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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135362
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】走行中非接触給電システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 50/80 20160101AFI20240927BHJP
   H02J 50/12 20160101ALI20240927BHJP
   H02J 50/40 20160101ALI20240927BHJP
   H02J 50/60 20160101ALI20240927BHJP
   H02J 50/90 20160101ALI20240927BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20240927BHJP
   B60M 7/00 20060101ALI20240927BHJP
   B60L 5/00 20060101ALI20240927BHJP
   B60L 53/12 20190101ALI20240927BHJP
【FI】
H02J50/80
H02J50/12
H02J50/40
H02J50/60
H02J50/90
H02J7/00 P
H02J7/00 301D
B60M7/00 X
B60L5/00 B
B60L53/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023045999
(22)【出願日】2023-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】前村 雅人
(72)【発明者】
【氏名】橋本 俊哉
(72)【発明者】
【氏名】津下 聖悟
(72)【発明者】
【氏名】池村 亮祐
(72)【発明者】
【氏名】金▲崎▼ 正樹
(72)【発明者】
【氏名】山口 宜久
(72)【発明者】
【氏名】大林 和良
(72)【発明者】
【氏名】谷 恵亮
(72)【発明者】
【氏名】角谷 勇人
【テーマコード(参考)】
5G503
5H105
5H125
【Fターム(参考)】
5G503AA01
5G503BA01
5G503BB01
5G503BB02
5G503CA10
5G503DA04
5G503FA06
5G503GB08
5G503GD03
5G503GD06
5H105AA12
5H105BA09
5H105BB05
5H105CC02
5H105CC19
5H105DD10
5H105EE15
5H105GG11
5H125AA01
5H125AC04
5H125AC12
5H125AC27
5H125BE02
5H125CC06
5H125EE61
(57)【要約】
【課題】災害が発生した場合において、災害からの復旧後において、道路側給電装置の再開方法を明確にすることによって、停電後の電力伝送プロセスの再開における安全性と効率性とを両立すること。
【解決手段】車両側受電装置を搭載した走行中の車両に、道路側給電装置における送電装置から電力を非接触で供給する走行中非接触給電システムであって、道路側給電装置は、車両側受電装置との間で広域無線通信を実行可能な第1通信装置と、車両側受電装置との間で狭域無線通信を実行可能な第2通信装置と、送電装置を制御する送電制御部と、災害の発生を判定可能な異常判定部と、を備え、異常判定部は、災害を判定すると災害フラグをオンにして送電制御部に通知し、送電制御部は、災害フラグがオンにされたと判定した場合、送電装置による給電動作を停止し、災害フラグがオフにされたと判定した場合、道路側給電装置において所定の動作を実行させる。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両側受電装置を搭載した走行中の車両に、道路側給電装置における送電装置から電力を非接触で供給する走行中非接触給電システムであって、
前記道路側給電装置は、前記車両側受電装置との間で広域無線通信を実行可能な第1通信装置と、前記車両側受電装置との間で狭域無線通信を実行可能な第2通信装置と、前記送電装置を制御する送電制御部と、災害の発生を判定可能な異常判定部と、を備え、
前記異常判定部は、前記災害を判定すると災害フラグをオンにして前記送電制御部に通知し、
前記送電制御部は、
前記災害フラグがオンにされたと判定した場合、前記送電装置による給電動作を停止し、
前記災害フラグがオフにされたと判定した場合、前記道路側給電装置において所定の処理を実行させる
走行中非接触給電システム。
【請求項2】
前記異常判定部は、災害の復旧を判定して災害フラグをオフにした情報を前記送電制御部に送信し、
前記送電制御部は、
前記災害フラグがオフである情報を受信したと判定した場合に、前記所定の処理を実行する
請求項1に記載の走行中非接触給電システム。
【請求項3】
前記送電制御部は、
前記災害フラグがオンになった情報を受信したと判定した場合に稼働フラグをオフにし、
前記災害フラグがオフになった情報を受信したと判定した場合、かつ管理者による操作によって稼働フラグがオンになった情報を受信したと判定した場合に、前記所定の処理を実行する
請求項1に記載の走行中非接触給電システム。
【請求項4】
前記送電制御部は、
操作によって試験稼働フラグをオンに切り替えることによって、給電可能な状態まで機器を試験稼働させる試験稼働処理を実行し、
前記試験稼働のための電子チケットを受信することによって給電動作を開始し、
正常チケットを受け取ることによって、前記試験稼働フラグをオフに切り替えて所定の処理を再開する
請求項1に記載の走行中非接触給電システム。
【請求項5】
前記道路側給電装置は、前記車両側受電装置に電力を供給可能な複数のセグメントを備え、
前記複数のセグメントはそれぞれ、電子チケットおよび正常チケットの少なくとも一方を受信可能に構成された通信装置を備え、
前記送電制御部は、正常チケットを受信したセグメントにおいて前記所定の処理を再開する
請求項4に記載の走行中非接触給電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、走行中非接触給電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、非接触充電器の制御部は、受電装置の異常を示す信号を受信した場合、または、非接触充電器において充電異常を検出した場合に、充電を一旦停止させた後、異常を示す信号の受信または充電異常の検出から第1所定時間が経過したときに、充電を再開するための手続きを行う技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-092978号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
走行中給電の場合、道路側から電力を車両に送電する道路側給電装置において、災害の発生などによって道路側給電装置が停電したり、災害の発生に対応させて道路側給電装置への供給電力を停電させたりした場合に、停電からの再開の処理方法が不明確であり、停電が生じた場合や駆動電力を停止させた場合などにおいて、停電後にどのような再開処理を実行すべきであるかについて改善の余地がある。
【0005】
本開示は、上記課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、災害が発生した場合において、災害からの復旧後において、道路側給電装置の再開方法を明確にすることによって、停電後の電力伝送プロセスの再開における安全性と効率性とを両立できる走行中非接触給電システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示に係る走行中非接触給電システムは、車両側受電装置を搭載した走行中の車両に、道路側給電装置における送電装置から電力を非接触で供給する走行中非接触給電システムであって、前記道路側給電装置は、前記車両側受電装置との間で広域無線通信を実行可能な第1通信装置と、前記車両側受電装置との間で狭域無線通信を実行可能な第2通信装置と、前記送電装置を制御する送電制御部と、災害の発生を判定可能な異常判定部と、を備え、前記異常判定部は、前記災害を判定すると災害フラグをオンにして前記送電制御部に通知し、前記送電制御部は、前記災害フラグがオンにされたと判定した場合、前記送電装置による給電動作を停止し、前記災害フラグがオフにされたと判定した場合、前記道路側給電装置において所定の処理を実行させる。
【発明の効果】
【0007】
本開示に係る走行中非接触給電システムは、災害が発生した場合において、災害からの復旧後において、道路側給電装置の再開方法を明確にすることによって、停電後の電力伝送プロセスの再開における安全性と効率性とを両立することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態におけるワイヤレス電力伝送システムを示す模式図である。
図2図2は、ワイヤレス電力伝送システムの全体構成を示す図である。
図3図3は、ワイヤレス電力伝送システムにおける広域無線通信を説明するための模式図である。
図4図4は、送電ECUの機能構成を説明するためのブロック図である。
図5図5は、車両ECUの機能構成を説明するためのブロック図である。
図6図6は、電力伝送プロセスを説明するための図である。
図7図7は、車両と供給装置との間で広域無線通信を用いた通信を実施する場合を示すシーケンス図である。
図8図8は、供給装置から車両への走行中給電が終了した後の動作を示すシーケンス図である。
図9図9は、ワイヤレス電力伝送システムにおける災害の発生時の制御の一例を示すフローチャートである。
図10図10は、ワイヤレス電力伝送システムにおける災害の発生時の制御の他の例を示すフローチャートである。
図11図11は、所定の処理を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本開示に係る走行中非接触給電システムの実施形態について説明する。なお、本開示は、以下に説明する実施形態に限定されるものではない。まず、本開示の実施形態におけるワイヤレス電力伝送システムについて具体的に説明する。
【0010】
図1は、実施形態におけるワイヤレス電力伝送システムを示す模式図である。ワイヤレス電力伝送システム(Wireless Power Transfer System)1は、供給設備2と車両3とを備え、走行中の車両3に供給設備2から電力を供給する走行中非接触給電システムである。供給設備2は、走行中の車両3に非接触で電力を供給する設備である。車両3は、外部電源から供給された電力を充電可能な電動車両であり、例えば電気自動車(BEV)やプラグインハイブリッド車(PHEV)などである。
【0011】
このワイヤレス電力伝送システム1は、供給設備2から車両3へ磁界共振結合(磁界共鳴)によるワイヤレス電力伝送を行う。ワイヤレス電力伝送システム1は、道路4上を走行中の車両3に対して供給設備2から非接触で電力を伝送する。つまり、ワイヤレス電力伝送システム1は、磁界共鳴方式により電力を伝送するものであり、磁界共振結合(磁界共鳴)を用いて車両3への走行中給電を実現するものである。ワイヤレス電力伝送システム1は、ダイナミックワイヤレス電力伝送(D-WPT)システムや、磁界ダイナミックワイヤレス電力伝送(MF-D-WPT)システムと表現できる。
【0012】
供給設備2は、供給装置5と、供給装置5に電力を供給する交流電源6とを備える。供給装置5は、交流電源6から供給された電力を車両3に非接触で伝送する。交流電源6は例えば商用電源である。この供給装置5は、一次コイル11を有する送電装置10を備える。
【0013】
道路側給電装置としての供給装置5は、一次コイル11を含むセグメント7と、セグメント7を管理する管理装置8とを備える。セグメント7は、道路4の車線内に埋め込まれている。管理装置8は、道路4の脇に設置されている。セグメント7は、管理装置8と電気的に接続されている。管理装置8は、交流電源6と電気的に接続されており、交流電源6の電力をセグメント7に供給する。セグメント7は、管理装置8を介して交流電源6と電気的に接続される。このセグメント7は、道路4の車線に沿って複数配置することが可能である。例えば供給装置5は、図1に示すように、道路4内で車線に沿って並んで設置された三つのセグメント7と、三つのセグメント7が接続された一つの管理装置8とを備える。セグメント7は、供給装置5から車両3へと非接触で電力を伝送する機能を有する。管理装置8は、セグメント7におけるワイヤレス電力伝送を制御する機能を有する。
【0014】
車両3は、二次コイル21を有する受電装置20を備える。車両側受電装置の一部としての受電装置20は、車両3の車体底部に設けられている。一次コイル11が設置された道路4上を車両3が走行する際、地上側の一次コイル11と車両側の二次コイル21とが上下方向に対向する。ワイヤレス電力伝送システム1は、車両3が道路4上を走行中に、送電装置10の一次コイル11から受電装置20の二次コイル21に非接触で電力を伝送する。
【0015】
この説明における走行中とは、車両3が走行のために道路4上に位置する状態を意味する。走行中には、車両3が道路4上で一時的に停止している状態も含まれる。例えば信号待ちなどによって車両3が道路4上で停止している状態も走行中に含まれる。一方で、車両3が道路4上に位置する状態であっても、例えば車両3が駐停車している場合には、走行中に含まれない。
【0016】
また、この説明では、一次コイル11(セグメント7)が埋め込まれた車線のことをD-WPTレーンと記載し、道路4の一部区間であって供給装置5によるワイヤレス電力伝送が可能な場所のことをD-WPT充電サイトと記載する場合がある。D-WPTレーンとD-WPT充電サイトとでは、道路4の所定区間に亘り複数の一次コイル11(複数のセグメント7)が車両3の進行方向に並んで設置されている。
【0017】
図2は、ワイヤレス電力伝送システム1の全体構成を示す図である。供給設備2では、供給装置5と交流電源6とが電気的に接続されている。供給装置5では、セグメント7と管理装置8とが電気的に接続されている。
【0018】
供給装置5は、管理装置8に設けられた構成と、セグメント7に設けられた構成とを含む。供給装置5は、送電装置10と、送電ECU(Electronic Control Unit)110と、第1通信装置120と、第2通信装置130と、異物検知装置140とを備える。
【0019】
送電装置10は、交流電源6に接続された電気回路を含む。送電装置10は、PFC(Power Factor Collection)回路210と、インバータ(INV)220と、フィルタ回路230と、送電側共振回路240とを備える。
【0020】
PFC回路210は、交流電源6から入力される交流電力の力率を改善し、その交流電力を直流電力に変換してインバータ220に出力する。このPFC回路210は、AC/DCコンバータを含んで構成される。PFC回路210は交流電源6と電気的に接続されている。
【0021】
インバータ220は、PFC回路210から入力された直流電力を交流電力に変換する。インバータ220の各スイッチング素子はIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)やMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field Effect Transistor)などにより構成されており、送電ECU110からの制御信号に応じてスイッチング動作を行う。例えばインバータ220の駆動周波数は85kHzである。インバータ220は、変換した交流電力をフィルタ回路230に出力する。
【0022】
フィルタ回路230は、インバータ220から入力される交流電流に含まれるノイズを除去し、ノイズが除去された交流電力を送電側共振回路240に供給する。フィルタ回路230は、コイルとコンデンサとを組み合わせたLCフィルタである。例えばフィルタ回路230は二つのコイルと一つのコンデンサとがT形に配置されたT型フィルタにより構成される。PFC回路210とインバータ220とフィルタ回路230とは、送電装置10の電力変換部12を構成する。
【0023】
送電側共振回路240は、フィルタ回路230から供給された交流電力を非接触にて受電装置20に伝送する送電部である。フィルタ回路230から送電側共振回路240に交流電力が供給されると、一次コイル11に電流が流れ、送電のための磁界が発生する。
【0024】
送電側共振回路240は、一次コイル11と、共振コンデンサとを備える。一次コイル11は送電コイルである。この共振コンデンサは一次コイル11の一方端に直列に接続され、送電側共振回路の共振周波数を調整する。この共振周波数は10kHz~100GHzであり、好ましくは85kHzである。例えば送電装置10は、送電側共振回路240の共振周波数とインバータ220の駆動周波数とが一致するように構成されている。送電側共振回路240は、送電装置10の一次装置13を構成する。
【0025】
送電装置10は、電力変換部12と、一次装置13とを備える。電力変換部12は、PFC回路210とインバータ220とフィルタ回路230とを含む。一次装置13は、送電側共振回路240を含む。送電装置10は、電力変換部12が管理装置8に設けられ、一次装置13がセグメント7に設けられた構成を有する。
【0026】
供給装置5では、送電装置10の電力変換部12と、送電ECU110と、第1通信装置120とが管理装置8に設けられており、送電装置10の一次装置13と、第2通信装置130と、異物検知装置140とがセグメント7に設けられている。
【0027】
送電ECU110は、供給装置5を制御する電子制御装置である。送電ECU110は、プロセッサと、メモリとを備える。プロセッサは、CPU(Central Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、および、FPGA(Field-Programmable Gate Array)などからなる。メモリは、主記憶装置であって、RAM(Random Access Memory)、および、ROM(Read Only Memory)等からなる。送電ECU110は、記憶部に格納されたプログラムをメモリ(主記憶装置)の作業領域にロードして実行し、プログラムの実行を通じて各構成部などを制御することにより、所定の目的に合致した機能を実現する。記憶部は、EPROM(Erasable Programmable ROM)、ハードディスクドライブ(Hard Disk Drive:HDD)、および、リムーバブルメディアなどの記録媒体から構成される。リムーバブルメディアとしては、USB(Universal Serial Bus)メモリ、CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)、BD(Blu-ray(登録商標) Disc)のようなディスク記録媒体が挙げられる。記憶部には、オペレーティングシステム(Operating System:OS)、各種プログラム、各種テーブル、および、各種データベースなどが格納可能である。各種センサからの信号が送電ECU110に入力される。異物検知装置140からの信号が送電ECU110に入力される。そして、送電ECU110は各種センサから入力された信号に基づいて各種制御を実行する。
【0028】
例えば送電ECU110は、送電用電力を調整する電力制御を実行する。この電力制御において、送電ECU110は送電装置10を制御する。送電ECU110は、電力変換部12から一次装置13に供給される電力を制御するために、電力変換部12に制御信号を出力する。送電ECU110は、PFC回路210に含まれるスイッチング素子を制御して送電用電力を調整するとともに、インバータ220に含まれるスイッチング素子を制御して送電用電力を調整する。
【0029】
また、送電ECU110は、車両3との通信を制御する通信制御を実行する。通信制御において、送電ECU110は第1通信装置120と第2通信装置130とを制御する。
【0030】
第1通信装置120は、広域無線通信を行う地上側の通信装置である。第1通信装置120は、道路4を走行中の車両3のうち、D-WPTレーンに接近する前の車両3との間で無線通信を行う。D-WPTレーンに接近する前の状態とは、車両3が供給装置5との間で狭域無線通信を行えない位置にいることをいう。
【0031】
広域無線通信は、通信距離が10メートルから10キロメートルの通信である。広域無線通信は、狭域無線通信に比べて通信距離が長い通信である。広域無線通信としては、通信距離が長い種々の無線通信を用いることができる。例えば3GPP(登録商標)およびIEEEによって策定された4G、LTE、5G、および、WiMAXなどの通信規格に準拠した通信が広域無線通信に用いられる。ワイヤレス電力伝送システム1では、広域無線通信を利用して、車両識別情報(車両ID)と紐づけられた車両情報が車両3から供給装置5に送信される。
【0032】
第2通信装置130は、狭域無線通信を行う地上側の通信装置である。第2通信装置130は、道路4を走行中の車両3のうち、D-WPTレーンに接近または進入した車両3との間で無線通信を行う。D-WPTレーンに接近した状態とは、車両3が供給装置5との間で狭域無線通信を行うことが可能な位置にいることをいう。
【0033】
狭域無線通信は、通信距離が10メートル未満の通信である。狭域無線通信は、広域無線通信に比べて通信距離が短い通信である。狭域無線通信としては、通信距離が短い種々の近距離無線通信を用いることができる。例えば、IEEE、ISO、および、IECなどによって策定された任意の通信規格に準拠した通信が狭域無線通信に用いられる。一例として、Wi-Fi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)、および、ZigBee(登録商標)などが狭域無線通信に用いられる。あるいは、狭域無線通信を行うための技術としては、RFID(Radio Frequency Identification)や、DSRC(Dedicated Short Range Communication)などが用いられてもよい。ワイヤレス電力伝送システム1では、狭域無線通信を利用して、車両識別情報などが車両3から供給装置5に送信される。
【0034】
異物検知装置140は、一次コイル11の上方に存在する金属異物や生体などを検知する。異物検知装置140は、例えば、地上に設置されたセンサコイルや撮像装置などにより構成される。異物検知装置140は、ワイヤレス電力伝送システム1における異物検知機能(Foreign Object Detection:FOD)や生体保護機能(Living Object Protection:LOP)を発揮するためのものである。
【0035】
供給装置5では、送電装置10の構成がセグメント7と管理装置8とに分かれて配置されているとともに、三つのセグメント7が一つの管理装置8に接続されている。送電装置10は、一つのインバータが三つの送電側共振回路240に電力を供給するように構成されている。また、供給装置5では、各セグメント7からの信号が管理装置8に入力される。第1セグメントに設けられた第2通信装置130および異物検知装置140からの信号が送電ECU110に入力される。同様に、第2セグメントに設けられた第2通信装置130および異物検知装置140からの信号が送電ECU110に入力される。第3セグメントに設けられた第2通信装置130および異物検知装置140からの信号が送電ECU110に入力される。送電ECU110は各セグメント7から入力された信号に基づいて各セグメント7の状態を把握することができる。
【0036】
車両3は、受電装置20と、充電リレー310と、バッテリ320と、車両ECU330と、第3通信装置340と、第4通信装置350と、GPS(Global Positioning System)受信機360とを備える。
【0037】
受電装置20は、送電装置10から受け取った電力をバッテリ320に供給する。受電装置20は充電リレー310を介してとバッテリ320と電気的に接続される。受電装置20は、受電側共振回路410と、フィルタ回路420と、整流回路430とを備える。
【0038】
受電側共振回路410は、送電装置10から非接触で伝送された電力を受け取る受電部である。受電側共振回路410は、二次コイル21と、共振コンデンサとを備えた受電側共振回路により構成される。二次コイル21は、一次コイル11から非接触にて伝送された電力を受け取る受電コイルである。この共振コンデンサは、二次コイル21の一方端に直列に接続され、受電側共振回路の共振周波数を調整する。受電側共振回路410の共振周波数は、送電側共振回路240の共振周波数と一致するように定められている。
【0039】
受電側共振回路410は、共振周波数が送電側共振回路240の共振周波数と同じである。そのため、受電側共振回路410が送電側共振回路240と対向した状態で送電側共振回路240による磁界が発生すると、磁界の振動が受電側共振回路410に伝達する。一次コイル11と二次コイル21とが共振状態となる。電磁誘導によって二次コイル21に誘導電流が流れると、受電側共振回路410に誘導起電力が発生する。このようにして、送電側共振回路240から非接触で伝送された電力を受電側共振回路410が受け取る。そして、受電側共振回路410は、送電側共振回路240から受け取った電力をフィルタ回路420に供給する。受電側共振回路410は、受電装置20の二次装置22を構成する。
【0040】
フィルタ回路420は、受電側共振回路410から入力される交流電流に含まれるノイズを除去し、ノイズが除去された交流電力を整流回路430に出力する。フィルタ回路420は、コイルとコンデンサとを組み合わせたLCフィルタである。例えば、フィルタ回路420は、二つのコイルと一つのコンデンサとがT形に配置されたT型フィルタにより構成される。
【0041】
整流回路430は、フィルタ回路420から入力された交流電力を直流電力に変換してバッテリ320に出力する。整流回路430は、例えば、整流素子として4つのダイオードがフルブリッジ接続されたフルブリッジ回路により構成されている。整流回路430の各ダイオードには、スイッチング素子が並列接続されている。整流回路430の各スイッチング素子は、IGBTにより構成されており、車両ECU330からの制御信号に応じてスイッチング動作を行う。整流回路430は、変換した直流電力をバッテリ320に供給する。フィルタ回路420と整流回路430とは、受電装置20の電力変換部23を構成する。
【0042】
受電装置20は、二次装置22と電力変換部23とを備える。二次装置22は、受電側共振回路410を含む。電力変換部23は、フィルタ回路420と整流回路430とを含む。
【0043】
充電リレー310は、整流回路430とバッテリ320との間に設けられている。充電リレー310は、車両ECU330によって開閉状態が制御される。送電装置10によるバッテリ320の充電時に、充電リレー310は閉状態に制御される。充電リレー310が閉状態である場合には、整流回路430とバッテリ320との間が通電可能に接続される。充電リレー310が開状態である場合には、整流回路430とバッテリ320との間が通電不能に遮断される。例えば、充電リレー310が開状態にある場合、車両3は給電要求をしない。
【0044】
バッテリ320は、充電が可能な直流電源であり、例えば、リチウムイオン電池やニッケル水素電池などにより構成される。バッテリ320は、送電装置10から受電装置20に供給された電力を蓄える。また、バッテリ320は、車両3の走行用モータに電力を供給することができる。バッテリ320は、PCU(Power Control Unit)を介して走行用モータと電気的に接続されている。PCUは、バッテリ320の直流電力を交流電力に変換して走行用モータに供給する電力変換装置である。PCUの各スイッチング素子は、IGBTにより構成されており、車両ECU330からの制御信号に応じてスイッチング動作を行う。
【0045】
車両ECU330は、車両3を制御する電子制御装置である。車両ECU330は、ハードウェア構成としては送電ECU110と同様に構成されている。車両3に搭載された各種センサからの信号が、車両ECU330に入力される。また、車両ECU330には、GPS受信機360が受信した測位信号が入力される。車両ECU330は、GPS受信機360から車両3の現在位置情報を取得することができる。そして、車両ECU330は、各種センサから入力された信号に基づいて各種制御を実行する。
【0046】
例えば、車両ECU330は、一次コイル11から二次コイル21に非接触で電力を伝送し、二次コイル21が受け取った電力をバッテリ320に蓄える非接触充電制御を実行する。非接触充電制御において、車両ECU330は、整流回路430と充電リレー310と第3通信装置340と第4通信装置350とを制御する。非接触充電制御には、充電用電力を制御する電力制御と、供給装置5との間の通信を制御する通信制御とが含まれる。電力制御において、車両ECU330は、整流回路430に含まれるスイッチング素子を制御して、受電装置20からバッテリ320に供給される電力(充電用電力)を調整する。通信制御において、車両ECU330は、第3通信装置340と第4通信装置350とを制御する。
【0047】
第3通信装置340は、広域無線通信を行う車両側の通信装置である。第3通信装置340は、道路4上を走行中の車両3がD-WPTレーンに接近する前の状態おいて、供給装置5の第1通信装置120との間で無線通信を行う。広域無線通信は、双方向無線通信である。第1通信装置120と第3通信装置340との間の通信は、高速無線通信で行われる。
【0048】
第4通信装置350は、狭域無線通信を行う車両側の通信装置である。第4通信装置350は、車両3がD-WPTレーンに接近または進入した状態において、供給装置5の第2通信装置130との間で無線通信を行う。狭域無線通信は、単方向無線シグナリングである。単方向無線シグナリングは、P2PS(Point to point signaling)である。P2PSは、ペアリング、位置合わせチェック、磁気結合チェック、電力伝送の終了、および、電力伝送の終了の各アクティビティにおいて、車両3から供給装置5に車両識別情報を通知するために使用される。また、P2PSは、横方向の位置合わせチェックの手段(Alignment check)として使用できる。横方向とは、車線の幅方向のことであり、車両3の幅方向のことである。
【0049】
GPS受信機360は、複数の測位衛星から得られる測位情報に基づいて、車両3の現在位置を検出する。GPS受信機360によって検出された車両3の現在位置情報は、車両ECU330に送信される。
【0050】
なお、供給装置5においてフィルタ回路230は、セグメント7ではなく管理装置8に含まれてもよい。すなわち、フィルタ回路230は道路4の脇に設置されてもよい。この場合、電力変換部12はPFC回路210とインバータ220とフィルタ回路230とを含み、一次装置13は送電側共振回路240を含む。
【0051】
また、フィルタ回路230は、一次コイル11に対して個別に設けられてもよく、あるいは、複数の一次コイル11に一括に設けられてもよい。
【0052】
また、フィルタ回路230は、T型フィルタに限定されず、例えば、コイルとコンデンサとが直列に接続されたバンドパスフィルタであってよい。これは、車両3のフィルタ回路420についても同様である。
【0053】
また、送電装置10では、インバータ220が複数の一次コイル11に接続する上で、通電対象となる一次コイル11を切り替える切替スイッチが、それぞれの一次装置13に設けられてもよい。この切替スイッチは、道路4の脇の管理装置8に設けられてもよく、一次コイル11の付近に設けられてもよい。
【0054】
また、送電側共振回路240は、一次コイル11と共振コンデンサとが直列に接続された構成に限定されない。一次コイル11と共振コンデンサとが並列に接続されてもよく、あるいは、並列と直列の組み合せたものであってもよい。要するに、送電側共振回路240は、送電側共振回路240の共振周波数がインバータ220の駆動周波数と一致するように構成されていればよく、その構成要素の接続関係は特に限定されない。これは、車両3の受電側共振回路410についても同様である。
【0055】
また、インバータ220の駆動周波数は85kHzに限らず、85kHz付近の周波数であってもよい。要するに、インバータ220の駆動周波数は85kHzを含む所定の周波数帯であってもよい。
【0056】
また、送電装置10は、PFC回路210の出力側電力ライン(直流電力ライン)に対して、複数のインバータ220が接続された構成であってもよい。
【0057】
また、異物検知装置140は、地上側に限らず、車両3側にも設けられてもよい。例えば車両3側の異物検知装置が一次コイル11の上方に存在する異物や生体などを検知した場合、車両3がその一次コイル11を通りすぎるまで給電要求を止めるように構成することができる。
【0058】
また、ワイヤレス電力伝送システム1では、狭域無線通信を利用して車両3から供給装置5に送信される情報には、車両識別情報の他に、給電要求や、給電電力要求値などが含まれる。給電要求は、一次コイル11からの電力伝送を要求することを示す情報である。給電電力要求値は、供給装置5から車両3へ伝送される電力量の要求値である。車両ECU330は、バッテリ320のSOC(State Of Charge)に基づいて給電電力要求値を算出することができる。
【0059】
また、ワイヤレス電力伝送システム1は、地上から車両3への給電方法に限らず、車両3から地上への給電方法を実現することも可能である。この場合、整流回路430は、インバータに置き換え、電力供給や受電時の整流を実現できる。
【0060】
図3は、ワイヤレス電力伝送システム1における広域無線通信を説明するための模式図である。
【0061】
ワイヤレス電力伝送システム1では、車両3がサーバ30と通信可能であるとともに、供給装置5がサーバ30と通信可能である。サーバ30は、ネットワーク40に接続されており、ネットワーク40を介して複数の車両3および複数の供給装置5と通信可能である。ネットワーク40は、インターネットなどの公衆通信網であるWAN(Wide Area Network)や携帯電話の電話通信網などにより構成されている。
【0062】
車両3は、第3通信装置340を用いた広域無線通信によってネットワーク40に接続する。車両3はサーバ30に情報を送信し、サーバ30からの情報を受信する。
【0063】
供給装置5は、第1通信装置120を用いた広域無線通信によってネットワーク40に接続する。供給装置5はサーバ30に情報を送信し、サーバ30からの情報を受信する。
【0064】
図4は、送電ECU110の機能構成を示すブロック図である。送電ECU110は、第1通信制御部510と、第2通信制御部520と、送電制御部530と、異常判定部540とを備える。また、異常判定部540は、災害フラグ設定手段としての災害フラグ設定部541、および稼働フラグ設定手段としての稼働フラグ設定部542を備える。
【0065】
第1通信制御部510は、第1通信装置120を制御する第1通信制御を実行する。第1通信制御は、供給装置5側の広域無線通信を制御するものであり、第1通信装置120を用いた供給装置5の通信を制御する。すなわち、第1通信制御は、供給装置5のうちの管理装置8の通信を制御する。第1通信制御は、供給装置5とネットワーク40との間の通信を制御するとともに、ネットワーク40を介した供給装置5とサーバ30との間の通信を制御する。第1通信制御部510は、SECC(Supply Equipment Communication Controller)である。
【0066】
第2通信制御部520は、第2通信装置130を制御する第2通信制御を実行する。第2通信制御は、供給装置5側の狭域無線通信を制御するものであり、第2通信装置130を用いた供給装置5の通信を制御する。すなわち、第2通信制御は、供給装置5のうちのセグメント7の通信を制御する。第2通信制御は、ネットワーク40を介さない通信として、供給装置5と車両3との間の通信を制御する。第2通信制御部520は、PDCC(Primary Device Communication Controller)である。
【0067】
送電制御部530は、送電装置10を制御する送電制御を実行する。送電制御は、送電用電力を制御するものであり、送電装置10の電力変換部12を制御する。送電制御部530は、PFC回路210とインバータ220とを制御する電力制御を実行する。
【0068】
異常判定部540は、供給装置5において発生する異常を判定する。異常判定部540は、サーバ30から受信した情報に基づいて、災害や事故などの環境情報を受信する。異常判定部540は、受信した異常判定要素である環境情報に基づいて災害または事故の発生の情報から異常の発生を判定可能である。異常判定部540は、広域無線通信および狭域無線通信の少なくとも一方において、通信の応答がない場合、少なくとも通信試行の回数が所定回数以上の場合、および通信試行による無応答の経過時間が所定時間以上である場合の少なくとも一つの場合において、異常の発生を判定可能である。
【0069】
災害フラグ設定部541は災害の情報を取得した場合に、災害フラグをオンにしたりオフにしたりするフラグ設定部として機能する。異常判定部540は、災害フラグ設定部541によって災害フラグがオンにされたりオフにされたりした場合に、災害の発生を判定可能である。稼働フラグ設定手段としての稼働フラグ設定部542は、災害フラグ設定部541によって災害フラグがオンにされたりオフにされたりした後に、供給装置5において稼働の開始を設定する稼働フラグをオンにしたりオフにしたりする。異常判定部540は、災害フラグがオンにされたりオフにされたりしたり、稼働フラグがオンにされたりオフにされたりした、フラグの状態に基づいて、異常の判定を実行可能である。
【0070】
図5は、車両ECU330の機能構成を示すブロック図である。車両ECU330は、第3通信制御部610と、第4通信制御部620と、充電制御部630とを備える。
【0071】
第3通信制御部610は、第3通信装置340を制御する第3通信制御を実行する。第3通信制御は、車両3側の広域無線通信を制御するものであり、第3通信装置340を用いた車両3の通信を制御する。第3通信制御は、車両3とネットワーク40との間の通信を制御するとともに、ネットワーク40を介した車両3とサーバ30との間の通信を制御する。第3通信制御部610は、EVCC(EV Communication Controller)である。
【0072】
第4通信制御部620は、第4通信装置350を制御する第4通信制御を実行する。第4通信制御は、車両3側の狭域無線通信を制御するものであり、第4通信装置350を用いた車両3の通信を制御する。第4通信制御は、ネットワーク40を介さない通信として、車両3と供給装置5との間の通信を制御する。第4通信制御部620は、SDCC(Secondary Device Communication Controller)である。
【0073】
充電制御部630は、受電装置20と充電リレー310とを制御する充電制御を実行する。充電制御は、受電装置20における受電電力を制御する電力制御と、二次装置22とバッテリ320との接続状態を制御するリレー制御とを含む。充電制御部630は、整流回路430を制御する電力制御を実行する。充電制御部630は、充電リレー310の開閉状態を切り替えるリレー制御を実行する。
【0074】
このように構成されたワイヤレス電力伝送システム1では、車両3と供給装置5との間での無線通信が確立された状態において、供給装置5から車両3へのワイヤレス電力伝送が行われる。無線通信により車両3と供給装置5とのペアリングが行われた状態において、地上側の一次コイル11から車両側の二次コイル21へ非接触で電力が伝送される。そして、車両3では、二次コイル21が受け取った電力をバッテリ320に供給する充電制御が行われる。
【0075】
次に、図6を参照して、電力伝送プロセス(D-WPTプロセス)について説明する。電力伝送プロセスは、複数のアクティビティの連鎖として構造化されており、状態と対応する遷移とから導かれるプロセスである。
【0076】
図6は、電力伝送プロセスを説明するための図である。図6には、電力伝送プロセスを説明するための基本的なアクティビティが示されている。図6に示す太い矢印は、遷移線を表す。電力伝送プロセスにおけるワイヤレス電力伝送システム1の状態は、電力伝送プロセスを構成するアクティビティにより表される。
【0077】
電力伝送プロセスを構成するアクティビティは、電力伝送を行う段階のアクティビティである電力伝送サービスセッション(D-WPTサービスセッションA70)と、電力伝送を行う前の段階のアクティビティと、電力伝送を行った後の段階のアクティビティとを含む。また、アクティビティは、供給装置5と車両3との間での通信の有無に応じて、その動作主体を分けて説明することができる。アクティビティは、通信なしの供給装置5側のみの状態を表すものと、通信なしの車両3側のみの状態を表すものと、通信ありの供給装置5と車両3との両方の状態を表すものとに分けられる。
【0078】
図6に示すように、アクティビティは、マスタ電源がオン状態(Master power On)A10と、準備(Preparation)A20と、車両3からの要求待ち(Waiting for D-WPT service request)A30と、マスタ電源がオン状態(Master power On)A40と、準備(Preparation)A50と、通信設定(Communication setup)およびD-WPTサービスの要求(Request D-WPT service)A60と、D-WPTサービスセッション(D-WPT service session)A70と、D-WPTサービスセッションの終了(Terminate D-WPT service session)A80と、を含む。
【0079】
準備A20は、供給装置5の準備状態である。準備A20において、供給装置5は、車両3との通信なしに回路の起動と安全確認とを行う。供給装置5は、マスタ電源がオン状態A10になると準備A20の状態に遷移する。そして、準備A20において供給装置5が回路を起動して安全を確認できた場合、状態は車両3からの要求待ちA30に遷移する。一方、供給装置5に問題がある場合、供給装置5は、広域無線通信によって、ワイヤレス電力伝送システム1を利用できないことを示す情報(利用不可通知)を車両3に通知する。第1通信装置120は、利用不可通知を車両3に送信する。
【0080】
準備A50は、車両3の準備状態である。準備A50において、車両3は、供給装置5との通信なしに回路の起動と安全確認とを行う。車両3は、マスタ電源がオン状態A40になると準備A50の状態に遷移する。そして、準備A50において車両3が回路を起動して安全を確認できた場合、状態は通信設定およびD-WPTサービスの要求A60に遷移する。一方、車両3に問題がある場合、車両3は広域無線通信を開始せず、D-WPTプロセスにおける以降のシーケンスを行わない。
【0081】
通信設定およびD-WPTサービスの要求A60は、車両ECU330によって開始される。通信設定およびD-WPTサービスの要求A60において、車両ECU330は、広域無線通信を開始する。まず、車両3が準備A50から通信設定およびD-WPTサービスの要求A60に遷移すると、第3通信装置340は、D-WPTサービスの要求信号を送信する。第3通信装置340は、車両3が進入予定または進入したD-WPTレーンに対応する第1通信装置120と無線通信を行う。通信対象の第1通信装置120は、車両3の現在位置とD-WPTレーンの位置との相対的な位置関係に基づいて選択される。供給装置5側では、車両3からの要求待ちA30の状態において、第1通信装置120がD-WPTサービスの要求信号を受信すると、状態は通信設定およびD-WPTサービスの要求A60に遷移する。広域無線通信とP2PS通信との各種情報は、車両識別情報を用いてリンクされている。この通信設定およびD-WPTサービスの要求A60の処理シーケンスを図7に示す。
【0082】
図7は、車両3と供給装置5との間で広域無線通信を用いた通信を実施する場合を示すシーケンス図である。車両3は、車両情報をサーバ30に送信する(ステップS11)。ステップS11において、車両3の第3通信装置340は車両情報をサーバ30に送信する。車両情報は、車両識別情報と、受電装置20の各種パラメータと、車両3の現在位置情報と、要求電力とを含む。車両ECU330は、バッテリ320のSOCに基づいて要求電力を算出する。ステップS11において、車両ECU330は、所定時間ごとに第3通信装置340から車両情報を送信させる。所定時間は、車両3の現在位置からD-WPTレーンの始点までの距離に応じて設定される。車両3からD-WPTレーンの始点までの距離が短いほど、所定時間の間隔は短くなる。
【0083】
サーバ30は、車両3からの車両情報を受信すると、車両情報に含まれる車両3の現在位置情報に基づいて、供給装置5の近傍領域内に位置する車両3の車両識別情報を特定する(ステップS12)。ステップS12において、サーバ30は、車両3の現在位置情報と供給装置5の位置情報とに基づいて、供給装置5から所定の近傍領域内に位置する車両3を特定する。近傍領域は、例えば、500メートル以内の領域に設定される。
【0084】
サーバ30は、車両3の車両識別情報を特定すると、車両情報を供給装置5に送信する(ステップS13)。ステップS13において、サーバ30の送信装置は、車両情報を供給装置5に送信する。
【0085】
供給装置5は、サーバ30からの車両情報を受信すると、識別情報リストへの車両識別情報の登録・消去を行う(ステップS14)。ステップS14において、送電ECU110は、車両情報に紐づいた車両識別情報が過不足なく識別情報リストに登録された状態になるように、識別情報リストへの車両識別情報の登録・消去を行う。
【0086】
供給装置5は、識別情報リストへの車両識別情報の登録・消去を行うと、識別情報リストに登録されている車両識別情報をサーバ30に送信する(ステップS15)。ステップS15において、供給装置5の第1通信装置120は、車両識別情報をサーバ30へ送信する。
【0087】
そして、サーバ30は、供給装置5からの車両識別情報を受信すると、識別情報リストに登録されている車両識別情報に対応する車両3へリスト登録通知を送信する(ステップS16)。ステップS16において、サーバ30の通信装置は、リスト登録通知を車両3に送信する。リスト登録通知は、車両識別情報が識別情報リストに登録されている旨を示す通知であり、供給装置5の識別情報と供給装置5の位置情報とを含む。
【0088】
このように、車両3が広域無線通信を開始して、供給装置5と車両3とがともに通信設定およびD-WPTサービスの要求A60の状態になると、広域無線通信による通信設定が成功したこととなる。この通信設定の成功により、状態は、D-WPTサービスセッションA70に遷移する。
【0089】
図6に戻る。D-WPTサービスセッションA70は、供給装置5と車両3との間で通信接続が確立された状態において、供給装置5の送電側共振回路240から車両3の受電側共振回路410へと非接触にて電力を伝送する。D-WPTサービスセッションA70は、通信設定の成功から始まり、通信の終了により終了する。D-WPTサービスセッションA70の状態において通信が終了すると、状態は、D-WPTサービスセッションの終了A80に遷移する。
【0090】
D-WPTサービスセッションの終了A80では、車両3は供給装置5との広域無線通信を終了する。車両3と供給装置5とは、D-WPTサービスセッションA70の終了のトリガを受信できる。そして、車両ECU330は、第3通信装置340が次の通知(D-WPTサービスの要求信号)を受信するまで、二次装置22と車両3とに対してD-WPTが開始されないようにする。
【0091】
ここで、D-WPTサービスセッションA70の詳細なアクティビティについて説明する。
【0092】
D-WPTサービスセッションA70は、互換性チェック(Compatibility check)およびサービス認証(Service authentication)A110と、詳細な位置合わせ(Fine Positioning)A120と、ペアリング(Pairing)および位置合わせチェック(Alignment check)A130と、磁気結合チェック(Magnetic Coupling Check)A140と、電力伝送の実行(Perform Power Transfer)A150と、スタンバイ(Stand-by)A160と、電力伝送の終了(Power transfer terminated)A170と、を含む。
【0093】
互換性チェックおよびサービス認証A110について説明する。通信設定が成功した後、車両ECU330および送電ECU110は、一次装置13と二次装置22とが互換性を有することを確認する。互換性チェックは、供給装置5側で、通信により取得した車両識別情報に対応付けられた情報をもとに行われる。チェック項目としては、二次装置22の最低地上高、二次装置22の形状タイプ、二次装置22の回路トポロジー、二次装置22の自己共振周波数、および、二次コイル21の数などが挙げられる。
【0094】
互換性チェックおよびサービス認証A110において、まず、車両3は、受電装置20の互換性情報(Compatibility Information)を第3通信装置340から供給装置5に送信する。供給装置5の第1通信装置120は、車両3からの受電装置20の互換性情報を受信する。そして、供給装置5の第1通信装置120は、送電装置10の互換性情報を車両3に送信する。車両3の第3通信装置340は、供給装置5からの送電装置10の互換性情報を受信する。
【0095】
車両3が供給装置5に送信する互換性情報の要素には、車両識別情報、WPT電力クラス(WPT Power Classes)、ギャップクラス(Air Gap Class)、WPT駆動周波数(WPT Operating Frequencies)、WPT周波数調整、WPTタイプ(WPT Type)、WPT回路トポロジー(WPT Circuit Topology)、詳細な位置合わせ方法(Fine Positioning Method)、ペアリング方法(Pairing Method)、位置合わせ方法(Alignment Method)、および、電力調整機能の有無情報などが含まれる。
【0096】
供給装置5が車両3に送信する互換性情報の要素には、供給装置識別情報、WPT電力クラス、ギャップクラス、WPT駆動周波数、WPT周波数調整、WPTタイプ、WPT回路トポロジー、詳細な位置合わせ方法、ペアリング方法、位置合わせ方法、および、電力調整機能の有無情報などが含まれる。
【0097】
各要素名について詳細に説明する。なお、車両3から供給装置5に送信される互換性情報の各要素について説明し、供給装置5から車両3に送信される互換性情報のうち、車両3から供給装置5に送信される互換性情報と重複するものは、その説明を省略する。
【0098】
ギャップクラスは、二次装置22が受電することができるギャップクラスを示す情報である。WPT電力クラスは、二次装置22が受電することができるパワークラスを示す情報である。WPT駆動周波数は、二次装置22が受電する受電電力の周波数を示す情報である。WPT周波数調整は、駆動周波数の調整の可否を示す情報である。WPTタイプとは、二次装置22の形状タイプを示す情報であり、二次コイル21のコイル形状を示すものである。WTPタイプを示すものとしては、円形やソレノイドなどがある。WPT回路トポロジーは、二次コイル21と共振コンデンサとの接続構造を示す情報である。WTP回路トポロジーとしては、直列と並列とがある。詳細な位置合わせ方法は、位置合わせを行う際に、どのような方法で位置合わせを実施するかを示す情報である。ペアリング方法は、車両3が供給装置5を特定するペアリングを実施する方法である。位置合わせ方法は、送電開始前に、二次装置22および一次装置13の相対的な位置確認をする方法を示す。
【0099】
詳細な位置合わせA120について説明する。車両3は、ペアリングおよび位置合わせチェックA130に先立って、またはこれらのアクティビティと並行して、詳細な位置合わせA120を行う。車両ECU330は、車両3が供給装置5の設置された領域(WPTレーン)に接近または進入したと判断すると、詳細な位置合わせA120を始める。
【0100】
車両ECU330は、車両3を誘導して、ワイヤレス電力伝送のための十分な磁気結合を確立する範囲内に一次装置13と二次装置22との位置合わせを行う。
【0101】
詳細な位置合わせA120は、基本的に車両3側で手動または自動で行われる。詳細な位置合わせA120は、ADAS(自動運転支援システム)と連携することが可能である。この通信終了は、D-WPTサービスセッションの終了A80のことである。
【0102】
そして、詳細な位置合わせA120のアクティビティは、車両3がD-WPT充電サイトを離れるか、または、状態が通信終了に変化するまで継続し、広域無線通信によって供給装置5から車両3に送信された位置合わせ情報に基づいて実行することができる。
【0103】
ペアリングおよび位置合わせチェックA130について説明する。ここでは、ペアリングと位置合わせチェックとを分けて説明する。
【0104】
ペアリングについて説明する。狭域無線通信を行うP2PSインターフェースは、一次装置13と二次装置22とが一意にペアリングされていることを保証する。ペアリング状態のプロセスは、以下の通りである。
【0105】
まず、車両ECU330は、車両3がD-WPTレーンに接近または進入したことを認識する。例えば、車両ECU330は、D-WPTレーンを含めた地図情報を有しており、GPS受信機360で得られた自車両の位置情報と比較して、その直線距離などで接近または進入を認識する。車両3は、どのD-WPTレーンに接近したのか広域無線通信によってサーバ30へ送信する。要するに、第3通信装置340は、いずれかのD-WPTレーンに車両3が接近したことを示す信号をクラウドに通知する。さらに、車両ECU330が車両3のD-WPTレーンへの接近または進入を認識した場合、第4通信装置350は、一次装置13と二次装置22とのペアリングのために、一定の間隔で変調信号の送信を開始する。
【0106】
また、供給装置5は、広域無線通信によりサーバ30から取得した情報を用いて、車両3がD-WPTレーンに接近または進入したことを認識してもよい。サーバ30は、各D-WPTレーンで接近してきた車両3の車両識別情報を、そのレーンに該当する供給装置5に割り振る。供給装置5は、サーバ30によって数が絞られた車両識別情報を参照すればよくなるため、認証処理が短時間で可能になる。供給装置5は、車両3がD-WPTレーンに接近していると認識した場合、第2通信装置130がスタンバイモードとなる。スタンバイモードでは、車両3の第4通信装置350からの変調信号を受信することを待つ。この変調信号には、車両識別情報が含まれる。
【0107】
第2通信装置130が車両3からの変調信号を受信すると、供給装置5は、狭域無線通信により受信した車両識別情報と、D-WPTレーンに向かってくる複数の車両3との広域無線通信の結果により得られた識別情報リスト中の車両識別情報とを比較する。この比較によって、供給装置5は車両3を識別する。
【0108】
車両ECU330は、車両3がD-WPTレーン外であることを認識すると、第4通信装置350からの変調信号の送信を停止する。車両ECU330は、地図情報と自車両の位置情報とに基づいてD-WPTレーンを通過したか否かを判定することができる。
【0109】
供給装置5は、車両3がD-WPTレーンを走行していないと判断した場合、または、車両3がD-WPTレーンに接近していないと判断した場合に、第4通信装置350からの変調信号の待機を停止する。
【0110】
ペアリングは、車両3がD-WPT充電サイトから出るか、または、状態が通信終了に変更するまで、一次装置13に対して実行される。ペアリングが完了すると、状態は、位置合わせチェックに遷移する。
【0111】
位置合わせチェックについて説明する。位置合わせチェックは、一次装置13と二次装置22との間の横方向の距離が許容範囲内にあることを確認することを目的とするものである。位置合わせチェックは、狭域無線通信(P2PS)を用いて行われる。
【0112】
位置合わせチェックは、車両3がD-WPT充電サイトを離れるか、状態が通信終了に変わるまで、P2PSに基づいて継続して実行される。位置合わせチェックの結果は、広域無線通信により第1通信装置120から第3通信装置340に送信することができる。
【0113】
磁気結合チェックA140について説明する。磁気結合チェックA140において、供給装置5は、磁気結合状態を確認し、二次装置22が許容範囲内に存在することを確認する。磁気結合チェックA140が終了すると、状態は、電力伝送の実行A150に遷移する。
【0114】
電力伝送の実行A150について説明する。この状態では、供給装置5は受電装置20への電力伝送を行う。送電装置10と受電装置20とは、MF-D-WPTの有用性と受電装置20およびバッテリ320の保護のために伝送電力(送電電力と受電電力)を制御する能力を備える必要がある。より大きな電力伝送は、受電装置20の静的ワイヤレス充電および導電性充電なしで、その移動距離を長くするのに役立つ。しかしながら、バッテリ320の容量は、車両3の車種によりさまざまであり、駆動用電力需要が急激に変動することがある。この急激な変動として急な回生ブレーキが挙げられる。D-WPTレーンを走行中に回生ブレーキが実施される場合には回生ブレーキが優先されるため、回生電力に加えて受電装置20からの受電電力がバッテリ320に供給されることになる。この場合、バッテリ320を過充電から守るために、受電装置20による伝送電力の調整が必要となる。
【0115】
電力制御の必要性にもかかわらず、この状態では、供給装置5と受電装置20との間で通信が新たに開始されることはない。なぜなら、通信は、その不安定性および待ち時間のために、電力制御における応答および精度を損なう可能性があるからである。したがって、供給装置5と受電装置20とは、この状態までの既知の情報に基づいて、電力伝送およびその制御を行う。
【0116】
供給装置5は、予め広域無線通信を用いて、第3通信装置340から送信されてくる電力要求に対して、磁気結合チェックの伝送電力を増加させる。供給装置5は、電流および電圧の変動をその範囲内に保つとともに、移行中に伝送された電力の最大化を試みる。
【0117】
受電装置20は、基本的には何ら制御することなく、送電装置10からの送電電力を受け入れる。しかしながら、受電装置20は、充電状態や車両3の駆動用電力需要に応じて変動するバッテリ320の定格電力など、送電電力が制限を超えた場合や超えつつある場合に制御を開始する。また、車両ECU330における電力制御は、広域無線通信での誤動作への対応も求められる。この誤動作は、一次装置13における電力制御対象と第3通信装置340からの要求との矛盾、および、電力伝送途中での受電装置20やバッテリ320の突然の故障につながる。受電装置20は、第1通信装置120によって通知された電力要求率の下で伝送された電力を制御する。
【0118】
電力要求は、車両3および一次装置13のWPT回路トポロジー、ジオメトリ、グランドクリアランス、および、EMC(電磁両立性)などの互換性チェック情報に基づいて決定される。これらの仕様によって磁界が異なり、EMCを満たす範囲で電力を伝送する必要がある。
【0119】
送電ECU110における電力制御と受電装置20とは、互いに干渉する可能性がある。特に、供給装置5が広域無線通信により受電装置20における最新の電力制限よりも大きい電力要求を実現しようとする場合には、干渉する可能性がある。この例として、車両3における比較的小さなバッテリ320での急激な回生制御が挙げられる。可能であれば、供給装置5が、電源制御目標と制限との不整合を検出でき、その不整合を解消するために電力伝送を調整できることが望ましい。
【0120】
例えば、異物検知装置14によって一次装置13上の異物が検知された場合、または、二次装置22の位置合わせ不良によって磁気結合が低くなった場合など、二次装置22が依然として一次装置13の上にある間に電力伝送が短期間中断されると、状態は、スタンバイA160に遷移する。なお、車両3に異物検知装置が設けられている場合には、車両3側で異物を検知してもよい。
【0121】
二次装置22が一次装置13の上を通過すると、状態は、電力伝送の終了A170に遷移する。この場合、2つの装置間の磁気結合が弱くなるため、伝送される電力は少なくなる。供給装置5は、伝送電力を監視することによって磁気結合が弱くなったことを検出することができるため、供給装置5が基本的に電力伝送の終了A170への状態遷移を決定し、その後、電力伝送を停止するために電圧を下げ始める。
【0122】
スタンバイA160について説明する。この状態では、何らかの理由で電力伝送が短時間中断され、車両3および供給装置5の両方においてD-WPTの準備が整うと、状態は電力伝送の実行A150に戻る。電力伝送を中断する可能性のある場合、スタンバイA160になる。
【0123】
電力伝送の終了A170について説明する。この状態では、供給装置5は、伝送された電力をゼロに減少させ、総伝送電力、電力伝送効率、および、故障履歴などの電力伝送結果データを保持またはアップロードする。各データには、車両識別情報がタグ付けされる。最後に、供給装置5は、D-WPTレーンを通過した車両3の車両識別情報を削除する。これにより、供給装置5は、その後に他の車両に対して行うペアリングおよび電力伝送に備えることができる。電力伝送の終了A170の処理シーケンスを図8に示す。
【0124】
図8は、供給装置5から車両3への走行中給電が終了した後の動作を示すシーケンス図である。車両3の受電装置20において供給装置5からの受電が終了する(ステップS21)と、車両3は、受電終了情報をサーバ30へ送信する(ステップS22)。ステップS22では、車両3の第3通信装置340から受電終了情報が送信される。受電終了情報は、供給装置5からの受電に関する情報として、例えば、車両3の車両識別情報と、供給装置5からの受電電力と、受電効率と、異常検知結果とを含む。
【0125】
供給装置5は、ステップS21の処理が実施される際、車両3への送電を終了する(ステップS23)。ステップS21の処理とステップS23の処理とは同時に実施されてもよく、同時でなくてもよい。ステップS23の処理が実施されると、供給装置5は送電終了情報をサーバ30へ送信する(ステップS24)。ステップS24では、供給装置5の第1通信装置120から送電終了情報が送信される。
【0126】
サーバ30は、車両3からの受電終了情報を受信し、かつ、供給装置5からの送電終了情報を受信すると、供給装置5から車両3への給電を終了する給電終了処理を行う(ステップS25)。給電終了処理では、受電終了情報と送電終了情報とに基づいて、供給装置5から車両3への供給電力量の算出処理や、算出された供給電力量に基づく車両3のユーザへの課金処理が行われる。
【0127】
また、車両3は、給電終了処理とは無関係に、車両情報をサーバ30に送信する(ステップS26)。ステップS26では、車両3の第3通信装置340から車両情報が送信される。
【0128】
サーバ30は、給電終了処理を実施後に車両3からの車両情報を受信すると、車両情報に基づいて各供給装置5の近傍領域内に位置する車両3の車両識別情報を特定する(ステップS27)。
【0129】
そして、ある供給装置5においてある車両3への給電終了処理が既に行われていると、サーバ30は、ステップS27の処理で特定されたこの供給装置5の近傍領域内の車両3の車両識別情報から、既に給電終了処理が行われた車両3の車両識別情報を削除する(ステップS28)。
【0130】
その後、サーバ30は、各供給装置5の近傍領域内に位置すると特定された車両3の車両識別情報のうち、ステップS28の処理で削除されていない車両識別情報に紐づいた車両情報を各供給装置5に送信する(ステップS29)。
【0131】
ステップS29の処理で車両情報が各供給装置5へ送信された後、供給装置5がサーバ30からの車両情報を受信すると、供給装置5は識別情報リストへの車両識別情報の登録・消去を行う(ステップS30)。ステップS30の処理は、図7のステップS14の処理と同様である。その後、供給装置5は、識別情報リストに登録されている車両識別情報をサーバ30へ送信する(ステップS31)。ステップS31の処理は、図7のステップS15の処理と同様である。
【0132】
そして、サーバ30は、供給装置5からの車両識別情報を受信すると、識別情報リストに登録されている車両識別情報に対応する車両3へリスト登録通知を送信する(ステップS32)。ステップS32の処理は、図7のステップS16の処理と同様である。
【0133】
この結果、図8に示される処理が行われる場合、識別情報リストには各供給装置5の近傍領域内に位置しているとともに、その供給装置5からの給電が終了しておらず、かつ、車両識別情報の消去要求がなされていない車両3について車両識別情報が登録されていることになる。そして、車両3は、車両3の車両識別情報がいずれかの供給設備2の識別情報リストに登録されている場合には、リスト登録通知を受信する。そのため、車両ECU330は、リスト登録通知を受信することにより、自車両がいずれかの供給装置5に登録されていることを判別できる。そして、車両3が供給装置5の近傍領域外へ出た場合、供給装置5の識別情報リストからその車両3の車両識別情報は消去される。
【0134】
図6に戻る。また、電力伝送の終了A170において、受電装置20では、伝送電力をゼロにするために何もする必要がない。P2PSインターフェースは、車両3がD-WPTレーンにあるときにアクティブに保たれ、受電装置20の状態は、次の一次装置13からの電力伝送のために自動的にペアリングに遷移する。図6に示す遷移線のように、状態は、電力伝送の終了A170からペアリングおよび位置合わせチェックA130に遷移する。図6に示すように、所定の遷移条件が成立することより、磁気結合チェックA140からペアリングおよび位置合わせチェックA130に遷移することや、電力伝送の実行A150からペアリングおよび位置合わせチェックA130に遷移することが可能である。ペアリングは、複数の一次コイル11に対して個別に行ってもよく、複数の一次コイル11を束ねて代表点で行ってもよい。
【0135】
そして、D-WPTサービスセッションA70は、車両ECU330からのD-WPT要求がない場合、または、通信設定およびD-WPTサービスの要求A60から電力伝送の終了A170までの一連の状態が禁止されている場合、D-WPTサービスセッションの終了A80に遷移して、第1通信装置120と第3通信装置340との間の広域無線通信を停止する。例えば、バッテリ320における充電状態が高すぎるとき、または、受電装置20が連続的な電力伝送のために熱すぎるとき、D-WPTは停止する。このような不要なD-WPTは、単にP2PSインターフェースを非アクティブ化することによって無効にすることができる。しかしながら、広域無線通信を停止することにより、送電ECU110は、確立した広域無線通信を終了することにより、D-WPTを必要とすることなく、車両3のために占有されたメモリを解放することができる。
【0136】
また、D-WPTサービスセッションA70は、図6に示す遷移線のような遷移に限定されない。D-WPTサービスセッションA70において、ペアリングおよび位置合わせチェックA130以降のアクティビティが終了した際、電力伝送プロセスがD-WPTサービスセッションA70に留まる条件が成り立つ場合には、D-WPTサービスセッションの終了A80には遷移せず、互換性チェックおよびサービス認証A110に遷移する。例えば、磁気結合チェックA140の状態において、所定の遷移条件が成立した場合、状態は、互換性チェックおよびサービス認証A110に遷移することができる。
【0137】
本開示において、管理装置8のうちの少なくとも送電ECU110、第1通信装置120、および第2通信装置130に対しては、災害などや異常の発生に起因した停電時であっても通信処理や演算処理などの処理を実行できるように、電圧保持ユニットを備える。電圧保持ユニットは、自体の電圧を保持可能であって、駆動させる電圧を維持可能な平滑コンデンサや無停電電源装置などを採用することができる。また、系統短絡時に連動して停電しないようなリレーを設けることにより電圧保持ユニットを構成することも可能である。また、以下に説明する制御においては、管理装置8による制御について説明するが、供給装置5による制御としてもよい。
【0138】
停電によって生じる現象としては第1に給電の停止、第2に認証の停止が挙げられる。なお、停電とは、供給装置5側を構成する構成要素における停電を対象とする。車両3においては、管理装置8との間での通信が不可の状態であったり認証ができない状態であったり、給電が停止された状態であったりする。なお、この場合の状況としては、正常状態に対して以下の3通りの状況が考えられる。
正常状態
正常動作:広域無線通信「作動(Enable)」、狭域通信「作動」、給電装置「作動」
停電状態
給電停止:広域無線通信「作動」、狭域通信「作動」、給電器「停電(Outage)」
広域停止:広域無線通信「停電」、狭域通信「作動」、給電器「作動」
全停止:広域無線通信「停電」、狭域通信「停電」、給電器「停電」
これらの状況が発生した場合、すなわち停電や災害が発生した際の停止順序については、最初に給電器が系統電圧またはDCリンク電圧の低下を検知して停止され、その後に電圧保持ユニットによって電圧が保持された制御系や通信系によって停止処置が実行され、停止処理が完了した後に停止する。これにより、停電が生じた場合であっても、安全に供給装置5や管理装置8を停止させることができる。この動作はソフトウェア的な稼働スイッチとして機能する。
【0139】
また、本開示において、管理装置8や供給装置5における停電からの復帰において、停電からの復帰状況に応じて復帰処理を変更する。例えば、停電から復帰までの時間、すなわち再開時間が所定時間より長時間の場合は、マスタ電源がオン状態A10(図6参照)となる段階から開始する。所定時間より短時間の停電の場合においては、D-WPTサービスセッションA70(図6参照)から開始して復帰する。なお、異常判定部540によって異常と判定された場合においても、災害フラグ設定部541によって監視された電圧が正常範囲である場合には、D-WPTサービスセッションA70から開始してもよい。D-WPTサービスセッションA70から開始する場合、ペアリング(Pairing)および位置合わせチェック(Alignment Check)A130、または磁気結合チェック(Magnetic Coupling Check)A140のいずれか一方から開始することができる。所定時間は、数μs~10sの間から選択して設定可能である。これにより、電力の急な伝送による車両3の側のパワー制御の乱れを回避できる。
【0140】
また、停電からの復帰時において、一次コイル11を備えたセグメント7の直上、すなわち充電マットの直上に車両3が位置する場合は、次の車両3から給電を開始するようにしてもよい。この場合、停電の復帰時にセグメント7の直上に位置した車両3がセグメント7の上方を通過するまで給電を停止しておいてもよい。
【0141】
具体的に第1の例として、例えば送電ECU110が停電した場合、まず送電ECU110は電圧保持ユニットによって所定時間駆動した状態で、近づいてくる車両3のリスト(upcoming EV list)を第1通信装置120から取得する。停電からの復帰においては、セグメント7の直上に車両3が位置する場合は、その車両3が通過した次の車両3から給電を開始するようにする。換言すると、セグメント7の直上に位置する車両3は次に到達(対向)するセグメント7から給電を再開する。セグメント7の直上に車両3が所定時間以上滞在する場合には、D-WPTサービスセッションA70から再開する。停電時間が所定時間以上の場合は、供給装置5においてオン状態A10から再開する。なお、この場合、供給装置5から車両3に対して停電が発生した旨の情報を送信して、車両3においてもオン状態A40から再開するようにしてもよい。
【0142】
第2の例として、例えば、交流電源6、ならびに構成要素としてのセグメント7,一次装置13、および第2通信装置130のうちの少なくとも一つの構成要素が停電した場合、停電からの復帰においては、セグメント7の直上に車両3が位置する場合は、その車両3が通過した次の車両3から給電を開始するようにする。換言すると、セグメント7の直上に位置する車両3は次に到達(対向)するセグメント7から給電を再開する。セグメント7の直上に車両3が所定時間以上滞在する場合には、D-WPTサービスセッションA70から再開する。停電時間が所定時間以上の場合は、供給装置5においてオン状態A10から再開する。なお、この場合、供給装置5から車両3に対して停電が発生した旨の情報を送信して、車両3においてもオン状態A40から再開するようにしてもよい。
【0143】
図9は、ワイヤレス電力伝送システムにおける災害の検出時における制御の一例を示すフローチャートである。図9に示すフローチャートは、供給装置5が他動的な稼働スイッチを有し、異常判定部540が異常と判定した際に、供給装置5から車両3への給電動作を停止して稼働スイッチをオフとし、供給装置5の管理者によるハードウェア的またはソフトウェア的な操作によってオンの操作が行われることで初めて復帰する処理である。なお、以下の説明において災害とは、自然災害のみならず各種の事故なども含み、広域に亘る走行不能状態など、広域に亘って走行に影響が生じる現象を含むものである。なお、供給装置5における異常判定部540による異常判定は、SECCとしての第1通信制御部510が第1通信装置120を通じて準備A20において安全性チェックを実行する。異常判定部540は広域無線通信によって事故災害情報の有無を確認して、事故災害情報を受信していない場合には、車両3からの要求待ち(Waiting for D-WPT service request)A30に処理を移行し、事故災害情報を受信した場合には、災害が発生したと判定する。また、車両3における異常判定は、EVCCとしての第3通信制御部610は第3通信装置340を通じて準備A50において安全性チェックを実行する。車両ECU330は広域無線通信によって事故災害情報の有無を確認して、事故災害情報を受信していない場合には、D-WPTサービスの要求A60に処理を移行する一方、事故災害情報を受信した場合には、災害が発生したと判定する。
【0144】
図9に示すように、管理装置8の送電ECU110は異常判定部540によって、供給装置5における送電や給電に影響する災害の発生をモニタリングする(ステップS41)。なお、災害の発生に関する災害情報や浸水などの事故情報(以下、災害情報と総称)は広域無線通信によって供給装置5が取得する。この場合、供給装置5における管理装置8の送電ECU110が、準備A20の段階で給電の可否を判定する(図6参照)。異常判定部540の災害フラグ設定部541が災害の発生はないと判定した場合(ステップS41:No)、ステップS41を継続する。災害フラグ設定部541が災害の発生によって災害フラグをオンにした場合(ステップS41:Yes)、送電ECU110は給電動作におけるフローを停止する(ステップS42)。また、送電ECU110は供給装置5に設けられた他動的な稼働スイッチをオフにする(ステップS43)。なお、稼働スイッチは、供給装置5の稼働をオンオフできるスイッチであって、供給装置5における送電ECU110によってソフトウェア的にオンオフ可能であっても、供給装置5の管理者がハードウェア的にオンオフ可能であっても良い。すなわち、供給装置5から車両3への給電が不可の場合、処理をD-WPTサービスの要求A60までとし、処理がD-WPTサービスセッションA70に進まないようにする。以後、広域通信で復旧と判断されるまで、供給装置5と車両3と間のP2PS通信は行わないようにする。これにより、災害による停止状態、例えば停電状態からの復帰後の給電不可の場合の処理を明確にすることができる。また、準備A20において給電可能である場合には、車両3側のP2PS通信を再開することで、停止状態からの復帰の再開方法が明確にすることができる。
【0145】
次に、異常判定部540によって、供給装置5における送電や給電に影響する事故災害の復旧に関するモニタリングを継続して、災害フラグ設定部541は、災害フラグがオンになっているか否かを判定する(ステップS44)。災害フラグ設定部541が災害フラグはオンであると判定している間(ステップS44:Yes)、ステップS44を継続する。一方、災害フラグがオフになった情報が災害フラグ設定部541に入力された場合(ステップS44:No)、稼働フラグ設定部542による給電許可フラグの入力を待機する。ここで、供給装置5の管理者や送電ECU110によって、給電許可フラグをオンにする情報が入力されると、稼働フラグ設定部542によって給電許可フラグがオンになり、稼働スイッチがオンになる状態を待機する(ステップS45)。異常判定部540が稼働スイッチはオフのままであると判定している間(ステップS45:No)、ステップS45を継続する。一方、異常判定部540によって稼働スイッチがオンにされたと判定した場合(ステップS45:Yes)、所定の動作により給電動作を開始する(ステップS46)。所定の動作については後述する。
【0146】
図10は、ワイヤレス電力伝送システムにおける災害の検出時における制御の他の例を示すフローチャートである。図10に示すフローチャートは、管理者は稼働スイッチがオフだとしても、正常動作を確認するフロー(正常動作確認フロー)を実行可能な電子チケットと、正常判定をした際に正常をラベリングする正常チケットとを有し、それぞれの給電器は電子チケットの配布に応じて正常動作確認フローを行い、正常チケットを受け取ることで稼働スイッチをオンにし、以後の車両からの給電リクエストに対して給電動作を再開する処理である。
【0147】
図10に示すように、管理装置8の送電ECU110は異常判定部540によって、供給装置5における送電や給電に影響する災害の発生をモニタリングする(ステップS51)。なお、災害の発生に関する災害情報や浸水などの事故情報(以下、災害情報と総称)は広域無線通信によって供給装置5が取得する。この場合、供給装置5における管理装置8の送電ECU110が、準備A20の段階で給電の可否を判定する(図6参照)。異常判定部540の災害フラグ設定部541が災害の発生はないと判定した場合(ステップS51:No)、ステップS51を継続する。災害フラグ設定部541が災害の発生によって災害フラグをオンにした場合(ステップS51:Yes)、送電ECU110は給電動作におけるフローを停止する(ステップS52)。また、送電ECU110は供給装置5に設けられた他動的な稼働スイッチをオフにする(ステップS53)。すなわち、供給装置5から車両3への給電が不可の場合、処理は、D-WPTサービスの要求A60までとしてD-WPTサービスセッションA70に進まないようにする(図6参照)。以後、広域通信によって復旧と判断されるまで、供給装置5と車両3と間のP2PS通信は行わないようにする。
【0148】
次に、異常判定部540によって、供給装置5における送電や給電に影響する事故災害の復旧に関するモニタリングを継続して、災害フラグ設定部541は、災害フラグがオンになっているか否かを判定する(ステップS54)。災害フラグ設定部541が災害フラグはオンであると判定している間(ステップS54:Yes)、ステップS54を継続する。一方、災害フラグがオフになった情報が災害フラグ設定部541に入力された場合(ステップS54:No)、稼働フラグ設定部542による試験稼働フラグの入力を待つ。ここで、供給装置5の管理者や送電ECU110によって、試験稼働フラグをオンにする情報が入力されると、稼働フラグ設定部542によって試験稼働フラグがオンになり、試験稼働処理のフローを開始(ステップS56)して、電子チケットの入力を待機する。電子チケットは、正常動作を確認するフロー(正常動作確認フロー)を実行可能なチケットである。
【0149】
送電ECU110の異常判定部540は、電子チケットが入力されるまでの間(ステップS57:No)、電子チケットの入力を待機する。異常判定部540が電子チケットの入力がされて電子チケットがオンになったと判定した場合(ステップS57:Yes)、試験給電が開始される(ステップS58)。その後、正常チケットが入力されるのを待機する(ステップS59)。正常チケットは、試験給電において正常であると判定をした際に正常をラベリングするチケットである。異常判定部540が正常チケットの入力がされていないと判定している間(ステップS59:No)、ステップS59を継続する。一方、異常判定部540が正常チケットは入力されてオンにされたと判定した場合(ステップS59:Yes)、稼働フラグ設定部542は試験稼働フラグをオフにする(ステップS60)。その後、所定の動作により給電動作を開始する(ステップS61)。
【0150】
次に、所定の動作について説明する。図11は、図9に示すステップS46および図10に示すステップS61における所定の動作のフローチャートを示す。図11に示すように、災害情報の入力に伴ってオフにされた稼働スイッチがオンにされた後、送電ECU110は、停止時間が所定時間以上であるか否かを判定する(ステップS71)。停止時間が所定時間以上である場合(ステップS71:Yes)、供給装置5は、オン状態A10から再開する(ステップS72)(図6参照)。一方、停止時間が所定時間未満である場合(ステップS71:No)、供給装置5は、D-WPTサービスセッションA70から再開する(ステップS73)(図6参照)。なお、D-WPTサービスセッションA70からの再開においては、互換性チェック(Compatibility check)およびサービス認証(Service authentication)A110から開始してもよく、ペアリングおよび位置合わせチェック(Pairing/Alignment check)A130から開始してもよい。ここで、停止時間のカウントにおいては、不揮発性メモリに対して停止判定時間をインプットし、停止からの復帰時に停止復帰時間を取得して、停止判定時間と比較して停止時間を算出してもよい。また、カウントが閾値を上回った際には不揮発メモリに所定時間経過判定を入力し、停止復帰時には判定結果を参照して復帰動作を決定してもよい。送電ECU110は、ECUの稼働電圧を監視して、所定の閾値を下回った場合に不揮発メモリに所定時間経過判定を入力し、停止復帰時には判定結果を参照して復帰動作を決定してもよい。なお、判定時間および復帰時間における時間とは、標準電波で受け取る標準時である。
【0151】
ここで、異常判定部540が、供給装置5において災害が発生したと判定した場合、供給装置5の送電ECU110は、第1通信装置120または第2通信装置130によって、災害の発生の情報および復帰方法の情報を車両3に送信してもよい。復帰方法の情報は、D-WPTサービスセッションA70からの再開(復帰)、またはオン状態A10(A40)からの再開(復帰)の情報(正常確認情報)である(図6参照)。車両3においては、受信した正常確認情報に基づいて、車両3の受電装置20をオン状態A40またはD-WPTサービスセッションA70から再開させる。
【0152】
災害検出および停電後の再開プロセスの選択の判定は、送電ECU110の代わりに車両ECU330が実行してもよい。
【0153】
また、停電復帰は、複数のセグメント、または複数のセグメントをまとめた単位ごとに遅延時間を設定して再起動を順次開始してもよい。
【0154】
供給装置5から車両3への情報の通知方法は、セルラーなどを利用した広域通信であっても、狭域通信であっても、両者を合わせて用いても良い。
【符号の説明】
【0155】
1 ワイヤレス電力伝送システム
2 供給設備
3 車両
4 道路
5 供給装置
6 交流電源
10 送電装置
11 一次コイル
20 受電装置
21 二次コイル
540 異常判定部
541 災害フラグ設定部
542 稼働フラグ設定部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11