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  • 特開-自動水栓及び流し台 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135312
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】自動水栓及び流し台
(51)【国際特許分類】
   E03C 1/05 20060101AFI20240927BHJP
   A47K 1/00 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
E03C1/05
A47K1/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023045937
(22)【出願日】2023-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 将尚
(72)【発明者】
【氏名】後藤 康浩
(72)【発明者】
【氏名】滝 宣広
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 稜也
(72)【発明者】
【氏名】永田 雅昭
【テーマコード(参考)】
2D060
【Fターム(参考)】
2D060BA05
2D060BC07
2D060CA05
2D060CA13
(57)【要約】
【課題】水面が被浸水物の高さを超えたら止水することが可能な自動水栓及び流し台を提供する。
【解決手段】水栓と、容器内の被浸水物までの物体距離及び水栓の吐水時における容器の水面までの水面距離を各々測定する測距部と、物体距離を記憶する記憶部と、水栓の吐水時における測距部の測距値と物体距離とに基づいて水面が被浸水物の高さを超えたか否かを判定する判定部と、水栓の吐水を制御するとともに、判定部が水面が被浸水物の高さを超えたと判定すると水栓を止水させる制御部とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水栓と、
容器内の被浸水物までの物体距離及び前記水栓の吐水時における前記容器の水面までの水面距離を各々測定する測距部と、
前記物体距離を記憶する記憶部と、
前記水栓の吐水時における前記測距部の測距値と前記物体距離とに基づいて前記水面が前記被浸水物の高さを超えたか否かを判定する判定部と、
前記水栓の吐水を制御するとともに、前記判定部が前記水面が前記被浸水物の高さを超えたと判定すると前記水栓を止水させる制御部と
を備える自動水栓。
【請求項2】
前記測距部は、前記物体距離の測定を前記水栓の吐水前に行う請求項1に記載の自動水栓。
【請求項3】
前記測距部に前記物体距離の測定開始を指示する操作部を備える請求項1又は2に記載の自動水栓。
【請求項4】
前記被浸水物における測定部位を表示する表示部を備える請求項1又は2に記載の自動水栓。
【請求項5】
前記水栓の止水を報知する報知部を備える請求項1又は2に記載の自動水栓。
【請求項6】
前記測距部は、前記被浸水物に照射した測定光の反射光に基づいて前記物体距離を測定するものであり、
前記判定部は、前記反射光の光量が所定のしきい値以下になると、前記水面が前記被浸水物の高さを超えたと判定する請求項1又は2に記載の自動水栓。
【請求項7】
前記物体距離の測定時における前記光量が前記しきい値以下の場合にアラームを報知する第2の報知部を備える請求項4に記載の自動水栓。
【請求項8】
前記測距部は、空中の光速と水中の光速との差異を加味して前記水面距離を測定する請求項1又は2に記載の自動水栓。
【請求項9】
前記物体距離に対する前記測距値の超過指定値を設定する超過量設定部と、
前記超過指定値を記憶する第2記憶部とをさらに備え、
前記制御部は、前記測距値が前記物体距離と前記超過指定値との合算値になると前記水栓を止水させる請求項1又は2に記載の自動水栓。
【請求項10】
請求項1又は2に記載の自動水栓を備える流し台。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、自動水栓及び流し台に関する。
【背景技術】
【0002】
水位検知手段でボウルの水位を検知し、所定水位に達したら開閉弁を閉じて給水を停止する洗面装置が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-077653号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、予め設定した所定水位で止水するため、ユーザーの使用場面に応じて自動で止水位置を変えることができない。
【0005】
本開示は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、水面が被浸水物の高さを超えたら止水することが可能な自動水栓及び流し台の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、水栓と、容器内の被浸水物までの物体距離及び前記水栓の吐水時における前記容器の水面までの水面距離を各々測定する測距部と、前記物体距離を記憶する記憶部と、前記水栓の吐水時における前記測距部の測距値と前記物体距離とに基づいて前記水面が前記被浸水物の高さを超えたか否かを判定する判定部と、前記水栓の吐水を制御するとともに、前記判定部が前記水面が前記被浸水物の高さを超えたと判定すると前記水栓を止水させる制御部とを備える自動水栓である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本開示の一実施形態に係る自動水栓の機能的な構成を示すブロック図である。
図2】本開示の一実施形態に係る流し台の概略構成図である。
図3】本開示の一実施形態に係る自動水栓の動作を示すフローチャートである。
図4】本開示の一実施形態における止水タイミングを示す特性図である。
図5】本開示の一実施形態の変形例における止水タイミングを示す特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本実施形態に係る自動水栓は、図1に示すように水栓1及び制御装置2を備える。水栓1は、図示するように本体部1a、測距部1b及びLED1c(表示部)を備えている。制御装置2は、図示するように記憶部2a、判定部2b、操作部2c、制御部2d、報知部2eを備えている。
【0009】
水栓1は、所定の排水管を介して供給源に接続される金属製の部材である。水栓1は、図2に示すようにキッチン等の流し台3(シンク)に備えられ、電磁弁が制御装置2によって制御されることにより供給源から給水される湯水の吐水又は止水を行う。より正確には、水栓1は、図1に示すように制御装置2における制御部2dによって直接制御される。
【0010】
本体部1aは、水栓1の主要部であり、湯水を吐水する先端部が下方を向いた姿勢で下端が流し台3における縁の上面3aに支持されている。本体部1aは、流し台3の底部3bに載置されるとともに被浸水物Xが収容された容器Yに対して湯水を注ぎ入れる。
【0011】
測距部1bは、本体部1aの先端部に付設されている。測距部1bは、水栓本体1aの先端部に対峙する測距対象物までの距離を測定する。本実施形態における測距対象物は、容器Yに収容された被浸水物Xや水栓1によって容器Yに注ぎ入れられた湯水の水面等である。
【0012】
測距部1bは、水栓1の吐水前における容器Y内の被浸水物Xまでの距離及び水栓1の吐水時における容器Yの水面までの距離を測距値Lとして各々測定する。測距部1bは、吐水前における被浸水物Xまでの測距値Lを物体距離Lbとして制御装置2に出力し、吐水時における水面までの測距値Lを水面距離Lsとして制御装置2に出力する。
【0013】
測距部1bは、例えばTOF(Time Of Flight)方式に基づいて本体部1aの先端部から測距対象物までの距離を測定する光学式のTOFセンサである。測距部1bは、測距対象物に向けて測定光を照射し、測定光の測距対象物における反射光に基づいて測距値Lを取得する。測距部1bには、TOFセンサ以外に距離の取得が可能な光学式、電磁波式、超音波式のセンサ等を用いてもよい。
【0014】
例えば、測距部1bは、容器Y内の被浸水物Xに向けて測定光を照射し、測定光が被浸水物Xで反射して発生する反射光を受光し、測定光の照射タイミングに対する反射光の受光タイミングの遅延時間に基づいて物体距離Lbを取得する。測距部1bは、容器Yの水面に向けて測定光を照射し、測定光が容器Yの水面で反射して発生する反射光を受光し、測定光の照射タイミングに対する反射光の受光タイミングの遅延時間に基づいて水面距離Lsを取得する。
【0015】
LED1cは、本体部1aの先端部に設けられており、測距対象物における測定部位を表示する表示部である。測距部1bの測距対象物が被浸水物Xである場合、LED1cは、被浸水物Xにおける特定部位をスポット的に照明することにより、特定部位(照明部位)を測定部位として利用者に表示する。
【0016】
制御装置2は、水栓1と電気的に接続されており、水栓1から入力される測距部1bの物体距離Lb及び水面距離Ls等の測距値Lを用いることにより、水栓1における湯水の吐水及び止水を包括的に制御する。制御装置2は、物体距離Lb及び水面距離Ls等の測距値Lに基づいて制御信号を生成し、制御信号を水栓1に出力することにより水栓1を自動制御する。
【0017】
記憶部2aは、物体距離Lb及び水面距離Ls等の測距値Lを一時的に保存するデータ保存装置である。記憶部2aは、判定部2b及び制御部2dから入力される読出要求に基づいて、物体距離Lb及び水面距離Ls等の測距値Lを判定部2b及び制御部2dに出力する。
【0018】
判定部2bは、水栓1の吐水時における測距値Lと事前に取得された物体距離Lbとを比較することにより容器Yの水面が被浸水物Xの高さに至ったか否かを判定する。判定部2bは、例えば測距部1bにおける測距値Lが物体距離Lbよりも小さくなると、容器Yの水面が容器Y内の被浸水物Xの高さを超えたと判定する。
【0019】
操作部2cは、自動水栓の利用者の操作指示を受け付けることにより、操作信号を生成する。操作部2cは、操作信号を制御部2dに出力することにより水栓1を操作する。例えば、操作部2cは、利用者から物体距離Lbの測定開始指示を受け付けると、測距部1bに物体距離Lbの測定開始を指示する操作信号を生成して制御部2dに出力する。操作部2cは、例えばスイッチ、音声信号、ジェスチャー操作、他のデバイスからの信号である。
【0020】
制御部2dは、判定部2bの判定結果及び操作部2cの操作指示に基づいて水栓1を直接制御する。詳細には、制御部2dは、判定部2bの判定結果及び操作部2cの操作指示に基づいて制御信号を生成し、制御信号を水栓1に出力することによって本体部1a、測距部1b及びLED1cを制御する。例えば、制御部2dは、判定部2bが容器Yの水面が被浸水物Xの高さを超えたと判定すると、吐水状態にある本体部1a(水栓1)を止水させる。
【0021】
報知部2eは、容器Yの水面が被浸水物Xの高さを超えた場合つまり測距部1bの物体距離Lbの測定時における反射光の光量がしきい値を超えた場合にアラームを鳴らす。報知部2eは、光量がしきい値を超えた場合のアラームに加えて、容器Yの水面が被浸水物Xの高さを超えた場合における水栓1(本体部1a)の止水を周囲に報知する。報知部2eは、例えばブザー、音声メロディ、LEDの発光、外部デバイスへの通知等である。
【0022】
次に、本実施形態に係る自動水栓の動作について、図3のフローチャートに沿って詳しく説明する。
【0023】
利用者が物体距離Lbの測定開始指示を操作部2cに入力すると、図3の動作が開始する。利用者は、測定開始指示の入力に先立って、被浸水物Xを収容した容器Yを水栓1の下方におけるキッチン用流し台(シンク)上に載置する。利用者は、容器Yのキッチン用流し台(シンク)上への載置が完了した状態で測定開始指示を操作部2cに入力する。
【0024】
制御部2dは、操作部2cから測定開始指示の操作信号が入力されると、最初にLED1cを点灯させる制御信号を生成して水栓1に出力する。LED1cは、制御部2dから入力される制御信号に基づいて点灯する(ステップS1)。LED1cの点灯によって、容器Y内の被浸水物Xの特定部位にスポット状の照明光が照射される。照明光は、照明部位(被浸水物Xの特定部位)が測距部1bの測定部位であることを示すものである。
【0025】
例えば、利用者が自動水栓を用いることにより被浸水物Xが完全に水没する程に容器Y内に水を注水することを意図としている場合において、照明光の照明部位が被浸水物Xにおける最も高い部位(最高部)でなかった場合、利用者は、照明光の照明部位が被浸水物Xの最高部に一致するように容器Yの位置を調整する。
【0026】
利用者は、容器Yの位置調整が完了すると、操作部2cに物体距離Lbの測定開始を指示する。制御部2dは、操作部2cから物体距離Lbの測定開始指示(操作信号)が入力されるか否かを判断し(ステップS2)、ステップS2の判断が「Yes」になると物体距離Lbを取得させる制御信号を測距部1bに出力することにより物体距離Lbを取得させる(ステップS3)。測距部1bは、自身が取得した物体距離Lbを記憶部2aに出力することにより記憶させる。
【0027】
制御部2dは、ステップS2の判断が「No」の場合には、ステップS2の判断が「Yes」になるまで待機する。物体距離Lbは、利用者が操作部2cに測定開始指示を入力してステップS2の判断が「Yes」になるまで取得されない。
【0028】
ステップS2の判断処理は、必ずしも必要なものではなく、必要に応じて省略することが可能である。ステップS2を省略することにより、利用者の測定開始指示により物体距離Lbの取得・記憶と吐水までを一気に行うことが可能となり、時間短縮と作業の削減を実現することが可能となる。例えば、被浸水物Xの高さが一定のときや水栓1を止水する高さがあいまいでもよい場合には、ステップS2を省略することが考えられる。ステップS2を省略する場合には、例えばLED1cを省略してステップS1、S4を省略してもよい。
【0029】
ステップS2の判断処理に代えて、ステップS2において一定時間の経過を判断することが考えられる。例えば、ステップS2において5秒が経過したか否かを判断することによって、利用者は、LED1cによる照明部位が被浸水物Xの最高部でなかった場合に、5秒以内に容器Yの位置調整を行うことが可能となる。
【0030】
制御部2dは、記憶部2aが物体距離Lbを記憶すると、LED1cを消灯させる制御信号を生成して水栓1に出力する。LED1cは、制御部2dから入力される制御信号に基づいて消灯する(ステップS4)。制御部2dは、水栓1(本体部1a)を吐水状態とする制御信号を生成して水栓1に出力することにより、水栓1(本体部1a)を吐水状態に設定する(ステップS5)。
【0031】
制御部2dは、水栓1(本体部1a)を吐水状態に設定すると、測距部1bを測定状態とする制御信号を生成して水栓1に出力する。測距部1bは、制御部2dから入力される測定状態の制御信号に基づいて、本体部1aの先端部と測距対象物までの測距値Lの取得を開始する(ステップS6)。
【0032】
水栓1(本体部1a)を吐水状態にした初期段階では、測距部1bの測距値Lは物体距離Lbと同一である。容器Yの水面は、水栓1(本体部1a)による吐水の継続によって時間の経過とともに徐々に高く(先端部から近く)なり、最終的には被浸水物Xの高さを超える。
【0033】
測距部1bの測距値Lは、容器Yの水面が被浸水物Xの高さを超えると、被浸水物Xの高さに代えて容器Yの水面までの距離となる。測距値Lは、図4に示すように、水面が被浸水物Xの高さを超えることによって、測距対象物が被浸水物Xの高さから容器Yの水面に切り替わる。
【0034】
図4に示すように、吐水開始時taにおける水面距離Lsは、物体距離Lbよりも大きいが、時間経過とともに物体距離Lbに近づき、最終的に時刻tbにおいて水面が被浸水物Xの高さを超える。測距部1bの測距値Lは、時刻tbにおける測距対象物の切り替わりによって、物体距離Lbよりも徐々に小さくなる。
【0035】
制御部2dは、測距部1bから所定のタイムインターバルで順次取得する測距値LがステップS3で記憶部2aに予め記憶した物体距離Lbよりも小さいか否かを判断する(ステップS7)。制御部2dは、ステップS7の判断が「Yes」になると、水栓1(本体部1a)を止水状態に設定する制御信号を生成して水栓1(本体部1a)に出力する。
【0036】
水栓1(本体部1a)は、止水状態の制御信号に基づいて止水状態に設定される(ステップS7)。制御信号に基づく水栓1(本体部1a)の止水タイミングは、図4の時刻tbから僅かに遅れた時刻となり、被浸水物Xの高さが僅かに水没した状態で水栓1(本体部1a)による容器Yへの給水が終了する。
【0037】
ステップS7の判断が「Yes」になる場合は、測距対象物が被浸水物Xの高さから容器Yの水面に切り替わった状態、つまり容器Yの水面が被浸水物Xの高さを超えた状態である。ステップS7の判断が「Yes」になる場合は、利用者が意図する状態、つまり被浸水物Xが完全に水没する程に容器Y内に水が注水された状態である。
【0038】
制御部2dは、ステップS7の判断が「No」の場合には、ステップS6における測距値Lの取得を繰り返す。ステップS7の判断が「No」の場合は、容器Yの水面が被浸水物Xの高さを超えていない状態であり、利用者が意図する状態を未だ満足していない状態である。
【0039】
制御部2dは、水栓1(本体部1a)を止水状態に設定すると、報知部2eを鳴動させる制御信号を生成して水栓1(本体部1a)に出力する。報知部2eは、制御部2dから入力される制御信号に基づいて鳴動することにより、水栓1(本体部1a)が止水状態に設定されたことを周囲に報知する(ステップS9)。
【0040】
本実施形態に係る自動水栓は、水栓1と、容器Y内の被浸水物Xまでの物体距離Lb及び水栓1の吐水時における容器Yの水面までの水面距離Lsを各々測定する測距部1bと、物体距離Lbを記憶する記憶部2aと、水栓1の吐水時における測距部1bの測距値Lと物体距離Lbとに基づいて容器Yの水面が被浸水物Xの高さを超えたか否かを判定する判定部2bと、水栓1の吐水を制御するとともに、判定部2bが容器Yの水面が被浸水物Xの高さを超えたと判定すると水栓1を止水させる制御部2dとを備える。
【0041】
本実施形態によれば、水栓1、測距部1b、記憶部2a、判定部2b及び制御部2dを備えるので、容器Yの水面が被浸水物Xの高さを超えたら止水することが可能な自動水栓を提供することが可能である。
【0042】
本実施形態によれば、被浸水物Xにおける測定部位を表示するLED1c(表示部)と、測距部1bに物体距離Lbの測定開始を指示する操作部2cとを備えるので、物体距離Lbの高さを的確に物体距離Lbとして測定することができる。本実施形態によれば、被浸水物Xをより確実に水に浸すことが可能である。
【0043】
本実施形態によれば、水栓1の止水を外部に報知する報知部2eを備えるので、被浸水物Xが水に浸って水栓1が自動的に止水したことを利用者に知らせることが可能である。本実施形態によれば、使い勝手の良い自動水栓及びキッチン用流し台を提供することができる。
【0044】
本開示には様々な変形例が考えられる。例えば測距部1bにおける反射光の光量は、被浸水物Xと水面とでは明確に異なる。被浸水物Xにおける反射光の光量は、水面における反射光の光量よりも大きい。被浸水物Xと水面とによる反射光の光量の差異を利用することにより、測距値Lが物体距離Lbよりも小さいことに加え、反射光の光量が所定のしきい値以下になると、容器Yの水面が被浸水物Xの高さを超えたと判定する判定部を採用することが考えられる。
【0045】
判定部が反射光の光量が所定のしきい値以下になったと判断した場合の対応として、水栓1(本体部1a)を止水状態に設定した後に報知部2eを鳴動させて水栓1(本体部1a)が止水状態に設定されたことを周囲に報知することが考えられる。
【0046】
水栓1(本体部1a)を止水状態に設定した後に報知部2eを鳴動させることに代えて、水栓1(本体部1a)を止水状態に設定する前段階、例えば反射光の光量がしきい値以下になったと判定した時点で報知部2e(第2の報知部)を鳴動させることにより、アラームを周囲に報知することが考えられる。
【0047】
測距部1bが空中の光速と水中の光速との差異を加味して水面距離Lsを測定することがさらなる変形例として考えられる。測距部1bにおける測定光及び反射光の伝搬速度は、媒質によって異なる。空中における伝搬速度(空中光速)は、水中における伝搬速度(水中光速)とは大きく異なる。
【0048】
容器Yの水面が被浸水物Xを若干超えた状態では、水面における反射光に加え、被浸水物Xにおける反射光が発生する。容器Yの水面が被浸水物Xを若干超えた状態における被浸水物Xの測定光は、水中を一時的に伝搬して被浸水物Xの表面で反射する。容器Yの水面が被浸水物Xを若干超えた状態における被浸水物Xの反射光は、水中を一時的に伝搬して測距部1bで受光される。
【0049】
TOFセンサは、測定光の照射タイミングと反射光の受光タイミングとの時間差(遅延時間)に基づいて測距対象物までの距離を測定するので、空中光速と水中光速の差異を考慮することにより、水面距離Lsをより正確に測定することができる。
【0050】
例えば、水面距離Ls、測距値L、物体距離Lb、空中の光速Sa及び水中の光速Sbとした場合、水面距離Lsは以下の補正式(1)によって与えられる。判定部2bは、補正式(1)に基づいて水面距離Lsを求めることにより、容器Yの水面が被浸水物Xを超えたか否かをより正確に判定することができる。
Ls = Lb -{{(L-Lb)/Lb}/{(Sa-Sb)/Sb}}・Lb (1)
【0051】
空中光速Saと水中光速Sbに代えて光の屈折率に基づいて水面距離Lsを求めてもよい。例えば、屈折率Nは真空中の光速Cを媒体中の光速(空中光速Sa又は水中光速Sb)で除算したものである。空中の屈折率Naは下式(2)によって表され、水中の屈折率Nbは下式(3)によって表される。この式(2)、(3)を用いて上記(1)を表現し直すと、下式(4)となる。
Na = C/Sa (2)
Nb = C/Sb (3)
Ls = Lb -{{(L-Lb)/Lb}/{(1/Na-1/Nb)/(1/Nb)}}・Lb (4)
【0052】
物体距離Lbに対する測距値Lの超過指定値Dを設定する操作部2c(超過量設定部)と、超過指定値Dを記憶する記憶部2a(第2記憶部)とをさらに備え、制御部2dは、測距値Lが物体距離Lbと超過指定値Dとの合算値になると水栓1を止水させることが考えられる。
【0053】
図5に示すように、測距値Lが物体距離Lbと超過指定値Dとの合算値になった時点で、吐水状態の水栓1が止水状態に設定される。判定部2bは、測距値Lが物体距離Lbと超過指定値Dとの合算値より小さくなった時点tcにおいて水栓1(本体部1a)による容器Yへの注水が停止する。
【符号の説明】
【0054】
X…被浸水物、Y…容器、1…水栓、1a…水栓本体、1b…測距部、1c…LED(表示部)、2…制御装置、2a…記憶部、2b…判定部、2c…操作部、2d…制御部、2e…報知部
図1
図2
図3
図4
図5