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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135267
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】電子装置及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01J 37/147 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
H01J37/147
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023045871
(22)【出願日】2023-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317011920
【氏名又は名称】東芝デバイス&ストレージ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004026
【氏名又は名称】弁理士法人iX
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 友博
【テーマコード(参考)】
5C101
【Fターム(参考)】
5C101AA03
5C101AA27
5C101BB04
5C101EE17
5C101EE22
5C101EE65
5C101EE66
5C101HH11
5C101LL04
(57)【要約】
【課題】高い信頼性の電子装置及びその製造方法を提供する。
【解決手段】実施形態によれば、電子装置は、基板と、電極と、対向部と、を備える。前記基板は、貫通孔を有する。前記電極は、前記貫通孔内において前記基板に設けられ、前記貫通孔の軸方向に沿って延びる。前記対向部は、前記基板に設けられ、前記電極よりも前記貫通孔の幅方向の中心に近い位置に配置され、前記幅方向において前記電極の前記軸方向の一端側の一部と対向する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
貫通孔を有する基板と、
前記貫通孔内において前記基板に設けられ、前記貫通孔の軸方向に沿って延びる電極と、
前記基板に設けられ、前記電極よりも前記貫通孔の幅方向の中心に近い位置に配置され、前記幅方向において前記電極の前記軸方向の一端側の一部と対向する対向部と、
を備えた電子装置。
【請求項2】
前記電極は、中空状である請求項1記載の電子装置。
【請求項3】
前記貫通孔内に設けられた複数の前記電極を備えた請求項1記載の電子装置。
【請求項4】
複数の前記電極を備え、
前記基板は、複数の前記貫通孔を有し、
複数の前記電極は、複数の前記貫通孔のそれぞれに設けられる請求項1記載の電子装置。
【請求項5】
前記対向部の材料は、前記基板の材料と同じである請求項1記載の電子装置。
【請求項6】
前記対向部の材料は、前記基板の材料と異なる請求項1記載の電子装置。
【請求項7】
前記貫通孔の前記軸方向の一端側の幅は、前記貫通孔の前記軸方向の他端側の幅と異なる請求項1記載の電子装置。
【請求項8】
前記対向部は、前記基板と電気的に接続され、前記幅方向において前記電極と所定の間隔を空けて配置されている請求項1記載の電子装置。
【請求項9】
前記基板は、
前記貫通孔の前記軸方向の一端側の第1面と、
前記貫通孔の前記軸方向の他端側の第2面と、
前記第1面と前記第2面との間において前記貫通孔を所定の幅に設定する第1部分と、
前記第1部分と前記第2面との間において前記貫通孔の幅を前記第1部分における前記貫通孔の幅よりも狭くする第2部分と、
を有し、
前記電極は、前記貫通孔内において前記第1部分に設けられ、
前記対向部は、前記電極よりも前記幅方向の中心に近い位置から前記貫通孔の前記一端側に向かって延びるように前記第2部分に設けられる請求項1記載の電子装置。
【請求項10】
前記基板は、前記第2部分と前記第2面との間において前記貫通孔の幅を前記第2部分における前記貫通孔の幅よりも広くする第3部分をさらに有する請求項9記載の電子装置。
【請求項11】
前記基板は、前記第1部分と前記電極との間に設けられた絶縁層を有する請求項9記載の電子装置。
【請求項12】
前記絶縁層は、前記第2部分と前記電極との間、及び前記対向部と前記電極との間に延在する請求項11記載の電子装置。
【請求項13】
前記第2部分は、前記第1部分から前記第2面に向かうに従って前記貫通孔の幅を広くする請求項9記載の電子装置。
【請求項14】
前記電極の前記一部と対向する部分における前記対向部の前記軸方向の長さは、前記幅方向における前記対向部と前記基板本体との間の距離よりも長い請求項1記載の電子装置。
【請求項15】
第1面と、前記第1面と反対側の第2面と、を有する基板の前記第1面側に第1溝を形成する工程と、
前記第1溝の内部に導電部を形成する工程と、
前記基板の前記第1面側に前記導電部と並べて第2溝を形成し、前記導電部の少なくとも一部を前記第2溝側に露出させるとともに、前記導電部と前記第2溝とが並ぶ方向において前記導電部の前記第2面側の一部と対向する対向部を前記導電部の前記第2溝側に形成する工程と、
前記基板の前記第1面側に接着剤を介して支持基板を接着する工程と、
前記基板の前記第2面側に前記第2溝まで到達する第3溝を形成することにより、前記基板を貫通する貫通孔を形成するとともに、前記貫通孔内において前記基板に設けられ、前記貫通孔の軸方向に沿って延びる電極を前記導電部から形成する工程と、
前記支持基板及び前記接着剤を除去する工程と、
を有する電子装置の製造方法。
【請求項16】
前記貫通孔を形成する前記工程は、前記対向部の少なくとも一部を残すことを含む請求項15記載の電子装置の製造方法。
【請求項17】
前記貫通孔を形成する前記工程は、前記第3溝の形成により、前記対向部を除去することを含む請求項15記載の電子装置の製造方法。
【請求項18】
前記第2溝及び前記対向部を形成する前記工程は、前記第1溝の深さよりも浅い第1凹部を形成し、前記第1凹部の幅よりも幅が狭く、前記第1溝の深さよりも深い第2凹部を前記第1凹部内に形成することにより、前記第1凹部と前記第2凹部とによって前記第2溝を形成するとともに、前記導電部と前記第2凹部との間に残る前記基板の一部を前記対向部として形成することを含む請求項15記載の電子装置の製造方法。
【請求項19】
前記貫通孔を形成する前記工程は、前記第3溝の幅を前記第2溝の前記第2凹部の幅よりも広くすることを含む請求項18記載の電子装置の製造方法。
【請求項20】
前記第2溝及び前記対向部を形成する前記工程は、前記第2溝の深さを前記第1溝の深さよりも浅く形成し、前記第2溝と前記第2面との間に残る前記基板の一部を前記対向部として形成することを含む請求項15記載の電子装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電子装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
貫通孔を有する基板と、貫通孔内に設けられた電極と、を備えた電子装置がある。こうした電子装置において、高い信頼性が望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-68505号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の実施形態は、高い信頼性の電子装置及びその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施形態によれば、電子装置は、基板と、電極と、対向部と、を備える。前記基板は、貫通孔を有する。前記電極は、前記貫通孔内において前記基板に設けられ、前記貫通孔の軸方向に沿って延びる。前記対向部は、前記基板に設けられ、前記電極よりも前記貫通孔の幅方向の中心に近い位置に配置され、前記幅方向において前記電極の前記軸方向の一端側の一部と対向する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】第1の実施形態に係る電子装置を模式的に表す断面図である。
図2】第1の実施形態に係る電子装置の一部を模式的に表す平面図である。
図3】第1の実施形態に係る電子装置の一部を模式的に表す断面図である。
図4図4(a)~図4(f)は、第1の実施形態に係る電子装置の製造工程の一例を模式的に表す断面図である。
図5図5(a)~図5(f)は、第1の実施形態に係る電子装置の製造工程の一例を模式的に表す断面図である。
図6】電子装置の参考の製造工程の一例を模式的に表す断面図である。
図7図7(a)~図7(c)は、第1の実施形態に係る電子装置の変形例を模式的に表す平面図である。
図8】第1の実施形態に係る電子装置の変形例を模式的に表す断面図である。
図9】第1の実施形態に係る電子装置の変形例を模式的に表す断面図である。
図10図10(a)及び図10(b)は、第1の実施形態に係る電子装置の変形例を模式的に表す断面図である。
図11】第2の実施形態に係る電子装置を模式的に表す断面図である。
図12図12(a)~図12(c)は、第2の実施形態に係る電子装置の製造工程の一例を模式的に表す断面図である。
図13】第2の実施形態に係る電子装置の変形例を模式的に表す断面図である。
図14】第2の実施形態に係る電子装置の変形例を模式的に表す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に、本発明の各実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚さと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0008】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る電子装置を模式的に表す断面図である。
図2は、第1の実施形態に係る電子装置の一部を模式的に表す平面図である。
図1及び図2に表したように、電子装置10は、基板12と、電極21、22と、を備える。図2は、図1の上方側から見た電子装置10の一部を模式的に表す平面図である。
【0009】
基板12は、基板本体14と、基板本体14に設けられた貫通孔16と、を有する。基板本体14は、第1面14aと、第2面14bと、を有する。第1面14aは、貫通孔16の軸方向の一端側の面である。第2面14bは、貫通孔16の軸方向の他端側の面である。第2面14bは、換言すれば、第1面14aと反対側の面である。貫通孔16は、基板本体14の第1面14a側と第2面14b側とを連通させるように、基板本体14を貫通する。
【0010】
電極21、22は、貫通孔16内において基板本体14(基板12)に設けられ、貫通孔16の軸方向に沿って延びる。貫通孔16の軸方向は、換言すれば、貫通孔16が基板本体14を貫通する方向である。図1において、貫通孔16の軸方向は、紙面の上下方向である。
【0011】
第2面14bは、例えば、第1面14aと略平行である。貫通孔16は、例えば、第1面14a及び第2面14bと直交する方向に延びる。貫通孔16の軸方向は、換言すれば、第1面14a及び第2面14bと直交する方向である。電極21、22は、換言すれば、第1面14a及び第2面14bと直交する方向に延びる。
【0012】
但し、貫通孔16の延びる方向は、第1面14a及び第2面14bに対して厳密に垂直な方向に限ることなく、少なくとも第1面14a及び第2面14bに対して垂直に延びる成分を有していればよい。貫通孔16は、例えば、第1面14a及び第2面14bに対して傾斜した状態で、第1面14a及び第2面14bと直交する方向(図1の紙面の上下方向)に延びてもよい。電極21、22の延びる方向についても同様である。貫通孔16、電極21、22の延びる方向は、異なってもよい。
【0013】
電極21、22は、例えば、第1面14a側に寄せて配置される。電極21、22は、例えば、第1面14a側から第2面14b側に向けて延びるように設けられる。電極21、22の第1面14a側の端部は、例えば、第1面14aに近接して配置される。電極21、22の第1面14a側の端部と第1面14aとの間の距離は、例えば、電極21、22の第2面14b側の端部と第2面14bとの間の距離よりも短い。
【0014】
電子装置10は、貫通孔16内に設けられた複数の電極21、22を備える。電子装置10は、例えば、一対の電極21、22を備える。一対の電極21、22は、例えば、貫通孔16を挟んで互いに対向するように配置される。換言すれば、一対の電極21、22は、例えば、貫通孔16の幅方向の両側に配置される。貫通孔16の幅方向は、貫通孔16の軸方向と直交する方向である。図1において、貫通孔16の幅方向は、紙面の左右方向である。
【0015】
一対の電極21、22は、例えば、貫通孔16の軸方向に沿って延びるとともに、貫通孔16の周方向に延びる板状の電極である。貫通孔16の周方向は、換言すれば、軸方向を軸とする軸回りの方向である。貫通孔16の周方向は、例えば、図1において紙面と直交する方向である。
【0016】
電子装置10は、例えば、貫通孔16内を通過する電子線の制御に用いられる。電子装置10は、例えば、一対の電極21、22間に印加する電圧の大きさを制御することにより、貫通孔16内を通過する電子線の進む方向を制御する。電子装置10は、例えば、電子線で表面観察を行う電子顕微鏡や、マスクやウェハに微細パターンを描画する電子線描画装置、あるいは表面を電子線で走査して欠陥を検出する検査装置など、電子線を制御して対象物に照射し、観察、加工などを行う装置に適用される。電子装置10は、例えば、静電レンズや偏向器などの電子線制御装置である。
【0017】
但し、電子装置10の用途は、上記に限定されるものではない。電子装置10は、基板12の貫通孔16内に設けられた電極を必要とする任意の装置に適用可能である。また、貫通孔16内に設けられる電極の数は、2つに限ることなく、3つ以上でもよい。貫通孔16内に設けられる電極の数は、1つでもよい。貫通孔16内に設けられる電極の数は、電子装置10の用途などに応じて適宜設定すればよい。
【0018】
電子装置10は、対向部18をさらに備える。対向部18は、基板本体14(基板12)に設けられ、電極21、22よりも貫通孔16の幅方向の中心に近い位置に配置され、幅方向において電極21、22の軸方向の一端側の一部と対向する。換言すれば、基板12は、基板本体14に設けられた対向部18を有する。
【0019】
対向部18は、換言すれば、電極21、22の第2面14b側の一部と対向する。対向部18の第1面14a側の端部は、例えば、電極21、22の軸方向の両端部の間に位置する。対向部18は、幅方向において、電極21、22の第1面14a側の一部とは対向しない。電極21、22の第1面14a側の一部は、貫通孔16の幅方向において、貫通孔16の内部の空間と対面する。
【0020】
電極21、22は、貫通孔16の中心側を向く面を有する。電極21、22の貫通孔16の中心側を向く面の第2面14b側の一部は、幅方向において対向部18と対向する。電極21、22の貫通孔16の中心側を向く面の残りの部分は、幅方向において、別の部材に覆われることなく、貫通孔16の内部の空間と対面する。
【0021】
基板本体14(基板12)は、第1部分31と、第2部分32と、を有する。第1部分31は、第1面14aと第2面14bとの間において貫通孔16を所定の幅に設定する。第2部分32は、第1部分31と第2面14bとの間において貫通孔16の幅を第1部分31における貫通孔16の幅よりも狭くする。
【0022】
また、この例において、基板本体14は、第2部分32と第2面14bとの間において貫通孔16の幅を第2部分32における貫通孔16の幅よりも広くする第3部分33をさらに有する。
【0023】
電極21、22は、例えば、貫通孔16内において第1部分31に設けられる。対向部18は、例えば、電極21、22よりも貫通孔16の幅方向の中心に近い位置から貫通孔16の一端側(第1面14a側)に向かって延びるように第2部分32に設けられる。これにより、上記のように、対向部18を電極21、22の軸方向の一端側の一部と対向させることができる。
【0024】
図2に表したように、対向部18は、貫通孔16の周方向に沿って延び、一対の電極21、22のそれぞれの軸方向の一端側の一部と対向する。
【0025】
図2に表したように、貫通孔16を軸方向に見た形状(第1面14a側から見た形状)は、例えば、四角形状である。貫通孔16は、例えば、断面略四角形状の貫通孔である。対向部18を軸方向に見た形状は、例えば、貫通孔16の周方向に沿って延びる略四角形の枠状である。電極21、22を軸方向に見た形状は、例えば、四角形状の貫通孔16の対向する2つの辺に沿って延びるように配置された板状である。
【0026】
このように、この例では、1つの対向部18が、一対の電極21、22のそれぞれの軸方向の一端側の一部と対向する。これに限ることなく、一対の電極21、22のそれぞれに対応する一対の対向部18を基板本体14に設けてもよい。換言すれば、基板12は、複数の電極21、22のそれぞれに対応する複数の対向部18を有してもよい。
【0027】
また、貫通孔16を軸方向に見た形状は、四角形状に限ることなく、例えば、他の多角形状、円形状、楕円形状などでもよい。貫通孔16を軸方向に見た形状は、上記に限ることなく、任意の形状でよい。対向部18を軸方向に見た形状、及び電極21、22を軸方向に見た形状は、上記に限ることなく、貫通孔16の形状に応じた任意の形状でよい。
【0028】
基板12は、基板本体14の第1部分31と電極21、22との間に設けられた絶縁層41、42を有する。絶縁層41、42は、例えば、基板本体14の第1部分31に接する。電極21、22は、絶縁層41、42に接する。これにより、電極21、22は、絶縁層41、42によって基板本体14と電気的に絶縁された状態で、絶縁層41、42を介して第1部分31に設けられる。なお、第1部分31と電極21との間の絶縁層41及び第1部分31と電極22との間の絶縁層42は、連続した1つの絶縁層で構成してもよい。
【0029】
対向部18の材料は、例えば、基板本体14(基板12)の材料と同じである。基板本体14は、例えば、シリコンを含む。この場合、対向部18も、基板本体14と同様にシリコンを含む。基板本体14は、例えば、シリコン基板である。換言すれば、基板本体14は、半導体基板である。
【0030】
対向部18は、例えば、基板本体14と一体に設けられる。換言すれば、対向部18は、基板本体14の一部である。これにより、対向部18の材料が、基板本体14の材料と同じとなる。なお、基板本体14の材料は、シリコンに限ることなく、任意の材料でよい。基板本体14は、半導体基板に限るものではない。基板本体14の材料は、電子装置10の用途などに応じて適宜選択すればよい。
【0031】
対向部18は、例えば、基板本体14と電気的に接続されている。対向部18は、上記のように、基板本体14と一体に設けられることにより、基板本体14と電気的に接続される。これにより、例えば、対向部18の電位を、基板本体14の電位と実質的に同じ電位とすることができる。
【0032】
対向部18は、貫通孔16の幅方向において、電極21、22と所定の間隔を空けて配置されている。これにより、電極21、22が、対向部18を介して基板本体14と導通してしまうことなどを抑制することができる。換言すれば、対向部18を電極21、22と電気的に絶縁することができる。これにより、例えば、電極21、22間に電圧を印加して貫通孔16を通過する電子線の制御を行う際に、電極21、22間に適切な大きさの電圧を印加することができる。
【0033】
図1に表したように、電極21、22の一部と対向する部分における対向部18の軸方向の長さD1は、例えば、幅方向における対向部18と基板本体14との間の距離D2よりも長い。また、対向部18の長さD1は、例えば、電極21、22の軸方向の長さの半分以下に設定される。
【0034】
電子装置10は、例えば、配線層51、52、接続用電極53、54をさらに備える。配線層51、52は、例えば、基板本体14の第1面14a上に設けられる。配線層51は、例えば、電極21の第1面14a側の端部と接することにより、電極21と電気的に接続される。配線層52は、例えば、電極22の第1面14a側の端部と接することにより、電極22と電気的に接続される。接続用電極53は、配線層51の上に設けられ、配線層51と電気的に接続される。接続用電極54は、配線層52の上に設けられ、配線層52と電気的に接続される。
【0035】
配線層51、52、及び接続用電極53、54は、例えば、電子装置10と他の装置との電気的な接続に用いられる。接続用電極53、54は、換言すれば、電極パッドである。例えば、電極21、22間の電圧は、配線層51、52、及び接続用電極53、54を介して設定される。電極21、22間の電圧は、例えば、接続用電極53、54を介して接続された他の装置によって設定される。なお、図2においては、図示を容易にするため、配線層51、52、接続用電極53、54の図示を省略している。
【0036】
但し、電極21、22間の電圧の設定方法は、上記に限定されるものではない。例えば、電極21、22間の電圧を設定するための回路を基板本体14に設けてもよい。例えば、基板本体14が半導体基板である場合には、CMOS回路などを予め基板本体14に設けてもよい。配線層は、例えば、基板本体14の内部に設けてもよい。配線層51、52、及び接続用電極53、54は、必要に応じて設けられ、省略可能である。
【0037】
図3は、第1の実施形態に係る電子装置の一部を模式的に表す断面図である。
図3は、電子装置10の電極21の部分を拡大して表す。
図3に表したように、電極21は、例えば、中空状である。図示は省略するが、電極22も、電極21と同様に、例えば、中空状である。
【0038】
電極21は、例えば、第1導電部21aと、第2導電部21bと、を有する。第1導電部21aは、例えば、基板本体14側に設けられる。第2導電部21bは、例えば、第1導電部21aよりも貫通孔16の幅方向の中心に近い位置に設けられる。換言すれば、第1導電部21aは、幅方向において、基板本体14(第1部分31)と第2導電部21bとの間に設けられる。
【0039】
第1導電部21a及び第2導電部21bは、貫通孔16の軸方向に沿って延びる。また、第1導電部21a及び第2導電部21bは、貫通孔16の周方向に延びる。第1導電部21a及び第2導電部21bは、例えば、板状である。
【0040】
第2導電部21bの軸方向の一端は、第1導電部21aの軸方向の一端と接続される。第2導電部21bの軸方向の他端は、第1導電部21aの軸方向の他端と接続される。そして、第2導電部21bは、軸方向の中間部において、第1導電部21aから離れている。換言すれば、電極21は、軸方向の中間部において、第1導電部21aと第2導電部21bとの間に隙間を設ける。
【0041】
このように、中空状の電極21の形状とは、より具体的には、軸方向の中間部において、第1導電部21aと第2導電部21bとの間に隙間を設けた形状である。なお、第1導電部21a及び第2導電部21bの周方向の端部は、接してもよいし、接していなくてもよい。第1導電部21aと第2導電部21bとの間の隙間は、例えば、第1導電部21a及び第2導電部21bの周方向の端部において外部に連通していてもよい。中空状の電極21とは、内部に閉鎖された空間を有する形状に限ることなく、外部と連通する内部空間を有する形状でもよい。また、電極21は、必ずしも中空状でなくもよい。電極21は、内部に実質的に空間を有しない形状でもよい。
【0042】
図4(a)~図4(f)、及び図5(a)~図5(f)は、第1の実施形態に係る電子装置の製造工程の一例を模式的に表す断面図である。
図4(a)に表したように、電子装置10の製造においては、まず、第1面60aと、第1面60aと反対側の第2面60bと、を有する基板60を準備する。基板60は、例えば、半導体基板である。より具体的には、基板60は、シリコン基板である。
【0043】
図4(a)に表したように、リソグラフィとエッチング法により、電極21、22を形成するための溝61、62を基板60の第1面60a側に形成する。例えば、一対の電極21、22を形成する場合には、一対の電極21、22のそれぞれに対応する一対の溝61、62を形成する。溝61、62の幅は、電極21、22の幅(貫通孔16の幅方向の長さ)に応じて適宜設定すればよい。溝61、62の深さは、電極21、22の軸方向の長さに応じて適宜設定すればよい。
【0044】
図4(b)に表したように、溝61、62を形成した後、溝61、62を形成した基板60の第1面60a側の全面に絶縁層64を形成する。絶縁層64は、例えば、シリコン酸化膜である。
【0045】
図4(c)に表したように、絶縁層64を形成した後、絶縁層64の上に金属層66を形成する。金属層66は、例えば、CVD(Chemical Vapor Deposition)法、ALD(Atomic Layer Deposition)法、気相成長法、スパッタ法、メッキ法などによって形成される。金属層66の材料は、例えば、W、Au、Cu、TiN、Alなどである。
【0046】
このように、金属層66を形成する際に、溝61、62の上部側では、溝61、62の底部側に比べて、溝61、62の両側から進む金属層66の成膜の速度が速い傾向にある。このため、溝61、62の底部側に金属層66が十分に埋まる前に、溝61、62の上部側の金属層66が先に閉口してしまう可能性がある。すなわち、溝61、62内の金属層66に図3に表した電極21のような中空状の形状が形成される可能性が生じる。
【0047】
図4(d)に表したように、金属層66を形成した後、金属層66の一部をエッチングによって除去することにより、溝61、62内に埋め込まれた導電部66a、66bを金属層66から形成する。導電部66a、66bは、後に電極21、22となる部分である。このように、溝61、62の内部に導電部66a、66bを形成する。
【0048】
図4(d)に表したように、導電部66a、66bを形成した後、必要に応じて配線層51、52、及び接続用電極53、54を基板60の第1面60a側に形成する。この後、貫通孔16に応じた形状にパターニングされたレジスト68を基板60の第1面60a側に設ける。この際、レジスト68の開口部の幅は、溝61、62の間の部分よりも狭くする。レジスト68の開口部の幅は、例えば、基板本体14の第2部分32によって設定される貫通孔16の幅に応じて設定される。
【0049】
図4(e)に表したように、レジスト68をマスクとしてエッチングを行い、絶縁層64の一部を除去することにより、絶縁層41、42を絶縁層64から形成する。
【0050】
図4(f)に表したように、エッチングの条件を変え、レジスト68をマスクとして基板60のエッチングを行うことにより、貫通孔16の一部となる溝70を基板60の第1面60a側に導電部66a、66bと並べて形成する。この際、溝70は、溝61、62の途中まで形成する。換言すれば、溝70は、溝61、62よりも浅く形成する。
【0051】
また、この際、等方性の強め(長め)のエッチングを行い、溝70の幅をレジスト68の開口部の幅よりも広くすることにより、溝61、62の側面に形成された絶縁層41、42を露出させる。この場合には、基板60と絶縁層41、42との選択比により、絶縁層41、42によって溝70の形状が決まる。
【0052】
図5(a)に表したように、溝70を形成した後、異方性の大きいエッチング条件に切り替え、レジスト68をマスクとして再び基板60のエッチングを行うことにより、溝70内にレジスト68のマスク形状に応じた溝72を形成する。溝72の形成には、例えば、Deep RIE(Reactive Ion Etching)などの深掘り加工が用いられる。この場合、溝72の内側面には、例えば、図3の拡大図に表したように、波状の凹凸などが形成される可能性がある。
【0053】
このように、条件を変えながら基板60のエッチングを行い、導電部66a、66bの溝61、62の底部側の部分に基板60の一部を意図的に残すようにする。これにより、溝61、62の底部側に残った基板60の一部により、導電部66a、66bよりも溝72(貫通孔16)の幅方向の中心に近い位置に配置され、導電部66a、66bの軸方向の一端側の一部と対向する対向部18を形成する。
【0054】
図5(b)に表したように、溝72を形成した後、絶縁層41、42の溝70と対向する部分をエッチングすることにより、導電部66a、66bを溝70側に露出させる。これにより、対向部18と導電部66a、66bとの間に、絶縁層41、42の厚さに応じた隙間が設けられる。絶縁層41、42のエッチングには、例えば、フッ素を含むエッチャントが用いられる。
【0055】
図5(c)に表したように、導電部66a、66bを露出させた後、基板60の第1面60a側に接着剤74を塗布し、熱処理及び圧着処理などを行うことにより、基板60の第1面60a側を支持基板76に接着する。支持基板76は、例えば、ガラス基板である。接着剤74の熱処理の温度は、例えば、100℃~300℃程度である。
【0056】
図5(d)に表したように、基板60を支持基板76に接着した後、基板60の第2面60b側から基板60をエッチングすることにより、基板60の全体の厚さを薄くする。基板60に対して、いわゆるバックグラインドを行う。
【0057】
基板60が半導体基板である場合、基板60の厚さは、例えば、700μm以上である。この場合、1回の加工で基板60に貫通孔16を形成することが難しい。このため、上記のように、バックグラインドを行い、基板60の全体の厚さを薄くする。例えば、基板60の厚さが100μm~500μm程度となるように、第2面60b側のエッチングを行う。なお、図4及び図5では、便宜的に、基板60の厚さを同じとしている。
【0058】
図5(e)に表したように、貫通孔16に応じた形状にパターニングされたレジスト78を基板60の第2面60b側に設ける。この際、レジスト78の開口部の幅は、溝72の幅よりも広くする。レジスト78の開口部の幅は、例えば、基板本体14の第3部分33によって設定される貫通孔16の幅に応じて設定される。
【0059】
そして、図5(e)に表したように、レジスト78をマスクとして第2面60b側から基板60のエッチングを行い、第2面60b側から溝72まで到達する溝80を形成する。換言すれば、溝80の底部を溝72の底部と接続させる。これにより、溝70、72、80によって基板60を貫通する貫通孔16が形成されるとともに、貫通孔16内において基板60に設けられ、貫通孔16の軸方向に沿って延びる電極21、22が導電部66a、66bから形成される。
【0060】
図5(f)に表したように、接着剤74と支持基板76とを除去する。例えば、基板60の第1面60a側を接着テープなどで支持し、支持基板76を剥がし、溶剤やアッシングなどによって接着剤74を除去する。この後、例えば、基板60を必要な大きさに切断し、基板60から上記の基板12を形成する。以上により、電子装置10が製造される。
【0061】
このように、電子装置10の製造方法は、第1面60aと、第1面60aと反対側の第2面60bと、を有する基板60の第1面60a側に溝61、62(第1溝)を形成する工程を有する(例えば、図4(a)に表した工程)。
【0062】
電子装置10の製造方法は、溝61、62の内部に導電部66a、66bを形成する工程を有する(例えば、図4(c)、図4(d)に表した工程)。
【0063】
電子装置10の製造方法は、基板60の第1面60a側に導電部66a、66bと並べて溝70、72(第2溝)を形成し、導電部66a、66bの少なくとも一部を溝70、72側に露出させるとともに、導電部66a、66bと溝70、72とが並ぶ方向において、導電部66a、66bの第2面60b側の一部と対向する対向部18を導電部66a、66bの溝70、72側に形成する工程を有する(例えば、図4(f)、図5(a)、図5(b)に表した工程)。
【0064】
電子装置10の製造方法は、基板60の第1面60a側に接着剤74を介して支持基板76を接着する工程を有する(例えば、図5(c)に表した工程)。
【0065】
電子装置10の製造方法は、基板60の第2面60b側に溝72まで到達する溝80(第3溝)を形成することにより、基板60を貫通する貫通孔16を形成するとともに、貫通孔16内において基板60に設けられ、貫通孔16の軸方向に沿って延びる電極21、22を導電部66a、66bから形成する工程を有する(例えば、図5(e)に表した工程)。
【0066】
電子装置10の製造方法は、支持基板76及び接着剤74を除去する工程を有する(例えば、図5(f)に表した工程)。
【0067】
貫通孔16を形成する工程は、対向部18の少なくとも一部を残すことを含む。換言すれば、貫通孔16を形成する工程は、導電部66a、66bと溝70、72とが並ぶ方向において、導電部66a、66bの第2面60b側の一部と対向する対向部18を基に、導電部66a、66bよりも貫通孔16の幅方向の中心に近い位置に配置され、幅方向において導電部66a、66bの軸方向の一端側の一部と対向する対向部18を形成することを含む。
【0068】
溝70、72(第2溝)及び対向部18を形成する工程は、溝61、62(第1溝)の深さよりも浅い溝70(第1凹部)を形成し、溝70の幅よりも幅が狭く、溝61、62の深さよりも深い溝72(第2凹部)を溝70内に形成するとともに、導電部66a、66bと溝72との間に残る基板60の一部を対向部18として形成することを含む。
【0069】
貫通孔16を形成する工程は、溝80(第3溝)の幅を溝72の幅よりも広くすることを含む。
【0070】
図6は、電子装置の参考の製造工程の一例を模式的に表す断面図である。
図6に表したように、参考の製造工程では、溝70を溝61、62よりも深く形成している。参考の製造工程では、例えば、基板60の第1面60a側から貫通孔16の一部となる溝70を形成する際に、1回のエッチングで溝61、62よりも深い溝70を形成している。このため、参考の製造工程では、対向部18が形成されていない。
【0071】
基板60を接着剤74によって支持基板76に接着する際に、接着剤74が熱処理などによって収縮する。この際、電極21、22の溝70側を向く面は、接着剤74と直接接しているため、接着剤74の収縮にともなう応力や歪みが電極21、22に加わる。こうした接着剤74の収縮にともなう応力や歪みの影響は、溝61、62の底部側(第2面60b側)において溝61、62の上部側(第1面60a側)よりも顕著となる。
【0072】
図6に表した参考例のように、電極21、22の溝61、62の底部側の端部が、溝70の幅の接着剤74と接している場合には、電極21、22の端部に加わる応力や歪みが大きく、電極21、22が変形してしまう可能性がある。特に、中空状の電極21、22では、溝70側の導電部の底部側の部分が破断してしまう可能性がある。こうした電極21、22の変形は、電子装置の信頼性を低下させてしまう。例えば、電子装置の歩留まりを低下させてしまう。
【0073】
これに対し、本実施形態に係る電子装置10及びその製造方法では、電極21、22(導電部66a、66b)よりも溝72(貫通孔16)の幅方向の中心に近い位置に配置され、電極21、22(導電部66a、66b)の軸方向の一端側の一部と対向する対向部18を形成する。これにより、例えば、電極21、22(導電部66a、66b)の溝61、62の底部側の端部に接する接着剤74の厚さを絶縁層41、42の厚さ分に抑えることができる。
【0074】
接着剤74の収縮で生じる歪は、接着剤74の厚さ(長さ)に依存する。接着剤74の収縮で生じる歪は、接着剤74の厚さが薄い方が小さくなる。本実施形態では、電極21、22(導電部66a、66b)の軸方向の中央部は、溝70の幅で埋め込まれた接着剤74に接しているが、溝61、62の底部では、電極21、22(導電部66a、66b)に接する接着剤74の厚さを絶縁層41、42の厚さ分とすることができる。従って、電極21、22(導電部66a、66b)において、最も応力集中のしやすく、破断し易い溝61、62の底部側の部分に加わる歪を軽減することができる。
【0075】
これにより、本実施形態に係る電子装置10及びその製造方法では、電極21、22(導電部66a、66b)の変形を抑制し、高い信頼性を得ることができる。電子装置10の歩留まりを向上させることができる。
【0076】
また、対向部18が設けられていない参考例の構成では、電極21、22の第2面14b側の端部が、貫通孔16に露出する。このため、例えば、電子線制御装置に適用した際に、電子線を制御する電場磁場に、電極21、22に対して垂直ではない成分が生じる可能性がある。こうした電場磁場の電極21、22に対して垂直ではない成分は、電子線の制御性に影響を与えてしまうことが懸念される。
【0077】
本実施形態に係る電子装置10では、対向部18の電位を基板本体14の電位と実質的に同電位とすることができる。例えば、基板本体14及び対向部18をグランド電位に設定することができる。これにより、例えば、電極21、22の相対したほぼ垂直の箇所を電場磁場の始点及び終点とし、電子線を制御する電場磁場に、電極21、22に対して垂直ではない成分が生じてしまうことを抑制することができる。これにより、例えば、電子装置10を電子線制御装置に適用した際に、電子線をより制御し易くすることができる。
【0078】
本実施形態では、基板本体14が、第2部分32と第2面14bとの間において貫通孔16の幅を第2部分32における貫通孔16の幅よりも広くする第3部分33をさらに有する。第3部分33は、溝72の幅よりも広い溝80を基板60の第2面60b側から形成することによって形成される。このように、溝80を形成することにより、例えば、基板60の第2面60b側から溝80を形成する際に、溝80と溝72との位置ずれを抑制し、貫通孔16をより適切に形成することができる。
【0079】
また、本実施形態では、電極21、22の一部と対向する部分における対向部18の軸方向の長さD1が、幅方向における対向部18と基板本体14との間の距離D2よりも長い。これにより、電極21、22の端部に加わる応力や歪みの影響をより適切に抑制し、電極21、22の変形をより適切に抑制することができる。
【0080】
図7(a)~図7(c)は、第1の実施形態に係る電子装置の変形例を模式的に表す平面図である。
なお、上記実施形態と機能・構成上実質的に同じものについては、同符号を付し、詳細な説明は省略する。
図7(a)に表したように、電子装置10aでは、電極21が、軸方向に見た時に、四角形状の貫通孔16の隣接する3つの辺に沿うように設けられている。電極21を軸方向に見た形状は、例えば、略U字状である。
【0081】
このように、電極21、22を軸方向に見た形状は、直線状の形状に限ることなく、例えば、屈曲した形状や湾曲した形状などでもよい。電極21、22を軸方向に見た形状は、例えば、貫通孔16を軸方向に見た形状、及び電子装置10aの用途などに応じた任意の形状でよい。
【0082】
図7(b)に表したように、電子装置10bは、電極23、24をさらに有する。電極21、22は、四角形状の貫通孔16の対向する2つの辺に沿って延びるように配置され、電極23、24は、四角形状の貫通孔16の対向する別の2つの辺に沿って延びるように配置されている。換言すれば、電子装置10bは、2対の電極21~24を有する。
【0083】
電子装置に設けられる電極の数は、1対に限ることなく、2対以上でもよい。電子装置の1つの貫通孔16内に設けられる複数の電極の数は、上記に限ることなく、任意の数でよい。電子装置の1つの貫通孔16内に設けられる複数の電極の数は、例えば、電子装置の用途などに応じて適宜設定すればよい。
【0084】
図7(c)に表したように、電子装置10cは、貫通孔16の周方向に沿って延び、軸方向に見た時に、貫通孔16を囲むように設けられた1つの電極21のみを有する。電子装置10cにおいて、電極21を軸方向に見た形状は、貫通孔16を囲む枠状である。このように、貫通孔16内に設けられる電極の数は、1つでもよい。なお、貫通孔16内に設けられる1つの電極の形状は、上記に限ることなく、任意の形状で良い。
【0085】
図8は、第1の実施形態に係る電子装置の変形例を模式的に表す断面図である。
図8に表したように、電子装置10dでは、基板12が、複数の貫通孔16を有する。電子装置10dは、複数の貫通孔16のそれぞれに設けられた複数の電極21、22を備える。また、電子装置10dでは、基板12が、複数の貫通孔16のそれぞれに対応して設けられた複数の対向部18を有する。
【0086】
このように、電子装置10dは、複数の貫通孔16を備えてもよい。電子装置10dに設けられる貫通孔16の数は、任意の数でよい。電子装置10dに設けられる貫通孔16の数は、例えば、電子装置10dの用途などに応じて適宜設定すればよい。
【0087】
図9は、第1の実施形態に係る電子装置の変形例を模式的に表す断面図である。
図9に表したように、電子装置10eでは、絶縁層41、42が、第2部分32と電極21、22との間、及び対向部18と電極21、22との間に延在する。絶縁層41、42は、例えば、電極21、22に接するとともに、対向部18に接する。
【0088】
電子装置10eの絶縁層41、42の形状は、例えば、図5(b)に表したように、絶縁層41、42の溝70と対向する部分をエッチングして電極21、22(導電部66a、66b)を溝70側に露出させる際の、絶縁層41、42のエッチングの条件を調整することによって形成することができる。
【0089】
このように、対向部18と電極21、22との間に絶縁層41、42を延在させることにより、対向部18と電極21、22との間に接着剤74が入り込むことを抑制することができる。これにより、電極21、22の端部に加わる応力や歪みの影響をより適切に抑制し、電極21、22の変形をより適切に抑制することができる。
【0090】
絶縁層41、42は、例えば、電極21、22に接するとともに、対向部18に接する。これにより、対向部18と電極21、22との間に接着剤74が入り込むことをより抑制し、電極21、22の変形をより適切に抑制することができる。
【0091】
図10(a)及び図10(b)は、第1の実施形態に係る電子装置の変形例を模式的に表す断面図である。
図10(a)に表したように、電子装置10fでは、対向部18の材料が、基板本体14(基板12)の材料と異なる。電子装置10fにおいて、対向部18の材料は、例えば、絶縁体である。対向部18の絶縁性は、例えば、基板本体14の絶縁性よりも高い。また、電子装置10fにおいて、対向部18は、例えば、電極21、22に接する。
【0092】
このように、対向部18の材料は、基板本体14の材料と異なってもよい。基板本体14と材料の異なる対向部18は、例えば、図4(f)に表したように、貫通孔16の一部となる溝70を基板本体14となる基板60に形成した後に、基板60の上に別の材料を積層させることなどによって形成することができる。但し、この場合には、例えば、溝70の深さを溝61、62の深さと同じ、もしくは溝70の深さよりも深く形成し、電極21、22(導電部66a、66b)の側面全体を露出させた後に、別の材料を積層する。
【0093】
対向部18の材料を絶縁性とした場合には、対向部18を電極21、22に接触させて設けることができる。この場合には、対向部18と電極21、22との間に接着剤74が入り込むことを抑制し、電極21、22の変形をより適切に抑制することができる。
【0094】
図10(b)に表した電子装置10gのように、基板本体14と異なる材料で形成された対向部18は、幅方向において電極21、22から離して設けてもよい。この場合には、対向部18の材料に導電性の材料を用いることができる。対向部18の材料を導電性とし、基板本体14と電気的に接続した場合には、例えば、上記のように、電子線の制御性を向上させることができる。
【0095】
(第2の実施形態)
図11は、第2の実施形態に係る電子装置を模式的に表す断面図である。
図11に表したように、電子装置100では、基板本体14において、第3部分33が省略され、第2部分32のみが、第1部分31と第2面14bとの間に設けられている。
【0096】
このため、電子装置100では、貫通孔16の軸方向の一端側の幅が、貫通孔16の軸方向の他端側の幅と異なる。電子装置100では、貫通孔16の第1面14a側の幅が、貫通孔16の第2面14b側の幅よりも広い。
【0097】
図12(a)~図12(c)は、第2の実施形態に係る電子装置の製造工程の一例を模式的に表す断面図である。
図12(a)及び図12(b)に表したように、電子装置100の製造においては、溝70の形成を行った後、溝72の形成を行わずに、絶縁層41、42の溝70と対向する部分のエッチングを行う。電子装置100の製造においては、溝70(第2溝)の深さを溝61、62(第1溝)の深さよりも浅く形成し、溝70と第2面60bとの間に残る基板60の一部を対向部60tとして形成する。そして、溝70及び対向部60tを形成した後、基板60の第1面60a側を接着剤74によって支持基板76に接着する。
【0098】
図12(c)に表したように、貫通孔16に応じた形状にパターニングされたレジスト78を基板60の第2面60b側に設ける。この際、レジスト78の開口部の幅は、溝70の幅よりも狭くする。レジスト78の開口部の幅は、例えば、基板本体14の第2部分32によって設定される貫通孔16の幅に応じて設定される。
【0099】
そして、図12(c)に表したように、レジスト78をマスクとして第2面60b側から基板60のエッチングを行い、第2面60b側から溝70まで到達する溝80を形成する。換言すれば、溝80の底部を溝70の底部と接続させる。これにより、溝70、80によって基板60を貫通する貫通孔16が形成される。以下、第1の実施形態と同様に、接着剤74及び支持基板76を除去し、必要に応じて基板60を切断することにより、電子装置100が製造される。
【0100】
このように、基板本体14は、必ずしも第3部分33を有しなくてもよい。例えば、第2面60b側から形成する溝80の深さが深くなりすぎ、溝80を形成し難い場合などには、上記第1の実施形態で表したように、溝70内に溝72を形成し、第2面60b側からエッチングする溝80の深さを浅くできるようにすることが望ましい。
【0101】
電子装置100においても、対向部60tを形成することにより、上記第1の実施形態と同様に、電極21、22の端部に加わる応力や歪みの影響を抑制し、電極21、22の変形を抑制することができる。高い信頼性の電子装置100を提供することができる。
【0102】
図13は、第2の実施形態に係る電子装置の変形例を模式的に表す断面図である。
図13に表したように、電子装置100aでは、第2部分32が、第1部分31から第2面14bに向かうに従って貫通孔16の幅を広くする。
【0103】
電子装置100aの貫通孔16の形状は、例えば、図12(c)に表したように、第2面60b側から基板60のエッチングを行い、第2面60b側から溝70まで到達する溝80を形成する際に、エッチングの等方性の条件を徐々に弱めていくことによって形成することができる。換言すれば、エッチングの幅方向への広がりを徐々に弱めることによって形成することができる。
【0104】
このように、第2面60b側からエッチングを行う際に、溝80の幅を徐々に狭めていくことにより、例えば、溝80と溝70との位置ズレを抑制しやすくすることができる。例えば、貫通孔16をより形成し易くすることができる。
【0105】
図14は、第2の実施形態に係る電子装置の変形例を模式的に表す断面図である。
図14に表したように、この例では、第2面60b側から基板60のエッチングを行い、第2面60b側から溝70まで到達する溝80を形成する際に、対向部60tを除去している。
【0106】
対向部60tは、基板60を接着剤74によって支持基板76に接着する際に、少なくとも設けられていればよい。従って、基板60を支持基板76に接着した後、第2面60b側から基板60のエッチングを工程においては、対向部60tを除去してもよい。換言すれば、製造後の電子装置は、必ずしも対向部18を有しなくてもよい。このように、貫通孔16を形成する工程は、溝80の形成により、対向部60tを除去することを含んでもよい。
【0107】
実施形態によれば、高い信頼性の電子装置及びその製造方法が提供できる。
【0108】
本願明細書において、「電気的に接続」には、直接接触して接続される場合の他に、他の導電性部材などを介して接続される場合も含む。
【0109】
本実施形態は、以下の態様を含む。
(付記1)
貫通孔を有する基板と、
前記貫通孔内において前記基板に設けられ、前記貫通孔の軸方向に沿って延びる電極と、
前記基板に設けられ、前記電極よりも前記貫通孔の幅方向の中心に近い位置に配置され、前記幅方向において前記電極の前記軸方向の一端側の一部と対向する対向部と、
を備えた電子装置。
【0110】
(付記2)
前記電極は、中空状である付記1記載の電子装置。
【0111】
(付記3)
前記貫通孔内に設けられた複数の前記電極を備えた付記1又は2に記載の電子装置。
【0112】
(付記4)
複数の前記電極を備え、
前記基板は、複数の前記貫通孔を有し、
複数の前記電極は、複数の前記貫通孔のそれぞれに設けられる付記1~3のいずれか1つに記載の電子装置。
【0113】
(付記5)
前記対向部の材料は、前記基板の材料と同じである付記1~4のいずれか1つに記載の電子装置。
【0114】
(付記6)
前記対向部の材料は、前記基板の材料と異なる付記1~4のいずれか1つに記載の電子装置。
【0115】
(付記7)
前記貫通孔の前記軸方向の一端側の幅は、前記貫通孔の前記軸方向の他端側の幅と異なる付記1~6のいずれか1つに記載の電子装置。
【0116】
(付記8)
前記対向部は、前記基板と電気的に接続され、前記幅方向において前記電極と所定の間隔を空けて配置されている付記1~7のいずれか1つに記載の電子装置。
【0117】
(付記9)
前記基板は、
前記貫通孔の前記軸方向の一端側の第1面と、
前記貫通孔の前記軸方向の他端側の第2面と、
前記第1面と前記第2面との間において前記貫通孔を所定の幅に設定する第1部分と、
前記第1部分と前記第2面との間において前記貫通孔の幅を前記第1部分における前記貫通孔の幅よりも狭くする第2部分と、
を有し、
前記電極は、前記貫通孔内において前記第1部分に設けられ、
前記対向部は、前記電極よりも前記幅方向の中心に近い位置から前記貫通孔の前記一端側に向かって延びるように前記第2部分に設けられる付記1~8のいずれか1つに記載の電子装置。
【0118】
(付記10)
前記基板は、前記第2部分と前記第2面との間において前記貫通孔の幅を前記第2部分における前記貫通孔の幅よりも広くする第3部分をさらに有する付記9記載の電子装置。
【0119】
(付記11)
前記基板は、前記第1部分と前記電極との間に設けられた絶縁層を有する付記9又は10に記載の電子装置。
【0120】
(付記12)
前記絶縁層は、前記第2部分と前記電極との間、及び前記対向部と前記電極との間に延在する付記11記載の電子装置。
【0121】
(付記13)
前記第2部分は、前記第1部分から前記第2面に向かうに従って前記貫通孔の幅を広くする付記9記載の電子装置。
【0122】
(付記14)
前記電極の前記一部と対向する部分における前記対向部の前記軸方向の長さは、前記幅方向における前記対向部と前記基板本体との間の距離よりも長い付記1~13のいずれか1つに記載の電子装置。
【0123】
(付記15)
第1面と、前記第1面と反対側の第2面と、を有する基板の前記第1面側に第1溝を形成する工程と、
前記第1溝の内部に導電部を形成する工程と、
前記基板の前記第1面側に前記導電部と並べて第2溝を形成し、前記導電部の少なくとも一部を前記第2溝側に露出させるとともに、前記導電部と前記第2溝とが並ぶ方向において前記導電部の前記第2面側の一部と対向する対向部を前記導電部の前記第2溝側に形成する工程と、
前記基板の前記第1面側に接着剤を介して支持基板を接着する工程と、
前記基板の前記第2面側に前記第2溝まで到達する第3溝を形成することにより、前記基板を貫通する貫通孔を形成するとともに、前記貫通孔内において前記基板に設けられ、前記貫通孔の軸方向に沿って延びる電極を前記導電部から形成する工程と、
前記支持基板及び前記接着剤を除去する工程と、
を有する電子装置の製造方法。
【0124】
(付記16)
前記貫通孔を形成する前記工程は、前記対向部の少なくとも一部を残すことを含む付記15記載の電子装置の製造方法。
【0125】
(付記17)
前記貫通孔を形成する前記工程は、前記第3溝の形成により、前記対向部を除去することを含む付記15記載の電子装置の製造方法。
【0126】
(付記18)
前記第2溝及び前記対向部を形成する前記工程は、前記第1溝の深さよりも浅い第1凹部を形成し、前記第1凹部の幅よりも幅が狭く、前記第1溝の深さよりも深い第2凹部を前記第1凹部内に形成することにより、前記第1凹部と前記第2凹部とによって前記第2溝を形成するとともに、前記導電部と前記第2凹部との間に残る前記基板の一部を前記対向部として形成することを含む付記15~17のいずれか1つに記載の電子装置の製造方法。
【0127】
(付記19)
前記貫通孔を形成する前記工程は、前記第3溝の幅を前記第2溝の前記第2凹部の幅よりも広くすることを含む付記18記載の電子装置の製造方法。
【0128】
(付記20)
前記第2溝及び前記対向部を形成する前記工程は、前記第2溝の深さを前記第1溝の深さよりも浅く形成し、前記第2溝と前記第2面との間に残る前記基板の一部を前記対向部として形成することを含む付記15~17のいずれか1つに記載の電子装置の製造方法。
【0129】
以上、具体例を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。例えば、電子装置に含まれる各要素の具体的な構成に関しては、当業者が公知の範囲から適宜選択することにより本発明を同様に実施し、同様の効果を得ることができる限り、本発明の範囲に包含される。
【0130】
各具体例のいずれか2つ以上の要素を技術的に可能な範囲で組み合わせたものも、本発明の要旨を包含する限り本発明の範囲に含まれる。
【0131】
その他、本発明の実施の形態として上述した電子装置を基にして、当業者が適宜設計変更して実施し得る全ての電子装置も、本発明の要旨を包含する限り、本発明の範囲に属する。
【0132】
その他、本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の範囲に属するものと了解される。
【0133】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0134】
10、10a~10g…電子装置、 12…基板、 14…基板本体、 14a…第1面、 14b…第2面、 16…貫通孔、 18…対向部、 21~24…電極、 31…第1部分、 32…第2部分、 33…第3部分、 41、42…絶縁層、 51、52…配線層、 53、54…接続用電極、 60…基板、 60a…第1面、 60b…第2面、 60t…対向部、 61、62…溝、 64…絶縁層、 66…金属層、 68…レジスト、 70、72…溝、 74…接着剤、 76…支持基板、 80…溝、 100、100a…電子装置、
図1
図2
図3
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図5
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図10
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図12
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図14