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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135274
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】搬送補助装置
(51)【国際特許分類】
   A61G 7/08 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
A61G7/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023045885
(22)【出願日】2023-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000167222
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクトマシンシステム
(71)【出願人】
【識別番号】599045903
【氏名又は名称】学校法人 久留米大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】丹羽 寛之
(72)【発明者】
【氏名】友枝 博
【テーマコード(参考)】
4C040
【Fターム(参考)】
4C040AA28
4C040BB03
4C040DD01
4C040EE05
(57)【要約】      (修正有)
【課題】従来の装置と同等の高さ寸法に保ちつつ、駆動輪のストローク量を大きくする搬送補助装置を提供する。
【解決手段】搬送補助装置1は、前後方向において前輪と後輪との間に配置される。この搬送補助装置は、ベッドの下部に固定されるベース部材71と、ベース部材に連結され、ベッドの左右方向に延びる第1揺動軸Ow1まわりに揺動する第1アーム部材72Rと、第1アーム部材に支持され、第1アーム部材と一体的に揺動する第1車軸213Rを有する第1メカナムホイール21Rと、第1メカナムホイールをベッドの搬送面に押し付けるように、第1アーム部材の揺動を付勢する第1バネ部材75Rと、を備える。第1バネ部材は、第1アーム部材に連結される一端部751Rと、この一端部に対して前後いずれかに配置されかつベース部材に連結される他端部752Rと、を有する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前輪及び後輪を有する複数のキャスタを備えたキャスタ付きベッドの手押移動をアシストするために、該ベッドの前後方向において前記前輪と前記後輪との間に配置される搬送補助装置であって、
前記ベッドの下部に固定されるベース部材と、
前記ベース部材に連結され、前記ベッドの左右方向に延びる回転軸まわりに揺動するアーム部材と、
前記アーム部材に支持され、該アーム部材と一体的に揺動する車軸を有する駆動輪と、
前記駆動輪を前記ベッドの搬送面に押し付けるように、前記アーム部材の揺動を付勢するバネ部材と、を備え、
前記バネ部材は、
前記アーム部材に連結される一端部と、
前記一端部に対して前後いずれかに配置されかつ前記ベース部材に連結される他端部と、を有する
ことを特徴とする搬送補助装置。
【請求項2】
請求項1に記載された搬送補助装置において、
前記ベース部材は、前記ベッドのサイドフレーム間を架け渡す前後一対の梁状部材によって構成され、
前記前後一対の梁状部材のうちの一方には、前記アーム部材が連結され、
前記前後一対の梁状部材のうちの他方には、前記バネ部材の前記他端部が連結される
ことを特徴とする搬送補助装置。
【請求項3】
請求項2に記載された搬送補助装置において、
前記前後一対の梁状部材の間には、
前記駆動輪と、
前記駆動輪に駆動連結されたモータと、
前記モータを制御するためのコントローラが収容される収容ボックスと、が配置される
ことを特徴とする搬送補助装置。
【請求項4】
請求項3に記載された搬送補助装置において、
前記モータ及び前記コントローラに電力を供給するバッテリを備え、
前記バッテリは、前記収容ボックス外に配置され、
前記バッテリは、前記ベッドに対して着脱可能に構成されている
ことを特徴とする搬送補助装置。
【請求項5】
請求項1に記載された搬送補助装置において、
前記バネ部材は、前記アーム部材を引き込むように収縮する引張バネにより構成され、
前記アーム部材は、前記バネ部材を原動体とし、前記車軸を従動体としたベルクランク機構を構成する
ことを特徴とする搬送補助装置。
【請求項6】
請求項5に記載された搬送補助装置において、
前記車軸は、前記回転軸の前方又は後方に配置され、
前記バネ部材の前記一端部と前記アーム部材との連結部は、前記回転軸の上方に配置され、
前記左右方向に沿った側面視において、前記回転軸と前記車軸との距離は、前記回転軸と前記連結部との距離に比べて長い
ことを特徴とする搬送補助装置。
【請求項7】
請求項5に記載された搬送補助装置において、
前記アーム部材は、
前記バネ部材の前記一端部に連結される連結部と、
前記車軸を支持する揺動端部と、を有し、
前記バネ部材は、固定端としての前記他端部から自由端としての前記一端部に向かって、前記前後方向において前方又は後方に延びるように配置されている一方、
前記アーム部材は、前記連結部から前記揺動端部に向かって、前記前後方向において前記バネ部材とは逆方向に延びるように配置されている
ことを特徴とする搬送補助装置。
【請求項8】
請求項1に記載された搬送補助装置において、
前記アーム部材及び前記バネ部材は、前記搬送補助装置を上方から見たときに、前記駆動輪と重ならないように配置されている
ことを特徴とする搬送補助装置。
【請求項9】
請求項1に記載された搬送補助装置において、
前記搬送補助装置は、前記ベッドの下部の前後中央に配置されている
ことを特徴とする搬送補助装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、搬送補助装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、メカナムホイール車両が開示されている。この車両は、シャーシと、少なくとも4つのメカナムホイールと、シャーシに対して各メカナムホイールを支持するコイルばねと、を備えている。
【0003】
前記特許文献1によると、各コイルバネは、シャーシと各メカナムホイールとの間に介在しており、地面と直交する方向にばね力成分を作用させるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2018-504305号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願発明者らは、メカナムホイール等の駆動輪をキャスタ付きベッドの下部に取り付けることで、そのベッドの搬送を補助することを検討した。その際、前記特許文献1に開示されているコイルばねのようなバネ部材を用いることで、搬送路の路面に駆動輪を密着させることを考えた。
【0006】
また、本願発明者らはさらに検討を進め、前述の駆動輪とバネ部材とをユニット化し、キャスタ付きベッドの前輪と後輪との間に配置することを考えた。
【0007】
ところが、前述のように装置を配置した場合、平坦な路面からスロープ状の路面に乗り上げたときに、駆動輪が路面から離れてしまったり、駆動輪と路面との密着が弱くなったりする可能性があった。
【0008】
そうした懸念を払拭するためには、バネ部材の伸縮量を大きくすることで、駆動輪のストローク量(特に、下方へのストローク量)を大きくすることが考えられる。しかしながら、前記特許文献1のようにバネ部材を上下方向に伸縮させるように構成した場合、バネ部材の伸縮量を大きくした分だけ、高さ方向における装置の大型化を招くため不都合である。
【0009】
ここに開示する技術は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、従来の装置と同等の高さ寸法に保ちつつ、駆動輪のストローク量を大きくすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の第1の態様は、前輪及び後輪を有する複数のキャスタを備えたキャスタ付きベッドの手押移動をアシストするために、該ベッドの前後方向において前記前輪と前記後輪との間に配置される搬送補助装置に係る。この搬送補助装置は、前記ベッドの下部に固定されるベース部材と、前記ベース部材に連結され、前記ベッドの左右方向に延びる回転軸まわりに揺動するアーム部材と、前記アーム部材に支持され、該アーム部材と一体的に揺動する車軸を有する駆動輪と、前記駆動輪を前記ベッドの搬送面に押し付けるように、前記アーム部材の揺動を付勢するバネ部材と、を備え、前記バネ部材は、前記アーム部材に連結される一端部と、前記一端部に対して前後いずれかに配置されかつ前記ベース部材に連結される他端部と、を有する。
【0011】
前記第1の態様によると、アーム部材の揺動を付勢するためのバネ部材が、ベッドの前後方向に沿わせた姿勢で連結される。このような姿勢とすることで、駆動輪を上下方向にストロークさせつつも、バネ部材自体は前後方向に伸縮することになる。駆動輪のストローク方向とバネ部材の伸縮方向とを交差させたことにより、駆動輪のストローク量を大きくすべくバネ部材の伸縮量を大きくしたとしても、従来の装置と同等の高さ寸法に保つことができるようになる。
【0012】
また、本開示の第2の態様によれば、前記ベース部材は、前記ベッドのサイドフレーム間を架け渡す前後一対の梁状部材によって構成され、前記前後一対の梁状部材のうちの一方には、前記アーム部材が連結され、前記前後一対の梁状部材のうちの他方には、前記バネ部材の前記他端部が連結される、としてもよい。
【0013】
前記第2の態様によると、一対の梁状部材にアーム部材及びバネ部材を連結することで、搬送補助装置のユニット化を進めることができる。ユニット化を進めることにより、ベッドへの着脱を容易にすることができる。そのことで、搬送補助装置の使い勝手を向上させることが可能になる。
【0014】
また、本開示の第3の態様によれば、前記前後一対の梁状部材の間には、前記駆動輪と、前記駆動輪に駆動連結されたモータと、前記モータを制御するためのコントローラが収容される収容ボックスと、が配置される、としてもよい。
【0015】
前記第3の態様によると、搬送補助装置のユニット化を進めることが可能になる。これにより、ベッドへの取り付けが容易になる。
【0016】
また、本開示の第4の態様によれば、前記搬送補助装置は、前記モータ及び前記コントローラに電力を供給するバッテリを備え、前記バッテリは、前記収容ボックス外に配置され、前記バッテリは、前記ベッドに対して着脱可能に構成されている、としてもよい。
【0017】
前記第4の態様によると、バッテリを意図的に収容ボックス外に配置することで、バッテリの交換に際し、収容ボックスをベッドから取り外したり、収容ボックスを開閉したりすることが不要となる。これにより、搬送補助装置の使い勝手を向上させることができる。
【0018】
また、本開示の第5の態様によれば、前記バネ部材は、前記アーム部材を引き込むように収縮する引張バネにより構成され、前記アーム部材は、前記バネ部材を原動体とし、前記車軸を従動体としたベルクランク機構を構成する、としてもよい。
【0019】
前記第5の態様によると、アーム部材がベルクランク機構を構成することで、バネ部材の付勢力を利用して車軸を上下にストロークさせる上で有利になる。
【0020】
また、本開示の第6の態様によれば、前記車軸は、前記回転軸の前方又は後方に配置され、前記バネ部材の前記一端部と前記アーム部材との連結部は、前記回転軸の上方に配置され、前記左右方向に沿った側面視において、前記回転軸と前記車軸との距離は、前記回転軸と前記連結部との距離に比べて長い、としてもよい。
【0021】
前記第6の態様によると、回転軸まわりにアーム部材が回転したときに、回転軸に対する車軸の変位量は、該回転軸に対する連結部の変位量に比べて大きくなる。これにより、バネ部材によって連結部を引っ張り込んでアーム部材を揺動させたときに、連結部の変位量以上に車軸を変位させることができる。このことは、駆動輪のストローク量を大きくする上で有効である。
【0022】
さらに、前記連結部は、回転軸の上方に配置されている。そのため、回転軸と連結部との距離を相対的に短くすることは、従来の装置と同等の高さ寸法に保つ上で有効である。
【0023】
また、本開示の第7の態様によれば、前記アーム部材は、前記バネ部材の前記一端部に連結される連結部と、前記車軸を支持する揺動端部と、を有し、前記バネ部材は、固定端としての前記他端部から自由端としての前記一端部に向かって、前記前後方向において前方又は後方に延びるように配置されている一方、前記アーム部材は、前記連結部から前記揺動端部に向かって、前記前後方向において前記バネ部材とは逆方向に延びるように配置されている、としてもよい。
【0024】
前記第7の態様によれば、アーム部材は、バネ部材に対して前後方向に折り返すように延びている。このように構成することで、アーム部材、ひいては駆動輪のストローク量を確保しつつ、前後方向においても従来の装置と同等の寸法に保つ上で有利になる。
【0025】
また、本開示の第8の態様によれば、前記アーム部材及び前記バネ部材は、前記搬送補助装置を上方から見たときに、前記駆動輪と重ならないように配置されている、としてもよい。
【0026】
前記第8の態様によると、駆動輪とアーム部材又はバネ部材とは、それぞれ、上下方向に並ばないように配置されることになる。このように配置することで、駆動輪の上下ストロークを確保するとともに、搬送補助装置を従来の装置と同等の高さ寸法に保つ上で有利になる。
【0027】
また、本開示の第9の態様によれば、前記搬送補助装置は、前記ベッドの下部の前後中央に配置されている、としてもよい。
【0028】
前述のように、平坦な路面からスロープ状の路面に乗り上げたときに、駆動輪が路面から離れてしまったり、駆動輪と路面との密着が弱くなったりする可能性がある。そうした問題は、搬送補助装置を、キャスタ付きベッドの前後中央に配置した場合により顕著となる。本開示に係る構成は、そうした状況下において、極めて有用となる。
【発明の効果】
【0029】
以上説明したように、本開示によれば、従来の装置と同等の高さ寸法に保ちつつ、駆動輪のストローク量を大きくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】搬送補助装置及びキャスタ付きベッドの全体構成を例示する側面図である。
図2】搬送補助装置及びキャスタ付きベッドの全体構成を例示する底面図である。
図3】搬送補助装置の構成を例示する斜視図である。
図4】搬送補助装置の構成を例示する平面図である。
図5】搬送補助装置の構成を例示する側面図である。
図6】搬送補助装置の構成を例示する正面図である。
図7】搬送補助装置の取付構造を例示する側面図である。
図8】搬送補助装置の制御系の構成を例示するブロック図である。
図9】搬送補助装置の構成を例示する模式図である。
図10】段差の乗越時における搬送補助装置の動作を説明する図である。
図11】従来の搬送補助装置を例示する図9対応図である。
図12】従来の搬送補助装置の乗り上げを例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本開示の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0032】
図1は搬送補助装置1及びキャスタ付きベッド10の全体構成を例示する側面図であり、図2は搬送補助装置1及びキャスタ付きベッド10の全体構成を例示する底面図である。
【0033】
また、図3は搬送補助装置1の構成を例示する斜視図であり、図4は搬送補助装置1の構成を例示する平面図であり、図5は搬送補助装置1の構成を例示する側面図である。また、図6は搬送補助装置1の構成を例示する正面図であり、図7は搬送補助装置1の取付構造を例示する図である。
【0034】
また、図8は搬送補助装置1の制御系の構成を例示するブロック図であり、図9は、搬送補助装置の構成を例示する模式図である。また、図10は、段差の乗越時における搬送補助装置1の動作を説明する図であり、図11は、従来の搬送補助装置101を例示する図9対応図であり、図12は、従来の搬送補助装置101の乗り上げを例示する図である。
【0035】
搬送補助装置1は、対象物としてのキャスタ付きベッド(以下、単に「ベッド」という)10に取り付けられている。この搬送補助装置1は、ベッド10の手押移動をアシストするための装置である。
【0036】
図1及び図2に示すように、本実施形態に係るベッド10は、前輪14F及び後輪14Bを含んだ複数のキャスタ14を備えており、例えば医療用ベッドとして用いられるようになっている。
【0037】
以下、ベッド10の長手方向、つまりベッド10上で人が横たわる方向を「前後方向」又は「縦方向」とし、その前後方向に沿って足先に向かう方向を「前」とし、枕元に向かう方向を「後」とする。
【0038】
同様に、ベッド10の短手方向、つまり水平面上で前後方向に直交する方向を「左右方向」又は「横方向」とし、その左右方向に沿って図1の紙面奥行側に向かう方向を「右」とし、図1の紙面手前側に向かう方向を「左」とする(詳細は、図2を参照)。なお、ここでいう「左右方向」とは、後側から前側に向かって見たときの左右方向をいう。以下の記載における「横移動」とは、この左右方向に沿った移動をいう。また、左右方向(横方向)とは、前後方向に直交しかつ搬送面(ベッド10が走行する床面)Fに沿って延びる方向であると定義することもできる。
【0039】
ベッド10は、搬送者100によって支持される。図例では、ベッド10は、その前後方向の一端側(例えば後端側)が支持されるようになっている。搬送補助装置1は、搬送者100によって支持されたベッド10の手押移動をアシストするように動作する。
【0040】
図1に示すように、ベッド10は、不図示のマットレスが載置されるベッド本体11と、ベッド本体11を下方から支持するフレーム12と、フレーム12に対してベッド本体11を昇降させる昇降部13と、ベッド10の下面に配置された複数(図例では4つ)のキャスタ14と、を備えている。医療用ベッドとして用いられる場合、ベッド10は、例えば60kg以上300kg以下となる。
【0041】
ここで、ベッド本体11は、ベッド10の後端側に配置されるヘッドボード11hと、前後方向において前記後端側の反対に位置する前端側に配置されるフットボード11fと、ベッド10の左右両側に配置されるサイドレール11sと、を有している。
【0042】
このうち、ヘッドボード11hは、ベッド10を手押し移動させるべく、搬送者100によって後側から支持される。ヘッドボード11hは、その搬送者100によって力が加えられる支持部として機能する。ハンドル、グリップ等の部材をヘッドボード11hに取り付けたり、ヘッドボード11hと一体化させたりすることで、それらの部材を支持部としてもよい。フットボード11f、サイドレール11s等が支持されてもよい。
【0043】
また、フレーム12は、図2に示すように矩形枠状に構成されており、前フレーム12F、右フレーム12R、左フレーム12L及び後フレーム12Bによって四辺が構成されている。
【0044】
ここで、前フレーム12Fは、ベッド10の前側に配置されており、左右方向に沿って延びている。右フレーム12Rは、ベッド10の右側に配置されており、前後方向に沿って延びている。左フレーム12Lは、ベッド10の左側に配置されており、前後方向に沿って延びている。後フレーム12Bは、ベッド10の後側に配置されており、左右方向に沿って延びている。
【0045】
また、図1及び図2に示すように、複数のキャスタ14を構成する前輪14F及び後輪14Bは、ベッド10の下面の4隅に配置されている。前輪14F及び後輪14Bは、左右方向に沿って2つずつ設けられている。複数のキャスタ14は、搬送面Fに対してフレーム12、昇降部13及びベッド本体11を支持している。
【0046】
各キャスタ14は、いわゆるフリーキャスタであって、ベッド10の下面に固定される取付部14aと、この取付部14aに対して旋回軸Ocまわりに旋回可能なフォーク部14bと、フォーク部14bによって回転可能に支持された車輪14cと、を有している。各フォーク部14bの旋回軸Ocは、上下方向(ベッド10の高さ方向)に沿って延びている。各車輪14cの回転軸は、水平面に沿って延びている。この回転軸は、取付部14aに対してフォーク部14bが旋回することで、左右方向に対して傾斜するようになっている。
【0047】
搬送補助装置1は、ベッド10の手押移動をアシストするために、該ベッド10の前後方向において前輪14Fと後輪14Bとの間に配置されている。詳しくは、搬送補助装置1は、ベッド10の下部の前後中央に配置されている。なお、ここでいう「前後中央に配置されている」とは、図2に示すように、搬送補助装置1の前端と後端との間の範囲Rfb内に、ベッド10の前後中央位置Pが収まっていることをいう。
【0048】
さらに詳しくは、搬送補助装置1は、前述の右フレーム12Rにおける前後方向の中途の部位と、左フレームLにおける前後方向の中途の部位と、を架け渡すように配置されている。搬送補助装置1は、前後方向においては前輪14Fと後輪14Bとの間に配置され、左右方向においてはベッド10の中央に配置されている。
【0049】
図1図8に示すように、搬送補助装置1は、収容ボックス6と、取付具7と、駆動輪としての第1及び第2メカナムホイール21R,21Lと、第1及び第2モータ22R,22Lと、バッテリ3と、コントローラ4と、6軸センサ5と、を備えている(第1及び第2モータ22R,22L、並びに6軸センサ5は、図8にのみ図示)。以下、第1及び第2メカナムホイール21R,21Lのうち、第1メカナムホイール21Rが右側に位置するものとし、第2メカナムホイール21Lが左側に位置するものとする。
【0050】
これらの要素のうち、コントローラ4及び6軸センサ5は収容ボックス6に収容されており、バッテリ3、取付具7、第1及び第2メカナムホイール21R,21L、第1及び第2モータ22R,22Lは、収容ボックス6外に配置されている。
【0051】
第1及び第2メカナムホイール21R,21Lは、図1図2に示すように、ベッド10の下部(底部)に取り付けられている。第1及び第2メカナムホイール21R,21Lは、ベッド10の搬送面Fに接している(搬送面Fについては、図1及び図9を参照)。また、第1及び第2メカナムホイール21R,21Lは、前輪14Fの後側かつ後輪14Bの前側に配置されている。本実施形態の場合、第1及び第2メカナムホイール21R,21Lは、図2に示すように、短手方向としての左右方向に並ぶように配置されている。
【0052】
詳しくは、図3図5に示すように、第1メカナムホイール21Rは、第1回転軸Oy1まわりに回転する第1車軸213Rと、この第1車軸213Rと一体的に回転する第1ホイール本体211Rと、第1ホイール本体211Rの外周に沿って配置され、それぞれ第1回転軸Oy1に対して傾斜した第1傾斜軸Orまわりに回転する複数の第1樽型ローラ212Rと、を有している。
【0053】
一方、第2メカナムホイール21Lは、第2回転軸Oy2まわりに回転する第2車軸213Lと、この第2車軸213Lと一体的に回転する第2ホイール本体211Lと、第2ホイール本体211Lの外周に沿って配置され、それぞれ第2回転軸Oy2に対して第1傾斜軸Orとは異なる方向に傾斜した第2傾斜軸Olまわりに回転する複数の第2樽型ローラ212Lと、を有している。
【0054】
ここで、第1及び第2回転軸Oy1,Oy2は、双方とも、左右方向に延びている。そして、第1傾斜軸Orは、第2傾斜軸Olに対し、前後方向を基準(図4の対称軸Osを参照)とした線対称となるように傾斜している。言い換えると、第1傾斜軸Orと第2傾斜軸Olは、上下方向及び前後方向に延びる平面を鏡映面とすると、その鏡映面に関して鏡映対称となるように延びている。
【0055】
さらに、図4のように上方から見た場合(平面視した場合)、第1及び第2傾斜軸Or,Olは、それぞれ、前後方向に沿って後側から前側に向かうに従って、左右方向の内側から外側(左右方向の中央部から右側又は左側)に向かって延びている。
【0056】
さらに詳しくは、第1回転軸Oy1に対する第1傾斜軸Orの傾斜角θrは、平面視で45°に設定されている。同様に、第2回転軸Oy2に対する第2傾斜軸Olの傾斜角θlは、同じく平面視で45°に設定されている。なお、各樽型ローラ212R,212Lの傾斜方向及び傾斜角度は、これらの例には限定されない。例えば、搬送補助装置1全体を、図2に例示した状態から、上下方向に延びるz軸回りに所定角度回転させた状態に配置変更してもよい。
【0057】
また、後述のように、第1及び第2メカナムホイール21R,21Lは、図3等に示したベース部材71を介して相互に連結されている。したがって、第1及び第2メカナムホイール21R,21Lは、前後方向及び左右方向に一体的に移動したり、水平面に垂直な旋回軸まわりに一体的に旋回したりする。
【0058】
第1及び第2モータ22R,22Lは、第1及び第2メカナムホイール21R,21Lのそれぞれに駆動連結されている。具体的に、第1及び第2モータ22R,22Lは、それぞれ、いわゆる3相のDCブラシレスモータとして構成されている。第1及び第2モータ22R,22Lは、双方ともコントローラ4と電気的に接続されており、このコントローラ4によって制御されるようになっている。
【0059】
第1及び第2モータ22R,22Lには、それぞれの回転に際し、トルク負荷に対応したモータ電流が供給される。モータ電流を通じて、第1及び第2モータ22R,22Lの回転数と、正転及び逆転とを切り替えることができる。
【0060】
そして、第1モータ22Rは、第1メカナムホイール21Rに対し、駆動力(トルク)を伝達できるように連結されている。第2モータ22Lは、第2メカナムホイール21Lに対し、駆動力(トルク)を伝達できるように連結されている。
【0061】
第1モータ22Rが回転することで、その駆動力が伝達されて第1メカナムホイール21Rが回転する。同様に、第2モータ22Lが回転することで、その駆動力が伝達されて第2メカナムホイール21Lが回転する。
【0062】
本実施形態では、第1モータ22Rを正転させることで第1メカナムホイール21Rが前転し、第1モータ22Rを逆転させることで第1メカナムホイール21Rが後転するように構成されている。同様に、本実施形態では、第2モータ22Lを正転させることで第2メカナムホイール21Lが前転し、第2モータ22Lを逆転させることで第2メカナムホイール21Lが後転するように構成されている(図5も参照)。
【0063】
なお、第1モータ22Rは第1メカナムホイール21Rに内蔵されており、第2モータ22Lは第2メカナムホイール21Lに内蔵されている。このように第1及び第2モータ22R,22Lを内蔵させることで、搬送補助装置1全体の簡素化及びコンパクト化を図ることができる。
【0064】
バッテリ3は、第1及び第2モータ22R,22L及びコントローラ4に電力を供給する。本実施形態に係るバッテリ3は、例えばリチウムイオンバッテリによって構成されている。バッテリ3は、収容ボックス6外の、例えばフレーム12の下方に配置されている。このバッテリ3は、ベッド10に対して着脱可能に構成されている。これにより、搬送補助装置1全体をベッド10から取り外さずとも、バッテリ3のみを取り外して充電することができる。
【0065】
コントローラ4は、6軸センサ5等から入力された電気信号に基づいて、第1及び第2モータ22R,22Lを制御する。このコントローラ4は、CPU、メモリ及び入出力バスを有しており、例えば制御基板によって構成されている。
【0066】
コントローラ4は、6軸センサ5等から入力された電気信号に基づいて、搬送者100によって加えられた力(外力)の方向および大きさを判断する。コントローラ4は、その判断に基づいて第1及び第2モータ22R,22Lそれぞれの指令回転数を算出し、その指令回転数を実現するように第1及び第2モータ22R,22Lを駆動する。コントローラ4が第1及び第2モータ22R,22Lを駆動することで、第1及び第2メカナムホイール21R,21Lが前転及び/又は後転する。
【0067】
その際、第1及び第2メカナムホイール21R,21Lの回転方向及び回転数を調整することで、外力が作用した方向に推力を発揮させることができる。この推力によって、ベッド10の手押移動をアシストすることができる。
【0068】
収容ボックス6は、第1及び第2メカナムホイール21R,21Lと共に取付具7に組み付けられており、この取付具7を介してベッド10の下部に取り付けられている。取付具7は、ベッド10の下部に対して着脱可能である。すなわち、本実施形態に係る搬送補助装置1は、ベッド10に対して後付可能であって、必要に応じて取り外し可能とされている。
【0069】
本実施形態に係る取付具7は、図2図7に示すように、ベース部材71と、第1及び第2アーム部材72R,72Lと、第1及び第2バネ部材75R,75Lと、第1及び第2ブラケット76R,76Lと、を有している。
【0070】
なお、第1アーム部材72R、第1バネ部材75R及び第1ブラケット76Rと、第2アーム部材72L、第2バネ部材75L及び第2ブラケット76Lとは、第1メカナムホイール21Rと第2メカナムホイール21Lとの関係と同様に、図4の対称軸Osを通過する平面に関して鏡映対称となるように構成されている。
【0071】
図2図6及び図7に示すように、ベース部材71は、ベースブラケット79を介してベッド10の下部に固定されている。このベース部材71は、前後一対の梁状部材によって構成されている。一対の梁状部材によって構成されたベース部材71は、図2に示すように、ベッド10のサイドフレーム間(右フレーム12Rと左フレーム12Lの間)を架け渡している。以下、前後一対の梁状部材のうち、前側に位置する梁状部材を前側ベース部材71fとし、後側に位置する梁状部材を後側ベース部材71bとする。
【0072】
前側ベース部材71fと後側ベース部材71bは、前後方向に間隔を空けて配置されており、それぞれ、右フレーム12Rの前後方向中央部と、左フレーム12Lの前後方向中央部と、を架け渡している。図3図5に示すように、前側ベース部材71fと後側ベース部材71bは、高さ方向においては略同じ位置に配置されており、水平方向においては互いに平行となるように配置されている。
【0073】
ベースブラケット79は、右フレーム12R及び左フレーム12Lに、前側ベース部材71fと後側ベース部材71bを取り付ける。ベースブラケット79は、右フレーム12R及び左フレーム12Lに対して着脱可能である。本実施形態では、前側ベース部材71fと後側ベース部材71bは、右フレーム12R及び左フレーム12Lの下方に位置している。
【0074】
また、図4に示すように、一対の梁状部材としての前側ベース部材71fと後側ベース部材71bの間には、第1及び第2メカナムホイール21R,21Lと、第1及び第2モータ22R,22Lと、収容ボックス6と、が配置されるようになっている。
【0075】
アーム部材としての第1及び第2アーム部材72R,72Lは、それぞれ、ベース部材71に連結されている。第1及び第2アーム部材72R,72Lのうち、図3図4等において右側に位置する第1アーム部材72Rは、左右方向に延びる第1揺動軸(回転軸)Ow1まわりに揺動する。同様に、図3図4等において左側に位置する第2アーム部材72Lは、同じく左右方向に延びる第2揺動軸(回転軸)Ow2まわりに揺動する。図4に示すように、本実施形態では、第1揺動軸Ow1及び第2揺動軸Ow2は同軸である。
【0076】
詳しくは、第1及び第2アーム部材72R,72Lは、前後方向及び上下方向に延びる板状部材によって構成されている。さらに詳しくは、第1及び第2アーム部材72R,72Lは、上下方向に比して、前後方向における寸法が長くなるように形成されている。
【0077】
さらに詳しくは、本実施形態に係る第1及び第2アーム部材72R,72Lは、それぞれ、図3に示すように、前後方向に沿って延びる長辺と、上下方向に延びる短辺とを有し、かつ横倒しにされたL字状に形成されている。
【0078】
また、第1及び第2アーム部材72R,72Lは、双方とも、前側ベース部材71f及び後側ベース部材71bの一方(本実施形態では後側ベース部材71b)に連結されている。
【0079】
また、前記第1揺動軸Ow1の中心位置は、図3に示すように、第1アーム部材72Rの前端部よりも後方、かつ、第1アーム部材72Rの上端部より下方に配置されている。本実施形態に係る第1揺動軸Ow1は、第1アーム部材72RをL字とみなしたときの、長辺と短辺とが交わる角部に配置されている。第1アーム部材72Rの前端部は、第1車軸213Rを支持するとともに、第1アーム部材72Rの揺動に際して他の部位よりも大きく変位する揺動端部として機能する。以下、これを「第1揺動端部722R」という(図9にのみ図示)。
【0080】
同様に、前記第2揺動軸Ow2の中心位置は、図3に示すように、第2アーム部材72Lの前端部よりも後方、かつ、第2アーム部材72Lの上端部より下方に配置されている。本実施形態に係る第2揺動軸Ow2は、第2アーム部材72LをL字とみなしたときの、長辺と短辺とが交わる角部に配置されている。第2アーム部材72Lの前端部は、第2車軸213Lを支持するとともに、第2アーム部材72Lの揺動に際して他の部位よりも大きく変位する揺動端部として機能する。以下、これを「第2揺動端部722L」という(図9にのみ図示)。
【0081】
また、第1揺動軸Ow1及び第2揺動軸Ow2は、それぞれ、前後方向においては前側ベース部材71f及び後側ベース部材71bの間に配置されており、上下方向においては前側ベース部材71f及び後側ベース部材71bと略同じ高さに配置されている
そして、図3及び図4に示すように、第1アーム部材72Rには、前述の第1メカナムホイール21Rが支持されている。詳しくは、第1メカナムホイール21Rは、第1車軸213Rを介して第1アーム部材72Rの前端部に支持されている。このように支持することで、第1車軸213Rは、第1アーム部材72Rと一体的に揺動することになる。
【0082】
特に本実施形態では、第1車軸213R、ひいてはその回転中心となる第1回転軸Oy1は、前後方向においては第1揺動軸Ow1及び第2揺動軸Ow2の前方、かつ前側ベース部材71fの後方に配置されている。なお、第1車軸213Rは、第1揺動軸Ow1及び第2揺動軸Ow2の後方、かつ後側ベース部材71bの前方に配置してもよい。
【0083】
同様に、図3及び図4に示すように、第2アーム部材72Lには、前述の第2メカナムホイール21Lが支持されている。詳しくは、第2メカナムホイール21Lは、第2車軸213Lを介して第2アーム部材72Lの前端部に支持されている。このように支持することで、第2車軸213Lは、第2アーム部材72Lと一体的に揺動することになる。
【0084】
特に本実施形態では、第2車軸213L、ひいてはその回転中心となる第2回転軸Oy2は、前後方向においては第1揺動軸Ow1及び第2揺動軸Ow2の前方、かつ前側ベース部材71fの後方に配置されている。なお、第2車軸213Lは、第1揺動軸Ow1及び第2揺動軸Ow2の後方、かつ後側ベース部材71bの前方に配置してもよい。
【0085】
図9及び図10に示すように、第1バネ部材75Rは、第1メカナムホイール21Rを前記搬送面Fに押し付けるように、第1アーム部材72Rの揺動を付勢する。この揺動は、第1アーム部材72Rの前端部を下方に向かって旋回させるように構成された動作である。本実施形態に係る第1バネ部材75Rは、第1アーム部材72R、特に第1アーム部材72Rの上端部を引き込むように収縮する引張バネによって構成されている。
【0086】
図3図5に戻ると、これらの図に示すように、第1バネ部材75Rは、第1アーム部材72Rに連結される一端部751Rと、この一端部751Rに対して前後いずれかに配置されかつベース部材71に連結される他端部752Rと、を有している。第1バネ部材75Rは、前後方向に沿って一端部751Rから他端部752Rに向かうに従って、下方に向かって斜めに延びている。第1バネ部材75Rの一端部751Rは、該第1バネ部材75Rの自由端として機能する。第1バネ部材75Rの他端部752Rは、該第1バネ部材75Rの固定端として機能する。
【0087】
本実施形態では、第1バネ部材75Rの一端部751Rは、第1バネ部材75Rの後端部によって構成されている。この一端部751Rは、第1アーム部材72Rの上端部に連結されている。以下、この上端部を「第1連結部」と呼称し、これに符号「721R」を付す(図3及び図9参照)。図3に示すように、本実施形態に係る第1連結部721Rは、回転軸としての第1揺動軸Ow1及び第2揺動軸Ow2の上方に配置されている。
【0088】
一方、第1バネ部材75Rの他端部752Rは、前記一端部751Rに対して前側に配置された、第1バネ部材75Rの前端部によって構成されている。この他端部752Rは、前側ベース部材71f及び後側ベース部材71bの他方(本実施形態では前側ベース部材71f)に連結されている。その際、他端部752Rは、前側べース部材71fに固定された第1ブラケット76Rを介して連結される。第1バネ部材75Rと第1ブラケット76Rとの連結位置は、第1バネ部材75Rと第1アーム部材72Rとの連結位置よりも低い。
【0089】
また、図4に示すように、第1アーム部材72R及び第1バネ部材75Rは、搬送補助装置1を上方から見たときに、第1メカナムホイール21Rと重ならないように配置されている。同図に示すように、第1アーム部材72R及び第1バネ部材75Rは、左右方向において、第1メカナムホイール21Rと収容ボックス6との間に配置されている。第1メカナムホイール21Rは、第1アーム部材72R、第1バネ部材75R及び収容ボックス6よりも右側に配置されている。
【0090】
同様に、図9等に示すように、第2バネ部材75Lは、第2メカナムホイール21Lを前記搬送面Fに押し付けるように、第2アーム部材72Lの揺動を付勢する。この揺動は、第2アーム部材72Lの前端部を下方に向かって旋回させるように構成された動作である。本実施形態に係る第2バネ部材75Lは、第2アーム部材72L、特に第2アーム部材72Lの上端部を引き込むように収縮する引張バネによって構成されている。
【0091】
図3図5に戻ると、これらの図に示すように第2バネ部材75Lは、第2アーム部材72Lに連結される一端部751Lと、この一端部751Lに対して前後いずれかに配置されかつベース部材71に連結される他端部752Lと、を有している。第2バネ部材75Lは、前後方向に沿って一端部751Lから他端部752Lに向かうに従って、下方に向かって斜めに延びている。第2バネ部材75Lの一端部751Lは、該第2バネ部材75Lの自由端として機能する。第2バネ部材75Lの他端部752Lは、該第2バネ部材75Lの固定端として機能する。
【0092】
本実施形態では、第2バネ部材75Lの一端部751Lは、第2バネ部材75Lの後端部によって構成されている。この一端部751Lは、第2アーム部材72Lの上端部に連結されている。以下、この上端部を「第2連結部」と呼称し、これに符号「721L」を付す(図3及び図9参照)。図3に示すように、本実施形態に係る第2連結部721Lは、回転軸としての第1揺動軸Ow1及び第2揺動軸Ow2の上方に配置されている。
【0093】
一方、第2バネ部材75Lの他端部752Lは、前記一端部751Lに対して前側に配置された、第2バネ部材75Lの前端部によって構成されている。この他端部752Lは、前側ベース部材71f及び後側ベース部材71bの他方(本実施形態では前側ベース部材71f)に連結されている。その際、他端部752Rは、前側べース部材71fに固定された第2ブラケット76Lを介して連結される。第2バネ部材75Lと第2ブラケット76Lとの連結位置は、第2バネ部材75Lと第2アーム部材72Lとの連結位置よりも低い。
【0094】
また、図4に示すように、第2アーム部材72L及び第2バネ部材75Lは、搬送補助装置1を上方から見たときに、第2メカナムホイール21Lと重ならないように配置されている。同図に示すように、第2アーム部材72L及び第2バネ部材75Lは、左右方向において、第2メカナムホイール21Lと収容ボックス6との間に配置されている。第2メカナムホイール21Lは、第2アーム部材72L、第2バネ部材75L及び収容ボックス6よりも左側に配置されている。
【0095】
図9に示すように、第1アーム部材72Rは、第1バネ部材75Rを原動体とし、第1車軸213Rを従動体とした第1のベルクランク機構B1を構成しているとみなすことができる。すなわち、第1バネ部材75Rの一端部751Rが前記第1連結部721Rを引っ張ると、第1アーム部材72Rは、第1揺動軸Ow1まわりに揺動するように付勢される。この付勢は、図9の矢印A1に示すように、第1車軸213Rを搬送面Fに押しつける方向に作用する。この付勢によって、第1メカナムホイール21Rを搬送面Fに押しつけることができる。
【0096】
また、第1のベルクランク機構B1の構成に関連し、左右方向に沿った側面視において、第1揺動軸Ow1と第1アーム部材72Rの前端部との距離(より詳細には、第1揺動軸Ow1と、第1車軸213R及び第1回転軸Oy1との距離)L1は、第1揺動軸Ow1と第1連結部721Rとの距離L2に比べて長い。
【0097】
また、第1バネ部材75Rは、固定端としての他端部752Rから自由端としての一端部751Rに向かって、前後方向において前方又は後方(本実施形態では後方)に向かって延びるように配置されている。一方、第1アーム部材72Rは、その第1連結部721Rから第1揺動端部722Rに向かって、前後方向において第1バネ部材75Rの逆方向(本実施形態では前方)に向かって延びている。
【0098】
第1アーム部材72R及び第1バネ部材75Rは、サスペンションとして機能する。この機能により、搬送面Fにおける段差を容易に乗り越えることができる。例えば図10に示すように、搬送面Fにおける段差の乗越に際しては、矢印A1に示した付勢力に抗する方向(搬送面Fから離れる方向)に第1アーム部材72Rが回動することになる。その際、付勢力は依然として作用していることから、第1メカナムホイール21Rと搬送面Fとの接触は維持されることになる。
【0099】
上記説明は、第2アーム部材72Lに関しても同様である。第2アーム部材72Lは、第2バネ部材75Lを原動体とし、第2車軸213Lを従動体とした第2のベルクランク機構B2を構成しているとみなすことができる。そのベルクランク機構B2における付勢方向は、第1アーム部材72Rに係る付勢方向と同じである。
【0100】
また、第2のベルクランク機構B2の構成に関連し、左右方向に沿った側面視において、第2揺動軸Ow2と第2アーム部材72Lの前端部との距離(より詳細には、第2揺動軸Ow2と、第2車軸213L及び第2回転軸Oy2との距離)L1は、側面視における第2揺動軸Ow2と第2連結部721Lとの距離L2に比べて長い。
【0101】
また、第2バネ部材75Lは、固定端としての他端部752Lから自由端としての一端部751Lに向かって、前後方向において前方又は後方(本実施形態では後方)に向かって延びるように配置されている。一方、第2アーム部材72Lは、その第2連結部721Lから第2揺動端部722Lに向かって、前後方向において第2バネ部材75Lの逆方向(本実施形態では前方)に向かって延びている。
【0102】
図11に示すように、従来知られた搬送補助装置101では、上下方向に伸張するバネ部材175によって、駆動輪121を搬送面Fに押しつけることが検討されてきた。
【0103】
また、本願発明者らはさらに検討を進め、ベッド10の前輪14Fと後輪14Bとの間に、ユニット化された搬送補助装置101を配置することを考えた(図12参照)。
【0104】
ところが、図11及び図12のように搬送補助装置101を構成及び配置した場合、平面な路面Fからスロープ状の路面Fに乗り上げたときに、図12に示すように駆動輪121が路面(特に、平坦な路面Fとスロープ状の路面Fとの境界部)から離れてしまったり、駆動輪121と路面との密着が弱くなったりする可能性があった。
【0105】
そうした懸念を払拭するためには、バネ部材175の伸縮量を大きくすることで、駆動輪121のストローク量(特に、下方へのストローク量)を大きくすることが考えられる。しかしながら、図11及び図12のようにバネ部材175を上下方向に伸縮させるように構成した場合、バネ部材175の伸縮量を大きくした分だけ、高さ方向における搬送補助装置101の大型化を招くため不都合である。
【0106】
これに対し、前記実施形態によれば、第1アーム部材72Rの揺動を付勢するための第1バネ部材75Rが、ベッド10の前後方向に沿わせた姿勢で連結される(図9及び図10等を参照)。このような姿勢とすることで、駆動輪としての第1メカナムホイール21Rを上下方向にストロークさせつつも、第1バネ部材75R自体は前後方向に伸縮することになる。第1メカナムホイール21Rのストローク方向と第1バネ部材75Rの伸縮方向とを交差させたことにより、第1メカナムホイール21Rのストローク量を大きくすべく第1バネ部材75Rの伸縮量を大きくしたとしても、従来の搬送補助装置101と同等の高さ寸法に保つことができるようになる。
【0107】
また、図3図5を用いて説明したように、一対の梁状部材によって構成されたベース部材71に第1アーム部材72R及び第1バネ部材75Rを連結することで、搬送補助装置1のユニット化を進めることができる。ユニット化を進めることにより、ベッド10への着脱を容易にすることができる。そのことで、搬送補助装置1の使い勝手を向上させることが可能になる。
【0108】
また、図4に示したように、前側ベース部材71fと後側ベース部材71bの間に第1及び第2メカナムホイール21R,21L、第1及び第2モータ22R,22L、並びに収容ボックス6を配置することで、搬送補助装置1のユニット化を進めることが可能になる。これにより、ベッド10への取り付けが容易になる。
【0109】
また、図2に示したように、バッテリ3を意図的に収容ボックス6外に配置することで、バッテリ3の交換に際し、収容ボックス6をベッド10から取り外したり、収容ボックス6を開閉したりすることが不要となる。これにより、搬送補助装置1の使い勝手を向上させることができる。
【0110】
また、図9及び図10に示したように、第1アーム部材72Rがベルクランク機構B1を構成することで、第1バネ部材75Rの付勢力を利用して第1車軸213Rを上下にストロークさせる上で有利になる。
【0111】
また、図4に示したように、第1メカナムホイール21Rと、第1アーム部材72R又は第1バネ部材75Rとは、それぞれ、上下方向に並ばないように配置されることになる。このように配置することで、第1メカナムホイール21Rの上下ストロークを確保するとともに、搬送補助装置1を従来の装置と同等の高さ寸法に保つ上で有利になる。
【0112】
また、図9に示したように、側面視において、第1揺動軸Ow1と第1車軸213Rとの距離L1は、第1揺動軸Ow1と第1連結部721Rとの距離L2に比べて長い。
【0113】
このように構成することで、第1揺動軸Ow1まわりに第1アーム部材72Rが回転したときに、第1揺動軸Ow1に対する第1車軸213Rの変位量(特に、上下方向における変位量)は、第1揺動軸Ow1に対する第1連結部721Rの変位量(特に、前後方向における変位量)に比べて大きくなる。これにより、第1バネ部材75Rによって第1連結部721Rを引っ張り込んで第1アーム部材72Rを揺動させたときに、第1連結部721Rの変位量以上に第1車軸213Rを変位させることができる。このことは、第1メカナムホイール21Rのストローク量を大きくする上で有効である。
【0114】
また、図9に示したように、第1アーム部材72Rは、第1バネ部材75Rに対して前後方向に折り返すように延びている。このように構成することで、第1アーム部材72R、ひいては第1メカナムホイール21Rのストローク量を確保しつつ、前後方向においても従来の搬送補助装置101装置と同等の寸法に保つ上で有利になる。
【0115】
また、図12を用いて説明したように、平面な路面Fからスロープ状の路面Fに乗り上げたときに、図12に示すように駆動輪121が路面F,Fとから離れてしまったり、駆動輪121と路面F,Fとの密着が弱くなったりする可能性がある。そうした問題は、搬送補助装置1を、ベッド10の前後中央に配置した場合により顕著となる。前記実施形態に係る構成は、そうした状況下において、極めて有用となる。
【0116】
<他の実施形態>
前記実施形態では、駆動輪に第1及び第2メカナムホイール21R,21Lを用いた構成が開示されていたが、そうした構成は必須ではない。本開示は、メカナムホイール以外の駆動輪、例えばオムニホイールに適用することもできる。駆動輪の個数についても、2つには限定されない。例えば、本実施形態と同様にメカナムホイールを用いた場合は、その個数を4つにしてもよいし、オムニホイールを用いた場合は、その個数を3つ又は4つにしてもよい。また、駆動輪の個数に応じて、モータの個数を変更してもよい。
【符号の説明】
【0117】
1 搬送補助装置
10 ベッド(キャスタ付きベッド)
12 フレーム
12R 右フレーム(サイドフレーム)
12L 左フレーム(サイドフレーム)
14F 前輪(キャスタ)
14B 後輪(キャスタ)
21R 第1メカナムホイール(駆動輪)
213R 第1車軸(車軸)
21L 第2メカナムホイール(駆動輪)
213L 第2車軸(車軸)
22R 第1モータ(モータ)
22L 第2モータ(モータ)
3 バッテリ
4 コントローラ
6 収容ボックス
71 ベース部材
71b 後側ベース部材(一対の梁状部材の一方)
71f 前側ベース部材(一対の梁状部材の他方)
72R 第1アーム部材(アーム部材)
721R 第1連結部(連結部)
722R 第1揺動端部(揺動端部)
72L 第2アーム部材(アーム部材)
721L 第2連結部(連結部)
722L 第2揺動端部(揺動端部)
75R 第1バネ部材(バネ部材,引張バネ)
751R 一端部
752R 他端部
75L 第2バネ部材(バネ部材,引張バネ)
751L 一端部
752L 他端部
B1 ベルクランク機構
B2 ベルクランク機構
F 搬送面
L1 距離(回転軸と車軸との距離)
L2 距離(回転軸と連結部との距離)
Ow1 第1揺動軸(回転軸)
Ow2 第2揺動軸(回転軸)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12