(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135317
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】洗濯機
(51)【国際特許分類】
D06F 39/10 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
D06F39/10 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023045943
(22)【出願日】2023-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】512128645
【氏名又は名称】青島海爾洗衣机有限公司
【氏名又は名称原語表記】QINGDAO HAIER WASHING MACHINE CO.,LTD.
(71)【出願人】
【識別番号】307036856
【氏名又は名称】アクア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100176245
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 亮輔
(72)【発明者】
【氏名】金田 隆二
(72)【発明者】
【氏名】本田 雅夫
【テーマコード(参考)】
3B166
【Fターム(参考)】
3B166AA05
3B166AE01
3B166AE02
3B166AE05
3B166AE06
3B166AE07
3B166AE12
3B166AE14
3B166BA76
3B166CA01
3B166CA11
3B166CA21
3B166CB01
3B166CB04
3B166CB11
3B166CB13
3B166CC02
3B166CD05
3B166CD15
3B166DB02
3B166DB03
3B166DB18
3B166DC43
3B166DC45
3B166DC47
3B166DE02
3B166DE04
3B166DE06
3B166GA02
3B166GA12
3B166HA11
3B166JM02
3B166JM03
(57)【要約】
【課題】排水フィルタの回転自在なフィルタ部に関して、掃除の要否を早期に判断できる洗濯機を提供する。
【解決手段】洗濯機1は、外槽6に接続された第1排水管16aから洗濯水を導入し、ケース20内で回転自在に設けられたフィルタ部50に洗濯水を通水することで洗濯水に含まれる異物を捕集する排水フィルタ100と、フィルタ部50に連結され、フィルタ部50を回転させるモータ60と、フィルタ部50の回転時にモータ60に生じている負荷に関する負荷パラメータに基づいて、フィルタ部50の掃除の要否を判断する制御部90と、を備える。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体内に配置された外槽と、
前記外槽に接続され、前記外槽内の洗濯水を排出する排水管と、
前記排水管から前記洗濯水を導入し、ケース内で回転自在に設けられたフィルタ部に前記洗濯水を通水することで前記洗濯水に含まれる異物を捕集する排水フィルタと、
前記排水フィルタの前記フィルタ部に連結され、前記フィルタ部を回転させるモータと、
前記フィルタ部の回転時に前記モータ又は前記フィルタ部に生じている負荷に関する負荷パラメータに基づいて、前記フィルタ部の掃除の要否を判断する制御部と、を備える洗濯機。
【請求項2】
前記モータは非同期モータであり、
前記制御部は、前記フィルタ部の回転時における前記負荷パラメータとしての前記モータの回転数に基づいて、前記フィルタ部の掃除の要否を判断する、請求項1に記載の洗濯機。
【請求項3】
前記モータは同期モータであり、
前記制御部は、前記フィルタ部の回転時における前記負荷パラメータとしての前記モータに流れる電流値に基づいて、前記フィルタ部の掃除の要否を判断する、請求項1に記載の洗濯機。
【請求項4】
前記制御部は、前記フィルタ部の回転が開始された後、所定時間が経過した時点における前記負荷パラメータに基づいて、前記フィルタ部の掃除の要否を判断する、請求項1~3の何れか一項に記載の洗濯機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排水フィルタを備える洗濯機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばドラム式の洗濯機は、筐体内に外槽及び内槽を備える。特許文献1に記載された洗濯機では、外槽に、給水路及び排水路が接続されている。排水路の一端は、外槽の下端部に接続されており、排水路の途中には、外槽から排出される水(洗濯水)に含まれる異物を捕獲するフィルタユニット(排水フィルタ)が設けられている。フィルタユニットは、筐体内に固定されて排水路の一部を構成する受け部と、受け部に対して着脱可能に取り付けられた本体とを有する。本体内には、複数のピン(櫛歯)を含む櫛部が設けられる。複数のピンは本体の収容室内に突出しており、これらのピンによって異物が捕獲される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した従来の洗濯機における排水フィルタでは、本体に設けられたピンに糸くず等の異物が絡まることで、異物が捕獲される。異物がフィルタユニットに溜まってくると、ピン(櫛歯)の間の隙間が徐々に狭くなり、通水される洗濯水の流量(すなわち排水量)が低下してくる。この仕組みを利用して、排水フィルタにおける閉塞状況を推定することができる。すなわち、排水開始から所定の水位まで下がる時間を計測することで、フィルタユニットの詰まり具合を推定し、予め決められた時間を超過した場合に、掃除サインとして「フィルタ詰まり」を使用者に報知することができる。
【0005】
一方、糸くず等の異物を捕集するフィルタ部を回転させて脱水する方式が、本発明者等によって考案されている。回転フィルタ方式によれば、脱水によって糸くず等のヌメリやベタつきが改善されるので、掃除の際の不快感を低減させることができる。しかしながら、回転フィルタ方式では、異物が遠心力によってフィルタの周面部に堆積するため、異物が相当量溜まるまで排水量がほとんど変わらない。そのため、時間の計測(又は単位時間当たりの排水量の計測等)によってフィルタ部における閉塞状況又は異物の堆積状況を、異物が相当量溜まってしまうよりも前に検知することが難しい。排水量に影響を与えるほど異物が溜まってしまうと掃除の際の不快感を逆に増大させることになるため、それよりも前に閉塞状況又は異物の堆積状況を検知する必要がある。
【0006】
本発明は、排水フィルタの回転自在なフィルタ部に関して、掃除の要否を早期に判断できる洗濯機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[1]本発明の一態様に係る洗濯機は、筐体内に配置された外槽と、外槽に接続され、外槽内の洗濯水を排出する排水管と、排水管から洗濯水を導入し、ケース内で回転自在に設けられたフィルタ部に洗濯水を通水することで洗濯水に含まれる異物を捕集する排水フィルタと、排水フィルタのフィルタ部に連結され、フィルタ部を回転させるモータと、フィルタ部の回転時にモータ又はフィルタ部に生じている負荷に関する負荷パラメータに基づいて、フィルタ部の掃除の要否を判断する制御部と、を備える。
【0008】
上記[1]の洗濯機では、洗濯水に含まれる異物は、排水フィルタのフィルタ部に捕集される。モータによってフィルタ部が回転させられると、異物に含まれる水分が遠心力でフィルタ部の外周の方へ飛ばされ、異物が脱水される。よって、使用者がフィルタ部を掃除する際、異物における水分率が低下していることにより、衛生面での不快感が抑えられる。ここで、制御部は、モータ又はフィルタ部における負荷パラメータに基づいてフィルタ部の掃除の要否を判断する。負荷パラメータは、フィルタ部における閉塞状況又は異物の堆積状況を反映する。よって、例えば負荷パラメータのしきい値を予め設定しておく等により、制御部は、フィルタ部の掃除が必要な状況を推定することができる。したがって、回転自在なフィルタ部に関して、掃除の要否を早期に判断できる。
【0009】
[2]上記[1]に記載の洗濯機において、モータは非同期モータであり、制御部は、フィルタ部の回転時における負荷パラメータとしてのモータの回転数に基づいて、フィルタ部の掃除の要否を判断してもよい。非同期モータにおいては、モータの負荷が増大すると、モータの回転数が徐々に低下する。よって、制御部は、モータの回転数を取得して判断を行うことにより、掃除の要否を一層容易に判断できる。
【0010】
[3]上記[1]に記載の洗濯機において、モータは同期モータであり、制御部は、フィルタ部の回転時における負荷パラメータとしてのモータに流れる電流値に基づいて、フィルタ部の掃除の要否を判断してもよい。同期モータにおいては、負荷が増大しても回転数は低下しない。その代わり、負荷が増大するとモータに流れる電流値が増大する。よって、制御部は、モータに流れる電流値を取得して判断を行うことにより、掃除の要否を一層容易に判断できる。
【0011】
[4]上記[1]~[3]の何れか1つに記載の洗濯機において、制御部は、フィルタ部の回転が開始された後、所定時間が経過した時点における負荷パラメータに基づいて、フィルタ部の掃除の要否を判断してもよい。フィルタ部の回転が開始された直後は、異物における水分率が低下しきっていない。所定時間が経過した時点における負荷パラメータを判断に用いることで、掃除の要否を早期かつ正確に判断できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、排水フィルタの回転自在なフィルタ部に関して、掃除の要否を早期に判断できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る洗濯機を示す断面図である。
【
図3】
図3は、ケース本体と、ケース本体から取り外された状態のフィルタ支持部及びフィルタ部を示す斜視図である。
【
図6】
図6は、フィルタ支持部、フィルタ部及びレバーを含むフィルタ組立体の分解斜視図である。
【
図7】
図7(a)は、フィルタ部の斜視図であり、
図7(b)は
図7(a)のVIIB-VIIB線に沿った断面図である。
【
図8】
図8は、排水フィルタのモータに対して設けられた制御部と表示部を示す図である。
【
図9】
図9(a)は、
図8のモータに対して設けられた電気回路の一例を示す図であり、
図9(a)は、回転数の検知について説明するための図である。
【
図10】
図10は、モータに対して設けられる電気回路の他の例を示す図である。
【
図11】
図11は、変形例に係る排水フィルタを示す、
図4に対応する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。図面の寸法比率は、説明のものと必ずしも一致していない。
【0015】
以下の説明では、
図1又は
図2に示した互いに直交するX方向(第1方向)、Y方向(第2方向)及びZ方向(第3方向)を洗濯機1の説明に使用する場合がある。X方向及びZ方向は、
図1に示した洗濯機1の設置状態における前後方向及び高さ方向(又は上下方向若しくは鉛直方向)に対応する。また
図1の紙面に垂直な方向が、
図2に示したY方向であり、洗濯機1の設置状態における左右方向に対応する。本明細書において、「前」、「後」、「上」、「下」、「左」、「右」等の方向を示す用語は、洗濯機1の設置状態に基づいた用語である。
【0016】
まず
図1を参照して、第1実施形態に係る洗濯機1の全体構成について説明する。洗濯機1は、例えば、ドラム式洗濯機である。洗濯機1は、例えば直方体状の筐体2を備える。筐体2は、例えば、防水パン等の置き台(図示せず)上に設置される。筐体2の形状は適宜に変更可能である。筐体2の一部(何れかの面等)が丸みを帯びていてもよいし、筐体2の前面等が、Z方向(鉛直面)に対して角度をなし、傾斜していてもよい。筐体2の前面には、開閉自在な円形のドア3が取り付けられている。筐体2の前面には、洗濯物が投入される円形の投入口4が形成されている。投入口4は、ドア3によって閉鎖され、又は開放される。
【0017】
筐体2内には、外槽6及びドラム(洗濯槽)7が配置されている。外槽6及びドラム7は、何れも有底円筒状を呈する。外槽6は、筐体2内において複数のダンパ11とスプリング12とにより弾性的に支持されている。外槽6内には、ドラム7が回転自在に配置されている。外槽6及びドラム7は、例えば、X方向に延びる中心軸線に関して同心状に(同軸に)配置されている。外槽6は、ドラム7の開口部7aの前方に位置する円形の開口部6aを有する。
【0018】
外槽6の開口部6aの周縁部と筐体2の投入口4の周縁部が、弾性材料からなる円環状のパッキン8により連結されている。パッキン8は、例えば一部に引張コイルばね等が組み込まれた円形のワイヤによって、外槽6及び投入口4に対して外周側から締め付けられ、固定されている。このワイヤは、ワイヤスプリングとも呼ばれる。パッキン8の断面形状は、適宜に設定されてよい。閉じられたドア3の周面がパッキン8に接触し、投入口4とドア3との間が水封される。
【0019】
ドラム7内には、洗濯物が収容される。ドラム7の内周面には、多数の脱水孔7bが形成されている。ドラム7の内周面には、更に、前部においてバランサ7cが設けられると共に、周方向に等しい間隔で複数の(例えば3つの)バッフル7dが設けられている。
【0020】
筐体2内であって外槽6の後方には、ドラム7を回転させるための駆動モータ9が設置されている。駆動モータ9は、例えば、アウターロータ型のDCブラシレスモータである。駆動モータ9の回転軸9aがX方向に延び、ドラム7の一部に連結されている。回転軸9aとドラム7は、プーリや減速機構等を介して連結されてもよく、直接連結されてもよい。駆動モータ9は、洗い工程及びすすぎ工程時には、ドラム7内の洗濯物に加わる遠心力が重力より小さく洗濯物がタンブリングするような比較的低い回転数で、ドラム7を回転させる。駆動モータ9は、脱水工程時には、ドラム7内の洗濯物に加わる遠心力が重力より大きく洗濯物がドラム7の内周面に張り付くような比較的高い回転数で、ドラム7を回転させる。
【0021】
筐体2の後部には、給水管13及び給水バルブ14が配置されている。給水管13は、可撓性を有するホースであってもよいし、ホース以外の配管材料から構成されてもよい。給水バルブ14が開かれることにより、水道栓からの水道水が給水管13を通じて外槽6内に供給される。外槽6は、洗濯水を貯留可能である。本明細書において、「洗濯水」は、洗濯物の洗い工程及びすすぎ工程等の各工程に応じた液体を意味する。したがって、洗い工程では、洗濯水は洗剤などを含む水(液体)でよいし、すすぎ工程では、洗濯液は水でよい。またすすぎ工程において、洗濯水に柔軟剤が含まれてもよい。
【0022】
外槽6の底部には、下方に窪んだ窪み部6bが形成されている。窪み部6bには排水管16が接続されている。排水管16は、例えば、第1排水管16a及び第2排水管16bを有する。これらの第1排水管16a及び第2排水管16bは、可撓性を有するホースであってもよいし、ホース以外の配管材料から構成されてもよい。排水管16は、外槽6内の洗濯水を排出する。洗濯水は、排水管16が例えば下方に向けて配設されることにより、排水管16を通じて自然流下にて排出される。第2排水管16bは、例えば洗濯機1の機外へ(下方へ)延びている。第1排水管16a及び第2排水管16bを通じて洗濯機1から排出された洗濯水は、防水パン等に設けられた排水口を通じて排水される。なお、排水管16のレイアウトは適宜に変更されてもよい。
【0023】
洗濯機1は、例えば排水管16の途中に設けられ、洗濯水に含まれる異物を捕集する排水フィルタ100を備えている。例えば、排水フィルタ100の導入管25(
図2参照)が第1排水管16aの下流端に接続されており、排水フィルタ100の排出管26(
図2参照)が第2排水管16bの上流端に接続されている。排水フィルタ100は、ケース20と、ケース20内に装着されたフィルタ組立体Aとを備えている。フィルタ組立体Aはケース20内にぴったりと収納されており、ケース20の開口27(
図3参照)とフィルタ組立体Aとの間は水封されている。第2排水管16bには、例えば排水バルブ17が設けられている。第1排水管16a、排水フィルタ100、及び第2排水管16bは自然流下による排水路を構成している。排水バルブ17が開かれることで、外槽6及び第1排水管16aから流下した洗濯水は排水フィルタ100に導入され、排水フィルタ100を通過後(ろ過後)に、第2排水管16bを通じて排出される。なお、排水バルブ17が第1排水管16a(すなわち排水フィルタ100の上流側)に設けられてもよい。
【0024】
洗濯機1は、使用者によって操作される操作ボタン、及び、上述した駆動モータ9の駆動、給水バルブ14の開閉、排水バルブ17の開閉、及びモータ60の駆動等を制御する制御部90(
図8参照)を備える。制御部90は、筐体2内における適宜の位置に設けられたコントローラである。制御部90は、例えば、プログラム等が記憶されたROM(Read Only Memory)、データを一時的に記憶するRAM(Random AccessMemory)等の記憶媒体、及びCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサ等を有するコンピュータである。制御部90では、例えばROMに格納されているプログラムをCPUが読み込みながら実行する。プログラム中で宣言された一時的な変数はRAMに格納される。制御部90は、電子回路等によるハードウェアとして構成されてもよい。制御部90は、使用者による操作に応じて、予め記憶されたプログラムに従って洗濯機1における種々の運転を行う。なお、
図1では、洗剤投入装置、及び、(洗濯機1に乾燥機能が設けられる場合には)乾燥機能に係るヒータ、ファン、ダクト等の各部の図示は省略されている。
【0025】
排水フィルタ100は、筐体2内の例えば右下付近に設置されている。排水フィルタ100のケース20が、例えば、筐体2内に設けられた設置面18の上に固定されている。ケース20は、ケース20の後部(図示右側部分)がケース20の前部(図示左側部分)よりも低くなるよう、傾斜して設けられている。フィルタ組立体Aは、ケース20に対して着脱可能である。筐体2の前面の右下部の開口2fを塞ぐカバーBを取り外すことにより、使用者の手がフィルタ組立体Aにアクセスできる。フィルタ組立体Aは、例えば洗濯機1における運転が完了した際、使用者によってケース20から取り外され、開口2fを介して洗濯機1の外部に取り出される。これにより、排水フィルタ100のメンテナンスが可能となる。なお、ケース20の取付方法は、特に限定されない。設置面18を設けなくとも、例えば筐体2に対して直接に、又は他の適当な部材を介してケース20が固定されてもよい。
【0026】
図2以降の必要な図を参照して、排水フィルタ100について詳細に説明する。
図2は、排水フィルタ100を示す斜視図である。排水フィルタ100は傾斜した状態(姿勢)で設置されているが、
図2以降の各図では、この傾斜を考慮せずに、排水フィルタ100が単品として示されている。したがって、
図2以降では、
図1に示したX方向線(前後方向線)及びZ方向線(上下方向線)は省略されている。ただしケース20は、Y方向(左右方向)に沿って設置されているので、
図2では、Y方向線(左右方向線)のみが示されている。
図3は、ケース本体21と、ケース本体21から取り外された状態のフィルタ組立体Aを示す斜視図である。
図4は、
図2のIV-IV線に沿った断面図である。
【0027】
排水フィルタ100は、外槽6に接続された第1排水管16aから洗濯水を導入し通水することで洗濯水に含まれる異物を捕集する。
図2及び
図3に示されるように、ケース20は、内部にろ過空間S(
図4参照)を有するケース本体21と、ケース本体21の上面に接続された導入管25と、ケース本体21の後部の下端に接続された排出管26とを備える。ケース20の材料は特に限定されないが、ケース20は例えば樹脂製である。
【0028】
ケース本体21は、全体として扁平な箱形状を有する。ケース本体21は、例えば、主として下ケース部23及び上カバー部24の2つの部材からなる。下ケース部23がケース本体21の外形を規定しており、上カバー部24が、下ケース部23の上面に形成された開放部を塞ぐ。
図2及び
図4に示されるように、上カバー部24と導入管25の接続部には、第1排水管16aを通じて洗濯水をケース本体21内へと導入する導入口25aが形成されている。また下ケース部23と排出管26の接続部には、ろ過後の洗濯水をケース本体21から排出する排出口26aが形成されている。
【0029】
図2~
図4に示されるように、下ケース部23は、XY平面(水平面)に対して所定角度傾斜して延在する底面部23aと、底面部23aの左右の両端に連接してXZ平面に沿って延びる一対の平行な側面部23b,23bと、一対の側面部23b,23bの後端に連接して弧状に延びる後面部23dとを含む。後面部23dは、例えば円筒面の一部に相当する形状を有する。下ケース部23は、その前部において一対の側面部23b,23bの上端に連接する前上面部23cを含む。
【0030】
一対の側面部23b,23bと後面部23dの上端縁は、後面部23dを除く領域において開放されており、その開放部を上カバー部24が塞いでいる。上カバー部24は、例えば図示しないビス等によって下ケース部23に固定されてもよいし、下ケース部23に嵌合することで固定されてもよい。下ケース部23の底面部23a、一対の側面部23b,23b、及び後面部23dと、上カバー部24とによって、洗濯水のろ過を行うためのろ過空間Sが画成されている。ろ過空間Sは、導入口25a及び排出口26aに連通する。ケース本体21は、底面部23a、一対の側面部23b,23b、及び前上面部23cの前端縁に形成された長方形状の開口27(
図3参照)を含む。
【0031】
図3及び
図4に示されるように、フィルタ組立体Aは、ケース本体21のろ過空間S内に挿入されるフィルタトレイ(フィルタ支持部)30と、フィルタトレイ30に対して回転軸線L周りで回転自在に取り付けられたフィルタ部50とを有する。フィルタトレイ30がケース本体21に装着された状態で、フィルタトレイ30の大部分がケース本体21内に収容される。フィルタトレイ30は、ケース本体21に装着されたときに開口27を塞ぐカバー板部36を有しており、このカバー板部36はケース本体21の外部に配置される。カバー板部36は、開口27の周囲の矩形のフランジ面27aに密着することで開口27を閉鎖する。カバー板部36とフランジ面27aとの間にはパッキン又はガスケット等が設けられてもよい。すなわち、フィルタトレイ30の少なくとも一部が、ケース本体21内に設けられている。
【0032】
フィルタトレイ30は、例えば樹脂製である。フィルタトレイ30は、フィルタ部50が取り付けられたトレイ本体31を含む。トレイ本体31は、底面部31aと、底面部31aの左右の両端に連接する一対の平行な側面部31b,31bと、一対の側面部31b,31bの前部においてそれらの上端に連接する前上面部31cとを含む(
図6も参照)。底面部31aはフィルタ部50の回転軸線Lに直交する平板状をなし、その中央部に昇降用開口31h(
図6参照)を有する。フィルタトレイ30がケース本体21に装着されたときに、底面部31aは、下ケース部23の底面部23aに近接して平行に対面する。一対の側面部31b,31bは、一対の側面部23b,23bにそれぞれに近接して平行に対面する。前上面部31cは、前上面部23cに近接して平行に対面する。
【0033】
トレイ本体31は、ケース本体21の内面形状に適合するように形成されている。これにより、フィルタトレイ30(フィルタ組立体A)は、直線的な案内方向Dにスライドしながら、開口27を介してケース本体21内に装着される。例えば、一対の側面部31b,31bの外面のY方向の幅は、一対の側面部23b,23bの内面のY方向の幅よりも僅かに小さい。底面部31aの大きさは、底面部23aよりも一回り小さく、形状に関しては、底面部31aは底面部23aと相似又はほぼ相似である。一対の側面部31b,31bは一対の側面部23b,23bによってY方向及び回転軸線L方向の動きを規制されつつ案内され、底面部31aの後縁部31dは弧状に延びている。フィルタトレイ30の案内方向Dにおける位置は、後述する昇降機構80の係止片82f(
図6参照)とフランジ面27aの裏面側の係止凹部23e(
図3参照)との嵌合により決まる。その位置決め状態で、トレイ本体31の後縁部31dと下ケース部23の後面部23dとの間には間隙が存在する。
【0034】
図4、
図5及び
図6に示されるように、フィルタ部50は、回転軸線Lを中心線とする有底円筒状を呈するフィルタ本体51を有する。フィルタ本体51は、例えば樹脂製である。フィルタ本体51は、円盤状の底壁部53と、底壁部53の外周部に連接する円筒状の周壁部54と、底壁部53の中央部に形成された円錐面部57と、円錐面部57の中心部に立設された円柱状のボス部52とを含む。フィルタ本体51は、上部が開放された扁平な円筒形状をなしており、トレイ本体31内に取り付けられた状態でトレイ本体31の高さの範囲内に収まっている(
図5参照)。
【0035】
フィルタトレイ30の案内方向Dは、XY平面(水平面)に対して所定角度傾斜する。案内方向Dは、例えば、XZ平面に平行に(すなわちY方向に垂直に)延びる。この傾斜角度は、ケース20(底面部23a及び上カバー部24等)の傾斜角度に等しく、0度より大きく、例えば2~20°程度の範囲内である。この傾斜により、ケース20内に洗濯水が残存しない。傾斜角度は、排水フィルタ100や、その他周辺の部材のレイアウト等によって変わり得る。フィルタ部50の回転軸線Lは、案内方向Dに直交する。すなわち、回転軸線Lは、YZ平面に対して所定角度傾斜する。回転軸線Lは、例えば、XZ平面に平行に(すなわちY方向に垂直に)延びる。
【0036】
図3,
図5及び
図6に示されるように、カバー板部36の外面側には、外部から使用者によって操作可能な回転式のレバー40が取り付けられている。フィルタトレイ30には、レバー40の回転操作に応じてフィルタ部50を昇降(上下移動)させる昇降機構80(
図6参照)が内蔵されている。以下、フィルタトレイ30が備える昇降機構80について説明する。
【0037】
図4,
図5及び
図6に示されるように、トレイ本体31の底面部31aには、回転軸線Lの周囲の所定範囲において昇降用開口31hが形成されている。昇降用開口31h内には、昇降用開口31hよりも一回り小さな板状の底板32が配置されている。底板32は、昇降機構80の一部によって(詳しくは後述)、昇降用開口31h内で回転軸線L方向に昇降可能に保持されている。底板32の中央部に円形の貫通孔32aが形成されており、貫通孔32aに、軸支持ピン33が下方から挿通されている。底板32上に突出した軸支持ピン33に、軸受部34を介してフィルタ本体51のボス部52が取り付けられている。これにより、フィルタ部50は、底板32上において回転軸線L周りで回転自在である。
【0038】
図4及び
図6に示されるように、昇降機構80は、カバー板部36の背面側に取り付けられると共にレバー40に連結された回転部材81を有する。回転部材81は、円盤部81aと、円盤部81aの周縁部の2箇所において回転中心に関して点対称に形成された2つのガイド孔部81bとを含む。円盤部81aは、回転中心上に配置され且つ案内方向Dに平行に延びる取付ねじ81fにより、レバー40に固定されると共にカバー板部36に回転可能に取り付けられている。レバー40の回転と回転部材81の回転は同期する。
【0039】
また昇降機構80は、回転部材81の左右に配置された一対の左右スライド部材82,82を有する。各左右スライド部材82は、矩形板部82aと、矩形板部82aの裏面側に突出する1本のピン82bと、Y方向に延びるように形成された2本の長孔部82cと、長孔部82cに挿通される2本の取付ピン87とを含む。取付部86は、トレイ本体31の前面部31e(
図4参照)に形成されている。各取付ピン87は、カバー板部36に形成された孔36bを通り、トレイ本体31に形成された取付部86に螺入又は圧入等によって固定される。取付ピン87が長孔部82c内で相対的に移動することにより、一対の左右スライド部材82,82はY方向のみに移動可能である。矩形板部82aの取付ねじ81fに近い方の端部は、カバー板部36と回転部材81のガイド孔部81bとの間に配置されており、各ピン82bが各ガイド孔部81bに挿通されている。
【0040】
ガイド孔部81bは、回転部材81の回転中心(すなわち取付ねじ81f)からの距離が変化するように湾曲して延びている。これらの構成により、排水フィルタ100の外部から見て回転部材81(レバー40)を時計回りに回転させたとき、一対のピン82bが回転中心からY方向に沿って離れるように移動させられる。これと同時に、一対の左右スライド部材82が、Y方向に沿って互いに離れるように移動させられる。また回転部材81(レバー40)を逆方向すなわち反時計回りに回転させたときには、一対の左右スライド部材82が、Y方向に沿って互いに近づくように移動させられる。
【0041】
昇降機構80は、ケース本体21の底面部23a上において案内方向Dにスライド可能な一対の前後スライド部材83を含む。各前後スライド部材83は、案内方向Dに延びる長尺板部83aと、矩形板部82aの基端側(手前側すなわちレバー40に近い方)に配置されてY方向に突出する基端ピン83bと、長尺板部83aをスライドさせるため底面部23a等に係合するスライド用孔部83cとを含む。各長尺板部83aは、底面部31aと底面部23aとの間に配置される。各基端ピン83bは、各左右スライド部材82の裏面側に形成された方向転換部82dの内部に嵌り込んでいる。方向転換部82d内には、左右スライド部材82のY方向の移動に伴って基端ピン83bを案内方向Dに移動させるように案内するガイド孔部82eが形成されている。
【0042】
これらの構成により、一対の左右スライド部材82が、Y方向に沿って互いに離れるように移動すると、一対の前後スライド部材83は案内方向Dに沿って手前の方(すなわちカバー板部36に近づく方)へ移動する。一対の左右スライド部材82が、Y方向に沿って互いに近づくように移動すると、一対の前後スライド部材83は案内方向Dに沿って奥の方(すなわちカバー板部36から離れる方)へ移動する。各前後スライド部材83上には方向転換部83dが立設されており、方向転換部83dの内面には、傾斜する複数の(例えば前後一対の)ガイド孔部83e,83eが形成されている。このガイド孔部83e,83eが、上記した底板32の側縁部に形成された複数の係合孔32b,32bにY方向において対面する。底板32の左右それぞれにおいて、複数の(例えば前後一対の)連結ピン84,84の外端がガイド孔部83e,83eに嵌め込まれ、連結ピン84,84の内端が係合孔32b,32bに嵌め込まれる。なお、方向転換部83dは、底面部31aと底板32の間においてY方向に形成された隙間(案内方向Dに延びる隙間)に配置されるため、案内方向Dに移動した場合でもトレイ本体31とは干渉しない。
【0043】
以上の構成により、排水フィルタ100の外部から見てレバー40が時計回りに回転操作されると、一対の前後スライド部材83がトレイ本体31とケース本体21の間で手前の方に移動すると共に連結ピン84及び底板32が回転軸線Lの方向に押し上げられる。このとき、レバー40は、例えば
図2に示される連結位置P2に位置する。連結位置P2では、レバー40の摘み部は回転軸線Lの方向(上下方向)に向けられる。レバー40が反時計回りに回転操作されると、一対の前後スライド部材83がトレイ本体31とケース本体21の間で奥の方に移動すると共に連結ピン84及び底板32が回転軸線Lの方向に引き下げられる。このとき、レバー40は、例えば
図3に示される非連結位置P1に位置する。
【0044】
続いて、
図4及び
図7(a)を参照して、フィルタ部50の詳細構成について説明する。フィルタ部50は、フィルタ本体51の底壁部53の内表面上に設けられ、第1孔部53aよりも細かい目幅を有する底面メッシュ部55を有する。またフィルタ部50は、フィルタ本体51の周壁部54の内周面上に設けられ、第2孔部54aよりも細かい目幅を有する周面メッシュ部56を有する。底面メッシュ部55及び周面メッシュ部56は、例えばインサート成形によりフィルタ本体51に一体化されている。底壁部53と底面メッシュ部55、及び、周壁部54と周面メッシュ部56は、ろ過空間S内において導入口25a(
図4参照)からの洗濯水を受けるフィルタ面Fを構成する。底面メッシュ部55及び周面メッシュ部56は、それぞれ、例えば0.5mm程度の目幅を有する樹脂製メッシュである。
【0045】
図7(b)に示されるように、フィルタ部50において、底面メッシュ部55及び周面メッシュ部56は、それぞれ、底壁部53の内表面及び周壁部54の内周面から突出しないように設けられている。例えば、底面メッシュ部55及び周面メッシュ部56は、それぞれ、底壁部53の内表面及び周壁部54の内周面に面一である。よって、メッシュ部55,56とフィルタ本体51の間に段差が生じず、異物の引っかかり、噛み込み、詰まり等が抑制されている。言い換えれば、メッシュ部55,56は、フィルタ本体51の内表面及び内周面に対して段差なく連続している。
【0046】
図2に示されるように、排水フィルタ100は、ケース本体21に取り付けられてフィルタ部50を回転させるモータ60を備える。モータ60は、例えば固定プレート66を介して上カバー部24上に固定されたモータ本体61を有する。モータ本体61は、例えば、ブラシ付きDCモータ又は誘導モータ等の非同期モータである。モータ本体61は他の非同期モータであってもよい。モータ60は、出力軸64(モータ側の軸)と駆動軸62(フィルタ側の軸)とを有する。モータ60の駆動軸62は、フィルタ部50の回転軸線L方向に延び、駆動軸62の下端にはケース本体21内に臨む嵌合部材63が固定されている。モータ60は、洗濯機1のコントローラ等によって制御され、適宜の回転数で、所定時間にわたって回転駆動する。なお、モータ本体61と駆動軸62の間に、後述するような公知の減速機構等が別途設けられてもよい。
【0047】
続いて、
図4及び
図5を参照して、フィルタ部50及びモータ60の嵌合及び連結構造について説明する。
図4に示されるように、フィルタトレイ30がケース本体21内に装着された状態において、ボス部52の回転軸線Lは、モータ60(
図2参照)の駆動軸62と同軸上に配置される。ケース本体21及びトレイ本体31の少なくとも何れか一方に、トレイ本体31の位置決め(ボス部52及び駆動軸62の位置揃え)のための機構(嵌合構造又は位置規制部等)が設けられてもよい。
【0048】
図6に示されるように、ボス部52の上端に形成された嵌合端部52a(
図7(a)も参照)は、駆動軸62の先端に固定された嵌合部材63(
図4参照)と嵌合し、嵌合した状態で駆動軸62からの回転力が伝達されるように構成されている。ケース本体21の内部で駆動軸62に対してボス部52を容易に嵌合させられるように、嵌合部材63と嵌合端部52aには、これらの部材が回転軸線L方向に互いに近接したとき互いに嵌合するように回転方向の位置を案内する傾斜面が形成されている。フィルタ部50が上昇端に位置し、ボス部52が昇降機構80を介して駆動軸62及び嵌合部材63に押さえ付けられることで、駆動軸62がフィルタ部50に連結される。モータ60の回転駆動により、フィルタ部50がケース本体21内(ろ過空間S内)で回転する。
【0049】
図2に示されるように、モータ60の出力軸64が駆動軸62に対してオフセットしていてもよい。例えば、出力軸64の中心を通る出力軸線Lmは、駆動軸62の中心を通る回転軸線Lに対し、左右の何れかにずれて(離れて)いる。その場合、出力軸64と駆動軸62の間には、互いに噛み合うギア64a,62aが介在される。これらのギア比調整により、回転数が調整される。ギア比は特に限定されず、適宜に設定されてよい。ギア64aとギア62aのギア比を2:1としてフィルタ部50を加速させることで遠心力を得てもよいし、それとは逆に、フィルタ部50を減速させることで十分なトルクを得てもよい。ギア比が1:1でもよい。また、オフセットの方向は左右方向に限られない。モータ60の回転力の伝達機構はこれに限られず、例えば2つの軸をオフセットさせることなく、駆動軸62がモータ60の出力軸に直結されてもよい。
【0050】
続いて、本実施形態の洗濯機1における排水フィルタ100の動作及び使用方法について説明する。まず、排水フィルタ100は、筐体2内のケース20に装着され、レバー40が連結位置P2に位置する状態で、フィルタ本体51のボス部52がモータ60の嵌合部材63に嵌合し、モータ60の駆動軸62がフィルタ部50に連結される。このとき、昇降機構80の一対の左右スライド部材82に形成された複数の係止片82f(
図6参照)が、側面部31bからY方向外方に突出してフランジ面27aの裏面側に形成された係止凹部23eに嵌入する。これにより、カバー板部36がフランジ面27aに密着し、フランジ面27aとフィルタ組立体Aとの間が水封される。
【0051】
洗濯機1における運転中、排水バルブ17は閉じられており、外槽6内の洗濯水は第1排水管16a及びケース20内に満たされている。洗い工程及びすすぎ工程の終了時には、排水バルブ17が開けられ、外槽6内の洗濯水が第1排水管16aを通じて流下し、排水フィルタ100に導入される。
図4に示されるように、フィルタ部50のフィルタ面Fは、導入口25aと排出口26aの間の流れ上に配置される。本実施形態では、導入口25aの真下の位置に底壁部53が配置されており、洗濯水は底壁部53上に落下する。洗濯水の一部分(大部分)は底面メッシュ部55及び底壁部53の第1孔部53aを通過し、洗濯水の他の部分(比較的少ない部分)は周面メッシュ部56及び周壁部54の第2孔部54aを通過する。このとき、糸くず等の異物がフィルタ本体51上に捕集される。なお、異物は、洗濯物に由来する他の物質、例えばリント又はマイクロプラスチック等を含み得る。洗濯水の通水時(ろ過時)、フィルタ部50は停止している。洗濯機1における運転モード等に応じて、排水フィルタ100における上記のろ過工程は1回のみ行われてもよいし、複数回行われてもよい。なお、第1排水管16aに排水バルブ17が設けられる構成を採用した場合には、ケース20内が満水にはならず、異物をより安定して捕獲できる。
【0052】
続いて、洗濯機1における運転が完了すると、外槽6内の洗濯水は空の状態であり、排水フィルタ100への洗濯水の流入はなくなる(停止する)。制御部90のモータ制御部91(
図8参照)は、モータ60を制御し、フィルタ部50を所定時間(例えば、1分~数分程度)回転させる。なお、フィルタ部50の回転数及び回転時間(所定時間の長さ)は、調整可能であってもよい。これにより、異物に含まれる水分が遠心力でフィルタ部50の外周の方へ飛ばされ、異物が脱水される。このとき、水分は主に周壁部54の第2孔部54aを通じてフィルタ部50の外部へ排出される。フィルタ部50の回転に伴う脱水により、捕集(捕獲)された糸くず等は圧縮されている。糸くず等の異物は、遠心力により円錐面部57から離れる径方向外方へと飛ばされ、周壁部54の内周面に張り付くか、又は底壁部53の外周部(フィルタ本体51の隅部)に集まる。
【0053】
フィルタ回転時(脱水時)のモータ60(駆動軸62)の回転数は、例えば、500~1500rpm程度であってもよい。フィルタ部50の回転時間(脱水時間)は、1~数分程度であってもよい。
【0054】
本実施形態において、上記した制御部90(
図8参照)は、フィルタ部50の回転時にモータ60(駆動軸62又は出力軸64)の回転数を取得し、取得した回転数に基づいてフィルタ部50における閉塞状況又は異物の堆積状況を推定する。言い換えれば、制御部90は、モータ60の回転数に基づいて、フィルタ部50(具体的にはフィルタ本体51)の掃除の要否を判断する。これにより、洗濯機1では、使用者に対して表示部110(
図8参照)を通じて「フィルタお掃除サイン」を報知することができるようになっている。この検知機能に関する詳細構成については後述する。
【0055】
続いて、
図8及び
図9を参照して、フィルタ部50の掃除の要否の判断(検知機能)について説明する。
図8は、排水フィルタ100のモータ60に対して設けられた制御部90と、洗濯機1における表示部110を示す図である。
図9(a)は、モータ60に対して設けられた電気回路の一例を示す図である。
図8に示されるように、制御部90は、モータ制御部91と、回転数取得部92と、判断部93とを有する。モータ制御部91は、モータ60を上記した所定の回転数で回転させる。
【0056】
制御部90は、例えば、脱水時におけるモータ60の回転数を予め記憶している。非同期モータでは、異物の堆積や閉塞(詰まり)等によってフィルタ本体51に抵抗が生じると、回転数が低下し得る。そこで、制御部90は、フィルタ部50の回転時にモータ60に生じている負荷に関する負荷パラメータとして、モータ60(駆動軸62又は出力軸64)の回転数を使用する。制御部90は、フィルタ部50の掃除の要否に関する判断基準として、例えば、回転数に関する1つのしきい値を記憶している。しきい値は、正常時の回転数(上記した所定の回転数)よりも小さく、例えば正常時の回転数の70%~90%の範囲内の値である。回転数のしきい値をモータの種類に応じて適宜変更してもよい。
【0057】
回転数取得部92は、モータ本体61から、モータ60の回転数(具体的には駆動軸62の回転数)を取得する。回転数取得部92は、例えば、モータ制御部91によってフィルタ部50の回転が開始された後、所定時間が経過した時点における回転数を取得する。この所定時間は、例えば、上記した回転時間の1/5~1/2に相当する時間であってもよい。例えば、所定時間が回転時間の1/5に相当する時間である場合は、回転数取得部92は、回転時間の後ろ側4/5に相当する時間の範囲内で、適宜、回転数を取得する。所定時間が回転時間の1/2に相当する時間である場合は、回転数取得部92は、回転時間の後半1/2に相当する時間の範囲内で、適宜、回転数を取得する。
【0058】
回転数の取得方法としては、公知の手法が用いられ得る。例えば、モータ本体61内部に磁石を設け、磁石の接近/離反に応じて電気信号を出力する素子(ホール素子等)を用いることができる。
【0059】
判断部93は、取得されたモータ60の回転数と、記憶されたしきい値とを比較し、何れの値が大きいかを判断する。判断部93は、モータ60の回転数がしきい値を超える場合、フィルタ部50の掃除はまだ不要であると判断する。判断部93は、モータ60の回転数がしきい値以下である場合、フィルタ部50の掃除が必要であると判断する。すなわち、判断部93は、非同期モータの回転数が一定の値まで低下すれば、フィルタ部50の掃除(メンテナンス)が必要な程度にフィルタ部50に糸くず等の異物が溜まったと判断する。
【0060】
制御部90は、判断部93がフィルタ部50の掃除が必要であると判断した場合、操作パネルに設けられたディスプレイである表示部(報知部)110を制御し、表示部110に「フィルタお掃除サイン」を表示させる。「フィルタお掃除サイン」は、表示部における視覚的な表示のみならず、例えばブザー音等を伴うものであってもよい。このような報知が、洗濯機1以外の通信端末との間の通信によって当該通信端末においてなされてもよい。
【0061】
本実施形態では、
図9(a)に示されるように、ホール素子68を含むセンサ式の回転数検知を行う。ホール素子は磁界の変化を検知する集積回路(IC)である。ホール素子として、磁石が近づいたらオンになり、遠ざかったらオフになる「スイッチタイプ」と、N極とS極が近づく度にオン/オフを切り替える(遠ざかってもオン/オフが保持される)「ラッチタイプ」が存在する。本実施形態の回転数検知では、回転数が高いときでも検知精度を維持するため、ラッチタイプのホール素子68を採用することが望ましい。スイッチタイプは、パルスが細くなりすぎる傾向がある。
【0062】
図9に示されるホール素子68の接続例では、コンデンサ69a及びプルアップ抵抗69bが設けられる。プルアップ抵抗69bは、出力SENSE OUTが不安定になるのを防止する。回転系70には、磁石のN極とS極が交互に配置されており、N極とS極がホール素子68に接近する度に、SENSE OUTがHigh(VDD)、Low(GND)に切り替わるので、例えばSENSEOUTの立ち上がりエッジを検出することで、
図9(b)に示される1つのサイクルCに要する時間を検出できる。この時間の逆数が、回転系70の回転周波数(Hz)になる。周波数(Hz)に60を乗じると、回転数(rpm)が得られる。
【0063】
なお、同様の仕組みを持ったホール素子が、モータ60ではなくフィルタ部50の方に設けられてもよい。この場合、フィルタ部50の回転数が、モータ60の回転数と同様にして負荷パラメータとして利用される。
【0064】
使用者は、「フィルタお掃除サイン」を視認すると、例えば、筐体2のカバーB(
図1参照)を開け、レバー40を反時計回りに回転操作する。これにより、昇降機構80を介してフィルタ部50を下降させる。レバー40が非連結位置P1に位置する状態で、フィルタ本体51のボス部52はモータ60の嵌合部材63から切り離されている。フィルタ部50が下降端に位置しており、また左右スライド部材82の係止片82fは係止凹部23eから脱出している。使用者は、レバー40を持ち、フィルタ組立体Aをケース本体21から引き出すことができる。そして、フィルタ部50を取り外して逆さにする等して、異物をフィルタ部50から落として(分離させて)廃棄する。その際には、糸くずのヌメリやベタつきといった問題は低減されており、使用者に与える不快感も低減されている。なお、この異物の除去作業は、当然ながら洗濯機1の停止時(モータ60の停止時)に行われる。
【0065】
本実施形態の洗濯機1では、洗濯水に含まれる異物は、排水フィルタ100のフィルタ部50に捕集される。モータ60によってフィルタ部50が回転させられると、異物に含まれる水分が遠心力でフィルタ部50の外周の方へ飛ばされ、異物が脱水される。よって、使用者がフィルタ部50を掃除する際、異物における水分率が低下していることにより、衛生面での不快感が抑えられる。ここで、制御部90は、モータ60又はフィルタ部50における負荷パラメータに基づいてフィルタ部50の掃除の要否を判断する。負荷パラメータは、フィルタ部50における閉塞状況又は異物の堆積状況を反映する。よって、負荷パラメータのしきい値を予め設定しておくことにより、制御部90は、フィルタ部50の掃除が必要な状況を推定することができ、またそれを使用者に報知することもできる。したがって、回転自在なフィルタ部50に関して、掃除の要否を早期に判断できる。従来の排水フィルタ(上記特許文献1)では、排水開始から所定の水位まで下がる時間を計測することで、フィルタユニットの詰まり具合を推定していたが、本実施形態では、異物が遠心力によってフィルタ本体51の周壁部54に堆積するため、洗濯水は底壁部53の第1孔部53aを抜けていくこととなり、同様の推定手法を適用するのが難しい。そこで、フィルタ部50の回転時におけるモータ60における負荷パラメータを用いることで、詰まり具合の推定を可能としている。
【0066】
制御部90は、フィルタ部50の回転時における負荷パラメータとしてのモータ60の回転数に基づいて、フィルタ部50の掃除の要否を判断する。非同期モータであるモータ60においては、モータ60の負荷が増大すると、モータ60の回転数が徐々に低下する。よって、制御部90は、モータ60の回転数を取得して判断を行うことにより、掃除の要否を一層容易に判断できる。
【0067】
制御部90は、フィルタ部50の回転が開始された後、所定時間が経過した時点における回転数等の負荷パラメータに基づいて、フィルタ部50の掃除の要否を判断する。フィルタ部50の回転が開始された直後は、異物における水分率が低下しきっていない。所定時間が経過した時点における負荷パラメータを判断に用いることで、制御部90は、掃除の要否を早期かつ正確に判断できる。
【0068】
続いて、第2実施形態に係る洗濯機1について説明する。第2実施形態が先の第1実施形態と異なる点は、モータ本体61として、非同期モータに代えて同期モータが採用された点である。モータ本体61は、例えば、ブラシレスDCモータ等の同期モータである。モータ本体61は他の同期モータであってもよい。
【0069】
制御部90は、例えば、脱水時におけるモータ本体61に流れる電流値を予め記憶している。同期モータでは、異物の堆積や閉塞(詰まり)等によってフィルタ本体51に抵抗が生じると、回転数は低下せずに電流値が上昇する。そこで、制御部90は、フィルタ部50の回転時にモータ60に生じている負荷に関する負荷パラメータとして、モータ60(モータ本体61)に流れる電流値を使用する。制御部90は、フィルタ部50の掃除の要否に関する判断基準として、例えば、電流値に関する1つのしきい値を記憶している。しきい値は、正常時の電流値(上記した所定の回転数)よりも大きく、例えば正常時の電流値の1.3倍~1.7倍の範囲内の値である。電流値のしきい値をモータの種類に応じて適宜変更してもよい。
【0070】
第2実施形態において、制御部90は、モータ本体61から、モータ60に流れる電流値を取得する。制御部90はそのために、機能構成として電流値取得部(不図示)を有してもよい。制御部90は、例えば、モータ制御部91によってフィルタ部50の回転が開始された後、所定時間が経過した時点における電流値を取得する。所定時間に関しては第1実施形態と同様の考え方が適用され得る。
【0071】
電流値の測定方法としては、例えば、
図10に示される回路構成が利用されてもよい。
図10に示されるように、モータ本体61の駆動回路にはシャント抵抗78が設けられている。シャント抵抗78には、モータ電流と同じ電流が流れる。シャント抵抗78の両端の電圧が、電流値検知回路79に設けられたオペアンプ79aによって増幅される。その結果得られる電圧Voutは、モータ電流に比例した電圧となる。例えば、オペアンプ79aによって増幅された電圧Voutを測定することにより、電流値を測定してもよい。なお、センサーレスの検知回路である場合に、正弦波(サインカーブ)の振幅を測定してもよい。
【0072】
判断部93は、取得されたモータ60の電流値と、記憶されたしきい値とを比較し、何れの値が大きいかを判断する。判断部93は、モータ60の電流値がしきい値より小さい場合、フィルタ部50の掃除はまだ不要であると判断する。判断部93は、モータ60の電流値がしきい値以上である場合、フィルタ部50の掃除が必要であると判断する。すなわち、判断部93は、同期モータの電流値が一定以上の値になれば、フィルタ部50の掃除(メンテナンス)が必要な程度にフィルタ部50に糸くず等の異物が溜まったと判断する。
【0073】
本実施形態においても、上記第1実施形態と同様の作用・効果が奏される。すなわち、負荷パラメータのしきい値を予め設定しておくことにより、制御部90は、フィルタ部50の掃除が必要な状況を推定することができ、またそれを使用者に報知することもできる。したがって、回転自在なフィルタ部50に関して、掃除の要否を早期に判断できる。制御部90は、フィルタ部50の回転時における負荷パラメータとしてのモータ本体61に流れる電流値に基づいて、フィルタ部50の掃除の要否を判断する。同期モータにおいては、負荷が増大しても回転数は低下しない。その代わり、負荷が増大するとモータ本体61に流れる電流値が増大する。よって、制御部90は、モータに流れる電流値を取得して判断を行うことにより、掃除の要否を一層容易に判断できる。また、所定時間が経過した時点における負荷パラメータを判断に用いることで、制御部90は、掃除の要否を正確に判断できる。
【0074】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限られない。例えば、制御部90は、フィルタ部の回転時において前記モータに生じている負荷量に関する負荷パラメータとして、別のパラメータを用いてもよい。例えば、制御部90は、モータ60ではなくフィルタ部50における負荷パラメータに基づいて、フィルタ部の掃除の要否を判断してもよい。また、負荷パラメータとして、モータ60の回転数ではなく、モータ60の回転を停止させる制御を開始してから(具体的には通電を停止してから)モータ60が実際に止まるまでの時間を用いてもよい。停止制御を開始してから完全停止までの時間を測定することにより、非同期モータ及び同期モータの何れにおいても、掃除の要否を判断することができる。
【0075】
モータ60とフィルタ部50の嵌合構造は、上記実施形態に限られない。例えば、
図11に示される嵌合構造が採用されてもよい。この変形例に係る排水フィルタ100Aが
図4に示した排水フィルタ100と違う点は、フィルタ部50においてボス部52に代えて底壁部53から僅かに突出するボス部53bが設けられた点と、モータ60において嵌合部材63に代えて円盤状の嵌合部材67が設けられた点である。嵌合部材67は、フィルタ本体51Aよりやや大きい直径を有し、嵌合部材67の周縁部67aがフィルタ本体51の周壁部54に嵌合している。このフィルタ部50Aにおいても、モータ60の駆動軸62からの回転力がフィルタ本体51Aに伝達される。
【0076】
ケース20又はフィルタ組立体Aの構成は、上記実施形態から更に変更されてもよい。フィルタ本体51の形状が、上部が開放された多角形状をなしてもよい。昇降機構80やレバー40等は、省略されてもよい。
【0077】
制御部90は、モータ制御部91によってフィルタ部50の回転が開始されたとき又はその直後に、判断に用いる負荷パラメータを取得してもよい。
【0078】
表示部110等の報知部における報知のみならず、制御部90からの信号に基づいて、フィルタ部50の自動清掃が行われてもよい。
【0079】
本発明がドラム洗濯機以外の洗濯機、例えば縦型洗濯機に適用されてもよい。
【符号の説明】
【0080】
1…洗濯機、2…筐体、6…外槽、7…ドラム(洗濯槽)、9…駆動モータ、16…排水管、17…排水バルブ、20…ケース、21…ケース本体、50…フィルタ部、51…フィルタ本体、60…モータ、61…モータ本体、62…駆動軸、64…出力軸、90…制御部、92…回転数取得部、93…判断部、100…排水フィルタ、110…表示部(報知部)、A…フィルタ組立体、B…カバー。