(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135266
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】リードフレーム及びそれを用いた半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 23/50 20060101AFI20240927BHJP
H01L 23/28 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
H01L23/50 K
H01L23/28 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023045870
(22)【出願日】2023-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】715010864
【氏名又は名称】エイブリック株式会社
(72)【発明者】
【氏名】塚越 功二
【テーマコード(参考)】
4M109
5F067
【Fターム(参考)】
4M109AA01
4M109BA01
4M109CA21
4M109FA04
5F067AA04
5F067AB02
5F067BB01
5F067BB04
5F067BB10
5F067BD02
5F067DA11
5F067EA04
(57)【要約】
【課題】封止樹脂との密着性を向上させ、封止樹脂との界面の剥離の進行を抑制するリードフレームの提供。
【解決手段】リードフレーム100は、半導体チップが上面に固定されるダイパッド101と、平面視において、ダイパッド101の周囲に配置された複数のリード102と、を有し、リード102は、リード本体部102a、リード先端部102b及びリード本体部102aからリード先端部102bに向かって厚みが徐々に薄くなるように上面が傾斜した傾斜部102cを備え、傾斜部102cは、上面が粗面化されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体チップが上面に固定されるダイパッドと、
平面視において、前記ダイパッドの周囲に配置された複数のリードと、
を有し、
前記リードは、リード本体部、リード先端部及び前記リード本体部から前記リード先端部に向かって厚みが徐々に薄くなるように上面が傾斜した傾斜部を備え、
前記傾斜部は、上面が粗面化されていることを特徴とするリードフレーム。
【請求項2】
前記傾斜部は、平面視において円弧状に形成されている請求項1記載のリードフレーム。
【請求項3】
前記傾斜部の上面は、厚さ方向に曲面で形成されている請求項1記載のリードフレーム
【請求項4】
前記リード先端部の上面は、銀メッキ処理されている請求項1記載のリードフレーム。
【請求項5】
前記リード先端部は、平面視において、少なくとも前記リード本体部よりも幅が広い請求項1記載のリードフレーム。
【請求項6】
請求項1から5に記載のいずれかのリードフレームと、
前記リードフレームの前記ダイパッドの上面に固定され、前記リードの前記先端部とボンディングワイヤで電気的にそれぞれ接続されている複数の電極パッドを備える前記半導体素子と、
少なくとも前記半導体素子及び前記ボンディングワイヤを覆う封止樹脂と、
を有することを特徴とする半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リードフレーム及びそれを用いた半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂封止型の半導体装置の製造工程で「後工程」と称される製造プロセスでは、まずダイパッド及びリードが形成されているリードフレームを用いることが多い。
【0003】
具体的な製造プロセスとしては、ダイパッドの上面に半導体チップを固定し、その半導体チップとリードとをボンディングワイヤで電気的に接続する。次に、リードフレームを2つの金型で挟持し、金型の内部に樹脂を注入して固化させて封止した後、個片にすることで複数の半導体装置が製造される。
【0004】
このようにして製造された半導体装置は、高温と低温の温度変化を繰り返す信頼性試験を行った場合、リードと封止樹脂の熱膨張係数の差によりリードと封止樹脂の界面に応力がかかる。この応力によって、リードと封止樹脂の界面に剥離が発生し、ボンディングワイヤの断線などの不具合が発生するおそれがある。
【0005】
このリードと封止樹脂の界面の剥離の発生を抑制するために、例えば、特許文献1に記載の発明では、リードフレームの表面を粗面化することによって、リードと封止樹脂の密着性を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の一つの側面では、封止樹脂との密着性を向上させ、封止樹脂との界面の剥離の進行を抑制するリードフレームを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態におけるリードフレームは、
半導体チップが上面に固定されるダイパッドと、
平面視において、前記ダイパッドの周囲に配置された複数のリードと、を有し、
前記リードは、リード本体部、リード先端部及び前記リード本体部から前記リード先端部に向かって厚みが徐々に薄くなるように上面が傾斜した傾斜部を備え、
前記傾斜部は、上面が粗面化されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一つの側面によれば、封止樹脂との密着性を向上させ、封止樹脂との界面の剥離の進行を抑制するリードフレームを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の第1の実施形態におけるリードフレームの概略上面図。
【
図3】本発明の第1の実施形態におけるリードフレームと半導体チップとをワイヤボンディングで接続した後の状態を示す概略側面図。
【
図4】本発明の第1の実施形態におけるリードフレームを用いた半導体装置を示す概略側面図(透視図)。
【
図5A】
図5Aは、本発明の第2の実施形態におけるリードフレームの概略上面図。
【
図6A】
図6Aは、本発明の第3の実施形態におけるリードフレームの概略断面図。
【
図7】本発明の第4の実施形態におけるリードフレームの概略上面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一実施形態におけるリードフレームは、以下の知見に基づくものである。特許文献1に記載されたリードフレームは、封止樹脂との界面の密着性をある程度は向上させることができる。しかしながら、リードフレームと封止樹脂との界面の剥離は、完全に消滅するわけではない。通常、半導体装置の信頼性試験の前処理として、半導体装置は吸湿処理が行われる。このとき、リードが外部に露出する箇所のリードと封止樹脂の界面は、半導体装置内部へ水分の侵入経路となる。リードと封止樹脂の界面に水分が含まれた状態で高温と低温の温度変化を繰り返す信頼性試験を行った場合には、リードと封止樹脂の界面に剥離が発生しやすい。リードと封止樹脂との界面に僅かな剥離が発生すると、剥離は同一平面上のリードと封止樹脂の界面を伝って封止樹脂の内部へ進行するときがある。この剥離がボンディングワイヤが接続されたリード先端部に到達した場合、ボンディングワイヤの断線が発生するおそれがある。
【0012】
そこで、本発明の一実施形態におけるリードフレームは、リードがリード本体部、リード先端部及びリード本体部からリード先端部に向かって厚みが徐々に薄くなるように上面が傾斜した傾斜部を有し、この傾斜部の上面が粗面化されている。
【0013】
これにより、このリードフレームは、封止樹脂との密着性を向上させ、リードフレームと封止樹脂との界面の剥離の進行を抑制することができる。
【0014】
以下、図面を参照しながら本発明を実施するための実施形態について詳細に説明する。
【0015】
なお、図面においては、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0016】
また、図面に示すX軸、Y軸及びZ軸は互いに直交するものとする。Z軸方向を「高さ方向」又は「厚さ方向」と称する場合がある。各部材の+Z方向側の面を「表面」又は「上面」、-Z方向側の面を「裏面」又は「下面」と称する場合がある。
【0017】
さらに、図面は模式的なものであり、幅、奥行き及び厚さの比率などは示したとおりではない。各部材の数量、位置、形状、構造、大きさなどは、以下に示す実施形態に限定されず、本発明を実施する上で好ましい数量、位置、形状、構造、大きさなどにすることができる。
【0018】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態におけるリードフレームの概略上面図であり、
図2(a)は、
図1に示したII-II線の概略断面図、(b)は(a)中のA部の拡大図である。
【0019】
図1及び
図2に示すように、リードフレーム100は、ダイパッド101と、複数のリード102と、吊りリード103と、タイバー104と、を有する。
【0020】
ダイパッド101は、吊りリード103を介してタイバー104と連結されている。複数のリード102は、タイバー104と直接連結されている。
【0021】
また、リードフレーム100には、ダイパッド101、複数のリード102及び吊りリード103の組合せが複数形成されており、
図1では1つの半導体装置を形成する1つの組合せを示している。
【0022】
このリードフレーム100は、本実施形態では銅合金で形成されており、その表面は銀メッキ処理されている。このリードフレーム100は、半導体装置10の土台になる。具体的には後述するが、ダイパッド101には半導体チップ110が固定され、複数のリード102のリード先端部102bにボンディングワイヤ130でその半導体チップ110の電極パッドと電気的接続がなされた後(
図3参照)、リードフレーム100は、2つの金型で挟持され、金型に封止樹脂140を注入して固化させる。このとき、リード102の一部を露出させることで外部端子として機能させるようにし、個片にすることで複数の半導体装置10が製造される。
【0023】
複数のリード102は、平面視において、ダイパッド101の周囲に配置されている。このリード102は、タイバー104と連結するリード本体部102a、ダイパッド101と隣接する側に位置するリード先端部102bを有し、リード本体部102aとリード先端部102bの間には、リード本体部102aからリード先端部102bに向かって厚みが徐々に薄くなるように上面が傾斜した傾斜部102cを備える。
【0024】
リード先端部102bの上面は、リード本体部102aの上面よりも低く、リード先端部102bの厚さt2は、リード本体部102aの厚さt1よりも薄くなっている。本実施形態においては、リード先端部102bの厚さt2は、リード本体部102aの厚さt1の1/3程度に薄くなっている。また、傾斜部102cの上面は、微小な凸凹が形成され粗面化されている。
【0025】
ここで、仮にリード先端部102bの上面を粗面化した場合、リード102と封止樹脂140との接合面積は増加し、密着性は向上する。しかし、ワイヤボンディングの接合は、粗面の凸部との接合になる場合があり、ワイヤボンディングの接合面積が減少する可能性がある。このため、本実施形態では、リード先端部102bの上面は平滑面に形成することで、ワイヤボンディングの接合面積を確保し、接続強度の低下を抑制することができる。また、リード先端部102bの上面は銀メッキ処理されているため、安定したワイヤボンディングの接合が可能である。
【0026】
このように、リードフレーム100は、リード本体部102aとリード先端部102bの間に傾斜部102cを設け、ワイヤボンディングが接続されるリード先端部102bとリード本体部102aの上面を異なる平面とした。また、この傾斜部102cの上面を粗面化することにより、リード102と封止樹脂140との密着性を向上させ、リード本体部102aと封止樹脂140の界面の剥離が、リード先端部102bに進行することを抑制することができる。
【0027】
ここで、リードフレーム100におけるリード102を形成する方法を説明する。
【0028】
リード102の上面に対し、リード先端部102bの厚みが所定の厚さになるように凹部を形成するプレス加工を行う。このとき、傾斜部102cは、所定の角度になるようにし、かつ、プレス加工により粗面化を行う。次に、凹部の位置に合わせてリード102をせん断するプレス加工を行うことで、リード先端部102b、傾斜部102cを設けることができる。
【0029】
このように、リードフレーム100は、リード本体部102aとリード先端部102bの間に傾斜部102cを設け、この傾斜部102cの上面を粗面化することにより、リード102と封止樹脂140との密着性を向上させ、リード本体部102aと封止樹脂140の界面の剥離が、リード先端部102bに進行することを抑制することができる。
【0030】
次に、リードフレーム100を用いた樹脂封止型の半導体装置の製造方法について、
図3及び
図4を参照しながら説明する。
【0031】
図3に示すように、ダイパッド101の上面に半導体素子110を導電性接着剤120で固定する。その後、半導体素子110の上面に形成されている複数の電極パッド(図示せず)と複数のリード102のリード先端部102bの上面とをボンディングワイヤ130で電気的に接続する。
【0032】
次に、リードフレーム100を2つの金型(図示せず)で挟持し、金型の内部に封止樹脂を注入して固化させて封止した後に個片にすることで、
図4に示すような半導体装置10が製造される。
図4に示すように、リード本体部102aの全部又は一部は、封止樹脂140から露出させ、
図1で示したタイバー104から切り離して変形させることでアウターリードとして機能させる。また、半導体チップ110の放熱性を向上させる点で、ダイパッド101の下面も封止樹脂140から露出させてもよい。
【0033】
このように、本実施形態における半導体装置10は、リードフレーム100のほかに、ダイパッド101の上面に固定され、リード先端部102bとボンディングワイヤ130で電気的にそれぞれ接続されている複数の電極パッドを備える半導体チップ110と、少なくとも半導体チップ110及びボンディングワイヤ130を覆う封止樹脂140とを有する。
【0034】
これにより、半導体装置10は、リードフレーム100と封止樹脂140との密着性を向上させることができ、高温と低温の温度変化を繰り返す信頼性試験を行った場合、リードフレーム100と封止樹脂140との界面の剥離の進行を抑制することができる。このため、ボンディングワイヤ130の断線などの不具合が発生しにくくなることで、半導体装置10の信頼性を向上させることができる。
【0035】
(第2の実施形態)
図5(a)は、本発明の第2の実施形態におけるリードフレームの概略上面図、(b)は(a)中のB部の拡大図である。
【0036】
図5に示すように、第2の実施形態のリードフレーム200は、平面視において、傾斜部202cがリード先端部202b側の所定の点を中心点とする円弧状に形成されている。その他はリードフレーム100と同様である。
【0037】
第2の実施形態においては、粗面化された傾斜部202cの上面の表面積を増加することができ、かつ、リード先端部202bを囲む形状となることから、リード202と封止樹脂140との密着性をさらに向上させることができる。これにより、リード本体部202aと封止樹脂140の界面の剥離が、リード先端部202bに進行することを抑制することができる。
【0038】
(第3の実施形態)
図6(a)は、本発明の第3の実施形態におけるリードフレームの概略断面図、(b)は(a)中のC部の拡大図である。
【0039】
図6に示すように、第3の実施形態のリードフレーム300は、断面視において、傾斜部302cの上面が厚さ方向に曲面で形成されている。その他はリードフレーム100と同様である。
【0040】
第3の実施形態においては、粗面化された傾斜部302cの上面の表面積をさらに増加することが可能であり、リード302と封止樹脂140との密着性をさらに向上させることができる。これにより、リード本体部302aと封止樹脂140の界面の剥離が、リード先端部302bに進行することを抑制することができる。
【0041】
(第4の実施形態)
図7は、本発明の第4の実施形態におけるリードフレームの概略上面図である。
【0042】
図7に示すように、第4の実施形態のリードフレーム400は、平面視において、リード先端部402b及び傾斜部402cがリード本体部402aよりも幅が広くなっている。その他はリードフレーム100と同様である。
【0043】
第4の実施形態においては、粗面化された傾斜部402cの上面の表面積をさらに増加することが可能であり、リード402と封止樹脂140との密着性をさらに向上させることができる。これにより、リード本体部402aと封止樹脂140の界面の剥離が、リード先端部402bに進行することを抑制することができる。また、リード先端部402b及び傾斜部402cがリード本体部402aよりも幅が広くなっていることにより、リード先端部402bにワイヤボンディングしやすくなり、かつリード402が封止樹脂140から抜けにくくなる。リード402が封止樹脂140から抜けにくくなる点で、リード先端部402bは、平面視において、少なくともリード本体部402aよりも幅が広ければよい。
【0044】
以上、本発明の各実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【0045】
たとえば、これらの実施形態では、リードフレームの材質は、銅合金で表面が銀メッキ処理されているとしたが、これに限ることなく他の材質としてもよく、銀メッキ処理されていなくてもよい。他のメッキ膜としてもよい。また、リードフレームのリードはプレス加工で形成するとしたが、これに限ることなくエッチングなどで形成してもよく、傾斜部の上面はメッキにより粗面化してもよいし、エッチングにより粗面化してもよい。
【符号の説明】
【0046】
10 半導体装置
100、200、300、400 リードフレーム
101 ダイパッド
102、202、302、402 リード
102a、202a、302a、402a リード本体部
102b、202b、302b、402b リード先端部
102c、202c、302c、402c 傾斜部
103 吊りリード
104 タイバー
110 半導体素子
120 導電性接着剤
130 ボンディングワイヤ
140 封止樹脂
t1 リード本体部の厚さ
t2 リード先端部の厚さ