(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135284
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】圧力開放弁
(51)【国際特許分類】
F16K 17/04 20060101AFI20240927BHJP
H01M 50/317 20210101ALI20240927BHJP
H01M 50/325 20210101ALI20240927BHJP
F16J 15/10 20060101ALI20240927BHJP
F16K 1/34 20060101ALI20240927BHJP
F16K 25/00 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
F16K17/04 F
H01M50/317 201
H01M50/325
F16J15/10 N
F16J15/10 U
F16K1/34 K
F16K25/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023045902
(22)【出願日】2023-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000135209
【氏名又は名称】株式会社ニフコ
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100158964
【弁理士】
【氏名又は名称】岡村 和郎
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 徳雄
【テーマコード(参考)】
3H052
3H059
3J040
5H012
【Fターム(参考)】
3H052BA02
3H052CA02
3H052CB03
3H052CB23
3H052CD03
3H052EA01
3H059AA11
3H059BB02
3H059BB04
3H059BB29
3H059CA05
3H059CA12
3H059CB23
3H059CC02
3H059CC06
3H059CD03
3H059CF14
3H059EE01
3H059FF11
3H059FF17
3J040AA12
3J040AA17
3J040BA03
3J040EA06
3J040EA22
3J040HA09
5H012BB04
5H012BB08
5H012GG05
5H012JJ10
(57)【要約】 (修正有)
【課題】捲れなどの変形を抑制できる圧力開放弁を提供する。
【解決手段】圧力開放弁10は、開口部に連通する排出孔25を含み、筐体の表面に固定されているケース20と、閉位置において排出孔を覆うカバー31を含み、排出孔を開放するよう第1方向において閉位置から移動可能な弁部材30と、ケースと弁部材との間に位置し、平面視において排出孔を囲うシール部材50と、を備える。シール部材は、本体部と、本体部よりも内側に位置し、第1方向において本体部から突出する内側シール53と、本体部よりも外側に位置し、第1方向において本体部から突出する外側リップ54と、を含む。弁部材が閉位置に位置する時の、シール部材が配置されている空間における、第1方向におけるケースと弁部材との距離を基準距離と称する。基準距離に対する、第1方向における外側リップの寸法の比率が、1.00以下である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体の内部の流体の内圧が上昇したときに筐体の開口部から流体を逃がす圧力開放弁であって、
前記開口部に連通する排出孔を含み、前記筐体の表面に固定されているケースと、
閉位置において前記排出孔を覆うカバーを含み、前記排出孔を開放するよう第1方向において前記閉位置から移動可能な弁部材と、
前記ケースと前記弁部材との間に位置し、平面視において前記排出孔を囲うシール部材と、を備え、
前記シール部材は、本体部と、前記本体部よりも内側に位置し、前記第1方向において前記本体部から突出する内側シールと、前記本体部よりも外側に位置し、前記第1方向において前記本体部から突出する外側シールと、を含み、
前記弁部材が前記閉位置に位置する時の、前記シール部材が配置されている空間における、前記第1方向における前記ケースと前記弁部材との距離を基準距離と称し、
前記基準距離に対する、前記第1方向における前記外側リップの寸法の比率が、1.00以下である、圧力開放弁。
【請求項2】
前記内側シールは、前記本体部から前記ケースに向かって突出し、前記閉位置において前記ケースに接触する下側シールと、前記本体部から前記弁部材に向かって突出し、前記閉位置において前記弁部材に接触する上側シールと、を含む、請求項1に記載の圧力開放弁。
【請求項3】
前記第1方向における前記外側リップの寸法が、前記第1方向における前記内側シールの寸法よりも小さい、請求項1に記載の圧力開放弁。
【請求項4】
前記外側リップは、前記本体部から前記ケースに向かって突出する下側リップを含み、
前記閉位置において前記下側リップと前記ケースとの間に隙間が形成されている、請求項2又は3に記載の圧力開放弁。
【請求項5】
前記閉位置において前記外側リップと前記弁部材との間に隙間が形成されている、請求項2又は3に記載の圧力開放弁。
【請求項6】
前記本体部に、前記第1方向において前記本体部を貫通する貫通孔が形成されている、請求項5に記載の圧力開放弁。
【請求項7】
筐体の内部の流体の内圧が上昇したときに筐体の開口部から流体を逃がす圧力開放弁であって、
前記開口部に連通する排出孔を含み、前記筐体の表面に固定されているケースと、
閉位置において前記排出孔を覆うカバーを含み、前記排出孔を開放するよう第1方向において前記閉位置から移動可能な弁部材と、
前記ケースと前記弁部材との間に位置し、平面視において前記排出孔を囲うシール部材と、を備え、
前記シール部材は、本体部と、前記本体部よりも内側に位置し、前記第1方向において前記本体部から突出する内側シールと、前記本体部よりも外側に位置し、前記第1方向において前記本体部から突出する外側シールと、を含み、
前記外側シールに、前記排出孔の径方向において前記外側シールを貫通する貫通孔が形成されている、圧力開放弁。
【請求項8】
前記内側シール及び前記外側シールは、前記閉位置において前記ケース及び前記弁部材に接触しており、
前記本体部に、前記第1方向において前記本体部を貫通する貫通孔が形成されている、請求項7に記載の圧力開放弁。
【請求項9】
筐体の内部の流体の内圧が上昇したときに筐体の開口部から流体を逃がす圧力開放弁であって、
閉位置において前記開口部を覆うカバーを含み、前記開口部を開放するよう第1方向において前記閉位置から移動可能な弁部材と、
前記筐体と前記弁部材との間に位置し、平面視において前記開口部を囲うシール部材と、を備え、
前記シール部材は、本体部と、前記本体部よりも内側に位置し、前記第1方向において前記本体部から突出する内側シールと、前記本体部よりも外側に位置し、前記第1方向において前記本体部から突出する外側シールと、を含み、
前記弁部材が前記閉位置に位置する時の、前記シール部材が配置されている空間における、前記第1方向における前記筐体と前記弁部材との距離を基準距離と称し、
前記基準距離に対する、前記第1方向における前記外側リップの寸法の比率が、1.00以下である、圧力開放弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筐体の内部の圧力を調整する圧力開放弁に関する。
【背景技術】
【0002】
圧力開放弁は、筐体の内部の圧力を調整するための装置である。筐体は、例えば、自動車に搭載されるバッテリーパックである。バッテリーパックの内部には、バッテリーセルなどのデバイスが収容され、密閉されている。圧力開放弁は、バッテリーパックなどの筐体に取り付けられている。例えば、圧力開放弁は、筐体に形成されている開口部を覆うように配置されている。圧力開放弁は、筐体の内部の圧力が閾値を超えると、筐体の内部の流体を外部に放出するよう動作する。圧力開放弁は、圧力の上昇に起因して筐体の内部のデバイスが損傷することを抑制できる。これにより、バッテリーパックの安全性が高められる。
【0003】
いくつかの圧力開放弁が提案されている。例えば特許文献1の圧力開放弁は、排出孔が形成されたケースと、排出孔から排出された気体を排出する通路を形成するカバーと、を備える。ケースには、排出孔を開閉可能な弁機構が設けられている。弁機構の弁部材とケースとの間には、排出孔を外部から密閉するための環状のシール部材が設けられている。シール部材は、弁部材が閉位置にあるときに、弁部材及びケースから押圧される。
【0004】
圧力開放弁のシール部材には、高圧洗浄の噴流のような、高いエネルギーを有する流体が衝突することがある。流体の衝突によってシール部材に捲れなどの変形が生じると、排出孔の密閉が阻害される。このような課題を解決するため、例えば特許文献2は、同一の断面形状を有する環状の内側シール及び環状の外側シールを備えるシール部材を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第7059226号公報
【特許文献2】特許第5093554号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
内側シール及び外側シールが同一の断面形状を有する場合、弁部材及びケースからの圧力が内側シール及び外側シールに分散する。1つのシールに加わる圧力が低くなるので、捲れなどの変形を十分に抑制できないと考えられる。
【0007】
本発明は、このような課題を解決できる圧力開放弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下の[1]~[9]に関する。
[1] 筐体の内部の流体の内圧が上昇したときに筐体の開口部から流体を逃がす圧力開放弁であって、
前記開口部に連通する排出孔を含み、前記筐体の表面に固定されているケースと、
閉位置において前記排出孔を覆うカバーを含み、前記排出孔を開放するよう第1方向において前記閉位置から移動可能な弁部材と、
前記ケースと前記弁部材との間に位置し、平面視において前記排出孔を囲うシール部材と、を備え、
前記シール部材は、本体部と、前記本体部よりも内側に位置し、前記第1方向において前記本体部から突出する内側シールと、前記本体部よりも外側に位置し、前記第1方向において前記本体部から突出する外側シールと、を含み、
前記弁部材が前記閉位置に位置する時の、前記シール部材が配置されている空間における、前記第1方向における前記ケースと前記弁部材との距離を基準距離と称し、
前記基準距離に対する、前記第1方向における前記外側リップの寸法の比率が、1.00以下である、圧力開放弁。
【0009】
[2] [1]に記載の圧力開放弁において、前記内側シールは、前記本体部から前記ケースに向かって突出し、前記閉位置において前記ケースに接触する下側シールと、前記本体部から前記弁部材に向かって突出し、前記閉位置において前記弁部材に接触する上側シールと、を含んでいてもよい。
【0010】
[3] [1]又は[2]に記載の圧力開放弁において、前記第1方向における前記外側リップの寸法が、前記第1方向における前記内側シールの寸法よりも小さくてもよい。
【0011】
[4] [1]~[3]のいずれか1つに記載の圧力開放弁において、前記外側リップは、前記本体部から前記ケースに向かって突出する下側リップを含んでいてもよく、前記閉位置において前記下側リップと前記ケースとの間に隙間が形成されていてもよい。
【0012】
[5] [1]~[3]のいずれか1つに記載の圧力開放弁において、前記閉位置において前記外側リップと前記弁部材との間に隙間が形成されていてもよい。
【0013】
[6] [5]に記載の圧力開放弁において、前記本体部に、前記第1方向において前記本体部を貫通する貫通孔が形成されていてもよい。
【0014】
[7] 筐体の内部の流体の内圧が上昇したときに筐体の開口部から流体を逃がす圧力開放弁であって、
前記開口部に連通する排出孔を含み、前記筐体の表面に固定されているケースと、
閉位置において前記排出孔を覆うカバーを含み、前記排出孔を開放するよう第1方向において前記閉位置から移動可能な弁部材と、
前記ケースと前記弁部材との間に位置し、平面視において前記排出孔を囲うシール部材と、を備え、
前記シール部材は、本体部と、前記本体部よりも内側に位置し、前記第1方向において前記本体部から突出する内側シールと、前記本体部よりも外側に位置し、前記第1方向において前記本体部から突出する外側シールと、を含み、
前記外側シールに、前記排出孔の径方向において前記外側シールを貫通する貫通孔が形成されている、圧力開放弁。
【0015】
[8] [7]に記載の圧力開放弁において、前記内側シール及び前記外側シールは、前記閉位置において前記ケース及び前記弁部材に接触していてもよく、前記本体部に、前記第1方向において前記本体部を貫通する貫通孔が形成されていてもよい。
【0016】
[9] 筐体の内部の流体の内圧が上昇したときに筐体の開口部から流体を逃がす圧力開放弁であって、
閉位置において前記開口部を覆うカバーを含み、前記開口部を開放するよう第1方向において前記閉位置から移動可能な弁部材と、
前記筐体と前記弁部材との間に位置し、平面視において前記開口部を囲うシール部材と、を備え、
前記シール部材は、本体部と、前記本体部よりも内側に位置し、前記第1方向において前記本体部から突出する内側シールと、前記本体部よりも外側に位置し、前記第1方向において前記本体部から突出する外側シールと、を含み、
前記弁部材が前記閉位置に位置する時の、前記シール部材が配置されている空間における、前記第1方向における前記筐体と前記弁部材との距離を基準距離と称し、
前記基準距離に対する、前記第1方向における前記外側リップの寸法の比率が、1.00以下である、圧力開放弁。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、シール部材に捲れなどの変形が生じることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図4】閉位置にあるシール部材の一例を示す断面図である。
【
図5】ケース及び弁部材から取り外された状態のシール部材の一例を示す断面図である。
【
図6】シール部材の作用の一例を示す断面図である。
【
図7】シール部材の作用の一例を示す断面図である。
【
図8】比較の形態におけるシール部材の作用の一例を示す断面図である。
【
図9】第1変形例において、閉位置にあるシール部材の一例を示す断面図である。
【
図10】第1変形例において、ケース及び弁部材から取り外された状態のシール部材の一例を示す断面図である。
【
図11】第2変形例において、閉位置にあるシール部材の一例を示す断面図である。
【
図12】第3変形例において、閉位置にあるシール部材の一例を示す断面図である。
【
図13】第4変形例において、閉位置にあるシール部材の一例を示す断面図である。
【
図14】第4変形例において、ケース及び弁部材から取り外された状態のシール部材の一例を示す断面図である。
【
図15】第5変形例において、閉位置にあるシール部材の一例を示す断面図である。
【
図16】第6変形例による圧力開放弁を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。本件明細書に添付する図面においては、理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。
【0020】
図1は、圧力開放弁10の一例を示す部分断面図である。圧力開放弁10は、図示しない筐体の表面に取り付けられる。筐体は、例えば、自動車に搭載されるバッテリーパックである。バッテリーパックの内部には、バッテリーセルなどのデバイスが収容され、密閉されている。筐体は、筐体を貫通する開口部を含む。圧力開放弁10は、開口部を覆うよう筐体の表面に取り付けられる。
【0021】
圧力開放弁10は、筐体の内部の圧力が閾値を超えると、筐体の内部のガスなどの流体を外部に放出するよう動作する。筐体の内部の圧力のことを、内圧とも称する。
【0022】
圧力開放弁10は、開口部に連通する排出孔25を含むケース20と、ケース20の排出孔25を覆う弁部材30と、弁部材30を付勢する弾性部材40と、を備える。圧力開放弁10は、シール部材50を更に備える。シール部材50は、ケース20と弁部材30との間に位置する。圧力開放弁10は、第2シール部材60を更に備えていてもよい。第2シール部材60は、ケース20と筐体の表面との間に位置する。
【0023】
(ケース)
ケース20は、筐体の表面に面する下面21と、第1方向D1において下面21の反対側に位置する上面22と、を含む。例えば、ケース20は、下面21及び上面22を含むプレートを含む。第1方向D1は、筐体の表面の法線方向である。圧力開放弁10の構成要素に対して用いられる「下」という言葉は、位置が相対的に筐体に近いことを意味する。反対に、「上」という言葉は、位置が相対的に筐体から遠いことを意味する。例えば、ケース20の下面21から筐体までの距離は、ケース20の上面22から筐体までの距離よりも小さい。
【0024】
上面22は、主面23を含む。主面23は、平面視において弁部材30に重ならない領域を含んでいてもよい。「平面視」とは、筐体の表面の法線方向に沿って対象物を見ることを意味する。上面22は、主面23に対して下側へ凹んでいる溝24を含んでもよい。上述のシール部材50は、溝24に配置されていてもよい。
【0025】
(弁部材)
弁部材30は、閉位置から開位置へ第1方向D1において移動可能に構成されている。弁部材30は、少なくともカバー31を含む。カバー31は、下面311及び上面312を含む。弁部材30が閉位置にあるとき、カバー31はケース20の排出孔25を覆う。カバー31が閉位置から開位置へ第1方向D1において移動すると、排出孔25が開放され、高圧のガスなどの流体が筐体の内部から外部へ排出される。
【0026】
弁部材30は、カバー31の下面311から下方へ延びる軸32を含んでいてもよい。軸32は、弾性部材40に挿入されていてもよい。
【0027】
(弾性部材)
弾性部材40は、弁部材30が閉位置にあるとき、第1方向D1において弁部材30をケース20及び筐体に向けて付勢する。弾性部材40は、第1方向D1における弁部材30の移動に応じて、第1方向D1において伸縮する。弾性部材40は、例えばスプリングである。第1方向D1において弁部材30が筐体の内圧から受ける力が、弁部材30が弾性部材40から受ける付勢力よりも大きくなると、弁部材30が閉位置から開位置へ向かって移動する。
【0028】
(シール部材)
シール部材50は、弁部材30が閉位置にあるときに、筐体の内部をより確実に密閉するための部材である。シール部材50は、塵、水などが外部から筐体の内部に入ることを抑制できる。シール部材50は、カバー31の下面311とケース20の上面22との間に位置する。
【0029】
図1に示すように、シール部材50は、内側シール53及び外側リップ54を含む。「外側」とは、平面視において排出孔25の中心から離れる方向を意味する。「内側」とは、平面視において排出孔25の中心に向かう方向を意味する。外側リップ54は、内側シール53よりも外側に位置している。
【0030】
図2は、シール部材50の一例を示す平面図である。
図2においては、シール部材50に対する排出孔25の位置関係を示すため、排出孔25が点線で描かれている。シール部材50は、平面視において排出孔25を囲んでいる。
【0031】
図3は、シール部材50の一例を示す部分断面図である。
図2及び
図3に示すように、シール部材50は、内側本体部51、外側本体部52、内側シール53、外側リップ54及び本体部55を含んでいてもよい。内側本体部51、外側本体部52、内側シール53、外側リップ54及び本体部55は、平面視において排出孔25を囲う環状の形状を有する。
【0032】
平面視においてシール部材50が排出孔25を囲う限りにおいて、シール部材50の形状は特には限られない。例えば、シール部材50は、平面視において、円形であってもよく、楕円形であってもよい。以下の説明において、平面視におけるシール部材50の中心から外側へ向かう方向を、径方向とも称する。
【0033】
図4は、閉位置にあるシール部材50の一例を示す断面図である。本体部55は、内側シール53と外側リップ54とを接続している。本体部55は、下面551及び上面552を含む。内側シール53は、本体部55よりも内側に位置し、第1方向D1において本体部55から突出している。例えば、内側シール53は、下面551から下方に突出する下側シール531と、上面552から上方に突出する上側シール532と、を含む。外側リップ54は、本体部55よりも外側に位置し、第1方向D1におい本体部55から突出している。例えば、外側リップ54は、下面551から下方に突出する下側リップ541と、上面552から上方に突出する上側リップ542と、を含む。
【0034】
内側本体部51は、内側シール53から内側に突出している。内側本体部51は、下面511及び上面512を含む。内側本体部51の下面511は、本体部55の下面551と同一平面上に位置していてもよい。内側本体部51の上面512は、本体部55の上面552と同一平面上に位置していてもよい。内側シール53は、第1方向D1において内側本体部51から突出している。
【0035】
外側本体部52は、外側リップ54から外側に突出している。外側本体部52は、下面521及び上面5222を含む。外側本体部52の下面521は、本体部55の下面551と同一平面上に位置していてもよい。外側本体部52の上面522は、本体部55の上面552と同一平面上に位置していてもよい。外側リップ54は、第1方向D1において外側本体部52から突出している。
【0036】
図4の符号S0は、弁部材30が閉位置に位置する時の、第1方向D1におけるケース20の上面22と弁部材30のカバー31の下面311との間の距離(基準距離とも称する)を表す。基準距離S0は、シール部材50の外側リップ54が配置されている空間において規定される。本実施の形態においては、シール部材50がケース20の溝24に配置されているので、基準距離S0は、溝24の底面とカバー31の下面311との間の距離である。
【0037】
図4の符号57は、第1方向D1において本体部55とケース20との間に位置し、平面視において内側シール53と外側リップ54との間に位置する空間(第1空間とも称する)を表す。
図4の符号58は、第1方向D1において本体部55と弁部材30との間に位置し、平面視において内側シール53と外側リップ54との間に位置する空間(第2空間とも称する)を表す。
【0038】
図4に示すように、内側シール53の下側シール531は、ケース20の溝24に接触している。また、内側シール53の上側シール532は、カバー31の下面311に接触している。上述のように、弁部材30は、ケース20に向かう付勢力を弾性部材40から受けている。このため、弁部材30は、シール部材50をケース20に向けて押圧している。この結果、シール部材50は、第1方向D1において弾性的に圧縮されている。基準距離S0は、弁部材30がシール部材50をケース20に向けて押圧する力と、シール部材50に生じる弾性的な復元力とが釣り合うように定まる。
【0039】
シール部材50が接触する2つの面のうち、カバー31の下面311のような、筐体に対して移動可能な面を、移動面とも称し、符号72で表す。シール部材50が接触する2つの面のうち、ケース20の溝24の底面のような、筐体に対して静止している面を、静止面とも称し、符号71で表す。
【0040】
図4に示すように、外側リップ54の上側リップ542は、カバー31の下面311に接触していてもよい。この場合、第2空間58は密閉されている。一方、外側リップ54の下側リップ541は、ケース20の溝24の底面に接触していなくてもよい。例えば、下側リップ541とケース20の溝24の底面との間に隙間543が形成されていてもよい。この場合、第1空間57は、隙間543を介して外部の空間に連通している。
【0041】
図5は、ケース20及び弁部材30から取り外された状態のシール部材50の一例を示す断面図である。シール部材50の内側シール53は、第1方向D1において寸法(第1縦寸法とも称する)S1を有する。シール部材50の外側リップ54は、第1方向D1において寸法(第2縦寸法とも称する)S2を有する。第2縦寸法S2は、第1縦寸法S1よりも小さくてもよい。第1縦寸法S1に対する第2縦寸法S2の比率であるS2/S1は、例えば0.98以下であり、0.95以下であってもよく、0.90以下であってもよい。
【0042】
外側リップ54の第2縦寸法S2は、基準距離S0以下であってもよい。これにより、第1空間57及び第2空間58が強固に密閉されることを抑制できる。基準距離S0に対する第2縦寸法S2の比率であるS2/S0は、例えば1.00以下であり、0.95以下であってもよく、0.90以下であってもよい。
【0043】
内側シール53の第1縦寸法S1は、基準距離S0よりも大きい。基準距離S0に対する第1縦寸法S1の比率であるS1/S0は、例えば1.02以上であり、1.05以上であってもよく、1.10以上であってもよい。
【0044】
次に、弁部材30が閉位置にあるときのシール部材50の作用を、
図6及び
図7を参照して説明する。
【0045】
弁部材30が閉位置にあるとき、
図6に示すように、流体Fが外側から弁部材30に衝突することがある。流体Fは、例えば高圧洗浄の噴流である。流体Fは、特に外側リップ54の下側リップ541に衝突しやすい。流体Fが下側リップ541に衝突すると、下側リップ541が内側に傾く。下側リップ541が内側に傾くと、第1空間57が狭くなる。
【0046】
本実施の形態においては、下側リップ541とケース20との間に隙間543が形成されている。第1空間57が隙間543を介して外部の空間に連通しているので、第1空間57が狭くなった場合であっても、第1空間57の圧力が上昇することを抑制できる。このため、内側シール53の下側シール531が内側に押されることを抑制できる。これにより、捲れ等の変形が内側シール53に生じることを抑制できる。
【0047】
また、本実施の形態においては、外側リップ54の第2縦寸法S2が、基準距離S0以下である。このため、弁部材30から外側リップ54に加わる押圧力を、弁部材30から内側シール53に加わる押圧力に比べて小さくできる。これにより、弁部材30から内側シール53に加わる押圧力を十分に大きく確保できる。従って、流体Fが外側から内側シール53に衝突したとしても、捲れ等の変形が内側シール53に生じることを抑制できる。
【0048】
噴流が強くなるにつれて、下側リップ541の傾きが大きくなる。下側リップ541の傾きが大きくなると、
図7に示すように、傾いた状態の下側リップ541がケース20に接触する。これにより、下側リップ541が更に内側に傾くことが抑制される。
図7の状態において、外側リップ54は、ケース20及び弁部材30に軽く触れているだけである。
図7の状態においても、弁部材30から外側リップ54に加わる押圧力は、弁部材30から内側シール53に加わる押圧力に比べて小さい。
【0049】
図8は、比較の形態におけるシール部材50の作用の一例を示す断面図である。比較の形態において、外側リップ54は、内側シール53と同一の断面形状を有する。この場合、弁部材30から外側リップ54に加わる押圧力が、弁部材30から内側シール53に加わる押圧力と同一である。すなわち、比較の形態においては、弁部材30からシール部材50に加わる押圧力が、内側シール53及び外側リップ54に均等に分配される。このため、比較の形態において弁部材30から内側シール53に加わる押圧力は、本実施の形態において弁部材30から内側シール53に加わる押圧力よりも小さい。従って、捲れ等の変形が内側シール53に生じやすい。
【0050】
これに対して、本実施の形態においては、弁部材30からシール部材50に加わる押圧力が、内側シール53に優先的に分配される。このため、捲れ等の変形が内側シール53に生じることを抑制できる。従って、バッテリーパックなどの筐体の安全性を高めることができる。
【0051】
なお、上述した実施の形態に対して様々な変更を加えることが可能である。以下、必要に応じて図面を参照しながら、変形例について説明する。以下の説明および以下の説明で用いる図面では、上述した実施の形態と同様に構成され得る部分について、上述の実施の形態における対応する部分に対して用いた符号と同一の符号を用いることとし、重複する説明を省略する。また、上述した実施の形態において得られる作用効果が変形例においても得られることが明らかである場合、その説明を省略することもある。
【0052】
(第1変形例)
図9は、第1変形例において、閉位置にあるシール部材の一例を示す断面図である。
図9に示すように、外側リップ54が配置される空間におけるケース20と弁部材30との間の距離は、内側シール53が配置される空間におけるケース20と弁部材30との間の距離よりも大きくてもよい。例えば、平面視において内側シール53と外側リップ54との間に位置するケース20又は弁部材30の面に、段差が形成されていてもよい。
図9に示す例においては、平面視において内側シール53と外側リップ54との間に位置するケース20の溝24の底面に段差241が形成されている。
【0053】
図10は、
図9に示すケース20及び弁部材30から取り外された状態のシール部材50の一例を示す断面図である。外側リップ54は、内側シール53と同一の断面形状を有していてもよい。例えば、第2縦寸法S2は、第1縦寸法S1と同一であってもよい。この場合であっても、本変形例によれば、外側リップ54の第2縦寸法S2を、基準距離S0以下にできる。このため、例えば、下側リップ541とケース20との間に隙間543を形成できる。従って、上述の実施の形態の場合と同様に、捲れ等の変形が内側シール53に生じることを抑制できる。
【0054】
(第2変形例)
図11は、第2変形例において、閉位置にあるシール部材50の一例を示す断面図である。本変形例においても、上述の実施の形態の場合と同様に、外側リップ54の第2縦寸法S2は、基準距離S0以下である。このため、外側リップ54とケース20又は弁部材30との間に隙間が形成される。
図11に示すように、隙間543は、外側リップ54の上側リップ542とカバー31の下面311との間に形成されていてもよい。これにより、弁部材30から外側リップ54に加わる押圧力を、弁部材30から内側シール53に加わる押圧力に比べて小さくできる。このため、弁部材30から内側シール53に加わる押圧力を十分に大きく確保できる。また、第2空間58が外部の空間に連通しているので、第2空間58の圧力が上昇することを抑制できる。従って、捲れ等の変形が内側シール53に生じることを抑制できる。
【0055】
図11に示すように、第1方向D1において本体部55を貫通する貫通孔553が形成されていてもよい。これにより、第1空間57が第2空間58を介して外部の空間に連通できる。このため、第1空間57が狭くなった場合であっても、第1空間57の圧力が上昇することを抑制できる。これにより、内側シール53の下側シール531が内側に押されることを抑制できる。従って、捲れ等の変形が内側シール53に生じることを抑制できる。また、弁部材30を押し上げる力の発生を防止できる。
【0056】
貫通孔553の数、配置などは特には限られない。例えば、シール部材50は、シール部材50の周方向に並ぶ複数の貫通孔553を含んでいてもよい。
【0057】
(第3変形例)
図12は、第3変形例において、閉位置にあるシール部材50の一例を示す断面図である。
図12に示すように、外側リップ54は、下側リップ541を含むが、上側リップ542を含まなくてもよい。これにより、第2変形例の場合と同様に、第2空間58の圧力が上昇することを抑制できる。従って、捲れ等の変形が内側シール53に生じることを抑制できる。図示はしないが、本変形例においても、第1方向D1において本体部55を貫通する貫通孔553が形成されていてもよい。
【0058】
(第4変形例)
図13は、第4変形例において、閉位置にあるシール部材50の一例を示す断面図である。
図13に示すように、外側リップ54の下側リップ541がケース20に接触し、上側リップ542が弁部材30に接触していてもよい。
【0059】
図14は、
図13に示すケース20及び弁部材30から取り外された状態のシール部材50の一例を示す断面図である。本変形例においても、上述の実施の形態の場合と同様に、外側リップ54の第2縦寸法S2は、基準距離S0以下である。また、第2縦寸法S2は、第1縦寸法S1よりも小さい。このため、
図13の状態において、外側リップ54は、ケース20及び弁部材30に軽く触れているだけである。
図13の状態においても、弁部材30から外側リップ54に加わる押圧力は、弁部材30から内側シール53に加わる押圧力に比べて小さい。このため、弁部材30から内側シール53に加わる押圧力を十分に大きく確保できる。従って、捲れ等の変形が内側シール53に生じることを抑制できる。
【0060】
(第5変形例)
図15は、第5変形例において、閉位置にあるシール部材50の一例を示す断面図である。
図15に示すように、外側シール54に、排出孔25の径方向において外側リップ54を貫通する貫通孔544が形成されていてもよい。
図15に示す例においては、外側リップ54の下側リップ541に貫通孔544が形成されている。このため、第1空間57が貫通孔544を介して外部の空間に連通できる。これにより、第1空間57が狭くなった場合であっても、第1空間57の圧力が上昇することを抑制できる。このため、内側シール53の下側シール531が内側に押されることを抑制できる。これにより、捲れ等の変形が内側シール53に生じることを抑制できる。
【0061】
貫通孔544の数、配置などは特には限られない。例えば、シール部材50は、シール部材50の周方向に並ぶ複数の貫通孔544を含んでいてもよい。
【0062】
本変形例においては、基準距離S0に対する第2縦寸法S2の比率であるS2/S0は、1.00以下であってもよく、1.00を超えていてもよい。好ましくは、外側リップ54の第2縦寸法S2は、内側シール53の第1縦寸法S1よりも小さい。
【0063】
(第6変形例)
上述の実施の形態及び変形例においては、シール部材50がケース20と弁部材30との間に位置する例を説明した。本変形例においては、シール部材50が筐体と弁部材30との間に位置する例を説明する。
【0064】
図16は、本変形例による圧力開放弁10を示す部分断面図である。圧力開放弁10は、筐体80の表面82に取り付けられている。筐体80は、筐体80を貫通する開口部85を含む。筐体80の表面82は、主面83に対して下側へ凹んでいる溝84を含んでもよい。
【0065】
弁部材30は、閉位置から開位置へ第1方向D1において移動可能に構成されている。弁部材30が閉位置にあるとき、弁部材30のカバー31は筐体80の開口部85を覆う。カバー31は、閉位置において筐体80の表面82の主面83に面している。カバー31が閉位置から開位置へ第1方向D1において移動すると、開口部85が開放され、高圧のガスなどの流体が筐体80の内部から外部へ排出される。
【0066】
シール部材50は、筐体80と弁部材30との間に位置する。シール部材50は、筐体80の溝84に配置されていてもよい。シール部材50は、上述の実施の形態の場合と同様に、内側シール53、外側リップ54及び本体部55を少なくとも含む。弁部材30が閉位置に位置する時、内側シール53の下側シールは、筐体80の表面82に接触し、内側シール53の上側シールは、カバー31の下面311に接触している。本変形例においては、筐体80の表面82が静止面71である。本変形例においては、第1方向D1において本体部55と筐体80との間に位置し、平面視において内側シール53と外側リップ54との間に位置する空間が、第1空間である。本変形例においては、弁部材30が閉位置に位置する時の、第1方向D1における筐体80の表面82と弁部材30のカバー31の下面311との間の距離が、上述の基準距離S0である。
【0067】
外側リップ54の構成は、上述の実施の形態における外側リップ54の構成と同一であってもよい。例えば、弁部材30が閉位置に位置する時、外側リップ54の下側リップと筐体80の溝84の底面との間に隙間が形成されていてもよい。第1空間が隙間を介して外部の空間に連通しているので、第1空間が狭くなった場合であっても、第1空間の圧力が上昇することを抑制できる。このため、内側シール53の下側シールが内側に押されることを抑制できる。これにより、捲れ等の変形が内側シール53に生じることを抑制できる。
【0068】
外側リップ54の構成は、上述のいずれかの変形例における外側リップ54の構成と同一であってもよい。
【0069】
(その他の変形例)
複数の変形例が上述の実施の形態に組み合わされてもよい。
【符号の説明】
【0070】
10 圧力開放弁
20 ケース
21 下面
22 上面
24 溝
25 排出孔
30 弁部材
31 カバー
311 下面
312 上面
40 弾性部材
50 シール部材
53 内側シール
531 下側シール
532 上側シール
54 外側リップ
541 下側リップ
542 上側リップ
543 隙間
544 貫通孔
55 本体部
551 下面
552 上面
553 貫通孔
60 第2シール部材
80 筐体
82 表面
84 溝
85 開口部