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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135252
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】造形システムおよび測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/00 20060101AFI20240927BHJP
   B29C 39/44 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
G01B11/00 H
B29C39/44
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023045846
(22)【出願日】2023-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(74)【代理人】
【識別番号】110004026
【氏名又は名称】弁理士法人iX
(72)【発明者】
【氏名】戸谷 公紀
【テーマコード(参考)】
2F065
4F204
【Fターム(参考)】
2F065AA03
2F065AA07
2F065BB05
2F065BB22
2F065FF01
2F065FF42
2F065HH02
2F065HH07
2F065HH15
2F065JJ03
2F065JJ09
2F065JJ26
4F204AA36
4F204AC05
4F204AQ01
4F204AR13
4F204AR20
4F204EA03
4F204EB01
4F204EF27
4F204EK17
4F204EK26
(57)【要約】      (修正有)
【課題】製造条件のフィードバック時間を短縮できる造形システムおよび測定装置を提供する。
【解決手段】背景像と、前記背景像を撮像する撮像部と、前記背景像と前記撮像部との間に位置する測定対象部材を通過する光を介して前記背景像を撮像した第1乃至第3像データを前記撮像部から取得する測定制御部とを備え、第1像データは背景像が第1相対位置にある第1時点における撮像により生成され、第2像データは背景像が第2相対位置にある第2時点であって、第1時点よりも後の第2点における撮像により生成され、第3像データは背景像が第3相対位置にある第3時点であって、第2時点よりも後の第3時点における撮像により生成される。測定制御部70は第1乃至第3像データ中における第1相対位置および第2相対位置にある背景像の第1画像移動量、および、第2相対位置および第3相対位置にある前記背景像の第2画像移動量を導出する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
背景像と、
前記背景像を撮像する撮像部と、
前記背景像と前記撮像部との間に位置する測定対象部材を通過する光を介して前記背景像を撮像した第1乃至第3像データを前記撮像部から取得する測定制御部と、
を備え、
前記第1像データは、前記背景像が前記撮像部および前記測定対象部材に対する第1相対位置にある第1時点における撮像により生成され、
前記第2像データは、前記背景像が前記撮像部および前記測定対象部材に対する第2相対位置にある第2時点であって、前記第1時点よりも後の第2時点における撮像により生成され、
前記第3像データは、前記背景像が前記測定対象部材の対する第3相対位置にある第3時点であって、前記第2時点よりも後の第3時点における撮像により生成され、
前記測定制御部は、前記第1乃至第3像データ中における前記第1相対位置にある前記背景像と前記第2相対位置にある前記背景像との間の第1画像移動量、および、前記第2相対位置にある前記背景像と前記第3相対位置にある前記背景像との間の第2画像移動量を導出する、測定装置。
【請求項2】
前記第1画像移動量と、前記背景像の前記第1相対位置から前記第2相対位置への第1相対移動量と、の差を前記第1相対移動量で除することにより第1画像差分を測定し、
前記第2画像移動量と、前記背景像の前記第2相対位置から前記第3相対位置への第2相対移動量と、の差を前記第2相対移動量で除することにより第2画像差分を測定する、請求項1記載の測定装置。
【請求項3】
前記背景像の前記第1相対位置は、前記第3相対位置に一致する、請求項1記載の測定装置。
【請求項4】
前記測定対象部材の温度は、前記第1時点において第1温度であり、前記第2時点において前記第1温度よりも低い第2温度であり、前記第3時点において前記第2温度よりも低く、常温よりも高い第3温度であり、
前記第1温度と前記第2温度の差は、前記第2温度と前記第3温度との差と同じである、請求項1記載の測定装置。
【請求項5】
前記第1乃至第3像データは、それぞれ、前記背景像を撮像した画像の複数の画素により構成され、
前記第1相対位置と前記第2相対位置との間における前記背景像の前記第1および第2画像移動量は、前記画素のサイズよりも大きい、請求項1記載の測定装置。
【請求項6】
前記背景像の前記第1相対位置から前記第2相対位置に向かう方向および前記第2相対位置から前記第3相対位置に向かう方向は、前記背景像の前記撮像部に向き合う面に平行である、請求項1記載の測定装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1つに記載の測定装置と、
前記測定対象部材を造形する造形装置と、
前記造形装置および前記測定装置を制御する造形制御装置と、
前記造形制御装置および前記測定装置の前記測定制御部に提供するデータと、前記測定制御部から出力されるデータと、前記測定対象部材の良否判定基準と、を記憶する記憶装置と、
を備え、
前記造形制御装置は、前記記憶装置から前記測定対象部材を造形するための造形条件を取得し、前記造形装置に前記造形条件を提供し、
前記造形装置は、前記造形条件に基づいて、前記測定対象部材を造形し、
前記測定装置は、前記測定対象部材を測定し、
前記測定装置から出力される測定結果と、前記記憶装置の前記良否判定基準と、を比較し、前記測定対象部材の良否判定を実施する、造形システム。
【請求項8】
前記測定対象部材の前記良否判定の結果に基づいて、前記良否判定基準を更新する、請求項7記載の造形システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実施形態は、造形システムおよび測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチック成形など、高温の材料を造形する製造方法では、製品が常温まで冷却された後に良否を判定することが一般的である。しかしながら、製品のサイズが大きい場合には、常温になるまでに長い時間を要し、判定結果を製造条件にフィードバックすることが難しい場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-143917号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
実施形態は、製造条件のフィードバック時間を短縮できる造形システムおよび測定装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態に係る測定装置は、背景像と、前記背景像を撮像する撮像部と、前記背景像と前記撮像部との間に位置する測定対象部材を通過する光を介して前記背景像を撮像した第1乃至第3像データを前記撮像部から取得する測定制御部と、を備える。前記第1像データは、前記背景像が前記撮像部および前記測定対象部材に対する第1相対位置にある第1時点における撮像により生成され、前記第2像データは、前記背景像が前記撮像部および前記測定対象部材に対する第2相対位置にある第2時点であって、前記第1時点よりも後の第2時点における撮像により生成され、前記第3像データは、前記背景像が前記測定対象部材の対する第3相対位置にある第3時点であって、前記第2時点よりも後の第3時点における撮像により生成される。前記測定制御部は、前記第1乃至第3像データ中における前記第1相対位置にある前記背景像と前記第2相対位置にある前記背景像との間の第1画像移動量、および、前記第2相対位置にある前記背景像と前記第3相対位置にある前記背景像との間の第2画像移動量を導出する。
【0006】
実施形態に係る造形システムは、前記測定装置と、前記測定対象部材を造形する造形装置と、前記造形装置および前記測定装置を制御する造形制御装置と、前記造形制御装置および前記測定装置の前記測定制御部に提供するデータと、前記測定制御部から出力されるデータと、前記測定対象部材の良否判定基準と、を記憶する記憶装置と、を備える。前記造形制御装置は、前記記憶装置から前記測定対象部材を造形するための造形条件を取得し、前記造形装置に前記造形条件を提供し、前記造形装置は、前記造形条件に基づいて、前記測定対象部材を造形する。前記測定装置は、前記測定対象部材を測定する。前記造形システムは、前記測定装置から出力される測定結果と、前記記憶装置の前記良否判定基準と、を比較し、前記測定対象部材の良否判定を実施する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1実施形態に係る測定装置を示す模式図である。
図2】第1実施形態に係る測定装置の動作を示す模式図である。
図3】第1実施形態に係る測定装置の動作を示す別の模式図である。
図4】第1実施形態に係る測定装置の測定制御部を示すブロック図である。
図5】第2実施形態に係る造形システムを示すブロック部である。
図6】第2実施形態に係る測定装置の動作を示すグラフである。
図7】第2実施形態に係る造形システムの動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施の形態について図面を参照しながら説明する。図面中の同一部分には、同一番号を付してその詳しい説明は適宜省略し、異なる部分について説明する。なお、図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。また、各図中に示すX軸、Y軸およびZ軸を用いて各部分の配置および構成を説明する場合もある。
【0009】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る測定装置100を示す模式的図である。測定装置100は、背景像10と、撮像部50と、測定制御部70と、を含む。測定対象部材WPは、背景像10と撮像部50との間に置かれる。
【0010】
測定装置100は、例えば、位置変更部10Dをさらに含む。位置変更部10Dは、例えば、背景像制御部11D及び測定対象部材制御部15Dを含む。背景像制御部11Dは、背景像10の空間的な位置を制御可能である。測定対象部材制御部15Dは、測定対象部材WPの空間的な位置を制御可能である。背景像制御部11Dは、撮像部50に対する背景像10の相対的位置を変更する。測定対象部材制御部15Dは、背景像10および撮像部50に対する測定対象部材WPの相対位置を変更する。
【0011】
測定装置100は、撮像制御部51Dをさらに含んでも良い。撮像制御部51Dは、撮像部50の空間的な位置を制御可能である。撮像制御部51Dは、位置変更部10Dに含まれても良い。
【0012】
測定制御部70は、データ取得部71及び演算部72を含む。データ取得部71は、第1像データDi1、第2像データDi2及び第3像データDi3を撮像部50から取得する。演算部72は、第1像データDi1、第2像データDi2及び第3像データDi3に基づく演算データDdを出力する。
【0013】
測定制御部70は、撮像位置制御部78をさらに含んでも良い。撮像位置制御部78は、第1信号Sg1を背景像制御部11Dに供給して背景像10の位置を制御しても良い。撮像位置制御部78は、第2信号Sg2を測定対象部材制御部15Dに供給して測定対象部材WPの位置を制御しても良い。撮像位置制御部78は、第3信号Sg3を撮像制御部51Dに供給して撮像部50の位置を制御しても良い。
【0014】
演算部72は、例えば、マイクロプロセッサである。位置変更部10Dは、演算部72により制御されても良い。言い換えれば、撮像位置制御部78は、演算部72の一部と見なされても良い。演算部72は、背景像制御部11D、測定対象部材制御部15D及び撮像制御部51Dの少なくともいずれか1つを制御しても良い。
【0015】
背景像10から測定対象部材WPへの第1方向をZ軸方向とする。Z軸方向に対して垂直な1つの方向をX軸方向とする。Z軸方向及びX軸方向に対して垂直な方向をY軸方向とする。
【0016】
背景像制御部11Dは、例えば、X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向における背景像10の位置を変更可能である。測定対象部材制御部15Dは、例えば、X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向における測定対象部材WPの位置を変更可能である。撮像部制御部51Dは、例えば、X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向における撮像部50の位置を変更可能である。
【0017】
この例では、測定装置100は、光源18aをさらに含む。光源18aから出射した光L0は、背景像10となる部材に入射する。背景像10となる部材から出射される光は、測定対象部材WPに入射する。測定対象部材WPから出射される光は、撮像部50に入射する。撮像部50は、測定対象部材WPから出射された光を検出して、画像データを生成可能である。
【0018】
実施形態は、この例に限定される訳ではなく、背景像10は、任意の表示装置の画像でも良い。例えば、発光型の表示装置に表示される画像を背景像10として用いることができる。
【0019】
背景像10は、任意の模様を含んで良い。背景像10は、例えば、ランダムドット模様を含む。発光型の表示装置を用いる場合、表示装置に含まれる複数の画素もしくは複数の発光素子は模様を構成し得る。
【0020】
測定対象部材WPは、背景像10から出射される光の少なくとも一部を通過させる。撮像部50は、測定対象部材WPを通過した光を介して、背景像10を撮像し、第1像データDi1、第2像データDi2及び第3像データDi3を生成する。
【0021】
測定制御部70は、撮像部50から取得される第1像データDi1、第2像データDi2及び第3像データDi3に基づいて、例えば、測定対象部材WPの特性を測定または評価可能である。測定制御部70において測定される特性は、例えば、測定対象部材WPの屈折率である。また、測定制御部70は、測定対象部材WPの屈折率を介して、応力、温度、圧力、ひずみ、及び、密度の少なくともいずれかを測定または評価可能である。屈折率は、複屈折率であってもよい。測定対象部材WPの特性は、空間的な分布を有して良い。測定制御部70は、測定対象部材WPにおける特性の空間的な分布を評価可能である。
【0022】
図2(a)~図2(c)は、第1実施形態に係る測定装置100の動作を示す模式図である。図2(a)~図2(c)は、第1時点T1、第2時点T2および第3時点T3のそれぞれにおける背景像10、測定対象部材WPおよび撮像部50の相対位置を表している。
【0023】
図2(a)~図2(c)に示すように、第1時点T1および第3時点T3において、背景像10、測定対象部材WPおよび撮像部50は同じ相対位置にある。この例では、測定対象部材WPおよび撮像部50の位置が実質的に固定され、背景像10の位置が変更される。背景像10は、例えば、背景像10の撮像部50に向き合う面に平行な方向に移動される。
【0024】
第2時点T2において、背景像10は、測定対象部材WPおよび撮像部50に対して、X軸方向にΔx1だけ移動している。言い換えれば、第2時点T2における背景像10の第2相対位置RP2は、第1時点T1における背景像10の第1相対位置RP1と異なる。第3時点T3において、背景像10は、第1相対位置RP1に戻る。
【0025】
第2時点T2は、第1時点T1の後であり、第3時点T3は、第2時点T2の後である。これにより、第1時点T1と第2時点T2との間、および、第2時点T2と第3時点T3との間における測定対象部材WPの特性を測定することができる。実施形態は、この例に限定される訳ではなく、背景像10は、X-Y平面に沿う任意の方向に移動しても良い。
【0026】
図2(a)に示すように、第1時点T1における背景像10から出射される第1光L1が測定対象部材WPに入射する。測定対象部材WPを通過する第1光L1は、撮像部50に入射する。第1光L1を検出した撮像部50から第1像データDi1が得られる。第1像データDi1は、測定対象部材WPを通過する第1光L1の光路を反映している。
【0027】
図2(b)に示すように、第2時点T2における背景像10から出射される第2光L2が測定対象部材WPに入射する。測定対象部材WPを通過する第2光L2は、第1撮像部50に入射する。第2光L2を検出した撮像部50から第2像データDi2が得られる。第2像データDi2は、測定対象部材WPを通過する第2光L2の光路を反映している。
【0028】
図2(c)に示すように、第3時点T3における背景像10から出射される第3光L3が測定対象部材WPに入射する。測定対象部材WPを通過する第3光L3は、撮像部50に入射する。第3光L3を検出した撮像部50から第3像データDi3が得られる。第3像データDi3は、測定対象部材WPを通過する第3光L3の光路を反映している。
【0029】
なお、図2(a)~(c)では、背景像10が第1相対位置RP1から第2相対位置RP2へ移動し、さらに、第1相対位置RP1へ戻る例を示しているが、実施形態は、この例に限定される訳ではない。背景像10は、例えば、第2相対位置RP2から第1相対位置RP1とは異なる第3相対位置(図示しない)に移動してもよい。
【0030】
図3(a)および(b)は、第1実施形態に係る測定装置100の動作を示す模式図である。図3(a)は、撮像部50により取得される第1像データDi1、第2像データDi2および第3像データDi3を重ねて示す模式図である。図3(b)は、背景像10の画像を示す模式図である。撮像部50により取得される背景像10の画像は、例えば、X軸方向およびY軸方向に並ぶ複数のドットパターンを含む。
【0031】
図3(a)に示すように、第2像データDi2は、第1像データDi1に対して、例えば、X軸方向に移動する。第1像データDi1と第2像データDi2との間における第1画像移動量はλx1である。さらに、第3像データDi3は、第2像データDi2に対して、例えば、X軸方向の反対方向に移動する。第2像データDi2と第3像データDi3との間における第2画像移動量はλx2である。なお、図3(a)中に示す各ドットの第1画像移動量λx1および第2画像移動量λx2は、全て同一になるとは限らず、ドット毎に、測定対象部材WPの屈折率分布を反映した値になることに留意すべきである。
【0032】
第1時点T1~第3時点T3の間において、測定対象部材WPの特性、例えば、屈折率が一定であれば、第2画像移動量λx2は、第1画像移動量λx1と同じである。第1時点T1~第3時点T3の間に、例えば、測定対象部材WPの屈折率が変化すれば、第2画像移動量λx2は、第1画像移動量λx1とは異なる。
【0033】
測定装置100は、撮像されたドットパターンのうちの少なくとも1つにおいて、第1画像移動量λx1および第2画像移動量λx2を測定する。また、図3(b)に示すように、複数の画像領域Ri1~Ri6のそれぞれにおいて、第1画像移動量λx1および第2画像移動量λx2を測定してもよい。これにより、例えば、測定対象部材WPにおける屈折率の空間分布を測定することができる。例えば、画像領域Ri1~Ri6のそれぞれにおいて、第1画像移動量λx1および第2画像移動量λx2の平均値が求められる。
【0034】
なお、第1画像移動量λx1および第2画像移動量λx2は、例えば、撮像された画像中の少なくとも1つの画素の移動量として算出されてもよい。すなわち、画像中のドット間に位置する画素の動きを測定してもよい。
【0035】
第1~第3像データDi1、Di2、Di3は、それぞれ、複数の画素に対応するデータにより構成され、第1画像移動量λx1および第2画像移動量λx2は、例えば、撮像された画像内における1画素のサイズよりも大きい。
【0036】
図3では、第1~第3像データDi1、Di2、Di3の移動方向をX軸方向およびその逆方向として表しているが、実施形態は、この例に限定される訳ではない。例えば、背景像10のX軸方向の移動に対して、第1~第3像データDi1、Di2、Di3がX軸方向と交差する方向に移動するとしてもよい。この場合も、第1画像移動量λx1および第2画像移動量λx2を同様に扱うことができる。
【0037】
図4は、第1実施形態に係る測定装置100の測定制御部70の動作を示すブロック図である。測定制御部70は、データ取得部71及び演算部72を含む。データ取得部71は、例えば、画像プロセッサである。
【0038】
図4に示すように、撮像部50からデータ取得部71へ第1~第3像データDi1、Di2、Di3が順に送られる。データ取得部71は、第1~第3像データDi1、Di2、Di3を解析し、第1画像移動量λx1および第2画像移動量λx2を算出する。データ取得部71は、例えば、画像領域Ri1~Ri6(図3(b)参照)のそれぞれにおいて、第1画像移動量λx1および第2画像移動量λx2を算出する。
【0039】
続いて、データ取得部71から出力される第1画像移動量λx1および第2画像移動量λx2に基づいて、演算部72は、第1画像差分Δλ1および第2画像差分Δλ2を算出する。さらに、第1画像差分Δλ1および第2画像差分Δλ2に基づいて、平均画像差分Δλavを算出する。第1画像差分Δλ1は、第1画像移動量λx1と背景像10の相対移動量Δx1(図2参照)との差をΔx1で除した値であり、第2画像差分Δλ2は、第2画像移動量λx2と相対移動量Δx1との差をΔx1で除した値である。画像差分Δλは、例えば、測定対象部材WPの屈折率を反映する。演算部72は、例えば、画像領域Ri1~Ri6において、平均画像差分Δλav1~Δλav6をそれぞれ算出し、演算データDdとして出力する。
【0040】
なお、第3時点において、背景像10が第1相対位置RP1とは異なる第3相対位置に移動する場合、第2画像差分Δλ2は、第2画像移動量λx2と、第2相対位置RP2から第3相対位置までの相対移動量Δx2(図示しない)との差をΔx2で除することにより算出される。
【0041】
(第2実施形態)
図5は、第2実施形態に係る造形システム200を示すブロック部である。造形システム200は、例えば、光学部品の射出成形システムである。なお、実施形態は、この例に限定される訳ではなく、測定装置100の背景像10から放出される光を少なくとも部分的に透過する測定対象部材WPを造形するものであればよく、例えば、3次元プリンタであってもよい。
【0042】
図5に示すように、造形システム200は、測定装置100と、造形装置120と、造形物搬出機130と、造形制御装置140と、記憶装置150と、を備える。造形制御装置140は、測定装置100、造形装置120および造形物搬出機130を制御する。記憶装置150は、造形制御装置140および測定装置100の測定制御部70に提供するデータと、造形制御装置140および測定制御部70から出力されるデータと、を記憶する。
【0043】
造形装置120は、例えば、金型123と、温度制御部125と、を含む。造形装置120は、例えば、熱硬化性樹脂を金型123内に注入して造形物を制作する。温度制御部125は、熱硬化性樹脂を硬化させるために、金型123を所定の温度に加熱する。なお、実施形態はこの例に限定される訳ではなく、造形条件として、材料温度、金型123中の保持圧力、冷却時間などを設定する構成でもよい。
【0044】
造形物搬出機130は、造形物(以下、測定対象部材WP)を金型123から取り出し、測定装置100内に搬送する。測定装置100内において、測定対象部材WPは、背景像10と撮像部50との間に載置される。
【0045】
造形制御装置140は、記憶装置150から測定対象部材WPを造形するための造形条件を取得し、造形装置120に提供する。造形制御装置140は、造形装置120の温度制御部125に、金型123の温度条件、例えば、熱硬化性樹脂の硬化温度を提供する。また、造形制御装置140は、造形物搬出機130および測定装置100の測定制御部70に、金型123から測定対象部材WPを取り出すタイミングを示す信号を提供する。なお、測定制御部70は、造形制御装置140の一部であってもよい。
【0046】
造形制御装置140は、入力部145をさらに有する。造形制御装置140は、例えば、測定装置100以外で取得される測定対象部材WPの特性を、入力部145を介して取得することができる。造形制御装置140は、入力部145を介して取得した測定対象部材WPの特性を、記憶装置150に記憶させる。
【0047】
測定装置100は、測定対象部材WPを測定し、測定制御部70において、背景像10の画像移動量λを導出し、画像差分Δλを算出する(図4参照)。測定制御部70は、演算データDd(図4参照)を出力する。造形制御装置140は、例えば、測定制御部70から出力される演算データDdに基づいて、測定対象部材WPの良否判定を実施する。
【0048】
測定装置100は、放射型温度計40と、環境温度制御部60と、をさらに含む。放射型温度計40は、測定対象部材WPの温度を測定する。環境温度制御部60は、測定装置100内の測定環境の温度を、例えば、所定の温度に保持する。記憶装置150は、例えば、測定制御部70から出力される演算データDdと、測定対象部材WPの第1時点T1、第2時点T2および第3時点T3における温度と、測定環境の温度と、を記憶する。
【0049】
図6は、第2実施形態に係る測定装置100の動作を示すグラフである。縦軸は、測定対象部材WPの温度、横軸は、時間である。測定対象部材WPの温度は、例えば、放射型温度計40を用いる温度測定により得られる。また、測定対象部材WPの温度を表す手段として、記憶装置150に記憶させた温度特性を用いてもよい。
【0050】
測定対象部材WPは、例えば、金型123(図5参照)から取り出される時点において、所定の温度に加熱されており、測定装置100に搬入され、撮像される間に冷却される。図6は、この間の測定対象部材WPの温度変化を表している。
【0051】
測定装置100では、第1時点T1において、第1像データDi1が取得される。この時点における測定対象部材WPの温度は、第1温度K1である。第1時点T1よりも後の第2時点T2において、第2像データDi2が取得される。この時点における測定対象部材WPの温度は、第1温度K1よりも低い第2温度K2である。さらに、第2時点T2よりも後の第3時点T3において、第3像データDi3が取得される。この時点における測定対象部材WPの温度は、第2温度K2よりも低い第3温度K3である。第3温度K3は、常温よりも高い。すなわち、測定装置100における測定は、測定対象部材WPが常温まで冷却される前に実施される。
【0052】
第1時点T1~第3時点T3は、例えば、造形物搬出機130が測定対象部材WPを金型123から取り出すタイミングを起点として設定される。すなわち、造形制御装置140から測定装置100および造形物搬出機130に取り出し信号が送付されるタイミングを起点とする。
【0053】
例えば、第1温度K1と第2温度K2との温度差を、第2温度K2と第3温度K3との温度差と同じにすると、平均画像差分Δλavの測定温度を第2温度とすることができる。第1温度K1と第2温度K2との温度差と、第2温度K2と第3温度K3との温度差とが異なる場合には、例えば、第1温度K1と第2温度K2との中間温度と、第2温度K2と第3温度K3との中間温度と、を平均して、平均画像差分Δλavの測定温度を求めることができる。
【0054】
また、第2時点T2と第1時点T1との時間差を、第3時点T3と第2時点T2との時間差と同じにすると、例えば、平均画像差分Δλavの測定時点を第2時点とすることができる。第2時点T2と第1時点T1との時間差と、第3時点T3と第2時点T2との時間差と、が異なる時、例えば、第1時点T1と第2時点T2との中間時点と、第2時点T2と第3時点T3との中間時点、を平均して、平均画像差分Δλavの測定時点を求めることができる。
【0055】
このように、測定対象部材WPの温度が変化している場合、その過程における物性値が不安定であり、測定対象部材WPを常温まで冷却した後に測定を実施することが好ましい。しかしながら、測定対象部材WPの冷却に長時間を要する場合には、測定結果を造形条件にフィードバックする期間が長くなる。このため、測定対象部材WPが不良品であった場合には、フィードバックに要する期間内において、多数の不良品がさらに造形される可能性がある。また、造形条件のフィードバック後に、次の測定対象部材WPを造形するのでは、製造効率が著しく低下することになる。
【0056】
実施形態に係る造形システム200では、測定装置100は、測定対象部材WPが常温まで冷却される前の第3時点T3において、例えば、画像差分Δλを導出する。さらに、その画像差分Δλに基づいて、測定対象部材WPの良否判定を実施する。これにより、造形条件へのフィードバック時間を短縮し、製造歩留りおよび製造効率の向上を図ることができる。
【0057】
図7は、第2実施形態に係る造形システム200の動作を示すフローチャートである。図7は、造形制御装置140により制御される測定対象部材WPの製造過程を表している。
【0058】
造形制御装置140は、造形装置120における造形条件を設定する(S01)。造形制御装置140は、測定対象部材WPの形状および造形材料に応じて、記憶装置150から造形条件を取得し、造形装置120に提供する。記憶装置150に保持される造形条件は、過去の造形条件および造形物の特性を統計処理することにより適正化されている。造形制御装置140は、例えば、造形装置120の温度制御部125に、造形材料の設定温度を提供する。温度制御部125は、測定対象部材WPの形状に応じて、例えば、金型123の温度を制御するように構成されてもよい。
【0059】
造形装置120は、造形制御装置140から提供される造形条件により、測定対象部材WPを造形する(S02)。例えば、液状の樹脂が金型123中に注入され、温度制御部125は、金型123を所定の硬化温度に加熱する。温度制御部125は、例えば、金型123の温度(実測値)を造形制御装置140にフィードバックする。
【0060】
金型123は、所定時間、所定の熱硬化温度に保持された後、測定対象部材WPを取り出すため開かれる。この時、金型123が開かれたことを通知する信号が造形装置120から造形制御装置140へ送られる。
【0061】
造形制御装置140は、金型123が開かれた信号を受け、造形物搬出機130および測定装置100の測定制御部70に、金型123から測定対象部材WPを取り出す信号を送る(S03)。また、造形制御装置140が、金型123を開く信号を造形装置120に送る態様でもよい。
【0062】
造形物搬出機130は、造形装置120の金型123から測定対象部材WPを取り出し、測定装置100の内部に搬入する(S04)。測定制御部70は、測定対象部材WPを取り出す信号もしくは金型123を開く信号を受け、経過時間のカウントを開始する。
【0063】
測定装置100の内部において、測定対象部材WPは、背景像10と撮像部50との間に搬送され、撮像部50は、背景像10の撮像を開始する(S05)。測定制御部70においてカウントされる経過時間の第1時点T1において、測定制御部70は、撮像部50から第1像データDi1を取得する。続いて、測定制御部70は、第2時点T2において、第2像データDi2を取得し、第3時点T3において、第3像データDi3を取得する。さらに、測定制御部70は、第1~第3像データDi1、Di2、Di3に基づいて、演算データDd(図4参照)を出力する。
【0064】
造形制御装置140は、測定制御部70から出力される演算データDdに基づいて、測定対象部材WPの良否判定を実施する(S06)。造形制御装置140は、記憶装置150から良否判定の判定基準を取得する。記憶装置150は、例えば、過去の測定対象部材WPの演算データDdと、それらの常温における特性測定データと、に基づいて設定される判定基準を記憶している。記憶装置150は、例えば、画像領域Ri1~Ri6のそれぞれにおける判定基準を記憶し、平均画像差分Δλavの空間的な分布を踏まえた良否判定を実施してもよい。
【0065】
造形制御装置140は、測定対象部材WPが不良品の場合、造形条件を更新する。例えば、造形装置120に供給される造形材料のロットの違いに起因する製造条件の不適合、例えば、好適な熱硬化温度の違いなどがあると、測定対象部材WPの屈折率が所定の値にならず、不良品となる場合がある。造形制御装置140は、例えば、不良品とされた測定対象部材WPの演算データDd、造形装置120から得られる温度などのデータ、および、造形条件と測定対象部材WPの特性の相関関係を統計的に処理し、造形条件を更新し、記憶装置150に保存する。造形条件の更新は、例えば、測定対象部材WPの不良判定が2以上続いた場合、もしくは、測定対象部材WPの歩留りが基準を下回るおそれが生じた場合などに実施される。
【0066】
造形制御装置140は、測定対象部材WPの良品数をカウントする(S07)。測定対象部材WPの良品数が所定の数量に達した場合に、造形制御装置140は、測定対象部材WPの製作を終了する。測定対象部材WPの良品数が所定の数量に達していない場合には、造形制御装置140は、次の造形(S02)を指示する。
【0067】
このように、造形システム200は、熱硬化温度などの造形条件と測定対象部材WPの特性の相関関係を記憶した記憶装置150を備える。また、記憶装置150は、造形条件と、測定装置100から取得される測定対象部材WPの空間的特性分布との関係も保持する。これにより、造形制御装置140は、測定対象部材WPの形状に応じた造形条件を容易に設定することが可能である。また、金型123を変更する際の造形条件の設定に要する時間を短縮することも可能である。
【0068】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0069】
(付記1)
背景像と、
前記背景像を撮像する撮像部と、
前記背景像と前記撮像部との間に位置する測定対象部材を通過する光を介して前記背景像を撮像した第1乃至第3像データを前記撮像部から取得する測定制御部と、
を備え、
前記第1像データは、前記背景像が前記撮像部および前記測定対象部材に対する第1相対位置にある第1時点における撮像により生成され、
前記第2像データは、前記背景像が前記撮像部および前記測定対象部材に対する第2相対位置にある第2時点であって、前記第1時点よりも後の第2時点における撮像により生成され、
前記第3像データは、前記背景像が前記測定対象部材の対する第3相対位置にある第3時点であって、前記第2時点よりも後の第3時点における撮像により生成され、
前記測定制御部は、前記第1乃至第3像データ中における前記第1相対位置にある前記背景像と前記第2相対位置にある前記背景像との間の第1画像移動量、および、前記第2相対位置にある前記背景像と前記第3相対位置にある前記背景像との間の第2画像移動量を導出する、測定装置。
(付記2)
前記第1画像移動量と、前記背景像の前記第1相対位置から前記第2相対位置への第1相対移動量と、の差を前記第1相対移動量で除することにより第1画像差分を測定し、
前記第2画像移動量と、前記背景像の前記第2相対位置から前記第3相対位置への第2相対移動量と、の差を前記第2相対移動量で除することにより第2画像差分を測定する、付記1記載の測定装置。
(付記3)
前記背景像の前記第1相対位置は、前記第3相対位置に一致する、付記1または2に記載の測定装置。
(付記4)
前記測定対象部材の温度は、前記第1時点において第1温度であり、前記第2時点において前記第1温度よりも低い第2温度であり、前記第3時点において前記第2温度よりも低く、常温よりも高い第3温度であり、
前記第1温度と前記第2温度の差は、前記第2温度と前記第3温度との差と同じである、付記1乃至3のいずれか1つに記載の測定装置。
(付記5)
前記第1乃至第3像データは、それぞれ、前記背景像を撮像した画像の複数の画素により構成され、
前記第1相対位置と前記第2相対位置との間における前記背景像の前記第1および第2画像移動量は、前記画素のサイズよりも大きい、付記1乃至4のいずれか1つに記載の測定装置。
(付記6)
前記背景像の前記第1相対位置から前記第2相対位置に向かう方向および前記第2相対位置から前記第3相対位置に向かう方向は、前記背景像の前記撮像部に向き合う面に平行である、付記1乃至5にいずれか1つに記載の測定装置。
【符号の説明】
【0070】
10…背景像、 10D…位置変更部、 11D…背景像制御部、 15D…測定対象部材制御部、 18a…光源、 40…放射型温度計、 50…撮像部、 51D…撮像制御部、 60…環境温度制御部、 70…測定制御部、 71…データ取得部、 72…演算部、 78…撮像位置制御部、 100…測定装置、 120…造形装置、 123…金型、 125…温度制御部、 130…造形物搬出機、 140…造形制御装置、 145…入力部、 150…記憶装置、 200…造形システム、 Dd…演算データ、 Di1…第1像データ、 Di2…第2像データ、 Di3…第3像データ、 Ri1~Ri6…画像領域、 WP…測定対象部材、 Δλ1、Δλ2、Δλav…画像差分、 Δx1…相対移動量、
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7