IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ サンデン株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-車両用空調装置 図1
  • 特開-車両用空調装置 図2
  • 特開-車両用空調装置 図3
  • 特開-車両用空調装置 図4
  • 特開-車両用空調装置 図5
  • 特開-車両用空調装置 図6
  • 特開-車両用空調装置 図7
  • 特開-車両用空調装置 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135258
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】車両用空調装置
(51)【国際特許分類】
   B60H 3/00 20060101AFI20240927BHJP
   B60H 3/02 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
B60H3/00 A
B60H3/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023045855
(22)【出願日】2023-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000001845
【氏名又は名称】サンデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100168642
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 充司
(74)【代理人】
【識別番号】100217076
【弁理士】
【氏名又は名称】宅間 邦俊
(72)【発明者】
【氏名】粕谷 潤一郎
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 英男
【テーマコード(参考)】
3L211
【Fターム(参考)】
3L211BA32
3L211BA42
3L211DA56
3L211DA63
3L211DA72
3L211FA37
3L211GA72
(57)【要約】
【課題】車室内空調時の窓ガラスの防曇性能を向上させつつ消費エネルギーを低減できる車両用空調装置を提供する。
【解決手段】車両用空調装置1は、空調ケース21内に、外気入口22からデフロスタ出口24に空気を導く第1通路P1と、内気入口23からフェイス出口25およびフット出口26に空気を導く第2通路P2とが形成されている。第1および第2通路P1,P2内には、ブロアファン31、蒸発器32およびヒータコア33が設けられており、ヒータコア33の下流側には、空気中の水分を収着および放出するデシカントロータ34が第1および第2通路に亘って設けられている。デシカントロータ34は、第1通路を流れる空気が通過する部分と、第2通路を流れる空気が通過する部分とが入れ替わるように構成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外気を導入する外気入口および内気を導入する内気入口が一端側に形成され、かつ、車両の窓ガラスに向けて空気を吹き出すデフロスタ出口、並びに、車室内の乗員に向けて空気を吹き出すフェイス出口およびフット出口が他端側に形成されている空調ケースと、
前記空調ケース内に、前記外気入口から前記デフロスタ出口に空気を導く第1通路と、前記内気入口から前記フェイス出口および前記フット出口に空気を導く第2通路とを形成する仕切板と、
前記第1および第2通路内に、前記一端側から前記他端側へ向かう空気の流れを発生させる送風部と、
前記第1および第2通路を流れる空気と熱交換する熱交換部と、
を含む車両用空調装置であって、
前記空調ケース内における前記熱交換部の下流側に、前記第1および第2通路に亘って設けられ、空気中の水分を収着および放出する除湿部を含み、
前記除湿部は、前記第1通路を流れる空気が通過する部分と、前記第2通路を流れる空気が通過する部分とが入れ替わるように構成されている、車両用空調装置。
【請求項2】
前記熱交換部は、前記第1および第2通路を流れる空気を加熱する加熱用熱交換器を有し、
前記第1および第2通路ごとに、前記加熱用熱交換器を通過させる空気の流量と前記加熱用熱交換器のバイパス通路を通過させる空気の流量の割合を調節する加熱風量調節部を含む、請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項3】
前記熱交換部は、前記第1および第2通路を流れる空気を冷却する冷却用熱交換器を有し、
前記第1通路内における前記冷却用熱交換器の上流側に配置され、前記第1通路を流れる空気を前記冷却用熱交換器に導入するか、または前記冷却用熱交換器のバイパス通路に導入するかを切り替えるダンパ部を含む、請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項4】
前記除湿部は、高分子収着材を用いて形成されている、請求項1に記載の車両用空調装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車室内を空調する車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の車両用空調装置として、例えば、特許文献1には、外気吸入口からの外気が第1空気通路を介してデフロスタ開口部に導かれるとともに、内気吸入口からの内気が第2空気通路を介してフット開口部に導かれる車両用空調装置が開示されている。この車両用空調装置は、第1空気通路に、この第1空気通路内に内気を導入する内気通路を設け、この内気通路内に、空気中の水分を除湿する乾燥剤ユニットを設けることにより、車室内暖房時の窓ガラスの防曇性能の向上と暖房能力の向上を両立できるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9-156350号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の車両用空調装置では、乾燥剤ユニットが外気吸入口および内気吸入口の付近に設置されており、乾燥剤ユニットが収着(吸着)した水分を放出させて乾燥剤ユニットの再生を行うために、乾燥剤ユニットの上流側に空気を加熱する専用のヒータが設けられている。このヒータは、第1および第2空気通路内の空気を加熱するヒータコア(暖房用熱交換器)とは別に設置する必要がある。このため、暖房熱源を確保しにくい電気自動車等の車両では、乾燥剤ユニットの再生専用ヒータの運転による消費エネルギーの増加が問題になる可能性があり、改善の余地があった。
【0005】
本発明は上記の点に着目してなされたもので、車室内空調時の窓ガラスの防曇性能を向上させつつ消費エネルギーを低減できる車両用空調装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため本発明の一態様は、外気を導入する外気入口および内気を導入する内気入口が一端側に形成され、かつ、車両の窓ガラスに向けて空気を吹き出すデフロスタ出口、並びに、車室内の乗員に向けて空気を吹き出すフェイス出口およびフット出口が他端側に形成されている空調ケースと、前記空調ケース内に、前記外気入口から前記デフロスタ出口に空気を導く第1通路と、前記内気入口から前記フェイス出口および前記フット出口に空気を導く第2通路とを形成する仕切板と、前記第1および第2通路内に、前記一端側から前記他端側へ向かう空気の流れを発生させる送風部と、前記第1および第2通路を流れる空気と熱交換する熱交換部と、を含む車両用空調装置を提供する。この車両用空調装置は、前記空調ケース内における前記熱交換部の下流側に、前記第1および第2通路に亘って設けられ、空気中の水分を収着および放出する除湿部を含み、前記除湿部は、前記第1通路を流れる空気が通過する部分と、前記第2通路を流れる空気が通過する部分とが入れ替わるように構成されている。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様に係る車両用空調装置によれば、除湿部を再生するための専用のヒータが不要になるので、車室内空調時の窓ガラスの防曇性能を向上させつつ消費エネルギーを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態による車両用空調装置の全体構成を示す概略図である。
図2】第1実施形態による車両用空調装置の電気的構成を示すブロック図である。
図3】第1実施形態による車両用空調装置における暖房時の動作を説明する図である。
図4図3において第1および第2通路を流れる空気の状態の変化を空気線図上にプロットした図である。
図5】第2実施形態による車両用空調装置の全体構成を示す概略図である。
図6】第2実施形態による車両用空調装置の電気的構成を示すブロック図である。
図7】第2実施形態による車両用空調装置における冷房時の動作を説明する図である。
図8図7において第1および第2通路を流れる空気の状態の変化を空気線図上にプロットした図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照しながら詳細に説明する。
図1および図2は、本発明の第1実施形態に係る車両用空調装置の構成を示している。図1は、第1実施形態による車両用空調装置1の全体構成の概略図であり、図2は、第1実施形態による車両用空調装置1の電気的構成を示すブロック図である。
【0010】
第1実施形態による車両用空調装置1は、自動車などの車両に搭載され、車両の車室内に空調風を吹き出すことで車室内を空調するように構成されている。車両用空調装置1は、空調ユニット2(図1)と空調制御装置5(図2)とを含む。
【0011】
空調ユニット2は、車両(図示せず)の車室内の前部に配置されており、空調ケース21を含んでいる。空調ケース21の一端側(図1の左側)には、外気入口22および内気入口23が形成されている。外気入口22は、車室外空気(以下「外気」という)を空調ケース21内に導入するための吸込口である。外気入口22は、外気ダクト22Aを介して空調ケース21内の空間に連通している。内気入口23は、車室内空気(以下「内気」という)を空調ケース21内に導入するための吸込口である。内気入口23は、内気ダクト23Aを介して空調ケース21内の空間に連通している。
【0012】
外気入口22および内気入口23には、外気ドア22Bおよび内気ドア23Bがそれぞれ設けられている。外気ドア22Bおよび内気ドア23Bは、空調制御装置5からの制御信号に基づいて動作する各々に対応した電動アクチュエータ61,62によってそれぞれ駆動される(図2)。外気ドア22Bおよび内気ドア23Bは、各々の回動位置の組み合わせに応じて、車両用空調装置1の吸込口モードを、内気モード、外気モードまたは内外気モードに切り替えることが可能に構成されている。例えば、図1に実線で示すように、外気ドア22Bが外気入口22とは反対側まで回動して外気入口22を開放した位置にあり、内気ドア23Bが内気入口23を開放した位置にある場合、車両用空調装置1の吸込口モードは内外気モードとなる。
【0013】
空調ケース21の他端側(図1の右側)には、デフロスタ出口24、フェイス出口25およびフット出口26が形成されている。デフロスタ出口24は、空調ケース21内の空気を車両の窓ガラス(図示せず)に向けて吹き出すための吹出口である。デフロスタ出口24は、デフロスタダクト24Aを介して空調ケース21内の空間に連通している。フェイス出口25は、空調ケース21内の空気を車室内の乗員の上半身に向けて吹き出すための吹出口である。フェイス出口25は、フェイスダクト25Aを介して空調ケース21内の空間に連通している。フット出口26は、空調ケース21内の空気を車室内の乗員の足元に向けて吹き出すための吹出口である。フット出口26は、フットダクト26Aを介して空調ケース21内の空間に連通している。
【0014】
フェイス出口25およびフット出口26には、フェイスドア25Bおよびフットドア26Bがそれぞれ設けられている。また、デフロスタ出口24とフット出口26の間の空間には、出口切替ドア27が配置されている。フェイスドア25B、フットドア26Bおよび出口切替ドア27は、空調制御装置5からの制御信号に基づいて動作する各々に対応した電動アクチュエータ63,64,65によってそれぞれ駆動される(図2)。フェイスドア25B、フットドア26Bおよび出口切替ドア27は、各々の回動位置の組み合わせに応じて、車両用空調装置1の吹出口モードを、デフロスタモード、フェイスモード、フットモード、フェイス・フットモードまたはデフロスタ・フットモードに切り替えることが可能に構成されている。例えば、図1に実線で示すように、フェイスドア25Bがフェイス出口25を閉塞した位置にあり、フットドア26Bがフット出口26を開放した位置にあり、出口切替ドア27がデフロスタ出口24およびフット出口26の双方から離れた中立の位置にある場合、車両用空調装置1の吹出口モードは、デフロスタ・フットモードとなる。
【0015】
空調ケース21内には、空調ケース21の内壁および複数の仕切板28によって区画された第1通路P1および第2通路P2が形成されている(図1)。第1通路P1は、外気入口22からデフロスタ出口24に空気を導く通路である。第2通路P2は、内気入口23からフェイス出口25およびフット出口26に空気を導く通路である。つまり、空調ケース21内の空間は、複数の仕切板28により、図1で概ね上側に位置する第1通路P1と概ね下側に位置する第2通路P2との二層に仕切られている。
【0016】
空調ケース21内における一端側部位には、第1および第2通路P1,P2に亘ってブロアファン31が設けられている(図1)。ブロアファン31は、電動モータを有した電動送風機である。ブロアファン31(電動モータ)は、空調制御装置5からの制御信号に基づいて動作し(図2)、空調ケース21の一端側から他端側へ向かう空気の流れを発生させる。つまり、ブロアファン31は、外気入口22から導入された外気および/または内気入口23から導入された内気を車室内に向けて送風するように構成されている。なお、第1実施形態では、ブロアファン31が本発明の「送風部」に相当する。
【0017】
空調ケース21内におけるブロアファン31の下流側には、第1および第2通路P1,P2に亘って蒸発器32が設けられている。蒸発器32は、ここでは図示を省略するが、圧縮機、凝縮器、液分離器および膨張弁などと共に、冷媒が循環する冷媒循環路に配置されて冷媒回路(冷凍サイクル)を構成している。蒸発器32は、圧縮機の動作に伴って、冷媒と第1および第2通路P1,P2を流れる空気とを熱交換させることにより、第1および第2通路P1,P2を流れる空気を冷却するように構成されている。つまり、蒸発器32は、第1および第2通路P1,P2を流れる空気を冷却する冷却用熱交換器として機能する。なお、蒸発器32(冷媒回路の圧縮機)は、空調制御装置5からの制御信号に基づいて動作する(図2)。
【0018】
空調ケース21内における蒸発器32の下流側には、第1および第2通路P1,P2に亘ってヒータコア33が設けられている。また、ヒータコア33の周辺(図1でヒータコア33の背後)には、第1通路P1に対応した第1バイパス通路B1(点線)と、第2通路P2に対応した第2バイパス通路B2(点線)とが形成されている。第1バイパス通路B1は、第1通路P1を流れる空気がヒータコア33をバイパスするための通路である。第2バイパス通路B2は、第2通路P2を流れる空気がヒータコア33をバイパスするための通路である。
【0019】
ヒータコア33は、第1および第2通路P1,P2(第1および第2バイパス通路B1,B2を除く)を流れる空気を加熱する加熱器である。特に限定されないが、第1実施形態において、ヒータコア33は、ここでは図示を省略するが、電気ヒータを内蔵した熱媒体加熱装置と共に、電動ポンプによって水などの熱媒体が循環する熱媒体循環路に配置されている。そして、ヒータコア33は、熱媒体加熱装置の電気ヒータによって加熱された熱媒体と第1および第2通路P1,P2(第1および第2バイパス通路B1,B2を除く)をそれぞれ流れる空気とを熱交換させることで、当該空気を加熱するように構成されている。つまり、ヒータコア33は、第1および第2通路P1,P2(第1および第2バイパス通路B1,B2を除く)をそれぞれ流れる空気を加熱する加熱用熱交換器として機能する。ヒータコア33(熱媒体加熱装置の電気ヒータおよび電動ポンプ)は、空調制御装置5からの制御信号に基づいて動作する(図2)。
【0020】
ヒータコア33の上流側には、第1および第2通路P1,P2ごとに、第1および第2エアミックスドア33A,33Bが設けられている。第1および第2エアミックスドア33A,33Bは、空調制御装置5からの制御信号に基づいて動作する各々に対応した電動アクチュエータ66,67によってそれぞれ駆動される(図2)。第1エアミックスドア33Aは、その回動位置に応じて、第1通路P1を流れる空気のうち、ヒータコア33を通過させる空気の流量(風量)と第1バイパス通路B1を通過させる空気の流量(風量)の割合(風量割合)を調節する。第2エアミックスドア33Bは、その回動位置に応じて、第2通路P2を流れる空気のうち、ヒータコア33を通過させる空気の流量(風量)と第2バイパス通路B2を通過させる空気の流量(風量)の割合(風量割合)を調節する。なお、第1実施形態では、第1および第2エアミックスドア33A,33Bが本発明の「加熱風量調節部」に相当する。
【0021】
空調ケース21内におけるヒータコア33の下流側には、第1および第2通路P1,P2に亘ってデシカントロータ34が設けられている。デシカントロータ34は、空気中の水分を収着および放出することが可能である。ここでの「収着」とは、空気中の水分が収着材の表面に吸着され、またその内部にも吸収されることを意味し、吸着および吸収が同時に起こる場合と、吸着または吸収の区別が明確でない場合とを含む。デシカントロータ34は、第1通路P1を流れる空気が通過する部分と、第2通路P2を流れる空気が通過する部分とが入れ替わるように構成されている。
【0022】
具体的に、デシカントロータ34は、例えば、高分子収着材が塗布された多孔質円筒形状のロータとするのが好ましい。高分子収着材は、例えば、ポリアクリル酸ナトリウム架橋体から構成され、シリカゲルやゼオライトなどの収着材に比べて、水分を吸収する速度が高く、保持する水分を低い加熱温度で脱離(放出)することができ、かつ、水分を長時間保持することができる。このような高分子収着材を用いて形成されたデシカントロータ34は、低温での再生能力に優れた除湿手段となる。
【0023】
上記デシカントロータ34の円筒軸は、第1および第2通路P1,P2内の空気の流れ方向に沿って配置されている。デシカントロータ34は、空調制御装置5からの制御信号に基づいて動作する電動アクチュエータ(モータ)68により、上記円筒軸を中心にして所定の速度で回転駆動される(図2)。デシカントロータ34の回転速度は、特に限定されないが、例えば1時間当たり10~30回転程度とするのがよい。なお、第1実施形態では、デシカントロータ34が本発明の「除湿部」に相当する。
【0024】
空調制御装置5(図2)は、CPU、ROMやRAMなどのメモリ、および、I/Oポートなどを含むマイクロコンピュータで構成されている。また、空調制御装置5は、ROMに記憶された空調制御プログラム、入力される各種センサの検出信号および入力される各種スイッチの操作信号に基づいて各種の演算等を行い、空調制御装置5に電気的に接続された各種機器、例えば、前述したブロアファン31や蒸発器32(冷媒回路の圧縮機)、ヒータコア33(熱媒体加熱装置の電気ヒータおよび電動ポンプ)、各電動アクチュエータ61~68などに制御信号を出力して、これらの機器の動作を制御するように構成されている。
【0025】
空調制御装置5に接続される各種センサは、例えば、空調ユニット2内外の各所に設置されている温度センサ群71および湿度センサ群72、車室内の日照量を検出する日照センサ73などを含む。温度センサ群71は、外気の温度を検出する外気温センサ、内気の温度を検出する内気温センサ、デシカントロータ34の前後における空気の温度を検出する温度センサ等を有している。湿度センサ群72は、外気の湿度を検出する外気湿度センサ、内気の湿度を検出する内気湿度センサ、デシカントロータ34の前後における空気の湿度を検出する湿度センサ等を有している。
【0026】
また、空調制御装置5に接続される各種スイッチは、乗員が操作可能なように、例えば車室内の前部に設置された操作パネル74に設けられている。操作パネル74には、例えば、車両用空調装置1をON/OFFするON・OFFスイッチ、車両用空調装置1の自動制御をON/OFFするAUTOスイッチ、暖房機能をON/OFFするHEATスイッチ、冷房機能をON/OFFするA/Cスイッチ、吸込口モードを切り替える吸込口モードスイッチ、吹出口モードを切り替える吹出口モードスイッチ、ブロアファン31の風量を設定する風量設定スイッチなどが設けられている。
【0027】
次に、第1実施形態に係る車両用空調装置1の動作について説明する。
一般に、外気温が低くなる冬季などにおいて、車両用空調装置の暖房機能をONにすると、外気と内気の温度差が大きくなって車両の窓ガラスに結露が生じ易くなる。この暖房時の結露による窓ガラスの曇りを防ぐためには、車室内に外気を導入するとともに空調装置の吹出口モードをデフロスタ・フットモードにするのが有効である。以下では、第1実施形態の車両用空調装置1が、上記のような状況(暖房機能ON、内外気モードおよびデフロスタ・フットモード)で使用される場合の窓ガラスの防曇性能と暖房能力について詳しく説明する。
【0028】
図3は、第1実施形態の車両用空調装置1における暖房時の動作を説明する図である。図3では、第1通路P1内の空気(外気)の流れが白抜き矢印で表され、第2通路P2の空気(内気)の流れが黒抜き矢印で表されている。また、図4は、図3において第1および第2通路P1,P2を流れる空気の状態の変化を空気線図上にプロットした図である。図4の空気線図において、横軸は乾球温度[℃]を示し、縦軸は絶対湿度[kg/kg]を示している。
【0029】
前述したように構成された第1実施形態の車両用空調装置1では、操作パネル74のON・OFFスイッチがONされることにより車両用空調装置1の各部が起動する。そして、操作パネル74のHEATスイッチがONされて風量設定スイッチが所望の風量に設定されるか、または、AUTOスイッチがONされることにより、空調制御装置5からの制御信号に従ってブロアファン31およびヒータコア33が作動して暖房機能がONとなる。なお、A/CスイッチはOFFされており蒸発器32は作動していない。
【0030】
また、吸込口モード切替スイッチが内外気モードに設定されることにより、空調制御装置5からの制御信号に従って電動アクチュエータ61,62が駆動されて、外気ドア22Bおよび内気ドア23Bが図3に実線で示すような位置に制御される。すなわち、外気ドア22Bが、外気入口22とは反対側のまで回動して外気入口22を開放した位置となり、内気ドア23Bが内気入口23を開放した位置となる。
【0031】
さらに、吹出口モードスイッチがデフロスタ・フットモードに設定されることにより、空調制御装置5からの制御信号に従って電動アクチュエータ63~65が駆動されて、フェイスドア25B、フットドア26Bおよび出口切替ドア27が図3に実線で示す位置に制御される。すなわち、フェイスドア25Bがフェイス出口25を閉塞した位置となり、フットドア26Bがフット出口26を開放した位置となり、出口切替ドア27が中立の位置となる。
【0032】
このとき、第1通路P1におけるヒータコア33の上流側に配置された第1エアミックスドア33Aは、空調制御装置5からの制御信号に従って電動アクチュエータ66が駆動されることで、第1通路P1を流れる空気の全量が第1バイパス通路B1を通るようにする位置となる(図3の白抜き矢印)。一方、第2通路P2におけるヒータコア33の上流側に配置された第2エアミックスドア33Bは、空調制御装置5からの制御信号に従って電動アクチュエータ67が駆動されることで、第2通路P2を流れる空気の全量がヒータコア33を通るようにする位置となる(図3の黒抜き矢印)。なお、第1通路P1を流れる空気の流量(風量)と、第2通路P2を流れる空気の流量(風量)の割合は1:1に設定されているものとする。
【0033】
上記のような状態に制御された車両用空調装置1に対して、ここでは例えば、温度が5℃で相対湿度が50%の状態にある外気が、外気入口22から外気ダクト22Aを介して第1通路P1内に導入されるとともに、温度が25℃で相対湿度が30%の状態にある内気が、内気入口23から内気ダクト23Aを介して第2通路P2内に導入されるような状況を想定して、車両用空調装置1の動作を具体的に説明する。なお、以下の説明では、図3および図4に示すように、外気入口22付近における空気の状態(外気の温度および相対湿度)を「A1-1(5℃,RH50%)」と表記し、内気入口23付近における空気の状態(内気の温度および相対湿度)を「A2-1(25℃,RH30%)」と表記する。また、温度センサ群71および湿度センサ群72により第1および第2通路P1,P2上の各位置でそれぞれ検出される空気の状態A1-1~A1-4,A2-1~A2-4についても上記と同様な表記方法とする。
【0034】
外気入口22から外気ダクト22Aを介して第1通路P1内に導入された外気は、ブロアファン31および蒸発器32を順に通過して第1エアミックスドア33Aに到達する。そして、第1エアミックスドア33Aにより第1バイパス通路B1の側に導かれた空気は、ヒータコア33をバイパスしてデシカントロータ34に到達する。デシカントロータ34に導入される前の空気の状態A1-2は、蒸発器32が作動していないので冷却されることなく蒸発器32を通過した後に、作動中のヒータコア33をバイパスしているため、外気入口22付近の状態から殆ど変化せず、温度が5℃で相対湿度が50%の状態(A1-2(5℃,RH50%))となる。
【0035】
このような比較的低温で高湿度な空気が、デシカントロータ34における第1通路P1と重なる領域に導入されることで、空気中の水分が当該領域に塗布された高分子収着材に収着されて除湿される。このとき、空気の湿度が低下することにより該空気の温度は若干上昇する。ここでは、デシカントロータ34を通過した後の空気の状態A1-3は、温度が5℃上昇して10℃となり、相対湿度が40ポイント低下して10%となる(A1-3(10℃,RH10%))。このようなデシカントロータ34の前後での空気の状態の変化は、図4の空気線図における左下部分に示すように、絶対湿度の低下に伴って乾球温度が上昇する右下がりの変化として表現される。
【0036】
デシカントロータ34を通過して除湿された空気は、中立位置にある出口切替ドア27および仕切板28によってデフロスタダクト24A側に導かれ、デフロスタ出口24から車両の窓ガラスに向けて吹き出される。これにより、窓ガラスの車室内側面には、外気温(5℃)に比較的近い温度(10℃)で、外気の湿度(50%)よりも低い湿度(10%)の空気が到達し、外気をそのまま吹き出すよりも絶対湿度が低い空気(図4)を供給できるようになるので、窓ガラスの曇りを防止することが可能になる。なお、デフロスタ出口24から吹き出された空気は、フロントガラスから天井に沿って車室内後方に運ばれ、換気として車室外に排出される。
【0037】
上記のような第1通路P1を流れる空気(外気)に対して、内気入口23から内気ダクト23Aを介して第2通路P2内に導入された内気は、ブロアファン31および蒸発器32を順に通過して第2エアミックスドア33Bに到達する。そして、第2エアミックスドア33Bによりヒータコア33の側に導かれた空気は、ヒータコア33内を通ってデシカントロータ34に到達する。デシカントロータ34に導入される前の空気の状態A2-2は、蒸発器32が作動していないので冷却されることなく蒸発器32を通過した後に、作動中のヒータコア33を通過する際に加熱されることにより、温度が50℃で相対湿度が8%の状態(A2-2(50℃,RH8%))となる。このような内気入口23からデシカントロータ34の前までの空気の状態の変化は、図4の空気線図における右下部分に示すように、絶対湿度が一定の状態での乾球温度の上昇に伴って相対湿度が低下する右方向への変化として表現される。
【0038】
このような比較的高温で低湿度な空気が、デシカントロータ34における第2通路P2と重なる領域に導入される。デシカントロータ34は、空調制御装置5からの制御信号に従って電動アクチュエータ68が駆動されることにより、所定の速度(例えば1時間当たり10~30回転)で回転移動している。この回転移動によってデシカントロータ34における第2通路P2と重なる領域には、前述した第1通路P1を流れる空気が通過して水分を収着した部分が順次送り込まれる。このため、第2通路P2を流れてヒータコア33で加熱された空気がデシカントロータ34内を通ることにより、第1通路P1側で収着された水分が高分子収着材から脱離してデシカントロータ34の再生が行われる。デシカントロータ34の再生された部分は、デシカントロータ34の回転により第1通路P1と重なる領域に再び送り込まれる。
【0039】
デシカントロータ34における第2通路P2と重なる領域を通過した空気は、高分子収着材から脱離された水分により加湿される。このとき、空気の湿度が上昇することにより該空気の温度は若干低下する。ここでは、デシカントロータ34を通過した後の空気の状態A2-3は、温度が5℃低下して45℃となり、相対湿度が5ポイント上昇して13%となる(A2-3(45℃,RH13%))。このようなデシカントロータ34の前後での空気の状態の変化は、図4の空気線図において、絶対湿度の上昇に伴って乾球温度が低下する左上がりの変化として表現される。
【0040】
デシカントロータ34を通過して加湿された空気は、中立位置にある出口切替ドア27、仕切板28、および閉位置にあるフェイスドア25Bによって、フットダクト26A側に導かれ、フット出口26から車室内の乗員の足元に向けて吹き出される。フット出口26から車室内に吹き出された空気の状態A2-4は、車室内全体の空気と混ざり合うことで、暖房時の設定温度に対応した25℃となり、相対湿度が40%となる(A2-4(25℃,RH40%))。このようなデシカントロータ34の通過後から車室内までの空気の状態の変化は、図4の空気線図において、絶対湿度が一定の状態での乾球温度の低下に伴って相対湿度が上昇する左方向への変化として表現される。これにより、車室内の空気の相対湿度が30%から40%に上がることにより、乾燥に起因した乗員の不快感が改善される。
【0041】
以上説明したように第1実施形態の車両用空調装置1では、空調ケース21内におけるヒータコア33の下流側に、第1および第2通路P1,P2に亘ってデシカントロータ34が設けられ、該デシカントロータ34における第1通路P1を流れる空気が通過する部分と第2通路P2を流れる空気が通過する部分とが入れ替わるように構成されている。このような構成の車両用空調装置1によれば、第1および第2通路P1,P2をそれぞれ流れる空気が、ヒータコア33により温度差を生じさせた状態で、デシカントロータ34に導入されることによって、高分子収着材による水分の収着(吸着)と脱離(放出)が循環的に起きて、デシカントロータ34の再生処理が行われるようになる。これにより、上述した従来技術のように乾燥剤ユニットの再生専用のヒータを別途設置することが不要になるので、暖房時における窓ガラスの防曇性能を向上させつつ消費エネルギーの低減を図ることが可能になる。
【0042】
また、第1実施形態の車両用空調装置1では、第1および第2エアミックスドア33A,33Bにより、第1および第2通路P1,P2ごとに、ヒータコア33を通過させる空気の流量とヒータコア33のバイパス通路B1,B2を通過させる空気の流量の割合が調節される。これにより、第1および第2通路P1,P2をそれぞれ通ってデシカントロータ34に導入される各空気に温度差を確実に発生させることができるので、デシカントロータ34の再生処理を効率良く行いながら、窓ガラスの防曇性能をより向上させるとともに、消費エネルギーを効果的に低減することが可能になる。
【0043】
さらに、第1実施形態の車両用空調装置1では、デシカントロータ34が高分子収着材を用いて形成されている。このような低温での再生能力に優れた高分子収着材を使用することにより、例えば0℃のような最低温であっても、高分子収着材に収着された水分を脱離することが可能になる。このように低温での水分の脱離が可能になれば、第2通路P2側でデシカントロータ34に導入される空気(ヒータコア33を通過した空気)の温度設定をより低くすることができるので、消費エネルギーを更に低減することが可能になる。
【0044】
次に、本発明の第2実施形態に係る車両用空調装置について説明する。
上述した第1実施形態では、外気温が低くなる冬季などにおいて暖房機能をONにした場合に、窓ガラスの曇りを防ぎながら暖房時の消費エネルギーを低減可能にする車両用空調装置1の構成例について説明した。このような第1実施形態の車両用空調装置1は、外気温が高くなる夏季などにおいて冷房機能をON(暖房機能をOFF)にした場合には、乗員の快適性を向上させるために車室内を低湿度にすることが難しくなる。
【0045】
すなわち、車両用空調装置1が冷房で使用される場合、第1通路P1を流れる空気は、蒸発器32で冷却されて低温の状態でデシカントロータ34に到達する。このため、デシカントロータ34における第2通路P2側の部分で収着された水分を第1通路P1側の部分で脱離させる再生処理ができない。そこで、第2実施形態では、冷房時には車室内を除湿できるように改良した車両用空調装置の構成例について説明する。
【0046】
図5は、第2実施形態による車両用空調装置1’の全体構成の概略図である。また、図6は、第2実施形態による車両用空調装置1’の電気的構成を示すブロック図である。なお、上述した第1実施形態の構成と同様の部分には同じ符号を付して説明を省略する。
【0047】
図5および図6において、第2実施形態による車両用空調装置1’の構成が上述の図1および図2に示した第1実施形態による車両用空調装置1の構成と相違する部分は、第1通路P1を流れる空気が蒸発器32をバイパスする第3バイパス通路B3が設けられ、かつ、第1通路P1内における蒸発器32の上流側にバイパスダンパ32Aが設置されている部分である。第2実施形態の車両用空調装置1’における上記以外の他の部分の構成は、第1実施形態の場合と同様である。
【0048】
具体的に、第3バイパス通路B3は、図5で蒸発器32の上面と空調ケース21の内壁下面との間に形成されている。換言すると、第2実施形態における蒸発器32は、上部が第1通路P1内に配置され、上下方向中間部および下部が第2通路P2内に配置されており、蒸発器32の上方側に第3バイパス通路B3が形成されている。
【0049】
バイパスダンパ32Aは、空調制御装置5からの制御信号に基づいて動作する電動アクチュエータ69によって駆動される(図6)。バイパスダンパ32Aは、その回動位置に応じて、第1通路P1を流れる空気を蒸発器32に導入するか、または第3バイパス通路B3に導入するかを切替可能に構成されている。例えば、図5に実線で示すように、バイパスダンパ32Aが蒸発器32の上部の上流側を閉塞した位置にある場合、第1通路P1を流れる空気の全量が、第3バイパス通路B3に導入されて蒸発器32をバイパスすることになる。なお、第2実施形態では、バイパスダンパ32Aが本発明の「ダンパ部」に相当する。
【0050】
上記のように構成された第2実施形態の車両用空調装置1’では、外気温が高くなる夏季などにおいて冷房機能をON(暖房機能をOFF)にした場合に、車室内に外気を導入するとともに空調装置の吹出口モードをデフロスタ・フェイスモードにして、冷房時に車室内の湿度を下げることができる。以下では、第2実施形態の車両用空調装置1’が、上記のような状況(冷房機能ON、内外気モードおよびデフロスタ・フェイスモード)で使用される場合の窓ガラスの防曇性能と冷房能力について詳しく説明する。
【0051】
図7は、第2実施形態による車両用空調装置1’における冷房時の動作を説明する図である。図7でも、上述した図3の場合と同様に、第1通路P1内の空気(外気)の流れが白抜き矢印で表され、第2通路P2の空気(内気)の流れが黒抜き矢印で表されている。また、図8は、図7において第1および第2通路P1,P2を流れる空気の状態の変化を空気線図上にプロットした図である。図8の空気線図における横軸および縦軸も、上述した図4の場合と同様である。
【0052】
第2実施形態の車両用空調装置1’では、操作パネル74のA/CスイッチがONされて風量設定スイッチが所望の風量に設定されるか、または、AUTOスイッチがONされることにより、空調制御装置5からの制御信号に従ってブロアファン31および蒸発器32が作動して冷房機能がONとなる。なお、HEATスイッチはOFFされておりヒータコア33は作動していない。
【0053】
また、吹出口モードスイッチがデフロスタ・フェイスモードに設定されることにより、空調制御装置5からの制御信号に従って電動アクチュエータ63~65が駆動されて、フェイスドア25B、フットドア26Bおよび出口切替ドア27が図3に実線で示す位置に移動する。すなわち、フェイスドア25Bがフェイス出口25を開放した位置となり、フットドア26Bがフット出口26を閉塞した位置となり、出口切替ドア27が中立の位置となる。なお、吸込口モードについては、上述した第1実施形態の場合と同様である。
【0054】
このとき、第1通路P1における蒸発器32の上流側に配置されたバイパスダンパ32Aは、空調制御装置5からの制御信号に従って電動アクチュエータ69が駆動されることで、第1通路P1を流れる空気の全量が第3バイパス通路B3を通るようにする位置となる。また、第1通路P1におけるヒータコア33の上流側に配置された第1エアミックスドア33Aは、空調制御装置5からの制御信号に従って電動アクチュエータ66が駆動されることで、第1通路P1を流れる空気の全量が第1バイパス通路B1を通るようにする位置となる(図3の白抜き矢印)。
【0055】
さらに、第2通路P2におけるヒータコア33の上流側に配置された第2エアミックスドア33Bは、空調制御装置5からの制御信号に従って電動アクチュエータ67が駆動されることで、第2通路P2を流れる空気の全量が第2バイパス通路B2を通るようにする位置となる(図3の黒抜き矢印)。なお、上述した第1実施形態の場合と同様に、第1通路P1を流れる空気の流量(風量)と第2通路P2を流れる空気の流量(風量)の割合は1:1に設定されているものとする。
【0056】
上記のような状態に制御された車両用空調装置1’に対して、ここでは例えば、温度が35℃で相対湿度が60%の状態にある外気が、外気入口22から外気ダクト22Aを介して第1通路P1内に導入される(A1-1(35℃,RH60%))とともに、温度が25℃で相対湿度が40%の状態にある内気が、内気入口23から内気ダクト23Aを介して第2通路P2内に導入される(A2-1(25℃,RH40%))状況を想定して、車両用空調装置1’の動作を具体的に説明する。
【0057】
内気入口23から内気ダクト23Aを介して第2通路P2内に導入された内気は、ブロアファン31および蒸発器32を順に通過して第2エアミックスドア33Bに到達する。そして、第2エアミックスドア33Bにより第2バイパス通路B2の側に導かれた空気は、ヒータコア33をバイパスしてデシカントロータ34に到達する。デシカントロータ34に導入される前の空気の状態A2-2は、作動中の蒸発器32により冷却されることで、温度が5℃で相対湿度が95%の状態(A2-2(5℃,RH95%))となる。
【0058】
このような内気入口23からデシカントロータ34の前までの空気の状態の変化は、図8の空気線図における左下部分に示すように、絶対湿度が一定の状態で乾球温度が低下して露点温度に達すると(図中の左方向への変化)、空気中の水分が凝縮し始めて絶対湿度が徐々に低下しながら乾球温度も低下する(図中の左下がりの変化)。これにより、デシカントロータ34の導入前の空気の相対湿度は、飽和状態に近い95%となっている。
【0059】
このような低温で高湿度な空気が、デシカントロータ34における第2通路P2と重なる領域に導入されることで、空気中の水分が当該領域に塗布された高分子収着材に収着されて除湿される。このとき、空気の湿度が低下することにより該空気の温度は若干上昇する。ここでは、デシカントロータ34を通過した後の空気の状態A2-3は、温度が3℃上昇して8℃となり、相対湿度が35ポイント低下して60%となる(A2-3(8℃,RH60%))。このようなデシカントロータ34の前後での空気の状態の変化は、図8の空気線図において、絶対湿度の低下に伴って乾球温度が上昇する右下がりの変化として表現される。
【0060】
デシカントロータ34を通過して除湿された空気は、中立位置にある出口切替ドア27、仕切板28、および閉位置にあるフットドア26Bによって、フェイスダクト25A側に導かれ、フェイス出口25から車室内の乗員の上半身に向けて吹き出される。フェイス出口25から車室内に吹き出された空気の状態A2-4は、車室内全体の空気と混ざり合うことで、冷房時の設定温度に対応した25℃となり、相対湿度が20%となる(A2-4(25℃,RH20%))。このようなデシカントロータ34の通過後から車室内までの空気の状態の変化は、図8の空気線図において、絶対湿度が一定の状態での乾球温度の上昇に伴って相対湿度が低下する右方向への変化として表現される。
【0061】
上記のような第2通路P2を流れる空気(内気)に対して、外気入口22から外気ダクト22Aを介して第1通路P1内に導入された外気は、ブロアファン31を通過した後に、バイパスダンパ32Aにより第3バイパス通路B3の側に導かれ、第3バイパス通路B3を通過して第1エアミックスドア33Aに到達する。そして、第1エアミックスドア33Aにより第1バイパス通路B1の側に導かれた空気は、ヒータコア33をバイパスしてデシカントロータ34に到達する。デシカントロータ34に導入される前の空気の状態A1-2は、蒸発器32およびヒータコア33をバイパスすることにより、外気入口22付近の状態から殆ど変化せず、温度が35℃で相対湿度が60%の状態(A1-2(35℃,RH60%))となる。
【0062】
このような比較的高温な空気が、デシカントロータ34における第1通路P1と重なる領域に導入される。デシカントロータ34は所定の速度で回転移動しているので、デシカントロータ34の第1通路P1と重なる領域には、前述した第2通路P2を流れる空気が通過して水分を収着した部分が順次送り込まれる。このため、第1通路P1を流れる高温の空気がデシカントロータ34内を通ることにより、第2通路P2側で収着された水分が高分子収着材から脱離してデシカントロータ34の再生が行われる。デシカントロータ34の再生された部分は、デシカントロータ34の回転により第2通路P2と重なる領域に再び送り込まれる。
【0063】
デシカントロータ34における第1通路P1と重なる領域を通過した空気は、高分子収着材から脱離された水分により加湿される。このとき、空気の湿度が上昇することにより該空気の温度は若干低下する。ここでは、デシカントロータ34を通過した後の空気の状態A1-3は、温度が3℃低下して32℃となり、相対湿度が15ポイント上昇して75%となる(A1-3(32℃,RH75%))。このようなデシカントロータ34の前後での空気の状態の変化は、図8の空気線図における右上に示すように、絶対湿度の上昇に伴って乾球温度が低下する左上がりの変化として表現される。
【0064】
デシカントロータ34を通過して加湿された空気は、中立位置にある出口切替ドア27および仕切板28によってデフロスタダクト24A側に導かれ、デフロスタ出口24から窓ガラスに向けて吹き出される。なお、デフロスタ出口24から吹き出された空気は、フロントガラスから天井に沿って車室内後方に運ばれ、換気として車室外に排出される。
【0065】
上記のように第2実施形態の車両用空調装置1’では、バイパスダンパ32Aにより、第1通路P1を流れる空気が第3バイパス通路B3に導入されて蒸発器32をバイパスする。これにより、第1通路P1を流れる空気が蒸発器32で冷却されることなく、比較的高温のままデシカントロータ34に導入されて、デシカントロータ34の再生処理に利用された後に、デフロスタ出口24から窓ガラスに吹き出されるようになる。よって、上述した第1実施形態では実現が困難であった冷房時における車室内の除湿が可能になり、乗員の快適性の向上を図ることができる。
【0066】
また、第2実施形態の車両用空調装置1’は、冬季などにおける暖房使用時についても、上述した第1実施形態の場合と同様な設定、配置および動作が可能であり、暖房時の窓ガラスの防曇性能を向上させつつ消費エネルギーを低減することもできる。
【0067】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した第1および第2実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて各種の変形および変更が可能である。
【0068】
例えば、上述した第1および第2実施形態では、デシカントロータ34について、高分子収着材が塗布された多孔質円筒形状のロータが回転駆動される一例を示したが、本発明における除湿部に用いられる収着材の種類、形状および駆動方式は上記一例に限定されない。例えば、シリカゲルやゼオライトなどの収着(吸着)材を多孔質部材で包んだ乾燥剤パックを、空調ケースの内部形状に合った外形を有するケース内に収納して除湿部を構成してもよい。上記ケースにおける第1通路を流れる空気が通過する部分と第2通路を流れる空気が通過する部分との入替えに関しても周知の駆動方式を適用することが可能である。
【0069】
また、上述した第1および第2実施形態では、熱交換部として蒸発器32およびヒータコア33が使用される場合を説明したが、例えば、蒸発器32に代えて、クーラントの循環路に配置されたクーラーコアを使用してもよい。このクーラーコアには、冷却されたクーラントが流通している。また、ヒータコア33に代えて、上述した冷媒回路(冷凍サイクル)と同様な冷媒が循環する冷媒循環路に配置された凝縮器を使用してもよい。この凝縮器には、高温の冷媒が流通している。
【0070】
さらに、上述した第1および第2実施形態では、ブロアファン31が蒸発器32の上流側に設置される一例を示したが、本発明の送風部は、第1および第2通路P1,P2上の任意の位置に配置することが可能である。
【符号の説明】
【0071】
1,1’…車両用空調装置、2…空調ユニット、5…空調制御装置、21…空調ケース、22…外気入口、23…内気入口、24…デフロスタ出口、25…フェイス出口、26…フット出口、28…仕切板、31…ブロアファン(送風部)、32…蒸発器(冷却用熱交換器)、32A…バイパスダンパ(ダンパ部)、33…ヒータコア(加熱用熱交換器)、33A,33B…エアミックスドア(加熱風量調節部)、34…デシカントロータ(除湿部)、61~69…電動アクチュエータ、71…温度センサ群、72…湿度センサ群、B1~B3…バイパス通路、P1…第1通路、P2…第2通路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8