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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135349
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】半導体装置及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/338 20060101AFI20240927BHJP
   H01L 29/417 20060101ALI20240927BHJP
   H01L 29/41 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
H01L29/80 F
H01L29/80 H
H01L29/50 M
H01L29/44 P
H01L29/44 Y
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023045980
(22)【出願日】2023-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317011920
【氏名又は名称】東芝デバイス&ストレージ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004026
【氏名又は名称】弁理士法人iX
(72)【発明者】
【氏名】小林 仁
(72)【発明者】
【氏名】小野村 正明
(72)【発明者】
【氏名】杉山 亨
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 啓
(72)【発明者】
【氏名】磯部 康裕
(72)【発明者】
【氏名】大野 哲也
(72)【発明者】
【氏名】関口 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】洪 洪
(72)【発明者】
【氏名】垣内 頼人
【テーマコード(参考)】
4M104
5F102
【Fターム(参考)】
4M104AA04
4M104AA07
4M104BB01
4M104BB02
4M104BB14
4M104BB18
4M104BB30
4M104CC01
4M104CC05
4M104DD08
4M104DD37
4M104DD75
4M104DD80
4M104EE03
4M104EE06
4M104EE17
4M104FF11
4M104GG08
4M104HH20
5F102FA01
5F102GB01
5F102GC01
5F102GD10
5F102GJ03
5F102GQ01
5F102GV06
5F102GV08
5F102HC01
(57)【要約】
【課題】電流コラプス現象を抑制することができる半導体装置及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】半導体装置は、窒化物半導体層と、ソース電極と、ドレイン電極と、ゲート電極と、絶縁膜と、ゲート電極とドレイン電極との間に位置し、窒化物半導体層に接し、ドレイン電極と電気的に接続された導体層と、を備える。ドレイン電極は、窒化物半導体層に接する第1部分と、第1部分よりも導体層側に位置する第2部分とを有する。絶縁膜は、導体層とドレイン電極との間に位置する一部を有する。第2部分は、絶縁膜の一部上に設けられている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1層と、前記第1層上に設けられ、前記第1層よりもバンドギャップが広い第2層とを有する窒化物半導体層と、
前記窒化物半導体層上に設けられ、前記窒化物半導体層に接するソース電極と、
第1方向において前記ソース電極から離れて位置し、前記窒化物半導体層上に設けられ、前記窒化物半導体層に接するドレイン電極と、
前記ソース電極と前記ドレイン電極との間に位置し、前記窒化物半導体層に接しないゲート電極と、
前記ソース電極と前記ドレイン電極との間における前記窒化物半導体層上に設けられた絶縁膜と、
前記ゲート電極と前記ドレイン電極との間に位置し、前記窒化物半導体層に接し、前記ドレイン電極と電気的に接続された導体層と、
を備え、
前記ドレイン電極は、前記窒化物半導体層に接する第1部分と、前記第1方向において前記第1部分よりも前記導体層側に位置する第2部分とを有し、
前記絶縁膜は、前記導体層と前記ドレイン電極との間に位置する一部を有し、
前記第2部分は、前記絶縁膜の前記一部上に設けられている、半導体装置。
【請求項2】
前記第1方向に延びるドレイン配線部をさらに備え、
前記ドレイン電極及び前記導体層は、前記第1方向に交差する第2方向に延び、前記ドレイン配線部と接続されている、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記ドレイン電極の前記第2部分が前記導体層に接している、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第1方向における前記導体層と、前記ドレイン電極の前記第1部分との間の距離は、前記第1方向における前記ゲート電極と前記導体層との間の距離よりも短い、請求項1~3のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項5】
前記絶縁膜は、前記窒化物半導体層の表面に設けられた第1膜と、前記第1膜上に設けられ、前記第1膜よりも厚い第2膜とを有し、
前記ゲート電極は前記第1膜上に設けられ、
前記第2膜は前記ゲート電極を覆う、請求項1~3のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項6】
第1層と、前記第1層上に設けられ、前記第1層よりもバンドギャップが広い第2層とを有する窒化物半導体層と、
前記窒化物半導体層上に設けられ、前記窒化物半導体層に接するソース電極と、
第1方向において前記ソース電極から離れて位置し、前記窒化物半導体層上に設けられ、前記窒化物半導体層に接するドレイン電極と、
前記ソース電極と前記ドレイン電極との間に位置し、前記窒化物半導体層に接しないゲート電極と、
前記ソース電極と前記ドレイン電極との間における前記窒化物半導体層上に設けられた絶縁膜と、
前記絶縁膜と前記ドレイン電極との間に位置し、前記ドレイン電極及び前記窒化物半導体層に接する導電部と、
を備え、
前記絶縁膜は、前記導電部と前記ドレイン電極との間に位置せず、
前記ドレイン電極は、前記窒化物半導体層に接する第1部分と、前記導電部上に設けられた第2部分とを有する、半導体装置。
【請求項7】
前記導電部は、前記ドレイン電極とは異なる組成をもつ材料からなる、請求項6に記載の半導体装置。
【請求項8】
第1層と、前記第1層上に設けられ、前記第1層よりもバンドギャップが広い第2層とを有する窒化物半導体層を準備する工程と、
前記窒化物半導体層上に絶縁膜を形成する工程と、
前記絶縁膜に、前記窒化物半導体層を露出させる第1開口を形成する工程と、
前記第1開口に導体層を形成する工程と、
前記導体層との間に前記絶縁膜の一部を残すように、前記絶縁膜に前記窒化物半導体層を露出させる第2開口を形成する工程と、
前記第2開口において前記窒化物半導体層に接する第1部分と、前記第1部分よりも前記導体層側に位置し、前記絶縁膜の前記一部上に位置する第2部分とを有するドレイン電極を形成する工程と、
を備える、半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記ドレイン電極を形成する工程において、前記第2部分を前記導体層に接触させる、請求項8に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項10】
第1層と、前記第1層上に設けられ、前記第1層よりもバンドギャップが広い第2層とを有する窒化物半導体層を準備する工程と、
前記窒化物半導体層上に絶縁膜を形成する工程と、
前記絶縁膜上に金属膜を形成する工程と、
前記金属膜に含まれる金属を前記金属膜の下の前記絶縁膜に熱拡散させ、前記絶縁膜に金属拡散領域を形成する工程と、
前記絶縁膜における前記金属拡散領域に隣接する部分に、前記窒化物半導体層を露出させる第1開口を形成する工程と、
前記第1開口において前記窒化物半導体層及び前記金属拡散領域に接する第1部分と、前記金属拡散領域上に位置する第2部分とを有するドレイン電極を形成する工程と、
を備える、半導体装置の製造方法。
【請求項11】
第1層と、前記第1層上に設けられ、前記第1層よりもバンドギャップが広い第2層とを有する窒化物半導体層を準備する工程と、
前記窒化物半導体層上に絶縁膜を形成する工程と、
前記絶縁膜の一部に対するイオン注入により、前記絶縁膜の一部に改質領域を形成する工程と、
前記改質領域の一部を除去して、前記窒化物半導体層を露出させる第1開口を形成する工程と、
前記第1開口において前記窒化物半導体層及び前記改質領域に接する第1部分と、前記改質領域上に位置する第2部分とを有するドレイン電極を形成する工程と、
を備える、半導体装置の製造方法。
【請求項12】
第1層と、前記第1層上に設けられ、前記第1層よりもバンドギャップが広い第2層とを有する窒化物半導体層を準備する工程と、
前記窒化物半導体層上に絶縁膜を形成する工程と、
前記絶縁膜の一部に、前記窒化物半導体層を露出させる第1開口を形成する工程と、
前記第1開口に、前記絶縁膜よりも導電率が高い半絶縁膜を形成する工程と、
前記半絶縁膜の一部を除去して、前記窒化物半導体層を露出させる第2開口を形成する工程と、
前記第2開口において前記窒化物半導体層及び前記半絶縁膜に接する第1部分と、前記半絶縁膜上に位置する第2部分とを有するドレイン電極を形成する工程と、
を備える、半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実施形態は、半導体装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パワーデバイスとして、窒化ガリウム系材料を用いたHEMT(High Electron Mobility Transistor)が知られている。このようなデバイスの問題として、高電圧で動作させるとオン抵抗が増加する電流コラプス現象がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-30079号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
実施形態は、電流コラプス現象を抑制することができる半導体装置及びその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態によれば、半導体装置は、第1層と、前記第1層上に設けられ、前記第1層よりもバンドギャップが広い第2層とを有する窒化物半導体層と、前記窒化物半導体層上に設けられ、前記窒化物半導体層に接するソース電極と、第1方向において前記ソース電極から離れて位置し、前記窒化物半導体層上に設けられ、前記窒化物半導体層に接するドレイン電極と、前記ソース電極と前記ドレイン電極との間に位置し、前記窒化物半導体層に接しないゲート電極と、前記ソース電極と前記ドレイン電極との間における前記窒化物半導体層上に設けられた絶縁膜と、前記ゲート電極と前記ドレイン電極との間に位置し、前記窒化物半導体層に接し、前記ドレイン電極と電気的に接続された導体層と、を備える。前記ドレイン電極は、前記窒化物半導体層に接する第1部分と、前記第1方向において前記第1部分よりも前記導体層側に位置する第2部分とを有する。前記絶縁膜は、前記導体層と前記ドレイン電極との間に位置する一部を有する。前記第2部分は、前記絶縁膜の前記一部上に設けられている。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】第1実施形態の半導体装置の模式平面図である。
図2図1におけるA-A断面図である。
図3】第2実施形態の半導体装置の模式断面図である。
図4】第3実施形態の半導体装置の模式断面図である。
図5】第1実施形態の半導体装置の製造方法を示す模式断面図である。
図6】第1実施形態の半導体装置の製造方法を示す模式断面図である。
図7】第1実施形態の半導体装置の製造方法を示す模式断面図である。
図8】第1実施形態の半導体装置の製造方法を示す模式断面図である。
図9】第1実施形態の半導体装置の製造方法を示す模式断面図である。
図10】第1実施形態の半導体装置の製造方法を示す模式断面図である。
図11】第3実施形態の第1例による半導体装置の製造方法を示す模式断面図である。
図12】第3実施形態の第1例による半導体装置の製造方法を示す模式断面図である。
図13】第3実施形態の第1例による半導体装置の製造方法を示す模式断面図である。
図14】第3実施形態の第1例による半導体装置の製造方法を示す模式断面図である。
図15】第3実施形態の第2例による半導体装置の製造方法を示す模式断面図である。
図16】第3実施形態の第2例による半導体装置の製造方法を示す模式断面図である。
図17】第3実施形態の第3例による半導体装置の製造方法を示す模式断面図である。
図18】第3実施形態の第3例による半導体装置の製造方法を示す模式断面図である。
図19】第3実施形態の第3例による半導体装置の製造方法を示す模式断面図である。
図20】第3実施形態の第3例による半導体装置の製造方法を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照し、実施形態について説明する。なお、各図面中、同じ構成には同じ符号を付している。
【0008】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態の半導体装置1の模式平面図である。図2は、図1におけるA-A断面図である。図面において、互いに直交する2方向を第1方向X及び第2方向Yとする。第1方向X及び第2方向Yに直交する方向を、第3方向Zとする。本明細書において、厚さ方向は、第3方向Zに沿う。
【0009】
図2に示すように、第1実施形態の半導体装置1は、窒化物半導体層10を備える。窒化物半導体層10は、第1層11と第2層12とを有する。第2層12は、第3方向Zにおいて第1層11上に設けられている。第2層12のバンドギャップは、第1層11のバンドギャップよりも広い。例えば、第1層11はGaN層であり、第2層12はAlGaN層である。第1層11における第2層12との界面近傍に2次元電子ガス13が分布する。窒化物半導体層10の厚さは、例えば、5μmである。第2層12の厚さは、第1層11の厚さよりも薄く、例えば、30nmである。
【0010】
半導体装置1は、窒化物半導体層10を支持する基板100をさらに備えることができる。基板100として、例えば、シリコン基板を用いることができる。
【0011】
半導体装置1は、窒化物半導体層10上に設けられたソース電極30と、第1方向Xにおいてソース電極30から離れて位置し、窒化物半導体層10上に設けられたドレイン電極40とを備える。ソース電極30及びドレイン電極40は、例えば、Ti、Al、TiNの少なくとも1つを含むことができる。
【0012】
ソース電極30は、窒化物半導体層10に接する。ソース電極30は、窒化物半導体層10にオーミック接触する。図2に示す例では、ソース電極30は、第2層12に接する。
【0013】
半導体装置1は、ゲート電極50をさらに備える。ゲート電極50は、第1方向Xにおいてソース電極30とドレイン電極40との間に位置する。ゲート電極50は、例えば、TiNを含むことができる。ゲート電極50の厚さは、例えば、50nmである。ドレイン電極40とゲート電極50との間の第1方向Xにおける距離(最短距離)は、ソース電極30とゲート電極50との間の第1方向Xにおける距離(最短距離)よりも長い。
【0014】
半導体装置1は、ソース電極30とドレイン電極40との間における窒化物半導体層10上に設けられた絶縁膜20をさらに備える。絶縁膜20は、窒化物半導体層10の表面に設けられた第1膜21と、第1膜21上に設けられた第2膜22とを有する。ゲート電極50と窒化物半導体層10との間に第1膜21が設けられ、ゲート電極50は窒化物半導体層10に接していない。第2膜22は、ゲート電極50を覆っている。第1膜21及び第2膜22として、例えば、シリコン窒化膜を用いることができる。第1膜21の厚さは、第2膜22の厚さよりも薄く、例えば、20nm以上40nm以下である。第2膜22の厚さは、例えば、100nm以上200nm以下である。
【0015】
半導体装置1は、導体層60をさらに備える。導体層60は、第1方向Xにおいてゲート電極50とドレイン電極40との間に位置する。導体層60は、窒化物半導体層10に接している。図2に示す例では、導体層60は、第2層12の表面に接している。導体層60の下面は、第2層12の厚さ方向の途中に位置してもよい。導体層60は、2次元電子ガス13に達しなければよい。導体層60は、窒化物半導体層10とオーミック接触していても、オーミック接触していなくてもよい。導体層60の材料として、例えば、タングステン、または、不純物がドープされた多結晶シリコンなどを用いることができる。
【0016】
図2は、半導体装置1における1つのセルの断面を表す。1つのセルは、上述した構成を有する。半導体装置1において、複数のセルが第1方向Xに繰り返されている。なお、図3以降の断面図においても、1つのセルの断面を表す。
【0017】
導体層60は、ドレイン電極40と電気的に接続されている。第1実施形態においては、導体層60は、図1に示すドレイン配線部45を介して、ドレイン電極40と電気的に接続されている。
【0018】
図1に示すように、半導体装置1は、第1方向Xに延びるドレイン配線部45を備えることができる。複数のドレイン電極40及び複数の導体層60が、ドレイン配線部45と接続され、ドレイン配線部45から第2方向Yに延びている。それぞれのドレイン電極40は、第1方向Xにおいて2つの導体層60の間に位置する。
【0019】
また、半導体装置1は、第1方向Xに延びるソース配線部35と、第1方向Xに延びるゲート配線部55とを備えることができる。ソース配線部35は、第2方向Yにおいてドレイン配線部45から離れて位置する。ゲート配線部55は、第2方向Yにおいてドレイン配線部45とソース配線部35との間に位置する。
【0020】
複数のソース電極30が、ソース配線部35と接続され、ソース配線部35からドレイン配線部45に向かって第2方向Yに延びている。複数のゲート電極50が、ゲート配線部55と接続され、ゲート配線部55からドレイン配線部45に向かって第2方向Yに延びている。それぞれのソース電極30は、第1方向Xにおいて2つのゲート電極50の間に位置する。
【0021】
外部回路から、ドレイン配線部45を介して複数のドレイン電極40及び複数の導体層60にドレイン電位が与えられ、ソース配線部35を介して複数のソース電極30にソース電位が与えられ、ゲート配線部55を介して複数のゲート電極50にゲート電位が与えられる。半導体装置1の動作時において、ドレイン電位はソース電位より高い電位である。
【0022】
図2に示すように、ドレイン電極40は、第1部分41と第2部分42とを有する。第1部分41と第2部分42とは、同材料で一体に設けられている。第1部分41は、窒化物半導体層10に接する。この例では、第1部分41は第2層12に接する。第2部分42は、第1方向Xにおいて第1部分41よりも導体層60側に位置する。
【0023】
絶縁膜20は、第1方向Xにおいて導体層60とドレイン電極40との間に位置する一部20aを有する。ドレイン電極40の第2部分42は、絶縁膜20の一部20a上に設けられている。ドレイン電極40の第2部分42と、窒化物半導体層10との間に、絶縁膜20の一部20aが設けられている。
【0024】
第1方向Xにおける導体層60と第1部分41との間の距離(最短距離)は、第1方向Xにおけるゲート電極50と導体層60との間の距離(最短距離)よりも短い。すなわち、導体層60は、第1方向Xにおいて、ゲート電極50よりもドレイン電極40に近い位置に設けられている。
【0025】
一般に、プロセス上、ドレイン電極40の一部(第2部分42)が、絶縁膜20上に乗り上げて形成されやすい。この場合、ドレイン電極40とソース電極30との間に高電圧が印加されると、ドレイン電極40が乗り上げた絶縁膜20の一部20aに電界が集中し、窒化物半導体層10から電子が絶縁膜20に移動して、絶縁膜20中にトラップされやすくなる。絶縁膜20中にトラップされた電子により、その下の2次元電子ガス13が空乏化しやすくなり、時間経過に伴ってオン抵抗が増加する電流コラプス現象が生じ得る。
【0026】
本実施形態によれば、ドレイン電極40との間に絶縁膜20の一部20aを挟むように、ドレイン電極40と電気的に接続された導体層60をドレイン電極40の近くに設けている。これにより、ドレイン電極40とソース電極30との間に高電圧が印加されても、絶縁膜20の一部20aに電界が集中しにくくし、絶縁膜20の一部20aにトラップされる電子を低減して、電流コラプス現象を抑制することができる。
【0027】
[第2実施形態]
図3は、第2実施形態の半導体装置2の模式断面図である。
【0028】
第2実施形態の半導体装置2において、ドレイン電極40の第2部分42が導体層60に接することで、導体層60がドレイン電極40と電気的に接続されている。第2部分42は、第1部分41から、絶縁膜20の一部20aの上面上を導体層60に向かって延び、導体層60の上面の少なくとも一部に接している。これにより、ドレイン電極40とソース電極30との間に高電圧が印加されても、絶縁膜20の一部20aに電界が集中しにくくし、絶縁膜20の一部20aにトラップされる電子を低減して、電流コラプス現象を抑制することができる。
【0029】
[第3実施形態]
図4は、第3実施形態の半導体装置3の模式断面図である。
【0030】
半導体装置3は、第1方向Xにおいて絶縁膜20とドレイン電極40との間に位置する導電部70を備える。導電部70は、窒化物半導体層10に接している。図4に示す例では、導電部70は、第2層12の表面に接している。導電部70の下面は、第2層12の厚さ方向の途中に位置してもよい。導電部70は、2次元電子ガス13に達しなければよい。導電部70は、窒化物半導体層10とオーミック接触していても、オーミック接触していなくてもよい。また、導電部70は、ドレイン電極40に接し、ドレイン電極40と電気的に接続されている。
【0031】
導電部70とドレイン電極40との間に絶縁膜20が設けられていない。絶縁膜20上に、ドレイン電極40が乗り上げて位置しない。ドレイン電極40の第2部分42は、絶縁膜20ではなく、導電部70の上に乗り上げて設けられている。このため、ドレイン電極40とソース電極30との間に高電圧が印加されても、導電部70中の電子はドレイン電極40に流れ、導電部70中に電子が蓄積されにくい。これにより、電流コラプス現象を抑制することができる。
【0032】
導電部70は、後述するように、ドレイン電極40を形成する工程とは別の工程により形成することができる。例えば、導電部70は、ドレイン電極40とは異なる組成をもつ材料からなる。
【0033】
導電部70の材料として、例えば、前述した導体層60と同じ材料を用いることができる。また、絶縁膜20の一部に金属を拡散させることで、導電部70とすることができる。また、イオン注入により絶縁膜20の一部に結晶欠陥を生じさせることで、導電部70とすることができる。また、導電部70として、絶縁膜20よりも導電率が高い半絶縁膜を用いることができる。
【0034】
[半導体装置の製造方法]
次に、図5図10を参照して、第1実施形態の半導体装置の製造方法について説明する。
【0035】
第1実施形態の半導体装置の製造方法は、図5に示すように、窒化物半導体層10を準備する工程を備える。窒化物半導体層10は、例えば、MOCVD(metal organic chemical vapor deposition)法により、基板100上に形成することができる。
【0036】
第1実施形態の半導体装置の製造方法は、窒化物半導体層10上に絶縁膜20を形成する工程を備える。絶縁膜20を形成する工程は、窒化物半導体層10上に第1膜21を形成する工程を有する。第1膜21として、例えば、シリコン窒化膜をCVD(Chemical Vapor Deposition)法により形成することができる。
【0037】
第1実施形態の半導体装置の製造方法は、第1膜21上にゲート電極50を形成する工程を備える。ゲート電極50として、例えば、TiN膜をスパッタ法により形成することができる。
【0038】
絶縁膜20を形成する工程は、図6に示すように、ゲート電極50を覆うように、第1膜21上に第2膜22を形成する工程を有する。第2膜22として、例えば、シリコン窒化膜をCVD法により形成することができる。
【0039】
第1実施形態の半導体装置の製造方法は、図7に示すように、絶縁膜20に、窒化物半導体層10を露出させる第1開口20bを形成する工程を備える。第1開口20bは、例えば、RIE(Reactive Ion Etching)法により形成することができる。
【0040】
第1実施形態の半導体装置の製造方法は、第1開口20bに導体層60を形成する工程を備える。導体層60を形成する工程は、図8に示すように、絶縁膜20上及び第1開口20bに導電膜61を形成する工程を有する。導電膜61として、例えば、タングステン膜、または不純物がドープされた多結晶シリコン膜をCVD法により形成することができる。
【0041】
導体層60を形成する工程は、絶縁膜20上の導電膜61を、例えば、CMP(Chemical Mechanical Polishing)法、またはエッチバック法により除去する工程を有する。これにより、図9に示すように、絶縁膜20の第1開口20bに導体層60が形成される。
【0042】
第1実施形態の半導体装置の製造方法は、図10に示すように、絶縁膜20に第2開口20cを形成する工程を備える。また、第2開口20cと同時に、絶縁膜20に第3開口20dを形成することができる。第2開口20c及び第3開口20dは、例えば、マスク91を用いたRIE法により形成することができる。マスク91として、例えば、レジストマスクを用いることができる。
【0043】
第2開口20c及び第3開口20dにおいて、窒化物半導体層10は絶縁膜20から露出する。第2開口20cは、導体層60との間に絶縁膜20の一部20aを残すように形成される。第1方向Xにおける導体層60と第2開口20cとの間に、絶縁膜20の一部20aが位置する。
【0044】
第2開口20c及び第3開口20dを形成した後、マスク91は除去される。マスク91を除去した後、第1実施形態の半導体装置の製造方法は、ドレイン電極40を形成する工程を備える。
【0045】
図2に示すように、ドレイン電極40は、第2開口20cにおいて窒化物半導体層10に接する第1部分41と、第1部分41よりも導体層60側に位置し、絶縁膜20の一部20a上に位置する第2部分42とを有する。
【0046】
また、ドレイン電極40と同時に、ソース電極30を形成することができる。ドレイン電極40及びソース電極30は、例えば、スパッタ法により形成することができる。ソース電極30は、第3開口20dにおいて窒化物半導体層10に接する。また、ソース電極30の一部は、絶縁膜20上に位置する。
【0047】
ドレイン電極40を形成する工程において、第2部分42を導体層60の上面に接触させることで、図3に示す第2実施形態の半導体装置2が得られる。
【0048】
次に、図11図14を参照して、第3実施形態の第1例による半導体装置の製造方法について説明する。なお、図11以降の製造方法において、窒化物半導体層10、絶縁膜20、ゲート電極50、及びソース電極30は、上記第1実施形態と同様に形成され、その説明は省略することがある。
【0049】
第3実施形態の第1例による半導体装置の製造方法において、前述した図6に示す絶縁膜20を形成する工程までは、第1実施形態と同様に進められる。
【0050】
この後、第3実施形態の第1例による半導体装置の製造方法は、図11に示すように、絶縁膜20上に金属膜71を形成する工程を備える。金属膜71は、例えば、Ti及びAlの少なくともいずれかを含むことができる。金属膜71は、例えば、スパッタ法で形成することができる。
【0051】
第3実施形態の第1例による半導体装置の製造方法は、金属膜71に含まれる金属を金属膜71の下の絶縁膜20に熱拡散させる工程を備える。金属膜71に含まれる金属を、例えば、RTA(Rapid Thermal Anneal)法により熱拡散させる。このときの加熱温度は、例えば、500℃以上1200℃以下とすることができる。
【0052】
金属膜71に含まれる金属の熱拡散により、図12に示すように、絶縁膜20に金属拡散領域72が形成される。
【0053】
第3実施形態の第1例による半導体装置の製造方法は、図13に示すように、絶縁膜20に第1開口20eを形成する工程を備える。第1開口20eは、例えば、マスク92を用いたRIE法により形成することができる。マスク92として、例えば、レジストマスクを用いることができる。第1開口20eは、絶縁膜20における金属拡散領域72に隣接する部分に形成される。また、第1開口20eと同時に、絶縁膜20に第2開口20fを形成することができる。第1開口20e及び第2開口20fにおいて、窒化物半導体層10は絶縁膜20から露出する。
【0054】
第1開口20e及び第2開口20fを形成した後、マスク92は除去される。マスク92を除去した後、第3実施形態の第1例による半導体装置の製造方法は、図14に示すようにドレイン電極40を形成する工程を備える。
【0055】
ドレイン電極40は、第1開口20eにおいて窒化物半導体層10に接する第1部分41と、金属拡散領域72上に位置する第2部分42とを有する。第1部分41は、金属拡散領域72の側面にも接している。金属拡散領域72上には金属膜71が残り、第2部分42は、金属膜71を介して金属拡散領域72上に位置する。金属拡散領域72及び金属膜71が、図4に示す半導体装置3における導電部70に対応する。
【0056】
また、ドレイン電極40と同時に、ソース電極30を形成することができる。ソース電極30は、第2開口20fにおいて窒化物半導体層10に接する。
【0057】
次に、図15及び図16を参照して、第3実施形態の第2例による半導体装置の製造方法について説明する。
【0058】
第3実施形態の第2例による半導体装置の製造方法において、前述した図6に示す絶縁膜20を形成する工程までは、第1実施形態と同様に進められる。
【0059】
この後、第3実施形態の第2例による半導体装置の製造方法は、図15に示すように、絶縁膜20の一部に改質領域73を形成する工程を備える。改質領域73を形成する工程は、絶縁膜20にマスク93を形成する工程と、マスク93から露出する絶縁膜20の一部に対するイオン注入工程とを有する。マスク93として、例えば、レジストマスクを用いることができる。例えば、SiまたはArが絶縁膜20の一部に打ち込まれ、絶縁膜20中に結晶欠陥を生じさせる。絶縁膜20中の結晶欠陥により導電性を持った改質領域73が形成される。
【0060】
第3実施形態の第2例による半導体装置の製造方法は、図16に示すように、改質領域73の一部を除去して、窒化物半導体層10を露出させる第1開口20gを形成する工程を備える。
【0061】
例えば、マスク94を用いたRIE法により、マスク94から露出する改質領域73の一部を除去して、第1開口20gを形成することができる。また、第1開口20gと同時に、絶縁膜20に第2開口20hを形成することができる。
【0062】
第1開口20g及び第2開口20hを形成した後、マスク94は除去される。マスク94を除去した後、第3実施形態の第2例による半導体装置の製造方法は、ドレイン電極40を形成する工程を備える。また、ドレイン電極40と同時に、第2開口20hにソース電極30を形成することができる。
【0063】
ドレイン電極40は、第1開口20gにおいて窒化物半導体層10に接する第1部分41と、改質領域73上に位置する第2部分42とを有する。第1部分41は、改質領域73の側面にも接する。改質領域73が、図4に示す半導体装置3における導電部70に対応する。
【0064】
次に、図17図20を参照して、第3実施形態の第3例による半導体装置の製造方法について説明する。
【0065】
第3実施形態の第3例による半導体装置の製造方法において、前述した図6に示す絶縁膜20を形成する工程までは、第1実施形態と同様に進められる。
【0066】
この後、第3実施形態の第3例による半導体装置の製造方法は、図17に示すように、絶縁膜20の一部に、窒化物半導体層10を露出させる第1開口20iを形成する工程を備える。例えば、マスク95を用いたRIE法により、第1開口20iを形成することができる。マスク95として、例えば、レジストマスクを用いることができる。
【0067】
第3実施形態の第3例による半導体装置の製造方法は、第1開口20iを形成した後、図18に示すように、半絶縁膜74を形成する工程を備える。半絶縁膜74は、絶縁膜20上及び第1開口20iに連続して形成される。半絶縁膜74は、例えば、CVD法により形成することができる。
【0068】
半絶縁膜74の導電率は、絶縁膜20の導電率よりも高い。半絶縁膜74として、例えば、シリコン窒化膜を用いることができる。シリコン窒化膜における窒素の組成比は40%以上55%以下にすることができる。また、半絶縁膜74として、SIPOS(Semi-Insulated POlycrystalline Silicon)膜を用いることもできる。
【0069】
第3実施形態の第3例による半導体装置の製造方法は、第1開口20iに形成された半絶縁膜74の一部を除去して、第2開口20jを形成する工程を備える。図19に示すように、第2開口20jにおいて、窒化物半導体層10が半絶縁膜74及び絶縁膜20から露出する。
【0070】
例えば、マスク96を用いたRIE法により、第2開口20jを形成することができる。マスク96として、例えば、レジストマスクを用いることができる。また、第2開口20jと同時に、絶縁膜20に第3開口20kを形成することができる。
【0071】
第2開口20j及び第3開口20kを形成した後、マスク96は除去される。マスク96を除去した後、絶縁膜20上の半絶縁膜74を除去する。図20に示すように、第2開口20jに隣接する部分に半絶縁膜74が残される。例えば、CMP法またはエッチバック法により、絶縁膜20上の半絶縁膜74を除去することができる。
【0072】
第3実施形態の第3例による半導体装置の製造方法は、第2開口20jにドレイン電極40を形成する工程を備える。また、ドレイン電極40と同時に、第3開口20kにソース電極30を形成することができる。
【0073】
ドレイン電極40は、第2開口20jにおいて窒化物半導体層10に接する第1部分41と、半絶縁膜74上に位置する第2部分42とを有する。第1部分41は、半絶縁膜74の側面にも接する。半絶縁膜74が、図4に示す半導体装置3における導電部70に対応する。
【0074】
また、第3実施形態の第3例による半導体装置の製造方法と同じ工程により、タングステン、または、不純物がドープされた多結晶シリコンなどの導電膜を第1開口20iに形成して、図4に示す半導体装置3における導電部70を形成することができる。
【0075】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0076】
1~3…半導体装置、10…窒化物半導体層、11…第1層、12…第2層、13…2次元電子ガス、20…絶縁膜、20a…絶縁膜の一部、21…第1膜、22…第2膜、30…ソース電極、35…ソース配線部、40…ドレイン電極、41…第1部分、42…第2部分、45…ドレイン配線部、50…ゲート電極、55…ゲート配線部、60…導体層、70…導電部、71…金属膜、72…金属拡散領域、73…改質領域、74…半絶縁膜、100…基板
図1
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