(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135313
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】測距装置及び自動水栓
(51)【国際特許分類】
G01F 23/292 20060101AFI20240927BHJP
E03C 1/042 20060101ALI20240927BHJP
E03C 1/05 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
G01F23/292 B
E03C1/042 B
E03C1/05
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023045938
(22)【出願日】2023-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 将尚
(72)【発明者】
【氏名】後藤 康浩
(72)【発明者】
【氏名】滝 宣広
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 稜也
(72)【発明者】
【氏名】永田 雅昭
【テーマコード(参考)】
2D060
2F014
【Fターム(参考)】
2D060BA05
2D060BC00
2D060BE01
2D060CA04
2D060CA05
2F014FA01
2F014GA01
(57)【要約】
【課題】水位等の液位をより正確に測定することが可能な測距装置及び自動水栓を提供する。
【解決手段】測定光を物体上の液面に照射して得られる反射光に基づいて液面距離を測定する測距装置であって、空気中における測定光及び反射光の空中伝搬速度と液体中における測定光及び反射光の液中伝搬速度とを用いて液面距離を測定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定光を物体上の液面に照射して得られる反射光に基づいて液面距離を測定する測距装置であって、
空気中における前記測定光及び前記反射光の空中伝搬速度と液体中における前記測定光及び前記反射光の液中伝搬速度とを用いて前記液面距離を測定する測距装置。
【請求項2】
測距値L、前記測定光及び前記反射光の空中伝搬速度Sa及び液中伝搬速度Sb並びに液面の背後の物体までの物体距離Lbに基づく補正式(1)に基づいて前記液面距離Lcを測定する請求項1に記載の測距装置。
Lc=Lb-{{(L-Lb)/Lb}/{(Sa-Sb)/Sb}}・Lb (1)
【請求項3】
水栓と、
前記水栓の吐水前における容器内の被浸水物までの物体距離及び前記水栓の吐水時における前記容器の水面までの水面距離を液位として各々測定する請求項1又は2に記載の測距装置と、
前記水栓の吐水時における前記測距装置の測距値と前記物体距離とに基づいて水栓の吐水を制御する制御装置と
を備える自動水栓。
【請求項4】
水栓と、
前記水栓の吐水前における容器内の被浸水物までの物体距離及び前記水栓の吐水時における前記容器の水面までの水面距離を液位として各々測定する請求項1又は2に記載の測距装置と、
前記物体距離を記憶する記憶部と、
前記水栓の吐水時における前記測距装置の測距値と前記物体距離とに基づいて前記水面が前記被浸水物の高さを超えたか否かを判定する判定部と、
前記水栓の吐水を制御するとともに、前記判定部が前記水面が前記被浸水物の高さを超えたと判定すると前記水栓を止水させる制御部と
を備える自動水栓。
【請求項5】
前記被浸水物における前記物体距離の測定部位を表示する表示部と、
前記測距装置に前記物体距離の測定開始を指示する操作部と
をさらに備える請求項4に記載の自動水栓。
【請求項6】
前記水栓の止水を報知する報知部を備える請求項4に記載の自動水栓。
【請求項7】
前記判定部は、前記反射光の光量が所定の基準値以下になると、前記水面が前記被浸水物の高さを超えたと判定する請求項4に記載の自動水栓。
【請求項8】
前記物体距離に対する前記測距値の超過指定値を設定する超過量設定部と、
前記超過指定値を記憶する第2記憶部とをさらに備え、
前記制御部は、前記測距値が前記物体距離と前記超過指定値との合算値に基づいて前記水栓を止水させる請求項4に記載の自動水栓。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、測距装置及び自動水栓に関する。
【背景技術】
【0002】
水位検知手段でボウルの水位を検知し、所定水位に達したら開閉弁を閉じて給水を停止する洗面装置が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
自動水栓を用いて容器内のたまご等(被浸水物)を水に浸そうとした場合、水栓から被浸水物までの距離を測定し、被浸水物が水に完全に浸った段階で水栓を止水する必要がある。容器の水面が被浸水物の高さを少し超えた状態では、水面における測距光の反射より被浸水物における反射の方が強いため、測距センサが近い水面ではなく遠い被浸水物までの距離を測定し続けることがある。このため水面がある程度上昇するまで正確な水位が取得できないという問題がある。
【0005】
本開示は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、水位等の液位をより正確に測定することが可能な測距装置及び自動水栓の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、測定光を物体上の液面に照射して得られる反射光に基づいて液面距離を測定する測距装置であって、空気中における前記測定光及び前記反射光の空中伝搬速度と液体中における前記測定光及び前記反射光の液中伝搬速度とを用いて前記液面距離を測定する測距装置である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の一実施形態に係る測距装置及び自動水栓の全体構成を示すブロック図である。
【
図2】本開示の一実施形態に係る自動水栓の設置状態を示す概略構成図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る測距装置及び自動水栓の測距状態を示す模式図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る自動水栓の動作を示すフローチャートである。
【
図5】本発明の一実施形態における水位変化を示す特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本実施形態に係る自動水栓は、
図1に示すように水栓1及び制御装置2を備えている。自動水栓は、制御装置2が水栓1を制御することにより、液体の一種である湯水を自動的に吐水又は止水する。
【0009】
水栓1は、図示するように本体部1a、測距部1b及びLED1c(表示部)を備えている。制御装置2は、図示するように記憶部2a、判定部2b、操作部2c、制御部2d、報知部2eを備えている。自動水栓の各構成要素のうち、測距部1bは、本実施形態に係る測距装置である。
【0010】
水栓1は、所定の給水管を介して供給源に接続される金属製の部材である。水栓1は、
図2に示すようにキッチン等の流し台3(シンク)に備えられており、電磁弁が制御装置2によって制御されることにより供給源から給水される湯水の吐水又は止水を行う。水栓1は、
図1に示すように、制御装置2の制御部2dによって直接制御される。
【0011】
本体部1aは、図示するように湾曲した金属製の部材である。本体部1aは、水栓1の主要部であり、湯水を吐水する先端部が下方を向いた姿勢で下端が流し台3における縁の上面3aに支持されている。本体部1aは、流し台3の底部3bに載置されるとともに被浸水物Xが収容された容器Yに対して湯水を注ぎ入れる。
【0012】
測距部1bは、本体部1aの先端部に設けられた電気的かつ光学的な部品である。測距部1bは、本体部1aの先端部に対峙する測距対象物までの距離を測定する。測距部1bは、投光及び受光用の光学部品、測距プログラムが予め記憶されたメモリ及び測距プログラムを実行するプロセッサ及び制御装置2と信号の授受を行う入出力回路等が一体化した測距モジュールとして構成されている。本実施形態における測距対象物は、容器Yに収容された被浸水物Xや水栓1(本体部1a)によって容器Yに注ぎ入れられた湯水(液体)の水面(液面)等である。
【0013】
測距部1bは、水栓1の吐水前における容器Y内の被浸水物Xまでの距離及び水栓1の吐水時における容器Yの水面までの距離を測距値Lとして各々測定する。測距部1bは、吐水前における被浸水物Xまでの測距値Lを物体距離Lbとして制御装置2に出力し、吐水時における水面までの測距値Lを水面距離Lsとして制御装置2に出力する。
【0014】
測距部1bは、例えばTOF(Time Of Flight)方式に基づいて本体部1aの先端部から測距対象物までの距離を測定する光学式のTOFセンサである。測距部1bは、測距対象物に向けて測定光を照射し、測定光の測距対象物における反射光に基づいて測距値Lを取得する。測距部1bには、TOFセンサ以外に距離の取得が可能な光学式、電磁波式、超音波式のセンサ等を用いてもよい。
【0015】
例えば、測距部1bは、容器Y内の被浸水物Xに向けて測定光を照射し、測定光が被浸水物Xで反射して発生する反射光を受光し、測定光の照射タイミングに対する反射光の受光タイミングの遅延時間に基づいて物体距離Lbを取得する。測距部1bは、容器Yの水面に向けて測定光を照射し、測定光が容器Yの水面で反射して発生する反射光を受光し、測定光の照射タイミングに対する反射光の受光タイミングの遅延時間に基づいて水面距離Lsを液位として取得する。
【0016】
測距部1bは、本実施形態に係る測距装置であり、測定光及び反射光の空中伝搬速度Sa及び水中伝搬速度Sb(液中伝搬速度)を考慮して水面距離Lsを取得する。より詳細には、測距部1bは、空気中における測定光及び反射光の空中伝搬速度Saと水面(液面)を形成する湯水中(液体中)における測定光及び反射光の水中伝搬速度Sbとを用いて水面距離Ls(液位)を測定する。
【0017】
図3は、容器の水面が被浸水物Xの高さを少し超えた状態つまり被浸水物Xが湯水中に水没した直後の状態を示している。区間L1は、測定光及び反射光が空中伝搬速度Saで伝搬する空間である。区間L2は、測定光及び反射光が水中伝搬速度Sbで伝搬する水中である。
【0018】
被浸水物Xが湯水中に水没した直後の状態において、反射光は、測定光が水面で反射する成分(成分C1)に加えて、測定光が水面で反射せずに水中を伝搬して被浸水物Xの表面で反射する成分(成分C2)を含む。被浸水物Xが水又は温水中に水没した直後の状態における反射光は、成分C1と成分C2との混合光である。
【0019】
被浸水物Xが水又は温水中に十分に水没した状態では、成分C2は成分C1に対して十分に小さい。被浸水物Xが水又は温水中に水没した直後においては、測定光が水面で反射する成分と、測定光が水面で反射せずに水中を伝搬して被浸水物Xの表面で反射する成分とが拮抗している。
【0020】
水面距離Lsは成分C1によって測定される。成分C2は、水面距離Lsの測定における外乱として作用し、水面距離Lsの測定精度を低下させる。被浸水物Xが水又は温水中に水没した直後では、成分C1に基づく水面距離Lsの測定において成分C2の影響が比較的大きいので、正確な水面距離Ls(水位)が測定できない虞がある。
【0021】
本実施形態における測距部1bは、被浸水物Xが水又は温水中に水没した直後における水面距離Lsの測定精度の低下を解消するために、測距値L、測定光及び反射光の空中伝搬速度Sa及び水中伝搬速度Sb(液中伝搬速度)並びに水面(液面)の背後の被浸水物X(物体)までの物体距離Lbに基づく補正式(1)に基づいて測定精度の高い水面距離Lsを取得する。
Ls = Lb -{{(L-Lb)/Lb}/{(Sa-Sb)/Sb}}・Lb (1)
【0022】
空中光速Saと水中光速Sbに代えて光の屈折率に基づいて水面距離Lsを求めてもよい。例えば、屈折率Nは真空中の光速Cを媒体中の光速(空中光速Sa又は水中光速Sb)で除算したものである。空中の屈折率Naは下式(2)によって表され、水中の屈折率Nbは下式(3)によって表される。この式(2)、(3)を用いて上記(1)を表現し直すと、下式(4)となる。
Na = C/Sa (2)
Nb = C/Sb (3)
Ls = Lb -{{(L-Lb)/Lb}/{(1/Na-1/Nb)/(1/Nb)}}・Lb (4)
【0023】
LED1cは、本体部1aの先端部に設けられており、測距対象物における測定部位を表示する表示部である。測距部1bの測距対象物が被浸水物Xである場合、LED1cは、被浸水物Xにおける特定部位をスポット的に照明することにより、特定部位(照明部位)を測定部位として利用者に表示する。
【0024】
制御装置2は、水栓1(本体部1a及び測距部1b)と電気的に接続されており、水栓1から入力される測距部1bの物体距離Lb及び水面距離Ls等の測距値Lを用いることにより、水栓1における水又は温水の吐水及び止水を包括的に制御する。制御装置2は、物体距離Lb及び水面距離Ls等の測距値Lに基づいて制御信号を生成し、制御信号を水栓1に出力することにより水栓1を自動制御する。
【0025】
記憶部2aは、物体距離Lb及び水面距離Ls等の測距値Lを一時的に保存するデータ保存装置である。記憶部2aは、判定部2b及び制御部2dから入力される読出要求に基づいて、物体距離Lb及び水面距離Ls等の測距値Lを判定部2b及び制御部2dに出力する。
【0026】
判定部2bは、水栓1の吐水時における測距値Lと事前に取得された物体距離Lbとを比較することにより容器Yの水面が被浸水物Xの高さに至ったか否かを判定する。判定部2bは、例えば測距部1bにおける測距値Lが物体距離Lbよりも小さくなると、容器Yの水面が容器Y内の被浸水物Xの高さを超えたと判定する。
【0027】
操作部2cは、自動水栓の利用者の操作指示を受け付けることにより、操作信号を生成する。操作部2cは、操作信号を制御部2dに出力することにより水栓1を操作する。例えば、操作部2cは、利用者から物体距離Lbの測定開始指示を受け付けると、測距部1bに物体距離Lbの測定開始を指示する操作信号を生成して制御部2dに出力する。操作部2cは、例えばスイッチ、音声信号、ジェスチャー操作、他のデバイスからの信号である。
【0028】
制御部2dは、判定部2bの判定結果及び操作部2cの操作指示に基づいて水栓1を直接制御する。詳細には、制御部2dは、判定部2bの判定結果及び操作部2cの操作指示に基づいて制御信号を生成し、制御信号を水栓1に出力することによって本体部1a、測距部1b及びLED1cを制御する。例えば、制御部2dは、判定部2bが容器Yの水面が被浸水物Xの高さを超えたと判定すると、吐水状態にある本体部1a(水栓1)を止水させる。
【0029】
報知部2eは、容器Yの水面が被浸水物Xの高さを超えた場合つまり測距部1bの物体距離Lbの測定時における反射光の光量がしきい値を超えた場合にアラームを鳴らす。報知部2eは、光量がしきい値を超えた場合のアラームに加えて、容器Yの水面が被浸水物Xの高さを超えた場合における水栓1(本体部1a)の止水を周囲に報知する。報知部2eは、例えばブザー、音声メロディ、LEDの発光、外部デバイスへの通知等である。
【0030】
次に、本実施形態に係る測距装置及び自動水栓の動作について、
図4のフローチャートに沿って詳しく説明する。
【0031】
利用者が物体距離Lbの測定開始指示を操作部2cに入力すると、
図4の動作が開始する。利用者は、測定開始指示の入力に先立って、被浸水物Xを収容した容器Yを水栓1の下方におけるキッチン用流し台(シンク)上に載置する。利用者は、容器Yのキッチン用流し台(シンク)上への載置が完了した状態で測定開始指示を操作部2cに入力する。
【0032】
制御部2dは、操作部2cから測定開始指示の操作信号が入力されると、最初にLED1cを点灯させる制御信号を生成して水栓1に出力する。LED1cは、制御部2dから入力される制御信号に基づいて点灯する(ステップS1)。LED1cの点灯によって、容器Y内の被浸水物Xの特定部位にスポット状の照明光が照射される。照明光は、照明部位(被浸水物Xの特定部位)が測距部1bの測定部位であることを示すものである。
【0033】
例えば、利用者が自動水栓を用いることにより被浸水物Xが完全に水没する程に容器Y内に水を注水することを意図としている場合において、照明光の照明部位が被浸水物Xにおける最も高い部位(最高部)でなかった場合、利用者は、照明光の照明部位が被浸水物Xの最高部に一致するように容器Yの位置を調整する。
【0034】
利用者は、容器Yの位置調整が完了すると、操作部2cに物体距離Lbの測定開始を指示する。制御部2dは、操作部2cから物体距離Lbの測定開始指示(操作信号)が入力されるか否かを判断し(ステップS2)、ステップS2の判断が「Yes」になると物体距離Lbを取得させる制御信号を測距部1bに出力することにより物体距離Lbを取得させる(ステップS3)。測距部1bは、自身が取得した物体距離Lbを記憶部2aに出力することにより記憶させる。
【0035】
制御部2dは、ステップS2の判断が「No」の場合には、ステップS2の判断が「Yes」になるまで待機する。物体距離Lbは、利用者が操作部2cに測定開始指示を入力してステップS2の判断が「Yes」になるまで取得されない。
【0036】
制御部2dは、記憶部2aが物体距離Lbを記憶すると、LED1cを消灯させる制御信号を生成して水栓1に出力する。LED1cは、制御部2dから入力される制御信号に基づいて消灯する(ステップS4)。制御部2dは、水栓1(本体部1a)を吐水状態とする制御信号を生成して水栓1に出力することにより、水栓1(本体部1a)を吐水状態に設定する(ステップS5)。
【0037】
制御部2dは、水栓1(本体部1a)を吐水状態に設定すると、測距部1bを測定状態とする制御信号を生成して水栓1に出力する。測距部1bは、制御部2dから入力される測定状態の制御信号に基づいて、本体部1aの先端部と測距対象物までの測距値Lの取得を開始する(ステップS6)。
【0038】
水栓1(本体部1a)を吐水状態にした初期段階では、測距部1bの測距値Lは物体距離Lbと同一である。容器Yの水面は、水栓1(本体部1a)による吐水の継続によって時間の経過とともに徐々に高く(先端部から近く)なり、最終的には被浸水物Xの最高部を超える。
【0039】
図5に示すように、吐水開始時taにおける水面距離Lsは、物体距離Lbよりも大きいが、時間経過とともに物体距離Lbに近づき、最終的に時刻tbにおいて被浸水物Xの最高部を超える。測距部1bの測距値Lは、時刻tbにおける測距対象物の切り替わりによって、一時的に不可解な挙動を示すが物体距離Lbよりも徐々に小さくなる。
【0040】
容器Yの水面が被浸水物Xの最高部を超えると、測距部1bの測定光は容器Yの水面で反射するとともに、水没した被浸水物Xの表面でも反射する。反射光は、測定光が水面で反射する成分C1に加えて、測定光が水面で反射せずに水中を伝搬して被浸水物Xの表面で反射する成分C2を含む混合光となる。
【0041】
成分C1と成分C2との成分比率は、水面が上昇するに従って徐々に変化し、最終的には成分C2が無くなって成分C1のみとなる。
図5に示すように、時刻tbから時刻tcの期間Tにおいては、成分C2の影響によって測距値Lは、実態とは異なる値となる。期間Tにおける測距値Lは信用性が低い。
【0042】
測距部1bは、ステップS6で測距値Lを取得すると、測距値Lの異常性つまり成分C2の影響により測距値Lの時系列変化が本来の上昇傾向から逸脱した場合に異常を判定する(ステップS7)。測距部1bは、例えば
図5に示すように測距値Lが物体距離Lbよりも徐々に遠くなると、測距値Lの異常を判定する。測距部1bは、ステップS7の判定が「Yes」の場合つまり測距値Lの時系列変化が本来の上昇傾向から逸脱した場合、測距値Lを補正式(1)に代入することにより水面距離Lsを算出する(ステップS8)。
【0043】
補正式(1)によって得られる水面距離Lsは、成分C2の影響つまり空中伝搬速度Saと水中伝搬速度Sbとの差異の影響を解消し、測距値Lよりも容器Yの実質的な水位を示すものである。測距部1bは、ステップS7の判定が「No」の場合つまり測距値Lの時系列変化が本来の上昇傾向から逸脱していない場合には、ステップS8の計算処理を割愛する。
【0044】
制御部2dは、測距値L又は水面距離LsがステップS3で記憶部2aに予め記憶した物体距離Lbよりも小さいか否かを判断する(ステップS9)。制御部2dは、ステップS7の判断が「Yes」になると、水栓1(本体部1a)を止水状態に設定する制御信号を生成して水栓1(本体部1a)に出力する。
【0045】
水栓1(本体部1a)は、止水状態の制御信号に基づいて止水状態に設定される(ステップS10)。制御信号に基づく水栓1(本体部1a)の止水タイミングは、
図5の時刻tbから僅かに遅れた時刻となり、被浸水物Xの最高部が僅かに水没した状態で水栓1(本体部1a)による容器Yへの給水が終了する。
【0046】
ステップS9の判断が「Yes」になる場合は、測距対象物が被浸水物Xの最高部から容器Yの水面に切り替わった状態、つまり容器Yの水面が被浸水物Xの最高部を超えた状態である。ステップS9の判断が「Yes」になる場合は、利用者が意図する状態、つまり被浸水物Xが完全に水没する程に容器Y内に水が注水された状態である。
【0047】
制御部2dは、ステップS9の判断が「No」の場合には、ステップS6における測距値Lの取得を繰り返す。ステップS9の判断が「No」の場合は、容器Yの水面が被浸水物Xの最高部を超えていない状態であり、利用者が意図する状態を未だ満足していない状態である。
【0048】
制御部2dは、水栓1(本体部1a)を止水状態に設定すると、報知部2eを鳴動させる制御信号を生成して水栓1(本体部1a)に出力する。報知部2eは、制御部2dから入力される制御信号に基づいて鳴動することにより、水栓1(本体部1a)が止水状態に設定されたことを周囲に報知する(ステップS11)。
【0049】
本実施形態に係る測距装置(測距部1b)及び自動水栓は、空気中における測定光及び反射光の空中伝搬速度Saと水面(液面)を形成する水中又は温水中(液体中)における測定光及び反射光の水中伝搬速度Sb(液中伝搬速度)とを用いて水面距離Ls(液位)を測定する。本実施形態によれば、測距部1bを備えるので、水位等の液位をより正確に測定することが可能な測距装置及び自動水栓を提供することが可能である。
【0050】
本実施形態によれば、測距部1bが空中伝搬速度Saと水中伝搬速度Sb(液中伝搬速度)とをパラメータとする補正式(1)によって水面距離Lsを取得するので、空中伝搬速度Saと水中伝搬速度Sbとの差異を解消した精度の高い水面距離Lsを取得することが可能である。
【0051】
本実施形態によれば、水栓1、測距部1b、記憶部2a、判定部2b及び制御部2dを備えるので、容器Yの水面が被浸水物Xの高さを超えたら自動的に止水することが可能な自動水栓を提供することが可能である。
【0052】
本実施形態によれば、被浸水物Xにおける測定部位を表示するLED1c(表示部)と、測距部1bに物体距離Lbの測定開始を指示する操作部2cとを備えるので、物体距離Lbの最高部を的確に物体距離Lbとして測定することができる。本実施形態によれば、被浸水物Xをより確実に水に浸すことが可能である。
【0053】
本実施形態によれば、水栓1の止水を外部に報知する報知部2eを備えるので、被浸水物Xが水に浸って水栓1が自動的に止水したことを利用者に知らせることが可能である。本実施形態によれば、使い勝手の良い自動水栓を提供することができる。
【0054】
本開示には様々な変形例が考えられる。本実施形態では、液位の一例として水位(水面距離Ls)を測定したが、本開示に係る測距装置は、水又は温水以外の様々な液体の液位の測定に適用することができる。
【0055】
測距部1bにおける反射光の光量は、被浸水物Xと水面とでは明確に異なる。被浸水物Xにおける反射光の光量は、水面における反射光の光量よりも大きい。被浸水物Xと水面とによる反射光の光量の差異を利用することにより、測距値Lが物体距離Lbよりも小さいことに加え、反射光の光量が所定のしきい値以下になると、容器Yの水面が被浸水物Xの高さを超えたと判定する判定部を採用することが考えられる。
【0056】
判定部が反射光の光量が所定のしきい値以下になったと判断した場合の対応として、水栓1(本体部1a)を止水状態に設定した後に報知部2eを鳴動させて水栓1(本体部1a)が止水状態に設定されたことを周囲に報知することが考えられる。
【0057】
水栓1(本体部1a)を止水状態に設定した後に報知部2eを鳴動させることに代えて、水栓1(本体部1a)を止水状態に設定する前段階、例えば反射光の光量がしきい値以下になったと判定した時点で報知部2e(第2の報知部)を鳴動させることにより、アラームを周囲に報知することが考えられる。
【0058】
物体距離Lbに対する測距値Lの超過指定値Dを設定する操作部2c(超過量設定部)と、超過指定値Dを記憶する記憶部2a(第2記憶部)とをさらに備え、制御部2dは、測距値L又は水面距離Lsが物体距離Lbと超過指定値Dとの合算値より小さくなると水栓1を止水させることが考えられる。
【0059】
図5に示すように、測距値Lが物体距離Lbと超過指定値Dとの合算値より小さくなったタイミングで、吐水状態の水栓1が止水状態に設定される。測距値Lが物体距離Lbと超過指定値Dとの合算値より小さくなったタイミングにおいて、水栓1(本体部1a)による容器Yへの注水が停止する。
【符号の説明】
【0060】
X…被浸水物、Y…容器、1…水栓、1a…本体部、1b…測距部、1c…LED(表示部)、2…制御装置、2a…記憶部、2b…判定部、2c…操作部、2d…制御部、2e…報知部