(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135396
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】生検針
(51)【国際特許分類】
A61B 10/02 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
A61B10/02 110J
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023046053
(22)【出願日】2023-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】592148993
【氏名又は名称】東郷メディキット株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177220
【弁理士】
【氏名又は名称】小木 智彦
(72)【発明者】
【氏名】柴田 嵩大
(57)【要約】
【課題】常に正常に動作可能で、かつ、生体の組織の一部を容易かつ確実に切り取ることが可能な生検針をコンパクト軽量に提供する。
【解決手段】生検針は、外針を発射する発射機構を含んでいる。発射機構は、内針の基端部を保持するとともに、長手方向にスライド可能なプランジャと、プランジャの長手方向前方に当該プランジャと対向して配置固定され、左右方向の動き(矢印ロ,ハ,ニ,ホ,ト,チを参照)で後述するハブ6に対する係合と係合解除とを行うロック部材5と、外針の基端部を保持するとともに、長手方向に移動可能なハブ6と、ハブ6を先端方向に付勢する弾性体と、を備えている。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端側の外周面に切り欠き部を有する内針と、前記内針が同軸状に移動可能に挿入された中空状の外針と、を備え、前記内針の先端側を前記外針の先端から突出させて生体の組織内に刺入した後、前記外針を前記内針の先端側に移動させて前記内針の前記切り欠き部内に前記組織の一部を取り込んで採取する生検針であって、
前記生検針は、前記外針を発射する発射機構を含み、
前記発射機構は、
前記内針の基端部を保持するとともに、長手方向にスライド可能なプランジャと、
前記プランジャの長手方向前方に当該プランジャと対向して配置固定され、左右方向の動きで後記ハブに対する係合と係合解除とを行うロック部材と、
前記外針の基端部を保持するとともに、長手方向に移動可能なハブと、
前記ハブを先端方向に付勢する弾性体と、を備え、
前記プランジャを基端側へ引くことで、前記ハブが基端側に移動し、前記ロック部材の左右方向の動きで当該ロック部材が前記ハブに対して係合して、前記ハブが前記外針の発射を規制するロック位置に位置決めされ、
前記外針の発射が規制された状態から、前記プランジャを先端側へ押すことで、前記ロック部材が左右方向に動いて、当該ロック部材が前記ハブに対して係合解除され、前記弾性体の付勢力により、前記ハブを介して前記外針が前記内針の先端側へ発射されることを特徴とする生検針。
【請求項2】
前記プランジャは、先端が平面視V字形状に切り欠かれた先端V字形状部を有し、
前記ロック部材は、基端側に延びる左右一対の脚部と、前記左右一対の脚部の外縁からそれぞれ左右方向外方に突出した規制部と、を有する弾性材からなり、
前記ハブは、前記プランジャが長手方向にスライド可能な溝と、前記溝の左右の縁辺からそれぞれ左右方向内方に突出した突起と、を有し、
前記プランジャを基端側へ引くことで、前記ハブが基端側に移動し、当該ハブの前記突起が前記ロック部材の前記規制部を乗り越えて係合して、前記ハブが前記外針の発射を規制するロック位置に位置決めされ、
前記外針の発射が規制された状態から、前記プランジャを先端側へ押すことで、前記プランジャの前記先端V字形状部によって前記ロック部材の前記左右一対の脚部が左右方向内方に閉じられ、前記ハブの前記突起が前記ロック部材の前記規制部から外れて係合解除され、前記弾性体の付勢力により、前記ハブを介して前記外針が前記内針の先端側へ発射される、請求項1に記載の生検針。
【請求項3】
前記ロック部材の前記規制部の先端側の面は、前記脚部の外縁からの左右方向の距離が基端側に向かうにつれて長くなる第1の傾斜面を有し、
前記ハブの前記突起の基端側の面は、前記溝の縁辺からの左右方向の距離が先端側に向かうにつれて長くなる第2の傾斜面を有する、請求項2に記載の生検針。
【請求項4】
前記ロック部材の前記規制部の基端側の面は、左右方向に延びる第1の鉛直面を有し、
前記ハブの前記突起の先端側の面は、左右方向に延びる第2の鉛直面を有する、請求項2に記載の生検針。
【請求項5】
前記ハブの前記突起は、基端側の第1突起対と、先端側の第2突起対と、からなり、
前記プランジャを基端側へ引くことで、前記ハブが基端側に移動し、当該ハブの前記第1突起対が前記ロック部材の前記規制部を乗り越えて係合して、前記ハブが前記外針の発射を規制する第1のロック位置に位置決めされ、
前記プランジャを更に基端側へ引くことで、前記ハブが更に基端側に移動し、当該ハブの前記第2突起対が前記ロック部材の前記規制部を乗り越えて係合して、前記ハブが前記外針の発射を規制する第2のロック位置に位置決めされる、請求項2に記載の生検針。
【請求項6】
前記ロック部材は、前記ハブの上方と下方にそれぞれ1つずつ配置されている、請求項1に記載の生検針。
【請求項7】
前記プランジャを先端側に押し切った時に、前記ハブの前記突起の、前記ロック部材の前記規制部との係合が解除される、請求項2に記載の生検針。
【請求項8】
前記ロック部材、前記ハブ及び前記弾性体を収容する筐体を更に備え、
前記ロック部材の先端部には、当該ロック部材を前記筐体に固定するための固定孔が穿設され、前記筐体の内面先端部には、前記ロック部材の前記固定孔が嵌着固定される凸部が立設されている、請求項1に記載の生検針。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生検針に関する。更に詳細には、本発明は、先端側の外周面に切り欠き部を有する内針と、内針が同軸状に移動可能に挿入された中空状の外針と、を備え、内針の先端側を外針の先端から突出させて患者の生体の組織内に刺入した後、外針を内針の先端側に移動させて内針の切り欠き部内に当該組織の一部を取り込んで採取する外科用器具としての生検針に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の生検針としては、例えば、非特許文献1等に開示されたものが知られている。
非特許文献1に開示された生検針は、外針を発射する発射機構を含んでおり、上下方向に動くロック部材としての板バネによって、ハブ(カニューレハブ)に対するロックとロック解除とを行うようにされている。
しかし、非特許文献1に開示された生検針の構成では、ロック部材としての板バネが上下方向に動くため、生検針の上下両面に凸部(段差)ができてしまう。その結果、手などで凸部(段差)を押さえてしまった場合に、ロック機構の動作を妨げてしまう虞がある(ロック機構が正常に動作しなくなる虞がある)。
【0003】
そこで、特許文献1等に開示されているように、左右方向の動きでハブ(カニューレハブ)に対するロックとロック解除とを行うロック部材(ロッキングアーム)を備えた生検針(半自動生検装置)が提案されている。
特許文献1に開示された生検針においては、カニューレハブのフランジとバックストッパとの間に弾性体(コイルバネ)が伸縮可能に配置されており、カニューレハブの解除可能なロッキングアームがバックストッパのアパーチャ内にスナップ式に嵌まるまで弾性体が圧縮されるように構成されている。そして、カニューレ(外針)を発射する場合には、スナップ-アジャスタの傾斜した壁がカニューレハブの解除可能なロッキングアームと係合し、それらを一緒にするように押して、バックストッパのアパーチャから解放させるようにされている。ロッキングアームがバックストッパのアパーチャから解放されると、弾性体が伸長して、カニューレが発射される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Argon Medical Devices, Inc.カタログ「生検針 SuperCore(登録商標)」,[online],[令和5年3月4日検索],インターネット〈URL;https://www.medicalexpo.com/ja/prod/argon-medical-devices/product-83769-705331.html〉
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に開示された生検針の構成では、ハブ(カニューレハブ)の後端面にロック部材(ロッキングアーム)が設けられているため、筐体(ハウジング)の全長が長くなって生検針の軽量化を図ることが困難となる。また、このようにハブの後端面にロック部材が設けられていると、ハブの滑走路(ハブの進む距離)が短くなって外針(カニューレ)の発射速度を大きくすることができず、その結果、生体の組織の一部を容易かつ確実に切り取ることも困難となる。
【0007】
そこで、本発明は、常に正常に動作可能で、かつ、生体の組織の一部を容易かつ確実に切り取ることが可能な生検針をコンパクト軽量に提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するため、本発明に係る生検針の構成は、
(1)先端側の外周面に切り欠き部を有する内針と、前記内針が同軸状に移動可能に挿入された中空状の外針と、を備え、前記内針の先端側を前記外針の先端から突出させて生体の組織内に刺入した後、前記外針を前記内針の先端側に移動させて前記内針の前記切り欠き部内に前記組織の一部を取り込んで採取する生検針であって、
前記生検針は、前記外針を発射する発射機構を含み、
前記発射機構は、
前記内針の基端部を保持するとともに、長手方向にスライド可能なプランジャと、
前記プランジャの長手方向前方に当該プランジャと対向して配置固定され、左右方向の動きで後記ハブに対する係合と係合解除とを行うロック部材と、
前記外針の基端部を保持するとともに、長手方向に移動可能なハブと、
前記ハブを先端方向に付勢する弾性体と、を備え、
前記プランジャを基端側へ引くことで、前記ハブが基端側に移動し、前記ロック部材の左右方向の動きで当該ロック部材が前記ハブに対して係合して、前記ハブが前記外針の発射を規制するロック位置に位置決めされ、
前記外針の発射が規制された状態から、前記プランジャを先端側へ押すことで、前記ロック部材が左右方向に動いて、当該ロック部材が前記ハブに対して係合解除され、前記弾性体の付勢力により、前記ハブを介して前記外針が前記内針の先端側へ発射されることを特徴とする。
【0009】
本発明の生検針の上記(1)の構成は、次のような作用効果を奏する。
すなわち、上記(1)の構成によれば、ロック部材の左右方向の動きで当該ロック部材がハブに対して係合して、ハブが外針の発射を規制するロック位置に位置決めされ、ロック部材が左右方向に動いて、当該ロック部材がハブに対して係合解除され、弾性体の付勢力により、ハブを介して外針が内針の先端側へ発射されるように構成されているため、ロック部材が生検針の外部に飛び出ることはない(生検針の上下両面に凸部(段差)ができてしまうことはない)。その結果、従来のように手などで凸部(段差)を押さえてしまってロック機構の動作を妨げてしまう虞を無くすことが可能となる。
また、従来のものと異なり、ハブの後端面側にロック部材が配置される構成とはなっていないため、後述する「筐体」の全長をコンパクトに(短く)して生検針の軽量化を図ることが可能となる。また、同様の理由から、ハブの滑走路(ハブの進む距離)を長くとって外針の発射速度を大きくすることができ、その結果、生体の組織の一部を容易かつ確実に切り取ることが可能となる。
したがって、上記(1)の構成によれば、常に正常に動作可能で、かつ、生体の組織の一部を容易かつ確実に切り取ることが可能な生検針をコンパクト軽量に提供することができる。
【0010】
本発明の生検針の上記(1)の構成においては、以下の(2)~(8)のような構成にすることが好ましい。
【0011】
(2)上記(1)の構成において、前記プランジャは、先端が平面視V字形状に切り欠かれた先端V字形状部を有し、
前記ロック部材は、基端側に延びる左右一対の脚部と、前記左右一対の脚部の外縁からそれぞれ左右方向外方に突出した規制部と、を有する弾性材からなり、
前記ハブは、前記プランジャが長手方向にスライド可能な溝と、前記溝の左右の縁辺からそれぞれ左右方向内方に突出した突起と、を有し、
前記プランジャを基端側へ引くことで、前記ハブが基端側に移動し、当該ハブの前記突起が前記ロック部材の前記規制部を乗り越えて係合して、前記ハブが前記外針の発射を規制するロック位置に位置決めされ、
前記外針の発射が規制された状態から、前記プランジャを先端側へ押すことで、前記プランジャの前記先端V字形状部によって前記ロック部材の前記左右一対の脚部が左右方向内方に閉じられ、前記ハブの前記突起が前記ロック部材の前記規制部から外れて係合解除され、前記弾性体の付勢力により、前記ハブを介して前記外針が前記内針の先端側へ発射される。
上記(2)の好ましい構成によれば、ロック部材とハブとの係合及び係合解除動作が左右対称に行われることとなるため、外針の発射動作時における左右の動的バランスを適正にとることが可能となる。
【0012】
(3)上記(2)の構成において、前記ロック部材の前記規制部の先端側の面は、前記脚部の外縁からの左右方向の距離が基端側に向かうにつれて長くなる第1の傾斜面を有し、
前記ハブの前記突起の基端側の面は、前記溝の縁辺からの左右方向の距離が先端側に向かうにつれて長くなる第2の傾斜面を有する。
上記(3)の好ましい構成によれば、プランジャを基端側へ引いたときに、ハブの突起がロック部材の規制部を楽に乗り越えることが可能となる。
【0013】
(4)上記(2)の構成において、前記ロック部材の前記規制部の基端側の面は、左右方向に延びる第1の鉛直面を有し、
前記ハブの前記突起の先端側の面は、左右方向に延びる第2の鉛直面を有する。
上記(4)の好ましい構成によれば、ハブの突起をロック部材の規制部にしっかりと係合させて、ハブを外針の発射を規制するロック位置に確実に位置決めすることが可能となる。
【0014】
(5)上記(2)の構成において、前記ハブの前記突起は、基端側の第1突起対と、先端側の第2突起対と、からなり、
前記プランジャを基端側へ引くことで、前記ハブが基端側に移動し、当該ハブの前記第1突起対が前記ロック部材の前記規制部を乗り越えて係合して、前記ハブが前記外針の発射を規制する第1のロック位置に位置決めされ、
前記プランジャを更に基端側へ引くことで、前記ハブが更に基端側に移動し、当該ハブの前記第2突起対が前記ロック部材の前記規制部を乗り越えて係合して、前記ハブが前記外針の発射を規制する第2のロック位置に位置決めされる。
上記(5)の好ましい構成によれば、ハブのロック位置によって、ストローク長(外針(カニューレ)の移動距離(発射長さ))を選択することが可能となる。また、ロック位置を選択することにより、露出する切り欠き部の長さを変えることができるため、採取すべき目的組織の量を選択することも可能となる。
【0015】
(6)上記(1)の構成において、前記ロック部材は、前記ハブの上方と下方にそれぞれ1つずつ配置されている。上記(6)の好ましい構成によれば、ハブに対するロック部材の係合がハブの上下両面でなされ、ハブが安定した状態でロックされることとなるため、ハブに対するロック解除動作、ひいては、外針の発射動作をも安定させることが可能となる。
【0016】
(7)上記(2)の構成において、前記プランジャを先端側に押し切った時に、前記ハブの前記突起の、前記ロック部材の前記規制部との係合が解除される。上記(7)の好ましい構成によれば、ユーザ(操作者)が本来の外針の発射の意思を持ってプランジャを先端側に押し切った時以外は、外針が発射されることはないため、誤射を確実に防止することが可能となる。
【0017】
(8)上記(1)の構成において、前記ロック部材、前記ハブ及び前記弾性体を収容する筐体を更に備え、
前記ロック部材の先端部には、当該ロック部材を前記筐体に固定するための固定孔が穿設され、前記筐体の内面先端部には、前記ロック部材の前記固定孔が嵌着固定される凸部が立設されている。
上記(8)の好ましい構成によれば、ロック部材の固定孔を、筐体の凸部に挿通するだけで、ロック部材をプランジャの長手方向前方に当該プランジャと対向して簡単かつしっかりと配置固定することが可能となる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、常に正常に動作可能で、かつ、生体の組織の一部を容易かつ確実に切り取ることが可能な生検針をコンパクト軽量に提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態における生検針の外観構成を示す斜視図((a)は左側面上方から見た図、(b)は右側面後ろ上方から見た図)である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態における生検針の各構成部材を示す分解斜視図(内針及び外針の先端部分については省略)である。
【
図3】
図3は、本発明の一実施形態における生検針の初期状態を示す平面図((a)は外観図、(b)は内部の各構成部材の状態を示す図(上側筐体を取り外した状態))である。
【
図4】
図4(a)は、本発明の一実施形態における生検針の構成部材であるプランジャとロック部材とハブの初期状態の位置関係を示す平面図、
図4(b)は、それらの分解平面図、
図4(c)は、プランジャを裏側から見た斜視図(把持部側については省略)である。
【
図5】
図5は、本発明の一実施形態における生検針の構成部材であるロック部材とハブの拡大平面図である。
【
図6】
図6は、本発明の一実施形態における生検針の構成部材であるロック部材の筐体への固定方法を説明するための図であり、
図6(a)は、ロック部材が上側筐体(筐体)に固定された状態を示す裏面図、
図6(b)は、ロック部材が上側筐体(筐体)に固定される前の状態を示す
図6(a)のB-B線矢視拡大断面図、
図6(c)は、ロック部材が上側筐体(筐体)に固定された状態を示す
図6(a)のB-B線矢視拡大断面図である。
【
図7】
図7は、本発明の一実施形態における生検針の構成部材であるロック部材とハブとの係合動作を説明するための平面図((a)は係合前、(b)は係合後)である。
【
図8】
図8は、本発明の一実施形態における生検針の構成部材である内針と外針のそれぞれの先端部分の位置関係を示す側面図((a)は初期状態での位置関係、(b)は外針の第1のロック状態で,内針の先端側を外針の先端から突出させた場合の位置関係、(c)は外針の第2のロック状態で、内針の先端側を外針の先端から突出させた場合の位置関係)である。
【
図9】
図9は、本発明の一実施形態における生検針の外観構成を右側面後ろ上方から見た斜視図(プランジャの前進が許容されるロック解除状態)である。
【
図10】
図10は、本発明の一実施形態における生検針の内部構造を右側面後ろ上方から見た斜視図(上側筐体を取り外した状態、プランジャの前進が許容されるロック解除状態)である。
【
図11】
図11は、本発明の一実施形態における生検針の内部構造を右側面後ろ上方から見た斜視図(筐体を取り外した状態、プランジャの前進が許容されるロック解除状態)である。
【
図12】
図12は、本発明の一実施形態における生検針の外観構成を右側面後ろ上方から見た斜視図(プランジャの前進が阻止されるロック状態)である。
【
図13】
図13は、本発明の一実施形態における生検針の内部構造を右側面後ろ上方から見た斜視図(上側筐体を取り外した状態、プランジャの前進が阻止されるロック状態)である。
【
図14】
図14は、本発明の一実施形態における生検針の内部構造を右側面後ろ上方から見た斜視図(筐体を取り外した状態、プランジャの前進が阻止されるロック状態)である。
【
図15】
図15は、本発明の一実施形態における生検針の構成部材であるプランジャとスライド部材を示す分解斜視図である。
【
図16】
図16は、本発明の一実施形態における生検針の構成部材である外針の第1のロック状態を示す平面図((a)は外観図、(b)は内部の各構成部材の状態を示す図(上側筐体を取り外した状態))である。
【
図17】
図17は、本発明の一実施形態における生検針の構成部材である外針の第2のロック状態を示す平面図((a)は外観図、(b)は内部の各構成部材の状態を示す図(上側筐体を取り外した状態))である。
【
図18】
図18は、本発明の一実施形態における生検針の構成部材である内針の先端側を外針の先端から突出させる方法を説明するための平面図((a)は外針の第1のロック状態、(b)は外針の第2のロック状態)である。
【
図19】
図19は、本発明の一実施形態における生検針の構成部材である外針の発射方法(ロック解除方法)を説明するための平面図((a)は外針の第1のロック状態、(b)は初期状態)である。
【
図20】
図20は、本発明の一実施形態における生検針の構成部材である外針の発射方法(ロック解除方法)を説明するための平面図((a)は外針の第2のロック状態、(b)は初期状態)である。
【
図21】
図21は、本発明の一実施形態における生検針の構成部材である内針の切り欠き部から、切り取った生体の組織の一部を採取する方法を説明するための斜視図(外針の第1のロック状態で、かつ、プランジャの前進が阻止されるロック状態)である。
【
図22】
図22は、本発明の一実施形態における生検針の構成部材である内針の切り欠き部から、切り取った生体の組織の一部を採取する方法を説明するための斜視図(外針の第2のロック状態で、かつ、プランジャの前進が阻止されるロック状態)である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、好適な実施形態を用いて本発明を更に具体的に説明する。但し、下記の実施形態は本発明を具現化した例に過ぎず、本発明はこれに限定されるものではない。
【0021】
[生検針及び発射機構の構成]
まず、本発明の一実施形態における生検針及び発射機構の構成について、
図1~
図8を参照しながら説明する。
【0022】
図1,
図3,
図8に示すように、本実施形態の生検針1は、先端側の外周面に切り欠き部(ノッチ)2aを有する内針2と、内針2が同軸状に移動可能に挿入された中空状の外針(カニューレ)3と、を備えている。そして、生検針1は、内針2の先端側を外針3の先端から突出させて(
図8(a)の矢印リ,ヌ、及び、
図8(b),(c)を参照)生体の組織内に刺入した後、外針3を内針2の先端側に移動させて(
図8(b)の矢印ル、
図8(c)の矢印ヲ、及び、
図8(a)を参照)内針2の切り欠き部2a内に前記組織の一部を取り込んで採取できるようにされている。
ここで、組織の一部(組織標本)としては、例えば、肺、肝臓、前立腺などが挙げられる。
【0023】
図1~
図3,
図7に示すように、本実施形態の生検針1は、外針3を発射する発射機構Hを含んでいる。
発射機構Hは、内針2の基端部を保持するとともに、長手方向にスライド可能なプランジャ4と、プランジャ4の長手方向前方に当該プランジャ4と対向して配置固定され、左右方向の動き(
図7の矢印ロ,ハ,ニ,ホ,ト,チを参照)で後述するハブ6に対する係合と係合解除とを行うロック部材5と、外針3の基端部を保持するとともに、長手方向に移動可能なハブ6と、ハブ6を先端方向に付勢する弾性体7と、を備えている。
【0024】
そして、プランジャ4を基端側へ引くことで(
図3の矢印ツを参照)、ハブ6が基端側に移動し(
図7(a)の矢印イを参照)、ロック部材5の左右方向の動きで(
図7(a)の矢印ロ,ハ,ニ,ホを参照)当該ロック部材5がハブ6に対して係合して(
図7(b)の状態)、ハブ6が外針3の発射を規制するロック位置に位置決めされるようにされている(
図16,
図17を参照)。
【0025】
また、外針3の発射が規制された状態(
図19(a),
図20(a)を参照)から、プランジャ4を先端側へ押すことで(
図19(a)の矢印ヨ、
図20(a)の矢印レを参照)、ロック部材5が左右方向に動いて(
図7(b)の矢印ト,チを参照)、当該ロック部材5がハブ6に対して係合解除され、弾性体7の付勢力により、ハブ6を介して外針3が内針2の先端側へ発射されるようにされている(
図8(b)の矢印ル、
図8(c)の矢印ヲ、
図19(a)→
図19(b)、
図20(a)→
図20(b)を参照)。
なお、後述する下側筐体8bの内側先端面とハブ6の先端面との間には、ゴム製のリング状のクッション材11が配置されており、これにより、ハブ6を介して外針3が発射されたときの衝撃音を緩和できるようにされている。
【0026】
以上説明した本実施形態の生検針1の構成は、次のような作用効果を奏する。
すなわち、本実施形態の生検針1の構成によれば、ロック部材5の左右方向の動きで当該ロック部材5がハブ6に対して係合して、ハブ6が外針3の発射を規制するロック位置に位置決めされ、ロック部材5が左右方向に動いて、当該ロック部材5がハブ6に対して係合解除され、弾性体7の付勢力により、ハブ6を介して外針3が内針2の先端側へ発射されるように構成されているため、ロック部材5が生検針1の外部に飛び出ることはない(生検針1の上下両面に凸部(段差)ができてしまうことはない)。その結果、従来のように手などで凸部(段差)を押さえてしまってロック機構の動作を妨げてしまう虞を無くすことが可能となる。
また、従来のものと異なり、ハブ6の後端面側にロック部材5が配置される構成とはなっていないため、後述する「筐体8」の全長をコンパクトに(短く)して生検針1の軽量化を図ることが可能となる。また、同様の理由から、ハブ6の滑走路(ハブ6の進む距離)を長くとって外針3の発射速度を大きくすることができ、その結果、生体の組織の一部を容易かつ確実に切り取ることが可能となる。
したがって、本実施形態の生検針1の構成によれば、常に正常に動作可能で、かつ、生体の組織の一部を容易かつ確実に切り取ることが可能な生検針1をコンパクト軽量に提供することができる。
【0027】
以下、更に詳細に説明する。
図2~
図4に示すように、プランジャ4は、先端が平面視V字形状に切り欠かれた先端V字形状部4cを有している。
より具体的には、プランジャ4は、基端側の把持部4aと、把持部4aの上下両面から前方(先端側)に延びる上下一対の短冊状(細長い長方形状)の支持板4bと、上下一対の支持板4bのそれぞれの先端に形成された先端V字形状部4cと、からなっている。ここで、支持板4b及び先端V字形状部4cの裏側面(内側面)には、先端側が略T字状の凸条4dが形成されている。また、内針2は、その基端部が把持部4aの先端面(前端面)の中央に固着され、支持板4bと平行に真っすぐ延びている。
【0028】
ロック部材5は、先端部5aと、先端部5aから基端側に延びる左右一対の脚部5b,5cと、左右一対の脚部5b,5cの外縁(
図5を参照)からそれぞれ左右方向外方に突出した規制部5b1,5c1と、を有する弾性材(板バネ)からなっている。
【0029】
ハブ6は、プランジャ4が長手方向にスライド可能な溝6aと、溝6aの左右の縁辺(
図5を参照)からそれぞれ左右方向内方に突出した突起6b,6c(6d,6e)と、を有している。
より具体的には、ハブ6は、直方体状に形成され、上下面にそれぞれ、溝6aと突起6b,6c(6d,6e)とを有している。また、溝6aの基端側は、プランジャ4を基端側へ引いたときに当該プランジャ4の凸条4dの先端側部分(略T字状部分)が嵌まり込む形状となっている。そして、これにより、プランジャ4を基端側へ引くことで、弾性体7の付勢力に抗してハブ6を基端側に移動させることができるようにされている。なお、ロック部材5は、ハブ6の上方と下方にそれぞれ1つずつ配置固定されている。
【0030】
本実施形態においては、ハブ6を先端方向に付勢する弾性体7として、コイルバネが用いられている。弾性体7としてのコイルバネは、内針2に挿通された状態で配置されている。
【0031】
そして、プランジャ4を基端側へ引くことで(
図3の矢印ツを参照)、ハブ6が基端側に移動し(
図7(a)の矢印イを参照)、当該ハブ6の突起6b,6c(6d,6e)がロック部材5の規制部5b1,5c1を乗り越えて係合して(
図7(b)の状態)、ハブ6が外針3の発射を規制するロック位置に位置決めされるようにされている(
図16,
図17を参照)。
また、外針3の発射が規制された状態(
図19(a),
図20(a)を参照)から、プランジャ4を先端側へ押すことで(
図19(a)の矢印ヨ、
図20(a)の矢印レを参照)、プランジャ4の先端V字形状部4cによってロック部材5の左右一対の脚部5b,5cが左右方向内方に閉じられ(
図7(b)の矢印ト,チを参照)、ハブ6の突起6b,6c(6d,6e)がロック部材5の規制部5b1,5c1から外れて係合解除され、弾性体7の付勢力により、ハブ6を介して外針3が内針2の先端側へ発射されるようにされている(
図8(b)の矢印ル、
図8(c)の矢印ヲ、
図19(a)→
図19(b)、
図20(a)→
図20(b)を参照)。
【0032】
以上の具体的構成によれば、ロック部材5とハブ6との係合及び係合解除動作が左右対称に行われることとなるため、外針3の発射動作時における左右の動的バランスを適正にとることが可能となる。
また、上記のように、ロック部材5は、ハブ6の上方と下方にそれぞれ1つずつ配置されているため、ハブ6に対するロック部材5の係合がハブ6の上下両面でなされ、ハブ6が安定した状態でロックされることとなる。そして、その結果、ハブ6に対するロック解除動作、ひいては、外針3の発射動作をも安定させることが可能となる。
【0033】
図5に示すように、ロック部材5の規制部5b1,5c1の先端側の面は、脚部5b,5cの外縁からの左右方向の距離が基端側に向かうにつれて長くなる第1の傾斜面5b2,5c2を有している。また、ハブ6の突起6b,6c(6d,6e)の基端側の面は、溝6aの縁辺からの左右方向の距離が先端側に向かうにつれて長くなる第2の傾斜面6b2,6c2(6d2,6e2)を有している。
かかる構成によれば、プランジャ4を基端側へ引いたときに(
図3の矢印ツを参照)、ハブ6の突起6b,6c(6d,6e)がロック部材5の規制部5b1,5c1を楽に乗り越えることが可能となる(
図7を参照)。
【0034】
また、同じ
図5に示すように、ロック部材5の規制部5b1,5c1の基端側の面は、左右方向に延びる第1の鉛直面5b3,5c3を有している。また、ハブ6の突起6b,6c(6d,6e)の先端側の面は、左右方向に延びる第2の鉛直面6b3,6c3(6d3,6e3)を有している。
かかる構成によれば、ハブ6の突起6b,6c(6d,6e)をロック部材5の規制部5b1,5c1にしっかりと係合させて、ハブ6を外針3の発射を規制するロック位置に確実に位置決めすることが可能となる(
図7(b),
図16,
図17を参照)。
【0035】
図2~
図5,
図7に示すように、ハブ6の突起は、基端側の第1突起対6b,6cと、先端側の第2突起対6d,6eと、からなっている。
そして、プランジャ4を基端側へ引くことで(
図3の矢印ツを参照)、ハブ6が基端側に移動し(
図7(a)の矢印イを参照)、当該ハブ6の第1突起対6b,6cがロック部材5の規制部5b1,5c1を乗り越えて係合して(
図7(b)の状態)、ハブ6が外針3の発射を規制する第1のロック位置に位置決めされるようにされている(
図16を参照)。
また、プランジャ4を更に基端側へ引くことで、ハブ6が更に基端側に移動し(
図7(b)の矢印ヘを参照)、当該ハブ6の第2突起対6d,6eがロック部材5の規制部5b1,5c1を乗り越えて係合して、ハブ6が外針3の発射を規制する第2のロック位置に位置決めされるようにされている(
図17を参照)。
【0036】
かかる構成によれば、ハブ6のロック位置によって、ストローク長(外針(カニューレ)3の移動距離(発射長さ))を選択することが可能となる。また、ロック位置を選択することにより、露出する切り欠き部2aの長さを変えることができるため(
図8(b),(c),
図18を参照)、採取すべき目的組織の量を選択することも可能となる。
【0037】
本実施形態の生検針1においては、プランジャ4を先端側に押し切った時に、ハブ6の突起6b,6c(6d,6e)の、ロック部材5の規制部5b1,5c1との係合が解除されるようにされている。
より具体的には、プランジャ4は、その把持部4aの先端面(前端面)が後述するスライド部材収容凹所8g(
図2,
図3を参照)の前端面に当接して、それ以上の前進が阻止されるようにされている。そして、プランジャ4の前進が阻止されるのとほぼ同時に、当該プランジャ4の先端V字形状部4cによってロック部材5の左右一対の脚部5b,5cが左右方向内方に閉じられ(
図7(b)の矢印ト,チを参照)、ハブ6の突起6b,6c(6d,6e)がロック部材5の規制部5b1,5c1から外れて係合解除されるようにされている。
【0038】
かかる構成によれば、ユーザ(操作者)が本来の外針3の発射の意思を持ってプランジャ4を先端側に押し切った時以外は、外針3が発射されることはないため、誤射を確実に防止することが可能となる。
【0039】
図1~
図3に示すように、生検針1は、ロック部材(板バネ)5、ハブ6及び弾性体(コイルバネ)7を収容する筐体8を備えている。内針2と外針(カニューレ)3とプランジャ4は、筐体8内に部分的に挿入された状態となっている。
【0040】
より具体的には、筐体8は、上側筐体8aと下側筐体8bとからなっている。下側筐体(筐体本体)8bには、ハブ6が長手方向に移動可能に収容されている。また、後述するスライド部材収容凹所8g(
図2,
図3を参照)を除く下側筐体8bには、プランジャ4の、把持部4a以外の部分が、基端側から挿入され、初期状態において、その凸条4dの先端側部分(略T字状部分)がハブ6の溝6aの基端側部分に嵌まり込んだ状態となっている。また、ハブ6には、後端面から前方に向かって所定長さの円孔(図示せず)が形成されており、下側筐体8bには、前記円孔の先端面とプランジャ4の把持部4aの先端面(前端面、後述する当接面4a1(
図15を参照))との間に位置して弾性体(コイルバネ)7が伸縮可能に収容されている。上側筐体8aは、ハブ6等が収容された下側筐体8bの上端開口を覆う蓋体として機能する。
【0041】
下側筐体8bの左右両側面には、それぞれ把持部8iが設けられている。各把持部8iは、指を挿入可能な環状をなすように形成されている。
また、ハブ6の上面には、基端側に位置して「ハブ6が第1のロック位置に位置決めされていること」を示す数字「1」が記載されているとともに、先端側に位置して「ハブ6が第2のロック位置に位置決めされていること」を示す数字「2」が記載されている。また、上側筐体8aの上面略中央には、これらの数字「1」,「2」を外部から目視可能とする窓8hが設けられている(
図16,
図17を参照)。
【0042】
図2,
図4~
図7に示すように、ロック部材5の先端部5aには、当該ロック部材5を筐体8に固定するための略矩形状の固定孔5dが穿設されている。また、上側筐体8aの内側上面と下側筐体8bの内側下面の先端部には、それぞれ、ロック部材5の固定孔5dが嵌着固定される水平断面略矩形状の凸部8cが立設されている。
より具体的には、
図6に示すように、ロック部材5の固定孔5dの内周面には、丸みを帯びた環状の凸条5eが形成されている。また、凸部8cの外周面には、凸条5eが嵌合可能な丸みを帯びた環状の凹溝8dが形成されている。
かかる構成によれば、ロック部材5の固定孔5dを、筐体8の凸部8cに挿通するだけで、ロック部材5をプランジャ4の長手方向前方に当該プランジャ4と対向して簡単かつしっかりと配置固定することが可能となる。
【0043】
[安全ロック機構の構成]
次に、本発明の一実施形態における生検針の安全ロック機構の構成について、
図9~
図15をも参照しながら説明する。
【0044】
図1~
図3、
図9~
図15に示すように、本実施形態の生検針1は、外針3の、内針2の先端側への移動をロック可能な安全ロック機構Sを含んでいる。
安全ロック機構Sは、筐体8内に収容されるとともに、プランジャ4の進路内に進入して当該プランジャ4の前進を阻止するロック位置(
図12~
図14を参照)と、プランジャ4の進路から退避して当該プランジャ4の前進を許容するロック解除位置(
図9~
図11を参照)と、へ移動可能な爪部10d1,10d2を有するスライド部材(スライドスィッチ)9と、筐体8の上面に穿設され、スライド部材9の上部がスライド可能に嵌合するスロット8eと、を備えている。
ここで、スライド部材9の上面は、ユーザが指でタッチしてスライドさせることが可能な操作面となっている。スライド部材9の上面には、スライドさせやすくするために凹凸模様(例えば、ギザギザ模様)が刻設されている。
【0045】
図2,
図3に示すように、下側筐体8bの基端部には、スライド部材9の下部が収容されるスライド部材収容凹所8gが左右方向に設けられている。スライド部材9の下部は、スライド部材収容凹所8gの前後の壁によって支持されることとなる。
また、
図2,
図9,
図12に示すように、上側筐体8aの基端部には、スライド部材9の上部がスライド可能に嵌合するスロット8eが左右方向に穿設されている。
【0046】
図10,
図11,
図13~
図15に示すように、スライド部材9は、左右方向に延びる上辺部10a及び下辺部10bと、上下方向に延びる左辺部10c及び右辺部10dと、からなる矩形枠体10を有し、爪部10d1,10d2は、右辺部10dから左右方向内方に延出している。
また、
図15に示すように、プランジャ4の基端部(基端側の把持部4a)の先端面(前端面)には、爪部10d1,10d2と当接してその前進が阻止される当接面4a1が形成されている。
スライド部材9は、上側の爪部10d1が上側の支持板4bと内針2との間に位置し、下側の爪部10d2が内針2と下側の支持板4bとの間に位置するように、プランジャ4(内針2)の先端部から挿通される(
図11,
図15を参照)。
【0047】
図1,
図2,
図9,
図12に示すように、筐体8の上面の、スロット8eの近傍(若干前方)には、「スライド部材9の爪部10d1,10d2がプランジャ4の進路内に進入して当該プランジャ4の前進を阻止するロック位置へ移動していること(プランジャ4の前進が阻止されるロック状態にあること)」を表示する表示部8fが設けられている。
より具体的には、表示部8fには、「左向きの矢印」の図形と「SAFE」の文字が表示されている。この表示は、「スライド部材9が左側にスライドされていれば(
図12~
図14を参照)、プランジャ4の前進が阻止されるロック状態(安全状態)にある」ことを意味している。
【0048】
上述したように、プランジャ4は、その把持部4aの先端面(前端面)がスライド部材収容凹所8g(
図2,
図3を参照)の前端面に当接して、それ以上の前進が阻止されるようにされている。そして、プランジャ4の前進が阻止されるのとほぼ同時に、当該プランジャ4の先端V字形状部4cによってロック部材5の左右一対の脚部5b,5cが左右方向内方に閉じられ(
図7(b)の矢印ト,チを参照)、ハブ6の突起6b,6c(6d,6e)がロック部材5の規制部5b1,5c1から外れて係合解除されるようにされている。
【0049】
一方、スライド部材9がスライド部材収容凹所8g内で左側にスライドされて、当該スライド部材9の爪部10d1,10d2がプランジャ4の進路内に進入しているとき、プランジャ4の把持部4aの先端面(前端面、当接面4a1)は爪部10d1,10d2と当接し、スライド部材収容凹所8gの前端面に当接することはない。そして、このとき、ハブ6の突起6b,6c(6d,6e)がロック部材5の規制部5b1,5c1から外れて係合解除されることはないので、外針3の、内針2の先端側への移動をロックすることが可能となる。
【0050】
[生検針の使用(操作)方法]
次に、本発明の一実施形態における生検針の使用(操作)方法について、
図16~
図22をも参照しながら説明する。
【0051】
図3に示す初期状態の生検針1においては、外針(カニューレ)3が内針2の先端側外周面の切り欠き部(ノッチ)2aを覆った状態となっている(
図8(a)を参照)。
この初期状態において、ハブ6は、筐体8の先端側に位置しており、ハブ6を先端方向に付勢する弾性体(コイルバネ)7は、自然長となっている。また、プランジャ4の凸条4dの先端側部分(略T字状部分
図2,
図4を参照)は、ハブ6の溝6aの基端側部分に嵌まり込んだ状態となっている。
【0052】
図3に示す初期状態からユーザ(操作者)がプランジャ4を基端側へ引くと(矢印ツを参照)、ハブ6が基端側に移動する(
図7(a)の矢印イを参照)。ハブ6が基端側に移動するにつれて、弾性体(コイルバネ)7は圧縮されていく。そして、ハブ6の基端側の第1突起対6b,6cがロック部材5の規制部5b1,5c1を乗り越えて係合して、ハブ6が外針3の発射を規制する第1のロック位置に位置決めされる(第1のロック状態、
図16の状態)。この場合、内針2の基端部はプランジャ4に保持され、外針3の基端部はハブ6に保持されているため、先端側における内針2と外針3の位置関係は、初期状態から変化せず、外針(カニューレ)3が内針2の先端側外周面の切り欠き部(ノッチ)2aを覆った状態となっている(
図8(a)を参照)。
【0053】
図16に示す第1のロック状態からユーザがプランジャ4を更に基端側へ引くと、ハブ6が更に基端側に移動する(
図7(b)の矢印ヘを参照)。ハブ6が基端側に移動するにつれて、弾性体(コイルバネ)7は更に圧縮されていく。そして、ハブ6の先端側の第2突起対6d,6eがロック部材5の規制部5b1,5c1を乗り越えて係合して、ハブ6が外針3の発射を規制する第2のロック位置に位置決めされる(第2のロック状態、
図17の状態)。この場合も上記と同様、先端側における内針2と外針3の位置関係は、初期状態から変化せず、外針(カニューレ)3が内針2の先端側外周面の切り欠き部(ノッチ)2aを覆った状態となっている(
図8(a)を参照)。
【0054】
図16に示す第1のロック状態から、まず、スライド部材9を左側にスライドさせて、プランジャ4の前進が阻止されるロック状態(安全状態)にし、その後、プランジャ4を先端側へ押し進めることにより(
図18(a)の矢印ワを参照)、内針2を突出させて当該内針2の先端側外周面の切り欠き部(ノッチ)2aを露出させることができる(
図18(a)の状態)。ハブ6が第1のロック状態にあるとき、ストローク長(外針(カニューレ)3の移動距離(発射長さ))は短い方が選択された状態となり、露出する切り欠き部(ノッチ)2aの長さも短い方が選択された状態となる。
この場合、プランジャ4の前進が阻止されるロック状態(安全状態)にした後に、プランジャ4を先端側へ押し進めて、内針2の先端側外周面の切り欠き部(ノッチ)2aを露出させるようにしているため、後述のようにして内針2の先端側を患者の生体の組織(生検部位)内に刺入する前に外針3が発射してしまうことはない。
【0055】
図17に示す第2のロック状態から、まず、スライド部材9を左側にスライドさせて、プランジャ4の前進が阻止されるロック状態(安全状態)にし、その後、プランジャ4を先端側へ押し進めることにより(
図18(b)の矢印カを参照)、内針2を突出させて当該内針2の先端側外周面の切り欠き部(ノッチ)2aを露出させることができる(
図18(b)の状態)。ハブ6が第2のロック状態にあるとき、ストローク長は長い方が選択された状態となり、露出する切り欠き部(ノッチ)2aの長さも長い方が選択された状態となる。
この場合も、プランジャ4の前進が阻止されるロック状態(安全状態)にした後に、プランジャ4を先端側へ押し進めて、内針2の先端側外周面の切り欠き部(ノッチ)2aを露出させるようにしているため、後述のようにして内針2の先端側を患者の生体の組織(生検部位)内に刺入する前に外針3が発射してしまうことはない。
【0056】
ユーザは、
図16又は
図17に示す第1又は第2のロック状態から、スライド部材9を左側にスライドさせて、プランジャ4の前進が阻止されるロック状態(安全状態)にした後、まず、内針2の先端を生検部位の手前まで穿刺する。次いで、内針2の先端位置がずれないように筐体8をしっかり保持したまま、プランジャ4を先端側へ押し進める(
図18(a)の矢印ワ、
図18(b)の矢印カを参照)。これにより、内針2を突出させて、当該内針2の先端側を患者の生体の組織(生検部位)内に刺入する。この場合、内針2が突出することで、当該内針2の先端側外周面の切り欠き部(ノッチ)2aが露出する(
図18(a)又は
図18(b)の状態)。次いで、ユーザは、内針2の先端側外周面の切り欠き部(ノッチ)2a内に組織の一部が存在していることを確認したら、スライド部材9を右側にスライドさせて、プランジャ4の前進を許容するロック解除状態にした後(
図19(a)又は
図20(a)の状態)、内針2の先端位置がずれないように筐体8をしっかり保持したまま、プランジャ4を先端側に押し切る(
図19(a)の矢印ヨ、
図20(a)の矢印レを参照)。これにより、プランジャ4の先端V字形状部4cによってロック部材5の左右一対の脚部5b,5cが左右方向内方に閉じられ(
図7(b)の矢印ト,チを参照)、ハブ6の突起6b,6c(6d,6e)がロック部材5の規制部5b1,5c1から外れて係合解除される。そして、弾性体7の付勢力により、ハブ6を介して外針3が内針2の先端側へ発射される(
図8(b)の矢印ル、
図8(c)の矢印ヲ、
図19(a)→
図19(b)、
図20(a)→
図20(b)を参照)。これにより、内針2の先端側外周面の切り欠き部(ノッチ)2aに外針(カニューレ)3が覆いかぶさって、組織が切り取られ、切り欠き部(ノッチ)2a内に目的組織が採取される。
【0057】
図19(b)のようにして内針2の先端側外周面の切り欠き部(ノッチ)2a内に目的組織が採取されたら、プランジャ4を基端側へ引いて(
図19(b)の矢印タを参照)、
図16に示す第1のロック状態に持って行く。次いで、スライド部材9を左側にスライドさせて、プランジャ4の前進が阻止されるロック状態(安全状態)にした後、プランジャ4を先端側へ押し進めて(
図21の矢印ネを参照)、内針2の先端側外周面の切り欠き部(ノッチ)2aを露出させる(
図21の状態)。そして、ピンセット等を用いて、切り欠き部(ノッチ)2aから、切り取った生体の組織の一部を採取する。
この場合、プランジャ4の前進が阻止されるロック状態(安全状態)にした後に、プランジャ4を先端側へ押し進めて、内針2の先端側外周面の切り欠き部(ノッチ)2aを露出させるようにしているため、切り欠き部(ノッチ)2aから、切り取った生体の組織の一部を採取している途中で外針3が発射してしまうことはない。その結果、切り欠き部(ノッチ)2aから、切り取った生体の組織の一部を安全に採取することが可能となる。
【0058】
また、
図20(b)のようにして内針2の先端側外周面の切り欠き部(ノッチ)2a内に目的組織が採取されたら、プランジャ4を基端側へ引いて(
図20(b)の矢印ソを参照)、
図17に示す第2のロック状態に持って行く。次いで、スライド部材9を左側にスライドさせて、プランジャ4の前進が阻止されるロック状態(安全状態)にした後、プランジャ4を先端側へ押し進めて(
図22の矢印ナを参照)、内針2の先端側外周面の切り欠き部(ノッチ)2aを露出させる(
図22の状態)。そして、ピンセット等を用いて、切り欠き部(ノッチ)2aから、切り取った生体の組織の一部を採取する。
この場合も、プランジャ4の前進が阻止されるロック状態(安全状態)にした後に、プランジャ4を先端側へ押し進めて、内針2の先端側外周面の切り欠き部(ノッチ)2aを露出させるようにしているため、切り欠き部(ノッチ)2aから、切り取った生体の組織の一部を採取している途中で外針3が発射してしまうことはない。その結果、切り欠き部(ノッチ)2aから、切り取った生体の組織の一部を安全に採取することが可能となる。
【0059】
なお、本実施形態においては、ハブ6の突起が、基端側の第1突起対6b,6cと、先端側の第2突起対6d,6eと、からなる場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明は必ずしもこのような構成に限定されるものではない。ハブに左右対称に突起を設ける場合には、1組の突起対だけを設けるようにしてもよい。
【0060】
また、本実施形態においては、ロック部材5が、ハブ6の上方と下方にそれぞれ1つずつ配置固定される場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明は必ずしもこのような構成に限定されるものではない。ロック部材は、ハブの上方又は下方だけに配置固定されていてもよい。
【0061】
また、本実施形態においては、生検針1が、外針3の、内針2の先端側への移動をロック可能な安全ロック機構Sを含んでいる場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明は必ずしもこのような構成に限定されるものではない。安全ロック機構を含ませるか否かは任意である。
【符号の説明】
【0062】
1 生検針
2 内針
2a 切り欠き部(ノッチ)
3 外針(カニューレ)
4 プランジャ
4c 先端V字形状部
5 ロック部材(板バネ)
5a 先端部
5b,5c 脚部
5b1,5c1 規制部
5b2,5c2 第1の傾斜面
5b3,5c3 第1の鉛直面
5d 固定孔
6 ハブ
6a 溝
6b,6c,6d,6e 突起
6b2,6c2,6d2,6e2 第2の傾斜面
6b3,6c3,6d3,6e3 第2の鉛直面
7 弾性体(コイルバネ)
8 筐体
8a 上側筐体(蓋体)
8b 下側筐体(筐体本体)
8c 凸部
H 発射機構