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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024013529
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】開閉機構及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 21/16 20060101AFI20240125BHJP
   G03G 15/00 20060101ALI20240125BHJP
   B41J 29/13 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
G03G21/16 133
G03G15/00 550
B41J29/13
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022115687
(22)【出願日】2022-07-20
(71)【出願人】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096426
【弁理士】
【氏名又は名称】川合 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100116207
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 俊明
(72)【発明者】
【氏名】大▲崎▼ 功二
【テーマコード(参考)】
2C061
2H171
【Fターム(参考)】
2C061AP01
2C061AQ06
2C061AS02
2C061BB08
2C061CD07
2C061CD14
2H171FA02
2H171FA03
2H171GA06
2H171HA23
2H171LA09
2H171LA14
2H171QA02
2H171QB32
2H171QC03
2H171SA10
2H171SA12
2H171SA22
2H171SA26
(57)【要約】
【課題】カバー側ギヤの歯先と装置側ギヤの歯先とが干渉することがなく、開閉部材を円滑に開閉することができるできるようにする。
【解決手段】開口を開閉するためのカバー部材と、カバー部材に取り付けられたギヤフレーム45に配設されたカバー側ギヤと、装置フレームに対して回転自在に配設され、前記カバー側ギヤと噛合させられる装置側ギヤと、ギヤフレーム45に対して移動自在に配設された移動ギヤとを有する。移動ギヤの歯は、歯たけがカバー側ギヤの歯の歯たけより短くされ、歯先が装置側ギヤの歯の歯先に当接したときに、前記カバー側ギヤのピッチ円より内側に退避させられる。カバー部材が閉じられる際に、装置側ギヤの歯の歯先は、移動ギヤの歯の歯先と干渉することなく、カバー側ギヤの最終歯の中腹に当たる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)装置フレームに対して揺動自在に支持され、所定のユニットを脱着するための開口を開閉するためのカバー部材と、
(b)該カバー部材に取り付けられ、カバー部材の開閉に伴って揺動させられるギヤフレームに配設されたカバー側ギヤと、
(c)前記装置フレームに対して回転自在に配設され、前記カバー側ギヤと噛合させられ、カバー部材の動作を制動する装置側ギヤと、
(d)前記ギヤフレームに対して移動自在に配設された移動ギヤとを有するとともに、
(e)該移動ギヤの歯は、歯たけが前記カバー側ギヤの歯の歯たけより短くされ、歯先が装置側ギヤの歯の歯先に当接したときに、前記カバー側ギヤのピッチ円より内側に退避させられることを特徴とする開閉機構。
【請求項2】
前記カバー側ギヤの回転中心が前記カバー部材の揺動支点と一致させられる請求項1に記載の開閉機構。
【請求項3】
(a)前記装置側ギヤに隣接させてダンパが配設され、
(b)該ダンパは、前記装置側ギヤの回転及び前記カバー部材の動作を制動する請求項1に記載の開閉機構。
【請求項4】
前記移動ギヤは、前記ギヤフレームに対して揺動自在に配設され、ギヤフレームに対して回動して退避させられる請求項1に記載の開閉機構。
【請求項5】
(a)前記カバー側ギヤは、前記ギヤフレームの外周縁に沿って形成された複数の歯を備え、
(b)前記移動ギヤは、前記ギヤフレームに形成された複数の歯のうちの、前記ギヤフレームの先端側の最終歯に隣接させて形成される請求項4に記載の開閉機構。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の開閉機構を備えた画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開閉機構及び画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、プリンタ、複写機、ファクシミリ装置、複合機等の画像形成装置、例えば、電子写真式のプリンタにおいては、プリンタの本体、すなわち、装置本体内に、画像形成ユニット、転写装置、定着器等のユニットが配設され、前記画像形成ユニットにおいて、帯電ローラによって一様に帯電させられた感光体ドラムの表面が露光されて静電潜像が形成され、該静電潜像が現像ローラによって現像されてトナー像が形成される。該トナー像が、転写装置によって用紙に転写され、定着器において用紙に定着させられることによって、画像が形成され、印刷が行われる。
【0003】
ところで、例えば、装置本体内を搬送される用紙の紙詰まりが発生したときに用紙を除去したり、ユニット、例えば、定着器を交換したりするために、プリンタの開閉部材としてのトップカバーを開くことによって、定着器を装置本体に対して脱着することができるようにしたプリンタが提供されている。
【0004】
該プリンタにおいては、トップカバーが開閉機構によってプリンタの筐体に対して揺動自在に支持され、トップカバーが開いた状態から自重で急速に閉じるのが阻止されるようになっている。そのために、この種のプリンタにおいては、前記開閉機構において、トップカバーの揺動支点を中心にして回動自在に配設されたカバー側ギヤとしての円弧ギヤと、装置側ギヤとしてのダンパギヤとが噛合させられ、トップカバーの閉動作が制動される(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006-83551号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記従来のプリンタの開閉機構においては、定着器を装置本体に対して脱着するための開口の開口面積を大きくするために、トップカバーの揺動支点を装置本体内において可能な限り後方に配置する必要があるだけでなく、円弧ギヤを可能な限りトップカバーの揺動支点に近接させる必要があるので、トップカバーが開かれる際に円弧ギヤとダンパギヤとの噛合が外れてしまうことがある。
【0007】
その場合、トップカバーが閉じられる際に、円弧ギヤとダンパギヤとが再び噛合するのに伴って円弧ギヤの歯先とダンパギヤの歯先とが干渉すると、歯飛びが生じ、異音が発生することがあり、トップカバーを円滑に開閉することができない。
【0008】
本発明は、前記従来の開閉機構の問題点を解決して、カバー側ギヤの歯先と装置側ギヤの歯先とが干渉することがなく、開閉部材を円滑に開閉することができる開閉機構及び画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そのために、本発明の開閉機構においては、装置フレームに対して揺動自在に支持され、所定のユニットを脱着するための開口を開閉するためのカバー部材と、該カバー部材に取り付けられ、カバー部材の開閉に伴って揺動させられるギヤフレームに配設されたカバー側ギヤと、前記装置フレームに対して回転自在に配設され、前記カバー側ギヤと噛合させられ、カバー部材の動作を制動する装置側ギヤと、前記ギヤフレームに対して移動自在に配設された移動ギヤとを有する。
【0010】
そして、該移動ギヤの歯は、歯たけが前記カバー側ギヤの歯の歯たけより短くされ、歯先が装置側ギヤの歯の歯先に当接したときに、前記カバー側ギヤのピッチ円より内側に退避させられる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、開閉機構においては、装置フレームに対して揺動自在に支持され、所定のユニットを脱着するための開口を開閉するためのカバー部材と、該カバー部材に取り付けられ、カバー部材の開閉に伴って揺動させられるギヤフレームに配設されたカバー側ギヤと、前記装置フレームに対して回転自在に配設され、前記カバー側ギヤと噛合させられ、カバー部材の動作を制動する装置側ギヤと、前記ギヤフレームに対して移動自在に配設された移動ギヤとを有する。
【0012】
そして、該移動ギヤの歯は、歯たけが前記カバー側ギヤの歯の歯たけより短くされ、歯先が装置側ギヤの歯の歯先に当接したときに、前記カバー側ギヤのピッチ円より内側に退避させられる。
【0013】
この場合、移動ギヤの歯は、歯たけが前記カバー側ギヤの歯の歯たけより短くされ、歯先が装置側ギヤの歯の歯先に当接したときに、カバー側ギヤのピッチ円より内側に退避させられるので、カバー部材が閉じられる際に、装置側ギヤの歯の歯先は、移動ギヤの歯の歯先と干渉することなく、カバー側ギヤの最終歯の中腹に当たる。
【0014】
したがって、カバー側ギヤと装置側ギヤとが通常の噛合位置で再び回転し始めるので、歯飛びが生じることがなく、異音が発生することがなくなり、カバー部材を円滑に開閉することができる。
【0015】
さらに、カバー部材が開かれる際に、カバー部材が開く速度が変化して、移動ギヤと装置側ギヤとの噛合が終了したときに装置側ギヤが停止させられる位置にばらつきが生じても、カバー部材が閉じられる際に、カバー側ギヤと装置側ギヤとが通常の噛合位置で再び回転し始めるので、歯飛びが生じることがなく、異音が発生することがなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施の形態における開閉機構の概略図である。
図2】本発明の実施の形態におけるプリンタの概念図である。
図3】本発明の実施の形態における画像形成ユニット及び定着器の配設状態を示す図である。
図4】本発明の実施の形態におけるギヤフレームの要部斜視図である。
図5】本発明の実施の形態におけるギヤフレームの要部断面図である。
図6】本発明の実施の形態におけるトップカバーが開かれるときの開閉機構の状態を説明するための第1の図である。
図7】本発明の実施の形態におけるトップカバーが開かれるときの開閉機構の状態を説明するための第2の図である。
図8】本発明の実施の形態におけるトップカバーが開かれるときの円弧ギヤとダンパギヤとの噛合の状態を説明するための参考図である。
図9】本発明の実施の形態におけるトップカバーが閉じられるときの開閉機構の状態を説明するための第1の図である。
図10】本発明の実施の形態におけるトップカバーが閉じられるときの開閉機構の状態を説明するための第2の図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。この場合、画像形成装置としてのプリンタについて説明する。
【0018】
図2は本発明の実施の形態におけるプリンタの概念図、図3は本発明の実施の形態における画像形成ユニット及び定着器の配設状態を示す図である。なお、図において、X軸正方向はプリンタ10における後方向であり、X軸負方向はプリンタ10における前方向であり、Y軸正方向はプリンタ10における左方向であり、Y軸負方向はプリンタ10における右方向であり、Z軸正方向はプリンタ10における上方向であり、Z軸負方向はプリンタ10における下方向である。
【0019】
図において、10はプリンタ、Csは該プリンタ10の外装体としての筐体である。該筐体Csは、前壁Wf、背壁Wr、頂壁Wt、底壁Wb、前壁Wf側からプリンタ10を見たときの左側に配設された図示されない左側壁、及び前壁Wf側からプリンタ10を見たときの右側に配設された図示されない右側壁を備える。
【0020】
また、Bdは前記プリンタ10の本体、すなわち、装置本体であり、該装置本体Bdの下部に第1の媒体収容部としての用紙カセット11が筐体Csに対して着脱自在に配設され、前記用紙カセット11内に、媒体としての用紙(記録媒体、転写材等ともいう。)Pが給紙トレイTr上に積層させて収容される。そして、前記用紙カセット11の前端に隣接させて第1の給紙機構Ms1が配設され、該第1の給紙機構Ms1は、回転自在に配設され、回転に伴って給紙トレイTr上に積層された用紙Pのうちの最も上の用紙Pを繰り出す繰出部材としての給紙サブローラ(ピックアップローラ)12、該給紙サブローラ12によって繰り出された用紙Pを第1の媒体搬送路としての、かつ、用紙Pの一方の面に画像を形成する片面印刷用の媒体搬送路としての用紙搬送路Rt1に送る給紙ローラ(フィードローラ)13、及び該給紙ローラ13に当接させて配設され、用紙Pを1枚ずつ分離させるための分離部材としての分離ローラ(リタードローラ)14を備える。第1の給紙機構Ms1によって給紙された用紙Pは、用紙搬送路Rt1において、中間搬送ローラr1とピンチローラp1とを対向させて形成された第1の搬送部材としての搬送ローラ対m1に送られた後、レジストローラr2とプレッシャローラp2とを対向させて形成された第2の搬送部材としての搬送ローラ対m2によって斜行が矯正され、画像形成部Q1に送られる。
【0021】
前記前壁Wfには、第2の媒体収容部としての図示されない手差トレイが配設され、該手差トレイに、例えば、用紙カセット11に収容することができない用紙サイズの用紙Pが載置される。また、前記手差トレイの前端に隣接させて第2の給紙機構Ms2が配設され、該第2の給紙機構Ms2によって給紙された用紙Pは、前記搬送ローラ対m2によって斜行が矯正された後、画像形成部Q1に送られる。
【0022】
該画像形成部Q1は、画像形成ユニット(IDユニット)30、露光装置としてのLEDヘッド32、用紙搬送路Rt1を介して、画像形成ユニット30に配設された像担持体としての感光体ドラム(イメージドラム)33と対向させて配設された転写部材としての転写ローラ34等を備える。
【0023】
前記感光体ドラム33の表面(表層部分)が、図示されない帯電ローラによって一様に帯電させられた後、前記LEDヘッド32によって画像データに基づいて露光されると、感光体ドラム33の表面に潜像としての静電潜像が形成される。続いて、該静電潜像に図示されない現像ローラによって現像剤としてのトナーが付着させられて静電潜像が現像されると、感光体ドラム33の表面に現像剤像としての所定の色、例えば、ブラックのトナー像が形成される。
【0024】
前記用紙カセット11から用紙搬送路Rt1を搬送され、画像形成部Q1に供給された用紙Pが感光体ドラム33と転写ローラ34との間の転写部を通過する際に、用紙Pに、感光体ドラム33と転写ローラ34との間に形成される電界によって、感光体ドラム33上に形成されたトナー像が静電的に転写させられる。なお、前記転写ローラ34は、例えば、発泡性の半導電性弾性ゴム材によって形成される。
【0025】
前記用紙搬送路Rt1における画像形成部Q1より下流側に定着装置としての定着器(定着ユニット)36が配設される。該定着器36は、第1の定着部材としての定着ローラ37、及び第2の定着部材としてのバックアップローラ38を備える。定着器36に供給された用紙Pが定着ローラ37とバックアップローラ38との間の定着部を通過する際に、用紙P上のトナー像が、定着ローラ37内に配設された加熱体としての図示されないヒータによって加熱され、溶融させられ、バックアップローラ38によって加圧されて用紙Pに定着させられる。このようにして画像が形成された用紙Pは、排出ローラr3とピンチローラp3とを対向させて形成された第3の搬送部材としての排出ローラ対m3によって定着器36から排出され、用紙搬送路Rt1を更に搬送され、排出ローラr4とピンチローラp4とを対向させて形成された第4の搬送部材としての排出ローラ対m4によって装置本体Bd外に排出され、頂壁Wtに形成されたスタッカsk1に排出される。
【0026】
ところで、本実施の形態の前記プリンタ10においては、用紙Pの両面に画像を形成し、両面印刷を行うことができるようになっている。
【0027】
そのために、用紙搬送路Rt1における排出ローラ対m3より下流側で、かつ、排出ローラ対m3に隣接する箇所から下流側に向けて分岐させて、第2の媒体搬送路としての、かつ、用紙Pを退避させるための退避用の媒体搬送路としての用紙搬送路Rt2が形成される。
【0028】
該用紙搬送路Rt2には、第5の搬送部材としての退避ローラ対m5が配設されるとともに、該退避ローラ対m5より下流側に第6の搬送部材としての退避ローラ対m6が配設される。
【0029】
また、用紙搬送路Rt2の所定の箇所から上流側に向けて分岐させて、退避させられた用紙Pを用紙搬送路Rt1に戻すための第3の媒体搬送路としての、かつ、反転用の媒体搬送路としての用紙搬送路Rt3が形成される。
【0030】
該用紙搬送路Rt3には、第7の搬送部材としての搬送ローラ対m7が配設されるほかに、該搬送ローラ対m7より下流側に第8の搬送部材としての搬送ローラ対m8が配設され、該搬送ローラ対m8より下流側に第9の搬送部材としての搬送ローラ対m9が配設される。
【0031】
次に、前記プリンタ10の動作について説明する。
【0032】
用紙Pの一方の面に画像を形成する前記片面印刷を行う場合、前記用紙カセット11に収容された用紙Pは、第1の給紙機構Ms1によって用紙搬送路Rt1に給紙され、前記搬送ローラ対m1によって用紙搬送路Rt1を搬送され、搬送ローラ対m2によって斜行が矯正され、画像形成部Q1に送られる。
【0033】
そして、用紙Pは、画像形成部Q1において感光体ドラム33と転写ローラ34との間の転写部を通過する際に感光体ドラム33上のトナー像が転写され、前記定着器36においてトナー像が定着させられて、一方の面に画像が形成される。
【0034】
続いて、用紙Pは、用紙搬送路Rt1を排出ローラ対m3によって搬送され、排出ローラ対m4によって装置本体Bd外に排出されてスタッカsk1に積載される。
【0035】
一方、用紙Pの両面に画像を形成する両面印刷を行う場合、用紙カセット11から給紙された用紙Pは、搬送ローラ対m1によって用紙搬送路Rt1を搬送され、搬送ローラ対m2によって斜行が矯正され、画像形成部Q1に送られる。
【0036】
そして、用紙Pは、前記画像形成部Q1においてトナー像が転写され、前記定着器36においてトナー像が定着させられて、一方の面に画像が形成される。
【0037】
続いて、用紙Pは、用紙搬送路Rt2に送られて搬送された後、退避ローラ対m5、m6によって更に搬送され、退避位置で停止させられた後、反転(スイッチバック)させられ、用紙搬送路Rt3に送られる。反転させられた用紙Pは、用紙搬送路Rt3を搬送ローラ対m7~m9によって搬送され、用紙搬送路Rt1に戻される。
【0038】
そして、用紙Pは、再び用紙搬送路Rt1を搬送され、画像形成部Q1においてトナー像が転写され、定着器36においてトナー像が定着させられて、他方の面に画像が形成される。このようにして、両面に画像が形成された用紙Pは、用紙搬送路Rt1を搬送され、装置本体Bdから排出されてスタッカsk1に積載される。
【0039】
ところで、本実施の形態においては、例えば、装置本体Bd内を搬送される用紙Pの紙詰まりが発生したときに、操作者が、用紙Pを除去したり、画像形成ユニット30、定着器36等のユニットを交換したりすることができるように、前壁Wfにおける用紙カセット11より上方から頂壁Wtにおける前端部にかけて、第1のカバー部材としてのフロントカバーFCが配設され、頂壁Wtにおけるスタッカsk1から後方にかけて、第2のカバー部材としてのトップカバーTCが、前記左側壁及び右側壁に対して揺動自在に、かつ、開閉自在に配設される。そのために、左側壁及び右側壁の前端における用紙カセット11の直上にフロントカバーFCの揺動支点pfが形成され、フロントカバーFCが、図示されない開閉機構によって開閉され、左側壁及び右側壁の後端における上端にトップカバーTCの揺動支点ptが形成され、トップカバーTCが、後述される開閉機構Mzt(図1)によって開閉される。
【0040】
したがって、操作者は、フロントカバーFCを揺動支点pfを中心に矢印A方向に回動させることによって第1の開口Mo1を開閉し、画像形成ユニット30を装置本体Bdに対して脱着したり、トップカバーTCを揺動支点ptを中心に矢印B方向に回動させることによって、第2の開口Mo2を開閉し、定着器36を装置本体Bdに対して脱着したりすることができる。
【0041】
ところが、前記トップカバーTCが開いた状態から自重で急速に閉じると、操作者が手を挟まれたり、開閉機構Mztが破損したりする恐れがある。そこで、本実施の形態においては、開かれている状態のトップカバーTCから操作者が手を離しても、トップカバーTCが自重で急速に閉じるのが開閉機構Mztにおいて阻止されるようになっている。
【0042】
図1は本発明の実施の形態における開閉機構の概略図、図4は本発明の実施の形態におけるギヤフレームの要部斜視図、図5は本発明の実施の形態におけるギヤフレームの要部断面図である。
【0043】
図において、Tcはトップカバー、Fsは、前記左側壁の内側面を構成する左側の装置フレームであるサイドフレーム、Mztは、トップカバーTCを、揺動支点ptを中心に揺動自在に支持する開閉機構である。
【0044】
該開閉機構Mztは、サイドフレームFsから前記装置本体Bd(図2)と逆方向に向けて突出させて形成されたピン41、トップカバーTCの後端部の下面から下方に向けて突出させて配設されたベース部43、該ベース部43から下方に向けて突出させて円弧状に湾曲させて形成され、トップカバーTCの開閉に伴って揺動させられるギヤフレーム45、前記サイドフレームFsに取り付けられ、トップカバーTCの動作(開閉動作)を制動する制動部材としてのオイルダンパギヤ47等を備える。
【0045】
前記ベース部43にはピン41を内嵌するための孔h1が形成され、トップカバーTCがピン41を介して揺動支点ptを中心に揺動させられる。
【0046】
前記ギヤフレーム45には、外周縁に、回転中心を前記揺動支点ptと一致させて、カバー側ギヤとしての円弧ギヤgr1が形成される。該円弧ギヤgr1は、ピッチ円上の所定の範囲、本実施の形態においては、トップカバーTCの動作を制動する範囲の円弧角度にわたって形成された複数の歯ti(i=1、2、…、n)を有する。
【0047】
前記オイルダンパギヤ47は、サイドフレームFsの上縁の近傍に固定部材としてのねじbtによって取り付けられ、前記円弧ギヤgr1と噛合させられ、円弧ギヤgr1のピッチ円半径より小さいピッチ円半径を有する装置側ギヤとしてのダンパギヤgr2、及び該ダンパギヤgr2に隣接させて配設され、ダンパギヤgr2を回転自在に支持するダンパ49を備える。該ダンパ49は、内部に緩衝用のオイルが充填され、ダンパギヤgr2の回転に抵抗を与える。
【0048】
ところで、前記定着器36を脱着するための前記第2の開口Mo2(図3)の開口面積を大きくするために、トップカバーTCの揺動支点ptを装置本体Bd内において可能な限り後方に配置する必要があるとともに、円弧ギヤgr1を可能な限りトップカバーTCの揺動支点ptに近接させる必要があるので、操作者がトップカバーTCを開く際に円弧ギヤgr1とダンパギヤgr2との噛合が外れてしまうことがある。
【0049】
その場合、ダンパギヤgr2は、噛合が外れた直後の位置で回転することなく停止させられるので、その後、トップカバーTCが閉じられる際に円弧ギヤgr1とダンパギヤgr2とが再び噛合するのに伴って、円弧ギヤgr1の歯先とダンパギヤgr2の歯先とが干渉すると、歯飛びが生じ、異音が発生することがあり、トップカバーTCを円滑に開閉することができない。
【0050】
これは、トップカバーTCの揺動支点ptにおいては、べース部43に孔h1が形成され、孔h1にピン41が内嵌され、部品公差を考慮したガタが設けられているからであり、トップカバーTCが開かれるときに、円弧ギヤgr1とダンパギヤgr2との噛合による反力でトップカバーTCは後方に移動し、トップカバーTCが閉じられるときにトップカバーTCは前方に移動するので、円弧ギヤgr1の歯先とダンパギヤgr2の歯先とが干渉する。また、トップカバーTCが開かれ、円弧ギヤgr1とダンパギヤgr2との噛合が終了したときに、ダンパギヤgr2が逆方向にわずかに回転して歯先が戻るため、円弧ギヤgr1の歯先とダンパギヤgr2の歯先とが干渉することもある。
【0051】
そこで、本実施の形態においては、前記円弧ギヤgr1の下端より下方の部分(ギヤフレーム45の先端側部分)に、扇状の形状を有する移動ギヤとしての退避ギヤgr3が、ギヤフレーム45に形成された空間Sp内において、ギヤフレーム45に対して移動自在に、本実施の形態においては、ギヤフレーム45に形成された孔h2に圧入されたピンsh1を中心に揺動自在に、かつ、前記ダンパギヤgr2と噛合自在に配設される。
【0052】
また、前記退避ギヤgr3の外周縁における上端(トップカバーTC側の端部)Ueに、一つの歯、すなわち、係合歯tmが径方向外方に向けて突出させて形成される。前記係合歯tmの歯底から歯先までの距離を表す歯たけは前記円弧ギヤgr1の各歯tiの歯底から歯先までの歯たけより短くされる。
【0053】
そして、前記トップカバーTCが閉じられる際に退避ギヤgr3に自重だけが加わる状態において、退避ギヤgr3の外周縁における下端Leが、前記空間Sp内の下端に形成されたストッパ53に当接させられ、前記係合歯tmと、前記円弧ギヤgr1の歯tiのうちの最も下端側の歯である最終歯tnとが、図4及び5に示されるように、円弧ギヤgr1の各歯tiのピッチと等しいピッチで隣接させられる。
【0054】
これに対して、前記トップカバーTCが閉じられる際に、例えば、係合歯tmの歯先がダンパギヤgr2の所定の歯の歯先に当接させられると、係合歯tmが、空間Sp内で最終歯tnに近接させられるとともに、円弧ギヤgr1のピッチ円より内側に退避させられる。
【0055】
次に、定着器36を装置本体Bdに対して脱着する際にトップカバーTCが開閉されるときの開閉機構Mztの状態について説明する。
【0056】
図6は本発明の実施の形態におけるトップカバーが開かれるときの開閉機構の状態を説明するための第1の図、図7は本発明の実施の形態におけるトップカバーが開かれるときの開閉機構の状態を説明するための第2の図、図8は本発明の実施の形態におけるトップカバーが開かれるときの円弧ギヤとダンパギヤとの噛合の状態を説明するための参考図、図9は本発明の実施の形態におけるトップカバーが閉じられるときの開閉機構の状態を説明するための第1の図、図10は本発明の実施の形態におけるトップカバーが閉じられるときの開閉機構の状態を説明するための第2の図である。
【0057】
図において、Mztは開閉機構、45はギヤフレーム、gr1は円弧ギヤ、gr2はダンパギヤ、gr3は退避ギヤである。
【0058】
操作者が前記トップカバーTC(図1)を、図1に示されるような閉じられた状態から揺動支点ptを中心にわずかに開くと、トップカバーTCに固定されたギヤフレーム45も前記揺動支点ptを中心に矢印E方向に所定の量回転させられる。このとき、円弧ギヤgr1とダンパギヤgr2とが噛合しているので、ダンパギヤgr2も所定の量回転させられる。
【0059】
円弧ギヤgr1とダンパギヤgr2とが噛合すると、図6に示されるように、退避ギヤgr3とダンパギヤgr2との噛合が開始される。
【0060】
操作者が更にトップカバーTCを開くと、図7に示されるように、退避ギヤgr3とダンパギヤgr2との噛合が終了し、その後は、ダンパギヤgr2に負荷が加わらない状態でトップカバーTCが開かれるようになる。ダンパギヤgr2は前記ダンパ49内のオイルによる負荷によって、図7に示される位置で停止させられる。
【0061】
ところで、退避ギヤgr3とダンパギヤgr2との噛合が終了し、ダンパギヤgr2が停止させられたときのダンパギヤgr2における、直前まで退避ギヤgr3の係合歯tmと噛み合っていた歯をtxとし、該歯txの歯先の中心とダンパギヤgr2の回転中心Ctrとを結ぶ線の傾斜角度をθ1とする。
【0062】
そして、仮に、図8に示されるように、本実施の形態のような退避ギヤgr3が配設されていない場合において、操作者がトップカバーTCを開き、円弧ギヤgr1とダンパギヤgr2との噛合が終了し、ダンパギヤgr2が停止させられたときのダンパギヤgr2における、直前まで円弧ギヤgr1の歯tiのうちの最終歯tnと噛み合っていた歯をtyとし、該歯tyの歯先の中心とダンパギヤgr2の回転中心Ctrとを結ぶ線の傾斜角度をθ2とする。
【0063】
この場合、傾斜角度θ1、θ2を比較すると、係合歯tmの歯たけが最終歯tnの歯たけより短いので、傾斜角度θ1は傾斜角度θ2より小さい。したがって、トップカバーTCが開かれる際に円弧ギヤgr1とダンパギヤgr2との噛合が外れてしまうのを防止することができる。
【0064】
また、トップカバーTCが完全に開かれ、定着器36の脱着が終了すると、操作者はトップカバーTCを閉じるが、これにより、トップカバーTCに固定されたギヤフレーム45が揺動支点ptを中心に矢印F方向に回転させられる。
【0065】
そして、操作者がトップカバーTCを所定の量閉じると、図9に示されるように、退避ギヤgr3の係合歯tmの歯先がダンパギヤgr2の歯txの歯先に当接させられる。
【0066】
続いて、操作者がトップカバーTCをさらに閉じると、ダンパギヤgr2は、オイルダンパギヤ47の前記ダンパ49内のオイルによる負荷によって、図9に示される位置で停止させられた状態を保つので、退避ギヤgr3は、ピンsh1を中心に矢印G方向に回転させられ、係合歯tmを円弧ギヤgr1のピッチ円より内側に退避させる。
【0067】
その結果、係合歯tmと歯txとは噛み合うことなく、最終歯tnと歯txとが噛み合い、ダンパギヤgr2が回転させられる。
【0068】
このとき、歯txの歯先は、最終歯tnにおける歯底と歯先との間の中腹部(基準ピッチ線上の部分)と接するので、円弧ギヤgr1とダンパギヤgr2とは安定した噛合を開始する。
【0069】
このように、本実施の形態においては、退避ギヤgr3の係合歯tmは、歯たけが前記円弧ギヤgr1の歯tiの歯たけより短くされ、退避ギヤgr3の係合歯tmの歯先がダンパギヤgr2の歯txの歯先に当接したときに円弧ギヤgr1側に退避させられるので、操作者がトップカバーTCを閉じる際に、ダンパギヤgr2の歯txの歯先が、退避ギヤgr3の係合歯tmの歯先と干渉することなく、円弧ギヤgr1の最終歯tnの中腹に当たる。
【0070】
したがって、円弧ギヤgr1とダンパギヤgr2とは、通常の噛合い位置で再び回転し始めるので、歯飛びが生じることがなく、異音が発生することがなくなり、トップカバーTCを円滑に開閉することができる。
【0071】
また、トップカバーTCが開かれる際のトップカバーTCが開く速度が変化して、退避ギヤgr3とダンパギヤgr2との噛合が終了したときにダンパギヤgr2が停止させられる位置にばらつきが生じても、トップカバーTCが閉じられる際に円弧ギヤgr1とダンパギヤgr2とが通常の噛合位置で再び回転し始めるので歯飛びが生じることがなく、異音が発生することがなくなる。
【0072】
さらに、トップカバーTCの揺動支点ptを装置本体Bd内において可能な限り後方に配置することができるので、定着器36を脱着しやすくなる。
【0073】
そして、本実施の形態においては、開閉機構Mztがプリンタ10の左側壁及び右側壁に配設されるようになっているが、例えば、左側壁にだけ開閉機構Mztを配設し、右側壁には、ベース部43にピン41が内嵌させられる支持構造だけを形成するようにすることもできる。
【0074】
また、本実施の形態においては、トップカバーTCの開閉機構Mztについて説明したが、本発明をフロントカバーFCの開閉機構Mzfに適用することができる。
【0075】
さらに、本実施の形態においては、プリンタ10について説明したが、本発明を複写機、ファクシミリ装置、複合機等の画像形成装置に適用することができる。
【0076】
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々変形させることが可能であり、それらを本発明の範囲から排除するものではない。
【符号の説明】
【0077】
45 ギヤフレーム
FS サイドフレーム
gr1 円弧ギヤ
gr2 ダンパギヤ
gr3 退避ギヤ
Mo2 第2の開口
Mzt 開閉機構
TC トップカバー
ti、tx 歯
tm 噛合歯
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10