(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135293
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】車両制御装置、車両制御方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
B60W 30/10 20060101AFI20240927BHJP
B60W 60/00 20200101ALI20240927BHJP
B60W 50/14 20200101ALI20240927BHJP
【FI】
B60W30/10
B60W60/00
B60W50/14
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023045912
(22)【出願日】2023-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100194087
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 伸一
(72)【発明者】
【氏名】金坂 昌
(72)【発明者】
【氏名】吉田 友馬
(72)【発明者】
【氏名】加藤 大智
(72)【発明者】
【氏名】西口 遼彦
(72)【発明者】
【氏名】二ツ寺 暁郎
【テーマコード(参考)】
3D241
【Fターム(参考)】
3D241BA11
3D241BA60
3D241BB16
3D241BB37
3D241CC01
3D241CC08
3D241CC17
3D241CD07
3D241CE02
3D241DA13Z
3D241DA39Z
3D241DA52Z
3D241DB01Z
3D241DB02Z
3D241DB05Z
3D241DB12Z
(57)【要約】
【課題】車両の車線変更時に乗員への着信があるような場合において、より適切な車両制御を行うこと。
【解決手段】車両制御装置において、車両の周辺状況を認識する認識部と、前記周辺状況に基づいて前記車両の操舵または速度のうち一方または双方を制御する運転制御を実行する運転制御部と、前記車両の乗員に対する着信の有無を判定する着信判定部と、前記運転制御による前記車両の動作に関する情報と前記着信に関する情報とを、前記運転制御の状態に応じた態様で前記乗員に通知する通知制御部とを備え、前記運転制御部は、前記車両の車線変更に関する制御の実行時に前記着信があった場合に、前記制御の進捗度合に基づいて前記車両の走行車線から隣接車線への車線変更を実行するか否かを判定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の周辺状況を認識する認識部と、
前記周辺状況に基づいて前記車両の操舵または速度のうち一方または双方を制御する運転制御を実行する運転制御部と、
前記車両の乗員に対する着信の有無を判定する着信判定部と、
前記運転制御による前記車両の動作に関する情報と前記着信に関する情報とを、前記運転制御の状態に応じた態様で前記乗員に通知する通知制御部とを備え、
前記運転制御部は、前記車両の車線変更に関する制御の実行時に前記着信があった場合に、前記制御の進捗度合に基づいて前記車両の走行車線から隣接車線への車線変更を実行するか否かを判定する、
車両制御装置。
【請求項2】
前記運転制御部は、前記着信があったときの前記進捗度合が閾値未満である場合に、前記車両の車線変更を抑制する、
請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項3】
前記進捗度合は、前記車両の挙動の変化量に基づいて設定される、
請求項2に記載の車両制御装置。
【請求項4】
前記進捗度合は、前記車線変更のための操舵制御の度合に基づいて設定される、
請求項2に記載の車両制御装置。
【請求項5】
前記通知制御部は、
前記車両の車線変更に関する制御により前記車両の動作を示す第1画像が表示部に表示された後に、前記運転制御部により前記車線変更を実行しないと判定された場合に、前記第1画像から前記車線変更を抑制することを示す第2画像に切り替えて前記表示部に表示させた後に、前記着信を知らせる第3画像を前記表示部に表示させ、
前記車線変更を実行する判定された場合に、前記第1画像から前記第3画像に切り替えて前記表示部に表示させる、
請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項6】
前記通知制御部は、第1表示部と第2表示部とを含む複数の表示部を用いて前記車両の動作を示す画像と前記着信を知らせる画像とを通知し、
前記通知制御部は、前記車線変更の動作を示す第1画像を前記第1表示部と前記第2表示部とに表示させた後に、前記運転制御部により前記車線変更を実行しないと判定された場合に、前記第1表示部に前記車線変更を抑制することを示す第2画像を表示させ、前記第2表示部に前記着信を知らせる第3画像を表示させる、
請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項7】
前記通知制御部は、第1表示部と第2表示部とを含む複数の表示部を用いて前記車両の動作を示す画像と前記着信を知らせる画像とを通知し、
前記通知制御部は、前記車線変更の動作を示す第1画像を前記第1表示部と前記第2表示部とに表示させた後に、前記運転制御部により前記車線変更を実行すると判定された場合に、前記第1表示部に前記第1画像を継続して表示させ、前記第2表示部に前記着信を知らせる第3画像を表示させる、
請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項8】
前記運転制御部は、前記車両を目的地への経路に誘導する車線変更を行う場合には、前記着信があったときの前記進捗度合が閾値未満であっても、前記車線変更を抑制しない、
請求項2に記載の車両制御装置。
【請求項9】
前記通知制御部は、前記着信の重要度が閾値以上である場合に、前記進捗度合に関係なく前記着信に対する通話制御を行う、
請求項2に記載の車両制御装置。
【請求項10】
コンピュータが、
車両の周辺状況を認識し、
前記周辺状況に基づいて前記車両の操舵または速度のうち一方または双方を制御する運転制御を実行し、
前記車両の乗員に対する着信の有無を判定し、
前記運転制御による前記車両の動作に関する情報と前記着信に関する情報とを、前記運転制御の状態に応じた態様で前記乗員に通知し、
前記車両の車線変更に関する制御の実行時に前記着信があった場合に、前記制御の進捗度合に基づいて前記車両の走行車線から隣接車線への車線変更を実行するか否かを判定する、
車両制御方法。
【請求項11】
コンピュータに、
車両の周辺状況を認識させ、
前記周辺状況に基づいて前記車両の操舵または速度のうち一方または双方を制御する運転制御を実行させ、
前記車両の乗員に対する着信の有無を判定させ、
前記運転制御による前記車両の動作に関する情報と前記着信に関する情報とを、前記運転制御の状態に応じた態様で前記乗員に通知させ、
前記車両の車線変更に関する制御の実行時に前記着信があった場合に、前記制御の進捗度合に基づいて前記車両の走行車線から隣接車線への車線変更を実行するか否かを判定させる、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両制御装置、車両制御方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、交通参加者の中でも脆弱な立場にある人々にも配慮した持続可能な輸送システムへのアクセスを提供する取り組みが活発化している。この実現に向けて自動運転技術に関する研究開発を通して交通の安全性や利便性をより一層改善する研究開発に注力している。これに関連して、ユーザが通話中であるか否かによって車線変更制御を実施するか否かを制御したり、自動運転制御部により実行される車両の挙動の変化を伴うイベントの発生を示す画像を、車両の挙動が変化する前のタイミングで表示部に表示させる技術が知られている(例えば、特許文献1および2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-135195号公報
【特許文献2】特開2018-203011号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、自動運転技術においては、車線変更前に車両の乗員に着信があった場合の車両制御や乗員への通知態様については考慮されていなかった。したがって、車線変更と着信とのタイミングに基づく適切な車両制御ができていない場合があることが課題であった。
【0005】
本願は上記課題の解決のため、車両の車線変更時に乗員への着信があるような場合において、より適切な車両制御を行うことができる車両制御装置、車両制御方法、およびプログラムを提供することを目的の一つとする。そして、延いては持続可能な輸送システムの発展に寄与するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る車両制御装置、車両制御方法、およびプログラムは、以下の構成を採用した。
(1):この発明の一態様に係る車両制御装置は、車両の周辺状況を認識する認識部と、前記周辺状況に基づいて前記車両の操舵または速度のうち一方または双方を制御する運転制御を実行する運転制御部と、前記車両の乗員に対する着信の有無を判定する着信判定部と、前記運転制御による前記車両の動作に関する情報と前記着信に関する情報とを、前記運転制御の状態に応じた態様で前記乗員に通知する通知制御部とを備え、前記運転制御部は、前記車両の車線変更に関する制御の実行時に前記着信があった場合に、前記制御の進捗度合に基づいて前記車両の走行車線から隣接車線への車線変更を実行するか否かを判定する、車両制御装置である。
【0007】
(2):上記(1)の態様において、前記運転制御部は、前記着信があったときの前記進捗度合が閾値未満である場合に、前記車両の車線変更を抑制するものである。
【0008】
(3):上記(2)の態様において、前記進捗度合は、前記車両の挙動の変化量に基づいて設定されるものである。
【0009】
(4):上記(2)の態様において、前記進捗度合は、前記車線変更のための操舵制御の度合に基づいて設定されるものである。
【0010】
(5):上記(1)の態様において、前記通知制御部は、前記車両の車線変更に関する制御により前記車両の動作を示す第1画像が表示部に表示された後に、前記運転制御部により前記車線変更を実行しないと判定された場合に、前記第1画像から前記車線変更を抑制することを示す第2画像に切り替えて前記表示部に表示させた後に、前記着信を知らせる第3画像を前記表示部に表示させ、
前記車線変更を実行する判定された場合に、前記第1画像から前記第3画像に切り替えて前記表示部に表示させるものである。
【0011】
(6):上記(1)の態様において、前記通知制御部は、第1表示部と第2表示部とを含む複数の表示部を用いて前記車両の動作を示す画像と前記着信を知らせる画像とを通知し、前記通知制御部は、前記車線変更の動作を示す第1画像を前記第1表示部と前記第2表示部とに表示させた後に、前記運転制御部により前記車線変更を実行しないと判定された場合に、前記第1表示部に前記第2画像を表示させ、前記第2表示部に前記第3画像を表示させるものである。
【0012】
(7):上記(1)の態様において、前記通知制御部は、第1表示部と第2表示部とを含む複数の表示部を用いて前記車両の動作を示す画像と前記着信を知らせる画像とを通知し、前記通知制御部は、前記車線変更の動作を示す第1画像を前記第1表示部と前記第2表示部とに表示させた後に、前記運転制御部により前記車線変更を実行すると判定された場合に、前記第1表示部に前記第1画像を継続して表示させ、前記第2表示部に前記第3画像を表示させるものである。
【0013】
(8):上記(2)の態様において、前記運転制御部は、前記車両を目的地への経路に誘導する車線変更を行う場合には、前記着信があったときの前記進捗度合が閾値未満であっても、前記車線変更を抑制しないものである。
【0014】
(9):上記(2)の態様において、前記通知制御部は、前記着信の重要度が閾値以上である場合に、前記進捗度合に関係なく前記着信に対する通話制御を行うものである。
【0015】
(10):本発明の他の態様に係る車両制御方法は、コンピュータが、車両の周辺状況を認識し、前記周辺状況に基づいて前記車両の操舵または速度のうち一方または双方を制御する運転制御を実行し、前記車両の乗員に対する着信の有無を判定し、前記運転制御による前記車両の動作に関する情報と前記着信に関する情報とを、前記運転制御の状態に応じた態様で前記乗員に通知し、前記車両の車線変更に関する制御の実行時に前記着信があった場合に、前記制御の進捗度合に基づいて前記車両の走行車線から隣接車線への車線変更を実行するか否かを判定する、車両制御方法である。
【0016】
(11):本発明の他の態様に係るプログラムは、コンピュータに、車両の周辺状況を認識させ、前記周辺状況に基づいて前記車両の操舵または速度のうち一方または双方を制御する運転制御を実行させ、前記車両の乗員に対する着信の有無を判定させ、前記運転制御による前記車両の動作に関する情報と前記着信に関する情報とを、前記運転制御の状態に応じた態様で前記乗員に通知させ、前記車両の車線変更に関する制御の実行時に前記着信があった場合に、前記制御の進捗度合に基づいて前記車両の走行車線から隣接車線への車線変更を実行するか否かを判定させる、プログラムである。
【発明の効果】
【0017】
上記(1)~(11)の態様によれば、車両の車線変更時に乗員への着信があるような場合において、より適切な車両制御を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】実施形態に係る車両制御装置を含む車両システム1の構成図である。
【
図2】第1および第2の制御パターンについて説明するための図である。
【
図3】第3および第4の制御パターンについて説明するための図である。
【
図4】車線変更の進捗度合について説明するための図である。
【
図5】第2の制御パターンの実行時に運転者に通知される内容について説明するための図である。
【
図6】第2の制御パターンの実行時に複数の表示部を用いて運転者に通知される内容について説明するための図である。
【
図7】第3の制御パターンの実行時に運転者に通知される内容について説明するための図である。
【
図8】第3の制御パターンの実行時に複数の表示部を用いて運転者に通知される内容について説明するための図である。
【
図9】実施形態の自動運転制御装置100により実行される処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照し、本発明の車両制御装置、車両制御方法、およびプログラムの実施形態について説明する。以下では、一例として、車両制御装置が自動運転車両に適用された実施形態について説明する。自動運転とは、例えば、自動的に車両の操舵または速度のうち、一方または双方を制御して運転制御を実行することである。運転制御には、例えば、LKAS(Lane Keeping Assistance System)や、ALC(Auto Lane Changing)、ACC(Adaptive Cruise Control System)、CMBS(Collision Mitigation Brake System)等といった種々の運転制御が含まれてよい。また、運転制御には、ADAS(Advanced Driver Assistance System)等の運転支援制御が含まれてよい。自動運転車両は、乗員(運転者)の車両の操舵と速度とのうち少なくとも一部が手動運転によって運転が制御されることがあってもよい。
【0020】
[全体構成]
図1は、実施形態に係る車両制御装置を含む車両システム1の構成図である。車両システム1が搭載される車両(以下、車両Mと称する)は、例えば、二輪や三輪、四輪等の車両であり、その駆動源は、ディーゼルエンジンやガソリンエンジン等の内燃機関、電動機、或いはこれらの組み合わせである。電動機は、内燃機関に連結された発電機による発電電力、或いは二次電池や燃料電池等のバッテリ(蓄電池)の放電電力を使用して動作する。
【0021】
車両システム1は、例えば、カメラ10と、レーダ装置12と、LIDAR(Light Detection and Ranging)14と、物体認識装置16と、通信装置20と、HMI(Human Machine Interface)30と、車両センサ40と、ナビゲーション装置50と、運転操作子80と、自動運転制御装置100と、走行駆動力出力装置200と、ブレーキ装置210と、ステアリング装置220とを備える。これらの装置や機器は、CAN(Controller Area Network)通信線等の多重通信線やシリアル通信線、無線通信網等によって互いに接続される。なお、
図1に示す構成はあくまで一例であり、構成の一部が省略されてもよいし、更に別の構成が追加されてもよい。自動運転制御装置100は、「車両制御装置」の一例である。カメラ10と、レーダ装置12と、LIDAR14と、物体認識装置16とを組み合わせたものが「検知デバイスDD」の一例である。HMI30は、「通知部」の一例である。
【0022】
カメラ10は、例えば、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の固体撮像素子を利用したデジタルカメラである。カメラ10は、車両システム1が搭載される車両Mの任意の箇所に取り付けられる。前方を撮像する場合、カメラ10は、フロントウインドシールド上部やルームミラー裏面、車体の前頭部等に取り付けられる。後方を撮像する場合、カメラ10は、リアウインドシールド上部やバックドア等に取り付けられる。側方を撮像する場合、カメラ10は、ドアミラー等に取り付けられる。カメラ10は、例えば、周期的に繰り返し車両Mの周辺を撮像する。カメラ10は、ステレオカメラであってもよい。また、カメラ10は、車室内の乗員(運転者等)を撮像する車室内カメラが含まれていてもよい。この場合、車室内カメラは、周期的に繰り返し車室内を撮像する。
【0023】
レーダ装置12は、車両Mの周辺にミリ波等の電波を放射すると共に、周辺の物体によって反射された電波(反射波)を検出して少なくとも物体の位置(距離および方位)を検出する。レーダ装置12は、車両Mの任意の箇所に取り付けられる。レーダ装置12は、FM-CW(Frequency Modulated Continuous Wave)方式によって物体の位置および速度を検出してもよい。
【0024】
LIDAR14は、車両Mの周辺に光を照射し、散乱光を測定する。LIDAR14は、発光から受光までの時間に基づいて、対象までの距離を検出する。照射される光は、例えば、パルス状のレーザー光である。LIDAR14は、車両Mの任意の箇所に取り付けられる。
【0025】
物体認識装置16は、カメラ10、レーダ装置12、およびLIDAR14のうち一部または全部による検出結果に対してセンサフュージョン処理を行って、車両Mの周辺の物体の位置、種類、速度等を認識する。物体には、例えば、他車両(例えば、車両Mから所定距離以内に存在する周辺車両)、歩行者、自転車、道路構造物等が含まれる。道路構造物には、例えば、道路標識や交通信号機、踏切、縁石、中央分離帯、ガードレール、フェンス等が含まれる。また、道路構造物には、例えば、路面に描画または貼付された道路区画線(以下、単に「区画線」と称する)や横断歩道、自転車横断帯、一時停止線等の路面標識が含まれてもよい。物体認識装置16は、認識結果を自動運転制御装置100に出力する。なお、物体認識装置16は、カメラ10、レーダ装置12、およびLIDAR14の検出結果をそのまま自動運転制御装置100に出力してよい。その場合、車両システム1(具体的には検知デバイスDD)の構成から物体認識装置16が省略されてもよい。また、物体認識装置16は、自動運転制御装置100に含まれていてもよい。
【0026】
通信装置20は、例えば、セルラー網やWi-Fi網、Bluetooth(登録商標)、DSRC(Dedicated Short Range Communication)、LAN(Local Area Network)、WAN(WiDe Area Network)、インターネット等のネットワークを利用して、例えば、車両Mの周辺に存在する他車両、車両Mの乗員が利用するスマートフォンやタブレット端末等の端末装置TD、或いは各種サーバ装置等と通信する。例えば、通信装置20は、端末装置TDとの間でペアリング通信することによって、通話機能を有する端末装置TDを介して外部の相手と通話等を行うことができる。この場合には、後述するHMI制御部140の制御によりHMI30に設けられたマイク32やスピーカ36を用いて通話するための音声の入出力を行う。また、カメラ10や表示部34を用いて通話時の画像(動画像)の入出力を行ってもよい。
【0027】
HMI30は、車両Mの乗員に対して各種情報を出力すると共に、乗員による入力操作を受け付ける。HMI30には、例えば、マイク32、表示部34、スピーカ36、スイッチ38が含まれる。また、HMI30には、ブザー、キー、レバー等が含まれてもよい。マイク32は、車室内で発せられた音声を収集する収音部である。マイク32は、例えば、車室内の一以上の代表位置に設けられてもよいし、運転席、助手席、後部座席のそれぞれに設けられてもよい。表示部34は、画像を表示すると共に、入力操作を受付可能な装置(或いは装置群)である。表示部34は、例えば、入出力可能なタッチパネルとして構成された表示装置を含む。表示部34は、1つでもよく複数設けられてもよい。表示部34は、例えば、車室内の一以上の代表位置(例えば、インストルメントパネルの中央部やメーター表示部)に設けられてもよく、運転席、助手席、後部座席のそれぞれに設けられてもよい。更に表示部34は、HUD(Head Up Display)や機械式の入力装置を含んでもよい。スピーカ36は、車室内に1以上配設され、音声や警報等を出力する。また、スイッチ38には、自動運転と乗員による手動運転とを相互に切り替える運転切替スイッチや、運転制御を実行するか否かを切り替えるオン・オフスイッチ、ウインカスイッチ(方向指示器)が含まれてもよい。ウインカスイッチは、例えば、ステアリングコラム、またはステアリングホイールに設けられる。ウインカスイッチは、例えば、乗員による車両Mの車線変更の指示を受け付ける操作部の一例である。また、スイッチ38には、通信装置20を介した外部の相手との通話時において、通話を開始したり、終了するためのスイッチが含まれてよい。
【0028】
車両センサ40は、車両Mの速度を検出する車速センサ、加速度を検出する加速度センサ、ヨーレート(例えば、車両Mの重心点を通る鉛直軸回りの回転角速度)を検出するヨーレートセンサ、車両Mの向きを検出する方位センサ等を含む。また、車両センサ40は、車両Mの位置を検出する位置センサが設けられていてもよい。位置センサは、例えば、GPS(Global Positioning System)装置から位置情報(経度・緯度情報)を取得するセンサである。また、位置センサは、ナビゲーション装置50のGNSS(Global Navigation Satellite System)受信機51を用いて位置情報を取得するセンサであってもよい。車両センサ40により検出した結果は、自動運転制御装置100に出力される。
【0029】
ナビゲーション装置50は、例えば、GNSS受信機51と、ナビHMI52と、経路決定部53とを備える。ナビゲーション装置50は、HDD(Hard Disk Drive)やフラッシュメモリ等の記憶装置に地図情報54を保持している。GNSS受信機51は、GNSS衛星から受信した信号に基づいて、車両Mの位置を特定する。車両Mの位置は、車両センサ40の出力を利用したINS(Inertial Navigation System)によって特定または補完されてもよい。ナビHMI52は、表示装置、スピーカ、タッチパネル、キー等を含む。ナビHMI52は、前述したHMI30と一部または全部が共通化されてもよい。経路決定部53は、例えば、GNSS受信機51により特定された車両Mの位置(或いは入力された任意の位置)から、ナビHMI52を用いて乗員により入力された目的地までの経路(以下、地図上経路)を、地図情報54を参照して決定する。地図情報54は、例えば、位置情報に対応付けられる道路を示すリンクと、リンクによって接続されたノードとによって道路形状が表現された情報である。地図情報54は、道路の曲率やPOI(Point Of Interest)情報等を含んでもよい。また、地図情報54には、例えば、車線の中央の情報あるいは車線の境界の情報(道路区画線)、車線数、車線の幅員、道路勾配等が含まれてよく、道路情報、交通規制情報、住所情報(住所・郵便番号)、施設情報、電話番号情報等が含まれてよい。地図情報54は、通信装置20が他装置と通信することにより、随時、アップデートされてよい。地図情報54は、後述する自動運転制御装置100の記憶部150に記憶されてもよい。
【0030】
ナビゲーション装置50は、地図上経路に基づいて、ナビHMI52を用いた経路案内を行ってもよい。ナビゲーション装置50は、例えば端末装置TDの機能によって実現されてもよい。ナビゲーション装置50は、通信装置20を介してナビゲーションサーバに現在位置と目的地を送信し、ナビゲーションサーバから地図上経路と同等の経路を取得してもよい。
【0031】
運転操作子80は、例えば、ステアリングホイールの他、アクセルペダル、ブレーキペダル、シフトレバー、その他の操作子を含む。運転操作子80には、操作量あるいは操作の有無を検出するセンサが取り付けられており、その検出結果は、自動運転制御装置100、もしくは、走行駆動力出力装置200、ブレーキ装置210、およびステアリング装置220のうち一部または全部に出力される。ステアリングホイールは、「運転者による操舵操作を受け付ける操作子」の一例である。操作子は、必ずしも環状である必要は無く、異形ステアリングやジョイスティック、ボタン等の形態であってもよい。また、運転操作子80は、車両Mの運転者がステアリングホイールを所定方向に操舵させたときの操舵角や操舵トルク量、および運転者がステアリングホイールを把持した検知したことを示す情報等を自動運転制御装置100に出力する。
【0032】
自動運転制御装置100は、例えば、認識部110と、判定部120と、運転制御部130と、HMI制御部140と、記憶部150とを備える。認識部110と、判定部120と、運転制御部130と、HMI制御部140とは、それぞれ、例えば、CPU(Central Processing Unit)等のハードウェアプロセッサがプログラム(ソフトウェア)を実行することにより実現される。また、これらの構成要素のうち一部または全部は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)等のハードウェア(回路部;circuitryを含む)によって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。プログラムは、予め自動運転制御装置100のHDDやフラッシュメモリ等の記憶装置(非一過性の記憶媒体を備える記憶装置)に格納されていてもよいし、DVDやCD-ROM等の着脱可能な記憶媒体に格納されており、記憶媒体(非一過性の記憶媒体)がドライブ装置に装着されることで自動運転制御装置100のHDDやフラッシュメモリにインストールされてもよい。HMI制御部140は、「通知制御部」の一例である。
【0033】
記憶部150は、上記の各種記憶装置、或いはSSD(Solid State Drive)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)、ROM(Read Only Memory)、またはRAM(Random Access Memory)等により実現されてもよい。記憶部150は、例えば、アドレス情報152、プログラム、その他の各種情報等が格納される。また、記憶部150には、例えば、地図情報54が格納されていてもよい。アドレス情報152は、例えば、氏名に電話番号等のアドレス情報が対応付けられた情報である。また、アドレス情報には、氏名または電話番号に対する優先度が対応付けられていてもよい。また、アドレス情報152には、予め重要度(または緊急度)の高い氏名および電話番号が登録されていてもよい。アドレス情報152は、端末装置TDから取得してもよく、HMI30を介して車両Mの乗員により設定されてもよい。
【0034】
認識部110は、外界センサDDから入力された情報に基づいて、車両Mの周辺状況を認識する。例えば、認識部110は、外界センサDDから入力された情報に基づいて、車両Mから所定距離以内に存在する物体の位置(例えば相対位置)、および速度(例えば相対速度)、加速度等の状態を認識する。物体とは、例えば、他車両や、自転車、歩行者等の交通参加者である。物体の位置は、例えば、車両Mの代表点(重心や駆動軸中心等)を原点とした絶対座標上の位置として認識され、制御に使用される。物体の位置は、その物体の重心やコーナー等の代表点で表されてもよいし、領域で表されてもよい。物体の「状態」とは、物体の加速度やジャーク、あるいは「行動状態」(例えば車線変更をしている、またはしようとしているか否か)を含んでもよい。また、認識部110は、物体の大きさや形状、色等の特徴情報に基づいて物体の種類(他車両、自転車、歩行者)等を認識してもよい。
【0035】
また、認識部110は、例えば、車両Mが走行している車線(走行車線)を認識する。例えば、認識部110は、カメラ10によって撮像されたカメラ画像から車両Mの左右の道路区画線(以下、「区画線」と称する)を認識し、認識した区画線の位置に基づいて走行車線を認識する。なお、認識部110は、区画線に限らず、路肩、縁石、中央分離帯、ガードレール、フェンス、壁等を含む車線位置を特定可能な物標(走路境界、道路境界)を認識することで、走行車線を認識してもよい。この認識において、ナビゲーション装置50から取得される車両Mの位置やINSによる処理結果が加味されてもよい。
【0036】
また、認識部110は、車両センサ40から得られる車両Mの位置情報に基づいて地図情報54を参照して車両Mの現在の走行車線を認識してもよく、地図情報54から得られる道路区画線のパターン(例えば実線と破線の配列)と、カメラ10によって撮像された画像から認識される車両Mの周辺の道路区画線のパターンとを比較することで走行車線を認識してもよい。また、認識部110は、走行車線の道路形状を認識してもよい。
【0037】
また、認識部110は、車両Mの走行車線に隣接する隣接車線や、一時停止線、障害物、赤信号、料金所、その他の道路事象を認識してもよい。
【0038】
また、認識部110は、走行車線を認識する際に、走行車線に対する車両Mの位置や姿勢を認識する。認識部110は、例えば、車両Mの基準点(中心または重心)の車線中央からの乖離、および車両Mの進行方向の車線中央を連ねた線に対してなす角度を、走行車線に対する車両Mの相対位置および姿勢として認識してもよい。これに代えて、認識部110は、走行車線の何れかの側端部(区画線または道路境界)に対する車両Mの基準点の位置等を、走行車線に対する車両Mの相対位置として認識してもよい。
【0039】
また、認識部110は、例えば、AI(Artificial Intelligence;人工知能)による機能と、予め与えられたモデルによる機能とを並行して実現する。例えば、「交差点を認識する」機能は、ディープラーニング等による交差点の認識と、予め与えられた条件(パターンマッチング可能な信号、道路標示等がある)に基づく認識とが並行して実行され、双方に対してスコア付けして総合的に評価することで実現されてよい。
【0040】
判定部120は、例えば、着信判定部122と、車線変更判定部124とを備える。着信判定部122は、車両Mの運転者(または運転席に着座している乗員)に対する着信の有無を判定する。着信とは、例えば、端末装置TDに電話回線等の通信回線を通じて着呼(相手先からの接続要求)を受けている状態で発生するイベントである(以下、着信イベントと称する場合がある)。通話を開始せずに着呼が終了した場合や通話が終了した場合に着信イベントも終了する。着信判定部122は、例えば、運転者の端末装置TDと車両システム1(通信装置20)とがペアリング中である状況において、着信イベントの有無を判定する。また、車両M側(例えば、HMI30やHMI制御部140)に通話機能を有する場合には、端末装置TDとのペアリングの有無に関係なく、HMI30による入力操作等によって事前に登録された運転者に対する着信イベントの有無を判定する。
【0041】
車線変更判定部124は、認識部110により認識された車両Mの周辺状況に基づいて、現時点または将来において、運転制御部130による運転制御(自動運転制御)によって車両Mの走行車線から隣接車線に車線変更を行う必要があるか否かを判定する。例えば、車線変更判定部124は、予め目的地が設定されている場合に、車両Mの位置や走行中の道路形状等に基づいて、走行地点において目的地方面へ進行するために運転制御による車線変更が必要であるか否かを判定する。例えば、車両Mが複数の車線が分岐する分岐地点より所定距離手前の位置に到達し、且つ車両Mが目的地方面に進行可能な車線を走行していない場合、車線変更判定部124は、車線変更する必要であると判定する。
【0042】
また、運転者によりHMI30等に設けられたウインカスイッチが操作された場合であって、且つスイッチ操作に対応する方向に隣接車線が存在する場合、車線変更判定部124は、車線変更要求を受け付けて、運転者が要求した方向に車線変更する必要があると判定してもよい。また、車線変更判定部124は、周辺状況に基づき、前走車両を追い越す場合や、前方の障害物を避ける必要がある場合に、車線変更する必要があると判定してもよい。
【0043】
運転制御部130は、認識部110により認識された車両Mの周辺状況および判定部120による判定結果等に基づいて、車両Mの操舵または速度のうち、一方または双方を制御して車両Mに対する運転制御を実行する。運転制御部130は、例えば、車線維持制御部132と、車線変更制御部134とを備える。
【0044】
車線維持制御部132は、車両Mが走行車線から逸脱しないようにステアリング装置220を制御する。例えば、車線維持制御部132は、認識部110が認識した走行車線の中央または中央付近を車両Mが走行するようにステアリング装置220を制御する。また、車線維持制御部132は、車両Mが走行車線から逸脱しないようにステアリング装置220を制御して運転者の操舵操作を支援してもよい。以下、この制御を車線維持制御(または、LKAS制御)と称する場合がある。車線維持制御は、車線逸脱抑制制御と言い換えてもよい。
【0045】
車線変更制御部134は、車線変更判定部124により車線変更を行う必要があると判定された場合、自動運転により車両Mを目的の隣接車線に車線変更させるために、車線変更に関する制御を実行する。車線変更に関する制御には、例えば、車線変更の第1制御(準備制御)と第2制御(挙動制御)とが含まれる。
【0046】
第1制御では、例えば、車両Mが第2制御による車線変更を実行するための条件(車線変更実行条件)を満たしているかを判定する。車線変更実行条件には、例えば、車線変更先の車線に障害物が存在しないことや、車線変更を行う場合に周辺の他車両に干渉しないこと、車線変更の禁止区間でないこと(車線変更の禁止の道路標示や標識がないこと)、車線変更先の車線が認識されていること(実在していること)、車両センサ40により検出されたヨーレートが閾値未満であること、走行中の道路の曲率半径が所定値以上であること、車線変更の第2制御の実行時に運転者に課されるタスクが実行されていること、運転者が通話中でないこと等が含まれる。運転者に課されるタスクには、例えば、運転者が車両Mの周辺(車線変更先を含む)を監視していること、または運転者がステアリングホイールを把持していることのうち、一方または双方が含まれてよく、他のタスクが含まれてよい。運転者が周辺を監視しているか否かは、車室内カメラにより撮像された画像の解析処理結果等に基づいて判定でき、ステアリングホイールを把持しているか否かは、ステアリングホイールに設けられたセンサにより把持を検出しているか否かにより判定できる。また、車線変更実行条件には、他の条件を含んでもよく、上述の条件のうち一部は省略されてもよい。
【0047】
第2制御では、第1制御において車線変更実行条件を満たすと判定された場合に、車両Mの操舵または速度のうち、少なくとも操舵を制御して車線変更先への車線変更を実行する。なお、車線変更に関する制御(第1制御または第2制御)の実行中や実行前後において、着信判定部122により着信イベントがあると判定された場合、車線変更制御部134は、車線変更に関する制御の進捗度合等に基づいて、車線変更を実行するか否かを判定する。
【0048】
運転制御部130は、上述の制御の他にも、車両Mの前走車両(先行車両)との車間距離が予め設定された距離となるように車両Mの速度を制御しながら運転者がアクセル操作やブレーキ操作をしなくても前走車両の後方を定速で走行するACC制御を行ってもよい。また、運転制御部130は、認識部110により認識された周辺状況に基づき、車両Mが周辺の物体と接触する可能性があると判定された場合に、警告音や警告画像を表示したり、制動制御(減速制御)を行うCMBS制御が実行されてよい。なお、上述した各種運転制御を実行するか否かは、例えば運転者によるスイッチ(オン・オフスイッチ)38の操作状態に応じて制御されてよい。
【0049】
HMI制御部140は、HMI30により、乗員(運転者を含む)に所定の情報を通知する。所定の情報には、例えば、車両Mの状態に関する情報や運転制御に関する情報等の車両Mの走行に関連のある情報が含まれる。車両Mの状態に関する情報には、例えば、車両Mの速度、エンジン回転数、シフト位置等が含まれる。また、運転制御に関する情報には、例えば、実行中または実行可能な運転制御の種類や、運転制御の状況等が含まれる。また、所定の情報には、着信を知らせる情報や通話の状態を知らせる情報等が含まれてよい。また、所定の情報には、車両Mの現在位置や目的地、燃料の残量に関する情報等が含まれてよく、テレビ番組、DVD等の記憶媒体に記憶されたコンテンツ(例えば、映画)等の車両Mの走行制御に関連しない情報が含まれてもよい。
【0050】
例えば、HMI制御部140は、上述した所定の情報を含む画像を生成し、生成した画像をHMI30の表示部34に表示させてもよく、所定の情報を示す音声を生成し、生成した音声をHMI30のスピーカ36から出力させてもよい。音声が出力されるタイミングは、例えば、運転制御を開始したり、中止するタイミング、着信時、表示する画像を切り替えるタイミング、車両Mが所定の状態になったタイミング等である。また、HMI制御部140は、HMI30により受け付けられた情報を運転制御部130や端末装置TD等に出力してもよい。
【0051】
例えば、HMI制御部140は、運転制御による車両Mの動作に関する情報と着信に関する情報とを、運転制御の状態に応じた態様でHMI30に出力させて乗員に通知する。また、HMI制御部140は、通信回線を介して車両Mの運転者に対する着呼イベントが発生した場合に、呼び出し音をスピーカ36から出力させたり、相手先の情報を表示部34に表示させたり、通話時に、相手の音声をスピーカ36から出力させたり、マイク32により取得された運転者の音声を、通信装置20または端末装置TDを介して相手側の端末に送信するといった制御を行う。また、HMI制御部140は、HMI30のスイッチ38に対する操作を受け付けて通話を開始したり、終了する(電話を切る)等の制御を行う。これらの制御は、運転制御の状態(例えば、後述する車線変更における各種制御パターン)に応じて態様を異ならせてもよい。
【0052】
走行駆動力出力装置200は、車両Mが走行するための走行駆動力(トルク)を駆動輪に出力する。走行駆動力出力装置200は、例えば、車両Mに搭載された内燃機関、電動機、および変速機等の組み合わせと、これらを制御するECU(Electronic Control Unit)とを備える。ECUは、第2制御部160から入力される情報、或いは運転操作子80のアクセルペダルから入力される情報に従って、上記の構成を制御する。
【0053】
ブレーキ装置210は、例えば、ブレーキキャリパーと、ブレーキキャリパーに油圧を伝達するシリンダと、シリンダに油圧を発生させる電動モータと、ブレーキECUとを備える。ブレーキECUは、第2制御部160から入力される情報、或いは運転操作子80のブレーキペダルから入力される情報に従って電動モータを制御し、制動操作に応じたブレーキトルクが各車輪に出力されるようにする。ブレーキ装置210は、ブレーキペダルの操作によって発生させた油圧を、マスターシリンダを介してシリンダに伝達する機構をバックアップとして備えてよい。なお、ブレーキ装置210は、上記説明した構成に限らず、第2制御部160から入力される情報に従ってアクチュエータを制御して、マスターシリンダの油圧をシリンダに伝達する電子制御式油圧ブレーキ装置であってもよい。
【0054】
ステアリング装置220は、例えば、ステアリングECUと、電動モータとを備える。電動モータは、例えば、ラックアンドピニオン機構に力を作用させて転舵輪の向きを変更する。ステアリングECUは、第2制御部160から入力される情報、或いは運転操作子80のステアリングホイールから入力される情報に従って、電動モータを駆動し、転舵輪の向きを変更させる。
【0055】
[車線変更制御および着信(通話)制御]
以下、実施形態における車線変更制御および着信(通話)制御の具体例について図を用いて説明する。以下では、特に車線変更の実行時または実行前後での着信のタイミングに基づく車両制御の内容について幾つかのパターンに分けて説明する。
【0056】
<第1の制御パターン>
図2は、第1および第2の制御パターンについて説明するための図である。
図2の例では、同一方向(図中X軸方向)に進行可能な2つの車線L1、L2のうち、車線L1を速度VMで走行する車両Mが示されている。車線L1は、区画線LLおよびCLによって区画され、車線L2は、区画線CLおよびRLによって区画されている。区画線CLは、車線L1とL2との間で車線変更が可能な区画線である。
図3の例において、車線L1は、車両Mが走行する走行車線であり、車線L2は、走行車線に隣接する隣接車線である。また、以降の説明において、時刻t*における車両Mの基準となる位置(例えば重心位置)をM(t*)と表し、速度をVM(t*)と表すものとする。また、以下の説明において、時刻t1が最も早く、時刻t2、t3の順に遅くなっているものとする。また、時刻t1よりも前の時刻において、車線維持制御部132により、車両Mが車線L1を走行する車線維持制御が実行されているものとする。
【0057】
時刻t1は、例えば、車両Mの運転者のウインカスイッチ操作により、車線変更要求が受け付けられた時刻であり、車線L1から車線L2への車線変更に関する制御(例えば、第1制御、第2制御)のうち、第1制御を実行する時刻である。また、時刻t2は、仮に第1制御により車線変更実行条件を満たすと判定された場合に、車両Mの挙動変化を含む第2制御が開始される時刻である。時刻t3は、仮に時刻t2で第2制御が実行された場合に、車両Mの車線L2への車線変更が終了する時刻である。
【0058】
ここで、第1の制御パターンは、車線変更に関する制御が実行される前の車線維持制御(以下、LKAS制御)の実行中に着信イベントがあった場面での制御である。第1の制御パターンにおいて、運転制御部130は、時刻t1で運転者から車線変更要求を受け付けた場合であっても車線変更に関する制御は実行されず(受け付けられず)、LKAS制御が継続される。また、HMI制御部140は、着信に対する運転者の通話開始操作を受け付けて通話を行うための制御を行う。これにより、運転者はHMI30等を介して相手と通話することができる。
【0059】
<第2の制御パターン>
第2の制御パターンは、時刻t1において、運転者からの車線変更要求を受け付けて車線変更の第1制御を実行している状況(第1制御の完了前であり、第2制御の開始前)に着信イベントがあった場面での制御である。第2の制御パターンにおいて、車線変更制御部134は、車線変更の第2制御が実行されていないため、車線変更を抑制する(
図2の例では中止する)。なお、車線変更の抑制には、車線変更を中止することの他、車線変更制御をすぐに再開できるように制御を待機させておくことや、車線変更は行わないが走行車線上の車両Mの横位置を移動させる(例えば、車線中央に戻す)ための操舵制御を行うことが含まれてよい。また、運転制御部130は、車線維持制御部132によりLKAS制御を復帰させ、時刻t3以降はLKAS制御が実行される。また、第2の制御パターンでは、車線変更が抑制されるため、HMI制御部140は、着信に対する運転者の通話開始操作を受け付けて通話を行うための制御を行う。
【0060】
<第3の制御パターン>
図3は、第3および第4の制御パターンについて説明するための図である。
図3は、
図2と同様の時刻t1、t2、t3における車線変更に関する制御の様子を示している。第3の制御パターンは、車線変更の第1制御において、車線変更実行条件を満たし、第2制御において、車線変更における車両Mの操舵制御が実行されている状態(車線変更完了前の状態)に着信イベントがあった場面での制御である。第3の制御パターンにおいて、車線変更制御部134は、着信イベントがあったときの第2制御の進捗度合に基づいて、車線L2への車線変更を実行するか(第2制御を継続するか)否かを判定する。例えば、車線変更制御部134は、着信イベントが発生したときの車線変更の進捗度合が閾値未満である場合に、車両Mの車線変更を抑制する。進捗度合は、例えば、車両Mの挙動の変化量等に基づいて設定される。
【0061】
図4は、車線変更の進捗度合について説明するための図である。
図4の例では、第2制御により車両Mの操舵制御が実行されている状態を示している。車線変更の進捗度合は、例えば、車両Mに対する車線変更のための操舵制御の度合に基づいて設定される。この場合、進捗度合は、操舵制御に基づく車両Mの基準位置(例えば、重心G)の車線L1の中央C1からの道路幅方向(横方向)の乖離量(横移動量)D1に応じて設定されてよい。また、進捗度合は、車両Mのヨーレートθ1(車線L1の延伸方向に対する車両Mの正面方向の角度(乖離角度)に応じて設定されてもよく、その両方に基づいて設定されてもよい。更に、車両Mの少なくとも一部が車線L2上に存在する場合に、進捗度合が閾値以上であると判定してもよい。
【0062】
図3に戻り、進捗度合が閾値以上である場合、車線変更制御部134は、車線変更の第2制御を継続して実行する。HMI制御部140は、着信があっても通話を可能にする制御を行わない(仮に着信中に通話を開始するスイッチを押した場合で会っても通話できない)。そして、時刻t3において、車線変更が完了後、車線維持制御部132により車両Mが車線L2内を走行するようにLKAS制御が実行される。
【0063】
また、第3の制御パターンにおいて、進捗度合が閾値未満である場合、車線変更制御部134は、第2の制御パターンと同様に車線変更を抑制する。この場合、運転制御部130は、車線維持制御部132によりLKAS制御を復帰させる。また、この場合には、HMI制御部140は、着信に対する運転者の通話開始操作を受け付けて通話を行うための制御を行う。
【0064】
<第4の制御パターン>
第4の制御パターンは、時刻t3より後に着信があった場面での制御である。第4の制御パターンにおいて、車線L2への車線変更が完了しているため、HMI制御部140は、着信に対する運転者の通話開始操作を受け付けて通話を行うための制御を行う。
【0065】
[乗員(運転者)に通知される内容]
次に、上述した制御パターンにおける制御中に乗員(以下では、乗員の一例として運転者であるものとする)に通知される内容について具体的に説明する。なお、以下に示す画像例は、HMI制御部140により生成され、表示部34に表示される。また、HMI制御部140は、表示部34に表示される内容に対応した音声を生成してスピーカ36に出力させてもよい。
【0066】
図5は、第2の制御パターンの実行時に運転者に通知される内容について説明するための図である。
図5の例では、表示部34が1つである場合に表示される画像を示している。また、
図5の例では、時刻の経過に伴い画像IM10Aから、画像IM10B、画像IM10C、画像IM10D、および画像IM10Eに順番に遷移する様子を示している。以下では、
図5に示す画像IM10A~IM10Eのそれぞれを区別して説明する場合を除き、単に「画像IM10」と称してまとめて説明する。また、画像IM10に含まれる内容や色、模様、種類、レイアウト等の表示態様については、
図5の例に限定されない。後述する他の画像例(および画像遷移例)についても同様とする。
【0067】
画像IM10には、例えば、運転制御情報表示領域AR10と、通知情報表示領域AR11とが含まれる。運転制御情報表示領域AR10には、車両Mが実行中または実行可能な運転制御に関する情報が表示される。運転制御に関する情報には、例えば、ACC実行時における先行車両との車間距離の設定情報や、車両Mの設定車速の設定情報、LKAS制御や車線変更制御の実行状況に関する情報が含まれる。例えば、運転制御情報表示領域AR10には、運転制御の種類に応じたマークや記号等が表示され、実行中であるか否かに応じて色や模様、点灯/点滅等により表示態様を変化させることで、車両Mの運転制御の状態をより明確に運転者に通知することができる。
【0068】
画像IM10Aの通知情報表示領域AR11には、車両Mの現在の状況をより具体的に乗員に通知する内容が示されている。例えば、通知情報表示領域AR11には、走行車線を含む道路を模した画像上に、車両Mを模した画像IM11と周辺に存在する他車両を模した画像IM12とが、それぞれの位置情報(車両Mの道路上の位置および車両Mを基準とした他車両の相対位置)に対応付けられた位置に表示されている。また、通知情報表示領域AR11には、車両Mの将来の軌道を示す画像IM13や、先行車両との車間距離を示す画像、実行中の制御に関する文字情報を示す画像が表示されてもよい。
図5の例において、画像IM10Aの通知情報表示領域AR11には、ナビゲーション装置50と連携して目的地に向かって車両Mの車両制御(ACC制御)が走行されていることを示す情報が表示されている。
【0069】
時刻t1において車線変更の第1制御が実行される場合には、画像IM10Bが表示される。画像IM10Bの通知情報表示領域AR11には、画像IM10Aとは異なる文字情報として「左車線を確認してください」といった運転者に車両Mの周辺監視を促す情報が表示される。また、通知情報表示領域AR11には、画像IM11~IM13に加えて、道路幅方向に沿って車両Mの進路変更方向を示す画像IM14が表示される。なお、画像IM10Bは、車線変更の動作を示す「第1画像」の一例である。第1画像は、画像IM10Bに表示される画像のうち通知情報表示領域AR11に表示される画像のみであってもよい。HMI制御部140は、画像IM10Bの表示に同期させて車線変更の第1制御が実行されることを示す音声をスピーカ36から出力させてよい。画像IM10Bや音声を通知することで、車両Mが車線変更に関する制御(特に第1制御)を実行中であることを、より明確に運転者に通知することができる。
【0070】
また、時刻t1から時刻t2までの間に車線変更実行条件を満たすと判定された場合に、HMI制御部140は、画像IM10Cに示すような画像を表示させる。この画像は、画像IM10Bと比較して、画像IM14が画像IM10Bで表示された場合よりも強調表示されている点で相違する。強調表示とは、例えば、運転者がより視認し易い色や眼立つ色で表示させること、点滅表示させること、明度や輝度を高くすること、文字を太字にすること、強調したいマークや記号の周囲を枠で囲むこと等の各種表示態様が含まれる。また、画像IM10Cの運転制御情報表示領域AR10は、画像IM10Bと比較して、車線維持制御を示すマークが強調表示されず、車線変更制御のマークが強調表示される。これにより、車両Mの操舵制御を含む車線変更の第2制御が実行されることを、より明確に運転者に通知することができる。
【0071】
ここで、第2の制御パターンでは、上述したように車線変更の第2制御を開始する時刻t2に到達する前に着信があったため、車線変更制御部134により車線変更を実行しないと判定され、車線変更が抑制される。この場合、HMI制御部140は、表示中の画像IM10Cから車線変更を抑制したことを示す画像IM10Dに切り替えて表示部34に表示させる。画像IM10Dは、「第2画像」の一例である。
図5に示す画像IM10Dの通知情報表示領域AR11には、車両Mの動作を示す第1画像ではなく、車線変更を中止したことを示すマークや文字情報を示す画像が表示されている。また、HMI制御部140は、画像IM10Dが表示されるタイミングに同期させて車線変更を中止したことを示す音声をスピーカ36に出力させてもよい。これにより、車線変更が中止されたことを明確に運転者に通知することができる。なお、画像IM10Dでは、
図5の運転制御情報表示領域AR10に表示される情報が含まれていなくてもよい。
【0072】
また、HMI制御部140は、例えば、画像IM10Dを所定時間表示させた後、着信を知らせる画像IM10Eを表示部34に表示させる。なお、所定時間は、画像IM10Dに表示された内容を運転者に確認させるための時間である。所定時間は、固定時間でもよく、車両Mの速度や道路形状、車線変更の進捗度合に基づいて可変に設定されてよい。画像IM10Eは、「第3画像」の一例である。
【0073】
画像IM10Eには、例えば着信した相手先の情報を示す画像が表示される。画像IM10Eに表示される情報は、例えば、アドレス情報152から取得してもよく、ペアリング通信中の端末装置TDから取得してもよい。また、通知情報表示領域AR11には、運転者の操作により通話を開始したり、終了させるための操作を受け付けるGUI(Graphical User Interface)スイッチが表示されてもよい。なお、画像IM10Eでは、
図5の運転制御情報表示領域AR10に表示される情報が含まれていなくてもよい。
【0074】
上述したように、車線変更制御の状況に応じて画像IM10A~IM10Eを遷移させて表示させることで、車両Mの状況をより明確に運転者に通知することができる。
【0075】
ここで、表示部34が複数存在する場合には、複数の表示部34のそれぞれに対応した画面遷移を行ってもよい。
図6は、第2の制御パターンの実行時に複数の表示部を用いて運転者に通知される内容について説明するための図である。
図6の例では、表示部34に含まれる第1表示部(メイン表示部)に表示される画像IM20A~IM20Eと、第2表示部(サブ表示部)に表示される画像IM30A~IM30Eとが示されている。画像IM20A~IM20Eと、画像IM30A~IM30Eとは、それぞれが遷移するタイミングが同期しているものとする。第1表示部は、例えばメーター表示部であり、第2表示部は、例えば第1表示部よりも表示領域が制限される表示部(例えば、HUD)であるものとする。画像IM20A~IM20Eには、運転制御情報表示領域AR10と通知情報表示領域AR11とが含まれ、画像IM30A~IM30Eには、運転制御情報表示領域AR10#と通知情報表示領域AR11#とが含まれる。以下では、主に
図5に示す画像IM10A~IM10Eの遷移との相違点を中心として説明する。
【0076】
時刻t1よりも前の時刻において、画像IM20Aには、画像IM10Aと同様の内容が表示される。画像IM30Aの運転制御情報表示領域AR10#には、画像IM10Aの運転制御情報表示領域AR10に表示される情報の一部が省略されて表示され、通知情報表示領域AR11#には、画像IM10Aの通知情報表示領域AR11に表示される情報が簡略化されて表示される。通知情報表示領域AR11には、認識部110により認識された車両Mの走行車線に対応する道路標識に関する情報(例えば、制限速度に関する情報)や車両Mの速度VMに関する情報が表示されてよい。
【0077】
時刻t1において、画像IM20B~IM20Cには、画像IM10B~IM10Cと同様の内容が表示される。一方、画像IM30B~IM30Cの通知情報表示領域AR11#には、画像IM30Aの通知情報表示領域AR11#にて表示された内容に加えて、車線変更を行うまでの残距離を示す画像IM15や進路変更方向を示す画像IM16が表示される。また、画像IM30Cでは、画像IM30Bと比較して、進路変更方向を示す画像IM16の少なくとも一部が強調表示される。また、画像IM30Cの運転制御情報表示領域AR10#では、画像IM30Bの運転制御情報表示領域AR10#と比較して車線維持制御を示すマークが強調表示されず、車線変更制御のマークが強調表示される。
【0078】
ここで、第2の制御パターンでは、車線変更の第2制御を開始する時刻t2に到達する前に着信があったため、車線変更制御部134により車線変更を実行しないと判定され、車線変更が抑制される。この場合、HMI制御部140は、第1表示部に表示中の画像(第1画像)IM20Cから車線変更を抑制したことを示す画像(第2画像)IM20Dに切り替えて表示させる。更に、HMI制御部140は、第2表示部に表示中の画像(第1画像)IM30Cから通話を知らせる画像を含む画像(第3画像)IM30Dに切り替えて表示させる。
【0079】
図6に示す画像IM20Dには、画像IM10Dと同様の内容が表示される。また、画像IM30Dの運転制御情報表示領域AR10#には、いままで運転制御情報表示領域AR10#に表示されていた情報に代えて、着信を知らせる情報が表示される。着信を知らせる情報には、例えば、相手先の電話番号や着信中であることを示す情報が含まれる。更に、運転制御情報表示領域AR10#には、通話を開始したり、終了させるための運転者による操作を受け付けるGUIスイッチが表示されてもよい。
【0080】
また、HMI制御部140は、画像IM20DおよびIM30Dを所定時間表示させた後、画像IM20Eを第1表示部に表示させ、画像IM30Eを第2表示部に表示させる。画像IM20Eは、画像IM20Aと同様の内容である。また、画像IM30Eは、画像IM30Dと同様の内容である。
図6に示すように、複数の表示部を有する場合に、それぞれの表示部の位置や表示領域等に応じて、より適切な情報を運転者に通知することができる。なお、HMI制御部140は、複数の表示部に所定の情報を表示させる場合であっても、車線変更に関する制御の開始や中止、着信時、表示する画像を切り替えるタイミングで、それぞれを識別する音をスピーカ36から出力させてよい。
【0081】
図7は、第3の制御パターンの実行時に運転者に通知される内容について説明するための図である。
図7の例では、
図5の例と同様に表示部34が1つである場合に表示される画像IM40A~IM40Eを示している。画像IM40A~IM40Eと、上述した画像IM10A~画像IM10Eとを比較すると、画像IM10Dと画像IM40Dが相違する。画像IM10Eと画像IM40Eは、表示される内容は同じであるが、表示されるタイミングが相違する。したがって、以下では、上記相違点を中心として説明する。
【0082】
第3の制御パターンにおいて、車線変更制御部134は、車線変更の第2制御の実行中に着信があった場合でも進捗度合が閾値以上の場合は車線変更を抑制せずに、車線変更制御を継続して実行する。したがって、HMI制御部140は、第2制御の実行時(時刻t2)において、画像IM40Dの通知情報表示領域AR11に示すように、走行車線から隣接車線に車両Mの進路変更に対応する軌道に変化させた画像IM13#を表示させる。更に、HMI制御部140は、道路幅方向に沿って車両Mの進路変更方向を示す画像IM14については、時間経過に伴って進路変更方向に流れるような模様または色彩を含む動画像IM14#を表示させる。これにより、車両Mが車線変更による第2制御(操舵制御)を実行していることを、より正確に運転者に通知することができる。
【0083】
また、HMI制御部140は、第2の制御パターンでは、車線変更を抑制(中止)することを示す画像IM10Dを所定時間表示させた後に、画像IM10Eを表示させたが、第3の制御パターンでは、画像IM40Dを表示させた後(第2制御の終了前)に着信があったタイミングで画像(第3画像)IM40E表示させる。なお、画像IM40Eの運転制御情報表示領域AR10には、車線変更を示す表示が強調表示され続けている。これにより、車線変更が継続された状態であること、および着信があったことを運転者に把握させ易くすることができる。
【0084】
図8は、第3の制御パターンの実行時に複数の表示部を用いて運転者に通知される内容について説明するための図である。表示部34に含まれる第1表示部(メイン表示部)に表示される画像IM50A~IM50Eと、第2表示部(サブ表示部)に表示される画像IM60A~IM60Eとが示されている。画像IM50A~IM50Eと、画像IM60A~IM60Eとは、それぞれが同期して遷移するものとする。画像IM50A~IM50Eと画像IM20A~IM20Eとを比較すると、画像IM20Dと画像IM50Dが相違し、画像IM60A~IM60Eと画像IM30A~30Eとを比較すると、画像IM30Dと画像IM60Dが相違する。したがって、以下では、上記相違点を中心として説明する。
【0085】
第3の制御パターンでは、時刻t2において車線変更の第2処理が実行されるため、第1制御で表示されていた画像(車両Mの動作を示す第1画像)は画像IM50Dにおいても継続して表示させる。この画像は、画像IM50Eのタイミングでも継続される。また、画像IM60Dでは、着信前の状態であるため、通知情報表示領域AR11#に第1制御で表示されていた画像が継続して表示される。そして、着信があったタイミングで画像IM60Eの運転制御情報表示領域AR10#に着信を知らせる情報を示す第3画像が表示される。なお、HMI制御部140は、第3の制御パターンにおいても車線変更に関する制御の開始や中止、着信時、表示する画像を切り替えるタイミングで、それぞれを識別する音をスピーカ36から出力させてよい。このように第3の制御パターンにおいても、複数の表示部を用いて適切な情報を表示させることができ、より適切な情報を運転者に通知することができる。なお、第3の制御パターンにおいて、車線変更の進捗度合が閾値以上である場合、HMI制御部140は、電話をかけてきた端末装置TDに対して、運転S中の車両Mが車線変更中であるため、すぐに電話に応答することができないことを示す情報を送信してもよい。これにより、相手先に運転者の状況を把握させることができる。
【0086】
なお、第1の制御パターンの場合には、画像IM10A(第1、第2表示部を有する場合は画像IM20A、IM30A)が表示された状態から着信時に画像IM10E(第1、第2表示部を有する場合は画像IM20E、IM30E)に切り替えて表示される。また、通話が終了後は、再び画像IM10A(第1、第2表示部を有する場合は画像IM20A、IM30A)が表示される。また、第4の制御パターンの場合には、時刻t1より前から時刻t3までは、車両Mの動作(LKAS制御、ALC制御)を示す画像が表示され、時刻t3以降の着信時には画像IM10E(第1、第2表示部を有する場合は画像IM20E、IM30E)に切り替えて表示され、通話が終了後は、再び画像IM10A(第1、第2表示部を有する場合は画像IM20A、IM30A)が表示される。これにより、それぞれの制御パターンに応じて、より適切な情報を適切な態様で運転者に通知することができる。
【0087】
なお、自動運転制御装置100は、車線変更以外の運転制御(例えば、LKAS制御やACC制御)が実行中の場合には、着信があったタイミングで通話制御を行ってよい。この場合、HMI制御部140は、通話中は、車両Mの運転制御による車線変更が実行できなくなることを運転者に通知してもよい。
【0088】
[変形例]
実施形態において、車線変更制御部134は、車線変更判定部124により車線変更を行う必要があるか否かを判定する要否判定条件に応じて、車線変更制御の内容を異ならせてもよい。例えば、上述した実施形態では、運転者による車線変更要求を受け付けた場合の車線変更制御について説明したが、車両Mの位置や走行中の道路形状等に基づき、車両Mを目的地への経路に誘導する車線変更を行う場合、車線変更制御部134は、第2制御の実行前の着信があったときの車線変更の進捗度合が閾値未満であっても、車線変更を抑制せずに車線L2への車線変更が完了するまで実行する。この場合には、第2の制御パターンではなく、第3の制御パターンとほぼ同様の車両制御が行われる。これにより、車両Mが目的地に到達できない状況や遠回りになることを抑制することができる。したがって、車線変更の要否判定条件に応じて、より適切な車両制御を行うことができる。
【0089】
また、実施形態において、HMI制御部140は、重要度が高い相手(重要度が閾値以上の相手)からの着信があった場合に、第2制御が実行中であっても(車線変更の進捗度合に関係なく)通話できるような制御(通話制御)を行ってもよい。重要度とは、例えば、緊急性の度合を示す指標値であってもよい。例えば、HMI制御部140は、アドレス情報152に含まれる優先度が閾値以上である場合や予め緊急度が高く設定された電話番号からの着信があった場合に通話制御を行う(通話を抑制しない)。また、HMI制御部140は、着信時の呼び出し時間や所定時間における同じ番号(相手)からの呼び出し回数が所定値以上である場合に、重要度が閾値以上と判断して通話制御を行ってもよい。なお、HMI制御部140は、重要度が閾値以上である場合での通話制御においては、運転者が通話を開始するスイッチ操作を行わなくても通話できる状態(通信相手の音声をスピーカ36から出力させ、マイク32から取得した運転者の音声を通信相手に送信する状態)にしてもよい。これにより、通話相手の重要度に応じてより適切な通話制御を行うことができる。
【0090】
また、上述の実施形態では、車線変更制御時に着信があった場合について説明したが、車線変更制御時に運転者が外部との通話のために発信する場合(相手を呼び出す場合)にも、発信(発信イベント)があったときの車線変更の進捗度合に応じて車線変更を実行するか否かを判定してもよい。例えば、車線変更制御部134は、発信イベントがあったときの車線変更の進捗度合が閾値未満である場合に、車両Mの車線変更を抑制する。なお、この場合の閾値は、着信イベント時の閾値と異ならせてもよい。これにより、発信時と着信時のそれぞれにおける車両Mの状態に応じてより適切な車両制御を行うことができる。
【0091】
また、実施形態において、車線変更制御部134は、第2制御を開始するまでに予め設定された優先度の高い機能が介入された場合は車線変更を実行しないように制御してもよい。また、HMI制御部140は、第2制御を開始した後は、乗員の操作による表示内容の切り替えや他の通知の割込みを許可してもよい(この場合も車線変更制御は継続される)。
【0092】
[処理フロー]
以下、実施形態の自動運転制御装置100により実行される処理について説明する。以下では、自動運転制御装置100により実行される処理のうち、主に車線変更と着信制御を含む処理を中心として説明する。以下に示す処理は、所定タイミングまたは所定周期で繰り返し実行されてよい。また、車線変更の実行前において、車両Mは、車線維持制御部132によりLKAS制御が実行されているものとする。また、以下の処理では、表示部34が一つの場合の処理について説明する。
【0093】
図9は、実施形態の自動運転制御装置100により実行される処理の一例を示すフローチャートである。
図9の例において、認識部110は、車両Mの周辺状況を認識する(ステップS100)。次に、車線変更判定部124は、周辺状況や乗員の操作内容等に基づいて車線変更を実行する必要があるか否かを判定する(ステップS102)。車線変更を実行する必要があると判定された場合、車線変更制御部134は、車線変更の第1制御を実行する。次に、HMI制御部140は、車両Mの動作を示す第1画像を表示部34に表示させる(ステップS106)。なお、第1画像は、
図9の処理が開始される前に表示されていてもよい。
【0094】
次に、着信判定部122は、第1制御の実行中に、着信があるか否かを判定する(ステップS108)。着信があると判定された場合、車線変更制御部134は、隣接車線への車線変更を抑制する(ステップS110)。次に、HMI制御部140は、表示中の第1画像から車線変更を抑制したことを示す第2画像に切り替えて表示部34に表示させる(ステップS112)。次に、HMI制御部140は、第2画像を表示させてから所定時間経過後に、第2画像から着信を知らせる第3画像に切り替えて表示部34に表示させる(ステップS114)。
【0095】
また、ステップS108の処理において、第1制御の実行中に着信がないと判定した場合、第1制御の終了後(車線変更実行条件を満たした後)に、車線変更制御部134は、車線変更の第2処理を実行する(ステップS116)。次に、着信判定部122は、第2制御の実行中に着信があるか否かを判定する(ステップS118)。着信があると判定した場合、車線変更制御部134は、車線変更の進捗度合が閾値未満か否かを判定する(ステップS120)。進捗度合が閾値未満である場合、自動運転制御装置100は、ステップS110~S114の処理を行う。また、進捗度合が閾値未満でない(閾値以上である)と判定した場合、HMI制御部140は、表示部34に表示中の第1画像を第3画像に切り替えて表示させる(ステップS122)。これにより、本フローチャートの処理は終了する。また、ステップS102の処理において、車線変更を実行する必要がないと判定された場合、本フローチャートは終了する。この場合、車両Mの動作(車線維持制御動作)を示す第1画像は表示され続けてよい。また、ステップS118の処理において、着信がないと判定された場合、本フローチャートの処理は終了する。
【0096】
以上の通り説明した実施形態によれば、自動運転制御装置(車両制御装置の一例)100において、車両Mの周辺状況を認識する認識部110と、周辺状況に基づいて車両Mの操舵または速度のうち一方または双方を制御する運転制御を実行する運転制御部130と、車両Mの乗員に対する着信の有無を判定する着信判定部122と、運転制御による車両Mの動作に関する情報と着信に関する情報とを、運転制御の状態に応じた態様で乗員に通知するHMI制御部(通知制御部の一例)140とを備え、運転制御部130は、車両Mの車線変更に関する制御の実行時に着信があった場合に、車線変更に関する制御の進捗度合に基づいて車両Mの走行車線から隣接車線への車線変更を実行するか否かを判定することにより、車両の車線変更時に乗員への着信があるような場合において、より適切な車両制御を行うことができる。
【0097】
具体的には、実施形態では、車線変更に関する操舵制御(第2制御)が開始されるまでの間に着信があった場合は車線変更を抑制すると共に、車線変更時に着信がある場合に車線変更表示に着信画面を割り込ませる制御を行う。更に実施形態では、操舵制御の前後で着信した場合や単一画面や複数画面に表示させる場合に応じて表示態様を変更する。これにより、乗員に車両の状態をより正確に通知することができ、車線変更に伴う適切な周辺監視(安全確認)を乗員に行わせることができる。
【0098】
また、実施形態によれば、運転制御の状態や着信のタイミングに応じて表示される画像を遷移させることで、表示される内容の連続性を担保しつつ、より適切な情報を乗員に通知することができる。
【0099】
上記説明した実施形態は、以下のように表現することができる。
コンピュータによって読み込み可能な命令(computer-readable instructions)を格納する記憶媒体(storage medium)と、
前記記憶媒体に接続されたプロセッサと、を備え、
前記プロセッサは、前記コンピュータによって読み込み可能な命令を実行することにより(the processor executing the computer-readable instructions to:)、
車両の周辺状況を認識し、
前記周辺状況に基づいて前記車両の操舵または速度のうち一方または双方を制御する運転制御を実行し、
前記車両の乗員に対する着信の有無を判定し、
前記運転制御による前記車両の動作に関する情報と前記着信に関する情報とを、前記運転制御の状態に応じた態様で前記乗員に通知し、
前記車両の車線変更に関する制御の実行時に前記着信があった場合に、前記制御の進捗度合に基づいて前記車両の走行車線から隣接車線への車線変更を実行するか否かを判定する、
車両制御装置。
【0100】
以上、本発明を実施するための形態について実施形態を用いて説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0101】
1…車両システム、10…カメラ、12…レーダ装置、14…LIDAR、16…物体認識装置、20…通信装置、30…HMI、32…マイク、34…表示部、36…スピーカ、38…スイッチ、40…車両センサ、50…ナビゲーション装置、80…運転操作子、100…自動運転制御装置、110…認識部、120…判定部、122…着信判定部、124…車線変更判定部、130…運転制御部、132…車線維持制御部、134…車線変更制御部、140…HMI制御部、150…記憶部、200…走行駆動力出力装置、210…ブレーキ装置、220…ステアリング装置、M…車両