(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135399
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】表皮材及び表皮材の製造方法
(51)【国際特許分類】
D03D 15/547 20210101AFI20240927BHJP
D03D 1/04 20060101ALI20240927BHJP
F21V 8/00 20060101ALI20240927BHJP
B60Q 3/217 20170101ALI20240927BHJP
B60Q 3/54 20170101ALI20240927BHJP
B60Q 3/64 20170101ALI20240927BHJP
【FI】
D03D15/547
D03D1/04
F21V8/00 282
B60Q3/217
B60Q3/54
B60Q3/64
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023046056
(22)【出願日】2023-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094190
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 清路
(74)【代理人】
【識別番号】100151127
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 勝雅
(74)【代理人】
【氏名又は名称】平岩 康幸
(72)【発明者】
【氏名】藤森 健太
(72)【発明者】
【氏名】神谷 俊光
【テーマコード(参考)】
3K040
4L048
【Fターム(参考)】
3K040AA02
3K040GA04
3K040GB08
3K040GC02
3K040GC05
3K040GC12
3K040GC14
3K040GC15
3K040GC16
4L048AB06
4L048AC02
4L048BA13
4L048CA00
4L048DA24
4L048DA25
4L048EB00
(57)【要約】
【課題】光ファイバー収束体を十分に保護して耐久性を向上させることができる表皮材及び表皮材の製造方法を提供する。
【解決手段】本表皮材1は、光ファイバー5と非導光糸6a、7aで製織された意匠用製織部2と、意匠用製織部に隣接される光源接続用端部3と、を備える。さらに、光源接続用端部は、光ファイバーからなる光ファイバー群25を所定本数に束ねて形成される一又は複数の光ファイバー収束体10と、非導光糸で製織されて光ファイバー収束体を保護する保護袋部11と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバーを織り込んだ表皮材であって、
前記光ファイバーと非導光糸で製織された意匠用製織部と、前記意匠用製織部に隣接される光源接続用端部と、を備え、
前記光源接続用端部は、前記光ファイバーからなる光ファイバー群を所定本数に束ねて形成される一又は複数の光ファイバー収束体と、前記非導光糸で製織されて前記光ファイバー収束体を保護する保護袋部と、を有することを特徴とする表皮材。
【請求項2】
前記保護袋部は、前記非導光糸で製織されて前記光ファイバー収束体を挟んで配置される一対の保護層を有し、
一対の前記保護層は、前記光ファイバー収束体の外側で接合されている請求項1に記載の表皮材。
【請求項3】
一対の前記保護層は、前記意匠用製織部から離れるに連れて幅狭となる平面形状に形成されているとともに、前記光ファイバー収束体の外辺に沿う側縁部で接合されている請求項2に記載の表皮材。
【請求項4】
光ファイバーを織り込んだ表皮材の製造方法であって、
前記光ファイバーと非導光糸で製織された意匠用製織部と、前記意匠用製織部に隣接される袋織り部と、を備え、前記袋織り部は、前記光ファイバーからなる光ファイバー群と、前記光ファイバー群の表面側に配置される表保護層と、前記光ファイバー群の裏面側に配置される裏保護層と、を有し、前記表保護層及び前記裏保護層のそれぞれは前記非導光糸で製織されている織物を用意する準備工程と、
前記光ファイバー群を所定本数に束ねて一又は複数の光ファイバー収束体を形成する収束体形成工程と、
前記表保護層及び前記裏保護層を前記光ファイバー収束体の外側で接合して前記光ファイバー収束体を保護する保護袋部を形成する保護袋部形成工程と、を含むことを特徴とする表皮材の製造方法。
【請求項5】
前記表保護層と前記裏保護層の接合は溶着である請求項4に記載の表皮材の製造方法。
【請求項6】
前記保護袋部形成工程は、前記表保護層及び前記裏保護層を前記光ファイバー収束体と対応した平面形状となるように切断するとともに、切断された前記表保護層及び前記裏保護層において前記光ファイバー収束体の外辺に沿う側縁部で接合して前記保護袋部を形成する請求項4に記載の表皮材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表皮材及び表皮材の製造方法に関し、さらに詳しくは、光ファイバーを織り込んだ表皮材及び表皮材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の表皮材として、光ファイバーを織り込んだ光ファイバー表皮材が一般に知られている(例えば、特許文献1及び2等を参照)。特許文献1には、複数の光ファイバーをチューブ状の保護材で束ね、端末をスリーブで結束させて光ファイバー収束体を形成してなる光ファイバー表皮材が記載されている。また、特許文献2には、光ファイバーと非導光糸で製織された第1領域(意匠用製織部)と、第1領域に連なる第2領域(袋織り部)と、を備え、第2領域は、光ファイバーからなる光ファイバー群と、非導光糸で製織されて光ファイバー群の表面側に配置される表保護層と、非導光糸で製織されて光ファイバー収束体の裏面側に配置される裏保護層と、を有する光ファイバー織物が記載されている。さらに、特許文献2には、光ファイバー織物において第2領域の表保護層及び裏保護層を切除して光ファイバー群を露出させ、光ファイバー群を所定本数に束ねて光ファイバー収束体を形成してなる光ファイバー表皮材が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-122240号公報
【特許文献2】特開2017-210699号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載された光ファイバー表皮材では、光ファイバー収束体の保護を目的として保護材を追加設定する必要があり、コストアップとなる。さらに、既製品のチューブ状の保護材(例えば、コルゲートチューブなど)では十分に光ファイバーを保護できない。具体的に、
図18に示されるように、光ファイバー収束体100は扇形に広がるため、チューブ状の保護材では扇形の広がり部分100aを保護できない。
【0005】
さらに、特許文献2に記載された光ファイバー表皮材では、光ファイバー収束体が露出しているため、光ファイバー表皮材の使用時の耐久性に課題がある。さらに、表保護層及び裏保護層の廃棄工数(裁断、取り外しなど)及び廃棄物量が多くなる。
【0006】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、光ファイバー収束体を十分に保護して耐久性を向上させることができる表皮材及び表皮材の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は以下の通りである。
1.光ファイバーを織り込んだ表皮材であって、
前記光ファイバーと非導光糸で製織された意匠用製織部と、前記意匠用製織部に隣接される光源接続用端部と、を備え、
前記光源接続用端部は、前記光ファイバーからなる光ファイバー群を所定本数に束ねて形成される一又は複数の光ファイバー収束体と、前記非導光糸で製織されて前記光ファイバー収束体を保護する保護袋部と、を有することを特徴とする表皮材。
2.前記保護袋部は、前記非導光糸で製織されて前記光ファイバー収束体を挟んで配置される一対の保護層を有し、
一対の前記保護層は、前記光ファイバー収束体の外側で接合されている上記1.に記載の表皮材。
3.一対の前記保護層は、前記意匠用製織部から離れるに連れて幅狭となる平面形状に形成されているとともに、前記光ファイバー収束体の外辺に沿う側縁部で接合されている上記2.に記載の表皮材。
4.光ファイバーを織り込んだ表皮材の製造方法であって、
前記光ファイバーと非導光糸で製織された意匠用製織部と、前記意匠用製織部に隣接される袋織り部と、を備え、前記袋織り部は、前記光ファイバーからなる光ファイバー群と、前記光ファイバー群の表面側に配置される表保護層と、前記光ファイバー群の裏面側に配置される裏保護層と、を有し、前記表保護層及び前記裏保護層のそれぞれは前記非導光糸で製織されている織物を用意する準備工程と、
前記光ファイバー群を所定本数に束ねて一又は複数の光ファイバー収束体を形成する収束体形成工程と、
前記表保護層及び前記裏保護層を前記光ファイバー収束体の外側で接合して前記光ファイバー収束体を保護する保護袋部を形成する保護袋部形成工程と、を含むことを特徴とする表皮材の製造方法。
5.前記表保護層と前記裏保護層の接合は溶着である上記4.に記載の表皮材の製造方法。
6.前記保護袋部形成工程は、前記表保護層及び前記裏保護層を前記光ファイバー収束体と対応した平面形状となるように切断するとともに、切断された前記表保護層及び前記裏保護層において前記光ファイバー収束体の外辺に沿う側縁部で接合して前記保護袋部を形成する上記4.に記載の表皮材の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の表皮材によると、光ファイバーと非導光糸で製織された意匠用製織部と、意匠用製織部に隣接される光源接続用端部と、を備える。さらに、光源接続用端部は、光ファイバーからなる光ファイバー群を所定本数に束ねて形成される一又は複数の光ファイバー収束体と、非導光糸で製織されて光ファイバー収束体を保護する保護袋部と、を有する。これにより、光ファイバー収束体を十分に保護して耐久性を向上させることができる。
【0009】
本発明の表皮材の製造方法によると、光ファイバーと非導光糸で製織された意匠用製織部と、意匠用製織部に隣接される袋織り部と、を備える織物を用意する準備工程と、袋織り部の光ファイバー群を所定本数に束ねて一又は複数の光ファイバー収束体を形成する収束体形成工程と、袋織り部の表保護層及び裏保護層を光ファイバー収束体の外側で接合して光ファイバー収束体を保護する保護袋部を形成する保護袋部形成工程と、を含む。これにより、光ファイバー収束体を十分に保護して耐久性を向上させた表皮材を効率良く得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
本発明について、本発明による典型的な実施形態の非限定的な例を挙げ、言及された複数の図面を参照しつつ以下の詳細な記述にて更に説明するが、同様の参照符号は図面のいくつかの図を通して同様の部品を示す。
【
図1】実施形態1に係る表皮材の説明図であり、(a)は要部平面図を示し、(b)はb-b線断面図を示し、(c)はc-c線断面拡大図を示す。
【
図3】実施形態1に係る織物の斜視図であり、(a)はクッション層が積層された状態を示し、(b)はクッション層が積層される前の状態を示す。
【
図4】実施形態1に係る表皮材の製造方法(準備工程)の説明図であり、(a)は織物の表面側からみた要部斜視図を示し、(b)はb矢視図を示す。
【
図5】表皮材の製造方法(除去工程)の説明図であり、(a)はタブ部を除去した状態を示し、(b)は袋織り部の最裏側層及びクッション層を除去した状態を示し、(c)はc矢視図を示す。
【
図6】表皮材の製造方法(収束体形成工程)の説明図であり、(a)は表保護層を裏保護層から引き離してめくった状態を示し、(b)はb矢視図を示し、(c)は光ファイバー群の所定本数ごとにスリーブを挿通した状態を示す。
【
図7】表皮材の製造方法(収束体形成工程)の説明図であり、(a)は光ファイバー収束体を形成した状態を示し、(b)は表保護層を裏保護層に対して引き戻した状態を示し、(c)はc矢視図を示す。
【
図8】表皮材の製造方法(保護袋部形成工程)の説明図であり、(a)は表保護材及び裏保護材の余剰部分を切断した状態を示し、(b)は保護袋部を形成した状態を示す。
【
図9】表皮材の製造方法(研磨工程)の説明図である。
【
図10】実施形態1に係る加工装置の説明図であり、(a)は一対の型の型開き状態を示し、(b)は一対の型の型締め状態を示す。
【
図11】表皮材の使用形態の説明図であり、(a)は車両用ドアトリムの車室内側から見た平面図を示し、(b)b-b線断面拡大図を示す。
【
図12】実施形態2に係る表皮材の説明図であり、(a)は要部平面図を示し、(b)はb-b線断面図を示し、(c)はc-c線断面拡大図を示す。
【
図14】実施形態2に係る織物の要部斜視図である。
【
図15】実施形態2に係る表皮材の製造方法の説明図であり、(a)は織物の準備工程を示し、(b)はタブ部の除去工程を示し、(c)は収束体形成工程を示し、(d)は保護袋部形成工程を示す。
【
図16】他の形態に係る表皮材の説明図であり、(a)は平面矩形状の保護袋部を有する形態を示し、(b)は隣り合う保護袋部が連結部で連結される形態を示し、(c)は1つの保護袋部内に複数組の光ファイバー収束体を収容保護する形態を示す。
【
図17】他の形態に係る表皮材の製造方法の説明図である。
【
図18】従来の光ファイバー表皮材の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
ここで示される事項は例示的なものおよび本発明の実施形態を例示的に説明するためのものであり、本発明の原理と概念的な特徴とを最も有効に且つ難なく理解できる説明であると思われるものを提供する目的で述べたものである。この点で、本発明の根本的な理解のために必要である程度以上に本発明の構造的な詳細を示すことを意図してはおらず、図面と合わせた説明によって本発明の幾つかの形態が実際にどのように具現化されるかを当業者に明らかにするものである。
【0012】
以下、図面を用いて実施形態により本発明を具体的に説明する。なお、本実施形態では、本発明に係る「表示材」として、車両用ドアトリム51を構成するオーナメント53に用いられる表皮材1を例示する(
図11参照)。
【0013】
車両用ドアトリム51は、金属製のインナパネル(図示省略)を車室内側から覆うトリム本体52を備えている。トリム本体52は、車室内側の意匠面を形成するオーナメント53及びアッパーボード54を備えている。オーナメント53は、アッパーボード54に形成された孔部又は凹部に配置されている。また、オーナメント53は、基材55と、基材55の表面に積層される表皮材1と、を備えている。基材55は、合成樹脂製で板状に形成されている。また、基材55の裏面には光源56aを有する光源装置56が備えられている。さらに、表皮材1の後述する光源接続用端部3は基材55の裏面側へ折り返されており、後述する光ファイバー収束体10の結束部13が光源装置56に接続されている。なお、光源装置56に対する光源接続用端部3の接続形態等は特に限定されず、光源接続用端部3を折り返すことなく光源装置56に接続する形態を採用してもよい。
【0014】
<実施形態1>
本実施形態に係る表皮材(光ファイバー表皮材)1は、
図1及び
図2に示すように、光ファイバー5と非導光糸6a、7aで製織された意匠用製織部2と、意匠用製織部2に隣接される光源接続用端部3と、を備えている。
【0015】
意匠用製織部2は、光ファイバー5による発光(漏光)が規則的な模様等の意匠として視認されるように非導光糸6a、7aとともに1層に製織されている(
図2参照)。具体的に、意匠用製織部2は、経糸及び緯糸のうちの一方の糸である第1構成糸6と、他方の糸である第2構成糸7と、で製織されている。第1構成糸6は、光ファイバー5と光ファイバー以外の非導光糸6aとを有している。また、第2構成糸7は非導光糸7aを有している。
【0016】
なお、第2構成糸7は、光ファイバー5を有していてもよいが、製織性等の観点から、光ファイバー5を有していないことが好ましい。また、意匠用製織部2の織り方は特に限定されず、公知の各種織組織や織構造を利用できる。さらに、織機の簡素化等の観点から、第1構成糸6が緯糸であり、第2構成糸7が経糸であることが好ましい。
【0017】
光ファイバー5は、一端から他端へ光を導光させながら、その側面から発光(漏光)させる側面発光型である。光ファイバー5としては、芯(コア)と鞘(クラッド)との芯鞘構造(二層構造)を有し、これら芯と鞘の屈曲率が異なっている種々のものを採用できる。また、光ファイバー5としては、製織性等の観点から、樹脂製のものを採用することが好ましい。また、光ファイバー5の直径は特に限定されないが、製織性等の観点から、例えば、0.01mm以上2.0mm以下とすることができ、0.05mm以上1.5mm以下が好ましく、0.1mm以上1.0mm以下がより好ましい。さらに、第1構成糸6に占める光ファイバー5の割合は特に限定されないが、通常、10%以上であり、10%以上90%以下が好ましく、20%以上80%以下がより好ましく、30%以上70%以下が更に好ましい。
【0018】
第1構成糸6の非導光糸6a及び第2構成糸7の非導光糸7aは、光ファイバー5のような導光特性を有さない糸である。また、非導光糸6a及び非導光糸7aは、光ファイバー5に対して遮光性能を発揮できる糸である。なお、非導光糸6a及び非導光糸7aは、後述する表保護層26及び裏保護層27の接合性等の観点から、熱可塑性樹脂により形成されていることが好ましい。ただし、非導光糸6a、7aを構成する材料は特に限定されず、天然繊維であってもよいし、合成繊維であってもよい。合成繊維である場合、その構成樹脂としては、ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリアクリル系樹脂等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。また、非導光糸6a、7aの繊度は特に限定されないが、例えば、10dtex以上1000dtex以下とすることができ、20dtex以上750dtex以下が好ましく、30dtex以上500dtex以下がより好ましい。さらに、非導光糸6a、7aは、同じ材料及び/又は繊度を用いてもよいし、異なる材料及び/又は繊度を用いてもよい。
【0019】
意匠用製織部2の裏面にはクッション層4が積層されている。クッション層4は、柔軟性やスペース性等の観点から、光源接続用端部3の裏面に積層されていない。また、クッション層4の材質は特に限定されないが、軟質ポリウレタンフォームからなるシート材が用いられることが多い。ただし、十分なクッション性を有する限り、他の軟質樹脂フォームを用いることもできる。
【0020】
光源接続用端部3は、光源装置56に対して光ファイバー5を光学的に接続するための部位である。また、光源接続用端部3は、表皮材1の使用時(即ち、オーナメント53が組み付けられた車両用ドアトリム51)において他の部材で覆い隠される部位である。さらに、光源接続用端部3は、光ファイバー群25を所定本数(例えば、10~30本)に束ねて形成される光ファイバー収束体10と、非導光糸6a、7aで製織されて光ファイバー収束体10を収容保護する保護袋部11と、を有している。
【0021】
光ファイバー収束体10は、意匠用製織部2の端縁2aから延出する複数の光ファイバー5により形成されている。また、光ファイバー収束体10の先端側は、光源装置56に接続される結束部13を形成している。結束部13から光源56aの光が入射して表皮材1の表面から射出して発光する。具体的に、光ファイバー収束体10の先端側は、スリーブ12により結束されている。ただし、スリーブ12の他に熱収縮テープやチューブなどにより結束してもよい。
【0022】
光ファイバー収束体10は、意匠用製織部2の厚さ方向に分けられる複数層(
図1中で2層)の光ファイバー収束体10a、10bを含んでいる。複数層の光ファイバー収束体10a、10bは、意匠用製織部2の端縁2aに沿う方向に複数組(
図1中で2組)設けられている。このように複数層の光ファイバー収束体10a、10bを備え、各光ファイバー収束体10a、10bの結束部13を独立して制御される各光源装置56に接続することで、多様な発光形態を実現できる。例えば、ドット状の発光を主体とした発光形態とライン状の発光を主体とした発光形態とを切り換えることができる。
【0023】
なお、光ファイバー収束体10の個数や配置形態は特に限定されず、表皮材1の発光形態等に応じて決められる。例えば、光ファイバー収束体10を意匠用製織部2の厚さ方向に1層又は3層以上で設けてもよい。さらに、光ファイバー収束体10を意匠用製織部2の端縁2aに沿う方向に1つ又は3つ以上設けてもよい。
【0024】
保護袋部11は、表皮材1の保管、組付作業、使用時などにおいて光ファイバー収束体10を保護する。また、保護袋部11は、光ファイバー収束体10と対応した平面形状(具体的に平面台形状)に形成されている。具体的に、保護袋部11は、意匠用製織部2の端縁2aから離れるに連れて幅狭となる扁平袋状に形成されている。また、保護袋部11は、意匠用製織部2の端縁2aに沿う方向に複数(
図1中で2つ)設けられている。隣り合う保護袋部11において意匠用製織部2寄りの部分は連結されている。さらに、1つの保護袋部11には、複数層の光ファイバー収束体10a、10bの1組が収容保護されている。なお、保護袋部11の個数や配置場所等は特に限定されず、光ファイバー収束体10の個数や配置形態等に応じて決められる。
【0025】
保護袋部11は、非導光糸6a、7aで製織されて光ファイバー収束体10を挟んで配置される一対の保護層15、15を有している。一方の保護層15は、光ファイバー収束体10の表面を覆うように光ファイバー収束体10の表面側に配置されている。また、他方の保護層15は、光ファイバー収束体10の裏面を覆うように光ファイバー収束体10の裏面側に配置されている。また、各保護層15は、光ファイバー収束体10と対応した平面形状(具体的に平面台形状)を有している。具体的に、各保護層15は、意匠用製織部2の端縁2aから離れるに連れて幅狭となる平面形状(具体的に平面台形状)に形成されている。また、各保護層15は、意匠用製織部2の端縁2aに連なるように非導光糸6a、7aで製織されている(
図2参照)。さらに、各保護層15には光ファイバー5が織り込まれていない。なお、各保護層15の織り方は特に限定されず、公知の各種織組織や織構造を利用できる。
【0026】
各保護層15は、光ファイバー収束体10の外側で接合部(具体的に溶着部)17により接合されている。具体的に、各保護層15は、光ファイバー収束体10の外辺(外縁)sに沿う側縁部15aで接合部17により接合されている(
図1(a)参照)。さらに、各保護層15の先端側は接合されておらず、光ファイバー収束体10の結束部13が突出する開口部18を形成している。なお、各保護層15の接合形態は特に限定されず、例えば、熱溶着による加熱圧着の他に、レーザ溶着、接着剤による接着、結束糸による結束、ステープルによる締結などを利用できる。
【0027】
次に、上記構成の表皮材1の製造方法で用いられる織物(光ファイバー織物)21について説明する。
【0028】
本実施形態に係る織物21は、
図3及び
図4に示すように、光ファイバー5と非導光糸6a、7aで製織された意匠用製織部2と、意匠用製織部2に隣接される袋織り部(多重織部)23と、を備えている。さらに、織物21は、袋織り部23の意匠用製織部2と反端側の端縁に隣接されるタブ部24を更に備えている。
【0029】
袋織り部23は、光ファイバー5からなる光ファイバー群25と、光ファイバー群25aの表面側に配置される表保護層26と、光ファイバー群25bの裏面側に配置される裏保護層27と、裏保護層27の裏面側に配置される最裏側層28と、を有している。これら表保護層26、裏保護層27及び最裏側層28は3層に分割形成されている。なお、袋織り部23としては、表保護層26、裏保護層27及び最裏側層28の他に、他の機能層を備えるものを採用してもよい。
【0030】
光ファイバー群25は、意匠用製織部2の端縁2aから延出する複数の光ファイバー5により形成されている。また、光ファイバー群25は、意匠用製織部2の厚さ方向に分けられる複数層(
図4中で2層)の光ファイバー群25a、25bを含んでいる。表層側の光ファイバー群25aは結束糸29により表保護層26と結束(一体化)されている。また、裏層側の光ファイバー群25bは結束糸29により裏保護層27と結束(一体化)されている。結束糸29を切断することで光ファイバー群25a、25bと各保護層26、27は分離される。結束糸29は、第1構成糸6の非導光糸6a及び/又は第2構成糸7の非導光糸7aにより形成されている。なお、意匠用製織部2の厚さ方向に分けられない1層の光ファイバー群25を採用してもよい。
【0031】
表保護層26は、表皮材1の一方の保護層15を形成するための層である。また、表保護層26は、光ファイバー群25aの表面を覆うように光ファイバー群25aの表面側に配置されている。また、表保護層26は平面矩形状(長方形の他に正方形も含む。)に形成されている。また、表保護層26は、意匠用製織部2の端縁2aに連なるように非導光糸6a、7aで製織されている。さらに、表保護層26には光ファイバー5が織り込まれていない。
【0032】
裏保護層27は、表皮材1の他方の保護層15を形成するための層である。また、裏保護層27は、光ファイバー群25bの裏面を覆うように光ファイバー群25bの裏面側に配置されている。また、裏保護層27は平面矩形状(長方形の他に正方形も含む。)に形成されている。また、裏保護層27は、意匠用製織部2の端縁2aに連なるように非導光糸6a、7aで製織されている。さらに、裏保護層27には光ファイバー5が織り込まれていない。
【0033】
最裏側層28は、積層されたクッション層4とともに除去するための層である。また、最裏側層28は、裏保護層27の裏面を覆うように裏保護層27の裏面側に配置されている。また、最裏側層28は平面矩形状(長方形の他に正方形も含む。)に形成されている。また、最裏側層28は、意匠用製織部2の端縁2aに連なるように非導光糸6a、7aで製織されている。さらに、最裏側層28には光ファイバー5が織り込まれていない。
【0034】
なお、表保護層26、裏保護層27及び最裏側層28の織り方は特に限定されず、公知の各種織組織や織構造を利用できる。さらに、各層26~28の目付量は特に限定されず、各層26~28で同じであってもよいし、2以上の層で異なっていてもよい。
【0035】
ここで、本実施形態の光ファイバー織物21の袋織り部23を構成する光ファイバー群25、表保護層26、裏保護層27、最裏側層28及びクッション層4の総目付量(例えば、500g/m2 )は、特許文献2に記載の光ファイバー織物の袋織り部を構成する光ファイバー群、表保護層、裏保護層及びクッション層の総目付量と一致させることができる。即ち、特許文献2に記載の光ファイバー織物の袋織り部において、総目付量を変えず各層の密度を少しずつ下げて最裏側層28を1枚追加することで、本実施形態の光ファイバー織物21の袋織り部23を構成できる。
【0036】
タブ部24は、意匠用製織部2と同様にして、光ファイバー5と非導光糸6a、7aで製織されている。タブ部24は、意匠用製織部2の端縁2aから延出する光ファイバー群25の先端側を支持する。よって、タブ部24により光ファイバー群25がばらばらに解けない。さらに、タブ部24は、袋織り部23との並び方向において袋織り部23よりも幅狭に形成されている。
【0037】
織物21では、意匠用製織部2の裏面と袋織り部23の裏面(即ち、最裏側層28の裏面)にわたってクッション層4が積層されている。さらに、タブ部24の裏面にもクッション層4が積層されている。クッション層4は、フレームラミネート加工により織物21に連続的に積層される。フレームラミネート加工は、クッション層4の表面を加熱して溶かし織物21に貼り付ける積層方法である。ただし、クッション層4の積層方法は特に限定されず、フレームラミネート加工の他に接着剤などによる積層方法を採用してもよい。
【0038】
なお、
図3等においては、表保護層26、裏保護層27、最裏側層28及び光ファイバー群25が離間可能な層であることを強調するために、それらが弛んだ状態を示しているが、実際には、弛んでいてもよいし、弛んでいなくてもよい。
【0039】
次に、上記構成の表皮材1の製造方法について説明する。本実施形態に係る表皮材1の製造方法は、以下に述べる準備工程S1、除去工程S2、収束体形成工程S3及び保護袋部形成工程S4を含んでいる。
【0040】
準備工程S1は、
図4に示すように、織物21を用意する工程である。
【0041】
除去工程S2は、
図5に示すように、袋織り部23の最裏側層28とともにクッション層4のうちの最裏側層28に積層された部分を除去する工程である。具体的に、除去工程S2では、タブ部24を裁断し(
図5(a)参照)、その後、最裏側層28及び該最裏側層28に積層されたクッション層4を裁断する(
図5(b)(c)参照)。
【0042】
収束体形成工程S3は、
図6及び
図7に示すように、光ファイバー群25を所定本数に束ねて複数の光ファイバー収束体10を形成する工程である。具体的に、収束体形成工程S3では、表保護層26を裏保護層27から引き離すようにめくり(
図6(a)(b)参照)、結束糸29を切断して表保護層26から光ファイバー群25aを分離し、光ファイバー群25aの所定本数ごとにスリーブ12を挿通するとともに、結束糸29を切断して裏保護層27から光ファイバー群25bを分離し、光ファイバー群25bの所定本数ごとにスリーブ12を挿通する(
図6(c)参照)。
【0043】
次に、光ファイバー群25a、25bに対するスリーブ12の挿通位置を調整してスリーブ12をカシメなどにより固定して結束部13を形成するとともに、スリーブ12の先端からはみ出る光ファイバー5の余剰部分33を切断する(
図7(a)参照)。これにより、光ファイバー収束体10a、10bが形成される。次いで、表保護層26を裏保護層27に対して引き戻し、光ファイバー収束体10a、10bを挟んで表保護層26と裏保護層27を重ね合わせる(
図7(b)(c)参照)。
【0044】
なお、収束体形成工程S3においては、裏保護層27を表保護層26から引き離すようにめくって光ファイバー10a、10bを形成してもよい。
【0045】
保護袋部形成工程S4は、
図8に示すように、表保護層26及び裏保護層27を光ファイバー収束体10の外側で接合(具体的に溶着)して光ファイバー収束体10を保護する保護袋部11(即ち、光源接続用端部3)を形成する工程である。具体的に、保護袋部形成工程S4では、表保護層26及び裏保護層27の間に光ファイバー収束体10を介在させた状態において、表保護層26及び裏保護層27を光ファイバー収束体10の収容に適した大きさに合わせて余剰部分34を裁断する(
図8(a)参照)。次に、表保護層26及び裏保護層27が光ファイバー収束体10と対応した平面形状となるように不要部分35を切り取って一対の保護層15、15を形成するとともに、不要部分35が切り取られた表保護層26及び裏保護層27において光ファイバー収束体10の外辺sに沿う側縁部30(即ち、一対の保護層15の側縁部15a)を接合して保護袋部11を形成する(
図8(b)参照)。これにより、表皮材1が得られる。なお、スリーブ12の先端側は公知の研磨装置36により研磨される(
図9参照)。
【0046】
ここで、保護袋形成工程S4は、
図10に示すように、裁断刃42(例えば、トムソン刃など)及び押圧部43を備える加工装置41を用い、加熱された裁断刃42による表保護層26及び裏保護層27の不要部分35の溶断と、加熱された押圧部43による表保護層26及び裏保護層27の所定部分の溶着と、を実質的に同時に行う。
【0047】
加工装置41は、互いに近接離反可能な一対の型41a、41bを備えている。裁断刃42は、一方の型41bに設けられている。また、押圧部43はヒータなどの加熱源44を有している。また、押圧部43は、両方の型41a、41bの互いに対向する位置に設けられている。一方の型41bに設けられる押圧部43は裁断刃42に隣接して設けられている。よって、押圧部43の加熱源44により裁断刃43が加熱される。ただし、押圧部43とは別の加熱源により裁断刃42を加熱するようにしてもよい。
【0048】
以上より、本実施形態の表皮材1によると、光ファイバー5と非導光糸6a、7aで製織された意匠用製織部2と、意匠用製織部2に隣接される光源接続用端部3と、を備え、意匠用製織部2の裏面にはクッション層4が積層されている。さらに、光源接続用端部3は、光ファイバー5からなる光ファイバー群25を所定本数に束ねて形成される複数の光ファイバー収束体10と、非導光糸6a、7aで製織されて光ファイバー収束体10を保護する保護袋部11と、を有する。これにより、光ファイバー収束体10を十分に保護して耐久性を向上させることができる。より具体的に、保護袋部11により光ファイバー収束体10の扇状に拡がる根元部分から結束部13(又は結束部13の近傍)までを包み込むように保護でき、表皮材1の使用時の光ファイバー収束体10の耐久性が高められる。さらに、意匠用製織部2の裏面にはクッション層4が積層されているので、表皮材1を車両用ドアトリム51のオーナメント53として好適に利用できる。
【0049】
また、本実施形態の表皮材1では、保護袋部11は、非導光糸6a、7aで製織されて光ファイバー収束体10を挟んで配置される一対の保護層15、15を有し、一対の保護層15、15は、光ファイバー収束体10の外側で接合されている。これにより、保護袋部11により光ファイバー収束体10を効果的に保護できる。
【0050】
さらに、本実施形態の表皮材1では、一対の保護層15、15は、意匠用製織部3から離れるに連れて幅狭となる平面形状に形成されているとともに、光ファイバー収束体10の外辺sに沿う側縁部15aで接合されている。これにより、保護袋部11の軽量化を図り得るとともに、保護袋部11により光ファイバー収束体10を効果的に保護できる。
【0051】
本実施形態の表皮材1の製造方法によると、光ファイバー5と非導光糸6a、7aで製織された意匠用製織部2と、意匠用製織部2に隣接される袋織り部23と、を備える織物21を用意する準備工程S1と、袋織り部23の最裏側層28とともにクッション層4のうちの最裏側層28に積層された部分を除去する除去工程S2と、光ファイバー群25を所定本数に束ねて複数の光ファイバー収束体10を形成する収束体形成工程S3と、袋織り部23の表保護層26及び裏保護層27を光ファイバー収束体10の外側で接合して光ファイバー収束体10を保護する保護袋部11を形成する保護袋部形成工程S4と、を含む。これにより、光ファイバー収束体10を十分に保護して耐久性を向上させたクッション層4付きの表皮材1を効率良く得ることができる。より具体的に、織物21の袋織り部23を構成する表保護層26及び裏保護層27により保護袋部11を形成しているので、追加の保護部品(例えば、コルゲートチューブなど)を不要にでき、コストダウンを図ることができる。さらに、従来廃棄予定の表保護層26及び裏保護層27を活用することで廃棄工数及び廃棄物量を削減できる。
【0052】
また、本実施形態の表皮材1の製造方法では、除去工程S2の後に収束体形成工程S3を行う。これにより、収束体形成工程S3では袋織り部23にクッション層4が存在しないため、光ファイバー収束体10を容易に形成できる。
【0053】
また、本実施形態の表皮材1の製造方法では、表保護層26と裏保護層27の接合は溶着である。これにより、非導光糸6a、7aで製織された表保護層26及び裏保護層27を容易に接合できる。
【0054】
また、本実施形態の表皮材1の製造方法では、保護袋部形成工程S4は、表保護層26及び裏保護層27を光ファイバー収束体10と対応した平面形状となるように切断するとともに、切断された表保護層27及び裏保護層28において光ファイバー収束体10の外辺sに沿う側縁部30を接合して保護袋部11を形成する。これにより、軽量で保護性能に優れた保護袋部11を効率良く形成できる。
【0055】
さらに、本実施形態の表皮材1の製造方法では、保護袋部形成工程S4は、裁断刃42及び押圧部43を備える加工装置41を用い、加熱された裁断刃42による表保護層26及び裏保護層27の溶断と、加熱された押圧部43による表保護層26及び裏保護層27の溶着と、を同時に行う。これにより、保護袋部11を更に効率良く形成できる。
【0056】
本実施形態の織物21によると、光ファイバー5と非導光糸6a、7aで製織された意匠用製織部2と、意匠用製織部2に隣接される袋織り部23と、を備える。さらに、袋織り部23は、光ファイバー5からなる光ファイバー群25と、光ファイバー群25の表面側に配置される表保護層26と、光ファイバー群25の裏面側に配置される裏保護層27と、裏保護層27の裏面側に配置される最裏側層28と、を有し、表保護層26、裏保護層27及び最裏側層28のそれぞれは非導光糸6a、7aで製織されており、意匠用製織部2の裏面と最裏側層28の裏面とにわたってクッション層4が積層されている。これにより、袋織り部23の最裏側層28とともにクッション層4のうちの最裏側層28に積層された部分を除去することで、袋織り部23において表保護層26及び裏保護層27を残しつつクッション層4を除去できる。よって、表皮材1の製造方法に好適に用いることができる。
【0057】
<実施形態2>
次に、実施形態2に係る表皮材1Aについて
図12~
図15を用いて説明するが、実施形態1の表皮材1と略同様な構成部位には同じ符号を付けて詳説を省略する。本表皮材1Aは、クッション層4を備えない織物21Aを用いて得られることが表皮材1との主な相違点である。
【0058】
本表皮材(光ファイバー表皮材)1Aは、
図12及び
図13に示すように、光ファイバー5と非導光糸6a、7aで製織された意匠用製織部2と、意匠用製織部2に隣接される光源接続用端部3と、を備えている。光源接続用端部3は、光ファイバー群25を所定本数(例えば、10~30本)に束ねて形成される光ファイバー収束体10と、非導光糸6a、7aで製織されて光ファイバー収束体10を保護する保護袋部11と、を有している。
【0059】
保護袋部11は、非導光糸6a、7aで製織されて光ファイバー収束体10を挟んで配置される一対の保護層15、15を有している。各保護層15は、光ファイバー収束体10の外側で接合部(具体的に溶着部)17により接合されている。
【0060】
本表皮材1Aの製造方法で用いられる織物(光ファイバー織物)21Aは、
図14に示すように、光ファイバー5と非導光糸6a、7aで製織された意匠用製織部2と、意匠用製織部2に隣接される袋織り部(多重織部)23Aと、を備えている。さらに、織物21Aは、袋織り部23Aの意匠用製織部2と反端側の端縁に隣接されるタブ部24を更に備えている。
【0061】
袋織り部23Aは、光ファイバー5からなる光ファイバー群25a、25bと、光ファイバー群25aの表面側に配置される表保護層26と、光ファイバー群25bの裏面側に配置される裏保護層27と、を有している。なお、本織物21Aの袋織り部23Aは、織物21の袋織り部23を構成する最裏側層28を有していない。
【0062】
本表皮材1Aの製造方法は、以下に述べる準備工程S1’、除去工程S2’、収束体形成工程S3及び保護袋部形成工程S4を含んでいる。なお、各工程S3、S4は、上記の表皮材1の製造方法で説明した各工程S3、S4と同じ工程である。
【0063】
準備工程S1’は、織物21Aを用意する工程である(
図15(a)参照)。また、除去工程S2’は、タブ部24を裁断する工程である(
図15(b)参照)。また、収束体形成工程S3は、光ファイバー群25を所定本数に束ねて複数の光ファイバー収束体10を形成する工程である(
図15(c)参照)。さらに、保護袋部形成工程S4は、表保護層26及び裏保護層27を光ファイバー収束体10の外側で接合(具体的に溶着)して光ファイバー収束体10を保護する保護袋部11(即ち、光源接続用端部3)を形成する工程である(
図15(d)参照)。さらに、保護袋形成工程S4は、裁断刃42及び押圧部43を備える加工装置41を用いて行われる(
図10参照)。
【0064】
なお、上記の製法により得られた表皮材1Aにおいては、
図12(b)中に仮想線で示すように、意匠用製織部2の裏面にクッション層4を後付けしてもよい。
【0065】
以上より、本実施形態の表皮材1Aによると、上記の表皮材1と略同様の作用効果を奏するとともに、光ファイバー5と非導光糸6a、7aで製織された意匠用製織部2と、意匠用製織部2に隣接される光源接続用端部3と、を備え、光源接続用端部3は、光ファイバー5からなる光ファイバー群25を所定本数に束ねて形成される複数の光ファイバー収束体10と、非導光糸6a、7aで製織されて光ファイバー収束体10を保護する保護袋部11と、を有するので、光ファイバー収束体10を十分に保護して耐久性を向上させることができる。
【0066】
さらに、本実施形態の表皮材1Aの製造方法によると、上記の表皮材1の製造方法と略同様の作用効果を奏するとともに、光ファイバー5と非導光糸6a、7aで製織された意匠用製織部2と、意匠用製織部2に隣接される袋織り部23Aと、を備える織物21Aを用意する準備工程S1’と、袋織り部23Aの光ファイバー群25を所定本数に束ねて複数の光ファイバー収束体10を形成する収束体形成工程S3と、袋織り部23Aの表保護層26及び裏保護層27を光ファイバー収束体10の外側で接合して光ファイバー収束体10を保護する保護袋部11を形成する保護袋部形成工程S4と、を含むので、光ファイバー収束体10を十分に保護して耐久性を向上させた表皮材1Aを効率良く得ることができる。
【0067】
尚、本発明においては、上記実施形態に限られず、目的、用途に応じて本発明の範囲内で種々変更した実施例とすることができる。即ち、上記実施形態では、平面台形状の一対の保護層15、15を備える表皮材1、1Aを例示したが、光ファイバー収束体10を収容保護できる限り、一対の保護層15、15の平面形状や大きさ等は特に限定されない。例えば、
図16(a)に示すように、平面矩形状の一対の保護層15、15を備える表皮材1、1Aを採用してもよい。
【0068】
また、上記実施形態では、隣り合う保護袋部11が離間した表皮材1、1Aを例示したが、これに限定されず、
図16(b)に示すように、隣り合う保護袋部11が連結部20で連結された表皮材1、1Aを採用してもよい。連結部20は、保護袋部形成工程S4において表保護層26及び裏保護層27の不要部分35を除去しないことで形成できる。
【0069】
また、上記実施形態では、1つの保護袋部11内に1組の光ファイバー収束体10a、10bを収容保護する表皮材1、1Aを例示したが、これに限定されず、例えば、
図16(c)に示すように、1つの保護袋部11内に複数組の光ファイバー収束体10a、10bを収容保護する表皮材1、1Aを採用してもよい。
【0070】
さらに、光ファイバー収束体10が意匠用製織部2の厚さ方向に分けられず1層である場合、1つの保護袋部11内に1つの光ファイバー収束体10を収容保護してもよいし、1つの保護袋部11内に意匠用製織部2の端縁2aに沿って設けられる複数の光ファイバー収束体10を収容保護してもよい。
【0071】
また、上記実施形態では、意匠用製織部2、袋織り部23、23A及びタブ部24を備える織物21、21Aを例示したが、これに限定されず、例えば、タブ部24を備えずに、意匠用製織部2及び袋織り部23、23Aを備える織物21、21Aを採用してもよい。この場合、表皮材1の製造方法の除去工程S2においてタブ部24を除去する必要はない。さらに、表皮材1Aの製造方法においてタブ部24の除去工程S2’を必要としない。
【0072】
また、上記実施形態では、結束糸29により分けられた光ファイバー群25a、25bを有する織物21、21Aを例示したが、これに限定されず、例えば、
図4(b)中に仮想線で示すように、結束糸29を用いずに、光ファイバー群25a、25bの間に両者を分けるように非導光糸6a、7aで製織された仕切層46を備える織物21、21Aを採用してもよい。
【0073】
また、上記実施形態では、最裏側層28及びクッション層4を除去した後に光ファイバー収束体10を形成する表皮材1の製法を例示したが、これに限定されず、例えば、光ファイバー収束体10を形成した後に最裏側層28及びクッション層4を除去してもよい。
【0074】
また、上記実施形態では、保護袋部形成工程S4において、表保護層26及び裏保護層27の余剰部分34の切断と不要部分35の切断を別々に行う表皮材1、1Aの製法を例示したが、これに限定されず、例えば、
図17に示すように、表保護層26及び裏保護層27に対して余剰部分34と不要部分35の一体物を切断してもよい。
【0075】
また、上記実施形態では、保護袋部形成工程S4において、表保護層26及び裏保護層27の不要部分35の切断と所定箇所の接合とを同時に行う表皮材1、1Aの製法を例示したが、これに限定されず、例えば、各層26、27の不要部分35を切断した後に所定箇所を接合したり、各層26、27の所定箇所を接合した後に不要部分35を切断したりしてもよい。
【0076】
さらに、上記実施形態では、車両用ドアトリム51を構成するオーナメント53に用いられる表皮材1、1Aを例示したが、これに限定されず、例えば、インストルメントパネル、ルーフトリム、フロアトリム、ラゲージトリム、リヤサイドトリム、リヤパーシェル、パッケージトレー、ピラーガーニッシュ、スイッチベース、クオーターパネル、アームレスト、センターコンソール、オーバヘッドコンソール、サンバイザー、シートなどの車両用製品を構成する内装部品に用いられる表皮材1としてもよい。さらに、ソファや椅子などの家具を構成する内装部品に用いられる表皮材1であってもよい。
【0077】
前述の例は単に説明を目的とするものでしかなく、本発明を限定するものと解釈されるものではない。本発明を典型的な実施形態の例を挙げて説明したが、本発明の記述および図示において使用された文言は、限定的な文言ではなく説明的および例示的なものであると理解される。ここで詳述したように、その形態において本発明の範囲または精神から逸脱することなく、添付の特許請求の範囲内で変更が可能である。ここでは、本発明の詳述に特定の構造、材料および実施例を参照したが、本発明をここにおける開示事項に限定することを意図するものではなく、むしろ、本発明は添付の特許請求の範囲内における、機能的に同等の構造、方法、使用の全てに及ぶものとする。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明は、光ファイバーを織り込んだ表皮材に関する技術として広く利用される。
【符号の説明】
【0079】
1,1A;表皮材、2;意匠用製織部、3;光源接続用端部、4;クッション層、5;光ファイバー、6a,7a;非導光糸、10,10a,10b;光ファイバー収束体、11;保護袋部、15,15;一対の保護層、15a;側縁部、21,21A;織物、23,23A;袋織り部、25,25a,25b;光ファイバー群、26;表保護層、27;裏保護層、28;最裏側層、30;側縁部、s;光ファイバー収束体の外辺。