの制御を実行する。上述した列車などの異常停止の例では、多くの乗客が移動できない状態で、電波環境が所定の基準よりも悪い領域にいる状況である。このため制御部203は、一態様において、列車の乗客がいる領域の電波環境が良くなるよう無線通信システムの制御を実行する。制御部203は、一態様において、交通事故や故障により大規模な交通渋滞が発生した場合も、交通渋滞が発生した領域の電波環境が良くなるよう無線通信システムの制御を実行する。
【0038】
一方、交通事故や故障が単独の場合や、怪我をして動けない状態にある歩行者のケースでは、少数の通信端末が問題となる対象であり、また、比較的早い時期に問題が解消する可能性がある。このような場合、制御部203は、一態様において、他のユーザへの影響を最小限にするため無線通信システムに対して現状を維持するよう制御する。
【0039】
(無線通信制御方法の流れ)
本例示的実施形態に係る無線制御方法S5の流れについて、
図5を参照して説明する。
図5は、無線通信制御方法S5の流れを示すフロー図である。
【0040】
まず、ステップS501によって無線制御方法が開始される。次に、ステップS502によって端末601、602が検知部201によって検知される。端末601は通信エリア500内の電波環境が良い領域に存在し、端末602は通信エリア500内の電波環境が所定の基準よりも悪い領域に存在する。電波環境が所定の基準よりも悪い領域は例示的実施形態1と同様であるため、その説明は省略する。
【0041】
次に、ステップS503において検知された端末601、602が所定の電波強度以上の領域にいるかどうかが判断される。端末601が検知部201に検知された場合、端末601は通信エリア500内の電波環境が良い領域に存在するため、所定の電波強度以上の領域にいる(Yes)と判断され、ステップS502に戻される。端末602が検知部201に検知された場合、端末602は通信エリア500内の電波環境が所定の基準よりも悪い領域に存在するため、所定の電波強度以上の領域にいない(No)と判断され、次のステップS504に進む。
【0042】
ステップS504においては、端末602がその通信状況を改善できる位置まで移動できる状態か否かが判定部202によって判定される。この後ステップS505において、ステップS504において判定された判定結果に基づいて、無線通信システムの制御が実行される。無線通信システムの制御は、上述したように他のユーザへの影響を考慮したうえで制御が行われる。この制御が行われた後に無線制御方法S5は終了する。(ステップS506)
以上のように、本例示的実施形態に係る無線制御装置200においては、判定部202は端末602がその通信状況を改善できる位置まで移動できない状態である場合にその要因を判定し、制御部203は判定結果に基づいて、端末602の通信状況改善のため無線通信システム100の制御を実行する。このため、本例示的実施形態に係る無線制御装置200によれば、他のユーザへの影響を最小限にしたうえで、異常の対象となるユーザの端末の通信状況を改善するための前記無線通信システム100の制御を実行することができる。
【0043】
〔例示的実施形態3〕
本発明の第3の例示的実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。本例示的実施形態に係る無線通信システム130及び無線制御装置230の構成について、
図6を参照して説明する。
図6は、無線通信システム130及び無線制御装置230の構成を示すブロック図である。第3の例示的実施形態における無線通信システム130は、例えばローカル5Gによる無線通信回線であってよい。
【0044】
無線通信システム130は、基地局300と無線子局400を含む。基地局300は、無線通信システム130を制御する無線制御装置230と接続されている。本例示的実施形態においては、無線制御装置230が基地局300とは別の構成として接続されているが、基地局300に無線制御装置230が含まれていてもよい。
【0045】
無線制御装置200は、無線通信システム130の通信エリア500内の電波環境が所定の基準よりも悪い領域に端末602が存在することを検知する検知部231を備えている。無線制御装置230は、検知部201によって検知された端末602がその通信状況を改善できる位置まで移動できる状態か否かを判定する判定部232も備えている。無線制御装置230は、判定部232の判定結果に基づいて、端末602の通信状況改善のため、無線通信システム130の制御を実行する制御部233も備えている。
【0046】
基地局300、無線子局400、通信エリア500、端末601、602は第2の例示的実施形態と同様であるため、その説明は省略する。
【0047】
本例示的実施形態において検知部231が無線通信システム130の通信エリア500内の電波環境が所定の基準よりも悪い領域に端末602が存在することを検知し、端末602がその通信状況を改善できる位置まで移動できない状態であると判定部232が判定した場合、制御部233は判定結果に基づいて、端末602の通信状況改善のため、無線通信システム130の制御を実行する。
【0048】
制御部233の実行する制御は、無線通信システム130の通信リソースを、端末602との通信に優先して割り当てる制御である。例えば、制御部233は端末602との通信に優先して時間周波数リソースが割り当てられるように、無線通信システム130(の基地局300)を制御してもよい。
【0049】
以上のように、本例示的実施形態に係る無線制御装置230においては、検知部231が無線通信システム130の通信エリア500内の電波環境が所定の基準よりも悪い領域に端末602が存在することを検知し、判定部232は端末602がその通信状況を改善できる位置まで移動できない状態であることを判定し、制御部233は判定結果に基づいて、端末602の通信状況改善のための無線通信システム130の通信リソースを、端末602との通信に優先して割り当てる制御を実行する。このため、本例示的実施形態に係る無線制御装置230によれば、他のユーザへの影響を大きくならないように配慮したうえで、対象となるユーザの端末の通信状況を改善するよう前記無線通信システム130の制御を実行することができる。
【0050】
〔例示的実施形態4〕
本発明の第4の例示的実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。本例示的実施形態に係る無線通信システム140及び無線制御装置240の構成について、
図7を参照して説明する。
図7は、無線通信システム140及び無線制御装置240の構成を示すブロック図である。第4の例示的実施形態における無線通信システム140は、例えばローカル5Gによる無線通信回線であってよい。
【0051】
無線通信システム140は、基地局300と無線子局400を含む。基地局300は、無線通信システム140を制御する無線制御装置240と接続されている。本例示的実施形態においては、無線制御装置240が基地局300とは別の構成として接続されているが、基地局300に無線制御装置240が含まれていてもよい。
【0052】
無線制御装置240は、無線通信システム140の通信エリア540内の電波環境が所定の基準よりも悪い領域に端末642が存在することを検知する検知部241を備えている。無線制御装置240は、検知部241によって検知された端末642がその通信状況を改善できる位置まで移動できる状態か否かを判定する判定部242も備えている。無線制御装置240は、判定部232の判定結果に基づいて、端末642以外の他の端末に対して優先して端末642の通信状況改善のため、無線通信システム140の通信エリア540を調整する制御部243も備えている。
【0053】
本例示的実施形態において検知部241が無線通信システム140の通信エリア540内の電波環境が所定の基準よりも悪い領域に端末642が存在することを検知し、端末642がその通信状況を改善できる位置まで移動できない状態であると判定部242が判定した場合、制御部233は判定結果に基づいて、端末642以外の他の端末(端末641を含む)に対して優先して端末642の通信状況改善のため、無線通信システム140の通信エリア540の調整を実行するように、無線通信システム140(の基地局300)を制御する。なお、端末642以外の他の端末に対して優先するとは、他の端末の通信状況改善よりも、端末632の通信状況改善を優先することを意図している。無線通信システム140は、例えば、無線子局400における電波の出力を変更したり、アンテナのチルト角、アジマス角などを調整することにより、通信エリア540を調整してよい。
具体的には、制御部243は無線通信システム140の通信エリア540の領域を変更して調整された通信エリア541に変更する制御を行う。この制御によって、端末642の通信状況は改善する。
図7に示した例において、他の端末641は通信エリア540及び調整された通信エリア541のいずれにおいても電波環境がより良い領域に存在するため、制御部243が実施した制御によって影響を受けていないことになる。しかしながら、通信エリアの調整によって他の端末に影響が及ぶのであれば、その影響が問題とならない範囲内にとどめる必要がある。
【0054】
以上のように、本例示的実施形態に係る無線制御装置240においては、検知部241が無線通信システム140の通信エリア540内の電波環境が所定の基準よりも悪い領域に端末642が存在することを検知し、判定部242が検知部241によって検知された端末642がその通信状況を改善できる位置まで移動できる状態にないと判定し、判定部232の判定結果に基づいて、端末642以外の他の端末に対して優先して端末642の通信状況改善のため、無線通信システム140の通信エリア540を調整する。
【0055】
〔例示的実施形態5〕
本発明の第5の例示的実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。本例示的実施形態に係る無線通信システム150及び無線制御装置250の構成について、
図8を参照して説明する。
図8は、無線通信システム150及び無線制御装置250の構成を示すブロック図である。第5の例示的実施形態における無線通信システム150は、例えばローカル5Gによる無線通信回線であってよい。
【0056】
無線通信システム150は、基地局350と無線子局400を含む。基地局350は、無線子局400及び無線通信システム150を制御する無線制御装置250と接続されている。本例示的実施形態においては、無線制御装置250が基地局350とは別の構成として接続されているが、基地局350に無線制御装置250が含まれていてもよい。
【0057】
無線制御装置250の検知部251は、無線通信システム150の通信エリア550内に端末651が存在しておらず、これにより検知部251は通信エリア550内の電波環境が所定の基準よりも悪い領域に端末651が存在していると検知する。無線制御装置250は、検知部251によって検知された端末651がその通信状況を改善できる位置まで移動できる状態か否かを判定する判定部252も備えている。無線制御装置250は、判定部252の判定結果に基づいて、端末651以外の他の端末に対して優先して端末651の通信状況改善のため、無線通信システム150の通信エリア550を調整する制御部253も備えている。
【0058】
本例示的実施形態において検知部251が無線通信システム150の通信エリア550内の電波環境が所定の基準よりも悪い領域に端末651が存在することを検知し、端末651がその通信状況を改善できる位置まで移動できない状態であると判定部252が判定した場合、制御部253は判定結果に基づいて、端末651以外の他の端末に対して優先して端末651の通信状況改善のため、無線通信システム150の通信エリア550の調整を実行する。
【0059】
具体的には、制御部253は無線通信システム150の通信エリア550の領域を形成していた無線子局450の無線出力を変更して、通信エリアを通信エリア551まで拡大する制御を行う。この制御によって、端末651は通信エリア551の電波環境がより良い領域に存在することとなり、通信状況は改善する。
【0060】
以上のように、本例示的実施形態に係る無線制御装置250においては、検知部251が無線通信システム150の通信エリア550の電波環境が所定の基準よりも悪い領域に端末651が存在することを検知し、判定部252が検知部251によって検知された端末651がその通信状況を改善できる位置まで移動できる状態にないと判定し、判定部252の判定結果に基づいて、端末651以外の他の端末に対して優先して端末651の通信状況改善のため、無線通信システム150の通信エリア550を通信エリア551に変更する。なお、端末642以外の他の端末に対して優先するとは、他の端末の通信状況改善よりも、端末632の通信状況改善を優先することを意図している。なお、本例示的実施形態においては通信エリア550においては、端末は存在していない。このため、本例示的実施形態に係る無線制御装置250によれば、端末651以外の他の端末に対して優先して端末651の通信状況を改善するという具体的な例示はないが、例示的実施形態4と同様に対象となるユーザの端末の通信状況を他の端末に優先して改善するよう前記無線通信システム150の制御を実行することができる。
【0061】
〔例示的実施形態6〕
本発明の第6の例示的実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。本例示的実施形態に係る無線通信システム160及び無線制御装置260の構成について、
図9を参照して説明する。
図9は、無線通信システム160及び無線制御装置260の構成を示すブロック図である。第6の例示的実施形態における無線通信システム160は、例えばローカル5Gによる無線通信回線であってよい。
【0062】
無線通信システム160は、基地局360、分配器361及び複数の無線子局(無線子局460、461)を含む。基地局360は、分配器361と無線通信システム160を制御する無線制御装置260とに接続されている。本例示的実施形態においては、無線制御装置260が基地局360とは別の構成として接続されているが、基地局360に無線制御装置260が含まれていてもよい。また、本例示的実施形態において分配器361は基地局360とは別の構成として接続されているが、基地局360に分配器361が含まれていてもよい。
【0063】
無線制御装置260は、無線通信システム160の通信エリア内の電波環境が所定の基準よりも悪い領域に端末661が存在することを検知する検知部261を備えている。無線制御装置260は、検知部261によって検知された端末がその通信状況を改善できる位置まで移動できる状態か否かを判定する判定部262も備えている。無線制御装置260は、判定部262の判定結果に基づいて、端末の通信状況改善のため、無線通信システム160の制御を実行する制御部263も備えている。
【0064】
基地局360には、無線子局460、461が分配器361を介して接続されている。無線子局460は、無線子局460の通信エリアにセル560を形成する。同様に、無線子局461も、無線子局461の通信エリアにセル561を形成する。なお、無線子局の通信エリアとは、当該無線子局との通信が可能な端末の位置の範囲である。
図9における無線子局460、461はそれぞれが独立した個別セル560、561を形成するように制御されている。ここで、無線子局460、461の通信エリアには、通信エリアが互いに重なっている重複領域がある。そのため、個別セル560、561においても、セル間で領域が重複する重複エリアが存在する。
図9に示されるように、セル560とセル561との間では重複領域が形成されている。この重複領域は、セル干渉によって電波環境が所定の基準よりも悪い領域となる。この重複領域に無線端末661が存在する。
【0065】
無線制御装置260の制御部263は、無線子局460、461の各々を複数の個別のセルを形成するよう機能させるか、無線子局460、461が単一のセルを形成するよう機能させるかの切り替えを実行する。
図9において、制御部263が無線子局460、461に対して単一のセル(560と561を足し合わせた領域)を形成するよう機能させた場合、単一のセルは重複領域を有さず、電波環境が所定の基準よりも悪い領域はない。したがって、
図9の単一のセル形成時における端末661は電波環境が良好である無線通信システム160の通信エリアに存在することになる。
【0066】
無線制御装置260の制御部263が、無線通信システム160の通信エリアを無線子局460、461が形成した個別のセル560、561によって構成させていた場合、個別のセル560、561の重複領域は電波環境が所定の基準よりも悪い領域となる。この場合、検知部251は無線通信システム160の通信エリアの電波環境が所定の基準よりも悪い領域に端末661が存在していると検知する。無線制御装置260の判定部252は、検知部251によって検知された端末661がその通信状況を改善できる位置まで移動できる状態でないと判定する。無線制御装置250の制御部263は、判定部252の判定結果に基づいて、端末661の通信状況改善のため、無線通信システム160の通信エリアを単一のセによって構成させるよう切り替える。
【0067】
これにより無線通信システム160の通信エリアは、無線子局460、461が形成した単一のセル(560と561を足し合わせた領域)を形成する。単一のセルにおいては重複領域が存在しないため、端末661の通信状況は改善される。
【0068】
なお、
図9においては、端末661以外の他の端末は記載されていない。これは、個別のセル560、561の重複領域を除いて、電波環境が所定の基準よりも悪い領域は単一のセルで構成された通信エリアも個別セルで構成された通信エリアも大きな差はないため、他の端末には影響がないためである。
【0069】
以上のように、本例示的実施形態に係る無線制御装置260においては、検知部261が無線通信システム160の複数のセルで形成された通信エリアにおいて電波環境が所定の基準よりも悪い領域に端末661が存在することを検知し、判定部262が検知部261によって検知された端末661がその通信状況を改善できる位置まで移動できる状態にないと判定し、判定部262の判定結果に基づいて、端末661の通信状況改善のため、無線通信システム160の通信エリアを、単一のセルで構成するよう切り替える。このため、本例示的実施形態に係る無線制御装置260によれば、他の端末への影響なく、対象となるユーザの端末の通信状況を改善するよう前記無線通信システム160の制御を実行することができる。
【0070】
〔例示的実施形態7〕
本発明の第7の例示的実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0071】
(無線通信システム及び無線制御装置の構成)
本例示的実施形態に係る無線通信システム170及び無線制御装置270の構成について、
図10を参照して説明する。
図10は、無線通信システム170及び無線制御装置270の構成を示すブロック図である。第7の例示的実施形態における無線通信システム170は、例えばローカル5Gによる無線通信回線であってよい。
【0072】
無線通信システム170は、基地局300と無線子局400を含む。基地局300は、無線通信システム170を制御する無線制御装置270と接続されている。本例示的実施形態においては、無線制御装置270が基地局300とは別の構成として接続されているが、基地局300に無線制御装置270が含まれていてもよい。
【0073】
無線制御装置270は、無線通信システム170の通信エリア500内の電波環境マップを読み込む読込部271を備えている。この読込部271は読み込んだ電波環境マップを保存する記憶部を有してもよい。無線制御装置270は、通信エリア500内の端末601、602の位置情報を取得する取得部272も備えている。位置情報の取得は、GPS等で取得した情報を通信によって受信してもよい。また、カメラが取得した映像情報に基づいて位置情報を取得してもよい。
【0074】
無線制御装置270は、通信エリア500内の電波環境が所定の基準よりも悪い領域に端末602が存在することを検知する検知部201を備えている。無線制御装置270は、検知部201によって検知された端末602がその通信状況を改善できる位置まで移動できる状態か否かを判定する判定部202も備えている。判定部202は、端末602が移動できないと判断された場合、その要因を特定する。端末が移動できない要因の例として、例えば列車などが異常停止した場合があげられる。この場合、列車は安全確認が優先であり、簡単に動くことができない。また、他の要因の例としては、怪我をして動けない状態にある歩行者があげられる。このようなケースにおいては比較的早い段階で移動が可能となるケースも考えられる。
【0075】
本例示的実施形態の制御部203は、特定した要因に基づいて無線通信システムの制御を実行する。上述した列車などの異常停止の例では、多くの乗客が移動できない状態で、電波環境が所定の基準よりも悪い領域にいる状況が考えられる。このため制御部203は列車の乗客がいる領域の電波環境が良くなるよう無線通信システムの制御を実行する。一方、交通事故や故障が単独の場合や、怪我をして動けない状態にある歩行者のケースでは、少数の通信端末が問題となる対象であり、また、比較的早い時期に問題が解消する可能性がある。このような場合、制御部203は他のユーザへの影響を最小限にするため無線通信システムに対して現状を維持するよう制御する。
【0076】
基地局300には、無線子局400が接続されている。無線子局400は通信エリア500を形成するように制御されている。本例示的実施形態においては、単一の無線子局400が示されているが、複数の無線子局が配置されてもよい。無線子局の通信エリア500には、電波環境が良い領域に存在する端末601と、通信エリア500の最も外側の領域である電波環境が悪い領域に存在する端末602が例示的に示されている。また
図10には図示されていないが、通信エリア500の外側に存在する端末についても、電波環境が所定の基準よりも悪い領域に存在する端末に該当する。
【0077】
(無線通信制御方法の流れ)
本例示的実施形態に係る無線制御方法S11の流れについて、
図11を参照して説明する。
図11は、無線通信制御方法S11の流れを示すフロー図である。
【0078】
まず、ステップS1101によって無線制御方法が開始される。次に、ステップS1102によって、通信エリア500内の電波環境マップを読み込みが行われる。次にステップS1103によって端末601、602の位置情報が取得される。この位置情報の取得は、取得部272によって行われる。上述したように、端末601は通信エリア500内の電波環境が良い領域に存在し、端末602は通信エリア500内の電波環境が所定の基準よりも悪い領域に存在する。
【0079】
次に、ステップS1104おいて端末601、602が所定の電波強度以上の領域にいるかどうかが判断される。端末601が検知部201に検知された場合、端末601は通信エリア500内の電波環境が良い領域に存在するため、所定の電波強度以上の領域にいる(Yes)と判断され、ステップS1103に戻される。端末602が検知部201に検知された場合、端末602は通信エリア500内の電波環境が所定の基準よりも悪い領域に存在するため、所定の電波強度以上の領域にいない(No)と判断され、次のステップS1105に進む。
【0080】
ステップS1105においては、端末602がその通信状況を改善できる位置まで移動できる状態か否かが判定部202によって判定される。この後ステップS1106において、ステップS1105において判定された判定結果に基づいて、端末602が移動できる状態(Yes)であればステップS1103に戻される。端末602が移動できない状態(No)と判断されれば、次のステップS1107に進む。
【0081】
ステップS1107においては、端末602が移動できない要因を制御部203が判定する。上述した例示で示した、列車などの異常停止による簡単に解消されない状況という要因や、怪我をして動けない状態にある歩行者などの比較的早期に解決される要因などが判定される。
【0082】
次のステップS1108においては、ステップS1107において判定された結果に基づいて無線通信システムの制御が実行される。簡単に解消されない状況という要因に対しては、制御部203が電波状況の悪い領域の電波環境が良くなるよう無線通信システムの制御を実行する。また、比較的早期に解決される要因に対しては、制御部203は他のユーザへの影響を最小限にするため無線通信システムに対して現状を維持するよう制御する。この制御が行われた後に無線制御方法S11は終了する。(ステップS1109)
以上のように、本例示的実施形態に係る無線制御装置270においては、無線通信システムの通信エリア内の電波環境マップを読み込む読込部271と、通信エリア内の電波環境が所定の基準よりも悪い領域に端末が存在することを検知する検知部201と、通信エリア内の端末の位置情報を取得する取得部272と、端末がその通信状況を改善できる位置まで移動できない状態である場合にその要因を判定する判定部と、判定結果に基づいて、端末の通信状況改善のため無線通信システムの制御を実行する制御部203と備えている。このため、本例示的実施形態に係る無線制御装置270によれば、他のユーザへの影響を最小限にして、異常の対象となるユーザの端末の通信状況を改善するための前記無線通信システム170の制御を実行することができる。
【0083】
〔例示的実施形態8〕
本発明の第8の例示的実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。本例示的実施形態に係る無線通信システム180及び無線制御装置280の構成について、
図12を参照して説明する。
図12は、無線通信システム180及び無線制御装置280の構成を示すブロック図である。第8の例示的実施形態における無線通信システム180は、例えばローカル5G(generation)による無線通信回線であってよい。
【0084】
無線通信システム180は、基地局300と無線子局400を含む。基地局300は、無線通信システム180を制御する無線制御装置280と接続されている。本例示的実施形態においては、無線制御装置280が基地局300とは別の構成として接続されているが、基地局300に無線制御装置280が含まれていてもよい。
【0085】
基地局300には、無線子局400が接続されている。無線子局400は通信エリア500を形成するように制御されている。本例示的実施形態においては、単一の無線子局400が示されているが、複数の無線子局が配置されてもよい。無線子局の通信エリア500には、電波環境が良い領域に存在する端末601と、通信エリア500の最も外側の領域である電波環境が悪い領域に存在する端末682が例示的に示されている。また
図12には図示されていないが、通信エリア500の外側に存在する端末についても、電波環境が所定の基準よりも悪い領域に存在する端末に該当する。
【0086】
無線制御装置280は、無線通信システム180の通信エリア500内の電波環境マップを読み込む読込部271を備えている。この読込部271は読み込んだ電波環境マップを保存する記憶部を有してもよい。無線制御装置280は、通信エリア500を撮像するカメラ780から映像情報を取得する取得部282も備えている。カメラ780が取得する映像情報には、端末682の周りの状況に係る映像情報が含まれる。
【0087】
無線制御装置280は、通信エリア500内の電波環境が所定の基準よりも悪い領域に端末682が存在すること電波環境マップと映像情報とからを検知する検知部201を備えている。ここで、通信エリア500を撮像するカメラ780から取得した映像情報は、端末682の周りの状況に係る映像情報が含まれているため、電波環境が所定の基準よりも悪い領域についてそり詳細な判定が可能となる。
【0088】
無線制御装置280は、検知部201によって検知された端末682がその通信状況を改善できる位置まで移動できる状態か否かを判定する判定部202も備えている。判定部202は、端末682がその通信状況を改善できる位置まで移動できないと判断された場合、その要因を特定する。端末が移動できない要因の例としては、列車などが異常停止した場合があげられ、端末は簡単に動くことができない。また、他の要因の例としては、怪我をして動けない状態にある歩行者があげられ、この場合は比較的早い段階で移動が可能となるケースと考えられる。
【0089】
本例示的実施形態の制御部203は、特定した要因に基づいて無線通信システムの制御を実行する。上述した列車などの異常停止の例では、制御部203は列車の乗客がいる領域の電波環境が良くなるよう無線通信システムの制御を実行する。一方、怪我をして動けない状態にある歩行者のケースにおいて制御部203は他のユーザへの影響を最小限にするため無線通信システムに対して現状を維持するよう制御する。
【0090】
以上のように、本例示的実施形態に係る無線制御装置270においては、無線通信システムの通信エリア内の電波環境マップを読み込む読込部271と、通信エリア内を撮像するカメラから映像情報を取得する取得部272と、通信エリア内の電波環境が所定の基準よりも悪い領域に端末が存在することを電波環境マップと映像情報とから検知する検知部201と、端末がその通信状況を改善できる位置まで移動できない状態である場合にその要因を判定する判定部と、判定結果に基づいて、端末の通信状況改善のため無線通信システムの制御を実行する制御部203と備えている。このため、本例示的実施形態に係る無線制御装置270によれば、電波環境が所定の基準よりも悪い領域に端末が存在するかどうかをより詳細に判定することができ、異常の対象となるユーザの端末の通信状況を改善するための前記無線通信システム170の制御を実行することができる。
【0091】
〔ソフトウェアによる実現例〕
無線通信システム及び無線通信制御装置の一部又は全部の機能は、集積回路(ICチップ)等のハードウェアによって実現してもよいし、ソフトウェアによって実現してもよい。
【0092】
後者の場合、無線通信システム及び無線通信制御装置は、例えば、各機能を実現するソフトウェアであるプログラムの命令を実行するコンピュータによって実現される。このようなコンピュータの一例(以下、コンピュータCと記載する)を
図13に示す。コンピュータCは、少なくとも1つのプロセッサC1と、少なくとも1つのメモリC2と、を備えている。メモリC2には、コンピュータCを無線通信システム及び無線通信制御装置として動作させるためのプログラムPが記録されている。コンピュータCにおいて、プロセッサC1は、プログラムPをメモリC2から読み取って実行することにより、無線通信システム及び無線通信制御装置の各機能が実現される。
【0093】
プロセッサC1としては、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphic Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、MPU(Micro Processing Unit)、FPU(Floating point number Processing Unit)、PPU(Physics Processing Unit)、TPU(Tensor Processing Unit)、量子プロセッサ、マイクロコントローラ、又は、これらの組み合わせなどを用いることができる。メモリC2としては、例えば、フラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、又は、これらの組み合わせなどを用いることができる。
【0094】
なお、コンピュータCは、プログラムPを実行時に展開したり、各種データを一時的に記憶したりするためのRAM(Random Access Memory)を更に備えていてもよい。また、コンピュータCは、他の装置との間でデータを送受信するための通信インタフェースを更に備えていてもよい。また、コンピュータCは、キーボードやマウス、ディスプレイやプリンタなどの入出力機器を接続するための入出力インタフェースを更に備えていてもよい。
【0095】
また、プログラムPは、コンピュータCが読み取り可能な、一時的でない有形の記録媒体Mに記録することができる。このような記録媒体Mとしては、例えば、テープ、ディスク、カード、半導体メモリ、又はプログラマブルな論理回路などを用いることができる。コンピュータCは、このような記録媒体Mを介してプログラムPを取得することができる。また、プログラムPは、伝送媒体を介して伝送することができる。このような伝送媒体としては、例えば、通信ネットワーク、又は放送波などを用いることができる。コンピュータCは、このような伝送媒体を介してプログラムPを取得することもできる。
【0096】
〔付記事項1〕
本発明は、上述した実施形態に限定されるものでなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。例えば、上述した実施形態に開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても、本発明の技術的範囲に含まれる。
【0097】
〔付記事項2〕
上述した実施形態の一部又は全部は、以下のようにも記載され得る。ただし、本発明は、以下の記載する態様に限定されるものではない。
(付記1)
無線通信システムの通信エリア内の電波環境が所定の基準よりも悪い領域に端末が存在することを検知する検知部と、前記検知された端末がその端末の通信状況を改善できる位置まで移動できる状態か否かを判定する判定部と、前記判定部の判定結果に基づいて、前記端末の通信状況の改善のための前記無線通信システムの制御を実行する制御部と、を備えている無線制御装置。
【0098】
上記の構成によれば、異常の対象となるユーザが端末の通信状況を改善できる位置まで移動可能か判定し、この判定結果に基づいて無線通信システムを制御することにより、他のユーザへの影響を最適化することができる。
【0099】
(付記2)
前記判定部は、前記端末がその端末の通信状況を改善できる位置まで移動できない状態である場合に、前記端末が移動できない要因をさらに判定し、前記制御部は、前記要因に基づいて、前記無線通信システムの制御を実行する、付記1に記載の無線制御装置。
【0100】
上記の構成によれば、他のユーザへの影響を最小限にしたうえで、異常の対象となるユーザの端末の通信状況を改善するための前記無線通信システムの制御を実行することができる。
【0101】
(付記3)
前記無線通信システムの制御は、前記無線通信システムの通信リソースを、前記端末との通信に優先して割り当てる制御である、付記1または付記2に記載の無線制御装置。
【0102】
上記の構成によれば、他のユーザへの影響を大きくならないように配慮したうえで、対象となるユーザの端末の通信状況を改善するよう前記無線通信システムの制御を実行することができる。
【0103】
(付記4)
前記無線通信システムの制御は、前記端末以外の他の端末に対して優先して前記端末の通信状況が改善するように、前記通信エリアを調整する制御である、付記1または付記2に記載の無線制御装置。
【0104】
上記の構成によれば、他の端末への影響を配慮したうえで、対象となるユーザの端末の通信状況を改善するよう前記無線通信システムの制御を実行することができる。
【0105】
(付記5)
前記無線通信システムは、複数の無線子局を備えており、前記無線通信システムの制御は、前記複数の無線子局が、単一のセルを構成するか、複数のセルを構成するかを切替える制御である、付記1または付記2に記載の無線制御装置。
【0106】
上記の構成によれば、他の端末への影響なく、対象となるユーザの端末の通信状況を改善するよう前記無線通信システム160の制御を実行することができる。
【0107】
(付記6)
前記通信エリア内の電波環境マップを読み込む読込部と、前記通信エリア内の端末から位置情報を取得する取得部と、をさらに備え、前記検知部は、前記電波環境マップと前記位置情報に基づいて、前記領域に端末が存在することを検知する、付記1ないし付記5に記載の無線通信制御装置。
【0108】
上記の構成によれば、他のユーザへの影響を最小限にして、異常の対象となるユーザの端末の通信状況を改善するための前記無線通信システムの制御を実行することができる。
【0109】
(付記7)
前記通信エリア内の電波環境マップを読み込む読込部と、前記通信エリア内を撮像するカメラから撮像情報を取得する取得部と、をさらに備え、前記検知部は、前記電波環境マップと前記撮像情報に基づいて、前記領域に端末が存在することを検知する、付記1ないし付記5に記載の無線通信制御装置。
【0110】
上記の構成によれば、電波環境が所定の基準よりも悪い領域に端末が存在するかどうかをより詳細に判定することができ、異常の対象となるユーザの端末の通信状況を改善するための前記無線通信システムの制御を実行することができる。
【0111】
(付記8)
無線通信システムの通信エリア内の電波環境が所定の基準よりも悪い領域に端末が存在することを検知する検知手段と、前記検知された端末がその端末の通信状況を改善できる位置まで移動できる状態か否かを判定する判定手段と、前記判定手段の判定結果に基づいて、前記端末の通信状況の改善のための前記無線通信システムの制御を実行する制御手段と、を備えている無線制御システム。
【0112】
上記の構成によれば、異常の対象となるユーザが端末の通信状況を改善できる位置まで移動可能か判定し、この判定結果に基づいて無線通信システムを制御することにより、他のユーザへの影響を最適化することができる。
【0113】
(付記9)
無線通信システムの通信エリア内の電波環境が所定の基準よりも悪い領域に端末が存在することを検知する検知処理と、前記検知された端末がその端末の通信状況を改善できる位置まで移動できる状態か否かを判定する判定処理と、前記判定処理の判定結果に基づいて、前記端末の通信状況の改善のための前記無線通信システムの制御を実行する制御処理と、
を実行する無線制御方法。
【0114】
上記の構成によれば、異常の対象となるユーザが端末の通信状況を改善できる位置まで移動可能か判定し、この判定結果に基づいて無線通信システムを制御することにより、他のユーザへの影響を最適化することができる。
【0115】
(付記10)
コンピュータに、無線通信システムの通信エリア内の電波環境が所定の基準よりも悪い領域に端末が存在することを検知する検知処理と、前記検知された端末がその端末の通信状況を改善できる位置まで移動できる状態か否かを判定する判定処理と、前記判定処理の判定結果に基づいて、前記端末の通信状況の改善のための前記無線通信システムの制御を実行する制御処理と、を実行させる、無線制御プログラム。
【0116】
上記の構成によれば、異常の対象となるユーザが端末の通信状況を改善できる位置まで移動可能か判定し、この判定結果に基づいて無線通信システムを制御することにより、他のユーザへの影響を最適化することができる。
(付記11)
少なくとも1つのプロセッサを備え、前記プロセッサは、無線通信システムの通信エリア内の電波環境が所定の基準よりも悪い領域に端末が存在することを検知する検知処理と、前記検知された端末がその端末の通信状況を改善できる位置まで移動できる状態か否かを判定する判定処理と、前記判定処理の判定結果に基づいて、前記端末の通信状況の改善のための前記無線通信システムの制御を実行する制御処理とを実行する無線通信制御装置。
なお、この無線通信制御装置は、更にメモリを備えていてもよく、このメモリには、前記検知処理と、前記判定処理と、前記制御処理とを前記プロセッサに実行させるためのプログラムが記憶されていてもよい。また、このプログラムは、コンピュータ読み取り可能な一時的でない有形の記録媒体に記録されていてもよい。
【符号の説明】
【0117】
10 ・・・無線制御システム
100,130,140,150,160,170,180 ・・・無線通信システム
11 ・・・検知手段
12 ・・・判定手段
13 ・・・制御手段
20,200,230,240,250,260,270 ・・・無線制御装置
21,201,231,241,251,261 ・・・検知部
22,202,232,242,252,262 ・・・判定部
23,203,233,243,253,263 ・・・制御部
271 ・・・読込部
272,282 ・・・取得部
300,350,360 ・・・基地局
361 ・・・分配器
400,450,451,460,461 ・・・無線子局
500,540,541,550,551,560,561 ・・・通信エリア
601,602,641,642,651,661,682 ・・・端末
780 ・・・カメラ