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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135369
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/78 20060101AFI20240927BHJP
   H01L 29/12 20060101ALI20240927BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20240927BHJP
   H01L 21/265 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
H01L29/78 652J
H01L29/78 653A
H01L29/78 652H
H01L29/78 652T
H01L29/78 658A
H01L29/78 658E
H01L21/265 V
H01L21/265 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023046007
(22)【出願日】2023-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317011920
【氏名又は名称】東芝デバイス&ストレージ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100118843
【弁理士】
【氏名又は名称】赤岡 明
(74)【代理人】
【識別番号】100217940
【弁理士】
【氏名又は名称】三並 大悟
(72)【発明者】
【氏名】田中 克久
(72)【発明者】
【氏名】河野 洋志
(57)【要約】
【課題】オン抵抗の増加を抑制しつつゲート絶縁膜の信頼性を向上させることが可能な半導体装置を提供する。
【解決手段】一実施形態に係る半導体装置は、第1方向に延びるゲート電極と、ゲート電極を覆うゲート絶縁膜と、ゲート絶縁膜下で、第1方向に直交する第2方向に延びる第1導電形の第1半導体領域と、第1半導体領域を挟んで前記ゲート絶縁膜と対向する第1導電形の第2半導体領域と、を備える。第2半導体領域の第1導電形不純物濃度が、第1半導体領域の第1導電形不純物濃度よりも低い。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に延びるゲート電極と、
前記ゲート電極を覆うゲート絶縁膜と、
前記ゲート絶縁膜下で、前記第1方向に直交する第2方向に延びる第1導電形の第1半導体領域と、
前記第1半導体領域を挟んで前記ゲート絶縁膜と対向する第1導電形の第2半導体領域と、を備え、
前記第2半導体領域の第1導電形不純物濃度が、前記第1半導体領域の第1導電形不純物濃度よりも低い、半導体装置。
【請求項2】
前記ゲート絶縁膜下で、前記第1半導体領域と前記第1方向に交互に設けられた第2導電形の第3半導体領域をさらに備える、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第3半導体領域と前記第2方向に交互に設けられた第2導電形の第4半導体領域をさらに備え、
前記第4半導体領域の第2導電形不純物濃度は、前記第3半導体領域の第2導電形不純物濃度よりも高い、請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第2半導体領域が、前記第3半導体領域下にも設けられている、請求項2に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第2半導体領域が、前記ゲート電極に沿って前記第1方向に延びている、請求項1から4のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項6】
前記第1半導体領域下および前記第3半導体領域下に設けられた第2導電形の第5半導体領域をさらに備え、
前記第2半導体領域が、前記第5半導体領域内に設けられている、請求項2に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記第1半導体領域下および前記第3半導体領域下に設けられた前記第2導電形の第5半導体領域と、
前記第5半導体領域下に設けられた第2導電形の第6半導体領域と、をさらに備え、
前記第2半導体領域が、前記第5半導体領域から前記第6半導体領域まで延びている、請求項2に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記ゲート絶縁膜と前記第1半導体領域との間に設けられた第2導電形の第3半導体領域をさらに備える、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記第3半導体領域下に設けられた前記第2半導体領域の厚さが、前記第1半導体領域下に設けられた前記第2半導体領域の厚さよりも大きい、請求項8に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記第1導電形がp形であり、前記第2導電形がn形である、請求項2に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)等のパワー半導体装置では、一方向に延びるトレンチ型のゲート電極の下側に、p形半導体領域が部分的に設けられる構造がある。この構造によれば、ゲート電極を覆うゲート絶縁膜の電界を緩和することができる。
【0003】
このような半導体装置では、p形半導体領域が厚いとオン抵抗の増加を招く。しかし、p形半導体領域が薄いと、寸法ばらつきが大きくなってゲート絶縁膜の信頼性が低下し得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6400548号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、オン抵抗の増加を抑制しつつゲート絶縁膜の信頼性を向上させることが可能な半導体装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態に係る半導体装置は、第1方向に延びるゲート電極と、ゲート電極を覆うゲート絶縁膜と、ゲート絶縁膜下で、第1方向に直交する第2方向に延びる第1導電形の第1半導体領域と、第1半導体領域を挟んで前記ゲート絶縁膜と対向する第1導電形の第2半導体領域と、を備える。第2半導体領域の第1導電形不純物濃度が、第1半導体領域の第1導電形不純物濃度よりも低い。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1実施形態に係る半導体装置を垂直方向に切断した断面図である。
図2図2は、第1実施形態に係る半導体装置を、図1とは異なる箇所で垂直方向に切断した断面図である。
図3図1に示す切断線A-Aおよび図2に示す切断線C-Cに沿った断面図である。
図4図1に示す切断線B-Bおよび図2に示す切断線D-Dに沿った断面図である。
図5】p形半導体領域の形成工程を説明するための断面図である。
図6】第1~第3電流拡散領域の形成工程を説明するための断面図である。
図7】p形半導体領域の形成工程を説明するための断面図である。
図8】n形半導体領域の形成工程を説明するための断面図である。
図9】第4電流拡散領域の形成工程を説明するための断面図である。
図10図9とは異なる切断箇所において、第4電流拡散領域の形成工程を説明するための断面図である。
図11】pベース領域、nソース領域、pコンタクト領域、およびトレンチの形成工程を説明するための断面図である。
図12図11とは異なる切断箇所において、pベース領域、nソース領域、pコンタクト領域、およびトレンチの形成工程を説明するための断面図である。
図13】トレンチの側壁部にp形半導体領域を形成する工程を説明するための断面図である。
図14】ゲート絶縁膜、ゲート電極、および層間絶縁膜を形成する工程を説明するための断面図である。
図15図14とは異なる切断箇所において、ゲート絶縁膜、ゲート電極、および層間絶縁膜を形成する工程を説明するための断面図である。
図16】第1変形例に係る半導体装置を垂直方向に切断した断面図である。
図17】第1変形例に係る半導体装置を、図16とは異なる箇所で垂直方向に切断した断面図である。
図18】第2実施形態に係る半導体装置を垂直方向に切断した断面図である。
図19】第2実施形態に係る半導体装置を、図18とは異なる箇所で垂直方向に切断した断面図である。
図20】第2変形例に係る半導体装置を垂直方向に切断した断面図である。
図21】第2変形例に係る半導体装置を、図20とは異なる箇所で垂直方向に切断した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。本実施形態は、本発明を限定するものではない。
【0009】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る半導体装置を垂直方向に切断した断面図である。図2は、第1実施形態に係る半導体装置を、図1とは異なる箇所で垂直方向に切断した断面図である。図3は、図1に示す切断線A-Aおよび図2に示す切断線C-Cに沿った断面図である。図4は、図1に示す切断線B-Bおよび図2に示す切断線D-Dに沿った断面図である。なお、図1は、図3に示す切断線E-Eおよび図4に示す切断線G-Gに沿った断面図に相当する。また、図2は、図3に示す切断線F-Fおよび図4に示す切断線H-Hに沿った断面図に相当する。
【0010】
本実施形態に係る半導体装置1は、トレンチゲート構造を有するMOSFETである。この半導体装置1は、半導体部10と、ゲート電極20と、ドレイン電極30と、ソース電極40と、を備える。
【0011】
まず、半導体部10について説明する。半導体部10は、図1図4に示すように、基板11と、ドリフト領域12と、p形半導体領域13と、電流拡散領域14と、p形半導体領域15と、n形半導体領域16と、pベース領域17と、nソース領域18と、pコンタクト領域19と、を有する。電流拡散領域14は、さらに、第1電流拡散領域14a、第2電流拡散領域14b、第3電流拡散領域14c、および第4電流拡散領域14dを有する。
【0012】
本実施形態では、p形半導体領域15が、第1導電形の第1半導体領域に相当する。また、p形半導体領域13が、第1導電形の第2半導体領域に相当する。また、n形半導体領域16が、第2導電形の第3半導体領域に相当する。また、第3電流拡散領域14cが、第2導電形の第4半導体領域に相当する。また、第1電流拡散領域14aおよび第2電流拡散領域14bが、第2導電形の第5半導体領域に相当する。さらに、ドリフト領域12が、第2導電形の第6半導体領域に相当する。
【0013】
また、以下の説明では、各図中に示すX軸、Y軸およびZ軸を用いて半導体装置の各部の配置および構成を説明する場合がある。X軸、Y軸、Z軸は、相互に直交し、それぞれX方向(第2方向)、Y方向(第1方向)、Z方向(第3方向)を表す。また、Z方向を上方、その反対方向を下方として説明する場合がある。本実施形態では、X方向はおよびY方向は、基板11に平行な面内方向を表し、Z方向は、基板11に直交する面外方向を表す。
【0014】
さらに、n、n、nの表記は、n形不純物の濃度が、この順番で高くなることを意味する。さらに、p、pの表記は、p形不純物の濃度が、この順番で高くなることを意味する。
【0015】
半導体部10において、基板11は、例えばn形のSiC基板である。基板11上には、ドリフト領域12が設けられている。
【0016】
ドリフト領域12は、n形半導体領域である。ドリフト領域12は、半導体装置1のオフ時に、ドレイン電極30とソース電極40との間に印加されるドレイン電圧により空乏化される。そのため、ドリフト領域12の厚さは、所定の耐圧条件を満たす厚さに設計されている。ドリフト領域12上には、複数のp形半導体領域13が設けられている。
【0017】
複数のp形半導体領域13の各々は、図4に示すように、ゲート電極20に沿ってY方向に延びている。複数のp形半導体領域13の間には、図1、2に示すように、第1電流拡散領域14aおよび第2電流拡散領域14bが設けられている。すなわち、Y方向において隣接するp形半導体領域13間には、第1電流拡散領域14aおよび第2電流拡散領域14bが設けられている。
【0018】
第1電流拡散領域14aおよび第2電流拡散領域14bの両方は、n形半導体領域である。第1電流拡散領域14aは、ドリフト領域12上に設けられている。第2電流拡散領域14bは、第1電流拡散領域14a上に設けられている。
【0019】
第2電流拡散領域14bのn形不純物濃度は、第1電流拡散領域14aのn形不純物濃度以上である。ただし、第1電流拡散領域14aの濃度が高いと、半導体装置1の耐圧低下が懸念される。また、第2電流拡散領域14bは、p形半導体領域13に挟まれた場所に設けられているため、可能な限り低抵抗であることが望ましい。そのため、第2電流拡散領域14bのn形不純物濃度は、第1電流拡散領域14aのn形不純物濃度よりも高いことが望ましい。
【0020】
p形半導体領域13および第2電流拡散領域14bの上には、図1に示すようにp形半導体領域15が設けられている。p形半導体領域15の一部は、Z方向に突出してゲート絶縁膜21の側面に接している。この突出部分によって、ソース電極40と電気的に接続される。また、p形半導体領域15は、図3に示すようにX方向に延びている。
【0021】
また、図2に示すように、p形半導体領域13の上(Z方向におけるp形半導体領域13とゲート絶縁膜21との間)には、n形半導体領域16も設けられている。n形半導体領域16は、図3に示すように、Y方向にp形半導体領域15と交互に設けられている。n形半導体領域16のn形不純物濃度は、ドリフト領域12のn形不純物濃度とほぼ同じである。
【0022】
また、図3に示すように、複数のn形半導体領域16のX方向における間には、第3電流拡散領域14cが設けられている。第3電流拡散領域14cは、上述した第1電流拡散領域14aおよび第2電流拡散領域14bと同様に、n形半導体領域である。第3電流拡散領域14cのn形不純物濃度は、第1電流拡散領域14aのn形不純物濃度以上であり、かつ第2電流拡散領域14bのn形不純物濃度以下である。
【0023】
ただし、第3電流拡散領域14cは、半導体装置1がオンした時の電流経路であるため、低抵抗であることが望ましい。その一方で、第3電流拡散領域14cはトレンチ底部の近くに配置されているため、n形不純物濃度が高すぎるとゲート絶縁膜21の電界が高くなってしまう。そのため、第3電流拡散領域14cのn形不純物濃度は、第1電流拡散領域14aのn形不純物濃度よりも高くて、かつ第2電流拡散領域14bの以下であることが望ましい。
【0024】
図1および図2に示すように、p形半導体領域15上およびn形半導体領域16上には、ゲート絶縁膜21および第4電流拡散領域14dが設けられている。より具体的には、ゲート絶縁膜21はX方向において複数設けられており、それぞれのゲート絶縁膜21はY方向に延在している。また、第4電流拡散領域14dは、X方向において隣接するゲート絶縁膜21間に設けられている。ゲート絶縁膜21は、例えばシリコン酸化膜(SiO)である。
【0025】
第4電流拡散領域14dは、上述した第1電流拡散領域14a~第3電流拡散領域14cと同様に、n形半導体領域である。第4電流拡散領域14dのn形不純物濃度は、第1電流拡散領域14aのn形不純物濃度以上であり、かつ第3電流拡散領域14cのn形不純物濃度以下である。
【0026】
ただし、第4電流拡散領域14d上には、pベース領域17が接合される。そのため、第4電流拡散領域14dのn形不純物濃度が高すぎると、pベース領域17を空乏化させてしまう。そのため、第4電流拡散領域14dのn形不純物濃度は、第1電流拡散領域14aのn形不純物濃度よりも高くて、かつ第3電流拡散領域14cのn形不純物濃度よりも低いことが望ましい。
【0027】
第4電流拡散領域14d上に設けられたpベース領域17上には、nソース領域18が、設けられている。nソース領域18は、pコンタクト領域19とともにソース電極40に接する。
【0028】
次に、ゲート電極20、ドレイン電極30、およびソース電極40について説明する。
【0029】
ゲート電極20は、ゲート絶縁膜21内部に形成されている。すなわち、ゲート電極20は、ゲート絶縁膜21に覆われており、Y方向に延在している。ゲート電極20は、例えばポリシリコンを用いて形成することができる。ドレイン電極30は、基板11の、半導体部10が設けられた表面とはZ方向で対向する裏面に設けられている。ソース電極40は、半導体部10を挟んでドレイン電極30とZ方向で対向配置されている。ソース電極40は、層間絶縁膜41によって、ゲート電極20と電気的に絶縁される。ドレイン電極30およびソース電極40は、金属を用いて形成することができる。
【0030】
次に、図5図15を参照して、上記のように構成された半導体装置1の製造方法の一例について説明する。
【0031】
まず、図5に示すように、マスクを用いたイオン注入によって、基板11上に形成されたドリフト領域12内にp形半導体領域13を形成する。図5は、図1と同じ箇所の断面図である。なお、この時点では、図2に示す断面も、図5と同じ構造となっている。
【0032】
図5に示すp形半導体領域13の形成工程で用いられるマスクの材料は、例えば酸化膜またはレジストである。また、アルミニウム(Al)またはボロン(B)のイオンが、p形不純物として注入される。このとき、イオンは、基板11の表面に対して0°のチルト角度をつけて注入される。ここで、チルト角度とは、基板11の表面に垂直なZ方向に対する傾斜角度である。つまりチルト角度が0°であるときには、イオンの注入方向はZ方向となる。なお、基板11がSiC基板である場合には、イオンは、SiCの結晶軸に沿って注入される。
【0033】
次に、図6に示すように、マスクを用いたイオン注入によって、ドリフト領域12内に、第1電流拡散領域14a、第2電流拡散領域14b、および第3電流拡散領域14cを順次に形成する。図6も、図1と同じ箇所の断面図である。なお、この時点では、図2に示す断面も、図6と同じ構造となっている。
【0034】
第1電流拡散領域14a~第3電流拡散領域14cの形成工程で用いられるマスクは、p形半導体領域13の形成工程で用いられたマスクを除去した後、新たに形成される。このマスクは、基板11の終端領域(不図示)を保護し、図6に示されているセル領域で開口している。そのため、この工程で注入されるイオンは、p形半導体領域13で打ち返されるため、各電流拡散領域とp形半導体領域13との位置ずれを回避できる。また、この工程では、窒素(N)またはリン(P)のイオンが、n形不純物として注入される。このとき、イオンは、基板11の表面に対して0°のチルト角度をつけて注入される。なお、基板11がSiC基板である場合には、イオンは、SiCの結晶軸に沿って注入される。また、イオンの注入量や注入時間を調整することによって、n形不純物濃度がそれぞれ異なる第1電流拡散領域14a~第3電流拡散領域14cを形成することができる。
【0035】
次に、図7に示すように、マスクを用いたイオン注入によって、第3電流拡散領域14cの一部にp形半導体領域15を形成する。図7は、図1と同じ箇所の断面図である。この工程では、アルミニウム(Al)またはボロン(B)のイオンが、p形不純物として注入される。このとき、イオンの注入量や注入時間を調整することによって、p形半導体領域15のp形不純物濃度は、p形半導体領域13のp形不純物濃度よりも高くなる。
【0036】
次に、図8に示すように、マスクを用いたイオン注入によって、第3電流拡散領域14c内におけるp形半導体領域13上にn形半導体領域16を形成する。図8は、図2と同じ箇所の断面図である。
【0037】
形半導体領域16の形成工程で用いられるマスクは、p形半導体領域15の形成工程で用いられたマスクを除去した後、新たに形成される。このマスクは、n形半導体領域16の形成領域で開口している。その結果、図3に示すように、p形半導体領域15とn形半導体領域16とは、格子状のパターンを形成する。
【0038】
次に、図9および図10に示すように、p形半導体領域15、n形半導体領域16、および第3電流拡散領域14cの各々の上に第4電流拡散領域14dを形成する。図9図1と同じ箇所の断面図である。また、図10は、図2と同じ箇所の断面図である。第4電流拡散領域14dは、例えばエピタキシャル成長によって形成することができる。
【0039】
次に、図11および図12に示すように、マスクを用いたイオン注入によって、第4電流拡散領域14dの上部に、pベース領域17と、nソース領域18と、pコンタクト領域19と、を形成する。図11は、図1と同じ箇所の断面図である。また、図12は、図2と同じ箇所の断面図である。
【0040】
pベース領域17およびpコンタクト領域19は、アルミニウムまたはボロンのイオン注入によって形成することができる。一方、nソース領域18は、窒素またはリンのイオン注入によって形成することができる。
【0041】
次に、例えばRIE(Reactive Ion Etching)によってトレンチ50を形成する。トレンチ50は、pベース領域17、nソース領域18、および第4電流拡散領域14dをZ方向で貫通し、p形半導体領域15およびn形半導体領域16で終端している。
【0042】
次に、図13に示すように、マスクを用いたイオン注入によって、トレンチ50の側壁部にp形半導体領域15を形成する。図13は、図1と同じ箇所の断面図である。
【0043】
この工程で用いられるマスクは、トレンチ50を部分的に露出させるようにパターニングされている。また、このp形半導体領域15は、Z方向に対して斜めの方向にイオン注入することによって形成することができる。
【0044】
次に、図14および図15に示すように、トレンチ50内にゲート絶縁膜21およびゲート電極20を順次に形成する。続いて、ゲート絶縁膜21およびゲート電極20の上に、層間絶縁膜41を形成する。図14は、図1と同じ箇所の断面図である。また、図15は、図2と同じ箇所の断面図である。
【0045】
最後に、図1および図2に示すように、ソース電極40およびドレイン電極30を形成することによって、本実施形態に係る半導体装置1が完成する。
【0046】
上述した製造工程は、第1実施形態に係る半導体装置1の製造方法の一例であり、製造方法を限定するものではない。例えば、p形半導体領域13は、イオン注入の代わりに溝部を形成し、溝部内にp形半導体を埋め込むことによって形成してもよい。また、p形半導体領域13は、トレンチ50からイオン注入することによって形成してもよい。
【0047】
上述した本実施形態によれば、図1に示すように、p形半導体領域13がp形半導体領域15を挟んでゲート絶縁膜21と対向している。p形半導体領域13の導電形は、p形半導体領域15の導電形と同じである。また、p形半導体領域13のp形不純物濃度は、p形半導体領域15のp形不純物濃度よりも低い。p形半導体領域13を設けることにより、p形半導体領域15にかかる電界を抑えることができるため、p形半導体領域15を厚くせずに済む。一般に、p形半導体領域に囲まれたn形半導体領域の抵抗は、p形半導体領域の不純物濃度が低ければ、低抵抗になる。そのため、本実施形態においてもオン抵抗の増加を抑制できる。よって、オン抵抗の増加を抑制しつつゲート絶縁膜の信頼性を向上させることが可能となる。
【0048】
また、本実施形態では、図3に示すように、p形半導体領域15およびn形半導体領域16が、Y方向に交互に配置されている。これにより、p形半導体領域15が存在しない場合に比べて、ゲート絶縁膜21およびゲート電極20に対向する第3電流拡散領域14cの面積を削減することができる。つまり、ゲート電極20に対向するドレイン電極30の面積を減らすことに繋がるため、半導体装置1の帰還容量を低減することが可能となる。
【0049】
さらに、n形半導体領域16および第3電流拡散領域14cが、X方向に交互に配置されている。n形半導体領域16のn形不純物濃度は、ドリフト領域12のn形不純物濃度と同程度に低い一方で、第3電流拡散領域14cのn形不純物濃度は、n形半導体領域16のn形不純物濃度よりも高い。図2に示すように、n形半導体領域16は、ゲート絶縁膜21の下に設けられ、第3電流拡散領域14cは、ソース電極40の下方に設けられている。これにより、ゲート絶縁膜21の電界緩和と、オン抵抗の低減と、を両立することができる。
【0050】
(第1変形例)
図16は、第1変形例に係る半導体装置を垂直方向に切断した断面図である。図17は、第1変形例に係る半導体装置を、図16とは異なる箇所で垂直方向に切断した断面図である。図16および図17では、上述した第1実施形態に係る半導体装置1と同様の構成要素には、同じ符号を付し、詳細な説明を省略する。なお、図16に示す切断面は、図1に示す切断面と対応する。また、図17に示す切断面は、図2に示す切断面と対応する。
【0051】
上述した第1実施形態に係る半導体装置1では、図1および図2に示すようにp形半導体領域13が第1電流拡散領域14aで終端している。一方、本変形例に係る半導体装置1aでは、図16および図17に示すように、p形半導体領域13が、ドリフト領域12まで延びている。すなわち、本変形例に係る半導体装置1aは、スーパージャンクション(SJ)構造を有する。
【0052】
本変形例によれば、複数のp形半導体領域13が、n形半導体領域であるドリフト領域12内に、互いに間隔を置いて設けられている。そのため、ドリフト領域12内では、p形半導体領域13とn形半導体領域がX方向に交互に配置される。これにより、ドレイン電極30とソース電極40との間に電圧が印加されたときに、ドリフト領域12が均一な電界強度なる。そのため、本変形例では、第1実施形態に比べてドリフト領域12の抵抗を低減できる。その結果、第1実施形態に比べてオン抵抗を低減することが可能となる。
【0053】
(第2実施形態)
図18は、第2実施形態に係る半導体装置を垂直方向に切断した断面図である。図19は、第2実施形態に係る半導体装置を、図18とは異なる箇所で垂直方向に切断した断面図である。図18に示す切断面は、図1に示す切断面と対応する。また、図19に示す切断面は、図2に示す切断面と対応する。
【0054】
図18および図19では、上述した第1実施形態に係る半導体装置1と同様の構成要素には、同じ符号を付し、詳細な説明を省略する。また、本実施形態に係る半導体装置2の製造工程は、第1実施形態と同様である。そのため、本実施形態に係る半導体装置2の製造方法についても説明を省略する。
【0055】
図18に示すように、本実施形態に係る半導体装置2でも、p形半導体領域13が第1実施形態と同様に、p形半導体領域15を挟んでゲート絶縁膜21と対向している。その一方で、図18および図19に示すように、本実施形態に係る半導体装置2では、p形半導体領域15とゲート絶縁膜21との間における半導体層が、n形半導体領域16となっている。そのため、本実施形態に係る電流拡散領域14には、第3電流拡散領域14cが設けられていない点で第1実施形態と異なる。
【0056】
また、図19に示す断面では、p形半導体領域13がn形半導体領域16の下層に設けられている。そのため、このp形半導体領域13の厚さは、p形半導体領域15の下層に設けられたp形半導体領域13(図18参照)の厚さよりも大きくなっている。すなわち、本実施形態では、厚さが異なる2種類のp形半導体領域13が設けられている点でも第1実施形態と異なる。なお、図18に示すように、一部のゲート絶縁膜21の底面および側面には、p形半導体領域15がソース電極40の接地用に設けられている。
【0057】
本実施形態では、半導体装置2がオン状態の時に、n形半導体領域16がドレイン電極30からソース電極40に至る電流経路の一部となる。また、半導体装置2がオフ状態の時に、n形半導体領域16は空乏化してゲート絶縁膜21の電界を緩和する。本実施形態では、n形半導体領域16のn形不純物濃度は、ドリフト領域12のn形不純物濃度よりも低いことが望ましい。また、n形半導体領域16の厚さは、可能な限り薄いことが望ましい。
【0058】
上述した本実施形態によれば、図18に示すように、p形半導体領域13がp形半導体領域15を挟んでゲート絶縁膜21と対向している。そのため、第1実施形態と同様に、p形半導体領域15を必要以上に厚くしたり薄くしたりしなくても、オン抵抗の増加を抑制できる。よって、オン抵抗の増加を抑制しつつゲート絶縁膜の信頼性を向上させることが可能となる。
【0059】
また、本実施形態では、図18および図19に示すように、ゲート絶縁膜21の底面に、p形半導体領域15よりも薄いn形半導体領域16が設けられている。また、本実施形態でも、p形半導体領域13はゲート電極20に沿ってY方向に延びている。加えて、図18に示すように、ゲート電極20に直交するp形半導体領域15がソース電極40と接続されている。このような構造を有することによって、本実施形態に係る半導体装置2は、ゲート絶縁膜21の信頼性向上と、オン抵抗の低減とを両立することが可能となる。
【0060】
(第2変形例)
図20は、第2変形例に係る半導体装置を垂直方向に切断した断面図である。図21は、第2変形例に係る半導体装置を、図20とは異なる箇所で垂直方向に切断した断面図である。図20および図21では、上述した第2実施形態に係る半導体装置2と同様の構成要素には、同じ符号を付し、詳細な説明を省略する。なお、図20に示す切断面は、図18に示す切断面と対応する。また、図21に示す切断面は、図19に示す切断面と対応する。
【0061】
上述した第2実施形態に係る半導体装置2では、図18および図19に示すようにp形半導体領域13が第1電流拡散領域14aで終端している。一方、本変形例に係る半導体装置2aでは、図20および図21に示すように、p形半導体領域13が、ドリフト領域12まで延びている。すなわち、本変形例に係る半導体装置2aは、上述した第1変形例に係る半導体装置1aと同様にスーパージャンクション(SJ)構造を有する。
【0062】
したがって、本変形例においても、ドレイン電極30とソース電極40との間に電圧が印加されたときに、ドリフト領域12が均一な電界強度なる。そのため、本変形例では、第2実施形態に比べてドリフト領域12の抵抗を低減できる。その結果、第2実施形態に比べてオン抵抗を低減することが可能となる。
【0063】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0064】
1、1a、2、2a:半導体装置
12:ドリフト領域
13:p形半導体領域
15:p形半導体領域
16:n形半導体領域
14a:第1電流拡散領域
14b:第2電流拡散領域
14c:第3電流拡散領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
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