IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 住友重機械工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-寿命判定システムおよびそのサーバ 図1
  • 特開-寿命判定システムおよびそのサーバ 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135276
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】寿命判定システムおよびそのサーバ
(51)【国際特許分類】
   G05B 19/18 20060101AFI20240927BHJP
   G01M 13/04 20190101ALI20240927BHJP
【FI】
G05B19/18 W
G01M13/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023045888
(22)【出願日】2023-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100116274
【弁理士】
【氏名又は名称】富所 輝観夫
(72)【発明者】
【氏名】山本 新悟
【テーマコード(参考)】
2G024
3C269
【Fターム(参考)】
2G024AC01
2G024BA12
2G024CA13
2G024FA06
2G024FA15
3C269AB03
3C269KK08
3C269MN07
3C269MN23
3C269MN26
3C269MN27
3C269QB03
(57)【要約】
【課題】産業機械の消耗部品の寿命判定の確実性を高めることができる寿命判定システムを提供する。
【解決手段】寿命判定システムは、寿命判定アルゴリズムを用いて消耗部品の寿命判定を行う産業機械と、寿命判定アルゴリズムのオリジナルを管理するサーバと、を備え、サーバは、寿命判定アルゴリズムのオリジナルが更新された場合、更新された寿命判定アルゴリズムをネットワークを介して産業機械に送信し、産業機械は、更新された寿命判定アルゴリズムを用いて、消耗部品の寿命判定を行う。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
寿命判定アルゴリズムを用いて消耗部品の寿命判定を行う産業機械と、
寿命判定アルゴリズムのオリジナルを管理するサーバと、
を備え、
前記サーバは、寿命判定アルゴリズムのオリジナルが更新された場合、更新された寿命判定アルゴリズムをネットワークを介して前記産業機械に送信し、
前記産業機械は、更新された寿命判定アルゴリズムを用いて、前記消耗部品の寿命判定を行う、寿命判定システム。
【請求項2】
前記産業機械は、寿命判定の結果を前記サーバに送信し、
前記サーバは、前記産業機械が送信した寿命判定の結果を所定の記憶部に記憶させる請求項1に記載の寿命判定システム。
【請求項3】
産業機械が消耗部品の寿命判定に用いる寿命判定アルゴリズムのオリジナルを管理するサーバであって、
産業機械の消耗部品の種別を特定可能な種別特定情報を記憶する記憶部と、
或る種別特定情報の消耗部品に関する寿命判定アルゴリズムのオリジナルが更新された場合、前記記憶部を参照し、当該或る種別特定情報の消耗部品を備える産業機械に更新された寿命判定アルゴリズムを送信するアルゴリズム送信部と、
を備えるサーバ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、寿命判定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
所定のアルゴリズムに基づいて産業機械の消耗部品の寿命判定を行う技術が知られている。従来では、温度要因を考慮して、工作機械の軸受の寿命判定を行う技術が提案されている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-036675号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
産業機械の消耗部品の寿命判定の確実性を高めることができれば、より適切なタイミングで消耗部品の交換等を実施できる。
【0005】
本発明はこうした状況においてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、産業機械の消耗部品の寿命判定の確実性を高めることができる寿命判定システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の、寿命判定システムは、寿命判定アルゴリズムを用いて消耗部品の寿命判定を行う産業機械と、寿命判定アルゴリズムのオリジナルを管理するサーバと、を備える。サーバは、寿命判定アルゴリズムのオリジナルが更新された場合、更新された寿命判定アルゴリズムをネットワークを介して産業機械に送信し、産業機械は、更新された寿命判定アルゴリズムを用いて、消耗部品の寿命判定を行う。
【0007】
本発明の別の態様は、サーバである。このサーバは、産業機械が消耗部品の寿命判定に用いる寿命判定アルゴリズムのオリジナルを管理するサーバであって、産業機械の消耗部品の種別を特定可能な種別特定情報を記憶する記憶部と、或る種別特定情報の消耗部品に関する寿命判定アルゴリズムのオリジナルが更新された場合、記憶部を参照し、当該或る種別特定情報の消耗部品を備える産業機械に更新された寿命判定アルゴリズムを送信するアルゴリズム送信部と、を備える。
【0008】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置、システム、記録媒体、コンピュータプログラム等の間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、産業機械の消耗部品の寿命判定の確実性を高めることができる寿命判定システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態に係る寿命判定システムの構成を示す模式図である。
図2図1のアルゴリズム管理サーバの機能および構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。
【0012】
(実施の形態の概要)
実施の形態の寿命判定システムは、産業機械と、寿命判定アルゴリズムのオリジナル(原本)を管理するサーバと、を備える。産業機械は、サーバから取得した寿命判定アルゴリズムを用いて、当該産業機械の消耗部品が寿命に達しているか否かを判定する寿命判定を繰り返し行う。「消耗部品が寿命に達している」とは、消耗部品が既にあるいは所定期間内に、本来発揮すべき機能を発揮できなくなるおそれがあることや、故障するおそれがあることをいう。なお、寿命判定は、消耗部品の残りの寿命(残存寿命)を予測することであってもよい。
【0013】
サーバが管理する寿命判定アルゴリズムは、その管理者によって、より的確な寿命判定が可能な寿命判定アルゴリズムに適宜更新される。サーバは、寿命判定アルゴリズムが更新されると、それを産業機械に送信する。産業機械は、更新された寿命判定アルゴリズムを受信すると、それを用いて寿命判定を繰り返し行う。
【0014】
このように実施の形態の寿命判定システムによれば、産業機械は最新の寿命判定アルゴリズムを用いて寿命判定できるため、寿命判定の確実性が高まる。
【0015】
(実施の形態)
図1は、実施の形態に係る寿命判定システム1の構成を示す模式図である。寿命判定システム1は、サーバ100と、複数の産業機械200と、を備える。なお、システム1が備える産業機械200の数は特に限定されず、1つのみであってもよい。サーバ100と複数の産業機械200とは、インターネットなどのネットワークを介して接続される。産業機械200は、典型的には、モータ駆動系を備える産業機械である。本実施の形態では、産業機械200は或る特定の工作機械あり、その消耗部品212は軸受であるものとして説明する。
【0016】
サーバ100は、その限りでないが、メーカにより管理される。メーカは、産業機械200を製造する産業機械メーカ、または、産業機械200の所定の消耗部品212を製造する消耗部品メーカである。ここでの「メーカが管理する」には、メーカが直接的に管理する場合だけでなく、メーカから委託された企業が管理する場合も含まれる。また、サーバ100は、物理サーバであってもよいし、クラウド環境上、例えばパブリッククラウド環境上に構築された仮想サーバであってもよい。
【0017】
サーバ100の1つの重要な役割は、産業機械200が消耗部品212の寿命判定に用いる寿命判定アルゴリズムを管理することであり、もう1つの重要な役割は、産業機械200による寿命判定の結果を管理することである。前者の役割においてサーバ100は、寿命判定アルゴリズムのオリジナルを記憶し、そのオリジナルの寿命判定アルゴリズムが更新された場合に、更新された寿命判定アルゴリズムを産業機械に送信する。後者の役割においてサーバ100は、産業機械200が送信する消耗部品212の寿命判定の結果を受信し、それを記憶部に記憶する。サービスマンは、サーバ100に記憶される寿命判定の結果を確認し、消耗部品212を適宜交換する。ユーザが、サーバ100に記憶される寿命判定の結果を確認し、消耗部品212を適宜交換してもよい。なお、ユーザは、産業機械200の寿命判定部220(後述)から寿命判定の結果を取得してもよい。
【0018】
寿命判定アルゴリズムは、産業機械200の稼働情報に基づいて寿命判定を行うためのアルゴリズムであり、典型的には計算式やプログラムモジュールである。その限りでないが、寿命判定アルゴリズムは、アルゴリズム構成と、アルゴリズムパラメータとに分けて管理される。アルゴリズム構成は、アルゴリズムの定義、アルゴリズムのルールと捉えることもできる。アルゴリズムパラメータは、アルゴリズムにおいて使用されるパラメータ(係数)の値である。アルゴリズムパラメータは、消耗部品212の消耗度に影響を及ぼすパラメータであってもよい。
【0019】
アルゴリズムが計算式である場合、アルゴリズム構成は計算式の構成そのものであり、アルゴリズムパラメータはその計算式におけるパラメータの値である。アルゴリズムがプログラムモジュールである場合は、アルゴリズム構成はプログラムモジュールの構成そのものであり、アルゴリズムパラメータはそのプログラムモジュールにおけるパラメータの値の値である。
【0020】
本実施の形態において、「寿命判定アルゴリズムの更新」には、寿命判定アルゴリズムのパラメータのみが更新される場合と、寿命判定アルゴリズムの構成およびパラメータの両方が更新される場合とが含まれる。
【0021】
一例として、産業機械(工作機械)200の消耗部品(軸受)202の寿命判定アルゴリズムは、以下の計算式(1)、あるいは、計算式(1)を実行するプログラムモジュールである。なお、K1~K5は、アルゴリズムパラメータであり、Q1~Q5は、消耗部品212の稼働情報である。
補正回転量N=K1×Q1+K2×Q2+K3×Q3+K4×Q4+K5×Q5 ・・・(1)
ただし、
K1:0~1999[回/min]の回転数における重み付けパラメータ
K2:2000~3999[回/min]の回転数における重み付けパラメータ
K3:4000~5999[回/min]の回転数における重み付けパラメータ
K4:6000~7999[回/min]の回転数における重み付けパラメータ
K5:8000~10000[回/min]の回転数における重み付けパラメータ
Q1:0~1999[回/min]の回転数で回転した回転量
Q2:2000~3999[回/min]の回転数で回転した回転量
Q3:4000~5999[回/min]の回転数で回転した回転量
Q4:6000~7999[回/min]の回転数で回転した回転量
Q5:8000~10000[回/min]の回転数で回転した回転量
である。
【0022】
計算式(1)は、補正回転量Nを計算する式である。ここで、一般に軸受の寿命は回転量によって判定されるが、同じ1回転であっても、回転時の軸受の温度によって寿命への影響が異なり、高温での1回転は、低温での1回転よりも寿命に与える影響が大きい、すなわち寿命を早める。軸受は、軸の回転数が高いほど高温になるため、回転数が高いときの1回転は、回転数が低いときの1回転よりも寿命を早める。そのため、計算式(1)では、回転数に応じた重み付けパラメータを回転量に乗じた補正回転量Nを計算する。補正回転量Nが所定の閾値以上の場合に軸受が寿命に達している判定でき、補正回転量Nが当該閾値未満である場合に寿命に達していないと判断できる。
【0023】
産業機械200は、ユーザによって所持(使用)される。ユーザは、その限りでないが、典型的には企業である。図1では、各ユーザ(ユーザA、ユーザB、・・・)の産業機械200が1つのみ示されているが、企業などのユーザは、複数の産業機械を保持していることが多い。また、図1では、産業機械200に消耗部品212が1つのみ示されているが、産業機械200には複数の消耗部品212が含まれうる。
【0024】
産業機械200は、産業機械本体210と、寿命判定部220と、を含む。寿命判定部220は、産業機械本体210の筐体に内蔵されていてもよい。すなわち寿命判定部220は、産業機械本体210に組み込まれていてもよい。また、寿命判定部220は、産業機械本体210の筐体の外部に設けられてもよい。例えば寿命判定部220は、PCなどの情報処理装置であってもよい。また例えば、産業機械200を統括的に制御する制御部が、寿命判定部220を兼ねてもよい。
【0025】
寿命判定部220は、寿命判定アルゴリズムを記憶している。寿命判定アルゴリズムは、ネットワークを介してサーバ100から取得される。なお、産業機械200の設置時は、記録媒体を介して取得されてもよい。寿命判定部220が記憶する寿命判定アルゴリズムは、サーバ100から適宜送信される更新された寿命判定アルゴリズムによって、更新される。
【0026】
寿命判定部220は、消耗部品212の使用開始時からの稼働情報であって、寿命判定アルゴリズムを用いた寿命判定に必要な稼働情報を記憶する。産業機械200が工作機械で消耗部品212が軸受である本実施の形態では、稼働情報は例えば回転数ごとの稼働時間である。この場合、稼働情報から、計算式(1)で使用するQ1~Q5を特定できる。
【0027】
寿命判定部220は、寿命判定アルゴリズムを用いて、所定の周期(例えば数ミリ秒周期または数秒周期)で消耗部品212の寿命判定を繰り返し行う。寿命判定部220は、所定のタイミングで寿命判定の結果をサーバ100に送信する。例えば寿命判定部220は、消耗部品212が寿命に達していると判定した場合(のみ)に、遅滞なく寿命判定の結果をサーバ100に送信する。また例えば、寿命判定部220は、所定の周期(例えば1分周期)で最新の寿命判定の結果をサーバ100に送信してもよい。
【0028】
図2は、サーバ100の機能および構成を示すブロック図である。ここに示す各ブロックは、ハードウエア構成としてはCPU(Central Processing Unit)やメモリをはじめとする素子や回路で実現され、ソフトウエア構成としてはコンピュータプログラム等によって実現されるが、ここでは、それらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックはハードウエア、ソフトウエアの組合せによっていろいろなかたちで実現できることは、本明細書に触れた当業者には理解されるところである。
【0029】
サーバ100は、通信部110と、制御部120と、記憶部130と、を備える。制御部120は、各種のデータ処理を実行する。記憶部130は、制御部120により参照され、および/または、更新されるデータを記憶する。記憶部130は、メモリやストレージにより実現される。通信部110は、種々の通信プロトコルにしたがって外部装置と通信する。制御部120は、通信部110を介して産業機械200とデータを送受信する。
【0030】
記憶部130は、産業機械情報記憶部132と、アルゴリズム構成記憶部134と、アルゴリズムパラメータ記憶部136と、寿命判定結果記憶部138と、を含む。
【0031】
産業機械情報記憶部132は、複数の産業機械200のそれぞれについて、消耗部品212の種別を特定可能な情報(以下、種別特定情報という)を記憶する。種別特定情報は、本実施の形態では、寿命判定アルゴリズムのアルゴリズムパラメータが異なりうる最小の分類単位の情報を含む。例えば、アルゴリズムパラメータが消耗部品212の型番ごとで異なりうる場合、種別特定情報は消耗部品212の型番を一意に識別する型番IDを含む。また例えば、アルゴリズムパラメータが消耗部品212の型番ごと、かつ、枠番ごとで異なりうる場合、種別特定情報は、型番IDと、枠番を一意に識別する枠番IDとを含む。
【0032】
なお、以下では、寿命判定アルゴリズムのアルゴリズムパラメータが異なりうる最小の分類単位は型番であるとして、すなわちアルゴリズムパラメータは型番ごとで異なりうるとして説明する。
【0033】
アルゴリズム構成記憶部134は、産業機械200の消耗部品212の寿命判定アルゴリズムのアルゴリズム構成を記憶する。
【0034】
アルゴリズムパラメータ記憶部136は、産業機械200の消耗部品212の寿命判定アルゴリズムのアルゴリズムパラメータを記憶する。アルゴリズムパラメータ記憶部136は特に、消耗部品212の種別特定情報(すなわち型番)ごとのアルゴリズムパラメータを記憶する。したがって、寿命判定アルゴリズムが計算式(1)あるいは計算式(1)を実行するプログラムモジュールである場合、アルゴリズムパラメータ記憶部136は、消耗部品212の種別特定情報ごとのアルゴリズムパラメータK1~K5の値のセットを記憶する。
【0035】
寿命判定結果記憶部138は、複数の産業機械200のそれぞれにおける寿命判定の結果を記憶する。
【0036】
制御部120は、産業機械情報登録部122と、アルゴリズム更新部124と、アルゴリズム送信部126と、寿命判定結果登録部128と、を含む。
【0037】
例えば、産業機械200がユーザの工場等に設置された後に、ユーザあるいは産業機械200を設置したサービスマンが、あるいは産業機械200が自動で、その産業機械200の消耗部品212の種別特定情報をサーバ100に送信する。また例えば、産業機械200の消耗部品212を種別特定情報が異なる別の消耗部品212に交換した場合、すなわち産業機械200の軸受を型番が異なる別の軸受に交換した場合、ユーザあるいは消耗部品212を交換したサービスマンが、あるいは産業機械200が自動で、その消耗部品212の種別特定情報をサーバ100に送信する。産業機械情報登録部122は、このようにユーザまたはサービスマンが送信した種別特定情報を受信し、産業機械情報記憶部132に登録する。
【0038】
アルゴリズム更新部124は、寿命判定アルゴリズムの管理者から取得する情報に基づいて、寿命判定アルゴリズムを更新する。
【0039】
例えば、産業機械200がボール盤である場合において、当初は、計算式(1)のように回転数[回/min]のみを考慮して重み付けした回転量で寿命判定していたものの、例えばユーザから寄せられた情報から、回転数および切削量[mm]の両方を考慮して重み付けした回転量で寿命判定する方がより精度良く消耗部品212である軸受の寿命を判定できることが判明した場合、管理者は、回転数および切削量の両方を考慮して重み付けした回転量で寿命判定する寿命判定アルゴリズムに更新する。この場合、アルゴリズム更新部124は、例えば、新たなアルゴリズム構造と、種別特定情報ごとの新たなアルゴリズムパラメータとを管理者から取得し、それらをアルゴリズム構成記憶部134と、アルゴリズムパラメータ記憶部136とに記憶させる。
【0040】
また例えば、消耗部品212である軸受の温度は回転軸の回転数が高くなると上昇するところ、例えばユーザから寄せられた情報から、或る型番の軸受の回転数と温度との関係がメーカ公称値と実際とで異なることが判明した場合、管理者は、当該或る型番の軸受のアルゴリズムパラメータ(例えば計算式(1)におけるK1~K5の値のセット)を更新する。この場合、アルゴリズム更新部124は、例えば、当該或る型番の軸受の新たなアルゴリズムパラメータを管理者から取得し、それをアルゴリズムパラメータ記憶部136に記憶させる。
【0041】
アルゴリズム送信部126は、寿命判定アルゴリズムが更新された場合に、更新された新たな寿命判定アルゴリズムを産業機械200に送信する。ここでの「寿命判定アルゴリズムを送信する」には、寿命判定アルゴリズムの全体、すなわちアルゴリズム構成およびアルゴリズムパラメータを送信する場合だけでなく、寿命判定アルゴリズムの更新に係る部分のみ、例えばアルゴリズムパラメータのみを送信する場合も含まれる。
【0042】
例えば、アルゴリズム送信部126は、アルゴリズム構成記憶部134に記憶されるアルゴリズム構成が更新された場合、更新された新たなアルゴリズム構成を産業機械200に送信する。また例えば、アルゴリズム送信部126は、アルゴリズムパラメータ記憶部136に記憶される或る種別特定情報のアルゴリズムパラメータが更新された場合、更新された当該或る種別特定情報のアルゴリズムパラメータを、当該或る種別特定情報の消耗部品212を備える産業機械200に送信する。
【0043】
また、アルゴリズム送信部126は、或る産業機械200の消耗部品212が種別特定情報が異なる別の消耗部品212に交換された場合、詳しくは、産業機械情報記憶部132に記憶される当該或る産業機械200についての消耗部品212の種別特定情報が別の種別特定情報に更新された場合、当該別の種別特定情報のアルゴリズムパラメータを当該或る産業機械200に送信する。
【0044】
寿命判定結果登録部128は、複数の産業機械200から送信される寿命判定の結果を受信し、寿命判定結果記憶部138に登録する。サービスマンは、寿命判定結果記憶部138に記憶される寿命判定の結果を確認し、寿命に達していると判定された消耗部品212を適宜交換する。
【0045】
以上が寿命判定アルゴリズムの基本構成である。続いて、その動作を説明する。
【0046】
産業機械200は、寿命判定アルゴリズムを用いて、消耗部品212の寿命判定を所定の周期で繰り返し行う。産業機械200は、寿命判定の結果を、適宜、サーバ100に送信する。
【0047】
サーバ100は、寿命判定アルゴリズムのオリジナルが更新された場合、更新された新たな寿命判定アルゴリズムを産業機械200に送信し、産業機械200が記憶している寿命判定アルゴリズムを更新させる。例えば、サーバ100は、或る型番の消耗部品212の寿命判定アルゴリズムのアルゴリズムパラメータが更新された場合、当該或る型番の消耗部品212を備える産業機械200に更新されたアルゴリズムパラメータを送信し、産業機械200が記憶しているアルゴリズムパラメータを更新させる。したがって、多少のタイムラグはあるものの、産業機械200に記憶される寿命判定アルゴリズムは、サーバ100で管理されるオリジナルの寿命判定アルゴリムと同じ状態、すなわち最新の状態に保たれる。
【0048】
以上説明した寿命判定システム1によれば、産業機械200は最新の寿命判定アルゴリズムを用いて寿命判定を行うことができるため、寿命判定の確実性が高まる。
【0049】
また、更新された寿命判定アルゴリズムがネットワークを介して産業機械200に送信され、産業機械200の寿命判定アルゴリズムが更新される。この場合、サービスマンが産業機械200の設置場所に直接訪れる必要がないため、サービスマンの負荷が低減される。また、サービスマンが訪れて寿命判定アルゴリズムを更新する場合、基本的には日中にその更新作業が行われるため、その間、産業機械200を利用できなくなるところ、寿命判定システム1によれば、例えば夜間に更新された寿命判定アルゴリズムを送信して更新させることで、ダウンタイムを短くあるいは無くすことができる。
【0050】
以上、本発明について、実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0051】
(変形例1)
実施の形態では、産業機械200が工作機械であり、消耗部品212が軸受である場合について説明したが、その限りでない。
【0052】
例えば、産業機械200が成形機であり、その消耗部品212がボールねじ及びパワーモジュールであってもよい。パワーモジュールは、モータの駆動電流を出力するデバイスである。
【0053】
ボールねじの寿命判定アルゴリズムは、一例として、その運転時間に基づいて寿命判定を行うアルゴリズム、具体的には、運転時間が所定の閾値時間を越えている場合に寿命に達していると判定するアルゴリズムであってもよい。ここで、ボールねじは、型締めのたびに往復移動し、そのときの摩擦トルクにより摩耗し、特に、同じ運転時間でも、長いストロークを往復するよりも、短いストロールを頻繁に往復する方が摩耗する。したがって、単位時間当たりの型締めの繰り返し回数(以下、「型締繰り返し頻度」という)が多いほど、ボールねじは摩耗し、寿命を早める。そのため、ボールねじの寿命判定アルゴリズムは、型締繰り返し頻度で重み付けした運転時間で寿命判定してもよい。この場合、型締繰り返し頻度がアルゴリズムパラメータであってもよい。
【0054】
パワーモジュールの寿命判定アルゴリズムは、一例として、その運転時間に基づいて寿命判定を行うアルゴリズム、具体的には、運転時間が所定の閾値時間を超えている場合に寿命に達していると判定するアルゴリズムであってもよい。ここで、パワーモジュールは、駆動電流の出力によりその出力回路にストレスが掛かり、出力する駆動電流が高いほど、言い換えるとDuty値が高いほど、その出力回路に掛かるストレスは高くなる。したがって、Duty値が高いほど、パワーモジュールにストレスが掛かり、寿命を早める。そのため、パワーモジュールの寿命判定アルゴリズムは、Duty値で重み付けした運転時間で寿命判定してもよい。この場合、Duty値がアルゴリズムパラメータであってもよい。
【0055】
また例えば、産業機械200がギヤモータであり、その消耗部品212がモータ本体であってもよい。モータ本体の寿命判定アルゴリズムは、一例として、その運転時間に基づいて寿命判定を行うアルゴリズム、具体的には、運転時間が所定の閾値時間を超えている場合に寿命に達していると判定するアルゴリズムであってもよい。モータ本体の寿命判定アルゴリズムは、モータ本体の振動の振幅により重み付けした運転時間で寿命判定してもよい。この場合、振幅がアルゴリズムパラメータであってもよい。なお、モータ本体の振動の振幅は、所定のセンサをモータ本体に取り付けて測定すればよい。
【0056】
(変形例2)
これまでの説明では、サーバ100が或る特定の産業機械200の消耗部品212の寿命判定アルゴリズムを管理する場合について説明したが、その限りでない。サーバ100は、工作機械、プレス機、成形機、ギヤモータ、駆動装置などの複数種類の産業機械200のそれぞれの消耗部品212の寿命判定アルゴリズムを管理してもよい。
【0057】
この場合、産業機械情報記憶部132は、複数の産業機械200のそれぞれについて、産業機械200の種別(工作機械、プレス機、成形機、ギヤモータ、駆動装置などのうちのいずれであるか)を特定可能な情報と、産業機械200の消耗部品212の種別特定情報とを対応付けて記憶する。
【0058】
例えばサーバ100は、或る種別の産業機械のアルゴリズム構成が更新された場合、産業機械情報記憶部132を参照して、複数の産業機械200のうちの当該或る種別の産業機械200に、更新されたアルゴリズム構成を送信する。また例えば、サーバ100は、或る種別の産業機械200の或る型番の消耗部品212のアルゴリズムパラメータが更新された場合、産業機械情報記憶部132を参照して、複数の産業機械200のうちの当該或る種別の産業機械200であって、当該或る型番の消耗部品212を備える当該或る種別の産業機械200に、更新されたアルゴリズムパラメータを送信する。
【符号の説明】
【0059】
1 寿命判定システム、 100 サーバ、 126 アルゴリズム送信部、 200 産業機械。
図1
図2