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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135355
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】敷板
(51)【国際特許分類】
   B27D 1/04 20060101AFI20240927BHJP
   E04C 2/12 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
B27D1/04 E
B27D1/04 A
E04C2/12 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023045988
(22)【出願日】2023-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】304046269
【氏名又は名称】後藤木材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100119666
【弁理士】
【氏名又は名称】平澤 賢一
(74)【代理人】
【識別番号】100135758
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 高志
(72)【発明者】
【氏名】盛岡 実
(72)【発明者】
【氏名】栖原 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】後藤 慶次
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 隆行
(72)【発明者】
【氏名】奥村 久透
【テーマコード(参考)】
2B200
2E162
【Fターム(参考)】
2B200BA01
2B200BA13
2B200BA17
2B200BB12
2B200CA02
2B200CA11
2B200CA12
2B200DA05
2B200DA08
2B200DA15
2B200EA04
2B200ED10
2B200EE13
2B200EE22
2B200EE23
2B200FA24
2B200FA27
2E162CC01
(57)【要約】
【課題】耐荷重が高く、鉄板製の敷板に比べて軽量で環境負荷が小さく、アウトリガー用に好適な敷板を提供することができる。
【解決手段】複数の板状の木製ラミナ同士がその板幅方向に並べて接着してなるプライを含む敷板であって、前記木製ラミナの硬さが20~35N/mmであり、密度が0.7~1.1g/cmであり、少なくとも一方の主面の表面粗さが算術平均高さで7~50μmである敷板である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の板状の木製ラミナ同士がその板幅方向に並べてなるプライを含む敷板であって、
前記木製ラミナの硬さが20~35N/mmであり、密度が0.7~1.1g/cmであり、少なくとも一方の主面の表面粗さが算術平均高さで7~50μmである敷板。
【請求項2】
前記プライの木製ラミナの並び方向が互いに直交するように、前記プライが複数積層してなる請求項1に記載の敷板。
【請求項3】
少なくとも一方の主面の面積が900cm~20,000cmであり、厚さが24mm~72mmである請求項1又は2に記載の敷板。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土木・建築業界において利用される敷板及び敷板の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
土木・建築業界をはじめとした各産業界では、クレーン車や高所作業車、コンクリートポンプ車などでアームを伸ばしたり物を吊ったりする際に、車体横に張り出して接地させることで車体を安定させる目的でアウトリガーが使用される。アウトリガーは、重心位置が大きく移動するこれらの車両で、サスペンションスプリングやタイヤのたわみによる動揺を排除し、実質的な底辺長を増す目的で使用されている。アウトリガーとしては、真横に張り出すものが多いが、X字になるように展開させるものもある。
【0003】
アウトリガーを使用する際、その接地面との間に敷板を配置するのが一般的である。敷板の代表としては、鉄板が挙げられる。しかしながら、鉄板は重いため、大判のものは人力で敷設することができず、クレーンなどで吊って敷設しなければならない場合が多い。仮に人が持てる小さいものでも、足に落下させたり、指を挟んだりする災害事例が散見される。また、鉄はCO排出量原単位の大きな材料であり、より環境負荷の小さい材料への代替が望まれる。鉄板に替わる丈夫で環境負荷の小さな敷板の開発が待たれている。
【0004】
従来、鉄板に替わる敷板としては、廃プラスチック製の敷板やユーカリ材を使って直交集成板(CLT)とした敷板が知られている(例えば、非特許文献1及び非特許文献2参照)。非特許文献1の敷板は、鉄板と比べて軽く、廃プラスチックをリサイクルしたものであり、環境配慮物品である。非特許文献2の敷板はユーカリ材を使ったもので、鉄板と比べると軽く、廃プラスチックをリサイクルして製作された非特許文献1の敷板よりも、耐圧強度の高いものであった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】インターネット<URL:https://www.yamadabody.co.jp/category/select/pid/9720/language/ja>
【非特許文献2】インターネット<URL:https://jp.misumi-ec.com/vona2/detail/223013664344/>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、非特許文献1の敷板は、4トンユニックに限定されるものであり、それより大きい荷重には適用できないものであった。非特許文献2の敷板は、希少木材かつ輸入木材であるユーカリ材を使用しており、かつ、未だに耐荷重も十分なものではなかった。
【0007】
希少木材や輸入木材を使用することなく、国産の汎用木材を活用して、耐荷重の高い敷板を製作できれば、鉄板に代替して本敷板を活用する機会を増やすことができ、作業の効率化と安全性の向上を図ることができる。また、国産木材の普及拡大やCO削減にも寄与する。
【0008】
以上から、本発明は、耐荷重が高く、鉄板製の敷板に比べて軽量で環境負荷が小さく、アウトリガー用に好適な敷板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記の目的を達成すべく鋭意研究を進めたところ、圧密木材からなる木製ラミナであって、特定の表面粗さを有する敷板が上記課題を解決できることを見出した。
本発明は、上記の知見に基づくものであり、以下を要旨とする。
【0010】
[1] 複数の板状の木製ラミナ同士がその板幅方向に並べてなるプライを含む敷板であって、前記木製ラミナの硬さが20~35N/mmであり、密度が0.7~1.1g/cmであり、少なくとも一方の主面の表面粗さが算術平均高さで7~50μmである敷板。
[2] 前記プライの木製ラミナの並び方向が互いに直交するように、前記プライが複数積層してなる[1]に記載の敷板。
[3] 少なくとも一方の主面の面積が900cm~20,000cmであり、厚さが24mm~72mmである[1]又は[2]に記載の敷板。
[4] 原料木材を40~100℃で乾燥して乾燥木材とする乾燥工程と、前記乾燥木材を110~210℃で厚み方向に2~5MPaの圧力を加える加圧圧縮処理を複数回行って圧縮木材とする加熱圧縮工程と、前記加圧圧縮処理のうち、最後の加圧圧縮処理の圧力を維持した状態で、前記圧縮木材を40℃まで冷却して、板状の木製ラミナとする冷却工程と、前記木製ラミナの少なくとも一方の主面に粗面化処理を施す粗面化工程と、前記粗面化処理した複数の前記木製ラミナ同士をその板幅方向に並べてプライとするプライ作製工程と、を含む敷板の製造方法。
[5] 前記プライのラミナの並び方向が互いに直交するように、複数の前記プライを積層する積層工程を含む[4]に記載の敷板の製造方法。
[6] 前記原料木材が間伐材である[4]に記載の敷板の製造方法。
[7] 前記間伐材が杉である[6]に記載の敷板の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、耐荷重が高く、鉄板製の敷板に比べて軽量で環境負荷が小さく、アウトリガー用に好適な敷板を提供することができる。
特に、本発明の敷板の製造方法によれば、希少木材や輸入木材を使用することなく、国産の汎用木材を活用可能で、耐荷重が高く、鉄板に比べて軽量で環境負荷の小さい敷板を得ることが可能で、作業の効率化と安全性の向上を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態(本実施形態)に係る敷板及び敷板の製造方法のそれぞれについて、詳細に説明する。
【0013】
[敷板]
本実施形態に係る敷板は、複数の板状の木製ラミナ同士がその板幅方向に並べて接着してなるプライを含む。上記の木製ラミナ(以下、単に、「ラミナ」ということがある)は、硬さが20~35N/mmであり、密度が0.7~1.1g/cmである。具体的には上記硬さと密度となるように圧密化した圧密木材からなる。この圧密木材とは、木材を強力なプレスで圧縮し、熱処理で固定化させることにより、木材全体を均一に圧密化して硬度を向上させた木材である。
【0014】
ここで、「ラミナ」とは、プライを構成する最小単位のひき板をいう。
「プライ」とは、ラミナをその繊維方向を互いにほぼ平行にして幅方向に並べ(好ましくは接着)したものをいい、「ラミナ層」ということもある。
なお、プライのラミナの並び方向が互いに直交するように、複数のプライが積層してなるものをCLT(Cross Laminated Timber:直交集成板)ということがある。
【0015】
また、本実施形態に係るラミナは木製であるため、鉄に比べて、CO排出量原単位が小さい材料であり、より環境負荷の小さい材料である。そのため、敷板自体の環境負荷も小さくすることができる。また、国産の木材を原料とすることができるため、国産木材の普及拡大やCO削減にも寄与することができる。
【0016】
ラミナの硬さは、既述のとおり、20~35N/mmであるが、20N/mm未満では、耐荷重性が劣ってしまい、35N/mmを超えると、表面粗さを確保しにくくなる。硬さは、20~30N/mmであることが好ましく、25~30N/mmであることがより好ましい。
また、ラミナの曲げヤング係数は、特に限定されるものではないが、12GPa~22GPaであることが好ましい。曲げヤング係数が12GPa以上であることで、敷板を製作する際に、曲げ強さを確保するためにプライの積層数を多くする必要がなくなり、その結果、敷板製作の生産性を良好にすることができる。また、ラミナの曲げヤング係数を22GPa以下となるようにすることで、ラミナそのものの製作時の生産性が高くできる場合がある。
当該硬さや曲げヤング係数は、JIS Z 2101(木材の試験方法)によって測定し求めることができる。
【0017】
また、ラミナの密度は、既述のとおり、0.7~1.1g/cmであるが、0.7g/cm未満では、耐荷重性が劣ってしまい、1.1g/cmを超えると、軽量化が図れなくなってしまう。密度は、0.75~1.05g/cmであることが好ましく、0.8~1.0g/cmであることがより好ましい。
当該密度は、JIS Z 2101(木材の試験方法)によって測定し求めることができる。
【0018】
さらに、ラミナの少なくとも一方の主面(面積の一番広い面とその面に対向する面)の表面粗さは、面の算術平均高さ(Sa)で7~50μmである。算術平均高さが7μm未満であったり、あるいは、50μmを超えると、アウトリガー用とした際に、アウトリガーとの接触面及び/又は地面と接触面が作業による振動により滑りやすくなって安全性を損ねたりしまうことがある。この理由は定かではないが、算術平均高さが7μm未満の場合には、摩擦力が担保されないためと考えられ、逆に、算術平均高さが50μmを超えると、接触面積が著しく低下するために、やはりスベリやすくなると考えられる。
【0019】
ここで、面の算術平均高さ(Sa)とは、表面の平均面に対して、各点の高さの差の絶対値の平均を表すものであり、線の算術平均高さ(Ra)を面に拡張したパラメーターである。Raは対象面のごく一部の線の情報であり、面の情報を代表する値ではないため、これをモノサシとすることは相応しくない。したがって、本発明では、面の算術平均高さ(Sa)で評価する。
【0020】
当該算術平均高さ(Sa)は、光切断法を原理とするによって測定し求めることができる。この原理はつぎのようになる。投光レンズから照射された縞状の光は、対象物の表面で拡散反射する。反射した光を真上の受光レンズから観察すると、縞状であった光は、対象物の凹凸形状に応じて折れ曲がって見える。これをCMOSセンサに結像させ、演算(三角測量法)を行うことで各点の高さ・位置を測定するものである。
【0021】
強度を保ちつつ、地面やアウトリガーとの摩擦を確保する観点から、地面との接触面やアウトリガーとの接触面を構成するラミナの面の算術平均高さが8~40μmであることが好ましい。
また、プライを積層する際のプライ間の接着性の観点から、ラミナの両方の主面の算術平均高さは7~50μmであることが好ましい。
【0022】
本実施形態に係る敷板は、プライのラミナの並び方向が互いに直交するように、複数のプライが積層してなることが好ましい。すなわち、繊維方向が直交するように積層接着してCLTにすることが好ましい。このように複数積層してなることで、十分な耐荷重が得られ、アウトリガー設置時に木材の変形を十分に抑えることができる。
耐荷重や強度と軽量化の両立の観点、及び低コスト化の観点から、積層されるプライの数は、2~6枚(2層~6層)であることが好ましく、2~4枚(2層~4層)であることがより好ましい。
【0023】
本実施形態に係る敷板は、その一方の主面の面積が900cm~20,000cmであり、厚さが24mm~72mmであることが好ましい。面積が900cm~20,000cmであることで、反力の分散効果が十分に得られ、敷板が大きくなり過ぎることによる取り扱いや作業性の低下を防ぐことができる。厚さが24mm~72mmであることで、耐荷重が十分で、コストを抑え、良好な軽量性を維持できる。
一方の主面の面積は1,600~10,000cmであることがより好ましい。厚さは、30~70mmであることがより好ましい。
【0024】
1のプライを構成するラミナは、幅が80~480mmであることが好ましい。厚さは圧縮率にもよるので一義的ではないが、12~35mmであることが好ましい。また、1のプライを構成する際のラミナの数は、1~6枚であることが好ましい。
【0025】
本実施形態に係る敷板の硬さは、20~35N/mmであることが好ましく、20~30N/mmであることがより好ましく、25~30N/mmであることがさらに好ましい。
【0026】
以上のような本実施形態に係る敷板は、例えば、アウトリガー用、重機の悪路走行用等に使用することができ、特にアウトリガー用(すなわち、アウトリガー用敷板)であることが好ましい。
【0027】
例えば、アウトリガー用敷板である場合は、敷板を構成するラミナが軽量であるため、安全に取り扱うことができ作業性に優れる。また、良好な硬さ(耐荷重性)を有するため、安定かつ安全にクレーン作業等を行うことができる。さらに、敷板における地面との接触面及びアウトリガーとの接触面が所定の表面粗さとなっているため、クレーン作業や高所作業等で振動等が生じてもアウトリガーが滑ることがないため、安全な作業に供することができる。
【0028】
[敷板の製造方法]
本実施形態に係る敷板の製造方法は、
(1)原料木材を40~100℃で乾燥して乾燥木材とする乾燥工程と、
(2)乾燥木材を110~210℃で厚み方向に2~5MPaの圧力を加える加圧圧縮処理を複数回行って圧縮木材とする加熱圧縮工程と、
(3)加圧圧縮処理のうち、最後の加圧圧縮処理の圧力を維持した状態で、圧縮木材を40℃まで冷却して、板状の木製ラミナとする冷却工程と、
(4)前記木製ラミナの少なくとも一方の主面に粗面化処理を施す粗面化工程と、
(5)粗面化処理した複数の前記木製ラミナ同士をその板幅方向に並べてプライとするプライ作製工程と、を含む。
以下、各工程について説明する。
【0029】
(1)乾燥工程
乾燥工程では、所定寸法の原料木材を40~100℃で乾燥して乾燥木材とする。乾燥工程では、原料木材を、その含水率が平均して10%程度となるように、乾燥温度約40~100℃及び乾湿球温度差約1~30℃に設定された乾燥機に入れて乾燥させ、乾燥木材を得る。乾湿球温度差とは、乾湿温度と湿球温度との温度差をいう。乾燥木材は、さらに、300℃程度の高温で、短時間、焼成処理を追加してもよい。これらの乾燥や焼成処理は、蒸気式乾燥機、温水式乾燥機、圧力式乾燥機、電気式乾燥機などを用いて行うことができる。
【0030】
原料木材は、特に限定されるものではないが、天然資源の有効利用の観点から、間伐材を利用することができ、その代表として、杉が挙げられる。
【0031】
(2)加熱圧縮工程
加熱圧縮工程では、乾燥木材を110~210℃で厚み方向に2~5MPaの圧力を加える加圧圧縮処理を複数回行って圧縮木材とする。
【0032】
乾燥木材の加熱圧縮工程は、加熱・冷却プレス盤の固定側の下プレス盤に対して上プレス盤を上昇させ、乾燥木材を、上プレス盤と下プレス盤とで形成される圧縮空間内に載置し、下プレス盤に対して上プレス盤を圧力0.05~0.30MPaにて下降させ、乾燥木材の板目面の木表側に当接させ、圧縮空間内を温度110~160℃に昇温(昇温処理時間10~25分)する。この際、固定側の下プレス盤に対して、上プレス盤の圧縮圧力が2.0~5.0MPaになるように設定し、乾燥木材を、上プレス盤及び下プレス盤にて圧縮スピード15~100mm/min、処理時間10~40分間で加熱圧縮する(第1の加熱圧縮処理)。
第1の加熱圧縮処理における圧縮率は特に限定されるものではないが、30%~60%の範囲が好適である。また、本実施形態に係る圧縮木材は、圧縮状態が元に戻ることがないのが特徴である。
【0033】
次に、圧縮木材の圧縮固定を目的として、第1の加熱圧縮処理の後に圧縮空間を密閉状態にし、この状態で固定側の下プレス盤に対する上プレス盤の圧縮圧力を2.0~5.0MPaに保持したまま、温度150~210℃まで上昇させて圧縮を40~120分間保持させる、第2の加熱圧縮処理を行う。
既述の第1の加熱圧縮処理及び第2の加熱圧縮処理は、所望の硬さや密度に応じてそれぞれ複数回、又は、組み合わせを複数回行ってもよい。
【0034】
(3)冷却工程
冷却工程では、既述の加圧圧縮処理のうち、最後の加圧圧縮処理の圧力を維持した状態で、圧縮木材を40℃まで冷却して、板状の木製ラミナとする。
【0035】
本工程では、圧縮木材の定着をも目的に、固定側の下プレス盤に対する上プレス盤の圧縮圧力を、最後の加熱圧縮の際の圧力と同じ2.0~5.0MPaに保持したまま、上プレス盤及び下プレス盤を40℃以下(10~40℃)まで冷却し、冷却処理時間を30~120分間保持することができる。その後、圧縮を解放し、圧密木材からなるラミナを得る。
【0036】
(4)粗面化工程
粗面化工程では、上記木製ラミナの少なくとも一方の主面に粗面化処理を施す。
粗面化処理としては、ベルトサンダーやハンドサンダーなどの機械的手法で表面に凹凸を刻む方法、レーザー加工により凹凸を加工する方法などが挙げられ、この処理により、ラミナの少なくとも一方の主面の表面粗さを面の算術平均高さで7~50μmとする。
【0037】
(5)プライ作製工程及び積層工程
プライ作製工程では、粗面化処理した複数の前記木製ラミナ同士をその板幅方向に並べて、好ましくはその側面同士を接着しプライとする。本実施形態では、このプライだけで敷板としてもよいが、プライを構成するラミナの並び方向が互いに直交するように、複数のプライを積層する積層工程を経たものを敷板としてもよい。
【0038】
上記工程におけるラミナ同士の接着、プライ同士の積層接着に用いる接着剤は特に限定されるものではなく、いかなる接着剤も使用可能である。その代表例としては、水性高分子-イソシアネート系接着剤やレゾルシノール樹脂接着剤が挙げられる。
【実施例0039】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0040】
[実験例1]
(敷板Aの作製)
原料木材としての杉板(10cm×30cmで、厚さ42mm)を、圧力式の木材乾燥機により、80℃で乾燥して乾燥木材とした(乾燥工程)。
乾燥木材を加熱圧縮機により、140℃で厚み方向に2MPaの圧縮圧力を加える加圧圧縮処理(第1の加熱圧縮処理)を行い、さらに、圧縮圧力を2MPaに保持したまま、温度180℃まで上昇させて圧縮を10分間保持させる加熱圧縮処理(第2の加熱圧縮処理)を行って圧縮木材とした(加熱圧縮工程)。
加圧圧縮処理のうち、最後の加圧圧縮処理の圧力を維持した状態で、圧縮木材を40℃まで冷却し、90分間保持してから圧縮を開放して、板状の木製ラミナ(10cm×30cmで、厚さ25mm、硬さ22.0N/m、曲げヤング係数13.0GPa)とした(冷却工程)。
木製ラミナの両主面に表1に示す表面粗さ(算術平均高さ)となるように下記粗面化処理を施した。粗面化処理としては、ベルトサンダーによる処理を行った。
上記のようにして作製した3数の木製ラミナ同士をその板幅方向に並べて、側面同士を接着剤(レゾルシノール系)にて接着しプライ(30cm×30cmで、厚さ25mm)を作製した。得られたプライを直交させて2層重ねて接着剤により接着して敷板Aとして、硬さ、密度、表面粗さ、並びにズレ性を下記のようにして測定した。結果を表1に示す。
【0041】
・硬さ:JIS Z 2101(木材の試験方法)の「21 表面硬さ(ブリネル硬さ)」によって測定した。板面について、直径10mmの鋼球を深さ1/πmmまで圧入したときの荷重を測定する試験である。
・密度:JIS Z 2101(木材の試験方法)の「5 密度の測定」によって測定した。
・表面粗さ(算術平均高さ):光切断法によって測定した。
・ズレ性:10度の傾斜面に敷板を置き、アウトリガーを設置して荷重(200kN)をかけた際に、ズレの発生を観察した。2.0cm以上ズレた場合をズレ性ありとした。
【0042】
(敷板Bの作製)
原料木材としての杉板(10cm×30cmで、厚さ72mm)を、圧力式の木材乾燥機により、80℃で乾燥して乾燥木材とした(乾燥工程)。
乾燥木材を加熱圧縮機により、140℃で厚み方向に5MPaの圧縮圧力を加える加圧圧縮処理(第1の加熱圧縮処理)を行い、さらに、圧縮圧力を5MPaに保持したまま、温度180℃まで上昇させて圧縮を60分間保持させる加熱圧縮処理(第2の加熱圧縮処理)を行って圧縮木材とした(加熱圧縮工程)。
加圧圧縮処理のうち、最後の加圧圧縮処理の圧力を維持した状態で、圧縮木材を40℃まで冷却し、90分間保持してから圧縮を開放して、板状の木製ラミナ(10cm×30cmで、厚さ25mm、硬さ34.0N/m、曲げヤング係数21.0GPa)とした(冷却工程)。
木製ラミナの両主面に表1に示す表面粗さとなるように下記粗面化処理を施した。粗面化処理は、ベルトサンダーにより行った。
上記のようにして作製した3数の木製ラミナ同士をその板幅方向に並べて、側面同士を接着剤(レゾルシノール系)にて接着しプライ(30cm×30cmで、厚さ25mm)を作製した。得られたプライを直交させて2層重ねて接着剤により接着して敷板Bとして、硬さ、密度、表面粗さ、並びに評価を既述のようにして測定した。結果を表1に示す。
【0043】
(敷板C~敷板Gの作製)
原料木材としての杉板(10cm×30cmで、厚さ50mm)を、圧力式乾燥機により、80℃で乾燥して乾燥木材とした(乾燥工程)。
乾燥木材を加熱圧縮機により、140℃で厚み方向に4MPaの圧縮圧力を加える加圧圧縮処理(第1の加熱圧縮処理)を行い、さらに、圧縮圧力を4MPaに保持したまま、温度180℃まで上昇させて圧縮を30分間保持させる加熱圧縮処理(第2の加熱圧縮処理)を行って圧縮木材とした(加熱圧縮工程)。
加圧圧縮処理のうち、最後の加圧圧縮処理の圧力を維持した状態で、圧縮木材を40℃まで冷却し、90分間保持してから圧縮を開放して、板状の木製ラミナ(10cm×30cmで、厚さ25mm、硬さ27.0N/m、曲げヤング係数15.5GPa)とした(冷却工程)。
木製ラミナの両主面に表1に示す表面粗さ(面の算術平均高さ)となるように下記粗面化処理を施した。粗面化処理はベルトサンダーを用いて行った。
上記のようにして作製した3数の木製ラミナ同士をその板幅方向に並べて、側面同士を接着剤(レゾルシノール系)にて接着しプライ(30cm×30cmで、厚さ25mm)を作製した。得られたプライを直交させて2層重ねて接着剤により接着して敷板C~敷板Fとして、硬さ、密度、表面粗さ、並びに評価を既述のようにして測定した。なお、敷板C~敷板Gは、表面粗さ(面の算術平均高さ)だけが異なる。表面粗さ(面の算術平均高さ)は、ベルトサンダー処理の際の、研磨紙の粗さや研磨時間を変化させることによって調整した。結果を表1に示す。
【0044】
(比較敷板H)
比較として、従来用いられている鉄板からなる敷板H(30cm×30cmで、厚さ10mm)を用い、既述の測定及び評価を行った。
【0045】
【表1】
【0046】
[実験例2]
杉を原材料として、表面粗さ(面の算術平均高さ)が25g/cmとなるように粗面化処理を施した以外は「敷板C~敷板Gの作製」と同様にして、敷板圧密木材のラミナを作製した(圧縮率50%、密度0.78g/cm)。ラミナの幅は100mmで、厚さは12mm、硬さは27.0N/m、曲げヤング係数15.5GPaであった。
このラミナを用いて、表2に示す積層数、敷板厚さ、接地面積の敷板を製作した。これら敷板に100~300kNの荷重をかけ、目視により、荷重がかけられた面の損傷の有無を観察した。結果を表2に併記した。
【0047】
【表2】
【0048】
表2より、本発明の敷板は100~300kNの荷重にも耐え、損傷を受けずに使用可能であることがわかる。
【0049】
[実験例3]
実験例2の実験No.1~8の各敷板の質量とCO排出量、及び、敷設作業の状況を、表3に示す鉄板(実験No.9)との比較で検討した。結果を表3に示す。
なお、敷設作業とは、アウトリガーの養生に係る敷板の設置作業を意味し、敷板をトラックの荷台から下ろし、アウトリガーを下す位置の地面に敷く作業である。
ここで、鉄板のCO排出量は、鉄のCO排出量原単位に体積を乗じて算出した。本発明の敷板については、合板のCO排出量原単位に体積を乗じて算出した。
【0050】
(材料のCO排出量原単位)
・鉄:高炉棒鋼とし、1,210kg/トンを採用した。鉄の密度7.85g/cmで体積換算すると、9499kg/m
・敷板:複合合板のCO排出量原単位49kg/mを採用した。
【0051】
【表3】
【0052】
表3より、本発明の敷板は、1人から4人までの人力で敷設でき、作業効率がよく、安全性も高い。また、CO排出量も極めて小さいことがわかる。一方、鉄板は本発明の敷板と比べると非常に重く、敷設作業自体にクレーンが必要となる。また、作業効率が悪く、安全性の確保にも十分な配慮が必要となる。また、CO排出量も著しく大きいことがわかる。