(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135283
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】検査システム、及び検査方法
(51)【国際特許分類】
G01M 3/06 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
G01M3/06 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023045901
(22)【出願日】2023-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河瀬 侑里香
【テーマコード(参考)】
2G067
【Fターム(参考)】
2G067AA22
2G067BB17
2G067BB30
2G067CC01
2G067EE02
2G067EE08
2G067EE12
2G067EE13
(57)【要約】
【課題】対象物の検査の精度を向上させる。
【解決手段】検査システム(20)は、水中において対象物(10)を撮像する撮像部(30)と、撮像部(30)が撮像した対象物(10)の画像データに基づき、対象物(10)から発生する気泡(B)を特定する制御部(40)とを備える。制御部(40)は、画像データの気泡候補(C)が、対象物(10)を水中に入れる際に持ち込まれた持ち込み気泡(D)であるか否かの判定を行う判定部(40a)を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中において対象物(10)を撮像する撮像部(30)と、
前記撮像部(30)が撮像した前記対象物(10)の画像データに基づき、前記対象物(10)から発生する気泡(B)を特定する制御部(40)とを備え、
前記制御部(40)は、前記画像データの気泡候補(C)が、前記対象物(10)を水中に入れる際に持ち込まれた持ち込み気泡(D)であるか否かの判定を行う判定部(40a)を備える、
検査システム。
【請求項2】
請求項1の検査システムにおいて、
前記判定部(40a)は、前記撮像部(30)が第1時刻及びその後の第2時刻にそれぞれ撮像した前記対象物(10)の第1画像データ及び第2画像データのそれぞれの気泡候補(C)の前記対象物(10)に対する相対位置のずれが所定範囲内であると、前記第1画像データ及び前記第2画像データのそれぞれの気泡候補(C)を前記持ち込み気泡(D)であると判定する、
検査システム。
【請求項3】
請求項2の検査システムにおいて、
前記判定部(40a)は、前記第2時刻よりも後の第3時刻に前記撮像部(30)が撮像した前記対象物(10)の第3画像データで前記持ち込み気泡(D)が移動したと判断された場合、前記持ち込み気泡(D)を気泡(B)の特定対象から外す、
検査システム。
【請求項4】
請求項3の検査システムにおいて、
前記判定部(40a)は、前記持ち込み気泡(D)が移動した後に、さらに後の時刻に前記撮像部(30)が撮像した前記対象物(10)の画像データにおいて、前記相対位置のずれが前記所定範囲内である箇所から気泡候補(C)が新たに発生した場合、当該気泡候補(C)は漏れ気泡であると判定する、
検査システム。
【請求項5】
請求項1の検査システムにおいて、
前記判定部(40a)は、第1時刻に前記撮像部(30)が撮像した第1画像データの気泡候補(C)が、さらに後の時刻に前記撮像部(30)が撮影した画像データにおいて、前記対象物(10)に対する相対位置のずれが所定範囲外となる場合、当該気泡候補(C)を持ち込み気泡(D)であると判定し、その後の時刻に前記撮像部(30)が撮影した画像データにおいて、前記相対位置のずれが前記所定範囲内である箇所から気泡候補(C)が新たに発生した場合、当該気泡候補(C)は漏れ気泡であると判定する、
検査システム。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項の検査システムにおいて、
水中において前記対象物(10)を第1方向に移動させる搬送部(25)をさらに備え、
前記撮像部(30)は、前記搬送部(25)によって搬送される前記対象物(10)を撮像する、
検査システム。
【請求項7】
請求項6の検査システムにおいて、
前記制御部(40)は、前記対象物(10)の前記第1方向の移動に伴う該対象物(10)の位置の変化を示す第1指標をパラメータとして前記気泡(B)を特定する、
検査システム。
【請求項8】
請求項7の検査システムにおいて、
前記制御部(40)は、前記撮像部(30)が撮像した前記対象物(10)の2つの画像データのそれぞれの気泡候補(C)の位置のずれが所定範囲内であると、当該2つの画像データの気泡候補(C)を気泡(B)の特定対象から外す第1処理を行い、当該第1処理において、前記2つの画像データのうち後に撮像した画像データの気泡候補(C)の位置を前記第1指標に基づき補正する、
検査システム。
【請求項9】
請求項1~5のいずれか1項の検査システムにおいて、
前記制御部(40)は、前記撮像部(30)が撮像した前記対象物(10)の2つの画像データのそれぞれの気泡候補(C)の輝度差が所定値より小さいことを示す条件が成立すると当該該2つの画像データの気泡候補(C)を気泡(B)の特定対象とする第2処理を行う、
検査システム。
【請求項10】
請求項1~5のいずれか1項の検査システムにおいて、
前記制御部(40)は、同じ気泡(B)が特定された複数の画像データのうち、最も低い位置にある気泡(B)の位置に基づき前記対象物(10)の漏洩箇所を特定する、
検査システム。
【請求項11】
請求項10の検査システムにおいて、
前記制御部(40)は、前記気泡(B)の位置と前記対象物(10)の漏洩箇所とを予め関連付けた第1データと、前記最も低い位置にある気泡(B)の位置とに基づき、前記対象物(10)の漏洩箇所を特定する、
検査システム。
【請求項12】
請求項1~5のいずれか1項の検査システムにおいて、
前記制御部(40)は、CNN(Convolutional Neural Network)又はテンプレートマッチングを用いて前記対象物(10)から発生する気泡(B)を特定する、
検査システム。
【請求項13】
請求項1~5のいずれか1項の検査システムにおいて、
前記制御部(40)による前記気泡(B)の特定に応じて、前記対象物(10)から気泡(B)が発生していること、又は前記対象物(10)が漏洩していることを報知する報知部(45)を備える、
検査システム。
【請求項14】
水中において密閉式のケーシング(11)を有する圧縮機(10)を撮像部(30)によって撮像し、
前記撮像部(30)が撮像した前記圧縮機(10)の画像データに基づき前記圧縮機(10)から発生する気泡(B)を制御部(40)によって特定し、
前記画像データの気泡候補(C)が、前記対象物(10)を水中に入れる際に持ち込まれた持ち込み気泡(D)であるか否かを判定部(40a)によって判定する、
検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、検査システム、及び検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ダイカスト製品を水槽内に浸漬し、ダイカスト製品から発生した気泡に基づきダイカスト製品を検査する検査システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、対象物をアクチュエータにより水槽中に入れ、対象物の検査を終了した後、対象物を再び水槽から出すようにしている(同文献の
図2)。このため、対象物を水没させたときに付着する持ち込み気泡が対象物から外れて上昇した場合に、持ち込み気泡を漏れ気泡と誤って判断してしまうという問題がある。
【0005】
本開示の目的は、対象物の検査の精度を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様は、検査システムを対象とし、水中において対象物(10)を撮像する撮像部(30)と、前記撮像部(30)が撮像した前記対象物(10)の画像データに基づき、前記対象物(10)から発生する気泡(B)を特定する制御部(40)とを備え、前記制御部(40)は、前記画像データの気泡候補(C)が、前記対象物(10)を水中に入れる際に持ち込まれた持ち込み気泡(D)であるか否かの判定を行う判定部(40a)を備える。
【0007】
第1の態様では、持ち込み気泡(D)に起因する漏れ気泡の誤判定を抑制できる。また、判定された持ち込み気泡(D)の位置を記憶することによって、その後に持ち込み気泡(D)が対象物(10)から離れて移動した場合にも、当該持ち込み気泡(D)が漏れ気泡として特定されることを回避できる。従って、対象物(10)の検査の精度を向上させることである。
【0008】
第2の態様は、第1の態様において、前記判定部(40a)は、前記撮像部(30)が第1時刻及びその後の第2時刻にそれぞれ撮像した前記対象物(10)の第1画像データ及び第2画像データのそれぞれの気泡候補(C)の前記対象物(10)に対する相対位置のずれが所定範囲内であると、前記第1画像データ及び前記第2画像データのそれぞれの気泡候補(C)を前記持ち込み気泡(D)であると判定する。
【0009】
第2の態様では、画像データを用いて、気泡候補(C)が持ち込み気泡(D)であるかどうかを容易に判定することができる。
【0010】
第3の態様は、第2の態様において、前記判定部(40a)は、前記第2時刻よりも後の第3時刻に前記撮像部(30)が撮像した前記対象物(10)の第3画像データで前記持ち込み気泡(D)が移動したと判断された場合、前記持ち込み気泡(D)を気泡(B)の特定対象から外す。
【0011】
第3の態様では、持ち込み気泡(D)に起因する漏れ気泡の誤判定をより確実に抑制することができる。
【0012】
第4の態様は、第3の態様において、前記判定部(40a)は、前記持ち込み気泡(D)が移動した後に、さらに後の時刻に前記撮像部(30)が撮像した前記対象物(10)の画像データにおいて、前記相対位置のずれが前記所定範囲内である箇所から気泡候補(C)が新たに発生した場合、当該気泡候補(C)は漏れ気泡であると判定する。
【0013】
第4の態様では、持ち込み気泡(D)と区別して、気泡候補(C)が漏れ気泡であることを判定することができる。
【0014】
第5の態様は、第1の態様において、前記判定部(40a)は、第1時刻に前記撮像部(30)が撮像した第1画像データの気泡候補(C)が、さらに後の時刻に前記撮像部(30)が撮影した画像データにおいて、前記対象物(10)に対する相対位置のずれが所定範囲外となる場合、当該気泡候補(C)を持ち込み気泡(D)であると判定し、その後の時刻に前記撮像部(30)が撮影した画像データにおいて、前記相対位置のずれが前記所定範囲内である箇所から気泡候補(C)が新たに発生した場合、当該気泡候補(C)は漏れ気泡であると判定する。
【0015】
第5の態様では、持ち込み気泡(D)と区別して、気泡候補(C)が漏れ気泡であることを判定することができる。
【0016】
第6の態様は、第1~第5の態様のいずれか1つにおいて、水中において前記対象物(10)を第1方向に移動させる搬送部(25)をさらに備え、前記撮像部(30)は、前記搬送部(25)によって搬送される前記対象物(10)を撮像する。
【0017】
第6の態様では、複数の対象物(10)を搬送部(25)により移動させることで、各対象物(10)から気泡が発生するか否かを連続的に判定できる。これにより、検査効率を向上させることができる。
【0018】
第7の態様は、第6の態様において、前記制御部(40)は、前記対象物(10)の前記第1方向の移動に伴う該対象物(10)の位置の変化を示す第1指標をパラメータとして前記気泡(B)を特定する。
【0019】
第7の態様では、対象物(10)の第1方向に伴う位置の変化を考慮して気泡(B)を特定する。対象物(10)が第1方向に移動すると、対象物(10)の移動に伴い画像データ中の気泡候補(C)の座標位置が変化するからである。
【0020】
第8の態様は、第7の態様において、前記制御部(40)は、前記撮像部(30)が撮像した前記対象物(10)の2つの画像データのそれぞれの気泡候補(C)の位置のずれが所定範囲内であると、当該2つの画像データの気泡候補(C)を気泡(B)の特定対象から外す第1処理を行い、当該第1処理において、前記2つの画像データのうち後に撮像した画像データの気泡候補(C)の位置を前記第1指標に基づき補正する。
【0021】
第8の態様では、制御部(40)が行う第1処理において、2つの画像データのそれぞれの気泡候補(C)の位置のずれが所定範囲内であると、当該2つの画像データの気泡候補(C)を気泡(B)の特定対象から外す。気泡候補(C)の位置のずれが所定範囲内である場合、気泡候補(C)は、対象物(10)を水没させたときに付着した持ち込み気泡(D)や、配管における光の反射部などである可能性が高いからである。一方、気泡候補(C)が持ち込み気泡(D)等である場合、この気泡候補(C)は対象物(10)の第1方向の移動に伴い変化する。そこで、制御部(40)は、第1処理において、2つの画像データのうち後に撮像した画像データの気泡候補(C)の位置を第1指標に基づいて補正する。これにより、対象物(10)の移動を考慮できるので、持ち込み気泡(D)等を気泡(B)と特定してしまう誤判定を抑制できる。
【0022】
第9の態様は、第1~第8のいずれか1つの態様において、前記制御部(40)は、前記撮像部(30)が撮像した前記対象物(10)の2つの画像データのそれぞれの気泡候補(C)の輝度差が所定値より小さいことを示す条件が成立すると当該該2つの画像データの気泡候補(C)を気泡(B)の特定対象とする第2処理を行う。
【0023】
第9の態様では、制御部(40)は、2つの画像データ中の気泡候補(C)の輝度差が所定値より小さくなることを示す条件が成立すると、両者の気泡候補(C)が一致しているとみなし、これらの気泡候補(C)を気泡(B)の特定対象とする。
【0024】
第10の態様は、第1~第9のいずれか1つの態様において、前記制御部(40)は、同じ気泡(B)が特定された複数の画像データのうち、最も低い位置にある気泡(B)の位置に基づき前記対象物(10)の漏洩箇所を特定する。
【0025】
第10の態様では、同じ気泡(B)が特定された複数の画像データがある場合、最も低い位置にある気泡(B)の位置は、対象物(10)の漏洩箇所に最も近くなる。このため、制御部(40)は、この気泡(B)の位置に基づき対象物(10)の漏洩箇所を特定する。
【0026】
第11の態様は、第10の態様において、前記制御部(40)は、前記気泡(B)の位置と前記対象物(10)の漏洩箇所とを予め関連付けた第1データと、前記最も低い位置にある気泡(B)の位置とに基づき、前記対象物(10)の漏洩箇所を特定する。
【0027】
第11の態様では、気泡(B)の位置と対象物(10)の漏洩箇所とを関連付けた第1データをさらに用いることで、対象物(10)の漏洩箇所を分類できる。
【0028】
第12の態様は、第1~第11のいずれか1つの態様において、前記制御部(40)は、CNN(Convolutional Neural Network)又はテンプレートマッチングを用いて前記対象物(10)から発生する気泡(B)を特定する。
【0029】
第12の態様では、CNN又はテンプレートマッチングを用いることで、画像データの二値化処理をせずとも、気泡(B)の特定精度を向上させることができる。
【0030】
第13の態様は、第1~第12のいずれか1つの態様において、前記制御部(40)による前記気泡(B)の特定に応じて、前記対象物(10)から気泡(B)が発生していること、又は前記対象物(10)が漏洩していることを報知する報知部(45)を備える。
【0031】
第13の態様では、検査者などは、気泡(B)の発生や、対象物(10)の漏洩を報知部(45)によって知ることができる。
【0032】
第14の態様は、検査方法を対象とし、水中において密閉式のケーシング(11)を有する圧縮機(10)を撮像部(30)によって撮像し、前記撮像部(30)が撮像した前記圧縮機(10)の画像データに基づき前記圧縮機(10)から発生する気泡(B)を制御部(40)によって特定し、前記画像データの気泡候補(C)が、前記対象物(10)を水中に入れる際に持ち込まれた持ち込み気泡(D)であるか否かを判定部(40a)によって判定する。
【0033】
第14の態様では、持ち込み気泡(D)に起因する漏れ気泡の誤判定を抑制できる。また、判定された持ち込み気泡(D)の位置を記憶することによって、その後に持ち込み気泡(D)が対象物(10)から離れて移動した場合にも、当該持ち込み気泡(D)が漏れ気泡として特定されることを回避できる。従って、対象物(10)の検査の精度を向上させることである。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】
図1は、実施形態に係る検査システムの概略の平面図である。
【
図2】
図2は、水槽中の圧縮機を拡大した正面図である。
【
図4】
図4は、検査方法の第1のフローチャートである。
【
図5】
図5は、検査方法の第2のフローチャートである。
【
図6】
図6は、画像データにおける圧縮機の存在範囲を特定する様子を示す。
【
図7】
図7は、画像データ中の気泡候補の一例を示す。
【
図8】
図8は、2つの画像データにおける圧縮機の反射部の位置の変化を示す。
【
図9】
図9は、2つの画像データにおける圧縮機の位置の変化を示す。
【
図10】
図10は、2つの画像データにおける気泡の位置の変化を示す。
【
図11】
図11は、持ち込み気泡であるか否かを判定する様子の一例を示す。
【
図12】
図12は、3つの画像データにおける気泡の位置の変化を示す。
【
図13】
図13は、圧縮機の漏洩箇所と気泡の位置とを関連付けた第1データの一例である。
【
図14】
図14は、圧縮機の漏洩箇所を特定する様子の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0035】
(本開示の要点)
本願出願人は、圧縮機の気密性を確認する水中気密検査において、対象物の検査効率を向上させるために、内圧を加えた状態の圧縮機を水平方向に横移動させ、撮像装置(カメラ)によってその動画を撮影し画像を取得し、その画像に対して輝度検出及び動体検出の画像処理を施し、気泡を自動で検出する技術を開発している。
【0036】
圧縮機を水没させたときに圧縮機に付着する気泡(以下、持ち込み気泡という)が、検査中に圧縮機から離れて上昇してしまうと、誤って漏れ気泡と判断してしまうという問題がある。
【0037】
そこで、水中において対象物の気密検査を行うときに、対象物を水没させたときから存在する気泡の座標位置を登録しておき、当該気泡が上昇しなければ漏れ気泡ではないと判断すると共に、当該気泡が上昇した場合にも登録された座標位置からの上昇であれば漏れ気泡ではないと判断することとした。また、同じ座標位置から新たな気泡が繰り返し発生する場合には漏れ気泡と判断することとした。
【0038】
持ち込み気泡が対象物から離れて上昇した場合に漏れ気泡ではないと判断する方法は、例えば、以下のように実施する。まず、持ち込み気泡が対象物に付着している間は、動体検出処理における前後2枚の画像比較での位置ずれが所定範囲内にあるので、漏れ気泡候補から除外する処理を行い、この処理で除外した気泡候補の座標情報をリストファイルに格納しておく。従来技術では、検査中のどこかのタイミングで持ち込み気泡が対象物から離れて上昇すると、2画像比較での位置ずれが所定範囲外となり漏れ気泡と判断されてしまっていたが、本開示の技術では、比較した画像中の気泡が、前述のリストファイルに座標位置を登録されている気泡である場合、持ち込み気泡が上昇しただけと判定し、漏れ気泡の候補から除外する。この時もまた、漏れ気泡候補から除外した気泡の座標位置の情報をリストファイルに格納し、次の画像(フレーム)以降でも、リストファイルに座標位置を登録されている気泡が上昇した場合に漏れ気泡であると判定しないようにする。
【0039】
尚、目視検査を行えば、持ち込み気泡の誤検知を抑制することができるが、作業者の負担が大きくなる。また、対象物を水没させたときに付着した気泡を検査前にブラシなどで除去してもよいが、検査工程が複雑になると共に、付着した気泡を完全に払拭することは難しい。
【0040】
(実施形態)
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。尚、本開示は、以下に示される実施形態に限定されるものではなく、本開示の技術的思想を逸脱しない範囲内で各種の変更が可能である。各図面は、本開示を概念的に説明するためのものであるから、理解容易のために必要に応じて寸法、比又は数を誇張又は簡略化して表す場合がある。以下の実施形態に記載の各種のパラメータの具体的な数値は単なる一例であり、それに限られるものではない。
【0041】
<検査システムの構成>
実施形態に係る検査システム(20)は、対象物における漏洩の有無を検査する。本例の対象物は、密閉型の圧縮機(10)である。検査システム(20)は、水中において圧縮機(10)から発生する気泡(B)を特定する。検査システム(20)は、この気泡(B)に基づき圧縮機(10)における漏洩を判定する。
【0042】
図1及び
図2に示すように、検査システム(20)は、水槽(21)と、搬送部(25)と、カメラ(30)を有する。
図3に示すように、検査システム(20)は、制御部(40)と、端末装置(45)とを有する。
【0043】
水槽(21)には水が溜められる。水槽(21)の側壁(22)は透明の材料(樹脂、ガラス、アクリル材料など)で構成される。
【0044】
搬送部(25)は、駆動源(26)と、該駆動源(26)によって駆動されるケーブル(27)と、ケーブル(27)に支持される複数のアーム(28)と有する。駆動源(26)は、例えば電動機によって構成される。ケーブル(27)は、水槽(21)の側壁(22)に沿うように第1方向(本例では、水平方向)に延びている。駆動源(26)は、ケーブル(27)を第1方向に搬送する。複数のアーム(28)はそれぞれ、ケーブル(27)に固定される。複数のアーム(28)は、ケーブル(27)の両側方(第1方向に対して垂直な水平方向)に延びる対構成を有し、各アーム(28)の先端に圧縮機(10)が吊り下げられる。駆動源(26)によってケーブル(27)が駆動されると、ケーブル(27)及びアーム(28)とともに圧縮機(10)が水平方向に移動する。これにより、搬送部(25)は、水中において複数の圧縮機(10)を2列に並べて第1方向に移動させ、複数の圧縮機(10)は、水中において、カメラ(30)の撮像領域を順に通過する。搬送部(25)は、圧縮機(10)を3列以上に並べて第1方向に移動させるように構成されてもよい。搬送部(25)は、圧縮機(10)が円弧状の軌跡を描くように構成されてもよい。
【0045】
撮像部であるカメラ(30)は、水槽(21)の外部に複数配置される。各カメラ(30)は、第1方向に対して異なる撮像角度で配置されてもよい。例えば、搬送部(25)の両側方にそれぞれ、第1方向に対して垂直な方向を向いたカメラ(30)と、当該垂直方向と異なる方向(斜め方向)を向いたカメラ(30)とが配置されてもよい。圧縮機(10)同士が重ならない画像データを得るためには、後者の斜め方向を向いたカメラ(30)が適している。各カメラ(30)は、水槽(21)内の所定の撮像領域の動画を撮像する。各カメラ(30)は、圧縮機(10)が所定の位置を通過したことを示す信号を受け取ったら、指定された秒数の動画撮影を開始するように構成されてもよい。各カメラ(30)は、対応する撮像領域の圧縮機(10)を撮像し、圧縮機(10)の画像データを取得する。画像データ中に、2台以上の圧縮機(10)が含まれてもよい。圧縮機(10)に漏洩がある場合、画像データ中には、圧縮機(10)から発生した気泡(B)が含まれる。
【0046】
各カメラ(30)と制御部(40)とは、第1通信線(W1)を介して互いに接続される。第1通信線(W1)は、有線又は無線である。各カメラ(30)は、制御部(40)の指令に基づき所定の撮像領域を撮像する。各カメラ(30)が撮像する動画は、静止画である複数の画像データによって構成される。連続する画像データの間隔tは例えば0.1秒である。言い換えると、各カメラ(30)が取得する画像データのフレームレートは例えば10fpsである。各カメラ(30)は、撮像した圧縮機(10)の画像データを、第1通信線(W1)を介して制御部(40)に送信する。
【0047】
制御部(40)は、MCU(Micro Control Unit,マイクロコントローラユニット)、電気回路、電子回路を含む。MCUは、CPU(Central Processing Unit,中央演算処理装置)、メモリ、通信インターフェースを含む。メモリには、CPUが実行するための各種のプログラムが記憶されている。
【0048】
制御部(40)は、各カメラ(30)が取得した画像データを受信する。制御部(40)は、画像データに基づいて圧縮機(10)から発生する気泡(B)を特定する。制御部(40)は、特定した気泡(B)に基づき圧縮機(10)の漏洩を判定する。
【0049】
制御部(40)は、判定部(40a)と記憶部(41)とを有する。判定部(40a)は、画像データの気泡候補(C)が、圧縮機(10)を水中に入れる際に持ち込まれた持ち込み気泡(D)であるか否かの判定を行う。記憶部(41)は、HDD(Hard Disk Drive)、RAM(Random Access Memory)、SSD(Solid State Drive)などを含む。
【0050】
記憶部(41)は、各カメラ(30)が取得した画像データを順次記憶する。加えて、記憶部(41)は、気泡(B)の位置(座標)と、圧縮機(10)の漏洩箇所とを関連付けたデータ(以下、第1データともいう)を記憶する。作業者は、検査する圧縮機(10)に応じた第1データを記憶部(41)に予め記憶させる。制御部(40)は、特定した気泡(B)の位置、及び第1データに基づき、圧縮機(10)の漏洩箇所を特定する。
【0051】
端末装置(45)は、パーソナルコンピュータなどの作業者が使用する端末である。端末装置(45)は、タブレットやスマートフォンなどであってもよいし、検査用の専用端末であってもよい。
【0052】
制御部(40)と端末装置(45)とは、第2通信線(W2)を介して互いに接続される。第2通信線(W2)は、有線又は無線である。制御部(40)と端末装置(45)とは、ネットワークを介して互いに接続されてもよい。
【0053】
制御部(40)は、圧縮機(10)の漏洩がありと判定した場合、そのことを示す信号を端末装置(45)に出力する。報知部である端末装置(45)は、画面の表示、光、音などによって、圧縮機(10)が漏洩していることを作業者に報知する。
【0054】
<圧縮機の概要>
対象物である圧縮機(10)の概要について
図2を参照しながら説明する。
【0055】
圧縮機(10)は、回転式流体機械である。圧縮機(10)は、いわゆる高圧ドーム式である。圧縮機(10)は、ケーシング(11)と、吸入管(12)と、吐出管(13)と、ターミナル(14)とを有する。ケーシング(11)は、中空の密閉容器である。ケーシング(11)は、胴体(11a)と、底部(11b)と、頂部(11c)とを有する。胴体(11a)は、軸方向の両端が開放する縦長の円筒状に形成される。底部(11b)は、胴体(11a)の長手方向(軸方向)の一端(
図2における下端)側の開放部を閉塞する。頂部(11c)は、胴体(11a)の長手方向(軸方向)の他端(
図2における上端)側の開放部を閉塞する。
【0056】
吸入管(12)は、胴体(11a)に固定される。吸入管(12)は、胴体(11a)の下部を径方向に貫通する。吸入管(12)には、アキュムレータ(15)が設けられる。アキュムレータ(15)は、液冷媒を貯める容器である。吸入管(12)は、圧縮機構のシリンダの内部へ冷媒を導く。
【0057】
吐出管(13)は、頂部(11c)に固定される。吐出管(13)は、頂部(11c)を軸方向に貫通する。吐出管(13)は、圧縮機構で圧縮された冷媒をケーシングの外部へ導く。
【0058】
ターミナル(14)は、ケーシング(11)の頂部に固定される。ターミナル(14)は、電源回路の電力を電動機に導くための中継端子を有する。
【0059】
ケーシング(11)の内部には、電動機と、駆動軸と、圧縮機構とが収容される(図示省略)。電動機が駆動軸を回転駆動すると、圧縮機構のシリンダの内部でピストンが回転する。これにより、流体(冷媒)は吸入管からシリンダの内部に流入する。圧縮機構は冷媒を圧縮する。圧縮機構で圧縮された冷媒は、ケーシングの内部に流出した後、吐出管を介してケーシングの外部へ流出する。
【0060】
<検査システムの動作>
検査システム(20)の動作について詳細に説明する。
【0061】
検査システム(20)の動作中には、搬送部(25)がケーブル(27)を第1方向に移動させる。これにより、ケーブル(27)の各アーム(28)に支持される複数の圧縮機(10)が、複数のカメラ(30)の撮像領域を順に通過する。各カメラ(30)は、対応する撮像領域を通過する圧縮機(10)のモノクロ動画を撮像する。各カメラ(30)は、撮像した圧縮機(10)の画像データを制御部(40)に順次送る。各カメラ(30)は、圧縮機(10)のカラー動画を撮像してもよい。
【0062】
制御部(40)が、各カメラ(30)から画像データを取得すると、
図4及び
図5に示すステップに従い、制御部(40)が圧縮機(10)の漏洩を判定する。尚、画像データは、細分化された複数の画素(ピクセル)の集合体である。
【0063】
ステップS11において、制御部(40)は、画像データのトリミングを行う。ステップS11では、制御部(40)は画像データのうち不要な領域を削除する。この不要な領域は、例えば水槽(21)外の領域や圧縮機(10)から遠く離れた領域を含む。
【0064】
ステップS111において、制御部(40)は、カメラ(30)が検査対象の圧縮機(10)(以下、ワークということもある)を撮像した時刻と、ワークの第1方向への移動速度とに基づいて、カメラ(30)が当該時刻に撮像した画像データにおけるワークの位置関係(例えば位置座標)を特定することによって、ワークの存在範囲を特定する。例えば、カメラ(30)が撮影開始信号を受信した時刻、又はカメラ(30)が最初の撮像を行った時刻を基準時刻とし、基準時刻から、ワークを含む画像データを撮像した時刻までの経過時間を算出し、当該経過時間とワーク移動速度とを乗じて、ワークの位置座標を特定してもよい。また、制御部(40)は、各カメラ(30)が異なる時刻に撮像した複数の画像データの中から、ワーク同士が重なっていない画像データを抽出して当該画像データに対して二値化処理を行うことにより、各ワークの輪郭を特定し、当該特定した輪郭を用いて各ワークの傾き角度を算出すると共に、当該算出した傾き角度を用いて、各ワークの存在範囲の傾きを補正して当該各存在範囲を確定してもよい。
【0065】
ステップS112において、制御部(40)は、各カメラ(30)が撮像した画像データにおいて、各ワークの確定した存在範囲以外の領域に対してマスク処理を行い、当該マスク処理が行われた画像データを記憶する。
【0066】
図6は、画像データにおける圧縮機(10)の存在範囲を特定する様子を示す。詳しくは、
図6の(a)~(c)に示すように、圧縮機(10)は一定速度で水平移動するため、例えば、カメラ(30)による撮影開始からの経過時間と移動速度とを用いた計算によって、各圧縮機(10)の位置関係を大まかに求めることができるので、前後それぞれの圧縮機(10)の存在範囲を仮決定し、例えば枠線で囲む。次に、
図6の(d)に示すように、圧縮機(10)同士が重ならない位置にある画像データを二値化して、圧縮機(10)の輪郭を抽出し、カメラ(30)の撮像角度に起因する圧縮機(10)の傾き角度を算出し、枠線で囲んだ領域の傾きを補正して圧縮機(10)の存在範囲を確定する。次に、
図6の(e)に示すように、圧縮機(10)の存在範囲以外はマスク処理をして、記憶部(41)の所定フォルダに、各圧縮機(10)を識別した全ての画像データを保存する。
【0067】
ステップS12において、制御部(40)は、ステップS11,S111,S112で処理された画像データに対し、二値化処理を行う。具体的には、制御部(40)は、画像データの輝度値に基づき二値化処理を行う。画像データの輝度値の範囲が0~255の範囲である場合、二値化処理の輝度値の閾値を例えば200とする。この場合、制御部(40)は、画像データの各画素のうち、輝度値が200以上の画素の輝度値を255に変更する。制御部(40)は、画像データの各画素のうち、輝度値が200未満の画素の輝度値を0に変更する。この二値化処理により、画像データは、実質的には白の画素と黒の画素とからなる画像データに変換される。
【0068】
ステップS13において、制御部(40)は、ブロブ解析を行い、画像データのうち白い塊の領域を気泡候補(C)として抽出する。この処理により、気泡候補(C)の面積や外接矩形を求めることができる。
図7は、画像データ中の気泡候補(C)の一例である。1つの矩形状のブロックが1つの画素を表す。
【0069】
ステップS14において、制御部(40)は、気泡候補(C)の面積に基づいて気泡候補(C)を気泡の特定対象から外すか否かを判定する。具体的には、ステップS14において、制御部(40)は、ステップS13の処理を経た画像データ(
図7を参照)のうち、白い画素からなる塊(bl)の面積を求める。制御部(40)は、ステップS14において、この面積が所定の範囲内である場合、気泡候補(C)を気泡の特定対象として維持する。ステップS14において、制御部(40)は、この面積が所定の範囲外である場合、気泡候補(C)を気泡の特定対象から外す(
図5のステップS25)。
【0070】
ステップS15において、制御部(40)は、白い画素からなる塊(bl)の縦横比に基づいて気泡候補(C)を気泡の特定対象から外すか否かを判定する。具体的には、ステップS15において、制御部(40)は、塊(bl)の外接矩形(
図7の一点鎖線で示す囲んだ部分)を抽出する。制御部(40)は、外接矩形の縦方向の長さhと、横方向の長さwとの縦横比h/wを求める。ここで、hは、気泡候補(C)の鉛直方向の最大高さに相当する。wは、気泡候補(C)の水平方向の最大幅に相当する。ステップS15において、h/wが所定値(例えば0.5)未満である場合、制御部(40)は、気泡候補(C)を気泡の特定対象から外す(ステップS25)。ステップS15において、h/wが所定値(2.0)よりも大きい場合、制御部(40)は、気泡候補(C)を気泡の特定対象から外す(ステップS25)。言い換えると、本例のステップS15では、h/wが0.5~2.0の範囲内であれば、制御部(40)が気泡候補(C)を気泡の特定対象として維持する。
【0071】
ステップS16において、制御部(40)は、LoG(Laplacian of Gaussian)フィルタを用いて気泡候補(C)を判定する。制御部(40)は、対象データの各画素の輝度を求める。LoGフィルタは、一般的な気泡の輝度分布に対応したフィルタである。気泡は、その中心において輝度が高く、中心から外周側に向かうほど輝度が低くなる特徴がある。LoGフィルタでは、この気泡の輝度の特徴に対応するように、気泡候補(C)の各画素の座標に対応する数値が設定される。具体的には、LoGフィルタでは、その中心における数値が低く、その外周側における数値が大きくなる。本例のLoGフィルタでは、その中心側の数値が負の方向に大きい値となり、外周側の数値は負の方向に小さい値、あるいは正の値になる。ステップS16では、制御部(40)が、気泡候補(C)に対してLoGフィルタを用いて畳み込み演算する。
【0072】
具体的には、制御部(40)は、気泡候補(C)の各画素の輝度と、LoGフィルタの各画素の座標に対応する数値とをそれぞれ掛け合わせる。次いで、制御部(40)は、気泡候補(C)の全ての画素毎に掛け合わせた値を足し合わせ、フィルタ処理後の値Nを得る。例えば気泡候補(C)の輝度が気泡の特徴に近い場合、ここで得られた値Nは比較的小さくなり、例えば負の値になる。逆に、気泡候補(C)の輝度が気泡の特徴から遠い場合、ここで得られたNは比較的大きくなり、例えば正の値となる。制御部(40)は、フィルタ処理後の値Nが、所定の閾値(例えば0)よりも小さい場合、気泡候補(C)を気泡の特定対象として維持する。制御部(40)は、フィルタ処理後の値Nが、上記閾値(例えば0)以上の場合、気泡候補(C)を気泡の特定対象から外す(ステップS25)。
【0073】
ステップS17において、制御部(40)は、CNN(Convolutional Neural Network)又はテンプレートマッチングにより、ステップS12~S16とは別に気泡候補(C)を抽出する。CNNやテンプレートマッチングは、ステップS12の二値化処理をせずとも、気泡を特定できる長所がある。
【0074】
制御部(40)は、CNNで作成した学習済みモデル(CNNモデル)に基づき画像データから気泡候補(C)を抽出する。CNNモデルを構築するための教師データとして、気泡を含む画像データを用いる。構築されたCNNモデルは、制御部(40)の記憶部(41)に記憶される。制御部(40)は、CNNモデルを用いて、画像データのうち教師データの気泡と類似する部分を気泡候補(C)として抽出する。
【0075】
制御部(40)は、CNNに代えて、テンプレートマッチングを用いて画像データから気泡候補(C)を抽出してもよい。この場合、制御部(40)は、対象となる画像データ(対象データ)と、予め用意した気泡を含む画像データ(比較データ)とを比較する。具体的には、制御部(40)は、対象データのうち気泡と推測した部分の輝度と、比較データの気泡部分の輝度との一致率が75%以上である場合、対象データの部分を気泡候補(C)として抽出する。厳密には、制御部(40)は、対象データの各画素の輝度と、比較データにおけるこれらの画素に対応するそれぞれの画素の輝度との一致率を求める。の一致率の平均値が75%以上である場合、この部分を気泡候補(C)として抽出する。
【0076】
ステップS18及びステップS19では、画像データ中において、漏れ気泡ではないもの、例えば、圧縮機(10)を水没させたときに付着した気泡(以下、「持ち込み気泡」という)や、配管における光の反射部などを気泡と誤検知しないための処理が行われる。
【0077】
図8に示すように、圧縮機(10)の配管の一部が白く反射する場合、制御部(40)は、この反射部(R)を気泡と誤認識してしまう可能性がある。また、圧縮機(10)を水没させたときに付着する持ち込み気泡については、そもそも、圧縮機(10)の漏洩に伴う漏れ気泡と区別することが難しい。
【0078】
そこで、判定部(40a)は、対象となる画像データ(以下、画像データAという)の気泡候補(C)と、画像データAより1つ前に取得した画像データ(以下、画像データBという)の気泡候補(C)の座標を比較する。つまり、画像データBは、カメラ(30)が第1時刻に撮像した第1画像データであり、画像データAは、カメラ(30)が第1時刻よりも後の第2時刻に撮像した第2画像データである。両者の気泡候補(C)の座標が変化していない条件が成立すると、判定部(40a)は、画像データAの気泡候補(C)を気泡の特定対象から除外する(ステップS25)。このとき、ステップS191において、判定部(40a)は、画像データA、Bの気泡候補(C)を持ち込み気泡(D)であると判定した場合には、画像データAにおける持ち込み気泡(D)の位置を記憶する。具体的には、持ち込み気泡(D)の位置情報(例えば位置座標)を、記憶部(41)のリストファイルに保存する。ステップS19の条件が成立しない場合、判定部(40a)は画像データAの気泡候補(C)を気泡の特定対象として維持する。
【0079】
ところで、圧縮機(10)などの反射部(R)は、気泡(B)と異なり、搬送部(25)によって水中を移動する。持ち込み気泡(D)についても圧縮機(10)に付着したまま水中を移動する場合がある。このため、圧縮機(10)の第1方向(水平方向)の移動を考慮せずに画像データAの座標位置を求めると、画像データAと画像データBの位置のずれが大きくなり、ステップS19において誤判定が生じる。そこで、本実施形態の制御部(40)は、ステップS18において、圧縮機(10)の水平方向の移動に伴う圧縮機(10)の位置の変化を考慮して、画像データAの気泡候補(C)の位置を補正する。
【0080】
具体的には、例えば圧縮機(10)の移動速度をv、カメラ(30)の撮像動作の間隔をtとする。この場合、圧縮機(10)の移動に伴う画像データAと画像データBにおける気泡候補(C)のx座標の変化量はΔx=vtで表すことができる。画像データAの気泡候補(C)の位置P1の座標が(x1,y1)であるとすると、補正後の座標は(x1-vt,y1)となる。本例では、変化量Δx(=vt)が第1指標となる。
【0081】
ステップS19では、判定部(40a)は、画像データAの気泡候補(C)の補正後の位置P1の座標(x1-vt,y1)と、画像データBの気泡候補(C)の位置P2の座標(x2,y2)とを比較する。両者の座標の位置のずれΔPは、以下の式で表すことができる。
【0082】
【0083】
ステップS19において、判定部(40a)は、ΔPが所定値より小さい場合、気泡候補(C)を気泡の特定対象から外す(ステップS25)。判定部(40a)は、ΔPが所定値以上である場合、気泡候補(C)を気泡の特定対象に維持する。ここで、所定値は、例えば10ピクセル(1.4mm/0.1秒に相当)である。所定値はゼロであってもよい。
図9は、2つの画像データにおいて、圧縮機(10)と共に持ち込み気泡(D)の位置が変化する様子を示している。
【0084】
尚、ステップS19において、判定部(40a)は、画像データA(第2画像データ)及び画像データB(第1画像データ)のそれぞれの気泡候補(C)の位置のずれΔPが所定値以上であった場合、第1時刻よりも前に撮像した画像データを用いて、当該気泡候補(C)が持ち込み気泡(D)であるかどうかを判定してもよい。第1時刻よりも前に撮像した画像データは、例えば、圧縮機(10)を水中に入れてから、カメラ(30)による撮影を開始するまでの間に、他の撮像部を用いて取得した画像であってもよい。
【0085】
ステップS18、ステップS19、及びステップS25は、本開示の第1処理に対応する。
【0086】
ステップS20において、制御部(40)は、気泡候補(C)が上昇しているか否かを判定する。気泡候補(C)が上昇していれば、この気泡候補(C)が気泡(B)である可能性が高いからである。ステップS20では、例えば
図10に示すように、制御部(40)は、画像データAの気泡候補(C)の位置P1(
図10の(B)を参照)と、画像データBの気泡候補(C)の位置P2(
図10(A)を参照)とを比較する。
【0087】
具体的には、制御部(40)は、以下の条件1と条件2の判定を行う。本例の制御部(40)は、条件1と条件2の双方が成立する場合、画像データAの気泡候補(C)を気泡(B)の特定対象とし、ステップS21に進む。制御部(40)は、条件1と条件2の一方、あるいは両方が成立しない場合、画像データAの気泡候補(C)を気泡(B)の特定対象から外す(ステップS25)。
【0088】
条件1)制御部(40)は、X座標(水平方向)において、位置P1と位置P2とを比較する。制御部(40)は、画像データAの気泡候補(C)の位置P1の座標x1の位置が、画像データBの気泡候補(C)の位置P2の座標x2に対して所定の範囲内であるかを判定する。ここで、所定の範囲は、例えば-50ピクセル~+50ピクセル(-7mm~+7mm/0.1秒に相当)の範囲である。連続する画像データにおいて、気泡(B)が上昇したとしても、厳密には気泡(B)のX座標の位置は変化しない。しかしながら、本判定では、カメラ(30)の撮像時の誤差や制御部(40)の処理の誤差などを考慮して、X座標における位置P1と位置P2の間のわずかなずれを許容している。
【0089】
条件2)制御部(40)は、Y座標(鉛直方向)において、位置P1と位置P2とを比較する。制御部(40)は、画像データAの気泡候補(C)の位置P1の座標y1が、画像データBの気泡候補(C)の位置P2の座標y2に対して所定の範囲内であるかを判定する。ここで、所定の範囲は、例えば40~200ピクセル(5.6mm~28mm/0.1秒に相当)の範囲である。連続する画像データにおいて、気泡(B)が上昇すると、画像データAの気泡候補(C)は、画像データBの気泡候補(C)よりも上方に移動する。このため、この範囲の下限は、0よりも大きい所定値としている。また、気泡(B)が上方に移動するとしても、その上昇速度には上限がある。このため、この範囲にも所定の上限値を設定している。
【0090】
ステップS21において、制御部(40)は、画像データAの気泡候補(C)の輝度が、画像データBの気泡候補(C)の輝度と近いことを示す条件が成立すると、画像データAの気泡候補(C)を気泡(B)の特定対象とする第2処理を行う。厳密には、制御部(40)は、この条件が成立すると、画像データAの気泡候補(C)を気泡(B)と仮判定し、ステップS201に進む。ステップS21において、この条件が成立しない場合、画像データAの気泡候補(C)を気泡(B)の特定対象から除外する(ステップS25)。
【0091】
具体的には、ステップS21において、制御部(40)は、画像データA及び画像データBにおいて、二値化処理がされていない画像データの気泡候補(C)を比較する。まず、画像データAにおいて、気泡候補(C)の外接矩形を求め、この外接矩形を画像データBの気泡候補(C)に当てはめる。制御部(40)は、画像データA及び画像データBにおいて、外接矩形を基準として同一の座標となる画素の一致率を順に求める。ステップS21において、外接矩形内の全ての画素の一致率の平均が75%以上である場合、制御部(40)は、ステップS201に進む。この一致率が75%未満である場合には、制御部(40)は、気泡候補(C)を気泡(B)の特定対象から除外する(ステップS25)。
【0092】
ステップS201において、判定部(40a)は、ステップS20で上昇していると判定され且つステップS21で気泡(B)であると仮判定された気泡候補(C)が、ステップS191でリストファイルに保存された持ち込み気泡(D)と同一であるか否かを判定する。気泡候補(C)が持ち込み気泡(D)と同一ではないと判定された場合、ステップS22において、当該気泡候補(C)が気泡(B)であると判定する。気泡候補(C)が持ち込み気泡(D)と同一であると判定された場合、当該気泡候補(C)を気泡(B)の特定対象から除外する(ステップS25)。このとき、ステップS202において、判定部(40a)は、持ち込み気泡(D)の位置を記憶する。具体的には、持ち込み気泡(D)の位置情報(例えば位置座標)を、記憶部(41)のリストファイルに保存する。
【0093】
図11は、第1及び第2画像データの比較で、移動無しとして、持ち込み気泡(D)と判定された気泡候補(C)が、第2及び第3画像データの比較では、移動有りとして、漏れ気泡の疑いが生じた場合に、リストファイルに保存された第2画像データの持ち込み気泡(D)の位置座標に基づき、当該持ち込み気泡(D)が上昇したものであると判定された様子を例示する。この場合、
図11に示すように、判定部(40a)は、第2及び第3画像データの気泡候補(C)を持ち込み気泡(D)であると判定すると共に、ステップS202において、第3画像データにおける持ち込み気泡(D)の位置を記憶する。これにより、持ち込み気泡(D)と判定された気泡候補(C)が、第3及び第4時刻データの比較で、移動有りとして、再び漏れ気泡の疑いが生じた場合に、リストファイルに保存された第3画像データの持ち込み気泡(D)の位置座標に基づき、当該持ち込み気泡(D)が上昇したものであることを判定することが可能となる。以上のような処理を繰り返すことにより、いったん持ち込み気泡(D)と判定された気泡候補(C)が、漏れ気泡と判定されることを回避できる。
【0094】
以上のようにして気泡(B)が特定されると、ステップS23において、制御部(40)は、画像データAにおいて特定された気泡(B)と、この気泡(B)に対応する画像データBの気泡(B)とに、同じアドレスを関連付ける。これらの気泡(B)は、ステップS21において、一致率が75%以上であると判定されたものである。このように各画像データの気泡(B)にアドレスを付与することで、複数の画像データにおいて同一の気泡(B)を特定できる。
【0095】
また、気泡(B)が特定されると、ステップS24において、制御部(40)は、漏洩ありと判定し、ステップS31において、制御部(40)は、気泡(B)が特定された複数の画像データのうち、最も低い位置にある気泡(B)の位置の座標を特定する。本例の制御部(40)は、
図12に示すように、連続する3つの画像データのうち、最も低い位置の気泡(B)の位置の座標を特定する。ここで、これらの3つの画像データのうち、最新の画像データ(画像データA)の気泡(B)と、それよりも1つ前の画像データ(画像データB)の気泡(B)には、ステップS23において、同一のアドレスが付与される。同様に、画像データBの気泡(B)と、それよりも前の画像データ(画像データC)の気泡(B)には、ステップS23において、同一のアドレスが付与される。従って、画像データAの気泡(B)を特定できれば、これよりも2つ前の画像データCの気泡(B)を特定でき、画像データCの気泡(B)の座標位置P3を取得できる。
【0096】
画像データCの気泡(B)の座標位置P3(x3,y3)は、画像データAの気泡(B)の座標位置P1(x1,y1)及び画像データBの気泡(B)の座標位置P2(x2,y2)よりも下方にある。従って、画像データCの気泡(B)の座標位置P3は、圧縮機(10)から気泡(B)が発生した箇所を示す指標となる。尚、本例の制御部(40)では、連続する3つの画像データから、気泡(B)が発生した箇所を特定する場合を例示してるが、連続する2つ又は4つ以上の画像データを用いて、同様の判定を行ってもよい。
【0097】
ステップS311において、制御部(40)は、画像データCにおける圧縮機(10)の位置座標及びサイズに、記憶部(41)に記憶された第1データ(気泡(B)の位置と圧縮機(10)の漏洩箇所とを予め関連付けたデータ)における基準となる圧縮機(10)の位置座標及びサイズを合わせる変換処理を行う。カメラ(30)の撮影角度が異なることに起因して、サイズ合わせも必要となる。
【0098】
ステップS32において、制御部(40)は、ステップS311で変換処理された第1データと、画像データCの気泡(B)の座標位置P3とに基づいて、圧縮機(10)の漏洩箇所を特定する。
【0099】
図13に示すように、第1データでは、圧縮機(10)の漏洩箇所と、その漏洩箇所に対応する気泡(B)の座標位置(x,y)の範囲が関連付けられている。漏洩箇所の項目としては、例えば、ケーシング(11)の胴体(11a)と頂部(11c)の接合部、ケーシング(11)の胴体(11a)と底部(11b)の接合部、ケーシング(11)の胴体(11a)と吸入管(12)の接合部、吸入管(12)とアキュムレータ(15)の接合部、頂部(11c)と吐出管(13)の接合部、頂部(11c)とターミナル(14)の接合部などが挙げられる。第1データは、これらの項目に対応する座標の範囲を含んでいる。
【0100】
ステップS32において、制御部(40)は、ステップS31で取得した気泡(B)の座標位置P3が、第1データのどの座標範囲に属するかを判定する。例えばステップS31において取得した気泡(B)の座標xがa~bの範囲であり、座標yがc~dの範囲である場合、制御部(40)は、胴体(11a)と頂部(11c)の接合部を漏洩箇所として特定する。
【0101】
図14は、ステップS311,S32で圧縮機の漏洩箇所を特定する様子を示す。
図14に示すように、まず、例えばカメラ(30)による撮影開始からの時間経過に基づいて、画像データCにおける圧縮機(10)の位置座標及びサイズを算出し、次に、基準となる圧縮機(10)のサイズを、画像データCにおける圧縮機(10)のサイズに合わせてから、基準となる圧縮機(10)の位置座標を、画像データCにおける圧縮機(10)の位置座標に合わせる。これにより、ステップS31で取得した気泡(B)の座標位置P3が、第1データのどの座標範囲に属するかを容易に判定することができる。
図14では、ケーシング(11)の胴体(11a)と底部(11b)の接合部が漏洩箇所として特定される様子を例示している。
【0102】
尚、ステップS31で取得した気泡(B)の座標位置P3が、第1データのどの座標範囲に属にも属さない場合は、ステップS31で取得した気泡(B)は、漏れ気泡ではなく、持ち込み気泡(D)であると判定し直してもよい。また、持ち込み気泡(D)が、第1データの座標範囲(溶接箇所等)にたまたま付着している場合を想定して、同じ座標範囲から2回以上気泡が発生したら漏れ気泡であると判定し、1回だけであれば持ち込み気泡(D)と判定してもよい。さらに、以上のようにしても漏れ気泡か否かの判断ができない場合には、本実施形態の水中気密検査の後に例えば石鹸水検査により対象箇所を詳細に検査したり、水中気密検査をもう1度実施したりするなどの別途の対策を講じてもよい。
【0103】
ステップS33では、制御部(40)は、これまでの処理で得た情報を含む第1信号を端末装置(45)に出力する。第1信号は、圧縮機(10)が漏洩していることを示す情報を含む。加えて、第1信号は、圧縮機(10)から気泡(B)が発生していることを示す情報、気泡(B)の座標位置、圧縮機(10)の漏洩箇所を含んでいる。
【0104】
端末装置(45)に第1信号が入力されと、端末装置(45)は、画面の表示、光、音などによって、圧縮機(10)が漏洩していることや圧縮機(10)から気泡(B)が発生していることを作業者に報知する。加えて、端末装置(45)は、作業者の操作に伴い気泡(B)の座標位置や、圧縮機(10)の漏洩箇所を画面に表示する。これにより、作業者は、気泡(B)の発生箇所や圧縮機(10)の漏洩箇所を知ることができる。端末装置は、音声などにより気泡(B)の発生箇所や圧縮機(10)の漏洩箇所を作業者に知らせてもよい。
【0105】
<実施形態の特徴>
実施形態の検査システム(20)は、水中において圧縮機(10)を撮像するカメラ(30)と、カメラ(30)が撮像した圧縮機(10)の画像データに基づき、圧縮機(10)から発生する気泡(B)を特定する制御部(40)とを備える。制御部(40)は、画像データの気泡候補(C)が、圧縮機(10)を水中に入れる際に持ち込まれた持ち込み気泡(D)であるか否かの判定を行う判定部(40a)を備える。これにより、持ち込み気泡(D)に起因する漏れ気泡の誤判定を抑制できる。また、判定された持ち込み気泡(D)の位置を記憶することによって、その後に持ち込み気泡(D)が圧縮機(10)から離れて移動した場合にも、当該持ち込み気泡(D)が漏れ気泡として特定されることを回避できる。従って、圧縮機(10)の検査の精度を向上させることである。また、圧縮機(10)の漏れ気泡検知を自動化(機械化)することにより、省人化してコストを削減できると共に、検査場所に依存せず、グローバルに検査コストを一定にすることができる。また、圧縮機(10)の漏れ気泡検知を自動化(機械化)することにより、作業者による検出基準のばらつきを低減することが可能になるので、圧縮機(10)の品質を安定させることができると共に、検査場所に依存せず、グローバルに圧縮機(10)の品質も安定させることができる。また、圧縮機(10)の漏れ気泡の目視検査を無くすことができるため、単純作業を無くし、作業者への負担を軽減できる。さらに、持ち込み気泡(D)に起因する漏れ気泡の誤判定を防止できれば、従来の目視検査や検査システムで生じていたような誤検知を低減できるので、石鹸水検査等の後工程での確認作業等の無駄な工数を減らすことができる。また、気泡の有無の検知のみならず、漏れ箇所の検知まで行えるので、大きなコスト削減効果が見込まれる。
【0106】
実施形態の検査システム(20)において、判定部(40a)は、カメラ(30)が第1時刻及びその後の第2時刻にそれぞれ撮像した圧縮機(10)の第1画像データ及び第2画像データのそれぞれの気泡候補(C)の圧縮機(10)に対する相対位置のずれが所定範囲内であると、第1画像データ及び第2画像データのそれぞれの気泡候補(C)を持ち込み気泡(D)であると判定してもよい。これにより、画像データを用いて、気泡候補(C)が持ち込み気泡(D)であるかどうかを容易に判定することができる。
【0107】
実施形態の検査システム(20)において、判定部(40a)は、第2時刻よりも後の第3時刻にカメラ(30)が撮像した圧縮機(10)の第3画像データで持ち込み気泡(D)が移動したと判断された場合、当該持ち込み気泡(D)を気泡(B)の特定対象から外してもよい。これにより、持ち込み気泡(D)に起因する漏れ気泡の誤判定をより確実に抑制することができる。
【0108】
実施形態の検査システム(20)において、判定部(40a)は、持ち込み気泡(D)が移動した後に、さらに後の時刻にカメラ(30)が撮像した圧縮機(10)の画像データにおいて、前記相対位置のずれが前記所定範囲内である箇所から気泡候補(C)が新たに発生した場合、当該気泡候補(C)は漏れ気泡であると判定してもよい。これにより、持ち込み気泡(D)と区別して、気泡候補(C)が漏れ気泡であることを判定することができる。
【0109】
実施形態の検査システム(20)において、判定部(40a)は、第1時刻にカメラ(30)が撮像した第1画像データの気泡候補(C)が、さらに後の時刻にカメラ(30)が撮影した画像データにおいて、圧縮機(10)に対する相対位置のずれが所定範囲外となる場合、当該気泡候補(C)を持ち込み気泡(D)であると判定し、その後の時刻にカメラ(30)が撮影した画像データにおいて、前記相対位置のずれが前記所定範囲内である箇所から気泡候補(C)が新たに発生した場合、当該気泡候補(C)は漏れ気泡であると判定してもよい。これにより、持ち込み気泡(D)と区別して、気泡候補(C)が漏れ気泡であることを判定することができる。
【0110】
実施形態の検査システム(20)において、水中において圧縮機(10)を第1方向に移動させる搬送部(25)をさらに備え、カメラ(30)は、搬送部(25)によって搬送される圧縮機(10)を撮像してもよい。これにより、複数の圧縮機(10)を搬送部(25)により移動させることで、各圧縮機(10)から気泡が発生するか否かを連続的に判定できるので、検査効率を向上させることができる。
【0111】
実施形態の検査システム(20)において、制御部(40)は、圧縮機(10)の第1方向の移動に伴う該圧縮機(10)の位置の変化を示す第1指標をパラメータとして気泡(B)を特定してもよい。このように、圧縮機(10)の第1方向に伴う位置の変化を考慮して気泡(B)を特定してもよい。圧縮機(10)が第1方向に移動すると、圧縮機(10)の移動に伴い画像データ中の気泡候補(C)の座標位置が変化するからである。
【0112】
実施形態の検査システム(20)において、制御部(40)は、カメラ(30)が撮像した圧縮機(10)の2つの画像データのそれぞれの気泡候補(C)の位置のずれが所定範囲内であると、当該2つの画像データの気泡候補(C)を気泡(B)の特定対象から外す第1処理を行い、当該第1処理において、前記2つの画像データのうち後に撮像した画像データの気泡候補(C)の位置を第1指標に基づき補正してもよい。このように、制御部(40)が行う第1処理において、2つの画像データのそれぞれの気泡候補(C)の位置のずれが所定範囲内であると、当該2つの画像データの気泡候補(C)を気泡(B)の特定対象から外してもよい。気泡候補(C)の位置のずれが所定範囲内である場合、気泡候補(C)は、圧縮機(10)を水没させたときに付着した持ち込み気泡(D)や、配管における光の反射部などである可能性が高いからである。一方、気泡候補(C)が持ち込み気泡(D)等である場合、この気泡候補(C)は圧縮機(10)の第1方向の移動に伴い変化する。そこで、制御部(40)は、第1処理において、2つの画像データのうち後に撮像した画像データの気泡候補(C)の位置を第1指標に基づいて補正することにより、対象物(10)の移動を考慮して、持ち込み気泡(D)等を気泡(B)と特定してしまう誤判定を抑制できる。
【0113】
実施形態の検査システム(20)において、制御部(40)は、カメラ(30)が撮像した圧縮機(10)の2つの画像データのそれぞれの気泡候補(C)の輝度差が所定値より小さいことを示す条件が成立すると当該該2つの画像データの気泡候補(C)を気泡(B)の特定対象とする第2処理を行ってもよい。このように、制御部(40)は、2つの画像データ中の気泡候補(C)の輝度差が所定値より小さくなることを示す条件が成立すると、両者の気泡候補(C)が一致しているとみなし、これらの気泡候補(C)を気泡(B)の特定対象としてもよい。
【0114】
実施形態の検査システム(20)において、制御部(40)は、同じ気泡(B)が特定された複数の画像データのうち、最も低い位置にある気泡(B)の位置に基づき圧縮機(10)の漏洩箇所を特定してもよい。これは、同じ気泡(B)が特定された複数の画像データがある場合、最も低い位置にある気泡(B)の位置は、圧縮機(10)の漏洩箇所に最も近くなるからである。そこで、制御部(40)は、この気泡(B)の位置に基づき対象物(10)の漏洩箇所を特定する。
【0115】
実施形態の検査システム(20)において、制御部(40)は、気泡(B)の位置と圧縮機(10)の漏洩箇所とを予め関連付けた第1データと、最も低い位置にある気泡(B)の位置とに基づき、圧縮機(10)の漏洩箇所を特定してもよい。このように、気泡(B)の位置と圧縮機(10)の漏洩箇所とを関連付けた第1データをさらに用いることで、圧縮機(10)の漏洩箇所を分類できる。
【0116】
実施形態の検査システム(20)において、制御部(40)は、CNN又はテンプレートマッチングを用いて圧縮機(10)から発生する気泡(B)を特定してもよい。これにより、画像データの二値化処理をせずとも、気泡(B)の特定精度を向上させることができる。
【0117】
実施形態の検査システム(20)において、制御部(40)による気泡(B)の特定に応じて、圧縮機(10)から気泡(B)が発生していること、又は圧縮機(10)のいずれかが漏洩していることを報知する報知部(端末装置(45))を備えてもよい。これにより、検査者などは、圧縮機(10)から気泡が発生していることや、圧縮機(10)の漏洩を速やかに把握できる。加えて、端末装置(45)は、気泡(B)の漏洩箇所を検査者に知らせるため、検査者は速やかに対策を講じることができる。
【0118】
実施形態の検査方法は、水中において密閉式のケーシング(11)を有する圧縮機(10)をカメラ(30)によって撮像し、カメラ(30)が撮像した圧縮機(10)の画像データに基づき圧縮機(10)から発生する気泡(B)を制御部(40)によって特定し、画像データの気泡候補(C)が、圧縮機(10)を水中に入れる際に持ち込まれた持ち込み気泡(D)であるか否かを判定部(40a)によって判定する。これにより、持ち込み気泡(D)に起因する漏れ気泡の誤判定を抑制できる。また、判定された持ち込み気泡(D)の位置を記憶することによって、その後に持ち込み気泡(D)が圧縮機(10)から離れて移動した場合にも、当該持ち込み気泡(D)が漏れ気泡として特定されることを回避できる。従って、圧縮機(10)の検査の精度を向上させることである。
【0119】
(その他の実施形態)
以上に説明した実施形態(変形例を含む。以下、同じ)において、対象物は、圧縮機に限られず、気泡によって漏洩箇所を判定できるものであればよい。搬送部が対象物を移動させる第1方向は、必ずしも水平方向でなくてもよく、水平方向に対して傾いていてもよい。搬送部は、水中で搬送部を移動させるための水流を形成する手段であってもよい。搬送部は、設けなくてもよい。撮像部は、カメラでなくてもよく、光学センサであってもよい。撮像部は、最低1台あればよい。
【0120】
以上、実施形態及び変形例を説明したが、特許請求の範囲の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。また、以上の実施形態、変形例、その他の実施形態は、本開示の対象の機能を損なわない限り、適宜組み合わせたり、置換したりしてもよい。また、以上に述べた「第1」、「第2」、「第3」…という記載は、これらの記載が付与された語句を区別するために用いられており、その語句の数や順序までも限定するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0121】
以上に説明したように、本開示は、検査システム、及び検査方法について有用である。
【符号の説明】
【0122】
10 圧縮機(対象物)
11 ケーシング
20 検査システム
25 搬送部
30 カメラ(撮像部)
40 制御部
40a 判定部
45 端末装置(報知部)