(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135391
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】回転電機の制御システム
(51)【国際特許分類】
H02P 29/028 20160101AFI20240927BHJP
【FI】
H02P29/028
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023046047
(22)【出願日】2023-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100139480
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100125575
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100175134
【弁理士】
【氏名又は名称】北 裕介
(74)【代理人】
【識別番号】100207859
【弁理士】
【氏名又は名称】塩谷 尚人
(72)【発明者】
【氏名】石川 凜太朗
【テーマコード(参考)】
5H501
【Fターム(参考)】
5H501AA20
5H501CC04
5H501EE08
5H501HB07
5H501JJ03
5H501LL22
5H501LL54
5H501MM09
5H501MM11
(57)【要約】
【課題】相電流センサの異常発生後において回転電機の駆動を継続することを可能とする。
【解決手段】回転電機システムは、回転電機10,20と、複数のスイッチのオンオフにより巻線の各相に電流を流すインバータ30,40とを備える。回転電機10,20は、各相に流れる相電流を検出する相電流センサ13,23を有し、インバータ30,40は、スイッチに流れる素子電流を検出する素子電流センサ34,44を有している。制御装置50,60は、相電流センサが異常であるか否かを判定する異常判定部と、相電流センサが異常であると判定された場合に、相電流センサの検出電流に代えて、素子電流センサの検出電流に基づいて回転電機の駆動を制御する制御部と、を備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多相の巻線(11,21)を有する回転電機(10,20)と、半導体スイッチング素子からなる複数のスイッチ(31,41)を有し当該スイッチのオンオフにより前記巻線の各相に電流を流すインバータ(30,40)と、を備える回転電機システムに適用され、
前記回転電機は、前記巻線の各相に流れる相電流を検出する相電流センサ(13,23)を有し、前記インバータは、前記スイッチに流れる素子電流を検出する素子電流センサ(34,44)を有しており、
前記相電流センサにより検出された相電流に基づいて前記回転電機の駆動を制御する制御装置(50,60)を備える制御システムであって、
前記制御装置は、
前記相電流センサが異常であるか否かを判定する異常判定部と、
前記相電流センサが異常であると判定された場合に、前記相電流センサの検出電流に代えて、前記素子電流センサの検出電流に基づいて前記回転電機の駆動を制御する制御部と、
を備える、回転電機の制御システム。
【請求項2】
前記異常判定部は、前記相電流センサの異常である第1異常と、前記回転電機において前記相電流センサ以外の異常である第2異常とのいずれが生じているかを判定するものであり、
前記制御部は、
前記第1異常が生じていると判定された場合に、前記相電流センサの検出電流に代えて、前記素子電流センサの検出電流に基づいて前記回転電機の駆動を制御し、
前記第2異常が生じていると判定された場合に、その第2異常が生じていると判定された前記回転電機の駆動を停止する、請求項1に記載の回転電機の制御システム。
【請求項3】
前記回転電機において、前記相電流センサにより検出された検出電流を目標電流に一致させるべく電流フィードバック制御が行われる制御システムであり、
前記異常判定部は、
前記相電流センサの検出電流と前記目標電流との差が所定値以上であり、かつ前記素子電流センサの検出電流と前記目標電流との差が所定値未満であることに基づいて、前記第1異常が生じている旨を判定し、
前記相電流センサの検出電流と前記目標電流との差が所定値以上であり、かつ前記素子電流センサの検出電流と前記目標電流との差が所定値以上であることに基づいて、前記第2異常が生じている旨を判定する、請求項2に記載の回転電機の制御システム。
【請求項4】
前記インバータは、前記素子電流センサによる検出電流が所定値よりも上昇したか否かを2値判定し、その判定結果に応じて前記スイッチを遮断させるスイッチ遮断回路(35,45)を有し、
前記素子電流センサの検出電流は、前記スイッチ遮断回路に入力されるとともに、A/D変換を含む信号処理を行う信号処理部(53,63)に入力される構成となっており、
前記制御部は、前記素子電流センサの検出電流を前記信号処理部を介して取得し、その検出電流に基づいて前記回転電機の駆動を制御する、請求項1に記載の回転電機の制御システム。
【請求項5】
前記相電流センサ及び前記素子電流センサのうち少なくとも前記相電流センサから検出電流が入力される第1制御装置(50)と、前記相電流センサ及び前記素子電流センサのうち少なくとも前記素子電流センサから検出電流が入力される第2制御装置(60)とを備える制御システムであって、
前記第1制御装置は、
前記相電流センサが異常であるか否かを判定する前記異常判定部と、
前記異常判定部により前記相電流センサが異常であると判定された場合に、その旨を示す異常情報を前記第2制御装置に出力する情報出力部と、を有し、
前記第2制御装置は、前記第1制御装置から前記異常情報を入力した場合に、前記制御部による前記回転電機の制御として、前記素子電流センサの検出電流に基づいて前記回転電機の駆動を制御する、請求項1~4のいずれか1項に記載の回転電機の制御システム。
【請求項6】
前記回転電機システムは、前記回転電機として、第1回転電機(10)と第2回転電機(20)とを有し、前記各回転電機にそれぞれ前記インバータが設けられており、前記第1回転電機には前記相電流センサとして第1相電流センサ(13)が設けられ、前記第2回転電機には前記相電流センサとして第2相電流センサ(23)が設けられており、
前記異常判定部は、前記第1回転電機及び前記第2回転電機の各々において、前記相電流センサの異常である第1異常と、前記回転電機において前記相電流センサ以外の異常である第2異常とのいずれが生じているかを判定するものであり、
前記制御部は、
前記第1回転電機及び前記第2回転電機のいずれかにおいて前記第1異常が生じていると判定された場合に、前記各回転電機において前記相電流センサの検出電流に代えて、前記素子電流センサの検出電流に基づいて前記回転電機の駆動を制御し、
前記第1回転電機及び前記第2回転電機のいずれかにおいて前記第2異常が生じていると判定された場合に、前記各回転電機のうち前記第2異常が生じていると判定された前記回転電機の駆動を停止する、請求項1~4のいずれか1項に記載の回転電機の制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機の制御システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
回転電機では、ステータ巻線の各相に流れる相電流が電流センサにより検出され、その検出電流に基づいて回転電機の駆動が制御される。また、従来、電流センサの異常を検出する技術が各種提案されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
回転電機において相電流センサの異常が生じた場合には、回転電機の駆動が停止されることが考えられる。この場合、例えば電気自動車の走行駆動源として回転電機が用いられている構成では、車両の走行が不可となる。この点、相電流センサの異常発生後にも回転電機の駆動を継続できる技術が望まれる。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、相電流センサの異常発生後において回転電機の駆動を継続することを可能とする回転電機の制御システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決すべく、本発明は、
多相の巻線(11,21)を有する回転電機(10,20)と、半導体スイッチング素子からなる複数のスイッチ(31,41)を有し当該スイッチのオンオフにより前記巻線の各相に電流を流すインバータ(30,40)と、を備える回転電機システムに適用され、
前記回転電機は、前記巻線の各相に流れる相電流を検出する相電流センサ(13,23)を有し、前記インバータは、前記スイッチに流れる素子電流を検出する素子電流センサ(34,44)を有しており、
前記相電流センサにより検出された相電流に基づいて前記回転電機の駆動を制御する制御装置(50,60)を備える制御システムであって、
前記制御装置は、
前記相電流センサが異常であるか否かを判定する異常判定部と、
前記相電流センサが異常であると判定された場合に、前記相電流センサの検出電流に代えて、前記素子電流センサの検出電流に基づいて前記回転電機の駆動を制御する制御部と、
を備えることを特徴とする。
【0007】
回転電機とインバータとを備える回転電機システムでは、回転電機において、巻線の各相に流れる相電流が相電流センサにより検出され、その検出電流に基づいて回転電機の駆動が制御される。また、インバータでは、スイッチ(スイッチング素子)に流れる素子電流が素子電流センサにより検出され、その検出電流に基づいて正側経路及び負側経路の短絡が検知される構成となっている。そして、かかる構成において、相電流センサが異常であると判定された場合に、相電流センサの検出電流に代えて、素子電流センサの検出電流に基づいて回転電機の駆動を制御するようにした。これにより、相電流センサの異常発生後において回転電機の駆動を継続させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態における回転電機システムの概略構成図。
【
図3】メイン制御装置及びサブ制御装置の機能を示す機能ブロック図。
【
図4】メイン制御装置による回転電機の制御処理を示すフローチャート。
【
図5】サブ制御装置による回転電機の制御処理を示すフローチャート。
【
図6】別例においてメイン制御装置及びサブ制御装置の機能を示す機能ブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態における回転電機システムを図面に基づいて説明する。
図1は、動力源として2つの回転電機を有する車載の回転電機システムの概略構成図である。
【0010】
本回転電機システムは、第1回転電機10及び第2回転電機20を備えており、回転電機10,20ごとにインバータ30,40が設けられている。各回転電機10,20は、それぞれ多相(例えば3相)のステータ巻線11,21(
図2参照)を有する交流式回転電機であり、力行機能と回生発電機能を有する。これら各回転電機10,20は、いずれも車両の走行動力源として用いられている。ただし、第1回転電機10が走行動力源として用いられ、第2回転電機20が発電機として用いられる構成であってもよい。
【0011】
第1回転電機10は、ロータの回転角を検出する回転角センサ12と、ステータ巻線に流れる各相の相電流を検出する相電流センサ13とを有している。相電流センサ13は、例えば3相(U相、V相、W相)の相電流のうち2相の相電流を検出するものであるとよい。ただし、3相の相電流を検出するものであってもよい。同様に、第2回転電機20は、ロータの回転角を検出する回転角センサ22と、ステータ巻線21に流れる各相の相電流を検出する相電流センサ23とを有している。なお、以下の説明では、第1回転電機10に設けられた回転角センサ12、相電流センサ13を「第1回転角センサ12、第1相電流センサ13」とも称し、第2回転電機20に設けられた回転角センサ22、相電流センサ23を「第2回転角センサ22、第2相電流センサ23」とも称する。
【0012】
インバータ30,40は、交流電力と直流電力とを変換する電力変換回路であり、インバータ30,40により各回転電機10,20に対する電力の入出力が調整される。インバータ30は、メイン制御装置50からの駆動指令に基づいて駆動可能となっている一方、サブ制御装置60からの駆動指令に基づいて駆動可能となっている。また、インバータ40も同様に、メイン制御装置50からの駆動指令に基づいて駆動可能となっているとともに、サブ制御装置60からの駆動指令に基づいて駆動可能となっている。
【0013】
図2にインバータ30,40の構成を示す。各インバータ30,40は、直流電源である高圧バッテリ80に接続されている。
【0014】
インバータ30は、相ごとに、上アーム及び下アームに設けられた各スイッチ31の直列接続体を備えている。本実施形態では、各スイッチ31として、電圧制御型の半導体スイッチング素子が用いられており、具体的にはMOSFETやIGBTなどが用いられている。各スイッチ31には、フリーホイールダイオードとしてのダイオード32が逆並列に接続されている。各スイッチ31にはそれぞれ駆動回路33が設けられており、制御装置50,60から各駆動回路33に駆動指令が入力されると、その駆動指令に応じて、相ごとに上下アームの各スイッチ31が交互にオンオフされる。
【0015】
また、各スイッチ31には、スイッチング素子を流れる電流を検出する素子電流センサ34が設けられており、素子電流センサ34の検出信号は駆動回路33に入力される。素子電流センサ34は、例えばスイッチ31のセンス端子に流れるセンス電流を検出するものであるとよい。駆動回路33には、上下アームの短絡により過電流が流れた時にスイッチ遮断を行うスイッチ遮断回路35が設けられている。スイッチ遮断回路35は、素子電流センサ34による検出電流が所定値よりも上昇したか否かを2値判定し、その判定結果に応じてスイッチ31(スイッチング素子)を遮断させるハード回路であり、例えば比較器等を有する構成となっている。また、素子電流センサ34の検出信号は駆動回路33を介して各制御装置50,60に入力される。
【0016】
インバータ40は、インバータ30と同様の構成を有しており、以下に略述する。インバータ40は、相ごとに、上アーム及び下アームに設けられた各スイッチ41の直列接続体を備えており、各スイッチ41にはダイオード42が逆並列に接続されている。各スイッチ41にはそれぞれ駆動回路43が設けられている。また、各スイッチ41には、スイッチング素子を流れる電流を検出する素子電流センサ44が設けられている。駆動回路43には、上下アームの短絡により過電流が流れた時にスイッチ遮断を行うスイッチ遮断回路45が設けられている。なお以下の説明では、インバータ30の素子電流センサ34を「第1素子電流センサ34」、インバータ40の素子電流センサ44を「第2素子電流センサ44」とも称する。
【0017】
図1の説明に戻る。メイン制御装置50及びサブ制御装置60は、2つの回転電機10,20を制御する回転電機制御装置であり、車両運転状態下において各制御装置50,60よりも上位となる上位制御装置70からの指令信号に基づいて、各回転電機10,20の駆動を制御する。メイン制御装置50及びサブ制御装置60は、通信線71を通じて相互に各種情報の受け渡しが可能となっている。メイン制御装置50は、通常時において2つの回転電機10,20の制御を行う制御装置であり、サブ制御装置60は、メイン制御装置50による回転電機10,20の制御実行中において何らかの異常が生じた場合に、メイン制御装置50に代わって、回転電機10,20の制御を代行する制御装置である。サブ制御装置60により、車両における退避走行時の制御が行われる。メイン制御装置50が「第1制御装置」に相当し、サブ制御装置60が「第2制御装置」に相当する。以下に、各制御装置50,60の構成を詳しく説明する。
【0018】
メイン制御装置50は、CPUや各種メモリを有するマイクロコンピュータを主体として構成された電子制御装置であり、各種センサの検出信号や上位制御装置70からの指令信号に基づいて、各回転電機10,20の駆動を制御すべく、各インバータ30,40に対して駆動指令を出力する。
【0019】
メイン制御装置50は、第1回転電機10の駆動を制御する第1制御部51と、第2回転電機20の駆動を制御する第2制御部52とを有している。これら各制御部51,52は、各回転電機10,20の制御量(例えばトルク)をそれぞれ指令値に制御すべく、インバータ30,40の各スイッチ31のスイッチング制御を実施する。また、メイン制御装置50は、相電流センサ13,23や素子電流センサ34,44の検出電流を入力し、A/D変換等の信号処理を行う信号処理部53を有している。
【0020】
図3を用いて、メイン制御装置50における第1制御部51及び第2制御部52の機能を具体的に説明する。
【0021】
第1制御部51は、目標電流算出部51aと、相電流取得部51bと、素子電流取得部51cと、Duty算出部51dと、異常判定部51eと、情報出力部51fとを備えている。目標電流算出部51aは、上位制御装置70から受信した第1回転電機10の指令トルク(第1指令トルク)と、第1回転角センサ12により検出された第1回転電機10の回転角θ1とに基づいて、各相に流れる相電流の目標値(目標電流)を算出する。相電流取得部51bは、第1相電流センサ13により検出された検出電流を、第1回転電機10に実際に流れた相電流として取得する。素子電流取得部51cは、第1素子電流センサ34により検出された検出電流を素子電流として取得する。相電流取得部51b及び素子電流取得部51cは、
図1に示す信号処理部53を介して相電流や素子電流を取得する。各取得部51b,51cは、相ごとに相電流や素子電流を取得するものであるとよい。
【0022】
Duty算出部51dは、目標電流算出部51aにより算出された目標電流と、相電流取得部51bにより取得された相電流とに基づいて、インバータ30の各スイッチ31をPWM駆動するためのデューティ比を算出するとともに、そのデューティ比によりスイッチ駆動のための駆動信号を生成する。各スイッチ31の駆動信号は各相において上下のアームごとに生成され、インバータ30の各駆動回路33に出力される。この駆動信号により、インバータ30において各スイッチ31のスイッチング制御が行われる。これにより、第1回転電機10において、第1相電流センサ13により検出された検出電流を目標電流に一致させるべく電流フィードバック制御が行われる。
【0023】
異常判定部51eは、第1相電流センサ13に異常が生じているか否かを判定する。本実施形態では特に、異常判定部51eは、第1相電流センサ13の検出電流が異常値である場合、すなわち、第1相電流センサ13の検出電流が目標電流に対して所定以上乖離している場合に、その原因が、第1相電流センサ13の異常に起因するものであるか、第1回転電機10において第1相電流センサ13以外の異常に起因するものであるかを特定する。
【0024】
具体的には、異常判定部51eは、第1相電流センサ13の検出電流と第1回転電機10の目標電流との差が所定値以上であり、かつ第1素子電流センサ34の検出電流と第1回転電機10の目標電流との差が所定値未満であることに基づいて、第1回転電機10において第1相電流センサ13の異常であるセンサ異常が生じていると判定する。また、第1相電流センサ13の検出電流と第1回転電機10の目標電流との差が所定値以上であり、かつ第1素子電流センサ34の検出電流と第1回転電機10の目標電流との差が所定値以上である場合に、第1回転電機10において相電流センサ以外の異常である回転電機異常が生じていると判定する。センサ異常としては、センサ信号線の断線や地絡等が考えられる。また、回転電機異常としては、ステータ巻線やロータ軸受の故障等が考えられる。なお、センサ異常が「第1異常」に相当し、回転電機異常が「第2異常」に相当する。
【0025】
情報出力部51fは、異常判定部51eによりセンサ異常及び回転電機異常のいずれかが生じていると判定された場合に、その異常発生の旨を示す異常情報をサブ制御装置60に出力する。
【0026】
一方、第2制御部52は、第1制御部51と同様の構成を有しており、目標電流算出部52aと、相電流取得部52bと、素子電流取得部52cと、Duty算出部52dと、異常判定部52eと、情報出力部52fとを備えている。
【0027】
目標電流算出部52aは、上位制御装置70から受信した第2回転電機20の指令トルク(第2指令トルク)と、第2回転角センサ22により検出された第2回転電機20の回転角θ2とに基づいて、各相に流れる相電流の目標値(目標電流)を算出する。相電流取得部52bは、第2相電流センサ23により検出された検出電流を実際の相電流として取得する。素子電流取得部52cは、第2素子電流センサ44により検出された検出電流を素子電流として取得する。
【0028】
Duty算出部52dは、目標電流算出部52aにより算出された目標電流と、相電流取得部52bにより取得された相電流とに基づいて、インバータ40の各スイッチ41をPWM駆動するためのデューティ比を算出するとともに、そのデューティ比によりスイッチ駆動のための駆動信号を生成する。これにより、第2回転電機20において、第2相電流センサ23により検出された検出電流を目標電流に一致させるべく電流フィードバック制御が行われる。
【0029】
異常判定部52eは、第2相電流センサ23に異常が生じているか否かを判定する。本実施形態では特に、異常判定部52eは、第2相電流センサ23の検出電流が異常値である場合、すなわち、第2相電流センサ23の検出電流が目標電流に対して所定以上乖離している場合に、その原因が、第2相電流センサ23の異常に起因するものであるか、第2回転電機20において第2相電流センサ23以外の異常に起因するものであるかを特定する。
【0030】
具体的には、異常判定部52eは、第2相電流センサ23の検出電流と第2回転電機20の目標電流との差が所定値以上であり、かつ第2素子電流センサ44の検出電流と第2回転電機20の目標電流との差が所定値未満であることに基づいて、第2回転電機20において第2相電流センサ23の異常であるセンサ異常(第1異常)が生じていると判定する。また、第2相電流センサ23の検出電流と第2回転電機20の目標電流との差が所定値以上であり、かつ第2素子電流センサ44の検出電流と第2回転電機20の目標電流との差が所定値以上である場合に、第2回転電機20において相電流センサ以外の異常である回転電機異常(第2異常)が生じていると判定する。
【0031】
情報出力部52fは、異常判定部52eによりセンサ異常及び回転電機異常のいずれかが生じていると判定された場合に、その異常発生の旨を示す異常情報をサブ制御装置60に出力する。
【0032】
一方、
図1に示すように、サブ制御装置60は、第1回転電機10の駆動を制御する第1制御部61と、第2回転電機20の駆動を制御する第2制御部62とを有している。これら各制御部61,62は、メイン制御装置50の第1制御部51及び第2制御部52の代わりに各回転電機10,20の駆動を制御するものである。また、サブ制御装置60は、素子電流センサ34,44の検出電流を入力し、A/D変換等の信号処理を行う信号処理部63を有している。
【0033】
サブ制御装置60は、メイン制御装置50において回転電機異常又はセンサ異常が生じた場合に、メイン制御装置50に代わって各回転電機10,20の駆動を制御する。サブ制御装置60では、相電流センサ13,23の検出電流に代えて、素子電流センサ34,44の検出電流に基づいて回転電機10,20の制御が実施される。サブ制御装置60は、例えばASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウエアで構成されている。
【0034】
図3を用いて、サブ制御装置60における第1制御部61及び第2制御部62の機能を具体的に説明する。
【0035】
第1制御部61は、目標電流算出部61aと、素子電流取得部61bと、Duty算出部61cとを備えている。目標電流算出部61aは、上位制御装置70から受信した第1指令トルクと、第1回転電機10の回転角θ1とに基づいて、各相に流れる相電流の目標値(目標電流)を算出する。素子電流取得部61bは、第1素子電流センサ34により検出された検出電流を素子電流として取得する。
【0036】
Duty算出部61cは、目標電流算出部61aにより算出された目標電流と、素子電流取得部61bにより取得された素子電流とに基づいて、インバータ30の各スイッチ31をPWM駆動するためのデューティ比を算出するとともに、そのデューティ比によりスイッチ駆動のための駆動信号を生成する。各スイッチ31の駆動信号は各相において上下のアームごとに生成され、インバータ30の各駆動回路33に出力される。この駆動信号により、インバータ30において各スイッチ31のスイッチング制御が行われる。これにより、第1回転電機10において、第1素子電流センサ34により検出された検出電流を目標電流に一致させるべく電流フィードバック制御が行われる。
【0037】
一方、第2制御部62は、第1制御部61と同様の構成を有しており、目標電流算出部62aと、素子電流取得部62bと、Duty算出部62cとを備えている。
【0038】
目標電流算出部62aは、上位制御装置70から受信した第2指令トルクと、第2回転電機20の回転角θ2とに基づいて、各相に流れる相電流の目標値(目標電流)を算出する。素子電流取得部62bは、第2素子電流センサ44により検出された検出電流を素子電流として取得する。
【0039】
Duty算出部62cは、目標電流算出部62aにより算出された目標電流と、素子電流取得部62bにより取得された素子電流とに基づいて、インバータ40の各スイッチ41をPWM駆動するためのデューティ比を算出するとともに、そのデューティ比によりスイッチ駆動のための駆動信号を生成する。これにより、第2回転電機20において、第2相電流センサ23により検出された検出電流を目標電流に一致させるべく電流フィードバック制御が行われる。
【0040】
本実施形態では、メイン制御装置50において、いずれかの制御部51,52の異常判定部51e,52eによりセンサ異常又は回転電機異常が生じていると判定された場合には、メイン制御装置50に代わって、サブ制御装置60により各回転電機10,20の駆動が制御される。このとき、サブ制御装置60では、相電流センサ13,23の検出電流に代えて、素子電流センサ34,44の検出電流に基づいて回転電機10,20の制御が行われる。また特に、回転電機異常が生じていると判定された場合には、各回転電機10,20のうち回転電機異常が生じていると判定された回転電機の駆動が停止され、一方の回転電機のみの制御が行われる。
【0041】
図4は、メイン制御装置50により実行される各回転電機10,20の制御処理を示すフローチャートであり、本処理は、所定周期で繰り返し実行される。本実施形態では、
図4の処理により、上述した第1制御部51及び第2制御部52の各機能が実現されるものとなっている。なお、メイン制御装置50による各回転電機10,20の制御は同様のものであればよく、ここでは第1回転電機10の制御について説明する。
【0042】
図4において、ステップS11では、上位制御装置70から受信した指令トルクと、第1回転角センサ12により検出された第1回転電機10の回転角θ1とに基づいて、第1回転電機10の目標電流を算出する。また、ステップS12では、第1相電流センサ13により検出された相電流を取得し、続くステップS13では、第1素子電流センサ34により検出された素子電流を取得する。
【0043】
その後、ステップS14では、第1回転電機10の異常判定を実施する。この異常判定は、異常判定部51eの機能として説明した手法により行われればよい。このとき、第1相電流センサ13の異常であるセンサ異常と、第1回転電機10において第1相電流センサ以外の異常である回転電機異常とのいずれかが生じているかが判定される。具体的には、相電流と目標電流との差が所定値以上であり、かつ素子電流と目標電流との差が所定値未満であれば、センサ異常が生じていると判定される。また、相電流と目標電流との差が所定値以上であり、かつ素子電流と目標電流との差が所定値以上であれば、回転電機異常が生じていると判定される。
【0044】
補足すれば、相電流と目標電流と素子電流とのうち、目標電流と素子電流とが同一又は略同一であり、かつ相電流のみが乖離していれば、センサ異常(第1相電流センサ13の異常)が生じていると判定される。また、相電流と素子電流とが同一又は略同一であり、かつ目標電流のみが乖離していれば、回転電機異常が生じていると判定される。
【0045】
その後、ステップS15では、ステップS14の判定結果が、センサ異常を示すものであるか否かを判定し、続くステップS16では、ステップS14の判定結果が、回転電機異常を示すものであるか否かを判定する。そして、ステップS15,S16が共に否定されればステップS17に進む。ステップS17では、通常処理により第1回転電機10の駆動を制御する。この場合、目標電流と各相の相電流とに基づいて、第1回転電機10の相電流がフィードバック制御される。
【0046】
ステップS15が肯定された場合はステップS18に進み、ステップS16が肯定された場合はステップS19に進む。ステップS18では、センサ異常が生じていることを示す異常情報をサブ制御装置60に送信する。また、ステップS19では、回転電機異常が生じていることを示す異常情報をサブ制御装置60に送信する。
【0047】
その後、ステップS20では、メイン制御装置50による第1回転電機10の制御が停止される。
【0048】
図5は、サブ制御装置60により実行される各回転電機10,20の制御処理を示すフローチャートであり、本処理は、所定周期で繰り返し実行される。本実施形態では、
図5の処理により、上述した第1制御部61及び第2制御部62の各機能が実現されるものとなっている。なお、サブ制御装置60による各回転電機10,20の制御は同様のものであればよく、ここでは第1回転電機10の制御について説明する。
【0049】
図5において、ステップS21では、メイン制御装置50から異常情報を受信したか否かを判定する。異常情報を受信していなければ、そのまま本処理を終了し、異常情報を受信していれば、後続のステップS22に進む。ステップS22では、異常情報が、第1回転電機10の回転電機異常を示すものであるか否かを判定する。そして、ステップS22が肯定されればそのまま本処理を終了し、ステップS22が否定されればステップS23に進む。この場合、第1回転電機10で回転電機異常が生じている状況下では、サブ制御装置60による第1回転電機10の制御が行われず、第1回転電機10は停止状態となる。
【0050】
ステップS23では、上位制御装置70から受信した指令トルクと、第1回転角センサ12により検出された第1回転電機10の回転角θ1とに基づいて、第1回転電機10の目標電流を算出する。また、ステップS24では、第1素子電流センサ34により検出された素子電流を取得する。その後、ステップS25では、第1素子電流センサ34により検出された素子電流を用いて、第1回転電機10の駆動を制御する。この場合、目標電流と相ごとの素子電流とに基づいて、第1回転電機10の相電流がフィードバック制御される。
【0051】
なお、サブ制御装置60による第2回転電機20の制御では、ステップS22において、異常情報が、第2回転電機20の回転電機異常を示すものであるか否かを判定し、肯定された場合にそのまま本処理を終了するとよい。これにより、第2回転電機20で回転電機異常が生じている状況下では、サブ制御装置60による第2回転電機20の制御が行われず、第2回転電機20は停止状態となる。要するに、上記ステップS22によれば、異常情報が、いずれか一方の回転電機の異常を示すものである場合に、他方の回転電機のみが駆動されるようになっている。
【0052】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の優れた効果が得られる。
【0053】
各回転電機10,20の相電流センサ13,23が異常であると判定された場合に、相電流センサ13,23の検出電流に代えて、インバータ30,40の素子電流センサ34,44の検出電流に基づいて回転電機10,20を制御するようにした。これにより、相電流センサ13,23の異常発生後において回転電機10,20の駆動を継続させることができる。
【0054】
相電流センサ13,23の検出電流が異常値である場合には、回転電機10,20において相電流センサ13,23が異常である場合と、相電流センサ以外が異常である場合とが考えられる。この点を考慮し、相電流センサ13,23の異常である第1異常と、回転電機10,20において相電流センサ以外の異常である第2異常とのいずれが生じているかを判定するようにした。そして、第1異常が生じていると判定された場合に、相電流センサ13,23の検出電流に代えて、素子電流センサ34,44の検出電流に基づいて回転電機10,20の駆動を制御し、第2異常が生じていると判定された場合に、その第2異常が生じていると判定された回転電機の駆動を停止するようにした。この構成によれば、異常発生の形態に応じて適正な対応が可能となっている。
【0055】
相電流センサ13,23の検出電流と回転電機10,20の目標電流との差が所定値以上であり、かつ素子電流センサ34,44の検出電流と回転電機10,20の目標電流との差が所定値未満であることに基づいて、第1異常(相電流センサの異常)が生じている旨を判定するようにした。また、相電流センサ13,23の検出電流と回転電機10,20の目標電流との差が所定値以上であり、かつ素子電流センサ34,44の検出電流と回転電機10,20の目標電流との差が所定値以上であることに基づいて、第2異常(回転電機異常)が生じている旨を判定するようにした。これにより、相電流センサ13,23の検出電流が異常値である場合において、相電流センサ自体が異常である場合と、相電流センサ以外の回転電機異常が生じている場合とを適正に判別することができる。
【0056】
インバータ30,40のスイッチ遮断回路35,45では、素子電流センサ34,44の検出電流の2値判定(所定値より大きいか小さいかの判定)により過電流判定が行われ、その判定結果に応じてスイッチ遮断が行われる。また、相電流センサ13,23の異常時には、インバータ30,40での過電流判定(2値判定)に用いられる素子電流を流用することで、相電流センサ13,23の検出電流を用いずとも、回転電機10,20の駆動を継続させることができる。この場合、回転電機システムにおける既存構成を用いつつ、回転電機10,20の駆動を好適に行わせることができる。
【0057】
メイン制御装置50が、相電流センサ13,23が異常であるか否かを判定し、相電流センサ13,23の異常発生時にその旨を示す異常情報をサブ制御装置60に出力するようにした。また、サブ制御装置60が、メイン制御装置50から異常情報を入力した場合に、素子電流センサ34,44の検出電流に基づいて回転電機10,20を制御するようにした。この場合、回転電機10,20の制御系統が2系統で設けられ、正常時と異常時とで制御系統の切り替えが行われることにより、異常発生後において回転電機10,20の駆動を滞ることなく継続できる。
【0058】
各回転電機10,20のいずれかにおいてセンサ異常が生じている場合に、相電流に代えて素子電流による回転電機10,20の駆動制御を可能とするとともに、各回転電機10,20のいずれかにおいて回転電機異常が生じている場合に、回転電機異常が生じていない側での1モータ走行を可能とした。これにより、回転電機システムでの異常発生時において、2つの回転電機10,20のうち一方又は両方を用いた退避走行を適切に実施することができる。
【0059】
(他の実施形態)
上記実施形態を例えば次のように変更してもよい。
【0060】
・上記実施形態では、
図5に示すサブ制御装置60の制御処理において、メイン制御装置50から異常情報を受信したこと(ステップS21が肯定されること)を条件に、目標電流と素子電流とに基づいて各回転電機10,20の制御量を算出する構成としたが、これを変更してもよい。サブ制御装置60が、異常情報の受信の有無にかかわらず、目標電流と素子電流とに基づいて各回転電機10,20の制御量を算出する構成であってもよい。これにより、メイン制御装置50の制御中における異常発生時において、いち早くかつ円滑にサブ制御装置60の制御への切り替えを行わせることができる。
【0061】
・メイン制御装置50は、相電流センサ及び素子電流センサのうち少なくとも相電流センサから検出電流が入力されるものであればよい。メイン制御装置50に対して、相電流センサ及び素子電流センサのうち相電流センサのみから検出電流が入力される場合には、メイン制御装置50において、例えば相電流センサの電流検出値が予め定めた所定範囲内に入っていないことに基づいて、相電流センサが異常であることが判定されるとよい。
【0062】
・サブ制御装置60は、メイン制御装置50と同様に、相電流センサ及び素子電流センサの両方から検出電流が入力されるものであってもよい。この場合、サブ制御装置60は、相電流センサが異常になっている回転電機では相電流センサの検出電流を制御に使用せず、相電流センサが正常である回転電機では相電流センサの検出電流を制御に使用するものであってもよい。
【0063】
・上記実施形態では、回転電機システムとして、第1回転電機10と第2回転電機20とを備える構成としたが、これを変更してもよい。例えば、回転電機システムは、1つの回転電機を備えるものであってもよい。
【0064】
図6は、1つの回転電機10を有する回転電機システムについて各制御装置50,60の機能を示す図である。メイン制御装置50は、目標電流算出部51aと、相電流取得部51bと、素子電流取得部51cと、Duty算出部51dと、異常判定部51eと、情報出力部51fとを備えている。これら各部は
図3で説明したものと同じ機能を有しており、以下には簡単に説明する。目標電流算出部51aは、上位制御装置70から受信した回転電機10の指令トルクと、回転角センサ12により検出された回転電機10の回転角θとに基づいて、各相に流れる相電流の目標値(目標電流)を算出する。相電流取得部51bは、相電流センサ13により検出された検出電流を、回転電機10に実際に流れた相電流として取得する。素子電流取得部51cは、素子電流センサ34により検出された検出電流を素子電流として取得する。Duty算出部51dは、目標電流と相電流とに基づいて、インバータ30のスイッチ駆動のための駆動信号を生成する。
【0065】
異常判定部51eは、相電流センサ13に異常が生じているか否かを判定する。具体的には、異常判定部51eは、目標電流と相電流と素子電流とに基づいて、相電流センサ13の異常であるセンサ異常が生じているか否かを判定するとともに、相電流センサ以外の異常である回転電機異常が生じているか否かを判定する。情報出力部51fは、異常判定部51eによりセンサ異常及び回転電機異常のいずれかが生じていると判定された場合に、その異常発生の旨を示す異常情報をサブ制御装置60に出力する。
【0066】
一方、サブ制御装置60は、目標電流算出部61aと、素子電流取得部61bと、Duty算出部61cとを備えている。これら各部は
図3で説明したものと同じ機能を有しており、以下には簡単に説明する。目標電流算出部61aは、上位制御装置70から受信した指令トルクと、回転電機10の回転角θとに基づいて目標電流を算出する。素子電流取得部61bは、素子電流センサ34により検出された検出電流を素子電流として取得する。Duty算出部61cは、目標電流と素子電流とに基づいて、インバータ30のスイッチ駆動のための駆動信号を生成する。
【0067】
上記構成では、メイン制御装置50の異常判定部51eによりセンサ異常又は回転電機異常が生じていると判定された場合に、メイン制御装置50に代わって、サブ制御装置60により回転電機10の駆動が制御される。サブ制御装置60では、相電流センサ13の検出電流に代えて、素子電流センサ34の検出電流に基づいて回転電機10の制御が行われる。この場合、センサ異常が生じている状況下では、回転電機10の駆動により車両の退避走行が行われ、回転電機異常が生じている状況下では、回転電機10の駆動が停止される。
【0068】
・上記実施形態では、回転電機の制御システムとして、メイン制御装置50及びサブ制御装置60を備える構成としたが、これを変更し、単一の制御装置を備える構成であってもよい。この場合、単一の制御装置により異常判定部及び制御部が構成される。制御装置は、相電流センサが異常であるか否かを判定し、相電流センサが異常であると判定された場合に、相電流センサの検出電流に代えて、素子電流センサの検出電流に基づいて回転電機を制御する。
【0069】
・本発明は、電動車両以外に、飛行体や船舶等、他の移動体に適用されるものであってもよい。また、定置式のシステムに適用されるものであってもよい。
【0070】
上述の実施形態から抽出される技術思想を以下に記載する。
[構成1]
多相の巻線(11,21)を有する回転電機(10,20)と、半導体スイッチング素子からなる複数のスイッチ(31,41)を有し当該スイッチのオンオフにより前記巻線の各相に電流を流すインバータ(30,40)と、を備える回転電機システムに適用され、
前記回転電機は、前記巻線の各相に流れる相電流を検出する相電流センサ(13,23)を有し、前記インバータは、前記スイッチに流れる素子電流を検出する素子電流センサ(34,44)を有しており、
前記相電流センサにより検出された相電流に基づいて前記回転電機の駆動を制御する制御装置(50,60)を備える制御システムであって、
前記制御装置は、
前記相電流センサが異常であるか否かを判定する異常判定部と、
前記相電流センサが異常であると判定された場合に、前記相電流センサの検出電流に代えて、前記素子電流センサの検出電流に基づいて前記回転電機の駆動を制御する制御部と、
を備える、回転電機の制御システム。
[構成2]
前記異常判定部は、前記相電流センサの異常である第1異常と、前記回転電機において前記相電流センサ以外の異常である第2異常とのいずれが生じているかを判定するものであり、
前記制御部は、
前記第1異常が生じていると判定された場合に、前記相電流センサの検出電流に代えて、前記素子電流センサの検出電流に基づいて前記回転電機の駆動を制御し、
前記第2異常が生じていると判定された場合に、その第2異常が生じていると判定された前記回転電機の駆動を停止する、構成1に記載の回転電機の制御システム。
[構成3]
前記回転電機において、前記相電流センサにより検出された検出電流を目標電流に一致させるべく電流フィードバック制御が行われる制御システムであり、
前記異常判定部は、
前記相電流センサの検出電流と前記目標電流との差が所定値以上であり、かつ前記素子電流センサの検出電流と前記目標電流との差が所定値未満であることに基づいて、前記第1異常が生じている旨を判定し、
前記相電流センサの検出電流と前記目標電流との差が所定値以上であり、かつ前記素子電流センサの検出電流と前記目標電流との差が所定値以上であることに基づいて、前記第2異常が生じている旨を判定する、構成2に記載の回転電機の制御システム。
[構成4]
前記インバータは、前記素子電流センサによる検出電流が所定値よりも上昇したか否かを2値判定し、その判定結果に応じて前記スイッチを遮断させるスイッチ遮断回路(35,45)を有し、
前記素子電流センサの検出電流は、前記スイッチ遮断回路に入力されるとともに、A/D変換を含む信号処理を行う信号処理部(53,63)に入力される構成となっており、
前記制御部は、前記素子電流センサの検出電流を前記信号処理部を介して取得し、その検出電流に基づいて前記回転電機の駆動を制御する、構成1~3のいずれか1つに記載の回転電機の制御システム。
[構成5]
前記相電流センサ及び前記素子電流センサのうち少なくとも前記相電流センサから検出電流が入力される第1制御装置(50)と、前記相電流センサ及び前記素子電流センサのうち少なくとも前記素子電流センサから検出電流が入力される第2制御装置(60)とを備える制御システムであって、
前記第1制御装置は、
前記相電流センサが異常であるか否かを判定する前記異常判定部と、
前記異常判定部により前記相電流センサが異常であると判定された場合に、その旨を示す異常情報を前記第2制御装置に出力する情報出力部と、を有し、
前記第2制御装置は、前記第1制御装置から前記異常情報を入力した場合に、前記制御部による前記回転電機の制御として、前記素子電流センサの検出電流に基づいて前記回転電機の駆動を制御する、構成1~4のいずれか1つに記載の回転電機の制御システム。
[構成6]
前記回転電機システムは、前記回転電機として、第1回転電機(10)と第2回転電機(20)とを有し、前記各回転電機にそれぞれ前記インバータが設けられており、前記第1回転電機には前記相電流センサとして第1相電流センサ(13)が設けられ、前記第2回転電機には前記相電流センサとして第2相電流センサ(23)が設けられており、
前記異常判定部は、前記第1回転電機及び前記第2回転電機の各々において、前記相電流センサの異常である第1異常と、前記回転電機において前記相電流センサ以外の異常である第2異常とのいずれが生じているかを判定するものであり、
前記制御部は、
前記第1回転電機及び前記第2回転電機のいずれかにおいて前記第1異常が生じていると判定された場合に、前記各回転電機において前記相電流センサの検出電流に代えて、前記素子電流センサの検出電流に基づいて前記回転電機の駆動を制御し、
前記第1回転電機及び前記第2回転電機のいずれかにおいて前記第2異常が生じていると判定された場合に、前記各回転電機のうち前記第2異常が生じていると判定された前記回転電機の駆動を停止する、構成1~5のいずれか1つに記載の回転電機の制御システム。
【符号の説明】
【0071】
10,20…回転電機、11,21…ステータ巻線、13,23…相電流センサ、30,40…インバータ、34,44…素子電流センサ、50…第1制御装置、60…第2制御装置。