(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135278
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】搬送装置
(51)【国際特許分類】
B60B 19/00 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
B60B19/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023045891
(22)【出願日】2023-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000167222
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクトマシンシステム
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】丹羽 寛之
(57)【要約】
【課題】2つのメカナムホイールを用いた搬送装置において、スムースな横移動を実現する。
【解決手段】搬送装置1は、操作者100によって長手方向の一端側が支持されるキャスタ付きベッド10に取り付けられ、該ベッド10を横移動させる。この搬送装置1は、ベ第1及び第2メカナムホイール21R,21Lと、第1及び第2メカナムホイール21R,21Lのそれぞれに駆動連結された第1及び第2モータ22Rと、ベッド10の移動方向が入力される操作部3と、第1及び第2モータ22R,22Lを制御するコントローラ4と、を備える。コントローラ4は、操作部3に横方向の移動方向が入力された場合、ベッド10を、その一端側に回転中心Ozが位置するように旋回させつつ、操作部3に入力された移動方向へと横移動させるように、第1及び第2モータ22R,22Lを介して第1及び第2メカナムホイール21R,21Lを作動させる。
【選択図】
図9C
【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作者によって長手方向の一端側が支持されるキャスタ付きベッドに取り付けられ、該ベッドを横移動させるように構成された搬送装置であって、
前記ベッドの下部に取り付けられる第1及び第2メカナムホイールと、
前記第1及び第2メカナムホイールのそれぞれに駆動連結された第1及び第2モータと、
前記ベッドの移動方向が入力される操作部と、
前記第1及び第2モータを制御するコントローラと、を備え、
前記コントローラは、前記操作部に横方向の移動方向が入力された場合、前記ベッドを、前記一端側に回転中心が位置するように旋回させつつ、前記操作部に入力された移動方向へと横移動させるように、前記第1及び第2モータを介して前記第1及び第2メカナムホイールを作動させる
ことを特徴とする搬送装置。
【請求項2】
キャスタ付きベッドに取り付けられ、該ベッドを横移動させるように構成された搬送装置であって、
前記ベッドの下部に取り付けられる第1及び第2メカナムホイールと、
前記第1及び第2メカナムホイールのそれぞれに駆動連結された第1及び第2モータと、
長手方向における前記ベッドの一端側に支持されるように構成され、前記ベッドの移動方向が入力される操作部と、
前記第1及び第2モータを制御するコントローラと、を備え、
前記コントローラは、前記操作部に移動方向が入力された場合、前記ベッドを、前記一端側に回転中心が位置するように旋回させつつ、前記操作部に入力された移動方向へと横移動させるように、前記第1及び第2モータを介して前記第1及び第2メカナムホイールを作動させる
ことを特徴とする搬送装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された搬送装置において、
前記第1及び第2メカナムホイールは、前記ベッドの短手方向に並ぶように配置され、
前記第1及び第2メカナムホイールは、それぞれ、
前記短手方向に延びる回転軸まわりに回転するホイール本体と、
前記ホイール本体の外周に沿って配置され、それぞれ前記短手方向及び前記長手方向の双方に対して傾斜した傾斜軸まわりに回転する複数の樽型ローラと、を有し、
前記第1メカナムホイールの傾斜軸は、前記第2メカナムホイールの傾斜軸に対し、前記長手方向を基準とした線対称となるように傾斜している
ことを特徴とする搬送装置。
【請求項4】
請求項3に記載された搬送装置において、
前記コントローラは、前記操作部に移動方向が入力された場合、前記第1及び第2メカナムホイールのうちの一方を前転させるとともに、他方を後転させるようにそれぞれの指令回転数を設定するとともに、当該設定に際し、前記第1メカナムホイールと前記第2メカナムホイールとで前記指令回転数の絶対値を等しくする
ことを特徴とする搬送装置。
【請求項5】
請求項1又は2に記載された搬送装置において、
前記一端側には、前記ベッドのヘッドプレートが配置され、
前記長手方向において前記一端側の反対に位置する他端側には、前記ベッドのフットプレートが配置される
ことを特徴とする搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、駆動部にメカナムホイールを用いた補助推進システムが開示されている。この補助推進システムは、シャーシに連結される2つ1組のメカナムホイール(Mecanum車輪)と、各メカナムホイールを駆動するモータと、各モータの回転速度の変化を感知する制御システムと、を備えている。ここで、各メカナムホイールが連結されるシャーシは、前輪及び後輪を有するとともに、その移動に際しては、操作者によって後輪側から力が印加されるように構成されている。
【0003】
前記特許文献1によると、シャーシが所定方向に横移動(側方移動)する場合、それと同じ方向への力が操作者によって印加される。印加された力によって各メカナムホイールが回転すると、それに伴う回転速度の変化が制御システムに報告される。その報告に基づいて、制御システムがモータの電動回転を始動させる。この電動回転によって、シャーシの横移動がアシストされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前記特許文献1のように2つのメカナムホイールを用いた場合、メカナムホイールの並び方向に沿った横移動時と、両メカナムホイールの中央位置を中心とした旋回動作時とで、各ホイールの回転方向は同じになる。この場合、シャーシの横移動をアシストするように各メカナムホールを回転させると、横移動と旋回動作とが同時に現れることになる。
【0006】
したがって、前記特許文献1に記載された構成を用いた場合、シャーシの後輪側から例えば右方向への力を印加すると、その後輪側の部位こそ右方向に横移動するものの、前述の如き旋回動作が同時に現れた結果、シャーシの前輪側の部位については、左方向に旋回してしまうことになる。この場合、前輪側の部位については人の手で逆方向に振り回すことが要求されるため、スムースな横移動を実現するには不都合である。
【0007】
また、エレベータ等の狭い環境下の場合、壁から離す方向にシャーシを横移動させようとしたときに、前述のように前輪側の部位が反対方向に旋回した結果、その部位と壁面との衝突も懸念される。
【0008】
ここに開示する技術は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、2つのメカナムホイールを用いた搬送装置において、スムースな横移動を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の第1の態様は、操作者によって長手方向の一端側が支持されるキャスタ付きベッドに取り付けられ、該ベッドを横移動させるように構成された搬送装置に係る。この搬送装置は、前記ベッドの下部に取り付けられる第1及び第2メカナムホイールと、前記第1及び第2メカナムホイールのそれぞれに駆動連結された第1及び第2モータと、前記ベッドの移動方向が入力される操作部と、前記第1及び第2モータを制御するコントローラと、を備え、前記コントローラは、前記操作部に横方向の移動方向が入力された場合、前記ベッドを、前記一端側に回転中心が位置するように旋回させつつ、前記操作部に入力された移動方向へと横移動させるように、前記第1及び第2モータを介して前記第1及び第2メカナムホイールを作動させる。
【0010】
前記第1の態様によると、ベッドの一端側は、その他端側に比べて回転中心が近接している分、旋回時における移動量(特に、入力された移動方向への移動量)が、他端側に比べて小さくなる。しかしながら、ベッドの一端側は操作者によって支持されていることから、ベッドの横移動に釣られて操作者自身が横移動することで、その一端側についても移動量を確保することが可能になる。そのことで、ベッドの一端側と他端側を双方とも十分に移動させ、ひいてはベッド全体を所望の移動方向へと横移動させることができる。これにより、2つのメカナムホイールを用いた搬送装置であっても、スムースな横移動を実現することが可能になる。
【0011】
本開示の第2の態様は、キャスタ付きベッドに取り付けられ、該ベッドを横移動させるように構成された搬送装置に係る。この搬送装置は、前記ベッドの下部に取り付けられる第1及び第2メカナムホイールと、前記第1及び第2メカナムホイールのそれぞれに駆動連結された第1及び第2モータと、長手方向における前記ベッドの一端側に支持されるように構成され、前記ベッドの移動方向が入力される操作部と、前記第1及び第2モータを制御するコントローラと、を備え、前記コントローラは、前記操作部に移動方向が入力された場合、前記ベッドを、前記一端側に回転中心が位置するように旋回させつつ、前記操作部に入力された移動方向へと横移動させるように、前記第1及び第2モータを介して前記第1及び第2メカナムホイールを作動させる。
【0012】
前記第2の態様によると、ベッドの一端側には操作部が支持されるようになっている。よって、操作者は、ベッドの一端側を意識的に支持せずとも、操作部を操作するときに、結果的にベッドの一端側を支持することになる。これにより、前記第1の態様と同様に操作者自身の横移動を促すことで、その一端側についても移動量を確保することが可能になる。そのことで、ベッドの一端側と他端側を双方とも十分に移動させ、ひいてはベッド全体を所望の移動方向へと横移動させることができる。これにより、2つのメカナムホイールを用いた搬送装置であっても、スムースな横移動を実現することが可能になる。
【0013】
また、本開示の第3の態様によれば、前記第1及び第2メカナムホイールは、前記ベッドの短手方向に並ぶように配置され、前記第1及び第2メカナムホイールは、それぞれ、前記短手方向に延びる回転軸まわりに回転するホイール本体と、前記ホイール本体の外周に沿って配置され、それぞれ前記短手方向及び前記長手方向の双方に対して傾斜した傾斜軸まわりに回転する複数の樽型ローラと、を有し、前記第1メカナムホイールの傾斜軸は、前記第2メカナムホイールの傾斜軸に対し、前記長手方向を基準とした線対称となるように傾斜している、としてもよい。
【0014】
前記第3の態様によれば、第1メカナムホイールと第2メカナムホイールとを反対方向に回転させることで、ベッドを旋回動作させるような推力と、ベッドを横移動させるような推力とが同時に発揮される。前者の推力は、ベッドの一端側に回転中心が位置するような旋回動作の発生に資するとともに、後者の推力は、操作者の横移動を促す上で好適に作用する。したがって、前記第3の態様のように構成することは、2つのメカナムホイールを用いた場合に、スムースな横移動を実現する上で有効となる。
【0015】
また、本開示の第4の態様によれば、前記コントローラは、前記操作部に移動方向が入力された場合、前記第1及び第2メカナムホイールのうちの一方を前転させるとともに、他方を後転させるようにそれぞれの指令回転数を設定するとともに、当該設定に際し、前記第1メカナムホイールと前記第2メカナムホイールとで前記指令回転数の絶対値を等しくする。
【0016】
前記第4の態様によれば、第1メカナムホイールの指令回転数と、第2メカナムホイールの指令回転数とで絶対値を等しくすることで、横方向に平行な横移動を実現することができる。このことは、2つのメカナムホイールを用いた場合に、スムースな横移動を実現する上で有効となる。
【0017】
また、本開示の第5の態様によれば、前記一端側には、前記ベッドのヘッドプレートが配置され、前記長手方向において前記一端側の反対に位置する他端側には、前記ベッドのフットプレートが配置される、としてもよい。
【0018】
例えば医療用ベッドの搬送時には、通常、操作者によってヘッドプレートが支持されることになる。したがって、旋回動作時に回転中心が位置することになる前記一端側にヘッドプレートを配置することで、特段の目印、表示等を設けずとも、操作者に自然と一端側を支持させることができる。このことは、2つのメカナムホイールを用いた場合に、スムースな横移動を実現する上で有効となる。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように、本開示によれば、2つのメカナムホイールを用いた搬送装置において、スムースな横移動を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】搬送装置及びキャスタ付きベッドの全体構成を例示する側面図である。
【
図2】搬送装置及びキャスタ付きベッドの全体構成を例示する底面図である。
【
図6】搬送装置の制御系の構成を例示するブロック図である。
【
図8】第1及び第2メカナムホイールの動作について説明するための図である。
【
図9A】搬送装置を用いた横移動の具体例を示す図である。
【
図9B】搬送装置を用いた横移動の具体例を示す図である。
【
図9C】搬送装置を用いた横移動の具体例を示す図である。
【
図10】ベッドの横移動に関連した処理を例示するフローチャートである。
【
図11】横移動時の各モータの指令回転数を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本開示の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0022】
図1は搬送装置1及びキャスタ付きベッド10の全体構成を例示する側面図であり、
図2は搬送装置1及びキャスタ付きベッド10の全体構成を例示する底面図である。
【0023】
また、
図3は搬送装置1の構成を例示する斜視図であり、
図4は搬送装置1の構成を例示する平面図であり、
図5は搬送装置1の構成を例示する側面図である。また、
図6は、搬送装置1の制御系の構成を例示するブロック図であり、
図7は、操作部3の構成を例示する正面図であり、
図8は第1及び第2メカナムホイール21R,21Lの動作について説明するための図である。
【0024】
図1及び
図2に示すように、本実施形態に係る搬送装置1は、キャスタ付きベッド(以下、単に「ベッド」という)10に取り付けられている。このベッド10は、前輪14F及び後輪14Bを含んだ複数のキャスタ14を備えており、例えば医療用ベッドとして用いられるようになっている。
【0025】
以下、ベッド10の長手方向、つまりベッド10上で人が横たわる方向を「前後方向」又は「縦方向」とし、その前後方向に沿って足先に向かう一方を「前」とし、枕元に向かう他方を「後」とする。
【0026】
同様に、ベッド10の短手方向、つまり水平面上で前後方向に直交する方向を「左右方向」又は「横方向」とし、その左右方向に沿って
図1の紙面奥行側に向かう一方を「右」とし、
図1の紙面手前側に向かう他方を「左」とする(詳細は、
図2を参照)。ここでいう「左右方向」とは、後側から前側に向かって見たときの左右方向をいう。以下の記載における「横移動」とは、この左右方向に沿った移動をいう。また、左右方向(横方向)とは、前後方向に直交しかつ搬送面(ベッド10が走行する床面)Fに沿って延びる方向と定義することもできる。
【0027】
ベッド10は、操作者100によって、前後方向の一端側(本実施形態では後端側)が支持されるようになっている。搬送装置1は、操作者100によって支持されたベッド10を横移動させるように構成されている。
【0028】
図1に示すように、ベッド10は、不図示のマットレスが載置されるベッド本体11と、ベッド本体11を下方から支持するフレーム12と、フレーム12に対してベッド本体11を昇降させる昇降部13と、ベッド10の下面に配置された複数(図例では4つ)のキャスタ14と、を備えている。医療用ベッドとして用いられる場合、ベッド10は、例えば60kg以上300kg以下となる。
【0029】
ここで、ベッド本体11は、ベッド10の後端側に配置されるヘッドボード11hと、前後方向において前記後端側の反対に位置する前端側に配置されるフットボード11fと、ベッド10の左右両側に配置されるサイドレール11sと、を有している。
【0030】
このうち、ヘッドボード11hは、ベッド10を手押移動させるべく、操作者100によって後側から支持される。ヘッドボード11hは、その操作者100によって力が加えられる支持部として機能する。ハンドル、グリップ等の部材をヘッドボード11hに取り付けたり、ヘッドボード11hと一体化させたりすることで、それらの部材を支持部としてもよい。
【0031】
また、フレーム12は、
図2に示すように矩形枠状に構成されており、前フレーム12F、右フレーム12R、左フレーム12L及び後フレーム12Bによって四辺が構成されている。
【0032】
ここで、前フレーム12Fは、ベッド10の前側に配置されており、左右方向に沿って延びている。右フレーム12Rは、ベッド10の右側に配置されており、前後方向に沿って延びている。左フレーム12Lは、ベッド10の左側に配置されており、前後方向に沿って延びている。後フレーム12Bは、ベッド10の後側に配置されており、左右方向に沿って延びている。
【0033】
また、
図1及び
図2に示すように、複数のキャスタ14を構成する前輪14F及び後輪14Bは、ベッド10の下面の4隅に配置されている。前輪14F及び後輪14Bは、左右方向に沿って2つずつ設けられている。複数のキャスタ14は、搬送面Fに対してフレーム12、昇降部13及びベッド本体11を支持している。
【0034】
各キャスタ14は、いわゆるフリーキャスタであって、ベッド10の下面に固定される取付部14aと、この取付部14aに対して旋回軸Ocまわりに旋回可能なフォーク部14bと、フォーク部14bによって回転可能に支持された車輪14cと、を有している。各フォーク部14bの旋回軸Ocは、上下方向(ベッド10の高さ方向)に沿って延びている。各車輪14cの回転軸は、水平面に沿って延びている。この回転軸は、取付部14aに対してフォーク部14bが旋回することで、左右方向に対して傾斜するようになっている。
【0035】
そして、搬送装置1は、前述の右フレーム12Rにおける前後方向の中途の部位と、左フレームLにおける前後方向の中途の部位と、を架け渡すように配置されている。搬送装置1は、前後方向においては前輪14Fと後輪14Bとの間に配置され、左右方向においてはベッド10の中央に配置されている。
【0036】
図1~
図6に示すように、搬送装置1は、収容ボックス6と、取付具7と、第1及び第2メカナムホイール21R,21Lと、第1及び第2モータ22R,22Lと、操作部3と、コントローラ4と、を備えている(第1及び第2モータ22R,22Lは、
図6にのみ図示)。以下、第1及び第2メカナムホイール21R,21Lのうち、第1メカナムホイール21Rが右側に位置するものとし、第2メカナムホイール21Lが左側に位置するものとする。
【0037】
これらの要素のうち、コントローラ4は収容ボックス6に収容されており、取付具7,第1及び第2メカナムホイール21R,21L、第1及び第2モータ22R,22L並びに操作部3は、収容ボックス6外に配置されている。
【0038】
収容ボックス6は、前述のようにコントローラ4を収容している。収容ボックス6は、左右方向において、第1メカナムホイール21Rと第2メカナムホイール21Lの間に配置されている。
【0039】
収容ボックス6は、第1及び第2メカナムホイール21R,21Lと共に取付具7に組み付けられており、この取付具7を介してベッド10の下部に取り付けられている。取付具7は、ベッド10の下部に対して着脱可能である。すなわち、本実施形態に係る搬送装置1は、ベッド10に対して後付可能であって、必要に応じて取り外し可能とされている。
【0040】
詳しくは、本実施形態に係る取付具7は、
図2~
図5に示すように、前側レール部材71f及び後側レール部材71bと、第1及び第2メカナムホイール21R,21Lをそれぞれ回転可能に支持する第1及び第2アーム部材72R,72Lと、を有している。
【0041】
ここで、前側レール部材71fと後側レール部材71bは、前後方向に間隔を空けて配置されており、それぞれ、右フレーム12Rの前後方向中央部と、左フレーム12Lの前後方向中央部と、を架け渡している。前側レール部材71fと後側レール部材71bは、右フレーム12R及び左フレーム12Lに対して着脱可能である。第1及び第2メカナムホイール21R,21Lと収容ボックス6は、前後方向において、前側レール部材71fと後側レール部材71bの間に配置されるようになっている。
【0042】
一方、
図3及び
図4において右側に位置する第1アーム部材72Rは、後側レール部材71bによって揺動可能に支持されている。第1アーム部材72Rの前端部は、第1メカナムホイール21Rを回転可能に支持している。また、第1アーム部材72Rは、左右方向において、第1メカナムホイール21Rと収容ボックス6との間に配置されるようになっている。
【0043】
また、第1アーム部材72Rの上端部には、第1引張バネ75Rの一端部が係止されている。この第1引張バネ75Rの他端部は、前側レール部材71fに固定された第1ブラケット76Rに係止されている。
【0044】
そして、
図3及び
図4において左側に位置する第2アーム部材72Lは、第1アーム部材72Rと同様に、後側レール部材71bによって揺動可能に支持されている。第2アーム部材72Lの前端部は、第2メカナムホイール21Lを回転可能に支持している。また、第2アーム部材72Lは、左右方向において、第2メカナムホイール21Lと収容ボックス6との間に配置されるようになっている。
【0045】
また、第2アーム部材72Lの上端部には、第2引張バネ75Lの一端部が係止されている。この第2引張バネ75Lの他端部は、前側レール部材71fに固定された第2ブラケット76Lに係止されている(
図5も参照)。
【0046】
第1及び第2メカナムホイール21R,21Lは、
図1~
図2に示すように、ベッド10の下部(底部)に取り付けられている。第1及び第2メカナムホイール21R,21Lは、前輪14Fの後側かつ後輪14Bの前側に配置されている。第1及び第2メカナムホイール21R,21Lは、
図2に示すように、短手方向としての左右方向に並ぶように配置されている。
【0047】
詳しくは、
図3~
図5に示すように、第1及び第2メカナムホイール21R,21Lは、それぞれ、左右方向に延びる回転軸Oxまわりに回転するホイール本体21a,21aと、ホイール本体21a,21aの外周に沿って配置され、それぞれ左右方向及び前後方向の双方に対して傾斜した傾斜軸Or,Olまわりに回転する複数の樽型ローラ21b,21bと、を有する。
【0048】
ここで、第1メカナムホイール21Rを構成する樽型ローラ21bの傾斜軸(以下、これを「第1傾斜軸」ともいう)Orは、
図4に示すように、前記第2メカナムホイール21Lを構成する樽型ローラ21bの傾斜軸(以下、これを「第2傾斜軸」ともいう)Olに対し、前後方向を基準(
図4の対称軸Osを参照)とした線対称となるように傾斜している。言い換えると、第1傾斜軸Orと第2傾斜軸Olは、平面視で鏡映対称となるように延びている。
【0049】
さらに、
図4のように上方から見た場合(平面視した場合)、各樽型ローラ21b,21bの傾斜軸Or,Olは、それぞれ、前後方向に沿って後側から前側に向かうに従って、左右方向の内側から外側(左右方向の中央部から右側又は左側)に向かって延びている。
【0050】
詳しくは、第1傾斜軸Orは、前後方向に沿って後側から前側に向かうに従って、左右方向の中央側から右側に向かって延びている。一方、第2傾斜軸Olは、前後方向に沿って後側から前側に向かうに従って、左右方向の中央側から左側に向かって延びている。
【0051】
さらに詳しくは、回転軸Oxに対する第1傾斜軸Orの傾斜角θrは、平面視で45°に設定されている。同様に、回転軸Oxに対する第2傾斜軸Olの傾斜角θlは、同じく平面視で45°に設定されている。なお、各樽型ローラ21bの傾斜方向及び傾斜角度は、これらの例には限定されない。
【0052】
また、前述のように、第1及び第2メカナムホイール21R,21Lは、
図3等に示した前側レール部材71f及び後側レール部材71bを介して相互に連結されている。したがって、第1及び第2メカナムホイール21R,21Lは、前後方向及び左右方向に一体的に移動したり、水平面に垂直な旋回軸まわりに一体的に旋回したりする。
【0053】
第1及び第2モータ22R,22Lは、第1及び第2メカナムホイール21R,21Lのそれぞれに駆動連結されている。具体的に、第1及び第2モータ22R,22Lは、それぞれ、エンコーダ付DCブラシレスモータとして構成されている。第1及び第2モータ22R,22Lは、双方ともコントローラ4と電気的に接続されており、このコントローラ4から信号が入力されることで作動するようになっている。
【0054】
そして、第1モータ22Rは、第1メカナムホイール21Rに対し、駆動力(トルク)を伝達できるように連結されている。第2モータ22Lは、第2メカナムホイール21Lに対し、駆動力(トルク)を伝達できるように連結されている。
【0055】
なお、第1モータ22Rは第1メカナムホイール21Rに内蔵されており、第2モータ22Lは第2メカナムホイール21Lに内蔵されている。このように第1及び第2モータ22R,22Lを内蔵させることで、搬送装置1全体の簡素化及びコンパクト化を図ることができる。
【0056】
操作部3は、ベッド10の移動方向が入力されるように構成されている。操作部3は、移動方向の入力を受け付けるリモートコントローラであり、コントローラ4と有線又は無線で接続されている。操作部3が受付可能な移動方向には、少なくとも左右方向(特に、右方向と左方向の両方)が含まれる。
【0057】
具体的に、本実施形態に係る操作部3は、
図7に示すように、右方向への横移動を指示する際に押下される右スイッチ31と、左方向への横移動を指示する際に押下される左スイッチ32と、を有している。操作部3は、右スイッチ31が押下されたときには、その押下に対応した電気信号を生成し、左スイッチ32が押下されたときには、その押下に対応した別の電気信号を生成する。操作部3は、そうして生成した各電気信号をコントローラ4に入力する。
【0058】
また、本実施形態に係る操作部3は、前後方向におけるベッド10の一端側に支持されるように構成されている。例えば、
図1に示す操作部3は、ベッド10の後端側においてヘッドボード11hに取り付けられている(
図7も参照)。操作部3は、ヘッドボード11h等、前述の支持部として機能する要素に対して別体にしてもよいし、一体的にしてもよい。前者の場合、操作部3をヘッドボード11hに係止するように構成することもできる。
【0059】
コントローラ4は、操作部3から入力された電気信号に基づいて、第1及び第2モータ22R,22Lを制御する。このコントローラ4は、CPU、メモリ及び入出力バスを有しており、例えば制御基板によって構成されている。
【0060】
コントローラ4は、操作部3から入力された電気信号等に基づいて第1及び第2モータ22R,22Lそれぞれの指令回転数を設定し、その指令回転数に対応した制御信号を第1及び第2モータ22R,22Lに入力する。第1及び第2モータ22R,22Lは、コントローラ4が設定した指令回転数で回転する。指令回転数の符号を変更することで、第1モータ22R及び第2モータ22Lの回転方向を個別に変更することができる。
【0061】
第1モータ22Rが回転することで、その駆動力が伝達されて第1メカナムホイール21Rが回転する。同様に、第2モータ22Lが回転することで、その駆動力が伝達されて第2メカナムホイール21Lが回転する。その際、前述のように各モータ22R,22Lの回転方向を変更することで、対応するメカナムホイール21R,21Lを前転と後転とに切り替えることができる。
【0062】
本実施形態では、右側に位置する第1メカナムホイール21Rを前転させると、搬送装置1及びベッド10に対し、左斜め前方へと推力を及ぼすことができる(
図8の矢印A
11を参照)。一方、左側に位置する第2メカナムホイール21Lを前転させると、搬送装置1は、ベッド10に対して右斜め前方へと推力を印加することができる(
図8の矢印A
12を参照)。
【0063】
したがって、例えば
図8の左上に示すように、第1及び第2メカナムホイール21R,21Lを双方とも前転させると、第1メカナムホイール21Rを前転させることで発揮される左方への推力と、第2メカナムホイール21Lを前転させることで発揮される右方への推力とを相殺し、搬送装置1全体では前方へと推力を発揮させることができる。この推力によってベッド10を前進させることができる。
【0064】
同様に、右側に位置する第1メカナムホイール21Rを後転させると、搬送装置1及びベッド10に対し、右斜め後方へと推力を及ぼすことができる(
図8の矢印A
21を参照)。一方、左側に位置する第2メカナムホイール21Lを後転させると、搬送装置1は、ベッド10に対して左斜め後方へと推力を印加することができる(
図8の矢印A
22を参照)。
【0065】
したがって、例えば
図8の右上に示すように、第1及び第2メカナムホイール21R,21Lを双方とも後転させると、第1メカナムホイール21Rを後転させることで発揮される右方への推力と、第2メカナムホイール21Lを後転させることで発揮される左方への推力とが相殺された結果、搬送装置1全体では後方へと推力を発揮させることができる。この推力によってベッド10を後退させることができる。
【0066】
一方、第1及び第2メカナムホイール21R,21Lのうちの一方を前転させ、他方を後転させることで、搬送装置1は、ベッド10に対して左右方向への推力を印加することもできる。
【0067】
図8の左下に示す例では、第1メカナムホイール21Rを後転させるとともに第2メカナムホイール21Lを前転させることで、ベッド10には、右方向への推力が印加される。
【0068】
ところが、第1及び第2メカナムホイール21R,21Lのうちの一方を前転させ、他方を後転させると、搬送装置1は、ベッド10を横移動させるような推力に加えて、そのベッド10を旋回させるような推力も同時に作用させることになる。
【0069】
図8の右下に示す例では、第1メカナムホイール21Rを後転させるとともに第2メカナムホイール21Lを前転させることで、搬送装置1は、ベッド10を右方向に旋回させる推力を発揮する。その場合の旋回軌道Rは、前述した矢印A
21と矢印A
12とを接線とした円弧状になり、その円弧の中心位置となる回転中心Ozは、ベッド10の後端側に位置する。ゆえに、ベッド10に印加される推力は、回転中心Ozの反対側に位置する部位(ベッド10の前端側の部位)を、右方向に旋回させることになる。
【0070】
したがって、第1メカナムホイール21Rを後転させるとともに第2メカナムホイール21Lを前転させることで、ベッド10の後端側に回転中心Ozが位置するように右方向へ旋回させる推力(言い換えると、ベッド10の前端側を右方向へ旋回させる推力)と、ベッド10全体を右方向に横移動させるような推力と、が双方ともベッド10に印加されることになる。この場合、ベッド10の前端側は、回転中心Ozまわりに時計回り方向に旋回する。この旋回によって、ベッド10の前端側は、その後端側と比べて、右方向に大きく移動することになる。
【0071】
同様に、図示は省略するが、第1メカナムホイール21Rを前転させるとともに第2メカナムホイール21Lを後転させることで、ベッド10の後端側に回転中心Ozが位置するように左方向へ旋回させる推力(言い換えると、ベッド10の前端側を左方向へ旋回させる推力)と、ベッド10全体を左方向に横移動させるような推力と、が双方ともベッド10に印加されることになる。この場合、ベッド10の前端側は、回転中心Ozまわりに反時計回り方向に旋回する。この旋回によって、ベッド10の前端側は、その後端側と比べて、左方向に大きく移動することになる。
【0072】
そして、本実施形態に係る搬送装置1は、前述のような動作を積極的に活用することで、2つのメカナムホイールを用いた場合であっても、4つのメカナムホイールを用いた場合と同様に、スムースな横移動を実現するように構成されている。
【0073】
すなわち、本実施形態に係るコントローラ4は、操作部3に左右方向の移動方向が入力された場合、ベッド10を、該ベッド10の一端側(本実施形態では後端側)に回転中心Ozが位置するように旋回させつつ、操作部3に入力された移動方向(左方向又は右方向)へと横移動させるように、第1及び第2モータ22R,22Lを介して第1及び第2メカナムホイール21R,21Lを作動させる。
【0074】
この場合、ベッド10の後端側は、ベッド10の他端側(本実施形態では前端側)に比べて回転中心Ozが近接している分、入力された移動方向へ移動量が小さくなる。しかしながら、ベッド10の後端側は、操作者100によって支持されている。そのため、ベッド10の横移動に釣られて操作者100自身も横方向に移動することで、ベッド10の後端側についても移動量を確保することが可能になる。そのことで、ベッド10の前端側と後端側を双方とも十分に移動させ、ひいてはベッド10全体を所望の移動方向へと横移動させることができる。
【0075】
また、本実施形態に係るコントローラ4は、操作部3に移動方向が入力された場合、第1及び第2メカナムホイール21R,21Lのうちの一方を前転させるとともに、他方を後転させるようにそれぞれの指令回転数を設定するとともに、当該設定に際し、第1メカナムホイール21Rと第2メカナムホイール21Lとで指令回転数の絶対値を等しくする。
【0076】
以下、ベッド10の横移動の具体例について、
図9A、
図9B及び
図9Cを参照して説明する。ここで、
図9A、
図9B及び
図9Cは、搬送装置1を用いた横移動の具体例を示す図である。また、
図12は、搬送装置の従来例を示す図である。
【0077】
まず、
図9Aに示すように、操作者100から見て左方に壁Wが位置するとともに、その壁Wに寄せた状態から、ベッド10を、右方へと横移動させるケースを例示する。こうしたケースにおいては、ベッド10の後端部(例えば、
図1に示したヘッドボード11h)に横方向の力を加えて、その力を検知することで第1及び第2メカナムホイール21R,21Lを回転させることが考えられる(いわゆるアシスト方式)。
【0078】
しかしながら、そのような力を加えた場合、ベッド10の前端側の部位、又は、第1及び第2メカナムホイール21R,21Lの中央位置を回転中心Oz’とした旋回動作が生じてしまい、ベッド10の前端部(フットボード11f側部分)が壁Wに向かって移動する可能性がある(
図12を参照)。ベッド10と壁Wとの衝突を抑制するためには、そうした移動は可能な限り避けることが好都合である。
【0079】
そこで、
図9Aに示すように右スイッチ31が押下された場合、第1メカナムホイール21Rを後転させるとともに第2メカナムホイール21Lを前転させる。これにより、ベッド10の後端側に回転中心Ozが位置するように右方向に旋回させる推力と、ベッド10全体を右方向に横移動させるような推力と、が双方ともベッド10に印加される。
【0080】
前述の如き2つの推力がベッド10に印加されることで、
図9Bに示すように、ベッド10は、後端側から前端側にかけて全体的に右方へと移動しつつ、その前端側を右方へと旋回させる(
図9Bの矢印Abを参照)。その際の移動量は、2点鎖線で示した初期位置Tr1からのズレに示す通りである。なお、ここでいう初期位置Tr1とは、
図9Aにおけるベッド10の位置を模式的に示したものである。
【0081】
そして、
図9Cに示すように、右方向へのベッド10の移動及び旋回に釣られて操作者100自身も右方向へと移動することで、その操作者100によって支持された後端側についても、右方向への移動量が確保されることになる(
図9Cの矢印Acを参照)。ベッド10の前端側については旋回動作によって移動量を確保しつつ、ベッド10の後端側については操作者100の移動を通じて移動量を確保することで、ベッド10全体を右方向へと横移動させることが可能になる。その際の移動量は、2点鎖線で示した中途位置Tr2からのズレに示す通りである。なお、ここでいう中途位置Tr2とは、
図9Bにおけるベッド10の位置を模式的に示したものである。
【0082】
また、仮の構成として、
図12の比較例に示すように、ベッド10の前端側に回転中心Oz’が位置するように旋回させるケースを考える。この場合、操作者100が支持している後端側こそ横方向に大きく移動するものの、ベッド10の前端側については、操作者100自身が横方向へと力を印加することで旋回させる必要がある。ベッド10の前端側は、その後端側と比べて操作者100から離れているため、そうした動作に要する負荷は相対的に大きくなる。このことは、スムースな横移動を実現する上で不都合である。
【0083】
また、そのような仮の構成を採用した場合、ベッド10の前端側については、回転中心Oz’付近の部位(
図12に示す例では、左側の前輪14F)が反対方向へと旋回してしまい、その部位が壁W等に衝突する可能性もある。
【0084】
したがって、
図9A~
図9Cのようにベッド10の後端側に回転中心Ozが位置するように構成することは、操作者100の負荷を軽減するとともに、壁W等との衝突を抑制する上でも有効である。
【0085】
続いて、横移動に際してコントローラ4が行う処理の具体例について説明する。ここで、
図10は、ベッド10の横移動に関連した処理を例示するフローチャートであり、
図11は、横移動時(特に右方への横移動時)における各モータの指令回転数を例示する図である。
【0086】
まず、
図10のステップS1において、コントローラ4は、操作部3から出力される電気信号を読み込む(各種読込)。続くステップS2において、コントローラ4は、ステップS1で電気信号が読み込まれたか否かに基づいて、操作部3に対する操作入力を検出したか否かを判定する(リモコン操作検出?)。
【0087】
ステップS2の判定がNOの場合、制御プロセスはリターンする。一方、ステップS2の判定がYESの場合、制御プロセスはステップS3に進む。
【0088】
ステップS3において、コントローラ4は、第1及び第2モータ22R,22Lそれぞれの指令回転数を上昇させる。各指令回転数の大きさは、右スイッチ31又は左スイッチ32の押下時間に応じて上昇する。その際、第1モータ22Rの指令回転数の絶対値は、第2モータ22Lの指令回転数の絶対値と一致するように設定される。第1モータ22Rの指令回転数は、第1メカナムホイール21Rの指令回転数に等しい。第2モータ22Lの指令回転数は、第2メカナムホイール21Lの指令回転数に等しい。
【0089】
また、各指令回転数の符号は、本実施形態のように第1傾斜軸Or及び第2傾斜軸Olを設定した場合、右スイッチ31押下時には、第1モータ22Rの指令回転数が負となり、第2モータ22Lの指令回転数が正となる。対して、左スイッチ32押下時には、第1モータ22Rの指令回転数が正となり、第2モータ22Lの指令回転数が負となる。
【0090】
なお、本実施形態では、第1又は第2メカナムホイール21R,21Lを前転させる場合の指令回転数を“正”とし、第1又は第2メカナムホイール21R,21Lを後転させる場合の指令回転数を“負”としている。
【0091】
続くステップS4において、コントローラ4は、第1及び第2モータ22R,22Lそれぞれの指令回転数が、所定の閾値Tに達したか否かを判定する。この閾値Tは、事前に設定されたパラメータであり、コントローラ4のメモリ等から適宜読み込まれて用いられる。この判定がNOの場合、制御プロセスは、ステップS5をスキップしてステップS6に進む。一方、ステップS4の判定がYESの場合、制御プロセスは、ステップS5を経由してステップS6に進む。
【0092】
ステップS5において、コントローラ4は、第1及び第2モータ22R,22Lそれぞれの指令回転数を、前記閾値Tに設定する。コントローラ4がステップS5に係る処理を実行することで、第1及び第2モータ22R,22Lそれぞれの指令回転数は、閾値T以下の値に制限される(
図11も参照)。なお、
図11における指令回転数の符号は、右方向へ横移動させる場合の例示に過ぎない。左方向へと横移動させる場合、第1及び第2モータ22R,22Lそれぞれの指令回転数は、
図11の値に対して正負の符号が反転することになる。
【0093】
ステップS6において、コントローラ4は、ステップS4及びS5で設定された指令回転数で、第1及び第2モータ22R,22Lを駆動する。この駆動によって、
図9A及び
図9Bを用いて説明した動作が実現される。これにより、続くステップS7では、操作者100自身の横移動が誘導される。操作者100自身が横移動することで、
図9Cを用いて説明したように、ベッド10全体が所望の方向へと横移動することになる。
【0094】
以上説明したように、本実施形態によれば、
図9A~
図9Cを用いて説明したように、2つのメカナムホイールを用いた場合に特有の動作を利用することで、回転中心Ozが位置するベッド10の後端側と、回転中心Ozの反対側に位置するベッド10の前端側と、を双方とも横移動させることができる。これにより、2つのメカナムホイールを用いた搬送装置であっても、4つのメカナムホイールを用いた場合と同様に、スムースな横移動を実現することができる。
【0095】
また、
図1~
図2、及び、
図9A~
図9Cに例示したように、ベッド10の後端側には操作部3が支持されるようになっている。よって、操作者100は、ベッド10の後端側を意識的に支持せずとも、操作部3を操作するときに、結果的にベッド10の後端側を支持することになる。これにより、操作者100が後端側を意識的に支持した場合と同様に、後端側について移動量を確保することが可能になる。そのことで、ベッド10の後端側と前端側を双方とも十分に移動させ、ひいてはベッド10全体を所望の移動方向へと横移動させることができる。これにより、2つのメカナムホイールを用いた搬送装置1であっても、スムースな横移動を実現することが可能になる。
【0096】
また、
図8及び
図10を用いて説明したように、第1メカナムホイール21Rと第2メカナムホイール21Lとを反対方向に回転させることで、ベッド10を旋回動作させるような推力と、ベッド10を横移動させるような推力とが同時に発揮される。前者の推力は、ベッド10の後端側に回転中心Ozが位置するような旋回動作の発生に資するとともに、後者の推力は、操作者の横移動を促す上で好適に作用する。したがって、前記第3の態様のように構成することは、2つのメカナムホイールを用いた場合に、スムースな横移動を実現する上で有効となる。
【0097】
また、
図10を用いて説明したように、第1メカナムホイール21Rの指令回転数と、第2メカナムホイール21Lの指令回転数とで絶対値を等しくすることで、横方向に平行な横移動を実現することができる。このことは、2つのメカナムホイールを用いた場合に、スムースな横移動を実現する上で有効となる。
【0098】
また、例えば医療用ベッドの搬送時には、通常、操作者100によってヘッドボード11hが支持されることになる。したがって、旋回動作時に回転中心Ozが位置することになる後端側にヘッドボード11hを配置することで、特段の目印、表示等を設けずとも、操作者100に自然と後端側を支持させることができる。このことは、2つのメカナムホイールを用いた場合に、スムースな横移動を実現する上で有効となる。
【0099】
<他の実施形態>
前記実施形態では、操作者100によって支持され、旋回時に回転中心Ozが位置する「一端側」をベッド10の後端側とし、前後方向においてその反対側に位置する「他端側」をベッド10の前端側とし、前者の後端側に操作部3が配置されるように構成されていたが、本開示は、そうした構成には限定されない。
【0100】
図13は、搬送装置1の変形例を示す図である。変形例に係る搬送装置1”のように、前記「一端側」をベッド10の前端側とし、前記「他端側」をベッド10の後端側としてもよい。その場合、操作者100の支持位置と、操作部3の取付位置とが前後反転するとともに、ベッド10の前端側に回転中心Oz”が位置するようになる。その場合、変形例に係る第1メカナムホイール21R”における第1傾斜軸Or”と、変形例に係る第2メカナムホイール21L”における第2傾斜軸Ol”とは、ベッド10の前端側から後端側に向かうにしたがって、左右方向の内側から外側に向かうように傾斜させてもよい。
【符号の説明】
【0101】
1 搬送装置
3 操作部
4 コントローラ
10 ベッド
11 ベッド本体
11h ヘッドプレート
11f フットプレート
14 キャスタ
14F 前輪
14B 後輪
21R 第1メカナムホイール
21L 第2メカナムホイール
21a ホイール本体
21b 樽型ローラ
22R 第1モータ
22L 第2モータ
Oz 回転中心
Or 第1傾斜軸
Ol 第2傾斜軸