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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135356
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/861 20060101AFI20240927BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20240927BHJP
   H01L 21/329 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
H01L29/91 D
H01L29/78 301B
H01L29/91 F
H01L29/91 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023045991
(22)【出願日】2023-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317011920
【氏名又は名称】東芝デバイス&ストレージ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004026
【氏名又は名称】弁理士法人iX
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 拓馬
【テーマコード(参考)】
5F140
【Fターム(参考)】
5F140AA29
5F140AB06
5F140BA02
5F140BA20
5F140BB13
5F140BB15
5F140BC06
5F140BC12
(57)【要約】
【課題】安定した特性を有する半導体装置を提供する。
【解決手段】実施形態は、炭化ケイ素を含む半導体装置である。半導体装置は、半導体基板と、第1半導体層と、第2半導体層と、第3半導体層と、第4半導体層と、を備える。第1~第3半導体層は、第1導電形である、第4半導体層は、第2導電形である。第2半導体層のキャリア濃度は、第1半導体層のキャリア濃度と同じか低い。第2半導体層のキャリア濃度は、第3半導体層のキャリア濃度と同じか高い。第2半導体層の点欠陥密度は、第1半導体層の点欠陥密度と同じか高く、かつ、第3半導体層の点欠陥密度よりも高い。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面と前記第1面の反対側に位置する第2面とを有し、炭化ケイ素を含む第1導電形の半導体基板と、
前記第1面上に設けられ、炭化ケイ素を含む第1導電形の第1半導体層と、
前記第1半導体層上に設けられ、炭化ケイ素を含む第1導電形の第2半導体層と、
前記第2半導体層上に設けられ、炭化ケイ素を含む第1導電形の第3半導体層と、
前記第3半導体層上に設けられ、炭化ケイ素を含む第2導電形の第4半導体層と、
を備え、
前記第2半導体層の第1導電形のキャリア濃度は、前記第1半導体層の第1導電形のキャリア濃度と同じか低く、
前記第2半導体層の第1導電形のキャリア濃度は、前記第3半導体層の第1導電形のキャリア濃度と同じか高く、
前記第2半導体層の点欠陥密度は、前記第1半導体層の点欠陥密度と同じか高く、かつ、前記第3半導体層の点欠陥密度よりも高い半導体装置。
【請求項2】
前記第1半導体層と前記第2半導体層との間に設けられ、炭化ケイ素を含む第1導電形の第5半導体層をさらに備え、
前記第2半導体層の第1導電形のキャリア濃度は、前記第5半導体層の第1導電形のキャリア濃度と同じか高く、
前記第2半導体層の点欠陥密度は、前記第5半導体層の点欠陥密度よりも高い請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第2半導体層は、前記第1半導体層上に設けられた第1層と、前記第1層上に設けられた第2層と、を含み、
前記第1層の第1導電形のキャリア濃度は、前記第1半導体層の第1導電形のキャリア濃度と同じか低く、
前記第2層の第1導電形のキャリア濃度は、前記第1層の第1導電形のキャリア濃度と同じか低く、かつ、前記第3半導体層の第1導電形のキャリア濃度と同じか高く、
前記第1層の点欠陥密度および前記第2層の点欠陥密度は、前記第1半導体層の点欠陥密度と同じか高く、
前記第3半導体層の点欠陥密度よりも高い請求項1記載の半導体装置。
【請求項4】
第1面と前記第1面の反対側に位置する第2面とを有し、炭化ケイ素を含む第1導電形の半導体基板と、
前記第1面上に設けられ、炭化ケイ素を含む第1導電形の第1半導体層と、
前記第1半導体層上に設けられ、炭化ケイ素を含む第1導電形の複数の第1半導体領域と、
前記第1半導体層上に設けられ、炭化ケイ素を含む第1導電形の第6半導体層と、
前記第6半導体層上に設けられ、炭化ケイ素を含む第2導電形の第4半導体層と、
を備え、
前記第1面は、第1方向および前記第1方向に交差する第2方向を含む平面に平行であり、
前記複数の第1半導体領域は、前記第1方向に沿ってそれぞれ伸びており、前記第2方向に沿って間隔をあけて設けられ、
炭化ケイ素の{0001}面は、炭化ケイ素の{1-100}面に直交する[1-100]軸を中心にして、前記第1面との間で、第1角度を形成しており、
前記第2方向は、[1-100]軸の延びる方向と平行であり、
前記複数の第1半導体領域の第1導電形のキャリア濃度は、前記第1半導体層の第1導電形のキャリア濃度と同じか低く、
前記複数の第1半導体領域の第1導電形のキャリア濃度は、前記第6半導体層の第1導電形のキャリア濃度と同じか高く、
前記複数の第1半導体領域の点欠陥密度は、第1半導体層の点欠陥密度と同じか高く、かつ、前記第6半導体層の点欠陥密度よりも高い半導体装置。
【請求項5】
前記第6半導体層は、前記第1半導体層上に設けられるとともに、前記第1半導体層と前記複数の第1半導体領域のそれぞれとの間に設けられた請求項4記載の半導体装置。
【請求項6】
前記第1半導体層は、前記複数の第1半導体領域のうちの隣り合う2つの第1半導体領域の間に設けられた請求項4記載の半導体装置。
【請求項7】
前記第1半導体層上に設けられ、炭化ケイ素を含む第1導電形の複数の第2半導体領域をさらに備え、
前記複数の第2半導体領域は、前記第2方向に沿ってそれぞれ延びており、前記第1方向に沿って間隔をあけて設けられ、
前記第6半導体層は、前記第1半導体層上で、前記複数の第1半導体領域のうちの2つの第1半導体領域および前記複数の第2半導体領域のうちの2つの第2半導体領域に囲まれ、
前記複数の第2半導体領域の第1導電形のキャリア濃度は、前記第1半導体層の第1導電形のキャリア濃度と同じか低く、
前記複数の第2半導体領域の第1導電形のキャリア濃度は、前記第6半導体層の第1導電形のキャリア濃度と同じか高く、
前記複数の第2半導体領域の点欠陥密度は、第1半導体層の点欠陥密度と同じか高く、かつ、
前記第6半導体層の点欠陥密度よりも高い請求項4記載の半導体装置。
【請求項8】
前記複数の第1半導体領域のうち隣り合う2つの第1半導体領域の間の距離は、前記複数の第1半導体領域の厚さおよび前記第1角度にもとづいて設定された請求項4記載の半導体装置。
【請求項9】
前記第2半導体層の第1導電形のキャリアは、第1元素を含み、
前記第1元素は、第1元素は、N、P、AlおよびBよりなる群から選択された少なくとも1つを含む請求項1記載の半導体装置。
【請求項10】
前記第2半導体層は、第2元素を含み、
前記第2元素は、Fe、Ni、Cr、Mg、Zn、Cu、Ca、V、AuおよびPtよりなる群から選択された少なくとも1つを含む請求項1記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、炭化ケイ素(SiC)を含む基板を用いた半導体装置がある。半導体装置において、安定した特性を有することが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-38594号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の実施形態は、安定した特性を有する半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態に係る半導体装置は、第1面と前記第1面の反対側に位置する第2面とを有し、炭化ケイ素を含む第1導電形の半導体基板と、前記第1面上に設けられ、炭化ケイ素を含む第1導電形の第1半導体層と、前記第1半導体層上に設けられ、炭化ケイ素を含む第1導電形の第2半導体層と、前記第2半導体層上に設けられ、炭化ケイ素を含む第1導電形の第3半導体層と、前記第3半導体層上に設けられ、炭化ケイ素を含む第2導電形の第4半導体層と、を備える。前記第2半導体層の第1導電形のキャリア濃度は、前記第1半導体層の第1導電形のキャリア濃度と同じか低い。前記第2半導体層の第1導電形のキャリア濃度は、前記第3半導体層の第1導電形のキャリア濃度と同じか高い。前記第2半導体層の点欠陥密度は、第1半導体層の点欠陥密度と同じか高く、かつ、前記第3半導体層の点欠陥密度よりも高い。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】第1の実施形態に係る半導体装置を例示する模式的な断面図である。
図2】第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法の一部を例示する模式的な断面図である。
図3】第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法の一部を例示する模式的な断面図である。
図4】第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法の一部を例示する模式的な断面図である。
図5】第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法の変形例の一部を例示する模式的な断面図である。
図6】第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法の変形例の一部を例示する模式的な断面図である。
図7】第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法の他の変形例の一部を例示する模式的な断面図である。
図8】第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法の他の変形例の一部を例示する模式的な断面図である。
図9】第1の実施形態に係る半導体装置の動作を説明するための模式的な断面図である。
図10】比較例の半導体装置の動作を説明するための模式的な断面図である。
図11】第1の実施形態の変形例に係る半導体装置を例示する模式的な断面図である。
図12】第1の実施形態の変形例に係る半導体装置の製造方法の一部を例示する模式的な断面図である。
図13】第1の実施形態の変形例に係る半導体装置の製造方法の一部を例示する模式的な断面図である。
図14】第1の実施形態の変形例に係る半導体装置の製造方法の変形例の一部を例示する模式的な断面図である。
図15】第1の実施形態の変形例に係る半導体装置の製造方法の変形例の一部を例示する模式的な断面図である。
図16】第1の実施形態の他の変形例に係る半導体装置を例示する模式的な断面図である。
図17】第1の実施形態の他の変形例に係る半導体装置の製造方法の一部を例示する模式的な断面図である。
図18】第1の実施形態の他の変形例に係る半導体装置の製造方法の一部を例示する模式的な断面図である。
図19】第1の実施形態の他の変形例に係る半導体装置の製造方法の一部を例示する模式的な断面図である。
図20】第2の実施形態に係る半導体装置を例示する模式的な断面図である。
図21図20のB-B線における模式的な断面図である。
図22図20のC部の模式的な拡大図である。
図23】第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法の一部を例示する模式的な断面図である。
図24】第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法の一部を例示する模式的な断面図である。
図25】第2の実施形態に係る半導体装置の動作を説明する模式的な断面図である。
図26図25のD-D線における模式的な断面図である。
図27】比較例に係る半導体装置の動作を説明する模式的な断面図である。
図28図27のE-E線における模式的な断面図である。
図29】第2の実施形態の変形例に係る半導体装置を例示する模式的な断面図である。
図30図29のF部の模式的な拡大図である。
図31】第2の実施形態の変形例に係る半導体装置の製造方法の一部を例示する模式的な断面図である。
図32】第2の実施形態の変形例に係る半導体装置の製造方法の一部を例示する模式的な断面図である。
図33】第2の実施形態の他の変形例に係る半導体装置を例示する模式的な断面図である。
図34図33のG部の模式的な拡大図である。
図35】第2の実施形態の他の変形例に係る半導体装置の製造方法の一部を例示する模式的な断面図である。
図36】第2の実施形態の他の変形例に係る半導体装置の製造方法の一部を例示する模式的な断面図である。
図37】第3の実施形態に係る半導体装置を例示する模式的な断面図である。
図38図37のH-H線における模式的な断面図である。
図39】第3の実施形態に係る半導体装置の動作を説明するための模式的な断面図である。
図40図39のI-I線における模式的な断面図である。
図41】比較例に係る半導体装置の動作を説明するための模式的な断面図である。
図42図41のJ-J線における模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に、本発明の各実施形態について図面を参照しつつ説明する。
図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
本願明細書と各図において、既に説明したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
以下の説明および図面において、n、n、pおよびpと表記される場合には、これらは、各不純物濃度の相対的な高低を表す。すなわち、「+」が付されている表記は、「+」および「-」のいずれも付されていない表記よりも不純物濃度が相対的に高く、「-」が付されている表記は、いずれも付されていない表記よりも不純物濃度が相対的に低いことを示す。これらの表記は、それぞれの領域にp形不純物とn形不純物の両方が含まれている場合には、それらの不純物が補償しあった後の正味の不純物濃度の相対的な高低を表す。キャリア濃度は、実効的な不純物濃度とみなすものとする。
以下で説明する各実施形態について、各半導体領域のp形とn形を反転させて各実施形態を実施してもよい。
【0008】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る半導体装置を例示する模式的な断面図である。
図1に示すように、本実施形態に係る半導体装置1は、半導体基板10と、第1半導体層20と、第2半導体層30と、第3半導体層40と、を備える。半導体装置1は、第4半導体層50と、第1電極62と、第2電極64と、をさらに備える。
【0009】
第1半導体層20は、半導体基板10上に設けられている。第2半導体層30は、第1半導体層20上に設けられている。第3半導体層40は、第2半導体層30上に設けられている。第4半導体層50は、第3半導体層40上に設けられている。第1電極62は、半導体基板10の第1半導体層20が配置された面とは反対側の面に設けられている。第2電極64は、第4半導体層50の第3半導体層40が配置された面とは反対側の面に設けられている。
【0010】
半導体基板10、第1半導体層20、第2半導体層30、第3半導体層40および第4半導体層50は、炭化ケイ素(SiC)を含む。
【0011】
半導体基板10、第1半導体層20、第2半導体層30および第3半導体層40は、第1導電形である。第4半導体層50は、第2導電形である。たとえば、第1導電形はn形であり、第2導電形はp形である。
【0012】
第1半導体層20の不純物濃度は、第3半導体層40の不純物濃度よりも高い。第2半導体層30の不純物濃度は、第3半導体層40の不純物濃度と同じか高い。第2半導体層30の不純物濃度は、第1半導体層20の不純物濃度と同じか低い。半導体装置1は、たとえば、PiNダイオードである。
【0013】
半導体基板10は、第1面11aと第2面11bとを有する。第2面11bは、第1面11aの反対側の面である。第1面11aには、第1半導体層20が設けられ、第2面11bには、第1電極62が設けられている。半導体基板10は、たとえば、SiCバルク単結晶基板である。
【0014】
以下では、XYZの3次元直交座標系を用いて説明をすることがある。XY平面は、第1面11aまたは第2面11bに平行な平面である。Z軸は、XY平面に直交する。図9に関連して説明するように、X軸は、半導体基板10の{11-20}面に直交する[11-20]軸に対して傾いている。[11-20]軸は、X軸に対して、オフ角θoffだけ傾いている。角度の定義は、基準軸に対して、反時計回りを正とする。Y軸は、半導体基板10の{1-100}面に直交する[1-100]軸に平行である。Z軸は、半導体基板10の{0001}面に直交する[0001]軸に対して傾いている。[0001]軸は、Z軸に対して、オフ角θoffだけ傾いている。つまり、{0001}面は、XY平面に対して、Y軸または[1-100]軸を中心にして、オフ角θoffだけ傾いている。なお、図9に示すように、結晶軸についての座標軸をXYZ座標軸と併記する場合がある。この場合には、Y軸と重なる[1-100]軸をY軸の下に表示するものとする。図10図20図25図27図39および図41について、同様とする。上述したように、[1-100]軸は、Y軸に平行で、正負の方向が反対である。
【0015】
第1半導体層20は、たとえば、SiCと、不純物として窒素(N)と、を含む。たとえば、Nに代えてリン(P)を含んでもよいし、NおよびPの両方を含んでもよい。たとえば、第1半導体層20におけるNの不純物濃度は、10-19[cm-3]よりも低い。第1半導体層20は、不純物濃度を適切に設定することによって、再結合中心となる点欠陥を形成し、第4半導体層50から注入される少数キャリアの再結合時間を短縮し、少数キャリアの侵入を抑制することによって、再結合エネルギーの発生量を抑制する。また、第1半導体層20は、半導体基板10で発生した基底面転位(Basal Plane Dislocation、BPD)を貫通刃状転位(Threading Edge Dislocation、TED)に変換する。第1半導体層20は、BPDをTEDに変換することによって、BPDがシングルショックレー型積層欠陥(Single Shockley Stacking Fault、1SSF)へ拡張することを抑制する。
【0016】
第2半導体層30は、不純物として第1元素を含む。第1元素は、N、P、アルミニウム(Al)およびホウ素(B)よりなる群から選択された少なくとも1つを含む。第2半導体層30は、第1元素に代えて、第2元素を含んでもよい。第2元素は、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、マグネシウム(Mg)、亜鉛(Zn)、銅(Cu)、カルシウム(Ca)、バナジウム(V)、金(Au)および白金(Pt)よりなる群から選択された少なくとも1つを含む。第2半導体層30は、第1元素とともに第2元素を含んでもよい。
【0017】
第1半導体層20および第2半導体層30は、半導体基板10および第3半導体層40の点欠陥密度よりも高い点欠陥密度を有する。第2半導体層30は、第1半導体層20の点欠陥密度と同じか高い点欠陥密度を有する。
【0018】
第2半導体層30は、半導体基板10、第1半導体層20および第3半導体層40の点欠陥密度よりも高い点欠陥密度を有することによって、第4半導体層50から注入された少数キャリアの再結合を促進し、少数キャリアのライフタイムを短縮して、少数キャリアの再結合による再結合エネルギーの生成を抑制する。第2半導体層30は、再結合エネルギーの生成を抑制することによって、BPDが1SSFに拡張することを防止する。
【0019】
第3半導体層40は、半導体装置1がダイオードの順方向動作をする場合には、第1導電形の多数キャリアが走行して順電流を流す。第3半導体層40は、半導体装置1がダイオードとして逆方向阻止動作をする場合には、空乏層を形成して、アノード電極である第2電極64とカソード電極である第1電極62との間で所望の耐電圧を実現する。
【0020】
第4半導体層50は、第3半導体層40と接合されてpn接合を実現する。第4半導体層50は、半導体装置1がダイオードの順方向動作をする場合には、第2導電形の多数キャリアが走行して順電流を流す。第4半導体層50は、半導体装置1がダイオードとして逆方向阻止動作をする場合には、第3半導体層40とともに、アノード電極である第2電極64とカソード電極である第1電極62との間で所望の耐電圧を実現する。
【0021】
第1電極62は、半導体基板10とオーミック接続され、半導体装置1の一方の主電極として機能する。第2電極64は、第4半導体層50とオーミック接続され、半導体装置1の他方の主電極として機能する。半導体装置1がダイオードの場合には、第1電極62はカソード電極であり、第2電極64はアノード電極である。
【0022】
本実施形態に係る半導体装置1の製造方法について説明する。
図2図4は、第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法の一部を例示する模式的な断面図である。
図2図4では、図1のA部に対応する部分の断面を示す。本実施形態において、半導体装置の断面を示す場合には、その他の図面であっても、特に断らない限り、図1のA部に対応する部分であるものとする。
図2に示すように、準備された半導体基板10上に第1半導体層20が形成される。第1半導体層20は、エピタキシャル成長により形成される。
【0023】
図3に示すように、第1半導体層20上に第2半導体層30が形成される。第2半導体層30は、エピタキシャル成長により形成される。第2半導体層30をエピタキシャル成長させる際に、第1元素(N、P、Al、B)をドープすることによって、オージェ再結合のための再結合中心を形成する。第2半導体層30をエピタキシャル成長により形成した後に、第2元素(Fe、Ni、Cr、Mg、Zn、Cu、Ca、V、Au、Pt)を熱拡散により第2半導体層30に導入してもよい。第1元素に代えて、第2元素を導入した場合には、第2元素は、第2半導体層30の不純物濃度を上げずに、再結合中心となる点欠陥を形成するので好適である。
【0024】
図4に示すように、第2半導体層30上に第3半導体層40が形成される。第3半導体層40は、エピタキシャル成長により形成される。
【0025】
以降、第3半導体層40上に第4半導体層50が形成され、第1電極62および第2電極64が形成されて、半導体装置1が形成される。
【0026】
図5および図6は、第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法の変形例の一部を例示する模式的な断面図である。
図5に示すように、図2に関連して説明したように、準備された半導体基板10上に第1半導体層20が形成され、第1半導体層20上にエピタキシャル成長により、中間半導体層140が形成される。たとえば、中間半導体層140の不純物濃度は、図1に示した第3半導体層40と同じである。つまり、中間半導体層140の不純物濃度は、第1半導体層20の不純物濃度よりも低い。たとえば、中間半導体層140は、たとえば第3半導体層40の形成条件と同じ条件で形成される。
【0027】
図6に示すように、第1半導体層20上に第2半導体層30を形成する。第2半導体層30は、図5に示した中間半導体層140に第3元素をイオン注入することにより形成される。第3元素は、水素(H)、ヘリウム(He)、アルゴン(Ar)、ネオン(Ne)およびキセノン(Xe)よりなる群から選択された少なくとも1つを含む。イオン注入によって中間半導体層140に導入するHは、プロトンとして導入される。イオン注入エネルギーは、中間半導体層140の厚さに応じて設定される。第3元素は、以降の通常の熱プロセスを経ることによって脱離される。そのため、中間半導体層140に第3元素をイオン注入することによって、不純物密度を高めることなく、高い密度の点欠陥を有する第2半導体層30を形成することができる。
【0028】
中間半導体層140へのイオン注入は、第3元素に代えて、第2元素(Fe、Ni、Cr、Mg、Zn、Cu、Ca、V、Au、Pt)としてもよい。これらの元素は、中間半導体層140の禁制帯で深い準位を形成して再結合中心として機能し、不純物密度を高めることなく、高い密度の点欠陥を有する第2半導体層30を形成することができる。
【0029】
図7および図8は、第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法の他の変形例の一部を例示する模式的な断面図である。
図7に示すように、準備された半導体基板10上に、中間半導体層120をエピタキシャル成長により形成する。この場合の中間半導体層120は、図2に関連して説明した第1半導体層20よりも厚くなるように形成される。中間半導体層120は、第1半導体層20の厚さに第2半導体層30の厚さを加算した厚さを有する。
【0030】
図8に示すように、中間半導体層120に第3元素をイオン注入して、第2半導体層30を形成する。イオン注入エネルギーを調整することによって、第1半導体層20上に第2半導体層30を形成することができる。第2半導体層30へのイオン注入は、第3元素に代えて第2元素としてもよい。いずれの場合であっても、第2半導体層30の不純物密度は、第1半導体層20の不純物密度よりも高めることなく、第1半導体層20の点欠陥密度よりも高い点欠陥密度を有する第2半導体層30を形成することができる。
【0031】
本実施形態に係る半導体装置1の動作および効果について説明する。
図9は、第1の実施形態に係る半導体装置の動作を説明するための模式的な断面図である。
図9には、XYZ座標系とともに、SiCの結晶軸が示されている。[11-20]軸は、Y軸および[1-100]軸を中心に、X軸に対して、オフ角θoffだけ正方向に傾いている。[0001]軸は、Y軸および[1-100]軸を中心に、Z軸に対して、オフ角θoffだけ傾いている。つまり、半導体基板10、第1半導体層20、第2半導体層30および第3半導体層40を形成するSiCの{0001}面は、Y軸および[1-100]軸を中心に、XY平面に対して、オフ角θoffだけ傾いている。オフ角θoffは、たとえば、4°程度である。
【0032】
図9に示すように、図1に示した第4半導体層50から注入された少数キャリアである正孔h+は、第3半導体層40を介して、第2半導体層30に注入される。第2半導体層30では、高密度に形成された点欠陥が少数キャリアの再結合中心として機能し、正孔h+と電子e-とを短いライフタイムで再結合し、消滅させる。そのため、第2半導体層30では、少数キャリアの再結合エネルギーを得たBPDが1SSFに拡張することが防止される。
【0033】
たとえば、半導体基板10中のBPDである転位B1は、SiCの{0001}面に沿って形成され得る。つまり、転位B1は、XY平面に対して、オフ角θoffの傾きで形成される。転位B1が第1半導体層20に達すると、第1半導体層20において、TEDである転位T1に変換される。
【0034】
転位T1は、[0001]軸方向に沿って形成される。第3半導体層40を走行する正孔h+は、Z軸方向にほぼ沿って走行する。Z軸と[0001]軸とは、4°程度のオフ角θoffであるため、転位T1は、正孔h+の走行を阻害しない。そのため、第1半導体層20で転位B1が転位T1に変換されることによって、半導体装置1の導通時の抵抗を増大させることがない。
【0035】
第3半導体層40を経た少数キャリアは、第2半導体層30の再結合中心で迅速に再結合されるので、半導体基板10に形成された転位B1に再結合エネルギーを供給することはほとんどない。ごく一部の少数キャリアが第2半導体層30を通過しても、第1半導体層20の再結合中心で迅速に再結合されるので、転位B1が1SSFに拡張することは防止される。
【0036】
図10は、比較例に係る半導体装置を例示する模式的な断面図である。
図10の比較例に係る半導体装置では、第1半導体層20上に図9に示した第2半導体層30が設けられておらず、第1半導体層20上に直接、第3半導体層40が設けられている。
【0037】
図10に示すように、比較例の半導体装置では、第2半導体層30で転位T1に変換されなかった転位B1は、正孔h+と電子e-との再結合エネルギーを得て、1SSFである欠陥S1に拡張される。欠陥S1は、再結合エネルギーが供給される限り、[11-20]軸に沿ってZ軸の正方向に向かって第3半導体層40内で拡張される。欠陥S1は、キャリアの走行を阻害するので、半導体装置1の順方向電流に対する順方向電圧が大きくなり、損失の増大につながり得る。
【0038】
従来、BPDが正孔と電子との再結合による再結合エネルギーを得て、1SSFに拡張される現象が知られている。正孔と電子との再結合を促進させ、BPDから1SSFへ拡張されることを抑止するために、高濃度窒素を導入した再結合促進バッファ層を設けることが行われている(たとえば、特許文献1等)。このような技術では、再結合促進バッファ層に導入する窒素濃度を上げることによって、点欠陥密度が向上し、正孔と電子との再結合が促進される。一方で、窒素濃度を10-19[cm-3]を超えて導入すると、再結合促進バッファ層に隣接する低濃度のドリフト層のエピタキシャル結晶の品質に悪影響を及ぼすことが知られている。
【0039】
本実施形態に係る半導体装置1は、再結合促進バッファ層に対応する第1半導体層20の不純物濃度よりも低い不純物濃度を有し、第1半導体層20の点欠陥密度よりも高い点欠陥密度を有する第2半導体層30を備えている。低濃度のドリフト層に対応する第3半導体層40は、第2半導体層30を介して、第1半導体層20および半導体基板10に接続される。
【0040】
第2半導体層30は、不純物濃度は、第1半導体層20と同じか低く、点欠陥密度は、第1半導体層20と同じか高い。そのため、低い不純物濃度によって、第3半導体層40の結晶品質への影響が及ぶことを抑制しつつ、高い点欠陥密度によって、正孔と電子との再結合を促進して、再結合エネルギーがBPDに及ぶことを防止する。そのため、第2半導体層30を設けることによって、BPDが1SSFに拡張することを抑制することが可能になる。BPDが1SSFに拡張した場合であっても、第2半導体層30は、第3半導体層40と第1半導体層20との間に位置することによって、第1半導体層20でBPDから拡張された1SSFに再結合エネルギーを供給しない。そのため、第2半導体層20よりも上方へ1SSFがさらに拡張することを防止することができる。
【0041】
第2半導体層30の点欠陥の形成には、第2半導体層30に第1元素(N、P、Al、B)を導入して形成するほか、第2元素(Fe、Ni、Cr、Mg、Zn、Cu、Ca、V、Au、Pt)を導入することによって実現される。第2元素は、再結合中心として機能する一方で、不純物としては機能しないので、第2半導体層30は、第1半導体層20の不純物濃度よりも低い不純物濃度で、第1半導体層20の点欠陥密度よりも高い点欠陥密度を実現することができる。
【0042】
第2半導体層30の点欠陥の形成には、上述のほか、第3元素(H、He、Ar、Ne、Xe)を導入することによっても実現される。第3元素は、第2半導体層30に導入された後、半導体装置1の通常の加熱プロセスを経ることによって、第3元素自体は消失する。そのため、第3元素は、点欠陥を形成する一方で、不純物としては機能しないので、第2半導体層30は、低い不純物濃度で高い点欠陥密度を実現することができる。
【0043】
(変形例1)
図11は、第1の実施形態の変形例に係る半導体装置1aを例示する模式的な断面図である。
図11に示すように、半導体装置1aは、第5半導体層42をさらに備える点で、図1に示した半導体装置1と相違する。他の点では、半導体装置1と同じであり同一の構成要素には、同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0044】
第5半導体層42は、第1半導体層20と第2半導体層30との間に設けられている。第5半導体層42の第1導電形の不純物濃度は、第3半導体層40の不純物濃度とほぼ同じである。第5半導体層42の点欠陥密度は、第3半導体層40の点欠陥密度とほぼ同じである。つまり、第2半導体層30の不純物濃度は、第5半導体層42の不純物濃度とほぼ同じか、高い。第2半導体層30の点欠陥密度は、第5半導体層42の点欠陥密度よりも高い。第2半導体層30の点欠陥密度は、好ましくは、第1半導体層20の点欠陥密度と同じか高い。
【0045】
図12および図13は、第1の実施形態の変形例に係る半導体装置の製造方法の一部を例示する模式的な断面図である。
上述の図2に示したように、準備された半導体基板10上にエピタキシャル成長により第1半導体層20が形成される。図12に示すように、第5半導体層42は、第1半導体層20上にエピタキシャル成長により形成される。たとえば、第5半導体層42は、第3半導体層40の不純物濃度とほぼ等しくなるように形成される。たとえば、第5半導体層42は、第3半導体層40と同一の条件で形成される。
【0046】
図13に示すように、第5半導体層42上に第2半導体層30が形成される。第2半導体層30は、エピタキシャル成長により形成される。図3に関連して説明したように、第2半導体層30の形成では、第1元素(N、P、Al、B)がドープされる。さらに、第2元素(Fe、Ni、Cr、Mg、Zn、Cu、Ca、V、Au、Pt)を熱拡散することによって、再結合中心として点欠陥を形成するようにしてもよい。
【0047】
その後、第2半導体層30上に、第3半導体層40、第4半導体層50および第1電極62が形成され、半導体基板10に第2電極64が形成されて、半導体装置1aが形成される。
【0048】
図14および図15は、第1の実施形態の変形例に係る半導体装置の製造方法の変形例の一部を例示する模式的な断面図である。
図14に示すように、中間半導体層42aが第1半導体層20上にエピタキシャル成長により形成される。たとえば、中間半導体層42aの形成条件は、第3半導体層40の形成条件と同じである。形成する中間半導体層42aは、第5半導体層42の厚さと第2半導体層30の厚さとを加算した厚さを有する。
【0049】
図15に示すように、図14に示した中間半導体層42aにイオン注入により、第2半導体層30を形成する。図6に関連して説明したように、第2半導体層30の形成には、第3元素(H、He、Ar、Ne、Xe)を中間半導体層42aに注入することによって形成する。第3元素の導入によって、第2半導体層30に再結合中心として点欠陥を形成する。第3元素に代えて、第2元素(Fe、Ni、Cr、Mg、Zn、Cu、Ca、V、Au、Pt)をイオン注入してもよい。
【0050】
その後、第2半導体層30上に、第3半導体層40、第4半導体層50および第1電極62が形成され、半導体基板10に第2電極64が形成されて、半導体装置1aが形成される。
【0051】
(変形例2)
図16は、第1の実施形態の他の変形例に係る半導体装置を例示する模式的な断面図である。
図16に示すように、本変形例に係る半導体装置1bは、図1に示した第2半導体層30に代えて、第2半導体層130を備える。半導体装置1bの他の構成要素は、半導体装置1の場合と同じであり、同一の構成要素には、同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0052】
第2半導体層130は、第1半導体層20上に設けられている。第2半導体層130上には、第3半導体層40が設けられている。第2半導体層130は、第1層32と第2層34とを含む。第1層32は、第1半導体層20上に設けられている。第2層34は、第1層32上に設けられている。第3半導体層40は、第2層34上に設けられている。
【0053】
第1層32および第2層34は、いずれも第1導電形である。第1層32の不純物濃度は、第2層34の不純物濃度と同じか高い。第1層32の不純物濃度は、第1半導体層20の不純物濃度と同じか高い。第2層34の不純物濃度は、第3半導体層40の不純物濃度と同じか高い。第2層34の不純物濃度は、第1半導体層20の不純物濃度と同じか低い。
【0054】
第1層32の点欠陥密度および第2層34の点欠陥密度は、ほぼ同じであり、第1半導体層20の点欠陥密度と同じか高い。
【0055】
本変形例に係る半導体装置1bの製造方法について説明する。
図17図19は、第1の実施形態の他の変形例に係る半導体装置の製造方法の一部を例示する模式的な断面図である。
図17に示すように、準備された半導体基板10上に、第1中間半導体層20aが形成される。第1中間半導体層20aは、第1半導体層20の厚さに、第2半導体層30の第1層32の厚さを加算した厚さを有するように形成される。
【0056】
図18に示すように、第1中間半導体層20a上に、第2中間半導体層44がエピタキシャル成長により形成される。
【0057】
図19に示すように、イオン注入により、第3元素(プロトン、He、Ar、Ne、Xe)を第1中間半導体層20aおよび第2中間半導体層44に導入する。イオン注入時のエネルギーは、第1中間半導体層20aおよび第2中間半導体層44の厚さのうち、第2半導体層30の厚さに対応するように設定される。
【0058】
その後、第2半導体層30上に、第3半導体層40、第4半導体層50および第1電極62が形成され、半導体基板10に第2電極64が形成されて、半導体装置1aが形成される。
【0059】
このようにして、変形例に係る半導体装置1a、1bは形成される。変形例に係る半導体装置1a、1bは、図1に示した半導体装置1と同様の効果を奏する。
【0060】
(第2の実施形態)
図20は、第2の実施形態に係る半導体装置を例示する模式的な断面図である。
図21は、図20のB-B線における模式的な断面図である。
図20および図21に示すように、本実施形態に係る半導体装置201は、半導体基板10と、第1半導体層20と、複数の第1半導体領域230と、第6半導体層240と、を備える。半導体装置201は、複数の第1半導体領域230および第6半導体層240が図1に示した半導体装置1と相違し、他の点では、半導体装置1と同じである。同一の構成要素には、同一の符号を付して詳細な説明を適宜省略する。
【0061】
複数の第1半導体領域230は、第1半導体層20上に設けられている。複数の第1半導体領域230は、第1半導体層20上で、Y軸方向に向かってそれぞれ延びている。複数の第1半導体領域230は、X軸方向に離れて配置されている。この例では、複数の第1半導体領域230のそれぞれは、X軸方向にほぼ等間隔で配置されている。
【0062】
図1に関連して説明したように、XY平面は、半導体基板10の第1面11aまたは第2面11bに平行であり、半導体基板10の[11-20]軸は、Y軸を中心にX軸に対して、オフ角θoffだけ傾いている。半導体基板10の[0001]軸は、Y軸を中心にZ軸に対してオフ角θoffだけ傾いている。Y軸は、半導体基板10の{1-100}面に直交する[1-100]軸と平行である。つまり、複数の第1半導体領域230は、半導体基板10の[1-100]軸に沿ってそれぞれ延びている。複数の第1半導体領域230のそれぞれは、半導体基板10の[11-20]軸に対して、ほぼ等間隔で離れて配置されている。
【0063】
第6半導体層240は、第1半導体層20上に設けられている。第6半導体層240は、複数の第1半導体領域230のうちの隣り合う2つの第1半導体領域230の間にも設けられている。第6半導体層240は、複数の第1半導体領域230上にもそれぞれ設けられている。
【0064】
半導体基板10、第1半導体層20、複数の第1半導体領域230および第6半導体層240は、第1導電形の不純物を含む。第1導電形は、たとえばn形である。
【0065】
第1半導体領域230は、図1に示した半導体装置1の第2半導体層30と同様に、SiCと、不純物としての第1元素と、を含む。第1元素は、N、P、AlおよびBよりなる群から選択された少なくとも1つを含む。また、第1半導体領域230は、半導体装置1と同様に、第1元素に代えて、あるいは第1元素とともに第2元素を含んでもよい。第2元素は、Fe、Ni、Cr、Mg、Zn、Cu、Ca、V、AuおよびPtよりなる群から選択された少なくとも1つを含む。
【0066】
複数の第1半導体領域230の不純物濃度は、第1半導体層20の不純物濃度と同じか低い。複数の第1半導体領域230の不純物濃度は、第6半導体層240の不純物濃度と同じか高い。
【0067】
複数の第1半導体領域230の点欠陥密度は、第1半導体層20の点欠陥密度と同じか高い。複数の第1半導体領域230の点欠陥密度および第1半導体層20の点欠陥密度は、半導体基板10の点欠陥密度および第6半導体層240の点欠陥密度のいずれよりも高い。
【0068】
図22は、図20のC部の模式的な拡大図である。
図22には、距離W1、W2および厚さh1の相互の関係が示されている。
距離W1は、複数の第1半導体領域230のうちの隣り合う2つの第1半導体領域230の間のX軸方向における距離を表している。距離W1は、複数の第1半導体領域230のそれぞれの第1半導体領域230の幅を表している。厚さh1は、複数の第1半導体領域230のそれぞれの第1半導体領域230の厚さを表している。
【0069】
図22では、距離W1は、隣り合う2つの第1半導体領域230の下端230Bの間、または、上端230Tの間の距離である。
【0070】
BPDの1SSFへの拡張を阻止する観点からは、W1は小さく、W2は大きい方が好ましい。図1に関連して説明した半導体装置1は、W1=0の場合の例である。第1半導体領域230では、点欠陥による再結合中心を有するので、正孔と電子との再結合を促進する。その一方で、第1半導体領域230は、電流の経路に配置され、第1半導体領域230の不純物濃度等によっては、抵抗値が高くなるため、W2を小さくすることが好ましい。
【0071】
1SSFは、オフ角θoffでXY平面から傾いたSiCの{0001}面に沿って拡大する。そのため、1SSFの拡大を第1半導体領域230で抑止する観点から、W1、W2およびh1の間の関係は、オフ角θoffにもとづいて、設定されることが好ましい。
【0072】
W1およびh1の関係は、角度θ1を用いて示すことができる。W1は、以下の式(1)で表すことができる。
【0073】
W1=h/tan(θ1) (1)
【0074】
式(1)のθ1とオフ角θoffとの関係は、たとえば、以下の式(2)で設定される。
【0075】
2θoff≧θ1≧0.5θoff (2)
【0076】
式(2)において、θoffの係数は、第1半導体領域230の形成時の製造ばらつき等によって適切に設定される。
【0077】
本実施形態に係る半導体装置201の製造方法について説明する。
図23および図24は、第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法の一部を例示する模式的な断面図である。
図2に示したように、準備された半導体基板10上にエピタキシャル成長により第1半導体層20が形成される。図23に示すように、中間半導体層240aは、第1半導体層20上に形成される。中間半導体層240aは、たとえば図20に示した第6半導体層240と同じ条件で形成される。中間半導体層240aを形成した後、中間半導体層240a上にマスクM1が形成される。マスクM1では、第1半導体領域230を形成する位置に開口APが設けられる。マスクM1を介して、第2元素(Fe、Ni、Cr、Mg、Zn、Cu、Ca、V、Au、Pt)または第3元素(H、He、Ar、Ne、Xe)をイオン注入により中間半導体層240aに導入する。
【0078】
図24に示すように、マスクM1を除去する。マスクM1が設けられた箇所には、中間半導体層240bが形成され、マスクM1の開口APが設けられた箇所には、第1半導体領域230が形成される。
【0079】
その後、第1半導体領域230および中間半導体層240a上にさらにエピタキシャル成長により半導体層を形成し、図20に示した第6半導体層240を形成する。
【0080】
本実施形態に係る半導体装置201の動作および効果について説明する。
図25は、第2の実施形態に係る半導体装置の動作を説明する模式的な断面図である。
図26は、図25のD-D線における模式的な断面図である。
図25には、XYZ座標系とともに、SiCの結晶軸が示されている。[11-20]軸、[1-100]軸および[0001]軸の関係は、図9に関連して説明した場合と同じである。後述する図27図28および図39図42についても同様である。
図26は、[0001]軸に沿って見た場合の断面図として示されている。
【0081】
図25および図26に示すように、本実施形態に係る半導体装置201では、第6半導体層240は、第1半導体層20上に設けられている部分がある。この部分では、第1半導体層や半導体基板10に生じたBPDは、少数キャリアの再結合エネルギーを得て、1SSFである欠陥S1に拡張し得る。欠陥S1は、Y軸を中心にXY平面に対して、オフ角θoffで上方に拡張する。
【0082】
図26に示すように、1SSFは、BPDを起点としてSiCの{0001}面に平行な平面上を三角形の形状で拡張する。本実施形態に係る半導体装置201では、1SSFに拡張された欠陥S1の起点が第6半導体層240中であり、第6半導体層240には、再結合中心となる点欠陥が少なく、また、第6半導体層240では、少数キャリアは、継続的に注入され、少数キャリアの再結合も継続される。そのため、欠陥S1は、再結合エネルギーを得て、隣接する2つの第1半導体領域230間の第6半導体層240内を拡張する。
【0083】
第1半導体領域230には、第1元素、第2元素または第3元素によって、形成された再結合中心として機能する点欠陥が高密度で形成されている。そのため、第1半導体領域230では、少数キャリアのライフタイムは短縮され、少数キャリアの侵入が抑制されることによって、生成される再結合エネルギーが減少する。欠陥S1が第1半導体領域230に到達すると、欠陥S1は再結合エネルギーの供給を受けることができないので、拡張が停止する。
【0084】
このようにして、導通損失の少ない半導体装置201が実現される。
【0085】
図27は、比較例に係る半導体装置の動作を説明する模式的な断面図である。
図28は、図27のE-E線における模式的な断面図である。
図27および図28に示すように、比較例に係る半導体装置では、第1半導体領域230が設けられておらず、第1半導体層20上に、第6半導体層240cが設けられている。
【0086】
比較例の半導体装置では、第6半導体層240cに供給された少数キャリアは、第6半導体層240cで再結合し、1SSFである欠陥S2に再結合エネルギーを供給し続ける。欠陥S2は、再結合エネルギーの供給を受ける限り、三角形の外周形状を有する面状に広がり続ける。面状の欠陥S2は、第6半導体層240のSiCの{0001}面に沿って広がるので、欠陥S2は、電流経路にほぼ直交して形成される。そのため、半導体装置の電流の導通が阻害され、動作電圧が増大する。
【0087】
このように、本実施形態に係る半導体装置201では、第1半導体領域230によって、1SSFの拡張を停止させ、半導体装置201の導通時の損失の増大を防止することができる。
【0088】
半導体装置では、pn接合の順方向の導通は、少数キャリアの走行によって実現される。第1半導体領域230は、高密度の再結合中心を提供するので、少数キャリアの走行を阻害し得る。そのため、間隔をあけて複数の第1半導体領域230を配置することによって、BPDを起点とする1SSFへの拡張を制限する。このようにすることによって、少数キャリアの走行を確保しつつ、1SSFの形成を阻害し、導通損失の少ない半導体装置を安定して実現することができる。
【0089】
図22に示したように、複数の第1半導体領域230の配置間隔および厚さを適切に設定することによって、確実に1SSFの拡張を防止できる半導体装置201を実現することができる。
【0090】
(変形例1)
図29は、第2の実施形態の変形例に係る半導体装置を例示する模式的な断面図である。
図29に示すように、本変形例に係る半導体装置201aでは、複数の第1半導体領域230aおよび第6半導体層240dの構成が図20に示した半導体装置201と相違する。他の点では、本変形例に係る半導体装置201aは、半導体装置201の場合と同じであり、同一の構成要素には、同一の符号を付して詳細な説明を適宜省略する。
【0091】
複数の第1半導体領域230aは、第1半導体層20上に設けられている。図20および図21に示した半導体装置201の複数の第1半導体領域230の場合と同様に、複数の第1半導体領域230aは、Y軸に沿ってそれぞれ延びている。また、半導体装置201の複数の第1半導体領域230の場合と同様に、複数の第1半導体領域230aは、X軸方向に互いに離れて配置されている。
【0092】
第6半導体層240dは、第1半導体層20上に設けられている。第6半導体層240dは、第1半導体層20と複数の第1半導体領域230aのそれぞれとの間に設けられている。半導体装置201の第6半導体層240の場合と同様に、第6半導体層240dは、隣り合う第1半導体領域230aの間に設けられている。半導体装置201の第6半導体層240の場合と同様に、第6半導体層240dは、複数の第1半導体領域230a上に設けられている。
【0093】
複数の第1半導体領域230aのそれぞれは、不純物として第1元素(N、P、Al、B)または第2元素を含む。複数の第1半導体領域230aの不純物濃度は、第1半導体層20の不純物濃度と同じか低い。複数の第1半導体領域230aの不純物濃度は、第6半導体層240dの不純物濃度と同じか高い。
【0094】
複数の第1半導体領域230aの点欠陥密度は、第1半導体層20の点欠陥密度と同じか高い。複数の第1半導体領域230aの点欠陥密度および第1半導体層20の点欠陥密度は、半導体基板10の点欠陥密度および第6半導体層240dの点欠陥密度のいずれよりも高い。
【0095】
図30は、図29のF部の模式的な拡大図である。
図30には、図22に示した場合と同様に隣り合う2つの第1半導体領域230aに関して、距離W1、W2および厚さh1の相互の関係が示されている。図30において、厚さh2は、第1半導体層20と第1半導体領域230aの下端230aBとの間の第6半導体層240dの厚さを示している。なお、距離W1は、図22に示した例と同様に、隣り合う2つの第1半導体領域230の下端230aBの間、または、上端230aTの間の距離である。
【0096】
1SSFは、オフ角θoffでXY平面から傾いたSiCの{0001}面に沿って拡大する。そのため、1SSFの拡大を第1半導体領域230aで抑止する観点から、W1、W2およびh1の間の関係は、オフ角θoffにもとづいて、設定されることが好ましい。図30から明らかなように、この例の場合も図22に示した例におけるW1およびh1の関係を角度θ2を用いて表すことができる。W1は、以下の式(3)で表され、角度θ2の範囲は、製造時のばらつき等を考慮して式(4)で設定することが可能である。
【0097】
W1=h/tan(θ2) (3)
2θoff≧θ2≧0.5θoff (4)
【0098】
本変形例に係る半導体装置201aの製造方法について説明する。
図31および図32は、第2の実施形態の変形例に係る半導体装置の製造方法の一部を例示する模式的な断面図である。
図2に示したように、準備された半導体基板10上にエピタキシャル成長により第1半導体層20が形成される。図31に示すように、中間半導体層240eは、第1半導体層20上に形成される。中間半導体層240eは、たとえば図20に示した第6半導体層240と同じ条件で形成される。中間半導体層240eを形成した後、中間半導体層240e上にマスクM2が形成される。マスクM2では、第1半導体領域230aを形成する位置に開口APが設けられる。マスクM2を介して、第2元素(Fe、Ni、Cr、Mg、Zn、Cu、Ca、V、Au、Pt)または第3元素(H、He、Ar、Ne、Xe)をイオン注入により中間半導体層240aに導入する。イオン注入エネルギーは、第1半導体領域230aの底部230aBと第1半導体層20との間の厚さh2となるように設定される。
【0099】
図32に示すように、マスクM1を除去する。マスクM1が設けられた箇所には、中間半導体層240fが形成され、マスクM2の開口APが設けられた箇所には、第1半導体領域230aが形成される。
【0100】
その後、第1半導体領域230aおよび中間半導体層240f上にさらにエピタキシャル成長により半導体層を形成し、図29に示した第6半導体層240dを形成する。
【0101】
(変形例2)
図33は、第2の実施形態の他の変形例に係る半導体装置を例示する模式的な断面図である。
図33に示すように、本変形に係る半導体装置201bでは、第1半導体層220、複数の第1半導体領域230bおよび第6半導体層240gの構成が図20に示した半導体装置201と相違する。他の点では、本変形例に係る半導体装置201bは、半導体装置201の場合と同じであり、同一の構成要素には、同一の符号を付して詳細な説明を適宜省略する。
【0102】
第1半導体層220は、半導体基板10上に設けられている。第1半導体層220上には、複数の第1半導体領域230bが設けられている。第1半導体層220は、隣り合う第1半導体領域230bの間にも設けられている。
【0103】
図20および図21に示した半導体装置201の複数の第1半導体領域230の場合と同様に、複数の第1半導体領域230bは、Y軸に沿ってそれぞれ延びている。また、半導体装置201の複数の第1半導体領域230の場合と同様に、複数の第1半導体領域230bは、X軸方向に互いに離れて配置されている。
【0104】
第6半導体層240gは、第1半導体層220上に設けられている。半導体装置201の第6半導体層240の場合と同様に、第6半導体層240gは、隣り合う第1半導体領域230bの間に設けられている。半導体装置201の第6半導体層240の場合と同様に、第6半導体層240gは、複数の第1半導体領域230b上に設けられている。
【0105】
第1半導体層220の不純物濃度は、図20に示した半導体装置201の第1半導体層20の不純物濃度と同じである。つまり、第1半導体層220の不純物濃度は、第6半導体層240gの不純物濃度よりも高い。
【0106】
複数の第1半導体領域230bのそれぞれは、不純物として第1元素(N、P、Al、B)または第2元素(Fe、Ni、Cr、Mg、Zn、Cu、Ca、V、Au、Pt)を含む。複数の第1半導体領域230bの不純物濃度は、第1半導体層220の不純物濃度と同じか低い。複数の第1半導体領域230bの不純物濃度は、第6半導体層240gの不純物濃度と同じか高い。
【0107】
複数の第1半導体領域230bの点欠陥密度は、第1半導体層220の点欠陥密度と同じか高い。複数の第1半導体領域230bの点欠陥密度および第1半導体層220の点欠陥密度は、半導体基板10の点欠陥密度および第6半導体層240gの点欠陥密度のいずれよりも高い。
図34は、図23のG部の模式的な拡大図である。
図34には、図22に示した場合と同様に隣り合う2つの第1半導体領域230bに関して、距離W1、W2および厚さh1の相互の関係が示されている。図34において、厚さh1は、第1半導体領域230bの上端230bTから第1半導体領域230bの底部230bB1から第1半導体領域230bの側面における第1半導体層220との境界線230bBまでの長さである。厚さh3は、第1半導体領域230bの底部230bB1から第1半導体領域230bの側面における第1半導体層220との境界線230bBまでの長さである。
【0108】
図20に示した半導体装置201の場合と同様に、1SSFの拡大を第1半導体領域230bで抑止する観点から、W1、W2およびh1の間の関係は、オフ角θoffにもとづいて、設定されることが好ましい。図34から明らかなように、この例の場合も図22に示した例におけるW1およびh1の関係を角度θ3を用いて表すことができる。W1は、以下の式(5)で表され、角度θ2の範囲は、製造時のばらつき等を考慮して式(6)で設定することが可能である。
【0109】
W1=h/tan(θ3) (5)
2θoff≧θ3≧0.5θoff (6)
【0110】
本変形例に係る半導体装置201bの製造方法について説明する。
図35および図36は、第2の実施形態の他の変形例に係る半導体装置の製造方法の一部を例示する模式的な断面図である。
図35に示すように、準備された半導体基板10上にエピタキシャル成長により第1半導体層220aが形成される。中間半導体層240hは、第1半導体層220a上に形成される。中間半導体層240hは、たとえば図20に示した第6半導体層と同じ条件で形成される。中間半導体層240hを形成した後、中間半導体層240h上にマスクM3が形成される。マスクM3では、第1半導体領域230bを形成する位置に開口APが設けられる。マスクM3を介して、第2元素(Fe、Ni、Cr、Mg、Zn、Cu、Ca、V、Au、Pt)または第3元素(H、He、Ar、Ne、Xe)をイオン注入により中間半導体層240hに導入する。この際、イオン注入エネルギーは、中間半導体層240hの厚さよりも厚さh3だけ深くなるように設定される。
【0111】
図36に示すように、マスクM3を除去する。マスクM3が設けられた箇所には、中間半導体層240kが形成され、マスクM3の開口APが設けられた箇所には、第1半導体領域230bが形成される。第1半導体領域230bは、中間半導体層240k内に形成される。第1半導体領域230bは、中間半導体層240kを突き抜けて、第1半導体領域230bの一部は、第1半導体層220b内にも形成される。
【0112】
その後、第1半導体領域230bおよび中間半導体層240k上にさらにエピタキシャル成長により半導体層を形成し、図33に示した第6半導体層240gを形成する。
【0113】
このようにして、変形例に係る半導体装置201a、201bは形成される。変形例に係る半導体装置201a、201bは、図20に示した半導体装置201と同様の効果を奏する。
【0114】
(第3の実施形態)
図37は、第3の実施形態に係る半導体装置を例示する模式的な断面図である。
図38は、図37のH-H線における模式的な断面図である。
図37および図38に示すように、本実施形態に係る半導体装置301は、半導体基板10と、第1半導体層20と、複数の第1半導体領域330aと、複数の第2半導体領域330bと、第6半導体層340と、を備える。半導体装置301は、複数の第1半導体領域330a、複数の第2半導体領域330bおよび第6半導体層340の構成が図20に示した半導体装置201と相違し、他の点では、半導体装置201と同じである。同一の構成要素には、同一の符号を付して詳細な説明を適宜省略する。
【0115】
複数の第1半導体領域330aは、第1半導体層20上に設けられている。複数の第1半導体領域330aは、第1半導体層20上で、Y軸方向に向かってそれぞれ延びている。複数の第1半導体領域330aは、X軸方向に離れて配置されている。この例では、複数の第1半導体領域330aのそれぞれは、X軸方向にほぼ等間隔で配置されている。
【0116】
複数の第2半導体領域330bは、第1半導体層20上に設けられている。複数の第2半導体領域330bは、第1半導体層20上で、X軸方向に向かってそれぞれ延びている。複数の第2半導体領域330bは、Y軸方向に離れて配置されている。この例では、複数の第2半導体領域330bのそれぞれは、Y軸方向にほぼ等間隔で配置されている。つまり、第1半導体領域330aおよび第2半導体領域330bは、XY平面上で交差するように配置され、格子形状を形成している。
【0117】
図1に関連して説明したように、XY平面は、半導体基板10の第1面11aまたは第2面11bに平行であり、半導体基板10の[11-20]軸は、Y軸を中心にX軸に対して、オフ角θoffだけ傾いている。半導体基板10の[0001]軸は、Y軸を中心にZ軸に対してオフ角θoffだけ傾いている。Y軸は、半導体基板10の{1-100}面に直交する[1-100]軸と平行である。つまり、複数の第1半導体領域330aは、半導体基板10の[1-100]軸に沿ってそれぞれ延びている。複数の第1半導体領域330aのそれぞれは、半導体基板10の[11-20]軸に対して、ほぼ等間隔で離れて配置されている。また、複数の第2半導体領域330bは、半導体基板10の[11-20]軸に沿ってそれぞれ延びている。複数の第2半導体領域330bのそれぞれは、半導体基板10の[1-100]軸に対して、ほぼ等間隔で離れて配置されている。
【0118】
第6半導体層340は、第1半導体層20上に設けられている。第6半導体層340は、第1半導体層20上で、隣り合って対向する2つの第1半導体領域330aおよび隣り合って対向する2つの第2半導体領域330bに囲まれた部分にも設けられている。第6半導体層340は、複数の第1半導体領域330a上にそれぞれ設けられ、複数の第2半導体領域330b上にそれぞれ設けられている。
【0119】
半導体基板10、第1半導体層20、複数の第1半導体領域330a、複数の第2半導体領域330bおよび第6半導体層340は、第1導電形の不純物を含む。第1導電形は、たとえばn形である。
【0120】
第1半導体領域330aおよび第2半導体領域330bは、図1に示した半導体装置1の第2半導体層30と同様に、SiCと、不純物としての第1元素と、を含む。第1元素は、N、P、AlおよびBよりなる群から選択された少なくとも1つを含む。また、第2半導体領域330bは、半導体装置1と同様に、第1元素に代えて、あるいは第1元素とともに第2元素を含んでもよい。第2元素は、Fe、Ni、Cr、Mg、Zn、Cu、Ca、V、AuおよびPtよりなる群から選択された少なくとも1つを含む。
【0121】
複数の第1半導体領域330aおよび複数の第2半導体領域330bの不純物濃度は同じである。第1半導体領域330aおよび第2半導体領域330bの不純物濃度は、第1半導体層20の不純物濃度と同じか低い。第1半導体領域330aおよび第2半導体領域330bの不純物濃度は、第6半導体層340の不純物濃度と同じか高い。
【0122】
複数の第1半導体領域330aおよび複数の第2半導体領域330bの点欠陥密度は同じである。第1半導体領域330aおよび第2半導体領域330bの点欠陥密度は、第1半導体層20の点欠陥密度と同じか高い。第1半導体領域330aの点欠陥密度、第2半導体領域330bの点欠陥密度および第1半導体層20の点欠陥密度は、半導体基板10の点欠陥密度および第6半導体層340の点欠陥密度のいずれよりも高い。
【0123】
隣り合う第1半導体領域330aの間の距離および第1半導体領域330aの厚さの関係については、1SSFの拡張を防止する観点から、図22に示した例と同様とすることができる。
【0124】
本実施形態に係る半導体装置301は、図20に示した半導体装置201と同様に製造することができる。すなわち、図23に示したマスクM1の開口APを、格子状に交差する第1半導体領域330aおよび第2半導体領域330bに対応する位置とすることによって、第1半導体領域330aおよび第2半導体領域330bを形成することができる。
【0125】
本実施形態に係る半導体装置301の動作について説明する。
図39は、第3の実施形態に係る半導体装置の動作を説明する模式的な断面図である。
図40は、図39のI-I線における模式的な断面図である。
図39および図40に示すように、本実施形態に係る半導体装置301では、第6半導体層340は、第1半導体層20上に設けられている部分がある。この部分では、第1半導体層や半導体基板10に生じたBPDは、少数キャリアの再結合エネルギーを得て、1SSFである欠陥S3に拡張し得る。欠陥S3は、Y軸を中心にXY平面に対して、オフ角θoffで上方に拡張する。
【0126】
1SSFは、図26および図28に示した三角形状に拡張する態様のほか、帯(Bar)状に拡張する態様が知られている。帯状の欠陥S3は、SiCの{0001}面を[1-100]軸方向および[1100]軸方向の両方に向かって拡張する。そのため、図20に示した半導体装置201の半導体領域230では、[11-20]軸方向の拡張を防止できても、[1-100]軸方向および[1100]軸方向の1SSFの拡張を防止できない可能性がある。本実施形態に係る半導体装置301では、第1半導体領域330aと第2半導体領域330bとを交差させ、帯状欠陥の拡張を第1半導体領域330aおよび第2半導体領域330bで防止する。
【0127】
図41は、比較例に係る半導体装置の動作を説明する模式的な断面図である。
図42は、図41のJ-J線における模式的な断面図である。
図41および図42の比較例の半導体装置の構成は、図27および図28に示した半導体装置の構成と同じである。すなわち、図41および図42に示すように、比較例に係る半導体装置では、第1半導体領域330aおよび第2半導体領域330bが設けられておらず、第1半導体層20上に、第6半導体層240cが設けられている。
【0128】
比較例の半導体装置では、第6半導体層240cに供給された少数キャリアは、第6半導体層240cで再結合し、1SSFである欠陥S4に再結合エネルギーを供給し続ける。欠陥S4は、再結合エネルギーの供給を受ける限り、三角形の外周形状を有する面状に第3半導体層40内を広がり続け、第4半導体層50との界面まで達し得る。面状の欠陥S4、第6半導体層240cのSiCの{0001}面に沿って広がるので、欠陥S4は、電流経路にほぼ直交して形成される。そのため、半導体装置の導通が阻害され、動作電圧が増大する。
【0129】
このように、本実施形態に係る半導体装置301では、格子状に交差する第1半導体領域330aおよび第2半導体領域330bによって、いかなる態様の1SSFでもその拡張を停止させ、半導体装置301の導通時の損失の増大を防止することができる。
【0130】
本実施形態に係る半導体装置301において、図29および図33に関連して説明した第2の実施形態の変形例を、第1半導体領域および第2半導体領域に適用することができ、同様の効果を得ることができる。
【0131】
上述した各実施形態および各変形例においては、半導体装置は、主としてPiNダイオードであるものとして説明した。第1導電形で低不純物濃度の半導体層に第2導電形の半導体層が接合されたPiN構造を有する半導体装置であればPiNダイオードに限らない。たとえば、各実施形態および各変形例の半導体装置として、DMOS構造のMOSFETを適用してもよい。
【0132】
このようにして、安定した特性を有する半導体装置を実現することができる。
【0133】
以上、本発明のいくつかの実施形態を例示したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更などを行うことができる。これら実施形態やその変形例は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。また、前述の各実施形態は、相互に組み合わせて実施することができる。
【0134】
実施形態は、以下の態様を含む。
【0135】
(付記1)
第1面と前記第1面の反対側に位置する第2面とを有し、炭化ケイ素を含む第1導電形の半導体基板と、
前記第1面上に設けられ、炭化ケイ素を含む第1導電形の第1半導体層と、
前記第1半導体層上に設けられ、炭化ケイ素を含む第1導電形の第2半導体層と、
前記第2半導体層上に設けられ、炭化ケイ素を含む第1導電形の第3半導体層と、
前記第3半導体層上に設けられ、炭化ケイ素を含む第2導電形の第4半導体層と、
を備え、
前記第2半導体層の第1導電形のキャリア濃度は、前記第1半導体層の第1導電形のキャリア濃度と同じか低く、
前記第2半導体層の第1導電形のキャリア濃度は、前記第3半導体層の第1導電形のキャリア濃度と同じか高く、
前記第2半導体層の点欠陥密度は、前記第1半導体層の点欠陥密度と同じか高く、かつ、前記第3半導体層の点欠陥密度よりも高い半導体装置。
【0136】
(付記2)
前記第1半導体層と前記第2半導体層との間に設けられ、炭化ケイ素を含む第1導電形の第5半導体層をさらに備え、
前記第2半導体層の第1導電形のキャリア濃度は、前記第5半導体層の第1導電形のキャリア濃度と同じか高く、
前記第2半導体層の点欠陥密度は、前記第5半導体層の点欠陥密度よりも高い付記1記載の半導体装置。
【0137】
(付記3)
前記第2半導体層は、前記第1半導体層上に設けられた第1層と、前記第1層上に設けられた第2層と、を含み、
前記第1層の第1導電形のキャリア濃度は、前記第1半導体層の第1導電形のキャリア濃度と同じか低く、
前記第2層の第1導電形のキャリア濃度は、前記第1層の第1導電形のキャリア濃度と同じか低く、かつ、前記第3半導体層の第1導電形のキャリア濃度と同じか高く、
前記第1層の点欠陥密度および前記第2層の点欠陥密度は、前記第1半導体層の点欠陥密度と同じか高く、
前記第3半導体層の点欠陥密度よりも高い付記1または2に記載の半導体装置。
【0138】
(付記4)
第1面と前記第1面の反対側に位置する第2面とを有し、炭化ケイ素を含む第1導電形の半導体基板と、
前記第1面上に設けられ、炭化ケイ素を含む第1導電形の第1半導体層と、
前記第1半導体層上に設けられ、炭化ケイ素を含む第1導電形の複数の第1半導体領域と、
前記第1半導体層上に設けられ、炭化ケイ素を含む第1導電形の第6半導体層と、
前記第6半導体層上に設けられ、炭化ケイ素を含む第2導電形の第4半導体層と、
を備え、
前記第1面は、第1方向および前記第1方向に交差する第2方向を含む平面に平行であり、
前記複数の第1半導体領域は、前記第1方向に沿ってそれぞれ伸びており、前記第2方向に沿って間隔をあけて設けられ、
炭化ケイ素の{0001}面は、炭化ケイ素の{1-100}面に直交する[1-100]軸を中心にして、前記第1面との間で、第1角度を形成しており、
前記第2方向は、[1-100]軸の延びる方向と平行であり、
前記複数の第1半導体領域の第1導電形のキャリア濃度は、前記第1半導体層の第1導電形のキャリア濃度と同じか低く、
前記複数の第1半導体領域の第1導電形のキャリア濃度は、前記第6半導体層の第1導電形のキャリア濃度と同じか高く、
前記複数の第1半導体領域の点欠陥密度は、第1半導体層の点欠陥密度と同じか高く、かつ、前記第6半導体層の点欠陥密度よりも高い半導体装置。
【0139】
(付記5)
前記第6半導体層は、前記第1半導体層上に設けられるとともに、前記第1半導体層と前記複数の第1半導体領域のそれぞれとの間に設けられた付記4記載の半導体装置。
【0140】
(付記6)
前記第1半導体層は、前記複数の第1半導体領域のうちの隣り合う2つの第1半導体領域の間に設けられた付記4または5に記載の半導体装置。
【0141】
(付記7)
前記第1半導体層上に設けられ、炭化ケイ素を含む第1導電形の複数の第2半導体領域をさらに備え、
前記複数の第2半導体領域は、前記第2方向に沿ってそれぞれ延びており、前記第1方向に沿って間隔をあけて設けられ、
前記第6半導体層は、前記第1半導体層上で、前記複数の第1半導体領域のうちの2つの第1半導体領域および前記複数の第2半導体領域のうちの2つの第2半導体領域に囲まれ、
前記複数の第2半導体領域の第1導電形のキャリア濃度は、前記第1半導体層の第1導電形のキャリア濃度と同じか低く、
前記複数の第2半導体領域の第1導電形のキャリア濃度は、前記第6半導体層の第1導電形のキャリア濃度と同じか高く、
前記複数の第2半導体領域の点欠陥密度は、第1半導体層の点欠陥密度と同じか高く、かつ、
前記第6半導体層の点欠陥密度よりも高い付記4記載の半導体装置。
【0142】
(付記8)
前記複数の第1半導体領域のうち隣り合う2つの第1半導体領域の間の距離は、前記複数の第1半導体領域の厚さおよび前記第1角度にもとづいて設定された付記4~7のいずれか1つに記載の半導体装置。
【0143】
(付記9)
前記第2半導体層の第1導電形のキャリアは、第1元素を含み、
前記第1元素は、第1元素は、N、P、AlおよびBよりなる群から選択された少なくとも1つを含む付記1~3のいずれか1つに記載の半導体装置。
【0144】
(付記10)
前記第2半導体層は、第2元素を含み、
前記第2元素は、Fe、Ni、Cr、Mg、Zn、Cu、Ca、V、AuおよびPtよりなる群から選択された少なくとも1つを含む付記1~3のいずれか1つに記載の半導体装置。
【符号の説明】
【0145】
1、1a、1b、201、201a、201b、301…半導体装置、
10…半導体基板、
20、220、220a…第1半導体層、
30、130…第2半導体層、
32…第1層、
34…第2層、
40…第3半導体層、
42…第5半導体層、
50…第4半導体層、
62…第1電極、
64…第2電極、
230、230a、230b、330a…第1半導体領域、
240、240d、240g、340…第6半導体層、
330b…第2半導体領域
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