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特開2024-135359防水シート敷設工法、防水層構造及び下地用断熱材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135359
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】防水シート敷設工法、防水層構造及び下地用断熱材
(51)【国際特許分類】
   E04D 5/14 20060101AFI20240927BHJP
   E04D 5/10 20060101ALI20240927BHJP
   A44B 18/00 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
E04D5/14 Z
E04D5/10 E
A44B18/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023045996
(22)【出願日】2023-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000006068
【氏名又は名称】三ツ星ベルト株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】591017939
【氏名又は名称】クラレファスニング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】牧野 吉晴
(72)【発明者】
【氏名】沖吉 勇二
(72)【発明者】
【氏名】小川 修平
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 佳克
(72)【発明者】
【氏名】高桑 一則
(72)【発明者】
【氏名】山内 隆寛
(72)【発明者】
【氏名】竹原 圭司
【テーマコード(参考)】
3B100
【Fターム(参考)】
3B100DA02
(57)【要約】
【課題】複合防水シートの下地に対する位置合わせの作業性(仮係合とその解除の作業)を向上可能な、防水シートを敷設する工法及び防水層並びに敷設する下地用断熱材を提供する。
【解決手段】下地に設置される雄型面ファスナー2と、不織布31と防水シート32とを積層した複合防水シート3と、を係合させて使用する。これにより、複合防水シート3(不織布31)の下地に対する位置合わせの作業性(仮係合とその解除の作業)を向上させることができる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下地に設置される雄型面ファスナーと、不織布と防水シートとを積層した複合防水シートと、を係合させて使用する防水シート敷設工法。
【請求項2】
前記雄型面ファスナーは、複数種類の異なる厚みを有するように形成されている、請求項1に記載の防水シート敷設工法。
【請求項3】
前記雄型面ファスナーは、厚みが異なる種類毎に、それぞれ列を成している、請求項2に記載の防水シート敷設工法。
【請求項4】
前記雄型面ファスナーは、前記複合防水シートの係合面に対して部分的に対応するように前記下地に設置されている、請求項1に記載の防水シート敷設工法。
【請求項5】
前記雄型面ファスナーは、前記複合防水シートの係合面に対する被覆率が30~90%になるように前記下地に設置されている、請求項4に記載の防水シート敷設工法。
【請求項6】
前記雄型面ファスナーは、複数のフックを備えており、
前記フックは、波型で、先端の向きが、前記複合防水シートの端部が成す方向に対して平行になるように配置されている、請求項1に記載の防水シート敷設工法。
【請求項7】
前記フックの先端の向きが同じ方向を向いた列を複数形成しており、少なくとも1つの列は他の列のフックの先端の向きとは逆方向に配置されている、請求項6に記載の防水シート敷設工法。
【請求項8】
前記雄型面ファスナーは、複数のフックを備えており、
前記複数のフックは、波型で、先端の向きが2方向以上になるように配置されている、請求項1に記載の防水シート敷設工法。
【請求項9】
下地に設置される雄型面ファスナーと、
前記雄型面ファスナーに係合される不織布及び防水シートを積層した複合防水シートと、を備えた防水層構造。
【請求項10】
前記雄型面ファスナーは、複数種類の異なる厚みを有するように形成されている、請求項9に記載の防水層構造。
【請求項11】
前記雄型面ファスナーは、厚みが異なる種類毎に、それぞれ列を成している、請求項10に記載の防水層構造。
【請求項12】
前記雄型面ファスナーは、前記複合防水シートの係合面に対して部分的に対応するように前記下地に設置されている、請求項9に記載の防水層構造。
【請求項13】
前記雄型面ファスナーは、前記複合防水シートの係合面に対する被覆率が30~90%になるように前記下地に設置されている、請求項12に記載の防水層構造。
【請求項14】
前記雄型面ファスナーは、複数のフックを備えており、
前記フックは、波型で、先端の向きが、前記複合防水シートの端部が成す方向に対して平行になるように配置されている、請求項9に記載の防水層構造。
【請求項15】
前記フックの先端の向きが同じ方向を向いた列を複数形成しており、少なくとも1つの列は他の列のフックの先端の向きとは逆方向に配置されている、請求項14に記載の防水層構造。
【請求項16】
前記雄型面ファスナーは、複数のフックを備えており、
前記複数のフックは、波型で、先端の向きが2方向以上になるように配置されている、請求項9に記載の防水層構造。
【請求項17】
不織布、及び、防水シートを積層した複合防水シートに係合可能な雄型面ファスナーを、断熱材の表面に設置した、下地用断熱材。
【請求項18】
前記雄型面ファスナーは、前記断熱材の表面に対する被覆率が30~90%になるように設置されている、請求項17に記載の下地用断熱材。
【請求項19】
前記断熱材は矩形であり、
前記雄型面ファスナーは、前記断熱材の少なくとも1辺を覆うように設置されている、請求項18に記載の下地用断熱材。
【請求項20】
前記雄型面ファスナーは、前記断熱材の少なくとも隣り合う2辺を覆うように設置されている、請求項19に記載の下地用断熱材。
【請求項21】
前記断熱材は正方形である、請求項18~20の何れかに記載の下地用断熱材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物屋上などにおいて、構造物の外面に防水シートを敷設する工法及び防水層並びに敷設する下地用断熱材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建物屋上などにおいて、構造物の外面に防水層を形成する防水工法としては、アスファルト防水、シート防水、塗膜防水などが知られているが、特にゴムシート(もしくはエラストマーシート)などの防水シートを用いたシート防水工法は、防水信頼性と施工の容易性とを両立できる工法として、広く用いられている。
【0003】
防水シートをコンクリートなどの下地に敷設する方法としては、防水シートおよび下地に接着剤を塗布して直接貼り付ける方法の他、下地に間隔をあけて固定ディスクを打ち込んだ後、固定ディスクに防水シートを固着させる方法などが汎用されている。
【0004】
しかし、この方法は、下地に防水シートを釘状物またはボルト状物で打付けたり、接着剤で固定させたりする必要があり、下地に対する防水シートの位置合わせが困難となる場合があった。
【0005】
この点、特許文献1には、雌型面ファスナーと係合可能な突出部を有する素子を有する雄型面ファスナーが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2016-214716号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1では、家屋用内装材や自動車用内装材への適用が示唆されているが、防水シートへの適用は示唆されていない。仮に、特許文献1に開示される雄型面ファスナーを、防水シートにより防水層を形成する防水工法に適用したとしても、その効果を十分に得られない虞がある。すなわち、防水シートは自重が大きいために、素子Bによる仮置き時の係合力の低下という効果が十分に得られない虞がある。そのため、防水シートにより防水層を形成する防水工法においては、不織布の表面に保護フィルムを貼り合わせた状態で位置合わせを行った後に、保護フィルムを外して本止めを行うといった工程が必要であり、作業効率の低下、廃棄物の増加といった問題があった。また、防水シートは屋外に設置され、風圧に耐える必要があるため、内装材と比較して本止め後の係合力は大きなものが求められる。特許文献1の構成は雌型面ファスナーとは係合しない素子Bが必須であるために、本止め後の係合力が低下する虞もある。
【0008】
そこで、本発明の目的は、複合防水シートの下地に対する位置合わせの作業性(仮係合とその解除の作業)を向上可能な、防水シートを敷設する工法及び防水層並びに敷設する下地用断熱材の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、下地に設置される雄型面ファスナーと、不織布と防水シートとを積層した複合防水シートと、を係合させて使用する防水シート敷設工法である。
【0010】
上記構成によれば、複合防水シート(不織布)の下地に対する位置合わせの作業性(仮係合とその解除の作業)を向上させることができる。
【0011】
また、本発明は、上記防水シート敷設工法において、前記雄型面ファスナーが、複数種類の異なる厚みを有するように形成されていてもよい。
【0012】
上記構成によれば、雄型面ファスナーの厚みが大きいところと小さいところとを組み合わせて配置することにより、複合防水シート(不織布)を、雄型面ファスナー上に仮置きした際に、不織布は、雄型面ファスナーの厚みが大きい部分に仮係合することから、雄型面ファスナーと複合防水シートとの係合力を小さくすることができる。これにより、雄型面ファスナーと複合防水シートとの位置合わせの作業性(仮係合とその解除の作業)を向上させることができる。そして、雄型面ファスナーと複合防水シートとを本止めする際には、複合防水シートを押圧することにより、不織布は、雄型面ファスナーの厚みが大きい部分だけでなく、雄型面ファスナーの厚みが小さい部分にも係合することから、雄型面ファスナーと複合防水シートとの係合力を大きくして、耐久性を向上させることができる。
【0013】
また、本発明は、上記防水シート敷設工法において、前記雄型面ファスナーが、厚みが異なる種類毎に、それぞれ列を成していてもよい。
【0014】
雄型面ファスナーの厚みが大きい部分と小さい部分とがランダムに設けられている場合、厚みが小さい部分と不織布とが係合しづらくなって、本止め後の係合力が小さくなる虞がある。そこで、雄型面ファスナーの、厚みが大きい部分と厚みが小さい部分とをそれぞれ列を成して整列した構成にすることにより、仮置きした際の係合力を小さくしつつ、押圧して本止めした後は雄型面ファスナーの厚みが小さい部分と不織布とが係合しやすくなるため、耐久性が向上する。
【0015】
また、本発明は、上記防水シート敷設工法において、前記雄型面ファスナーが、前記複合防水シートの係合面に対して部分的に対応するように前記下地に設置されていてもよい。
【0016】
上記構成によれば、雄型面ファスナーが、複合防水シートの係合面の全面に対してではなく、部分的に下地に設置されていることから、複合防水シートの下地への仮置き時の係合力を低減させることができる。これにより、複合防水シートの下地に対する位置合わせ(仮置き)の作業性(仮係合とその解除の作業)を向上させることができる。
【0017】
また、本発明は、上記防水シート敷設工法において、前記雄型面ファスナーが、前記複合防水シートの係合面に対する被覆率が30~90%になるように前記下地に設置されていてもよい。
【0018】
雄型面ファスナーの複合防水シートの係合面に対する被覆率が低すぎると係合力が低下して耐風圧性が低下してしまう(風で複合防水シートが剥がれる)。一方、被覆率が高すぎると複合防水シートの仮置き時の係合力が高くなりすぎて位置合わせの作業性が低下してしまう。そこで、被覆率を30~90%にすることにより、耐風圧性と仮置き時の作業性との最適化を図ることができる。
【0019】
また、本発明は、上記防水シート敷設工法において、前記雄型面ファスナーが、複数のフックを備えており、
前記フックは、波型で、先端の向きが、前記複合防水シートの端部が成す方向に対して平行になるように配置されていてもよい。
【0020】
上記構成によれば、複合防水シートの端部が成す方向と直交する方向から作用する外力に対する抵抗力を高めることができ、耐風圧性を向上させることができる。
【0021】
また、本発明は、上記防水シート敷設工法において、前記フックの先端の向きが同じ方向を向いた列を複数形成しており、少なくとも1つの列は他の列のフックの先端の向きとは逆方向に配置されていてもよい。
【0022】
フックの先端の向きが全て同じ方向を向いていれば、雄型面ファスナーにおいて、複合防水シートの端部が成す方向の一方側から剥がそうとする力に対する抵抗力は高いものの、複合防水シートの端部が成す方向の他方側から剥がそうとする力に対する抵抗力は低くなる。
そこで、フックの先端の向きが同じ方向を向いた列の全てのフックの先端の向きが同じにならないように、少なくとも1つの列は他の列のフックの先端の向きとは逆方向になるように配置することにより、雄型面ファスナーにおいて、複合防水シートを、複合防水シートの端部が成す方向の両方側から剥がそうとする力に対する抵抗力を高めることができる。
【0023】
また、本発明は、上記防水シート敷設工法において、前記雄型面ファスナーが、複数のフックを備えており、
前記複数のフックは、波型で、先端の向きが2方向以上になるように配置されていてもよい。
【0024】
一方向きのフックのみを有する雄型面ファスナーを用いた場合、そのフックの向いた方向側から剥がそうとする力に対する抵抗力は高いものの、そのフックの向いた方向の反対側から剥がそうとする力に対する抵抗力は低い。
そこで、フックの先端の向きが2方向以上になるように配置することにより、複合防水シートを雄型面ファスナーから剥がそうとする力に対する抵抗力を2方向以上において高めることができる。
【0025】
また、本発明は、下地に設置される雄型面ファスナーと、
前記雄型面ファスナーに係合される不織布及び防水シートを積層した複合防水シートと、を備えた防水層構造である。
【0026】
また、本発明は、上記防水層構造において、前記雄型面ファスナーが、複数種類の異なる厚みを有するように形成されていてもよい。
【0027】
また、本発明は、上記防水層構造において、前記雄型面ファスナーが、厚みが異なる種類毎に、それぞれ列を成していてもよい。
【0028】
また、本発明は、上記防水層構造において、前記雄型面ファスナーが、前記複合防水シートの係合面に対して部分的に対応するように前記下地に設置されていてもよい。
【0029】
また、本発明は、上記防水層構造において、前記雄型面ファスナーが、前記複合防水シートの係合面に対する被覆率が30~90%になるように前記下地に設置されていてもよい。
【0030】
また、本発明は、上記防水層構造において、前記雄型面ファスナーが、複数のフックを備えており、
前記フックは、波型で、先端の向きが、前記複合防水シートの端部が成す方向に対して平行になるように配置されていてもよい。
【0031】
また、本発明は、上記防水層構造において、前記フックの先端の向きが同じ方向を向いた列を複数形成しており、少なくとも1つの列は他の列のフックの先端の向きとは逆方向に配置されていてもよい。
【0032】
また、本発明は、上記防水層構造において、前記雄型面ファスナーが、複数のフックを備えており、
前記複数のフックは、波型で、先端の向きが2方向以上になるように配置されていてもよい。
【0033】
また、本発明は、不織布、及び、防水シートを積層した複合防水シートに係合可能な雄型面ファスナーを、断熱材の表面に設置した、下地用断熱材である。
【0034】
上記構成によれば、複合防水シート(不織布)の断熱材(下地)に対する位置合わせ等の作業性を向上させることができる。
【0035】
また、本発明は、上記下地用断熱材において、
前記雄型面ファスナーが、前記断熱材の表面に対する被覆率が30~90%になるように設置されていてもよい。
【0036】
雄型面ファスナーの複合防水シートの係合面に対する被覆率が低すぎると係合力が低下して耐風圧性が低下してしまう(風で複合防水シートが剥がれる)。一方、被覆率が高すぎると複合防水シートの仮置き時の係合力が高くなりすぎて位置合わせの作業性が低下してしまう。そこで、被覆率を30~90%にすることにより、耐風圧性と仮置き時の作業性との最適化を図ることができる。
【0037】
また、本発明は、上記下地用断熱材において、
前記断熱材が矩形であり、
前記雄型面ファスナーは、前記断熱材の少なくとも1辺を覆うように設置されていてもよい。
【0038】
上記構成によれば、断熱材の少なくとも1辺における複合防水シートとの係合力を高めて、耐風圧性を向上させることができる。
【0039】
また、本発明は、上記下地用断熱材において、
前記雄型面ファスナーが、前記断熱材の少なくとも隣り合う2辺を覆うように設置されていてもよい。
【0040】
上記構成によれば、矩形をした断熱材の角部分における複合防水シートとの係合力を高めて、耐風圧性を更に向上させることができる。
【0041】
また、本発明は、上記下地用断熱材において、前記断熱材が正方形であってもよい。
【0042】
上記構成によれば、断熱材の方向を回転させても下地に隙間なく敷き詰められ、取扱性に優れる。
【発明の効果】
【0043】
複合防水シートの下地に対する位置合わせの作業性(仮係合とその解除の作業)を向上可能な、防水シートを敷設する工法及び防水層並びに敷設する下地用断熱材の提供をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1】実施形態1に係る断熱防水層構造の説明図である。
図2】実施形態1に係る雄型面ファスナーの説明図である。
図3】実施形態1に係る断熱防水工法の説明図である。
図4】実施形態2に係る断熱防水層構造及び断熱接着下地ボード(例1)の説明図である。
図5】例1~例8に係る雄型面ファスナーの断熱材の表面に対する被覆率の説明図である。
図6】実施形態2に係る断熱防水層構造及び断熱接着下地ボード(例2)の説明図である。
図7】実施形態3に係る雄型面ファスナーの説明図である。
図8】実施形態3に係る雄型面ファスナーの拡大斜視図である。
図9】実施形態4に係る雄型面ファスナーの説明図である。
図10】実施形態5に係る雄型面ファスナーの説明図である。
図11】実施形態5に係る複合防水シートの四方の端部に直交するA方向及びB方向に対する係合力の説明図である。
図12】その他の実施形態1に係る防水構造の説明図である。
図13】その他の実施形態2に係る防水構造の説明図である。
図14】その他の実施形態3に係る雄型面ファスナーの配置態様の説明図である。
図15】ピール強力及びシアー強力の説明図である。
図16】実施例1に係る、雄型成形面ファスナー及び雄型布製面ファスナーの写真である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
(実施形態1)
実施形態1では、建物屋上などにおいて、下地となるコンクリート10の表面に断熱構造と防水層構造とを含む断熱防水層構造100、及び、この断熱防水層構造100を形成する断熱防水工法の一例について説明する。
【0046】
(断熱防水層構造100)
実施形態1の断熱防水層構造100は、図1に示すように、下地となるコンクリート10の表面に、接着剤11により断熱材12が接着されており(断熱構造)、この断熱材12の上に、粘着剤13によって雄型面ファスナー2が固定され、そして、この雄型面ファスナー2に、不織布31及び防水シート32を積層した複合防水シート3が重ねられ、雄型面ファスナー2と複合防水シート3(不織布31)とが係合された構造をしている。なお、雄型面ファスナー2及び複合防水シート3を防水層1(防水層構造)としている。
【0047】
(コンクリート10)
コンクリート10は、特に限定されないが、本実施形態では、建物屋上などの構造物の外面に使用される、LC(軽量コンクリート)の一種である、ALC(軽量気泡コンクリート)を例示することができる。ALCは、軽量で、耐火性、断熱性、施工性に優れているため、建築材料として広く使用されている。
【0048】
ALCは、珪石等の珪酸質原料とセメントや生石灰等の石灰質原料を主原料とし、これらの微粉末に水とアルミニウム粉末等の添加物を加えてスラリー状とし、これを予め補強用鉄筋が並べられた型枠内に流し込み、その型枠内に流し込まれたスラリーは、アルミニウム粉末の反応によって発泡すると共に、石灰質原料の反応によって徐々に硬化し、半硬化状態となったところで、ピアノ線等の切断用ワイヤにより所定の大きさ形状に切断し、その後、オートクレーブにより高温高圧(約180℃、10気圧)の水蒸気養生を行うことによって製造される。
【0049】
コンクリート10としては、ALC(軽量気泡コンクリート)などのLC(軽量コンクリート)の他に、RC(鉄筋コンクリート)や、PC(プレキャストコンクリート)などが挙げられる。
【0050】
断熱防水層構造100の下地としては、コンクリートに限らず、モルタルなどが挙げられる。
【0051】
(断熱材12)
断熱材12は、コンクリート10の下地の表面に、接着剤11により接着されて配置されている。
また、断熱材12は、硬質ポリウレタンフォームによって形成されている。断熱材12を形成する硬質ポリウレタンフォームは、イソシアネート基を2個以上有するポリイソシアネート、ヒドロキシル基を2個以上有するポリオール、発泡剤などを混合することにより、マトリックス部分となるポリウレタン中に多数の微小な気泡が包含された断熱性に優れた発泡体である。硬質ポリウレタンフォームを形成するマトリックス部分は、ポリウレタンのみで形成されていてもよく、ポリウレタン以外の他の合成樹脂との混合物であってもよい。ただし、強度や断熱性といった硬質ポリウレタンフォームとしての特性を損なわないために、硬質ポリウレタンフォーム全体に占めるポリウレタンの割合は50質量%以上であることが好ましい。
【0052】
また、強度や断熱性を向上するためには、硬質ポリウレタンフォーム中の気泡は、独立気泡であることが好ましく、発泡シートの密度は20~25kg/m3、熱伝導率は0.02~0.04W/(m・K)程度であることが好ましい。
また、発泡成形法としては、押出発泡成形法やビーズ発泡成形法を適用することができる。発泡倍率は、例えば10~50倍程度であることが好ましい。発泡倍率が10倍未満であると断熱性が低下し、50倍を超えると強度が低下する虞がある。また、断熱材12の厚みは、5~100mm程度、より好ましくは10~50mm程度である。厚みが5mm未満であると断熱性や強度が低下し、100mmを超えると歩行性を損なう虞がある。
【0053】
また、断熱材12は、硬質ポリウレタンフォームによって形成されていることにも限られない。断熱材12は、例えば、ポリエチレンフォーム、ポリスチレンフォームなど、硬質ポリウレタンフォーム以外の発泡シートによって形成されていてもよい。
【0054】
接着剤11は、溶剤系接着剤、水系接着剤、化学反応によって硬化させる無溶剤系接着剤などである。具体的には、クロロプレンゴム、ブチルゴム等を溶剤に溶かした接着剤、ポリウレタン系接着剤、変性シリコーン系接着剤、エポキシ系接着剤などが挙げられる。これらの接着剤のうち、接着力や施工性に優れる点から溶剤系接着剤、特にクロロプレンゴム系接着剤やブチルゴム系接着剤を用いることが好ましい。
【0055】
(雄型面ファスナー2)
本実施形態の雄型面ファスナー2は、図2(A)に示すように、雄型面ファスナー(小)22より厚みが大きい雄型面ファスナー(大)21と、雄型面ファスナー(大)21より厚みが小さい雄型面ファスナー(小)22とを組み合わせたものである。雄型面ファスナー(大)21は、厚みの大きいプラスチック基板211の上に、同プラスチックからなる、先端がフック状の係合素子212が多数立設された、雄型成形面ファスナーである。また、雄型面ファスナー(小)22は、プラスチック基板211よりも厚みの小さいプラスチック基板221の上に、同プラスチックからなる、先端がフック状の係合素子222が多数立設された、雄型成形面ファスナーである。
ここで、係合素子212と係合素子222とは同じ厚みであり、構成材料としては同じものを使用できる。
【0056】
また、本実施形態の雄型面ファスナー2は、厚みの異なる2種類の雄型面ファスナー(大)21及び雄型面ファスナー(小)22を使用しているが、厚みの異なる3種類以上の雄型面ファスナーを使用してもよい。
【0057】
また、雄型面ファスナー2を構成する、雄型面ファスナー(大)21及び雄型面ファスナー(小)22は、雄型成形面ファスナーに限定されず、織編物からなる基布の表面に、基布に織り込んだモノフィラメントからなる係合素子が複数立設された雄型布製面ファスナーであってもよく、その材質はポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、コポリエステル、ポリアミド6、ポリアミド66、コポリアミド、ポリプロピレン、ポリエチレンなどであり、中でも係合力、耐久性、経済性の面でポリプロピレンが好適である。
【0058】
雄型面ファスナー2(雄型面ファスナー(大)21及び雄型面ファスナー(小)22)は、図1に示すように、断熱材12の表面全体を覆うように、粘着剤13により接着(固定)されている。粘着剤13は、ゴム系、アクリル系、ウレタン系などである。中でも当該断熱材との相性が良いゴム系粘着剤が好ましい。
【0059】
また、本実施形態では、係合素子212及び係合素子222の各先端は、波型のフック形状をしている(図2)。
なお、各先端の形状としては、波型に限らず、J型、鉤型、鏃型、T型(キノコ形状)、逆L字型などを採用してもよい。
【0060】
なお、雄型面ファスナー(大)21及び雄型面ファスナー(小)22のそれぞれの雄型面ファスナー2に占める面積、形状、配置数、配置態様、構成比率は便宜設計段階で変更可能である。
本実施形態では、雄型面ファスナー2は、雄型面ファスナー(大)21の所定幅の列と、雄型面ファスナー(小)22の所定幅の列が所定間隔で交互に整列して配置されている。即ち、雄型面ファスナー2は、厚みが異なる、雄型面ファスナー(大)21と雄型面ファスナー(小)とが、それぞれ列を成している。
【0061】
なお、雄型面ファスナー2において、雄型面ファスナー(大)21と、雄型面ファスナー(小)22の構成比率(割合)を変化させることで、雄型面ファスナー2と複合防水シート3との係合力を調整することができる。即ち、係合力のバランスを取りながら、雄型面ファスナー(大)21と雄型面ファスナー(小)22との最適な割合を選択することが可能である。
雄型面ファスナー2の厚みが大きい雄型面ファスナー(大)21と厚みが小さい雄型面ファスナー(小)22とがランダムに設けられている場合、厚みが小さい雄型面ファスナー(小)22と不織布31とが係合しづらくなって、本止め後の係合力が小さくなる虞がある。そこで、雄型面ファスナー2の、厚みが大きい雄型面ファスナー(大)21と厚みが小さい雄型面ファスナー(小)22とをそれぞれ列を成して整列した構成にすることにより、仮置きした際の係合力を小さくしつつ、押圧して本止めした後は雄型面ファスナー2の厚みが小さい雄型面ファスナー(小)22と不織布31とが係合しやすくなるため、耐久性が向上する。
【0062】
また、雄型面ファスナー2は、雄型成形面ファスナーであれば、押出成形法や射出成形法により製造される。
この点、雄型面ファスナー2の形態は、雄型成形面ファスナーや雄型布製面ファスナーなど特に限定されない。ただし、雄型面ファスナー2と複合防水シート3(不織布31)との係合力を大きくできる点からは、雄型成形面ファスナーが好ましく、押出成形法及び射出成形法により得られる雄型成形面ファスナーがより好ましい。
【0063】
(不織布31)
不織布31は、材質は特に限定されないが、係合力、耐久性、軽量性、耐水性の観点から、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、ポリプロピレン繊維などを少なくとも1種類以上を組み合わせた繊維を使用することが好ましい。また、係合力、耐久性、価格などのバランスからは、ポリエステル繊維が好ましい。不織布31の厚みは0.5~5.0mm程度が好ましい。本実施形態の不織布31は、厚み1.0mmのポリエステル不織布を使用している。
【0064】
また、不織布31は、当該不織布31を構成する繊維がループを形成し、これが雌型面ファスナーの役割を果たす。
【0065】
(防水シート32)
防水シート32は、ゴム(加硫ゴム、架橋ゴム)、エラストマー(熱硬化性エラストマー、熱可塑性エラストマー)、合成樹脂などで形成されている。より具体的には、EPDM(エチレン・プロピレン・ジエン三元共重合体)、IIR(ブチルゴム)、NR(天然ゴム)、SBR(スチレン・ブタジエンゴム)、CR(クロロプレンゴム)、NBR(アクリロニトリル・ブタジエンゴム)、HNBR(水素化アクリロニトリル・ブタジエンゴム)、CSM(クロロスルフォン化ポリエチレン)ポリエチレン、ポリプロピレン、PVC(ポリ塩化ビニル)、EVA(エチレン酢酸ビニル共重合体)などである。また、防水シート32は、一体成形された1枚のシートであってもよいし、複数枚のシートを接着したものであってもよい。また、防水シート32の厚みは、1.0~2.5mmが好ましい。厚みが1.0mm未満であると強度が不足する場合がある。一方、厚みが2.5mmを越えると複数の防水シート32を重ねて連結した際の接合部において段差が大きくなってしまい、排水性の悪化や意匠性の低下につながるため好ましくない。また、防水シート32は、上述したゴム、エラストマー、または合成樹脂からなるシートに、ガラス繊維やポリエステル繊維などからなる補強布を埋設して機械的強度を向上させたり寸法安定性を向上させたりしたものを用いてもよい。
なお、本実施形態では、防水シート32には、厚み1.0mmのEPDMシートを使用している。
【0066】
(複合防水シート3)
複合防水シート3は、不織布31と防水シート32とを積層し一体化させた防水シートである。
【0067】
上記不織布31と防水シート32とを一体化させる方法としては、特に限定されず、接着剤や両面粘着テープなどで接着してもよく、不織布31と防水シート32との間に熱可塑性樹脂で形成したシートを挟んだ状態で加熱、押圧してもよい。本実施形態では、ポリエステル不織布(不織布31)の片面に超低密度ポリエチレンがあらかじめラミネートされたラミネート不織布を用いて、架橋が終わった直後で高温のEPDMシート(防水シート32)に上記ラミネート不織布を超低密度ポリエチレンの面をEPDMシートの側に向けて重ね合わせて2つのロールの間に通すことで一体化させて、全体厚み2.0mmの複合防水シート3としている。
【0068】
(断熱防水工法)
次に、断熱防水層構造100を形成するための断熱防水工法(防水シート敷設工法)について説明する。
断熱防水層構造100を形成するためには、図3に示すように、まず、下地となるコンクリート10の表面に接着剤11を塗布・吹き付ける。そして、接着剤11を塗布・吹き付けたコンクリート10の上に断熱材12を敷設する(断熱材敷設工程)。
【0069】
次に、雄型面ファスナー2の裏面(雄型面ファスナー(大)21のプラスチック基板211及び雄型面ファスナー(小)22のプラスチック基板221が配置されている面)に粘着剤13が接着して一体化された雄型面ファスナー2を、断熱材12の上に設置して接着固定する(雄型面ファスナー設置工程)。
なお、粘着剤13と一体化されていない雄型面ファスナー2に、汎用の接着剤を塗布し、断熱材12の上に接着固定してもよい。
【0070】
次に、断熱材12の上に設置した雄型面ファスナー2が十分に接着固定された後、図3に示すように、複合防水シート3の不織布31が雄型面ファスナー2と対向するように、複合防水シート3を雄型面ファスナー2の上におよそ重なる位置で仮置きする。
【0071】
この際、不織布31は、雄型面ファスナー2の、雄型面ファスナー(大)21の係合素子212に仮係合する。不織布31は、雄型面ファスナー(小)22より厚みが大きい雄型面ファスナー(大)21の係合素子212に仮係合し易く、雄型面ファスナー(大)21より厚みが小さい雄型面ファスナー(小)の係合素子222には仮係合し難いことから、雄型面ファスナー2と複合防水シート3との係合力を小さくすることができる。
【0072】
これにより、雄型面ファスナー2と複合防水シート3との位置合わせをする際に、人が雄型面ファスナー2から複合防水シート3(不織布31)を剥がす際の負荷を低減することができる。即ち、雄型面ファスナー2と複合防水シート3との位置合わせの作業性を向上させることができる。
【0073】
次に、雄型面ファスナー2と複合防水シート3との位置合わせが終わったら、ローラ等により、複合防水シート3を押圧することにより、雄型面ファスナー2と複合防水シート3(不織布31)とを本止めする(防水シート敷設工程)。
【0074】
この際、複合防水シート3が雄型面ファスナー2に押圧されることにより、不織布31は、雄型面ファスナー(大)21の係合素子212だけでなく、雄型面ファスナー(大)21より厚みが小さい雄型面ファスナー(小)22の係合素子222にも係合することから、雄型面ファスナー2と複合防水シート3との係合力を大きくして、耐久性を向上させることができる。
【0075】
上記工程を経て、断熱防水層構造100が完成する(図1参照)。
【0076】
(実施形態2)
実施形態2の断熱防水層構造400は、下地となるコンクリート10の表面に、接着剤により、断熱材412に雄型面ファスナー402が部分的に接着された構成の断熱接着下地ボード410(図4参照:下地用断熱材に相当)が複数配列されて、接着されており、この断熱接着下地ボード410の上に、不織布31及び防水シート32を積層した複合防水シート3が重ねられ、雄型面ファスナー402と複合防水シート3(不織布31)とが係合された構造をしている。
【0077】
上記のように、予め断熱材412の表面に雄型面ファスナー402を接着した断熱接着下地ボード410を用意しておくことで現場での作業性を向上させることができ、施工期間を短縮することができる。
【0078】
実施形態2の断熱接着下地ボード410では、断熱材412に部分的に配置された雄型面ファスナー402の厚みは全て同じ大きさのものを使用している。なお。断熱接着下地ボード410で使用する雄型面ファスナー402の代わりに、実施形態1で使用した雄型面ファスナーを使用してもよい。
【0079】
ここで、断熱接着下地ボード410は、図4に示すように、断熱材412に雄型面ファスナー402が3列配置され、上面視で断熱材412が見える状態にある。即ち、雄型面ファスナー402は、断熱材412において、複合防水シート3の係合面となる不織布31の全面に対してではなく、部分的に対応するように設置されていることから、複合防水シート3の断熱接着下地ボード410への仮置き時の係合力を低減させることができる。これにより、複合防水シート3の断熱接着下地ボード410に対する位置合わせ(仮置き)の作業性(仮係合とその解除の作業)を向上させることができる。
【0080】
また、実施形態2の断熱接着下地ボード410の断熱材412は正方形をしており、断熱接着下地ボード410の方向を回転させても下地に複数の断熱接着下地ボード410を隙間なく敷き詰めることができ、取扱性(汎用性)に優れる。
なお、断熱材412の形状としては矩形であればよく、矩形であれば、複数の断熱接着下地ボード410を下地に隙間なく敷き詰めることができる。
【0081】
また、実施形態2の断熱接着下地ボード410は、図5の例1に示すように、雄型面ファスナー402の、断熱材412の表面に対する被覆率が33%になるように設置されている。
ここで、雄型面ファスナー402の、断熱材412の表面に対する被覆率は30~90%になるように設置されることが好ましい(図5の例1~例8参照)。
雄型面ファスナー402の複合防水シート3の不織布31の係合面に対する被覆率が低すぎると係合力が低下して耐風圧性が低下してしまう(風で複合防水シート3が剥がれる:図15(A)ピール強力、(B)シアー強力参照)。一方、被覆率が高すぎると複合防水シート3の仮置き時の係合力が高くなりすぎて位置合わせの作業性が低下してしまう。そこで、被覆率を30~90%、好ましくは40~80%(特に50~70%)にすることにより、耐風圧性と仮置き時の作業性との最適化を図ることができる。
【0082】
また、実施形態2の断熱接着下地ボード410は、図4に示すように、雄型面ファスナー402が、断熱材412の2辺を覆うように設置されている。
なお、雄型面ファスナー402は、断熱材412の少なくとも1辺を覆うように設置されていればよい(図5の例1~例8参照)。
このような構成にすれば、断熱材412の少なくとも1辺における複合防水シート3(不織布31)との係合力を高めて、耐風圧性を向上させることができる。
【0083】
なお、図5の例2~例6に示すように、雄型面ファスナー402は、断熱材412の少なくとも隣り合う2辺を覆うように設置されていることが好ましい。
上記構成によれば、矩形をした断熱材412の角部分における複合防水シート3(不織布31)との係合力を高めて、耐風圧性を更に向上させることができる。
【0084】
また、例えば、図5の例2の断熱接着下地ボード410を複数用意して、その方向を回転させて(或いは施工面積に応じて切断・加工)下地に複数の断熱接着下地ボード410を隙間なく敷き詰める際に、図6に示すように、全体として、雄型面ファスナー402が、4辺を覆うように設置してもよい。これにより、断熱防水層構造400´において、複数の断熱接着下地ボード410と複合防水シート3(不織布31)との係合力を高めて、4辺全てでの耐風圧性を向上させることができる。また、使用する断熱接着下地ボード410としては複数種類を使用してもよいが(例えば、図5の例2及び例4の断熱接着下地ボードを組み合わせて使用する)、1種類の断熱接着下地ボード410を使用(例えば、図5の例2の断熱接着下地ボード410のみ使用)することが、材料手配の簡易化・低コスト化の観点から好ましい。
【0085】
(実施形態3)
実施形態3の雄型面ファスナー502は、図7に示すように、下地となる断熱材12の全面(不図示)に配置されている。この雄型面ファスナー502は、プラスチック基板の上に、同プラスチックからなる、先端が波型のフック形状の、高さが同じ係合素子521・523が多数立設された構成をしている。
ここで、図8に示すように、複数の係合素子521は、先端521Aの向きが、雄型面ファスナー502の長手方向(A方向)に対して平行に、且つ、A方向の一方を向いた列を成すように配置されている。
一方、複数の係合素子523は、先端523Aの向きが、雄型面ファスナー502の長手方向(A方向)に対して平行に、且つ、A方向の他方を向いた列を成すように配置されている。
即ち、雄型面ファスナー502は、係合素子521(係合素子523)の先端521A(先端523A)の向きが同じ方向を向いた列を複数形成しており、複数の係合素子521が成す列を構成する各係合素子521の先端521Aの向きは、複数の係合素子523が成す列を構成する各係合素子523の先端523Aの向きとは逆方向を向いている。
【0086】
上記のように、複数の係合素子521(係合素子523)の先端521A(先端523A)の向きが逆方向を向いていることにより、図7に示すA1方向から作用する外力と、A2方向から作用する外力との双方に対する抵抗力を高めることができ、耐風圧性を向上させることができる。
【0087】
仮に、係合素子521(係合素子523)の先端521A(先端523A)の向きが全て同じ方向を向いていれば、雄型面ファスナー502において、複合防水シート3を、A1方向から剥がそうとする力に対する抵抗力は高いものの、A2方向から剥がそうとする力に対する抵抗力は低くなる。
そこで、複数の係合素子521が成す列を構成する各係合素子521の先端521Aの向きが、複数の係合素子523が成す列を構成する各係合素子523の先端523Aの向きとは逆方向を向いて配置することにより、雄型面ファスナー502において、複合防水シート3をA方向の両方側から剥がそうとする力(風圧など)に対する抵抗力を高めることができる。
【0088】
(実施形態4)
実施形態3の雄型面ファスナー502は、全ての複数の係合素子521(係合素子523)の先端521A(先端523A)の向きが、雄型面ファスナー502の長手方向(A方向)に対して平行に配向され、かつ、全ての雄型面ファスナー502の長手方向(A方向)が平行となるように配置されているため、係合素子521(係合素子523)の先端521A(先端523A)は2方向を向いている。これに対して、実施形態4では、図9に示すように、下地となる断熱材12の外縁に、複数の係合素子521(係合素子523)の先端521A(先端523A)の向きが、図9の左右方向に対して平行に配向された、雄型面ファスナー502が配置されているのに加えて、断熱材12の中央部分に、複数の係合素子521(係合素子523)の先端521A(先端523A)の向きが、図9の上下方向に対して平行に配向された、雄型面ファスナー502´が配置されているため、係合素子521(係合素子523)の先端521A(先端523A)は4方向を向いている。
なお、この雄型面ファスナー502´は、雄型面ファスナー502の向きを変えて配置したものであり、同じ材料を使用している。
【0089】
上記構成によれば、複数の係合素子521(係合素子523)の先端521A(先端523A)の向きが4方向を向くように配置することができ、複合防水シート3を雄型面ファスナー502・502´から剥がそうとする力に対する抵抗力を4方向において高めることができる。
【0090】
(実施形態5)
実施形態5では、図10に示すように、下地となる断熱材12の外縁と雄型面ファスナーのA方向とが平行となるように配置されている。すなわち、雄型面ファスナー502はA方向が図10の左右方向に対して平行に、雄型面ファスナー502´はA方向が図10の上下方向に対して平行に配置されている。
なお、この雄型面ファスナー502´は、雄型面ファスナー502の向きを変えて配置したものであり、同じ材料を使用している。
【0091】
ここで、一般的な不織布と雄型面ファスナーとを係合させた場合、フックの先端が雌型(不織布)にひっかかりやすい向きであるA方向における係合力の方が、B方向における係合力よりも大きくなるというのが当業者における技術常識である。これに対し、本願発明にかかる複合防水シート3と雄型面ファスナー502(502´)とを係合させた場合、B方向における係合力の方が、A方向における係合力よりも大きくなるという特異性が見られた。複合防水シート3の剥離は、複合防水シート3の四方の端部(辺部分)を起点として内部に向かって剥離が進行しやすいため、複合防水シート3の四方の端部(辺部分)に直交する方向(B方向)に対する係合力を大きくすることで、剥離を効果的に防止することができる(図11参照)。
【0092】
(その他の実施形態1)
上記実施形態1等では、断熱構造を含む断熱防水層構造100について説明したが、図12に示すように、断熱構造を有さず、防水層1(雄型面ファスナー2及び複合防水シート3)を、下地となるコンクリート10の表面に直接設置した、防水構造200としてもよい。
【0093】
この場合、防水構造200は、図12に示すように、下地となるコンクリート10の表面に、粘着剤13によって雄型面ファスナー2が固定され、そして、この雄型面ファスナー2に、不織布31及び防水シート32を積層した複合防水シート3が重ねられ、雄型面ファスナー2と複合防水シート3(不織布31)とが係合された構造をしている。
【0094】
(その他の実施形態2)
また、防水層1(雄型面ファスナー2及び複合防水シート3)は、図13に示すように、既設の防水シート801を補修するために、防水シート801の上に設置してもよい。
【0095】
この場合、補修後の防水構造800は、図13に示すように、下地となるコンクリート10の表面に、接着剤802により固定された防水シート801が既設された状態で、防水シート801の上に、粘着剤13によって雄型面ファスナー2が固定され、そして、この雄型面ファスナー2に、不織布31及び防水シート32を積層した複合防水シート3が重ねられ、雄型面ファスナー2と複合防水シート3(不織布31)とが係合された構造をしている。
【0096】
(その他の実施形態3)
下地の一部分だけに雄型面ファスナーを設置してもよい。例えば、図14(A)に示すように、長方形状をした複数の雄型面ファスナー902を島状に設置してもよいし、図14(B)に示すように、細長形状をした複数の雄型面ファスナー962を縞状に設置してもよい。
これによれば、雄型面ファスナーの設置面積を削減することができ、コスト削減をすることができる。
【実施例0097】
(実施例1)
図16に示す、ポリプロピレン製の、先端が波型のフック形状をした係合素子が複数立設された雄型成形面ファスナーと、基布に織り込んだPET製モノフィラメントからなる、先端がJ型のフック形状をした係合素子が複数立設された雄型布製面ファスナーとに対して、複合防水シート(不織布)を重ね合わせて押圧した後の断面を観察した。
【0098】
その結果、雄型成形面ファスナーの方が不織布繊維と係合素子とが絡みやすい(係合し易い)ことが確認された。雄型面ファスナーと複合防水シートとの本止め後の係合力を高められる点から、雄型成形面ファスナーが好ましいと言える。
【符号の説明】
【0099】
1 防水層
2 雄型面ファスナー
21 雄型面ファスナー(大)
211 プラスチック基板
212 係合素子
22 雄型面ファスナー(小)
221 プラスチック基板
222 係合素子
3 複合防水シート
31 不織布
32 防水シート
10 コンクリート
11 接着剤
12 断熱材
13 粘着剤
100 断熱防水層構造
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図15
図16