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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135363
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】モータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 5/167 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
H02K5/167 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023046000
(22)【出願日】2023-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】奈良 精久
【テーマコード(参考)】
5H605
【Fターム(参考)】
5H605CC04
5H605EB10
5H605EB18
(57)【要約】
【課題】長寿命なモータを提供することを課題の一例とする。
【解決手段】シャフトSと、マグネット112,212と、コイル120と、軸X方向において、シャフトSの一方の端部S1側に配置される、第1軸受113aと、軸X方向において、シャフトSの他方の端部S2側に配置される、第2軸受113bと、第1軸受113aに固定されるホルダ115と、径方向において、ホルダ115を介して第1軸受113aに固定されるカバー114と、径方向において、ホルダ115の内側に配置された弾性部材116と、を備え、軸X方向において、弾性部材116はホルダ115と第1軸受113aに連結している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフトと、
マグネットと、
コイルと、
軸方向において、前記シャフトの一方の端部側に配置される、第1軸受と、
軸方向において、前記シャフトの他方の端部側に配置される、第2軸受と、
前記第1軸受に固定されるホルダと、
径方向において、前記ホルダを介して前記第1軸受に固定されるカバーと、
径方向において、前記ホルダの内側に配置された弾性部材と、を備え、
軸方向において、前記弾性部材は前記ホルダと前記第1軸受に連結している、モータ。
【請求項2】
前記第1軸受は外輪を備え、
前記ホルダは内周部を備え、
前記弾性部材は、前記第1軸受の前記外輪と前記ホルダの内周部に連結している、請求項1に記載のモータ。
【請求項3】
径方向において、前記マグネットは、前記カバーの内側に配置される、請求項1または2に記載のモータ。
【請求項4】
前記弾性部材に対して剛性を有する部材を備え、
前記剛性を有する部材は、前記マグネットに対して前記第1軸受を支持する、請求項1から3のいずれかに記載のモータ。
【請求項5】
前記第1軸受は内輪を備え、
前記シャフトは前記第1軸受の前記内輪に固定されており、
前記剛性を有する部材は前記マグネットと前記第1軸受の内輪に連結している、請求項4に記載のモータ。
【請求項6】
前記剛性を有する部材は、前記シャフトの回転バランスを調整するバランサーである、請求項4または5に記載のモータ。
【請求項7】
前記カバーは、静止部材である、請求項1から6のいずれかに記載のモータ。
【請求項8】
前記コイルを含むステータを備え、
前記カバーは前記ステータに固定されている、請求項1から7のいずれかに記載のモータ。
【請求項9】
前記マグネットの径方向における大きさは、前記第1軸受または前記第2軸受の径方向における大きさよりも大きい、請求項1から8のいずれかに記載のモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シャフトの両端側に軸受が配置され、軸方向において両軸受が互いに離れる方向に予圧された軸受装置を備えたモータが知られている。例えば、特許文献1には、予圧バネを備えた軸受装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平6-84765号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種のモータにおいて、例えばモータの寿命を長くすることが求められている。
本発明は、長寿命なモータを提供することを課題の一例とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のモータは、シャフトと、マグネットと、コイルと、軸方向において、前記シャフトの一方の端部側に配置される、第1軸受と、軸方向において、前記シャフトの他方の端部側に配置される、第2軸受と、前記第1軸受に固定されるホルダと、径方向において、前記ホルダを介して前記第1軸受に固定されるカバーと、径方向において、前記ホルダの内側に配置された弾性部材と、を備え、軸方向において、前記弾性部材は前記ホルダと前記第1軸受に連結している。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本発明の一例である第1の実施の形態にかかるモータの断面図である。
図2】本発明の一例である第1の実施の形態にかかるモータにおいて、軸受装置のみを抜粋した断面図である。
図3】本発明の一例である第2の実施の形態にかかるモータにおいて、軸受装置のみを抜粋した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の各実施の形態の説明において、説明の便宜上、各図における軸Xに沿った矢印ab方向を軸方向と称する。軸方向において、矢印a方向(第2軸受113bから第1軸受113aへ向かう方向)を下側または一方側とする。軸Xに沿った矢印b方向(第1軸受113aから第2軸受113bへ向かう方向)を上側または他方側とする。また、軸方向に直交し、軸Xに近づいたり離れたりする方向(矢印cd方向)を径方向と称し、軸Xから離れる矢印c方向を外側または一方側、軸Xに近づく矢印d方向を内側または他方側と称する。
【0008】
[第1の実施の形態]
以下、本発明の一例である第1の実施の形態について図面を参照しながら説明する。図1は、本実施の形態にかかるモータ100を、軸Xを含む平面で切断して示す断面図である。図2は、図1において、軸受装置110のみを抜粋して示した図である。
【0009】
図1に示すように、モータ100は、軸受装置110と、コイル120と、磁性体130と、ケース140と、蓋150とを有する。磁性体130は、本実施の形態では、軸方向に積まれた複数の磁性体(電磁鋼板)で構成されている。ケース140は、軸方向における他方側(矢印b方向)が開口した筒状の部材である。ケース140は、筒部(円筒部)141と、底部142と、円環状の突出部143とを有する。円筒部141は、軸Xを中心軸とする円筒状の部分である。底部142は、円筒部141の軸方向における一方側(矢印a方向)の端部から、径方向における内側(矢印d方向)に延在する円環状の平板部である。突出部143は、底部142の径方向における内側(矢印d方向)の端部から、軸方向における他方側(矢印b方向)に延在する円筒状の部分である。軸方向において、円筒部141の寸法(長さ)は、突出部143の寸法(長さ)よりも大きい。
【0010】
蓋150は、ケース140の円筒部141の軸方向における他方側(矢印b方向)の開口を覆う蓋状部材であり、平板部151と、外周部(係合部)152と、内周部(凸部)153とを有する。平板部151は、軸Xを中心軸とする円環状の部分である。径方向において、平板部151は、ケース140の底部142と同一または略同一の寸法(内径および外径)を有する。係合部152は、平板部151の径方向における外側(矢印c方向)の端部から僅かに内側(矢印d方向)において、軸方向における一方側(矢印a方向)に突出する円環状の部分である。凸部153は、平板部151の径方向における内側(矢印d方向)の端部から、軸方向における一方側(矢印a方向)に突出する円筒状の部分である。軸方向において、係合部152の長さは、凸部153の長さと略同一である。
【0011】
蓋150の係合部152は、ケース140の円筒部141の軸方向における他方側(矢印b方向)の端部(外周端部)と係合している。径方向において、蓋150の係合部152の外側の寸法(外径)は、ケース140の円筒部141の内側の寸法(内径)と同一または略同一となっている。蓋150の係合部152は、ケース140の円筒部141の軸方向における他方側(矢印b方向)の端部の、径方向における内側(矢印d方向)に挿入されている。蓋150の係合部152は、ケース140の円筒部141に対し、接着または圧入等により固定されている。したがって、蓋150は、係合部152を介してケース140に固定されている。
【0012】
ケース140の突出部143の内径(径方向における内側の寸法)は、蓋150の凸部153の内径(径方向における内側の寸法)と同一または略同一である。径方向において、ケース140の突出部143の内側の面(内周面)、および蓋150の凸部153の内側の面(内周面)には、軸受装置110の後述する円筒状のカバー114の外側の面(外周面)が、接着剤等により固定されている。ケース140、蓋150、および軸受装置110のカバー114によって画定される、軸Xを中心軸とする円筒状の空間には、コイル120および磁性体130が収容される。したがって、径方向において、軸受装置110のカバー114は、コイル120の内側(矢印d方向)に配置されている。
【0013】
磁性体130は、例えば、軟磁性材で形成された電磁鋼板が軸方向に複数枚積まれた積層体によって形成されている。径方向において、磁性体130は、ケース140の円筒部141の内側(矢印d方向)の面に接続され、軸受装置110のカバー114の近傍まで内側(矢印d方向)へ延在している。代替的に、磁性体130は、軸受装置110のカバー114に接続して固定されていてもよく、ケース140の円筒部141と軸受装置110のカバー114の両方に接続して固定されていてもよい。本実施の形態にかかるモータ100においては、周方向(軸Xの周りに回転する方向)において、6つの磁性体130が等角度間隔で放射状に並んで設けられている。ただし、磁性体130の数は、6つに限られず、モータ100の設計に応じて任意の数であってよい。それぞれの磁性体130には、図示しないインシュレータを介してコイル120が巻回されている。
【0014】
コイル120および磁性体130は、モータ100のステータ10を構成する。上述のように、磁性体130は、軸受装置110のカバー114に直接、またはケース140および蓋150を介して固定されている。これにより、軸受装置110のカバー114は、ステータ10に直接、または間接的に固定されている。すなわち、軸受装置110のカバー114は、回転するシャフトSやマグネット112などのロータと比較して静止した静止部材の一つである。なお、静止部材は完全に静止した部材でなくてもよく、回転するシャフトSやマグネット112などのロータと比較して静止している部材を含む。
【0015】
図2に示すように、軸受装置110は、シャフトSと、マグネット112と、第1軸受113aと、第2軸受113bと、円筒形状を有するカバー114と、ホルダ115と、弾性部材116とを有する。径方向において、シャフトS、マグネット112、第1軸受113a、第2軸受113b、および弾性部材116は、カバー114の内側に配置されている。すなわち、カバー114は、径方向において、シャフトS、マグネット112、第1軸受113a、第2軸受113b、および弾性部材116を覆うスリーブである。カバー114は、第1軸受113a側(軸方向における一方側、矢印a方向)にある第1端部114aと、第2軸受113b側(軸方向における他方側、矢印b方向)にある第2端部114bと、を備える。カバー114は、例えばセラミックにより形成されている。ただし、カバー114は、非磁性の金属や樹脂等、他の素材により形成されていてもよい。
【0016】
シャフトSは、軸方向に延びる、円柱形状または略円柱形状を有する棒状の部材である。シャフトSは、軸方向における一方側(矢印a方向)にある一方の端部S1と、軸方向における他方側(矢印b方向)にある他方の端部S2と、を備える。軸方向において、第1軸受113aは、シャフトSの一方の端部S1側に配置される。また、軸方向において、第2軸受113bは、シャフトSの他方の端部S2側に配置される。
【0017】
第1軸受113aは、内輪113aiと、外輪113aoと、転動体とを有するボールベアリングである。なお、第1軸受113aは、この形態のボールベアリングに限られず、例えばシャフトの径方向における外側(矢印c方向)の面(外周面)の凹みに嵌合したボールと外輪を有するボールベアリング等、その他種々の軸受であってもよい。第1軸受113aの内輪113aiは、シャフトSの径方向外側(矢印c方向)の面(外周面)に圧入または接着されている。これにより、第1軸受113aの内輪113aiは、シャフトSに固定されている。
【0018】
第2軸受113bは、第1軸受113aと同一の寸法および構成を有している。第2軸受113bは、内輪113biと、外輪113boと、転動体とを有するボールベアリングである。なお、第2軸受113bは、この形態のボールベアリングに限られず、例えばスリーブベアリングや、シャフトの径方向における外側(矢印c方向)の面(外周面)の凹みに嵌合したボールと外輪を有するボールベアリング等、その他種々の軸受であってもよい。第2軸受113bの内輪113biは、シャフトSの径方向外側(矢印c方向)の面(外周面)に圧入または接着されている。これにより、第2軸受113bの内輪113biは、シャフトSに固定されている。
【0019】
径方向において、第2軸受113bの外輪113boの外側(矢印c方向)には、円環状のスペーサ119を介して、円筒状のカバー114の第2端部114bが固定されている。軸方向において、スペーサ119の寸法は、第2軸受113bの寸法と同一または略同一である。ただし、スペーサ119の軸方向における寸法は、第2軸受113bと異なっていてもよい。径方向において、スペーサ119の内径は、第2軸受113bの外輪113boの外径と同一または略同一であり、スペーサ119の外径は、カバー114の内径と同一または略同一である。第2軸受113bの外輪113boの径方向における外側(矢印c方向)の面と、スペーサ119の径方向における内側(矢印d方向)の面との間、および、スペーサ119の径方向における外側(矢印c方向)の面と、カバー114の径方向における内側(矢印d方向)の面との間は、圧入または接着により固定されている。第2軸受113bは、シャフトSを、カバー114に対して回転可能に支持している。
【0020】
径方向において、第1軸受113aの外輪113aoの外側(矢印c方向)には、後述するホルダ115の円筒部115aが固定されている。第1軸受113aは、シャフトSを、ホルダ115に対して回転可能に支持している。
【0021】
ホルダ115は、略S字状の断面を軸Xの周りに回転して得られる立体形状を有する。換言すれば、ホルダ115は、開口部と、中心に円形の孔が開いた底部とを有し、軸方向において、開口部が一方側(矢印a方向)を向き、底部が他方側(矢印b方向)を向いたカップ状の立体形状を有する。ホルダ115は、アルミニウム、銅、鉄等の金属により形成されている。ただし、ホルダ115は、樹脂等の他の素材により形成されていてもよい。ホルダ115は、カバー114よりも柔らかい素材により形成されていてもよい。ホルダ115は、円筒部115aと、内周部115bと、外周部115cとを有している。
【0022】
ホルダ115の円筒部115aは、軸方向に延びる円筒状の部分である。軸方向において、ホルダ115の円筒部115aの寸法は、第1軸受113aの寸法よりも大きい。径方向において、ホルダ115の円筒部115aの厚みは、スペーサ119の厚みと同一または略同一となっている。また、径方向において、ホルダ115の円筒部115aの内径および外径は、スペーサ119の内径および外径と同一または略同一となっている。
【0023】
径方向において、ホルダ115の円筒部115aの内径は、第1軸受113aの外輪113aoの外径と同一または略同一であり、円筒部115aの外径は、カバー114の内径と同一または略同一である。第1軸受113aの外輪113aoの径方向における外側(矢印c方向)の面と、ホルダ115の円筒部115aの径方向における内側(矢印d方向)の面との間、および、ホルダ115の円筒部115aの径方向における外側(矢印c方向)の面と、カバー114の径方向における内側(矢印d方向)の面との間は、圧入または接着により固定されている。すなわち、径方向において、カバー114は、ホルダ115を介して第1軸受113aに固定されている。
【0024】
ホルダ115の内周部115bは、円筒部115aの軸方向における他方側(矢印b方向)の端部から、径方向における内側(矢印d方向)に、後述する第1剛性部材117aに接しない程度に延びる円環状の部分である。軸方向において、ホルダ115の内周部115bは、第1軸受113aの他方側(矢印b方向)に、第1軸受113aとの間に間隙が形成されるように配置されている。
【0025】
ホルダ115の外周部115cは、円筒部115aの軸方向における一方側(矢印a方向)の端部から、径方向における外側(矢印c方向)に、カバー114の第1端部114aの厚みと同一または略同一の寸法だけ延びる円環状の部分である。軸方向において、ホルダ115の外周部115cの他方側の面と、カバー114の第1端部114aとが接することで、ホルダ115はカバー114に対して位置決めされている。
【0026】
ホルダ115は、弾性部材116を保持している。本実施の形態において、弾性部材116は、軸Xを中心軸とする略円筒状かつ螺旋状のコイルスプリングである。ただし、弾性部材116は、例えばゴム弾性を有する素材により形成された種々の形状からなる部材であってもよい。ゴム弾性を有する素材としては、例えば、天然ゴムおよび合成ゴム等の熱硬化性エラストマーや、スチレン系、オレフィン系、塩ビ系、アクリル系、ポリアミド系、ポリエステル系、ポリウレタン系等の熱可塑性エラストマー等が挙げられる。また、複数の弾性部材116が、周方向に並んで配置されていてもよい。
【0027】
径方向において、弾性部材116は、ホルダ115の内側(矢印d方向)に配置されている。具体的には、弾性部材116は、径方向において、ホルダ115の円筒部115aの内側(矢印d方向)に配置されており、軸方向において、ホルダ115の内周部115bの一方側(矢印a方向)に配置されている。軸方向において、弾性部材116は、ホルダ115の内周部115bと、第1軸受113aの外輪113aoとの間に配置されている。径方向において、弾性部材116は、シャフトSおよび後述する第1剛性部材117aを、外側(矢印c方向)から囲んでいる。
【0028】
軸方向において、弾性部材116は、ホルダ115の内周部115bと、第1軸受113aの外輪113aoとに連結している。なお、本明細書において、ある部材と他の部材とが「連結している」とは、ある部材が他の部材に接していればよく、必ずしもある部材が他の部材に対して不動に固定されていなくてもよい。弾性部材116は、ホルダ115の内周部115bと、第1軸受113aの外輪113aoとを付勢している。具体的には、軸方向において、弾性部材116は、ホルダ115の内周部115bと、第1軸受113aの外輪113aoとを、互いに遠ざける方向に押圧している。つまり、弾性部材116は、ホルダ115の内周部115bを、軸方向における他方側(矢印b方向)に向かって押圧している。また、弾性部材116は、第1軸受113aの外輪113aoを、軸方向における一方側(矢印a方向)に向かって押圧している。上述したように、第1軸受113aの外輪113aoと、ホルダ115とは固定されているため、弾性部材116は、軸方向の弾性エネルギーを蓄えた状態で保持されている。
【0029】
上述したように、径方向において、第2軸受113bの外輪113boの外側(矢印c方向)には、円環状のスペーサ119を介して、円筒状のカバー114の第2端部114bが固定されており、また、径方向において、第1軸受113aの外輪113aoの外側(矢印c方向)には、ホルダ115が固定されている。したがって、弾性部材116により、第1軸受113aの外輪113aoと、第2軸受113bの外輪113boとは、軸方向において互いに遠ざかるように予圧が付与されていることになる。
【0030】
本実施の形態において、マグネット112は、周方向に異なる磁極(S極とN極)が交互に着磁され、4つの磁極を有する円筒状の永久磁石である。ただし、マグネット112の磁極数は、4つに限られず、モータ100の設計に応じて任意の数であってよい。径方向において、マグネット112の内径は、シャフトSの外径と同一であるか、シャフトSの外径よりも僅かに大きくなっている。マグネット112は、シャフトSの径方向における外側(矢印c方向)の面に対し、接着または圧入により固定されている。軸方向において、マグネット112は、第1軸受113aおよび第2軸受113bの間に、第1軸受113aおよび第2軸受113bから所定の距離だけ離れて配置されている。マグネット112の径方向における大きさ(外径)Q1は、第1軸受113aおよび第2軸受113bの径方向における大きさ(外径)Pよりも大きくなっている。
【0031】
マグネット112の径方向における外側(矢印c方向)の面(外周面)を覆うように、円筒状の保護部材118が備えられている。保護部材118は、例えば、マグネット112の破壊や飛散を防止するために備えられている。ただし、モータ100は、保護部材118を備えていなくてもよい。径方向において、保護部材118の外側(矢印c方向)の面と、カバー114の内側(矢印d方向)の面とは、離れて対向している。
【0032】
軸方向において、マグネット112と、第1軸受113aとの間には、部材(第1剛性部材)117aが配置されている。第1剛性部材117aは、マグネット112に対して第1軸受113aを支持している。また、軸方向において、マグネット112と、第2軸受113bとの間には、部材(第2剛性部材)117bが配置されている。第2剛性部材117bは、マグネット112に対して第2軸受113bを支持している。なお、本明細書中において、「剛性部材」とは、弾性部材116に対して剛性を有する(すなわち、弾性部材116と比較して弾性的な変形をし難い)部材を示す。第1剛性部材117aおよび第2剛性部材117bは、互いに同一形状および同一寸法となっており、マグネット112を挟んで、軸Xに直交する平面に関して対称となるように配置されている。ただし、第1剛性部材117aおよび第2剛性部材117bは、互いに異なる形状および寸法を有していてもよい。
【0033】
第1剛性部材117aおよび第2剛性部材117bは、それぞれ円環部117a1,117b1と、突出部117a2,117b2とを有する。径方向において、円環部117a1,117b1の内径は、シャフトSの外径と同一であるか、シャフトSの外径よりも僅かに大きくなっている。円環部117a1,117b1は、シャフトSの径方向外側(矢印c方向)の面に対し、接着または圧入により固定されている。径方向において、円環部117a1,117b1の外径は、マグネット112の外径よりも小さくなっている。また、径方向において、円環部117a1,117b1の外径は、ホルダ115の内周部115bの内径よりも小さくなっている。径方向において、第1剛性部材117aの円環部117a1は、ホルダ115の内周部115bと所定の距離だけ離れて対向している。
【0034】
突出部117a2,117b2は、円環部117a1,117b1の、マグネット112から離れた側の面から軸方向に突出し、それぞれ第1軸受113aの内輪113aiおよび第2軸受113bの内輪113biに接触する円環状の部分である。突出部117a2,117b2は、それぞれ、円環部117a1,117b1の、径方向における内側(矢印d方向)の領域から突出している。
【0035】
第1剛性部材117aは、マグネット112と、第1軸受113aの内輪113aiとに連結している。第2剛性部材117bは、マグネット112と、第2軸受113bの内輪113biとに連結している。第1剛性部材117aおよび第2剛性部材117bは、銅等の金属により形成されている。第1剛性部材117aおよび第2剛性部材117bは、他の素材により形成されていてもよいが、シャフトSの回転バランスを調整するバランサーとする場合は、比重の大きい金属により形成されていることが好ましい。
【0036】
モータ100は、インナーロータ型のブラシレスDCモータである。モータ100が作動すると、シャフトS、マグネット112、第1軸受113aの内輪113ai、第2軸受113bの内輪113bi、第1剛性部材117a、第2剛性部材117b、および保護部材118は一体となって回転する。
【0037】
本実施の形態にかかるモータ100は、静止側の構成、すなわちコイル120、磁性体130、ケース140、および蓋150を組み立てた後に、別途組み立てた軸受装置110を挿入する方法で製造することができる。このため、回転側と静止側の同軸度、および、第1軸受113aと第2軸受113bの同軸度を共に高めることができる。
【0038】
軸受装置110の組み立てにおいて、例えば、カバー114にホルダ115を挿入し、接着等により固定した後、弾性部材116を介在させながら第1軸受113aをホルダ115に圧入し、第1軸受113aの外輪113aoとホルダ115とを接着等により固定する。その際、第1軸受113aの外輪113aoと、第2軸受113bの外輪113boとが、軸方向において互いに遠ざかるように弾性部材116によって予圧を付与された状態で、第1軸受113aの外輪113aoとホルダ115とが固定される。これにより、モータ100は、共振周波数が高く、高速回転用途に適したものとなる。また、ホルダ115が、円筒部115aの外周面においてカバー114に固定されるため、カバー114およびホルダ115を固定する際にぐらつきが生じ難く、モータ100の同軸度が高くなりやすい。したがって、本実施の形態にかかるモータ100は、回転に伴う振動が生じ難く、長寿命となる。
【0039】
また、本実施の形態にかかるモータ100は、一方の端部が第1軸受113aの外輪113aoに接触し、他方の端部が第2軸受113bの外輪113boに接触するような大きなスプリングを備える必要がないため、カバー114の内部空間に余裕ができ、マグネット112の外径を大きく設計可能であり、トルクを大きくすることができる。
【0040】
[第2の実施の形態]
続いて、本発明の一例である第2の実施の形態について図面を参照しながら説明する。図3は、本実施の形態にかかるモータにおける、軸受装置210のみを抜粋した断面図である。本実施の形態にかかるモータは、軸受装置110の代わりに軸受装置210を有する点を除き、第1の実施の形態にかかるモータ100と同様の構成を有する。軸受装置210は、マグネット112の代わりにヨーク211およびマグネット212を有する点を除き、第1の実施の形態にかかるモータ100の軸受装置110と同様の構成を有する。以下、第1の実施の形態と同一の機能および構成を有する部材および部品については、第1の実施の形態と同一の符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0041】
本実施の形態において、マグネット212は、周方向に異なる磁極(S極とN極)が交互に着磁され、4つの磁極を有する円筒状の永久磁石である。ただし、マグネット212の磁極数は、4つに限られず、モータの設計に応じて任意の数であってよい。径方向において、マグネット212の内径は、シャフトSの外径よりも大きくなっている。マグネット212の外径は、例えば、第1の実施の形態にかかるモータ100のマグネット112の外径と同一である。マグネット212は、円筒状のヨーク211を介してシャフトSに固定されている。
【0042】
軸方向において、ヨーク211の長さは、マグネット212の長さと同一または略同一である。径方向において、ヨーク211の内径は、シャフトSの外径と同一であるか、シャフトSの外径よりも僅かに大きくなっている。径方向において、ヨーク211の外径は、マグネット212の内径と同一であるか、マグネット212の内径よりも僅かに小さくなっている。シャフトSの径方向外側(矢印c方向)の面とヨーク211の径方向内側(矢印d方向)の面との間、および、ヨーク211の径方向外側(矢印c方向)の面とマグネット212の径方向内側(矢印d方向)の面との間は、圧入または接着により固定されている。
【0043】
軸方向において、ヨーク211およびマグネット212は、第1軸受113aおよび第2軸受113bの間に、第1軸受113aおよび第2軸受113bから所定の距離だけ離れて配置されている。マグネット212の径方向における大きさ(外径)Q2は、第1軸受113aおよび第2軸受113bの径方向における大きさ(外径)Pよりも大きくなっている。
【0044】
本実施の形態にかかるモータは、第1の実施の形態にかかるモータ100において上記した事項と同様の原理により、同軸度が高く、長寿命であり、かつ、トルクが大きいものとなる。また、ヨーク211を介してマグネット212をシャフトSに固定することにより、マグネット212の割れを防止することができ、また、マグネット212の着磁が容易となる。
【0045】
以上、本発明のモータについて、好ましい実施の形態を挙げて説明したが、本発明のモータは上記実施の形態の構成に限定されるものではない。例えば、上記実施の形態において、ケース140は円筒状となっているが、本発明のモータにおいて、ケースは任意の形状であってよい。また、上記実施の形態において、軸受装置110,210は第1剛性部材117aおよび第2剛性部材117bを有しているが、本発明のモータは、軸受装置がいずれか一方の剛性部材のみを有していてもよく、軸受装置が剛性部材を全く有していなくてもよい。また、第1剛性部材117aおよび第2剛性部材117bは同一形状および同一寸法でなくてもよい。
【0046】
上記実施の形態において、カバー114とスペーサ119は互いに独立した別部材となっているが、カバーおよびスペーサは、一体の部材として形成されていてもよい。同様に、上記実施の形態において、カバー114とホルダ115は互いに独立した別部材となっているが、カバーおよびホルダは、一体の部材として形成されていてもよい。
【0047】
上記実施の形態において、マグネット112,212の外径Q1,Q2は、第1軸受113aおよび第2軸受113bの外径Pよりも大きくなっているが、本発明のモータにおいて、マグネットの外径は軸受の外径と等しくてもよく、軸受の外径よりも小さくてもよい。また、上記実施の形態において、第2軸受113bは、第1軸受113aと同一の寸法および構成を有しているが、本発明のモータにおいて、第1軸受と第2軸受の寸法および構成は互いに異なっていてもよい。
【0048】
その他、当業者は、従来公知の知見に従い、本発明のモータを適宜改変し、また各種構成の形状、寸法および組み合わせを変更することができる。かかる変更によってもなお本発明の構成を具備する限り、勿論、本発明の範疇に含まれるものである。
【符号の説明】
【0049】
100…モータ、112,212…マグネット、113a…第1軸受、113b…第2軸受、114…カバー、115…ホルダ、116…弾性部材、117a,117b…剛性部材、118…保護部材、119…スペーサ、120…コイル、S…シャフト。
図1
図2
図3