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特開2024-135320ヘッドレスト及びこれを備えた車両用シート
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135320
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】ヘッドレスト及びこれを備えた車両用シート
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/80 20180101AFI20240927BHJP
【FI】
B60N2/80
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023045946
(22)【出願日】2023-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 浩介
(72)【発明者】
【氏名】今成 勝利
【テーマコード(参考)】
3B087
【Fターム(参考)】
3B087DC05
(57)【要約】
【課題】車酔いを軽減しつつ、頭部への振動入力を抑制することができるヘッドレスト及びこれを備えた車両用シートを得る。
【解決手段】ヘッドレスト10は、車両用シート12におけるシートバック14の上端部に装着可能とされ、骨格を構成するヘッドレストステー16と、ヘッドレストステー16を覆い、着座乗員Pの頭部Hを支持可能なベース部22と、ベース部22からシート前方側へ突出すると共に着座乗員Pの頭部Hにおける後頭骨に対応する部位H1をシート後方側かつシート幅方向両側から支持可能な突出部24と、を備えたパッド本体18と、前記パッド本体18においてヘッドレストステー16よりもシート前方側に設けられ、パッド本体18よりも低剛性な振動吸収部30と、を有する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用シートにおけるシートバックの上端部に装着可能とされ、骨格を構成するヘッドレストステーと、
前記ヘッドレストステーを覆い、着座乗員の頭部を支持可能なベース部と、前記ベース部からシート前方側へ突出すると共に着座乗員の頭部における後頭骨に対応する部位をシート後方側かつシート幅方向両側から支持可能な突出部と、を備えたパッド本体と、
前記パッド本体において前記ヘッドレストステーよりもシート前方側に設けられ、前記パッド本体よりも低剛性な振動吸収部と、
を有するヘッドレスト。
【請求項2】
前記突出部は、前記ベース部の下部からシート前方側へ突出しており、前記振動吸収部は、当該突出部のシート後方側に配置されている、
請求項1に記載のヘッドレスト。
【請求項3】
前記振動吸収部は、前記パッド本体においてシート幅方向の中央部に配置されている、
請求項2に記載のヘッドレスト。
【請求項4】
前記パッド本体の下部において、前記振動吸収部のシート幅方向外側には、それぞれ前記パッド本体よりも高剛性な左右一対の補強部が設けられている、
請求項3に記載のヘッドレスト。
【請求項5】
前記突出部のシート前側には、シート後方側へ凹み、前記後頭骨に対応する部位をシート後方側かつシート幅方向両側から支持する凹部が形成されており、
前記左右一対の補強部は、シート前方側から見て前記凹部よりもシート幅方向外側に配置されている、
請求項4に記載のヘッドレスト。
【請求項6】
前記パッド本体の下部には、シート上方側へ凹んだ溝部がシート幅方向に沿って形成されており、前記振動吸収部及び前記左右一対の補強部は、当該溝部に挿入されている、
請求項5に記載のヘッドレスト。
【請求項7】
着座乗員の臀部及び大腿部を支持可能なシートクッションと、
前記シートクッションの後端部に連結され着座乗員の背部を支持可能なシートバックと、
前記シートバックの上端部に装着可能とされた着座乗員の頭部を支持可能な請求項1~請求項6のいずれか一項に記載の前記ヘッドレストと、
を有する車両用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッドレスト及びこれを備えた車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、車酔い軽減のため、頭部の左右揺動を抑制する頭部支持部(サポート部)が設けられたヘッドレストが開示されている。この技術において、頭部支持部は、着座乗員の頭部における後頭骨と対応する部位を、シート左右方向から支持するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-93052号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載された技術では、後頭骨と対応する部位をシート左右方向から支持するため、頭部支持部と頭部との接触面積がその分増加する。このため、ヘッドレストから頭部への振動入力量が増加することが考えられる。
【0005】
本発明は、上記の事実を考慮し、車酔いを軽減しつつ、振動を減衰させることができるヘッドレスト及びこれを備えた車両用シートを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の本発明に係るヘッドレストは、車両用シートにおけるシートバックの上端部に装着可能とされ、骨格を構成するヘッドレストステーと、前記ヘッドレストステーを覆い、着座乗員の頭部を支持可能なベース部と、前記ベース部からシート前方側へ突出すると共に着座乗員の頭部における後頭骨に対応する部位をシート後方側かつシート幅方向両側から支持可能な突出部と、を備えたパッド本体と、前記パッド本体において前記ヘッドレストステーよりもシート前方側に設けられ、前記パッド本体よりも低剛性な振動吸収部と、を有している。
【0007】
請求項1に記載の本発明によれば、着座乗員の頭部における後頭骨に対応する部位は、パッド本体のシート前方側に設けられた突出部によって、シート後方側かつシート幅方向両側から支持される。よって、後頭骨に対応する部位の左右揺動が抑制され、車酔いが軽減される。
【0008】
また、ロードノイズやエンジンの振動は、車両の車体フロアからヘッドレストステーを介してヘッドレストに伝達され、着座乗員の頭部に入力される。本発明に係るヘッドレストは、ヘッドレストステーよりもシート前方側に、振動吸収部が設けられている。振動吸収部はパッド本体よりも低剛性であるため、頭部からの荷重によって弾性変形しやすい。よって、ヘッドレストステーから伝わる振動は、振動吸収部において減衰され、頭部への振動入力が抑制される。
【0009】
請求項2に記載の本発明に係るヘッドレストは、請求項1に記載の発明において、前記突出部は、前記ベース部の下部からシート前方側へ突出しており、前記振動吸収部は、当該突出部のシート後方側に配置されている。
【0010】
請求項2に記載の本発明によれば、突出部はパッド本体の下部に設けられており、振動吸収部は、当該突出部のシート後方側に配置されている。ここで、例えば着座乗員がリラックスした姿勢では、突出部にもたれかかっているため、突出部からシート後ろ向きに荷重がかかる。この状態では、突出部の後方側に配置された振動吸収部が弾性変形している。よって、着座乗員がリラックスした姿勢において車両の後突が発生した場合には、振動吸収部がある程度潰れた状態の所定の硬さを有するヘッドレストによって、後突時の頭部保護性能が維持される。
【0011】
また、例えば運転姿勢等、着座乗員の頭部がヘッドレストに当接していない状態で車両に後突が発生すると、ヘッドレストにおいて、主にベース部の上部が頭部からシート後ろ向きの荷重を受ける。当該ベース部は、振動吸収部よりも高剛性であるため、頭部保護性能が維持される。つまり、車両の後突時に、着座乗員がいずれの姿勢であっても、ヘッドレストによって頭部が好適に支持される。
【0012】
請求項3に記載の本発明に係るヘッドレストは、請求項2に記載の発明において、前記振動吸収部は、前記パッド本体においてシート幅方向の中央部に配置されている。
【0013】
請求項3に記載の本発明によれば、例えば車両の直進時には、乗員の頭部からヘッドレストのシート幅方向中央部に、シート後ろ向きの荷重がかかる。このとき、振動吸収部が潰れて弾性変形することで、シート前後方向の振動が吸収される。
【0014】
また、車両の旋回時等には、遠心力によって頭部から突出部に対して左右の一方向に偏って荷重がかかるが、振動吸収部はシート幅方向の中央部に設けられているため、頭部の左右揺動抑制効果を阻害せずに済む。よって、車酔い軽減効果を維持することができる。
【0015】
請求項4に記載の本発明に係るヘッドレストは、請求項3に記載の発明において、前記パッド本体の下部において、前記振動吸収部のシート幅方向外側には、それぞれ前記パッド本体よりも高剛性な左右一対の補強部が設けられている。
【0016】
請求項4に記載の本発明によれば、車両の旋回時等、遠心力によって頭部から突出部に対して左右の一方向に偏って荷重がかかった場合、当該方向側の補強部によって荷重が分担される。これにより、突出部が当該方向へ沈み込むことが抑制される。よって、後頭骨に対応する部位の左右揺動がより一層抑制される。
【0017】
請求項5に記載の本発明に係るヘッドレストは、請求項4に記載の発明において、前記突出部のシート前側には、シート後方側へ凹み、前記後頭骨に対応する部位をシート後方側かつシート幅方向両側から支持する凹部が形成されており、前記左右一対の補強部は、シート前方側から見て前記凹部よりもシート幅方向外側に配置されている。
【0018】
請求項5に記載の本発明によれば、後頭骨に対応する部位は、凹部によってシート後方側かつシート幅方向両側から支持される。ここで、左右一対の補強部は、シート前方側から見て凹部よりもシート幅方向外側に設けられている。これにより、左右一対の補強部がヘッドレストステーから凹部への振動の伝達経路となることが抑制される。
【0019】
また、車両の直進時に、乗員の頭部から凹部に対してシート後ろ向きに荷重がかかった場合、左右一対の補強部が振動吸収部の弾性変形を阻害せずに済む。よって、振動減衰効果を維持することができる。
【0020】
請求項6に記載の本発明に係るヘッドレストは、請求項5に記載の発明において、前記パッド本体の下部には、シート上方側へ凹んだ溝部がシート幅方向に沿って形成されており、前記振動吸収部及び前記左右一対の補強部は、当該溝部に挿入されている。
【0021】
請求項6に記載の本発明によれば、振動吸収部及び左右一対の補強部は、一本の溝部に挿入されている。よって、それぞれ別々の溝部に挿入される場合と比較して、製造コストが低減される。また、溝部に対して挿入する振動吸収部及び左右一対の補強部の大きさや個数を自由に変更することができる。
【0022】
請求項7に記載の本発明に係る車両用シートは、着座乗員の臀部及び大腿部を支持可能なシートクッションと、前記シートクッションの後端部に連結され着座乗員の背部を支持可能なシートバックと、前記シートバックの上端部に装着可能とされた着座乗員の頭部を支持可能な請求項1~請求項6のいずれか一項に記載の前記ヘッドレストと、を有している。
【0023】
請求項7に記載の本発明によれば、着座乗員の臀部及び大腿部は、シートクッションに支持される。また、着座乗員の背部は、シートバックに支持される。さらに、着座乗員の頭部は、ヘッドレストに支持される。
【0024】
ここで、着座乗員の頭部において後頭骨に対応する部位は、突出部によって、シート後方側かつシート幅方向両側から支持される。これにより、後頭骨に対応する部位の左右揺動が抑制され、車酔いが軽減される。
【0025】
また、ヘッドレストステーから伝わる振動は振動吸収部において減衰され、頭部への振動入力が抑制される。
【発明の効果】
【0026】
以上説明したように、請求項1に記載の本発明に係るヘッドレストは、車酔いを軽減しつつ、振動を減衰させることができるという優れた効果を有する。
【0027】
請求項2に記載の本発明に係るヘッドレストは、車両の後突時の頭部保護性能を維持することができるという優れた効果を有する。
【0028】
請求項3に記載の本発明に係るヘッドレストは、前後方向の振動を効果的に吸収しつつ、車酔い軽減効果を維持することができるという優れた効果を有する。
【0029】
請求項4に記載の本発明に係るヘッドレストは、車酔いをより一層軽減することができるという優れた効果を有する。
【0030】
請求項5に記載の本発明に係るヘッドレストは、振動減衰効果を維持することができるという優れた効果を有する。
【0031】
請求項6に記載の本発明に係るヘッドレストは、製造コストを低減しつつ、所望の効果に合わせて設計の自由度を向上させることができるという優れた効果を有する。
【0032】
請求項7に記載の本発明に係る車両用シート、車酔いを軽減しつつ、振動を減衰させることができるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本実施形態に係るヘッドレストを備えた車両用シートの斜視図である。
図2図1に示されるヘッドレストの左側面図である。
図3図1の3-3線断面図である。
図4図2の4-4線断面図である。
図5】第1変形例に係るヘッドレストの平断面図である。
図6】第2変形例に係るヘッドレストの平断面図である。
図7】第3変形例に係るヘッドレストの平断面図である。
図8】第4変形例に係るヘッドレストの平断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、図1図8を用いて、本発明の第1実施形態に係るヘッドレスト10について説明する。なお、各図に適宜示される矢印FR、矢印UP、矢印LH及び矢印RHは、ヘッドレスト10を備えた車両用シート12のシート前方側、シート上方側、シート幅方向左側及びシート幅方向右側を示している。また、以下の説明で特記なく前後、上下、左右の方向を用いる場合は、シート前後方向の前後、シート上下方向の上下、シート左右方向(幅方向)の左右をそれぞれ示すものとする。
【0035】
図1には、ヘッドレスト10を備えた車両用シート12の前方斜視図が示されている。車両用シート12は、着座乗員P(図3参照。以下、「乗員P」と称す。)の臀部及び大腿部を支持可能な図示しないシートクッションと、シートクッションの後端部に連結され乗員Pの背部を支持可能なシートバック14と、シートバック14の上端部に装着され乗員Pの頭部H(図3参照)を支持可能なヘッドレスト10と、を備えている。本実施形態では一例として、車両用シート12が適用された車両は、運転操作を必要とせずに走行可能な、所謂、自動運転モードを備えた車両であり、車両用シート12は、当該車両の運転席に配置されている。なお、車両用シートは、これに限らず、自動運転モードを備えていない車両に適用されてもよい。また、車両用シートは、運転席以外の座席に適用されてもよい。
【0036】
ヘッドレスト10は、骨格を構成する金属製のヘッドレストステー16と、ヘッドレストステー16を覆うパッド本体18と、パッド本体18を覆う表皮20と、を含んで構成されている。ヘッドレストステー16は、一例として、前後方向から見て下方側に開放された略U字状に形成されており、シートバック14の被挿入部14Aに挿入されている。表皮20は、例えば布材、ニット素材、合成皮革、皮革等からなる複数の表皮片が互いに縫製されて構成されている。
【0037】
パッド本体18は、例えばポリウレタンフォーム等の発泡樹脂製とされており、ヘッドレストステー16を埋設して発泡成形されている。パッド本体18は、ヘッドレストステー16が埋設されたベース部22と、ベース部22の下部からシート前方側へ向かって突設された突出部24と、を備えている。以下、ヘッドレスト10において、突出部24と突出部24を覆う表皮20の一部とを合わせて「サポート部26」と称す。
【0038】
図2に示されるように、ベース部22は、側面視で略三角形状に形成されており、シート下方側へ向かうにつれてシート前後方向の厚さが厚くなっている。ベース部22において、上部のシート前側の面22Aは、乗員Pの頭部H(図3参照)の上部をシート後方側から支持可能になっている。
【0039】
一方、図4に示されるように、突出部24は、平断面視でシート前方側に開放された略U字状に形成されており、突出部24のシート前側には、シート後方側へ凹んだ凹部24Aが形成されている。これにより、サポート部26は、シート幅方向の中央部に設けられたセンタサポート部26Aと、センタサポート部26Aの左右両側に設けられ、センタサポート部26Aよりもシート前方側に突出して設けられたサイドサポート部26Bと、を備えている。つまり、突出部24は、後頭骨に対応する部位H1(図3参照)がシート後方側、シート幅方向両側及びシート下方側から広く支持されるように、後頭部の形状に合わせて形成されている。凹部24は、一例として、ヘッドレストステー16の左右一対の脚部の間隔と略同一のシート幅方向の寸法を有している。なお、凹部の寸法は上記に限定されるものではない。
【0040】
図1図4に示されるように、パッド本体18の下部において、突出部24の後方側には、シート上方側へ凹んだ溝部28がシート幅方向に沿って形成されている。図2に示されるように、溝部28のシート上下方向の寸法は、突出部24のシート上下方向の寸法と略同一とされている。図4に示されるように、溝部28は、パッド本体18の左側面18Aから右側面18Bまで左右方向に貫通して形成されている。
【0041】
ここで、溝部28には、パッド本体18よりも低剛性な軟質ウレタンで構成された振動吸収部30と、パッド本体18よりも高剛性な硬質ウレタンで構成された左右一対の補強部32と、がそれぞれ挿入されている。
【0042】
振動吸収部30は、パッド本体18の溝部28においてシート幅方向の中央部に配置されている。一方、左右一対の補強部32は、振動吸収部30のシート幅方向外側に配置されている。より詳細には、左右一対の補強部32は、シート前方側から見て凹部24Aよりもシート幅方向外側に配置されている。
【0043】
振動吸収部30は、シート幅方向及びシート上下方向に延在する略矩形のシート状に構成されており、溝部28の前後方向の寸法と略同一の厚みを有している。本実施形態に係るヘッドレスト10の振動吸収部30は、ヘッドレストステー16及び凹部24Aよりもシート幅方向外側まで延在している。また、振動吸収部30は、例えば共振周波数が7.0Hz以下のスラブウレタンとされている。なお、振動吸収部の構成は上記に限定されるものではなく、例えばモールドウレタンであってもよい。
【0044】
また、左右一対の補強部32は、それぞれ振動吸収部30に隣接して振動吸収部30の左右両側に配置されている。左右一対の補強部32は、振動吸収部30と略同一の前後方向の厚みを有し、パッド本体18の左側面18A及び右側面18Bの形状に合わせて、シート幅方向外側の面が湾曲して形成されている。具体的には、左右一対の補強部32は、上部が下部よりもシート幅方向外側に突出した形状となっている。なお、補強部32の構成は、上記に限定されるものではない。
【0045】
また、振動吸収部30及び左右一対の補強部32は、シート幅方向に延在する前後一対の樹脂フィルム(図示省略)によってシート前後方向に挟まれている。振動吸収部30及び左右一対の補強部32は、前後一対の樹脂フィルムにそれぞれ固定されており、これによりシート幅方向に連結されている。なお、振動吸収部と左右一対の補強部とは、樹脂フィルムに限らず、他の方法で連結されていてもよい。例えば、左右一対の補強部が振動吸収部に直接接着されていてもよい。また、振動吸収部と左右一対の補強部は連結されていなくてもよい。この場合、振動吸収部と各補強部は、それぞれ溝部に挿入されればよい。
【0046】
(本実施形態の作用)
次に、本実施形態の作用について説明する。
【0047】
本実施形態に係るヘッドレスト10及び車両用シート12によれば、突出部24を含むサポート部26によって、乗員Pの頭部Hにおいて後頭骨に対応する部位H1は、シート後方側かつシート幅方向両側から支持される。これにより、後頭骨に対応する部位H1の左右揺動が抑制され、車酔いが軽減される。
【0048】
また、ロードノイズやエンジンの振動等は、図示しない車体のフロアからシートクッション及びシートバック14を介して、ヘッドレストステー16へ伝達される。ここで、ヘッドレストステー16からサポート部26へ振動が伝播され、乗員Pの頭部Hへ振動が入力される。特に、例えば自動運転モードにおいて乗員Pがリラックスした姿勢では、乗員Pの頭部Hからヘッドレスト10にかかる荷重が増加するため、ヘッドレスト10から頭部Hへ入力される振動が増加する。
【0049】
本実施形態に係るヘッドレスト10によれば、パッド本体18よりも低剛性な振動吸収部30は、乗員Pの頭部Hから荷重を受けると、前後方向に潰れて弾性変形する。これにより前後方向の振動が吸収される。つまり、ヘッドレストステー16から伝わる前後方向の振動は、振動吸収部30において減衰される。よって、ヘッドレストから頭部Hへの振動入力が抑制され、快適性が向上する。
【0050】
ここで、例えば乗員Pがリラックスした姿勢では、突出部24にもたれかかっているため、突出部24からシート後ろ向きに荷重がかかる。この状態では、突出部24の後方側に配置された振動吸収部30が弾性変形している。この乗員Pがリラックスした姿勢において車両の後突が発生すると、振動吸収部30が潰れきる前に、ベース部22の上部から頭部Hに対して反力が作用する。当該ベース部22は振動吸収部30よりも高剛性であるため、後突時の頭部保護性能が維持される。
【0051】
また、例えば運転姿勢等、乗員Pの頭部Hがヘッドレスト10に当接していない状態で車両に後突が発生した場合も同様に、主にベース部22の上部から頭部Hに対して反力が作用する。つまり、車両の後突時に、乗員Pがいずれの姿勢であっても、ヘッドレスト10のベース部22の上部によって、頭部が好適に支持される。
【0052】
さらにまた、本実施形態に係るヘッドレスト10によれば、パッド本体18よりも高剛性な補強部32が、パッド本体18の下部において、振動吸収部30のシート幅方向外側に設けられている。よって、車両の旋回時等、頭部Hからサポート部26に対して左右の一方向に偏って荷重がかかった場合に、当該方向側の補強部32によって荷重が分担される。これにより、溝部28がシート前後方向に潰れることが抑制される。より詳細には、補強部32によって、溝部28のシート前方側の面が溝部28のシート後方側の面に対して左右方向に傾いた状態で溝部28がシート前後方向に潰れることが抑制される。よって、突出部24の当該方向への沈み込みが抑制され、後頭骨に対応する部位H1の左右揺動がより一層抑制される。
【0053】
また、本実施形態に係るヘッドレスト10によれば、後頭骨に対応する部位H1は、突出部24の凹部24Aによって、シート後方側かつシート幅方向両側から支持される。ここで、左右一対の補強部32は、シート前方側から見て凹部24Aよりもシート幅方向外側に設けられている。これにより、左右一対の補強部32が振動の伝達経路となることが抑制される。また、車両の直進時等、後頭骨に対応する部位H1から凹部24Aに対してシート後ろ向きに荷重がかかった場合、左右一対の補強部32が振動吸収部30の弾性変形を阻害せずに済む。よって、前後方向の振動減衰効果を維持することができる。
【0054】
さらに、本実施形態に係るヘッドレスト10によれば、振動吸収部30及び左右一対の補強部32は、一本の溝部28に挿入されているため、それぞれ別々の溝部に挿入される場合と比較して、製造コストが低減される。また、溝部28に対して挿入する振動吸収部30及び補強部32の大きさや個数を自由に変更することができる。
【0055】
さらにまた、本実施形態に係るヘッドレスト10によれば、リンクやヒンジ等の機構部品を用いてサポート部を突設させる構成と比較して、サポート部26が常設されているため、部品点数を削減することができる。よって、ヘッドレスト10を軽量かつ安価に製造することができると共に、解体が容易となる。
【0056】
また、本実施形態に係るヘッドレスト10によれば、振動吸収部30は、共振周波数が7.0Hz以下のスラブウレタンとされているため、9.9Hz以上の周波数領域に対して減衰効果を得ることができる。よって、シートの共振領域である10~50Hzの周波数範囲に対して包括的な減衰効果を得ることができる。
【0057】
〔上記実施形態の補足説明〕
上記実施形態では、突出部24はベース部22の下部からシート前方側へ突出しているものとして説明したが、これに限らない。例えば、突出部は、パッド本体において、上下方向の中央部に設けられていてもよい。
【0058】
また、上記実施形態では、振動吸収部30は、突出部24のシート後方側に設けられているものとして説明したが、これに限らない。例えば、振動吸収部は、パッド本体の上部に設けられていてもよい。なお、後突時の頭部保護性能を維持する観点で、振動吸収部30はパッド本体18の下部において突出部24のシート後方側に設けられている方が好ましい。
【0059】
さらに、上記実施形態では、左右一対の補強部32は、振動吸収部30と略同一の前後方向の厚みを有するものとして説明したが、これに限定されない。例えば、図5に示される第1変形例の構造を採用してもよい。なお、以下の各変形例において、本実施形態と同一の構成については、同一の符号を付して適宜その説明を省略する。
【0060】
第1変形例に係るヘッドレスト40は、振動吸収部30の左右両側に、振動吸収部30よりもシート前後方向の寸法が小さい補強部42を備えている。これにより、車両の直進時に、補強部42を介した突出部24への振動伝播がより一層抑制される。よって、振動減衰効果を向上させることができる。
【0061】
さらにまた、上記実施形態では、左右一対の補強部32は、それぞれ振動吸収部30に隣接して設けられているものとして説明したが、これに限らない。例えば、図6に示される第2変形例の構造を採用してもよい。
【0062】
本変形例に係るヘッドレスト50は、振動吸収部52と左右一対の補強部32との間に、空間部54が設けられている。これにより、上記実施形態と比較して振動吸収部30が潰れやすくなり、より一層高い振動減衰効果を得ることができる。
【0063】
また、上記実施形態では、振動吸収部30を1つ備えたヘッドレスト10について説明したが、これに限らず、ヘッドレストは振動吸収部を複数備えていてもよい。例えば、図7に示される第3変形例の構造を採用してもよい。
【0064】
本変形例に係るヘッドレスト60は、2つの振動吸収部62と、左右一対の補強部32との間に、それぞれ空間部64が設けられている。これにより、振動吸収部30がより一層潰れやすくなる。なお、振動吸収部30の数は適宜変更され得るものである。
【0065】
さらに、上記実施形態では、左右一対の補強部32が設けられているものとして説明したが、これに限らず、ヘッドレストは補強部を備えていなくてもよい。
【0066】
例えば、溝部28の左右方向全体に亘って振動吸収部が挿入されていてもよい。この場合、本実施形態に係るヘッドレスト10以上の振動減衰効果を得ることができる。なお、車両の旋回時等、頭部Hからサポート部26に対して左右の一方向に荷重がかかった場合の突出部24の左右方向の傾きが抑制される観点で、補強部32を有する方が好ましい。
【0067】
また、例えば、図8に示される第4変形例の構造を採用してもよい。本変形例に係るヘッドレスト70は、シート幅方向の中央部に溝部72が設けられている。振動吸収部30は当該溝部72のシート幅方向全体に亘って挿入されている。つまり、振動吸収部30のシート幅方向外側には、振動吸収部30よりも高剛性のパッド本体74が配置されている。これにより、パッド本体74における突出部24の左右方向の傾きをある程度抑制することができる。本変形例に係るヘッドレスト70によれば、補強部を有さないため、製造コストを低減することができる。
【0068】
以上の実施形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
【0069】
(付記1)
車両用シートにおけるシートバックの上端部に装着可能とされ、骨格を構成するヘッドレストステーと、
前記ヘッドレストステーを覆い、着座乗員の頭部を支持可能なベース部と、前記ベース部からシート前方側へ突出すると共に着座乗員の頭部における後頭骨に対応する部位をシート後方側かつシート幅方向両側から支持可能な突出部と、を備えたパッド本体と、
前記パッド本体において前記ヘッドレストステーよりもシート前方側に設けられ、前記パッド本体よりも低剛性な振動吸収部と、
を有するヘッドレスト。
(付記2)
前記突出部は、前記ベース部の下部からシート前方側へ突出しており、前記振動吸収部は、当該突出部のシート後方側に設けられている、
付記1に記載のヘッドレスト。
(付記3)
前記振動吸収部は、前記パッド本体においてシート幅方向の中央部に設けられている、
付記1又は付記2に記載のヘッドレスト。
(付記4)
前記パッド本体の下部において、前記振動吸収部のシート幅方向外側には、それぞれ前記パッド本体よりも高剛性な左右一対の補強部が設けられている、
付記1~付記3のいずれか一に記載のヘッドレスト。
(付記5)
前記突出部のシート前側には、シート後方側へ凹み、前記後頭骨に対応する部位をシート後方側かつシート幅方向両側から支持する凹部が形成されており、
前記左右一対の補強部は、シート前方側から見て前記凹部よりもシート幅方向外側に設けられている、
付記4に記載のヘッドレスト。
(付記6)
前記パッド本体の下部には、シート上方側へ凹んだ溝部がシート幅方向に沿って形成されており、前記振動吸収部及び前記左右一対の補強部は、当該溝部に挿入されている、
付記4又は付記5に記載のヘッドレスト。
(付記7)
着座乗員の臀部及び大腿部を支持可能なシートクッションと、
前記シートクッションの後端部に連結され着座乗員の背部を支持可能なシートバックと、
前記シートバックの上端部に装着可能とされた着座乗員の頭部を支持可能な付記1~付記6のいずれか一項に記載の前記ヘッドレストと、
を有する車両用シート。
【符号の説明】
【0070】
10、40、50、60、70 ヘッドレスト
12 車両用シート
14 シートバック
16 ヘッドレストステー
18、74 パッド本体
22 ベース部
24 突出部
24A 凹部
28、72 溝部
30、52、62 振動吸収部
32、42 補強部
H 頭部
H1 後頭骨に対応する部位
P 着座乗員
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8