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特開2024-135406情報処理装置、情報処理方法及びコンピュータプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135406
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/06 20240101AFI20240927BHJP
【FI】
G06Q50/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023046066
(22)【出願日】2023-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100118876
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 順生
(72)【発明者】
【氏名】木村 和博
(72)【発明者】
【氏名】進 博正
(72)【発明者】
【氏名】福原 竜馬
(72)【発明者】
【氏名】志賀 慶明
【テーマコード(参考)】
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5L049CC06
5L050CC06
(57)【要約】
【課題】電力市場の価格の推定の精度を向上させる情報処理装置、情報処理方法及びコンピュータプログラムを提供する。
【解決手段】本開示の情報処理装置は、電力市場で取引可能な電力を発電する発電設備の発電量の計画データを取得し、前記計画データに基づき対象日における発電量の変化に関する第1イベントを検知した場合、前記対象日において前記第1イベントに起因する前記電力市場の市場価格の変動額を推定する処理部を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力市場で取引可能な電力を発電する発電設備の発電量の計画データを取得し、前記計画データに基づき対象日における発電量の変化に関する第1イベントを検知した場合、前記対象日において前記第1イベントに起因する前記電力市場の市場価格の変動額を推定する処理部
を備えた情報処理装置。
【請求項2】
前記第1イベントは、前記対象日における前記発電量の変化量が閾値を超えることである
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記第1イベントは、前記対象日における前記発電量の変化量と、前記対象日より前の取引日における前記発電量の変化量との差が閾値を超えることである
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記処理部は、前記電力市場における前記市場価格の実績データに基づき、前記対象日において前記第1イベントが発生しない場合の市場価格である第1市場価格を推定し、
前記処理部は、前記第1市場価格と、前記変動額とに基づき、前記対象日において前記第1イベントが発生する場合の市場価格である第2市場価格を推定する
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記処理部は、前記第1市場価格と前記変動額とを含む関数により前記第2市場価格を算出する
請求項4に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記計画データは、前記発電設備の発電量の変動の原因、前記変動の種別、前記発電設備の種別の少なくとも一方を含み、
前記変動の原因、及び前記変動の種別、前記発電設備の種別の少なくとも1つの情報をユーザが指定する入力部を備え、
前記処理部は、前記ユーザが指定した前記情報に一致する前記発電設備の前記発電量の合計の変化に基づき前記第1イベントが発生するか否かを判定する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記第1イベントは、前記電力市場が対象とするエリア内に存在する複数の発電設備の発電量の合計の変化に関するイベントである
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記第1イベントは、前記発電量の合計の変化量が閾値を超えることである
請求項7に記載の情報処理装置。
【請求項9】
前記第1イベントは、前記対象日における前記発電量の変化量の合計と、前記対象日より前の取引日における前記発電量の変化量の合計との差が閾値を超えることである
請求項7に記載の情報処理装置。
【請求項10】
前記処理部は、前記市場価格の実績データに基づき、単位量だけ電力取引量が増えた場合の前記市場価格の変動額の推定値を表す係数を算出し、
前記処理部は、前記対象日における前記発電量の変化量と、前記対象日より前の取引日における前記発電量の変化量との差に前記係数を乗じることにより、前記変動額を算出する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項11】
前記処理部は、前記市場価格の実績データと、前記対象日より前の期間の気象予測データとを取得し、
前記処理部は、前記対象日における気象予測値を取得し、取得した気象予測値と、前記実績データと前記気象予測データとに基づき、前記対象日における前記第1市場価格を算出する
請求項4に記載の情報処理装置。
【請求項12】
前記処理部は、前記市場価格の実績データと気象予測データとを取得し、前記実績データと前記気象予測データのそれぞれは、前記対象日より前の第1期間と、前記第1期間より前の第2期間とを含み、
前記処理部は、前記対象日における気象予測値を取得し、前記気象予測値に基づき気象に関する第2イベントを検知した場合に、前記第2期間の前記実績データと前記第2期間の前記気象予測データに基づき前記第1市場価格を算出し、前記第2イベントを検知しない場合に前記第1期間の前記実績データと前記第1期間の前記気象予測データとに基づき前記第1市場価格を算出する
請求項4に記載の情報処理装置。
【請求項13】
前記処理部は、前記対象日の前記発電設備の発電量について第1時点で取得した第1の前記計画データと、前記対象日の前記発電設備の発電量について前記第1時点より前の第2時点の前記計画データとを取得し、第1の前記計画データと、第2の前記計画データとに基づき、前記差を算出する
請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項14】
前記発電量の変化量は、前記発電量の低下量である
請求項2又は3に記載の情報処理装置。
【請求項15】
前記発電量の変化量は、前記発電量の低下量である
請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項16】
前記発電量の合計の変化量は、前記発電量の合計の低下量である
請求項8に記載の情報処理装置。
【請求項17】
前記発電量の合計の変化量は、前記発電量の合計の低下量である
請求項9に記載の情報処理装置。
【請求項18】
電力市場で取引可能な電力を発電する発電設備の発電量の計画データを取得し、
前記計画データに基づき対象日における発電量の変化に関する第1イベントを検知した場合、前記対象日において前記第1イベントに起因する前記電力市場の市場価格の変動額を推定する
情報処理方法。
【請求項19】
電力市場で取引可能な電力を発電する発電設備の発電量の計画データを取得するステップと、
前記計画データに基づき対象日における発電量の変化に関する第1イベントを検知した場合、前記対象日において前記第1イベントに起因する前記電力市場の市場価格の変動額を推定するステップと
をコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、情報処理装置、情報処理方法及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
再生可能エネルギーの普及と運用に際して、電力市場の将来価格及び入札量を確率的に推定し、様々なアプリケーションの要求に応じる必要がある場合がある。電力の需要と供給は主に気象に左右される為、数値気象シミュレータによる気象予測を利用して電力市場の価格を推定することで良い精度が得られる。具体例として、対象日の気象予測値に気象条件が類似した過去の市場価格を取得し、電力市場に関する諸量(価格や入札量)を推定する方法がある。
【0003】
しかしながら、この方法では、急激な電力市場の変化(価格高騰等)を事前に予期することができない。市場価格が決まる要因としては季節的な事情や、発電設備のトラブル、近年の世界情勢、自然災害等様々なものがあり、気象条件の類似性に重きを置いた手法では精度の高い予測ができない場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019―96164号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本実施形態は、電力市場の市場価格の推定の精度を向上させる情報処理装置、情報処理方法及びコンピュータプログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の情報処理装置は、電力市場で取引可能な電力を発電する発電設備の発電量の計画データを取得し、前記計画データに基づき対象日における発電量の変化に関する第1イベントを検知した場合、前記対象日において前記第1イベントに起因する前記電力市場の市場価格の変動額を推定する処理部を備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本実施形態に係る情報処理装置である価格高騰予測装置の機能ブロック図。
図2】電力市場実績データ・エリアの具体例を示す図。
図3】電力市場実績データ・全国の具体例を示す図。
図4】気象予測データの具体例を示す図。
図5】発電設備停止計画データの具体例を示す図。
図6】価格高騰予測装置(予測結果演算部)からの出力データの一例を示す図。
図7図1の価格高騰予測装置の全体の動作の一例のフローチャート。
図8】データ抽出範囲決定部、通常価格予測部及び予測結果演算部の動作の一例を示すフローチャート。
図9】データ抽出範囲の変更例を示す図。
図10】検索対象データの作成例を示す図。
図11】通常価格予測部が行う通常価格予測の動作を模式的に示した図。
図12】データ抽出範囲の変更が行われた場合の予測結果演算部の計算例を模式的に示す図。
図13】予測結果演算部からの出力データの他の例を示す図。
図14】本実施形態に係る情報処理装置としての価格高騰予測装置のハードウェア構成例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら、本実施形態について説明する。
【0009】
図1は、本実施形態に係る情報処理装置である価格高騰予測装置10の機能ブロック図である。価格高騰予測装置10は大きく処理部100と、データ取得部200と、データ記憶部300と、入力部400とを備える。処理部100は、価格高騰予測機能100Aと通常時予測機能100Bと電力市場予測機能100Cとを備える。
【0010】
本実施形態は、発電所(発電設備)の稼働状況、具体的には発電設備の発電量の計画データに基づき、対象日において電力市場の市場価格が高騰するかを判定する。例えば、発電情報公表ウェブサイト(HJKS)に公開されている、発電所(発電設備)の発電低下量(停止量)の計画値のデータを定期的又は間欠的に取得し、低下量又は前日からの低下量の変化量に基づき、発電量の変化に関するイベント(第1イベント又は発電設備要因イベント)を検知する。発電設備要因イベントが検知されたか否かで、価格高騰の発生有無を推定する。
【0011】
第1イベントが検知された場合は価格高騰が発生し、第1イベントが検知されない場合は価格高騰が発生しないと決定する。価格高騰が発生することを決定した場合には、対象日において第1イベントに起因する電力市場の市場価格の変動額を推定し、この変動額に基づき、対象日における市場価格を推定する。これにより、対象日において市場価格が高騰する場合にも、高い精度で市場価格を推定できる。例えば、発電設備の発電状況が突発的な原因により対象日において発電が停止又は発電量が低下する場合でも、高い精度で対象日の市場価格を推定できる。
【0012】
なお、発電所における発電量の低下量は、低下量の分だけ発電が停止されるという意味で停止量とも呼ばれる。発電設備が停止した場合は定格出力分の発電量が低下する。発電設備の出力を低下させる場合には、低下した分が低減量となる。以下の説明においては主に発電設備の停止という表現を用いる場合があるが、発電設備の停止には発電設備の出力低下の場合も含まれてもよいとする。
【0013】
また本実施形態では、発電所(発電設備)の稼働状況以外に、予測対象日の気象予測値に基づき気象に関するイベント(第2イベント又は気象要因イベント)を検知する。気象要因イベントが検知されたか否かで、気象原因による市場価格の高騰が発生するかを判定する。第2イベントが検知された場合は気象原因による価格高騰が発生することを決定し、第2イベントが検知されない場合は気象原因による価格高騰が発生しないことを決定する。価格高騰が発生することが決定された場合、予測対象日と気象条件が類似する過去のデータ(過年度の気象予測データ及び電力市場実績データ)を用いて市場価格を推定する。これにより、気象条件の急変動により発電量が低下(発電の停止を含む)する場合でも、対象日における市場価格を高い精度で推定できる。
【0014】
このように本実施形態によれば、発電設備のトラブルによる発電量の低下や、気象条件の突発的な変動により市場価格が高騰する場合でも、市場価格を高い精度で推定できる。
【0015】
以降の説明において、市場価格を推定する対象日として将来の日(予測対象日)を主に想定し、予測対象日における市場価格を推定する場合を示す。本実施形態では、将来の日の市場価格を推定することを特に市場価格を予測すると呼び、以下では、主に市場価格等を推定することを、市場価格を予測すると記載する。以下、本実施形態についてさらに詳細に説明する。
【0016】
データ取得部200は、気象予測取得部210、電力市場実績取得部220、発電設備停止計画取得部230を備える。
【0017】
気象予測取得部210は、気象予測システム1から全国のアメダス地点での気象予測結果(例、数値気象シミュレータWRFの計算結果等)を含む気象予測データを取得し、データ記憶部300へ気象予測データを送る。気象予測データは1時間ごと、1日ごと、1週間ごとなど任意の時間間隔で取得してもよいし、必要なタイミングで気象予測システム1に取得要求を送ることにより、取得されてもよい。
【0018】
電力市場実績取得部220は、電力市場実績値管理システム2から電力市場の市場価格及び取引量(約定量)の実績値、取引市場の入札量、仮想システム価格のデータなどを、電力市場実績データとして取得し、データ記憶部300へ電力市場実績データを送る。電力市場実績値管理システム2から取得可能な情報の例は、例えば、一般社団法人、日本卸電力取引所(JEPX)のウェブサイトhttp://www.jepx.org/market/index.htmlに開示されたものがある。電力市場実績データは1日ごと、電力市場における取引時間の単位となる1時間コマなど任意の間隔で取得してもよいし、必要なタイミングで電力市場実績値管理システム2に取得要求を送ることにより、取得されてもよい。
【0019】
発電設備停止計画取得部230は、発電所稼働状況管理システム3から全国の電源種別の発電所(発電設備)の稼働状況及び停止状況に関するデータ(発電設備停止計画データ)を取得し、データ記憶部300へ発電設備停止計画データを送る。発電所稼働状況管理システム3から取得可能な情報の例は、例えば発電情報公表システム、HJKSのウェブサイトhttps://hjks.jepx.or.jp/hjks/topに開示されたものがある。発電設備停止計画データは間欠的に取得できれば、取得するタイミングについては特に限定されない。1時間ごと、1日ごと、1週間ごとなど任意の時間間隔で取得してもよいし、必要なタイミングで発電所稼働状況管理システム3に取得要求を送ることにより、取得されてもよい。
【0020】
データ記憶部300は、気象予測記憶部310、電力市場実績記憶部320、発電設備停止計画記憶部330を備える。
【0021】
気象予測記憶部310は、気象予測取得部210から気象予測データを受け、気象予測データを記憶する。気象予測記憶部310には、過去に取得された気象予測データも記憶される。記憶された気象予測データは、価格高騰予測機能100Aへ送られるとともに、通常時予測機能100Bの通常価格予測用データ記憶部180へ送られる。通常価格予測用データ記憶部180は、気象予測記憶部310から受けた気象予測データを記憶する。
【0022】
電力市場実績記憶部320は、電力市場実績取得部220から電力市場実績データを受け、電力市場実績データを記憶する。電力市場実績記憶部320には、過去に取得された電力市場実績データも記憶されている。記憶された電力市場実績データは、価格高騰予測機能100Aへ送られるとともに、通常時予測機能100Bの通常価格予測用データ記憶部180へ送られる。通常価格予測用データ記憶部180は、電力市場実績記憶部320から受けた電力市場実績データを記憶する。
【0023】
発電設備停止計画記憶部330は、発電設備停止計画取得部230から発電設備停止計画データを受け、発電設備停止計画データを記憶する。電力市場実績記憶部320には、過去に取得された電力市場実績データも記憶されている。発電設備停止計画記憶部330には、過去に取得された電力市場実績データも記憶されている。記憶された発電設備停止計画データは、価格高騰予測機能100Aへ送られる。
【0024】
入力部400は、ユーザからの入力を受け付け、入力された情報を価格高騰予測機能100Aへ送る。入力部400は、キーボード、マウス、タッチパネル、音声入力部、ジェスチャ入力部など任意の方法で情報を入力可能な装置である。入力部400で受け付ける情報の種類を以下に[1]~[3]として示す。
【0025】
[1]発電設備のトラブルが原因の価格高騰の発生有無を判定するために発電設備の発電量の低下量を集計する対象となる項目(例、停止原因、停止種別(計画停止、計画外停止))に関する情報(集計項目情報)。後述するように、入力された項目について発電所における発電設備の停止計画値(予定されている発電量(例えば定格出力)から減少する発電量である低下量又は停止量の計画値)を電力市場に対応するエリア単位で合計し、合計された値を対象に当該電力市場における価格高騰の発生有無を判定する。より詳細には、合計された値に基づき、発電量の変化に関するイベント(第1イベント又は発電設備要因イベント)が検知されるかを判定する。発電設備要因イベントが検知された場合は、発電設備原因の価格高騰が起こることを決定し、発電設備要因イベントが検知されない場合は、発電設備原因の価格高騰が起こらないことを決定する。このようにして、価格高騰の発生有無を判定する。なお、集計対象となる項目は、停止原因及び停止種別の他、発電設備の種別でもよい。
【0026】
[2]価格高騰の有無を判定するための判定条件(発電設備原因判定条件)を示す情報。判定条件の例として発電量の低下量(発電低下量)の閾値、及び発電低下量の前日値からの変化量の閾値がある。
【0027】
[3]気象が原因の価格高騰を判定するための判定の対象となる項目と、判定条件(気象原因判定条件)とを示す情報。具体的には、どの気象(気象予測)に着目するか項目に関する情報と、当該気象に関する気象予測値と比較するための閾値の情報。後述するように、気象予測の項目が示す気象予測値に基づき気象に関するイベント(第2イベント又は気象要因イベント)が検知されるかを判定する。気象要因イベントが検知される場合は、気象原因の価格高騰が起こることを決定し、検知されない場合は、気象原因の価格高騰が起こらないことを決定する。
【0028】
価格高騰予測機能100Aの概要を説明する。
価格高騰予測機能100Aは、データ記憶部300から電力市場実績データと発電設備停止計画データとを受け、入力部400より集計項目情報と判定条件(発電設備原因判定条件)とを受け取る。価格高騰予測機能100Aは、発電設備が原因の電力市場価格の高騰(以下、価格高騰)が発生するか否かの判定を行い、価格高騰が起こる場合の高騰額を算出する。価格高騰予測機能100Aは、算出した高騰額を示すデータを出力部500へ送る。
【0029】
本実施形態において価格高騰とは、一例としてエリアごとに基準となる価格を決め、基準となる価格以上となることと定義される。基準となる価格の決め方は任意でよい。直近の市場価格に基づき、高騰していない場合の通常価格と高騰している場合の価格(通常価格+高騰額)をそれぞれ特定し、これらの価格を2分する価格を、基準となる価格としてもよい。その他の決め方も可能である。基準となる価格の決め方の一例を以下に示す。
例1:電力市場で取引対象となる1日を30分単位の48時間コマの時間帯に分割して時間コマごとに商品(電力)の取引を行う場合に、各時間コマで基準となる価格を40円/kWhに一律に決定する。
例2:電力市場における過去1年間の電力市場実績データから、時間コマごとにそれぞれ75パーセンタイル値を基準となる価格とする。
【0030】
また、価格高騰予測機能100Aは、気象予測記憶部310から気象予測データを受け、入力部400より気象予測の項目と判定条件(気象原因判定条件)とを受け取る。価格高騰予測機能100Aは、気象が原因の価格高騰が起こるか否かの判定を行う。価格高騰が起こらないことを決定した場合、気象が原因での高騰が発生しない場合の市場価格を計算するために必要なデータ抽出範囲を決定し(例えば予測対象日の前日から7日間など)、特定したデータ抽出範囲を示す情報を通常時予測機能100Bに送る。価格高騰が起こることを決定した場合は、気象が原因で高騰する場合の市場価格を計算するために必要なデータ期間の範囲(データ抽出範囲)を気象予測データ及び電力市場実績データからそれぞれ特定し(例えば気象条件が類似している過年度のある期間)、特定したデータ抽出範囲を示す情報を通常時予測機能100Bに送る。このように、気象が原因の高騰が起こると決定した場合は、データ抽出範囲を通常時から変更する。気象が原因の価格高騰が起こる場合の市場価格及び気象が原因の価格高騰が行らない場合の市場価格は通常時予測機能100Bで算出される。
【0031】
以下、価格高騰予測機能100Aについてさらに詳細に説明する。
価格高騰予測機能100Aは、発電設備原因の価格高騰を予測する機能として、発電設備停止計画データ前処理部110(以下、前処理部110)と、傾向分析部120と、価格高騰判定部(発電設備原因)、130と、価格感応度算出部140と、高騰額予測部150とを備える。
【0032】
前処理部110は、発電設備停止計画データの前処理を行う。より詳細には、前処理部110は、データ記憶部300から発電設備停止計画データを受け、入力部400より集計項目情報を受け取る。前処理部110は、発電設備停止計画データにおいて集計項目情報に示される項目について低下量の計画値をエリア毎に集計(合計)し、低下量の集計データを傾向分析部120へ送る。
【0033】
傾向分析部120は、前処理部110からエリア毎の低下量データを受け、電力市場実績記憶部320から電力市場実績データを受け、エリア毎の低下量の変動(時系列変化)と、電力市場価格の変動(時系列変化)に基づき、電力市場価格の傾向分析等を行う。より詳細には、傾向分析部120は、前処理部110からエリア毎の低下量データを受け、電力市場実績記憶部320から電力市場実績データを受け、エリア毎の低下量の変動傾向と電力市場価格の変動傾向とを分析し、エリア毎の低下量の変化量(例えば前日からの変化量)、及び当該低下量の変化に対する電力市場価格の変化率を算出する。傾向分析部120は、算出した情報を含む発電停止変化量データを価格高騰判定部(発電設備原因)130に送る。低下量の変化量は、例えば予測対象日の発電設備の発電量について第1時点(例えば予測対象日の前日)で取得した第1計画データに基づき算出した低下量と、予測対象日の発電設備の発電量について第1時点より前の第2時点(例えば第1時点の前日)で取得した第2計画データに基づき算出した低下量との差により算出してもよい。つまり第1計画データと第2計画データとの比較により低下量の変動量を算出できる。
【0034】
価格高騰判定部(発電設備原因)130は、発電所(発電設備)の停止が原因の価格高騰(発電設備原因の価格高騰)が発生するか否かを判定する。より詳細には、価格高騰判定部(発電設備原因)130は、傾向分析部120から受けたエリア毎の発電停止変化量データと、入力部400から受ける閾値(低下量の閾値(停止量の閾値)、及び低下量の変化量(低下量の変化量)の少なくとも一方)を用い、発電量の変化に関するイベント(第1イベント又は発電設備要因イベント)が検知されるかを判定する。発電設備要因イベントが検知された場合は、発電設備原因の価格高騰が起こることを決定し、発電設備要因イベントが検知されない場合は、発電設備原因の価格高騰が起こらないことを決定する。発電設備要因イベントが検知されるか否かは、例えば、予測対象日にエリア毎の発電量の低下量が閾値を超えるか否か、及び低下量の変化量(予測対象日の前日(1取引日前の日)からの低下量の変化量)が閾値を超えるか否かで判定する。いずれかの閾値が超える場合は発電設備要因イベントが検知され、発電設備原因の価格高騰が起こることを決定する。価格高騰判定部(発電設備原因)130は、発電設備原因の価格高騰が起こるか否かの情報を高騰額予測部150へ送り、さらに、価格高騰が起こることを決定した場合には、発電量の低下量及び低下量の変化量を示す情報(低下量・変化量情報)を高騰額予測部150へ送る。
【0035】
価格感応度算出部140は、発電量の低下量の変化量(発電設備停止変化量)を電力市場の価格変化量に変換する指標である価格感応度を算出する。より詳細には、価格感応度算出部140は、電力市場実績記憶部320から受ける電力市場実績データを用いて低下量の変化量を電力市場価格の変化量に変換する指標である価格感応度を算出する。価格感応度算出部140は、算出した価格感応度を示すデータ(価格感応度データ)を高騰額予測部150へ送る。
【0036】
高騰額予測部150は、価格高騰判定部(発電設備原因)130で価格高騰の発生が決定された場合の高騰額(発電設備原因の価格高騰がないと仮定した場合の通常価格との価格差)を予測する。より詳細には、高騰額予測部150は、価格高騰判定部(発電設備原因)130において発電設備原因の価格高騰が起こることが決定された場合、発電低下量の変化量データと、価格感応度データとを受け、予測対象日における高騰額を予測する。高騰額予測部150は、予測した高騰額を示すデータ(高騰額データ)を予測結果演算部182に送る。高騰額予測部150は、価格高騰判定部(発電設備原因)130で発電設備原因の価格高騰が発生しないと決定された場合は、高騰額として0円を示す高騰額データを予測結果演算部182に送ってもよい。
【0037】
価格高騰予測機能100Aは、気象原因の価格高騰を予測する機能として、価格高騰判定部(気象原因)160と、データ抽出範囲決定部170とを備える。
【0038】
価格高騰判定部(気象原因)160は、データ記憶部300から気象予測データ及び電力市場実績データを受け、入力部400から気象予測の項目及び閾値を示す情報を受ける。価格高騰判定部(気象原因)160は、気象予測データにおいて気象予測の項目が示す気象予測値を特定し、気象予測値に基づき気象に関するイベント(第2イベント又は気象要因イベント)を検知する。気象要因イベントが検知される場合は、気象原因の価格高騰が起こることを決定し、検知されない場合は、気象原因の価格高騰が起こらないことを決定する。気象要因イベントが発生するか否かは、例えば、気象予測値が閾値を超えるか否かで判定する。この場合、気象予測値が閾値を満たす場合は、気象原因の価格高騰が起こることを決定する。閾値を満たすとは、気象の種類に応じて、閾値を超える場合、下回る場合のいずれもあり得る。価格高騰判定部(気象原因)160は、気象原因の価格高騰が起こるか否かの情報をデータ抽出範囲決定部170に送る。
【0039】
データ抽出範囲決定部170は、価格高騰判定部(気象原因)160からの気象原因の価格高騰が起こるか否かの情報に基づき、通常価格予測部181で用いるデータ抽出範囲(データ期間)を決定する。例えば気象原因の価格高騰が起こらないことが決定された場合は、予測対象日の前日(1日前の取引日)から一定期間(例えば1週間など)の期間を示すデータ抽出範囲を決定する。気象原因の価格高騰が起こることが決定された場合は、気象予測値が示す気象条件に類似する日(又はその前後の一定期間の日を含んでもよい)を含む過去の類似期間を過去の気象予測データから特定し、特定した期間を示すデータ抽出範囲を決定する。過去の類似期間は、例えば30日間など任意の長さでよい。データ抽出範囲決定部170は、決定したデータ抽出範囲を示す情報を、通常時予測機能100Bの通常価格予測部181に送る。
【0040】
通常時予測機能100Bは、通常価格予測用データ記憶部180と、通常価格予測部181と、予測結果演算部182とを備える。
【0041】
通常価格予測用データ記憶部180は、データ記憶部300から電力市場価格実績データと、気象予測データとを受け、記憶する。通常価格予測用データ記憶部180は、データ記憶部300から過去に受けたデータも記憶しておいてよい。
【0042】
通常価格予測部181は、データ抽出範囲決定部170から受けたデータ抽出範囲情報に基づき記憶部180から気象予測データと電力市場価格実績データとを抽出する。通常価格予測部181は、抽出したデータに基づき、市場価格を予測する。通常価格予測部181で行う予測は、通常価格予測と呼ぶ。通常価格予測部181は、データ抽出範囲決定部170から受けたデータ抽出範囲情報に示される範囲のデータを用いることで、気象原因の価格高騰が発生することが決定された場合は、過去の類似期間のデータを用いた、気象原因による価格の高騰を考慮した価格予測を行うことができる。気象原因の価格高騰が発生しないことが決定された場合は、通常時通り、例えば、直近のデータ(例えば予測対象日前の1週間分のデータ)を用いた、価格予測を行うことができる。通常価格予測部181で予測される価格は、発電設備原因の価格高騰が無いと仮定した場合の価格(通常価格又は第1市場価格)であり、通常価格には、気象原因による価格の高騰がある場合にはこの高騰が反映した価格となる。通常価格予測部181は、電力市場価格の予測値(通常価格の予測値)を算出し、予測値を含むデータ(通常価格データ)を、予測結果演算部182へ送る。
【0043】
予測結果演算部182は、通常価格予測部181から通常価格データを受け、高騰額予測部150から高騰額データを受け、電力市場価格の最終的な予測結果を算出する。例えば、通常価格データが示す通常価格に、高騰額データが示す高騰額(発電設備原因の価格高騰がない場合、高騰額は0円でよい)を加算することで、最終的な電力市場価格の予測結果を算出する。通常価格と高騰額との加算により最終的な電力市場価格を算出することは一例に過ぎず、通常価格と高騰額とを含む関数により算出できる限り他の方法でもよい。例えば、通常価格と高騰額との加重和により最終的な電力市場価格を算出してもよい。予測結果演算部182は、算出した予測結果等を含む出力データを出力部500へ送る。出力データには予測結果以外の情報、日付、通常価格、高騰額などを含めてもよい。
【0044】
出力部500は、予測結果演算部182から受けた出力データを出力する。出力部500は、例えばディスプレイであり、出力データを画面に表示する。出力部500は、通信装置でもよい。この場合、出力部500は、出力データを活用して事業を行う会社の装置に送信してもよい。
【0045】
例えば、出力部500は、電力市場への入札データを生成して電力市場取引システムに提供する入札装置に、出力データを送信してもよい。入札装置は、出力データに基づき予測対象日に市場価格が閾値より高くなる判断した場合に、予測対象日よりも前に電力を買うべく、必要な電力量の買い入札を予測対象日より前に電力市場取引システムに行ってもよい。あるいは、予測対象日に高い価格で電力を売るべく、必要な電力量の売り入札を予測対象日前まで控え、予測対象日に売り入札を行って、電力を高額で売却してもよい。
【0046】
また出力部500は、出力データを、デマンドレスポンス(DR)事業者のデマンドレスポンス(DR)を制御する装置(DR装置)に送信してもよい。DR装置は、予測対象日に市場価格が閾値より高くなると判断した場合に、予測対象日には、需要家に電力の使用を抑制させる下げDRを行うことを計画してもよい。出力データの活用にはその他にも様々考えられる。
【0047】
以下、本実施形態の動作を説明するに先立ち、各種パラメータ、各種データ、各種数式の定義及び具体例を示す。
【0048】
【0049】
【0050】
【0051】
【0052】
図2は、電力市場実績データ・エリアの具体例を示す。
電力市場のスポット市場実績データは、30分単位の各時間コマのシステム価格(円/kWh)と、各エリア価格(市場価格)(円/kWh)とが記録されている。時刻コードとは、30分ごとの時間コマを1~48の整数値でラベル付けしたものである。スポット・時間前平均価格(円/kWh)がさらに記録されていてもよい。
【0053】
図3は、電力市場実績データ・全国の具体例を示す。
仮想システム価格が記録されている。仮想システム価格は2022年1月よりJEPXのホームページで公開されている。ここで仮想システム価格とは、各時間コマのシステム価格の需給曲線データを用いて、売り入札量・買い入札量をそれぞれ0.5 GW、1 GW、5 GW増やした場合の需給曲線の交点の価格を指す。例えば、“仮想システム価格売500MW”は、売り入札量を0.5 GW増やした場合の需給曲線の交点の価格である。“仮想システム価格買い1000MW”は、買い入札量を1GW増やした場合の需給曲線の交点の価格である。交点の価格は例えば約定価格に対応する。
【0054】
【0055】
図4は、気象予測データの具体例を示す。
数値気象予測データとして、日本気象庁が観測に利用しているアメダス地点において、10分間隔の数値気象予報(WRF: Weather Research and Forecasting)を利用する。図の例では30分ごとの平均値が示されている。予測するエリアごとに、エリア内に含まれる全てのアメダス地点の気温(T2: ℃)と日射強度(AVG4: W/m2)を利用する。カラム名はcodeの番号を用いて、“T2_code”, “AVG4_codeとした。例えば、“T2_00001”はアメダス地点00001における気温であり、“AVG4_00001“はアメダス地点00001における日射強度である。
【0056】
【0057】
図5は、発電設備停止計画データの具体例を示す。
発電設備の停止情報はHJKSにて公開されている。HJKSでは各エリアの発電設備(発電機)の稼働・停止情報を一元管理している。発電設備の停止情報により、各エリアの発電設備の稼働計画が把握できる。エリア、発電事業者、発電所コード、発電所名、発電形式、ユニット名(発電機の識別子)、認可出力、 停止区分(計画停止、計画外停止、出力低下)、種別、低下量(発電低下量)、停止日時、復旧見通し、復旧予定日、停止原因、最終更新日時が含まれている。
【0058】
【0059】
【0060】
【数1】

【0061】
【数2】

【0062】
【数3-1】
他の例として、下記の式(3-2)を用いてもよい。
【数3-2】

【0063】
【数4】
式(4)の判定結果を示すデータが、価格高騰判定部(発電設備原因)130の出力データとなる。
【0064】
【数5】
【0065】
【数6】
を満たすか否かの判定を行う。この式が満たされる場合は、閾値を満たすと決定する。式(6)の判定結果を示すデータが、価格高騰判定部(気象原因)160の出力データとなる。
【0066】
【0067】
類似年は、例えば、予測対象日tの前日から1週間前までの価格実績値の平均値が近い年を選ぶ。例えば予測対象日t=2022/03/17の場合、期間2022/03/10~2022/03/16のデータから今年の価格の平均値を求める。2022年より前の年でも同様に期間20XX/03/10~20XX/03/16,のデータから価格の平均値を求める。“XX”は、例えば“21”,“20”,“19”,“18”,“17”である。ここでは遡る年数は5であるが、5未満でも、6以上でもよい。これらXXの中で今年の平均値と一番近かった年を類似年とする。ここでは年ごとの同じ期間を対象としたが、予測対象日tの前日から1週間前までの価格実績値の時系列が、最も近い過去の期間(1週間)を検出して類似期間としてもよい。この場合、過去の期間は予測対象日と同じ年でもよいし、予測対象日の属する年より前の年でもよい。遡る年数は任意でよい。
【0068】
【数7】

【0069】
【0070】
【0071】
【0072】
【0073】
【0074】
【0075】
【0076】
【0077】
【0078】
【0079】
図7のフローチャートの動作例は一例であり他の動作も可能である。例えば気象原因の価格高騰が起こらないことを決定された場合、データ抽出範囲決定部170が予測対象日の前日から一定期間分(例えば1週間分)のを特定する情報を通常価格予測用データ記憶部180に送って、通常価格予測用データ記憶部180が当該情報に基づきデータ抽出を行ってもよい。また、当該情報又は上述したデータ抽出範囲変更情報を通常価格予測用データ記憶部180ではなく、通常価格予測部181に送り、通常価格予測部182が、通常価格予測用データ記憶部180にデータの範囲を指定して、読み出しを行ってもよい。
【0080】
【0081】
【0082】
【0083】
【数8】

【0084】
【0085】
【数9】

【数10】
となる。
また、データ抽出範囲の変更を行った場合は、過年度データから予測した通常価格予測値と、直近データから予測した通常価格予測値との2つを利用することもできる。
【0086】
【0087】
【数11】
図10では気象データの利用地点として、N個の地点を利用した場合の例を示している。また、休日には土日及び祝日を含めている。
【0088】
【0089】
【数12】

【0090】
(ステップS15)
予測結果演算部182が、通常価格の予測値及び高騰額の予測値に基づき、市場価格(エリア価格)の予測値を算出する。データ抽出範囲の変更が行われなかった場合と行われた場合とに分けて説明する。
【0091】
【0092】
【0093】
【数13】

【数14】

【0094】
【0095】
以上、本実施形態によれば、発電所の稼働状況、具体的には発電設備の発電量の計画データに基づき、予測対象日において市場価格の高騰が発生するかを判定し、高騰が発生することを決定した場合には計画データに基づき市場価格の変動額を推定する。この変動額に基づき、市場価格を推定することで、市場価格が高騰する場合にも、高い精度で市場価格を推定できる。
【0096】
また本実施形態では、発電所の発電設備の稼働状況以外に、予測対象日の気象予測値に基づき気象原因による市場価格の高騰が発生するかを判定し、気象原因による高騰が発生することを決定した場合には、予測対象日と気象条件が類似する過去のデータ(気象予測データ及び電力市場実績データ)を用いて市場価格を推定する。これにより、気象条件の急変動により発電量が低下又は発電量が停止した場合でも、市場価格を高い精度で推定できる。
【0097】
このように本実施形態によれば、発電設備のトラブルによる発電量の低下や、気象条件の突発的な変動により市場価格が高騰する場合でも、市場価格を高い精度で推定できる。本実施形態は、電力の需給に関わる事業者の収益向上させることがで、また燃料電池の利用計画等に活用できる。
【0098】
(変形例)
上述した実施形態では発電量の低下量に基づき市場価格の高騰を判定したが、発電量の増加量の場合も同様の処理を行うことで市場価格の暴落を判定し、市場価格を予測することが可能である。この場合は上述した記載における高騰を暴落、低下量を増加量などと読み替えればよい。
【0099】
【0100】
【0101】
[1]下記で用いる類似検索のハイパーパラメータ
【表1】
【0102】
【数15】

【数16】

【0103】
【数17】

【数18】

【0104】
【数19】

【数20】

【0105】
【数21】

【数22】

【0106】
【数23】

【数24】

【数25】

【0107】
【数26】

【0108】
【数27】
以上が、類似検索を用いて通常価格予測値を算出する際の計算の詳細である。
【0109】
(ハードウェア構成)
図14は、本実施形態に係る情報処理装置としての価格高騰予測装置10のハードウェア構成を示す。価格高騰予測装置10は、コンピュータ装置600により構成される。コンピュータ装置600は、プロセッサであるCPU601と、入力インタフェース602と、表示装置603と、通信装置604と、主記憶装置605と、外部記憶装置606とを備え、これらはバス607により相互に接続されている。
【0110】
CPU(中央演算装置)601は、主記憶装置605上で、コンピュータプログラムである情報処理プログラムを実行する。情報処理プログラムは、本装置の上述の各機能構成を実現するプログラムのことである。情報処理プログラムは、1つのプログラムではなく、複数のプログラムやスクリプトの組み合わせにより実現されていてもよい。CPU601が、情報処理プログラムを実行することにより、各機能構成は実現される。
【0111】
入力インタフェース602は、キーボード、マウス、およびタッチパネルなどの入力装置からの操作信号を、本装置に入力するための回路である。
【0112】
表示装置603は、本装置から出力されるデータを表示する。表示装置603は、例えば、LCD(液晶ディスプレイ)、有機エレクトロルミネッセンスディスプレイ、CRT(ブラウン管)、またはPDP(プラズマディスプレイ)であるが、これに限られない。コンピュータ装置600から出力されたデータは、この表示装置603に表示することができる。
【0113】
通信装置604は、本装置が外部装置と無線または有線で通信するための回路である。データは、通信装置604を介して外部装置から入力することができる。外部装置から入力したデータを、主記憶装置605や外部記憶装置606に格納することができる。
【0114】
主記憶装置605は、情報処理プログラム、情報処理プログラムの実行に必要なデータ、および情報処理プログラムの実行により生成されたデータなどを記憶する。情報処理プログラムは、主記憶装置605上で展開され、実行される。主記憶装置605は、例えば、RAM、DRAM、SRAMであるが、これに限られない。図1の各記憶部又はデータベースは、主記憶装置605上に構築されてもよい。
【0115】
外部記憶装置606は、情報処理プログラム、情報処理プログラムの実行に必要なデータ、および情報処理プログラムの実行により生成されたデータなどを記憶する。これらの情報処理プログラムやデータは、情報処理プログラムの実行の際に、主記憶装置605に読み出される。外部記憶装置606は、例えば、ハードディスク、光ディスク、フラッシュメモリ、及び磁気テープであるが、これに限られない。情報処理装置の各記憶部又はデータベースは、外部記憶装置606上に構築されてもよい。
【0116】
なお、情報処理プログラムは、コンピュータ装置600に予めインストールされていてもよいし、CD-ROMなどの記憶媒体に記憶されていてもよい。また、情報処理プログラムは、インターネット上にアップロードされていてもよい。
【0117】
また、本装置は、単一のコンピュータ装置600により構成されてもよいし、相互に接続された複数のコンピュータ装置600からなるシステムとして構成されてもよい。
【0118】
なお、本発明は上記各実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記各実施形態に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることによって種々の発明を形成できる。また例えば、各実施形態に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除した構成も考えられる。さらに、異なる実施形態に記載した構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【0119】
本実施形態は以下のような構成をとることもできる。
[付記]
[項目1]
電力市場で取引可能な電力を発電する発電設備の発電量の計画データを取得し、前記計画データに基づき対象日における発電量の変化に関する第1イベントを検知した場合、前記対象日において前記第1イベントに起因する前記電力市場の市場価格の変動額を推定する処理部
を備えた情報処理装置。
[項目2]
前記第1イベントは、前記対象日における前記発電量の変化量が閾値を超えることである
項目1に記載の情報処理装置。
[項目3]
前記第1イベントは、前記対象日における前記発電量の変化量と、前記対象日より前の取引日における前記発電量の変化量との差が閾値を超えることである
項目1又は2に記載の情報処理装置。
[項目4]
前記処理部は、前記電力市場における前記市場価格の実績データに基づき、前記対象日において前記第1イベントが発生しない場合の市場価格である第1市場価格を推定し、
前記処理部は、前記第1市場価格と、前記変動額とに基づき、前記対象日において前記第1イベントが発生する場合の市場価格である第2市場価格を推定する
項目1~3のいずれか一項に記載の情報処理装置。
[項目5]
前記処理部は、前記第1市場価格と前記変動額とを含む関数により前記第2市場価格を算出する
項目4に記載の情報処理装置。
[項目6]
前記計画データは、前記発電設備の発電量の変動の原因、前記変動の種別、前記発電設備の種別の少なくとも一方を含み、
前記変動の原因、及び前記変動の種別、前記発電設備の種別の少なくとも1つの情報をユーザが指定する入力部を備え、
前記処理部は、前記ユーザが指定した前記情報に一致する前記発電設備の前記発電量の合計の変化に基づき前記第1イベントが発生するか否かを判定する、
項目1~5のいずれか一項に記載の情報処理装置。
[項目7]
前記第1イベントは、前記電力市場が対象とするエリア内に存在する複数の発電設備の発電量の合計の変化に関するイベントである
項目1~6のいずれか一項に記載の情報処理装置。
[項目8]
前記第1イベントは、前記発電量の合計の変化量が閾値を超えることである
項目7に記載の情報処理装置。
[項目9]
前記第1イベントは、前記対象日における前記発電量の変化量の合計と、前記対象日より前の取引日における前記発電量の変化量の合計との差が閾値を超えることである
項目7又は8に記載の情報処理装置。
[項目10]
前記処理部は、前記市場価格の実績データに基づき、単位量だけ電力取引量が増えた場合の前記市場価格の変動額の推定値を表す係数を算出し、
前記処理部は、前記対象日における前記発電量の変化量と、前記対象日より前の取引日における前記発電量の変化量との差に前記係数を乗じることにより、前記変動額を算出する、
項目1~9のいずれか一項に記載の情報処理装置。
[項目11]
前記処理部は、前記市場価格の実績データと、前記対象日より前の期間の気象予測データとを取得し、
前記処理部は、前記対象日における気象予測値を取得し、取得した気象予測値と、前記実績データと前記気象予測データとに基づき、前記対象日における前記第1市場価格を算出する
項目4又は5に記載の情報処理装置。
[項目12]
前記処理部は、前記市場価格の実績データと気象予測データとを取得し、前記実績データと前記気象予測データのそれぞれは、前記対象日より前の第1期間と、前記第1期間より前の第2期間とを含み、
前記処理部は、前記対象日における気象予測値を取得し、前記気象予測値に基づき気象に関する第2イベントを検知した場合に、前記第2期間の前記実績データと前記第2期間の前記気象予測データに基づき前記第1市場価格を算出し、前記第2イベントを検知しない場合に前記第1期間の前記実績データと前記第1期間の前記気象予測データとに基づき前記第1市場価格を算出する
項目4又は5に記載の情報処理装置。
[項目13]
前記処理部は、前記対象日の前記発電設備の発電量について第1時点で取得した第1の前記計画データと、前記対象日の前記発電設備の発電量について前記第1時点より前の第2時点の前記計画データとを取得し、第1の前記計画データと、第2の前記計画データとに基づき、前記差を算出する
項目3に記載の情報処理装置。
[項目14]
前記発電量の変化量は、前記発電量の低下量である
項目2又は3に記載の情報処理装置。
[項目15]
前記発電量の変化量は、前記発電量の低下量である
項目3に記載の情報処理装置。
[項目16]
前記発電量の合計の変化量は、前記発電量の合計の低下量である
項目8に記載の情報処理装置。
[項目17]
前記発電量の合計の変化量は、前記発電量の合計の低下量である
項目9に記載の情報処理装置。
[項目18]
電力市場で取引可能な電力を発電する発電設備の発電量の計画データを取得し、
前記計画データに基づき対象日における発電量の変化に関する第1イベントを検知した場合、前記対象日において前記第1イベントに起因する前記電力市場の市場価格の変動額を推定する
情報処理方法。
[項目19]
電力市場で取引可能な電力を発電する発電設備の発電量の計画データを取得するステップと、
前記計画データに基づき対象日における発電量の変化に関する第1イベントを検知した場合、前記対象日において前記第1イベントに起因する前記電力市場の市場価格の変動額を推定するステップと
をコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラム。
【符号の説明】
【0120】
1 気象予測システム
2 電力市場実績値管理システム
3 発電所稼働状況管理システム
10 価格高騰予測装置
100 処理部
100A 価格高騰予測機能
100B 通常時予測機能
100C 電力市場予測機能
110 発電設備停止計画データ前処理部(前処理部)
120 傾向分析部
130 価格高騰判定部(発電設備原因)
140 価格感応度算出部
150 高騰額予測部
160 価格高騰判定部(気象原因)
170 データ抽出範囲決定部
180 通常価格予測用データ記憶部
181 通常価格予測部
182 予測結果演算部
200 データ取得部
210 気象予測取得部
220 電力市場実績取得部
230 発電設備停止計画取得部
300 データ記憶部
310 気象予測記憶部
320 電力市場実績記憶部
330 発電設備停止計画記憶部
400 入力部
500 出力部
600 コンピュータ装置
601 CPU(プロセッサ)
602 入力インタフェース
603 表示装置
604 通信装置
605 主記憶装置
606 外部記憶装置
607 バス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14