(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135409
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】基板処理装置および基板処理方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/027 20060101AFI20240927BHJP
B05D 1/26 20060101ALI20240927BHJP
B05D 3/04 20060101ALI20240927BHJP
B05C 9/12 20060101ALI20240927BHJP
B05C 5/02 20060101ALI20240927BHJP
B05B 1/14 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
H01L21/30 564Z
B05D1/26 Z
B05D3/04 Z
B05C9/12
B05C5/02
B05B1/14 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023046069
(22)【出願日】2023-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100108523
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 雅博
(74)【代理人】
【識別番号】100125704
【弁理士】
【氏名又は名称】坂根 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100187931
【弁理士】
【氏名又は名称】澤村 英幸
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 優史
(72)【発明者】
【氏名】後藤 茂宏
【テーマコード(参考)】
4D075
4F033
4F041
4F042
5F146
【Fターム(参考)】
4D075AC02
4D075AC88
4D075AC91
4D075AC94
4D075AC95
4D075BB57Z
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4D075CA47
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4D075EA45
4F033AA01
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4F033DA01
4F033DA05
4F033EA01
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4F042AA02
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4F042DF09
4F042DF11
4F042DF22
4F042DF24
5F146JA02
5F146JA27
(57)【要約】
【課題】基板の上面に形成される処理液の膜の厚みを均一化することが可能な基板処理装置および基板処理方法を提供する。
【解決手段】プレート部材131上に基板Wが吸着保持される。この状態で基板Wの上面に処理液を塗布する塗布処理が開始される。塗布処理時には、スリット状の吐出口14を有する液ノズルブロック151が基板Wの上面に近づけられる。また、液ノズルブロック151が、基板Wの上方の空間を一方向に移動する。この移動時に、液ノズルブロック151の吐出口14から基板Wに処理液が吐出される。液ノズルブロック151が基板Wの一端部から他端部まで移動することにより、基板Wの上面全体に処理液の膜が形成される。基板W上に形成された処理液の膜の一部に向かって気体ノズル170から気体が噴射される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の上面に処理液の膜を形成する基板処理装置であって、
前記基板を保持する基板保持部と、
第1の方向に延びるスリット状の吐出口を有し、前記基板保持部により保持された前記基板に前記吐出口から処理液を吐出する液ノズルと、
前記液ノズルが前記基板に処理液を吐出しつつ前記基板の上方の空間を通過するように、前記基板保持部および前記液ノズルのうち少なくとも一方を他方に対して前記第1の方向に交差する第2の方向に相対的に移動させる移動部と、
前記液ノズルから前記基板上に吐出された処理液に気体を供給する1または複数の気体ノズルを有する気体供給部とを備える、基板処理装置。
【請求項2】
前記1または複数の気体ノズルのうち少なくとも1つは、前記基板保持部により保持される前記基板の上方の位置に設けられ、水平方向において前記第2の方向を向きかつ上下方向において下方を向く方向に気体を噴射するように構成された、請求項1記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記移動部は、前記液ノズルが前記基板の上方の空間を通過することにより前記基板の前記上面に処理液の膜が形成された後、前記基板と前記液ノズルとが互いに遠ざかるように、前記基板保持部および前記液ノズルのうち少なくとも一方を他方に対して前記第2の方向に相対的に移動させる離間動作を行い、
前記移動部による前記離間動作中には、前記基板と前記液ノズルとの間で、前記基板の前記上面上に存在する処理液と前記液ノズルの外表面に付着する処理液とをつなぐ液柱が形成され、
前記気体供給部は、前記移動部による前記離間動作中、前記液柱が分断される前に、前記1または複数の気体ノズルのうち少なくとも1つから前記液柱に気体を噴射する、請求項2記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記1または複数の気体ノズルは、前記第1の方向に延びるスリット状の噴射口を有する一の気体ノズルを含み、
前記一の気体ノズルの前記噴射口は、前記液ノズルの前記吐出口と同じ長さを有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記1または複数の気体ノズルは、前記液ノズルの前記吐出口の前記第1の方向における複数の部分にそれぞれ対応するように設けられた複数の気体ノズルを含み、
前記気体供給部は、
前記複数の気体ノズルにおける前記気体の噴射状態を切り替え可能に構成された切替部とを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記1または複数の気体ノズルは、前記液ノズルに取り付けられる、請求項1~3のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項7】
基板の上面に処理液の膜を形成する基板処理方法であって、
基板保持部により前記基板を保持するステップと、
第1の方向に延びるスリット状の吐出口を有し、前記基板保持部により保持された前記基板に前記吐出口から処理液を吐出する液ノズルを用意するステップと、
前記液ノズルが前記基板に処理液を吐出しつつ前記基板の上方の空間を通過するように、前記基板保持部および前記液ノズルのうち少なくとも一方を他方に対して前記第1の方向に交差する第2の方向に相対的に移動させるステップと、
1または複数の気体ノズルを用いて前記液ノズルから前記基板上に吐出された処理液に気体を供給するステップとを含む、基板処理方法。
【請求項8】
前記1または複数の気体ノズルのうち少なくとも1つは、前記基板保持部により保持される前記基板の上方の位置に設けられ、水平方向において前記第2の方向を向きかつ上下方向において下方を向く方向に気体を噴射するように構成された、請求項7記載の基板処理方法。
【請求項9】
前記液ノズルが前記基板の上方の空間を通過することにより前記基板の前記上面に処理液の膜が形成された後、前記基板と前記液ノズルとが互いに遠ざかるように、前記基板保持部および前記液ノズルのうち少なくとも一方を他方に対して前記第2の方向に相対的に移動させる離間ステップをさらに含み、
前記離間ステップ中には、前記基板と前記液ノズルとの間で、前記基板の前記上面上に存在する処理液と前記液ノズルの外表面に付着する処理液とをつなぐ液柱が形成され、
前記気体を供給するステップは、前記離間ステップ中、前記液柱が分断される前に、前記1または複数の気体ノズルのうち少なくとも1つから前記液柱に気体を噴射することを含む、請求項8記載の基板処理方法。
【請求項10】
前記1または複数の気体ノズルは、前記第1の方向に延びるスリット状の噴射口を有する一の気体ノズルを含み、
前記一の気体ノズルの前記噴射口は、前記液ノズルの前記吐出口と同じ長さを有する、請求項7~9のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項11】
前記1または複数の気体ノズルは、前記液ノズルの前記吐出口の前記第1の方向における複数の部分にそれぞれ対応するように設けられた複数の気体ノズルを含み、
前記気体を供給するステップは、前記複数の気体ノズルにおける前記気体の噴射状態を切り替えることを含む、請求項7~9のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項12】
前記1または複数の気体ノズルは、前記液ノズルに取り付けられる、請求項7~9のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板の上面に処理液の膜を形成する基板処理装置および基板処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体基板、液晶表示装置もしくは有機EL(Electro Luminescence)表示装置等のFPD(Flat Panel Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板、セラミック基板または太陽電池用基板等の基板に種々の処理を行うために、基板処理装置が用いられる。
【0003】
基板処理装置の一例として、スリット状の吐出口を有するノズル(以下、スリットノズルと呼ぶ。)を用いて、基板に処理液を塗布する塗布処理装置がある。例えば、特許文献1に記載の塗布装置(塗布処理装置)においては、水平姿勢で保持された円形状の基板の上方の空間を、スリットノズルが処理液を吐出しつつ移動する。この移動時には、基板の外側の領域に余分な処理液が吐出されないように、吐出口の開口幅が基板の寸法に合うように調整される。
【0004】
ところで、スリットノズルを用いた塗布処理装置においては、スリットノズルが処理液を吐出しつつ基板の上方の空間を移動した後、スリットノズルが基板から離間する際に、基板上に処理液の液溜まりが発生する。処理液の液溜まりは、塗布処理後の基板上で局所的に膜の厚みが変化する部分を生じさせる。このような膜厚異常部分の発生は、後続の基板の処理に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0005】
この点を考慮して、特許文献2に記載の基板塗布装置においては、塗布処理の開始前に、切り欠き部がスリットノズルの移動方向における終端位置となるように基板が配置される。この状態で塗布処理が行われることにより、基板の上面全体に処理液が塗布されてスリットノズルが基板から離間する際に、液溜まりが切り欠き部の近傍の領域で発生する。基板において、切り欠き部は、回路パターン等が形成される有効領域の外側に位置する。したがって、液溜まりの発生個所が有効領域の外側に限定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2017-164700号公報
【特許文献2】特開2022-143661号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のように、特許文献2に記載の基板塗布装置であっても、基板の上面における切り欠き部の近傍の領域には、膜厚異常部分が発生する。基板における膜厚異常部分の存在は、少なくとも基板処理に影響を及ぼすと考えられる。したがって、基板上に形成される処理液の膜の厚みは、基板の上面におけるより広い範囲に渡って均一化されることが好ましい。
【0008】
本発明の目的は、基板の上面に形成される処理液の膜の厚みを均一化することが可能な基板処理装置および基板処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一局面に従う基板処理装置は、基板の上面に処理液の膜を形成する基板処理装置であって、前記基板を保持する基板保持部と、第1の方向に延びるスリット状の吐出口を有し、前記基板保持部により保持された前記基板に前記吐出口から処理液を吐出する液ノズルと、前記液ノズルが前記基板に処理液を吐出しつつ前記基板の上方の空間を通過するように、前記基板保持部および前記液ノズルのうち少なくとも一方を他方に対して前記第1の方向に交差する第2の方向に相対的に移動させる移動部と、前記液ノズルから前記基板上に吐出された処理液に気体を供給する1または複数の気体ノズルを有する気体供給部とを備える。
【0010】
本発明の他の局面に従う基板処理方法は、基板の上面に処理液の膜を形成する基板処理方法であって、基板保持部により前記基板を保持するステップと、第1の方向に延びるスリット状の吐出口を有し、前記基板保持部により保持された前記基板に前記吐出口から処理液を吐出する液ノズルを用意するステップと、前記液ノズルが前記基板に処理液を吐出しつつ前記基板の上方の空間を通過するように、前記基板保持部および前記液ノズルのうち少なくとも一方を他方に対して前記第1の方向に交差する第2の方向に相対的に移動させるステップと、1または複数の気体ノズルを用いて前記液ノズルから前記基板上に吐出された処理液に気体を供給するステップとを含む。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、基板の上面に形成される処理液の膜の厚みを均一化することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1の実施の形態に係る基板処理装置の外観斜視図である。
【
図2】
図1の基板処理装置の制御系の構成を示すブロック図である。
【
図3】基板処理装置の基本動作の具体例を説明するための図である。
【
図4】基板処理装置の基本動作の具体例を説明するための図である。
【
図5】基板処理装置の基本動作の具体例を説明するための図である。
【
図6】基板処理装置の基本動作の具体例を説明するための図である。
【
図7】
図1の塗布装置に気体ノズルが設けられない場合に基板上に発生し得る膜厚異常部分を説明するための参考図である。
【
図8】
図1の塗布装置に気体ノズルが設けられない場合に基板上に発生し得る膜厚異常部分を説明するための参考図である。
【
図9】気体ノズルから噴射される気体により得られる効果を説明するための図である。
【
図10】実施例1および実施例2の基板の作製時に気体ノズルから気体を噴射する状態を示す側面図である。
【
図11】実施例1、実施例2および比較例の基板に形成された膜の厚み分布の測定結果を示す図である。
【
図12】第2の実施の形態に係る気体ノズルの構成を説明するための模式的平面図である。
【
図13】第2の実施の形態に係る塗布処理において基板の第1の基板端部およびその近傍部分に気体が噴射される状態を示す側面図である。
【
図14】
図13の気体ノズル、液ノズルブロック、プレート部材および基板を塗布装置の前方から見た図である。
【
図15】第2の実施の形態に係る塗布処理において基板の外周端部のうち複数の円弧状部分の一部に気体が噴射される状態を示す側面図である。
【
図16】
図15の気体ノズル、液ノズルブロック、プレート部材および基板を塗布装置の前方から見た図である。
【
図17】第2の実施の形態に係る塗布処理において基板の第2の基板端部およびその近傍部分に気体が噴射される状態を示す側面図である。
【
図18】
図17の気体ノズル、液ノズルブロック、プレート部材および基板を塗布装置の前方から見た図である。
【
図19】他の実施の形態に係る気体ノズルの一構成例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施の形態に係る基板処理装置および基板処理方法について図面を参照しつつ説明する。以下の説明において、基板とは、液晶表示装置または有機EL(Electro Luminescence)表示装置等に用いられるFPD(Flat Panel Display)用基板、半導体基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板、セラミック基板または太陽電池用基板等をいう。また、以下に説明する基板は、少なくとも一部が円形状を有する基板であり、ノッチまたはオリエンテーションフラット等が形成された円形基板である。さらに、以下に説明する基板処理装置においては、基板の主面(回路パターンが形成されているかまたは回路パターンの形成が予定されている面)が上方に向けられた状態で各種処理が行われる。
【0014】
1.第1の実施の形態
<1>基板処理装置の構成
図1は、第1の実施の形態に係る基板処理装置の外観斜視図である。
図1に示すように、基板処理装置1は、塗布装置100、制御部110、処理液供給系160および気体供給系180を含み、図示しない筐体内に収容されている。
図1以降の所定の図では、基板処理装置1の各部の位置関係を明確にするために、互いに直交するX方向、Y方向およびZ方向を示す矢印を付している。X方向およびY方向は水平面内で互いに直交し、Z方向は上下方向(鉛直方向)に相当する。
【0015】
塗布装置100は、基板W上に処理液の膜を形成する塗布処理が可能に構成され、2つのステージ支持体120、ステージ装置130、2つのノズル支持体140および液ノズル装置150を含む。本実施の形態において、塗布装置100で用いられる処理液はレジスト膜用の塗布液(レジスト液)または反射防止膜用の塗布液(反射防止液)である。なお、本例の塗布装置100において塗布処理の対象となる基板Wは、概ね300mmの直径を有する。
【0016】
塗布装置100の2つのステージ支持体120の各々は、一方向に延びる略直方体形状を有し、X方向に沿って延びるように、図示しない筐体の底面上に設けられている。2つのステージ支持体120は、Y方向に並ぶように配置されている。各ステージ支持体120の上面には、ガイドレール121が設けられている。以下の説明では、X方向のうちステージ支持体120の一端部taから他端部tbに向く方向(
図1において右に向く方向)を塗布装置100の前方と呼ぶ。また、X方向のうちステージ支持体120の他端部tbから一端部taに向く方向(
図1において左に向く方向)を塗布装置100の後方と呼ぶ。
【0017】
ステージ装置130は、Y方向において2つのステージ支持体120の間に位置し、2つのステージ支持体120により支持されている。ステージ装置130は、プレート部材131、プレート調整部132、複数(本例では、3本)の支持ピン133、ピン昇降駆動部134および吸気駆動部135を含む。
【0018】
プレート部材131は、例えば矩形の平板形状を有する石材により形成され、ステージ装置130の上面部分を構成する。プレート部材131の一部には、処理対象となる基板Wが載置される。基板Wが載置されるプレート部材131の部分(以下、基板載置部分と呼ぶ。)には、当該プレート部材131をZ方向に貫通するように、図示しない複数の吸気孔および複数のピン挿入孔が形成されている。
【0019】
プレート調整部132、複数の支持ピン133、ピン昇降駆動部134および吸気駆動部135は、プレート部材131の下方に設けられている。プレート調整部132は、ヒータ等を含み、プレート部材131の基板載置部分の温度を調整する。
【0020】
複数の支持ピン133は、Z方向に延びるようにかつ平面視で基板載置部分の複数のピン挿入孔にそれぞれ重なるようにピン昇降駆動部134により支持されている。ピン昇降駆動部134は、複数の支持ピン133をZ方向に移動させる。それにより、複数の支持ピン133の上端部は、複数のピン挿入孔を通してプレート部材131よりも上方のピン上昇位置と、プレート部材131よりも下方のピン下降位置との間を移動する。
【0021】
基板Wの搬入時には、複数の支持ピン133の上端部がピン上昇位置にある状態で保持される。この状態で、複数の支持ピン133上に基板Wが載置される。一方、基板Wの搬出時には、複数の支持ピン133の上端部がピン上昇位置にある状態で、複数の支持ピン133上に支持された基板Wが図示しない搬送装置により受け取られる。さらに、塗布装置100における基板Wの塗布処理時には、複数の支持ピン133の上端部がピン下降位置にある状態で、プレート部材131の基板載置部分に載置された基板Wに処理液が供給される。
【0022】
プレート部材131に形成された複数の吸気孔は、吸気駆動部135および図示しない吸気系を通して工場の排気設備等に接続されている。吸気駆動部135は、複数の吸気孔と吸気系との間に形成される吸気経路を連通状態と遮断状態との間で切り替える。このような構成により、プレート部材131の基板載置部分に基板Wが載置された状態で、吸気駆動部135は、吸気経路を連通状態とすることにより当該基板Wを基板載置部分に吸着保持させることができる。また、基板載置部分に基板Wが吸着保持された状態で、吸気駆動部135は、吸気経路を遮断状態とすることにより当該基板Wをプレート部材131から解放させることができる。
【0023】
2つのステージ支持体120の上面には、2つのノズル支持体140がそれぞれ設けられている。2つのノズル支持体140は、Y方向に並ぶように配置されている。2つのノズル支持体140の各々は、当該ノズル支持体140が設けられたステージ支持体120のガイドレール121に沿ってX方向に移動可能となっている。
【0024】
液ノズル装置150は、2つのノズル支持体140の間に位置し、2つのノズル支持体140により支持されている。2つノズル支持体140のうち少なくとも一方には、X方向駆動部141およびZ方向駆動部142が内蔵されている。
【0025】
液ノズル装置150は、液ノズルブロック151を含む。液ノズルブロック151は、一方向に延びる略直方体形状を有する。液ノズルブロック151の両端部は、2つのノズル支持体140にそれぞれ支持されている。
図1では、吹き出し内に、液ノズルブロック151の下半部の縦断面図(液ノズルブロック151の下半部をY方向に直交する鉛直面で切断した断面図)が示される。その縦断面図に示されるように、液ノズルブロック151は、塗布装置100の前方を向く前面11および塗布装置100の後方を向く後面12を有する。
【0026】
また、液ノズルブロック151は、基板対向面13a、前傾斜面13bおよび後傾斜面13cを有する。前傾斜面13bは、液ノズルブロック151をY方向に見た側面視で、前面11の下端部から後方かつ下方に向かって延びる。一方、後傾斜面13cは、液ノズルブロック151をY方向に見た側面視で、後面12の下端部から前方かつ下方に向かって延びる。基板対向面13aは、前傾斜面13bの下端部と後傾斜面13cの下端部とをつないでいる。基板対向面13aには、スリット状の吐出口14が形成されている。吐出口14はY方向に延びている。
【0027】
液ノズルブロック151の内部には、液流路15および貯留部16が形成されている。貯留部16は、一定量の処理液を貯留可能に形成されている。貯留部16から吐出口14にかけて液流路15が形成されている。これにより、貯留部16の内部空間は、液流路15および吐出口14を通して液ノズルブロック151の下方の空間(液ノズルブロック151の外部空間)に連通する。液ノズルブロック151には、処理液供給系160の一部を構成する配管PI1が接続されている。
【0028】
X方向駆動部141は、例えばモータ等のアクチュエータを含み、ノズル支持体140をステージ支持体120のガイドレール121上でX方向に移動させる。Z方向駆動部142は、例えばモータ等のアクチュエータを含み、ノズル支持体140によって支持される液ノズル装置150をZ方向に移動させる。
【0029】
液ノズルブロック151の後面12には、取付部材171を介して気体ノズル170が取り付けられている。Y方向において、気体ノズル170は、液ノズルブロック151の吐出口14の中央部と同じ位置に固定されている。気体ノズル170には、気体供給系180の一部を構成する配管PI2が接続されている。
【0030】
処理液供給系160は、上記の配管PI1の他に、処理液供給源、1または複数の配管、継ぎ手およびバルブ等を含む流体関連機器を備える。処理液供給系160は、配管PI1を通して液ノズルブロック151の貯留部16内に、処理液を供給する。気体供給系180は、上記の配管PI2の他に、気体供給源、1または複数の配管、継ぎ手およびバルブ等を含む流体関連機器を備える。気体供給系180は、配管PI2を通して気体ノズル170に気体を供給する。この場合、気体ノズル170は、液ノズルブロック151よりも後方の位置から液ノズルブロック151の下方の空間に向かって斜め下方に気体を噴射する。換言すれば、気体ノズル170は、水平方向においてX方向を向きかつ上下方向において下方を向く方向に気体を噴射するように設けられている。気体ノズル170に供給される気体は、窒素ガス、アルゴンガスまたはヘリウムガス等の不活性ガスである。制御部110は、塗布装置100の各部の動作を制御する。制御部110の詳細は後述する。
【0031】
上記の基板処理装置1においては、プレート部材131上に基板Wが吸着保持された状態で塗布処理が開始される。まず、液ノズルブロック151が基板Wの上面に近づけられ、液ノズル装置150が基板Wの上方の空間を塗布装置100の前方から後方に向かって移動する。このとき、液ノズル装置150のZ方向の位置(高さ位置)は、毛細管現象により、液ノズルブロック151内の処理液が吐出口14から液ノズルブロック151と基板Wとの間の隙間に引き出される(吐出される)ように調整される。このように、ノズルの吐出口から毛細管現象を利用して基板W上に塗布液を供給する方法は、キャピラリ塗布法と呼ばれる。
【0032】
<2>基板処理装置1の制御系
図2は、
図1の基板処理装置1の制御系の構成を示すブロック図である。上記のように、基板処理装置1は、制御部110を備える。制御部110は、CPU(中央演算処理装置)、RAM(ランダムアクセスメモリ)、ROM(リードオンリメモリ)および記憶装置を含む。RAMは、CPUの作業領域として用いられる。ROMは、システムプログラムを記憶する。記憶装置は、基板Wの塗布処理を行うための塗布処理プログラムを記憶する。
【0033】
図2に示すように、制御部110は、基板処理装置1の各部の動作を制御するための機能部として、ノズル移動制御部111、吐出制御部112、プレート制御部113、気体噴射制御部114および条件設定部115を含む。CPUが記憶装置に記憶された塗布処理プログラムをRAM上で実行することにより制御部110の機能部が実現される。制御部110の機能部の一部または全部が電子回路等のハードウェアにより実現されてもよい。
【0034】
条件設定部115には、予め定められた複数の処理条件が記憶されている(処理条件の設定)。本例の複数の処理条件は、「液ノズルブロック151の移動速度」、「液ノズルブロック151と基板Wとの間の隙間の間隔」、および「液ノズルブロック151の内部圧力」および「気体噴射条件」を含む。
【0035】
「液ノズルブロック151の移動速度」は、塗布処理時に液ノズルブロック151が基板Wに対して塗布装置100の前後方向に移動するときの移動速度である。「液ノズルブロック151と基板Wとの間の隙間の間隔」は、塗布処理時に調整されるべき液ノズルブロック151と基板Wとの間の隙間の間隔である。「液ノズルブロック151の内部圧力」は、塗布処理時に調整されるべき液ノズルブロック151内部の処理液の圧力である。「気体噴射条件」は、気体ノズル170から気体が噴射されるべき期間(噴射時間)、および気体ノズル170から噴射されるべき気体の圧力(風圧)等を含む。
【0036】
基板処理装置1は、操作部190をさらに備える。操作部190は、例えばキーボードおよびポインティングデバイスを含み、使用者により操作可能に構成される。使用者は、操作部190を操作することにより塗布処理のための1または複数の処理条件を入力することができる。処理条件が入力された場合、条件設定部115は、入力された処理条件で予め記憶されている処理条件を更新する(処理条件の再設定)。
【0037】
ノズル移動制御部111は、基板Wの塗布処理時に、条件設定部115により設定された各種処理条件に基づいてX方向駆動部141およびZ方向駆動部142を制御する。例えば、ノズル移動制御部111は、Z方向駆動部142を制御することにより、液ノズルブロック151と基板Wとの間に、設定された間隔の隙間を形成する。また、ノズル移動制御部111は、X方向駆動部141を制御することにより、液ノズルブロック151を、設定された移動速度で移動させる。
【0038】
吐出制御部112は、基板Wの塗布処理時に、条件設定部115により設定された各種処理条件に基づいて処理液供給系160の各部(バルブ等)を制御する。プレート制御部113は、ピン昇降駆動部134および吸気駆動部135を制御する。それにより、ピン昇降駆動部134は、例えば塗布装置100における基板Wの搬入および搬出時に複数の支持ピン133を上下動させる。吸気駆動部135は、基板Wをプレート部材131上に吸着保持する。また、プレート制御部113は、プレート調整部132を制御する。それにより、プレート部材131の基板載置部分の温度が調整される。
【0039】
気体噴射制御部114は、基板Wの塗布処理時に、条件設定部115により設定された各種処理条件に基づいて気体供給系180の各部(バルブ等)を制御する。より具体的には、気体噴射制御部114は、条件設定部115に設定された基体噴射条件に基づいて、塗布処理中の予め設定された期間(噴射時間)に、予め設定された圧力(風圧)で気体ノズル170から気体が噴射されるように、気体供給系180の各部を制御する。
【0040】
<3>基板処理装置1の基本動作の具体例
図3~
図6は、基板処理装置1の基本動作の具体例を説明するための図である。
図3~
図6においては、
図1の基板処理装置1の動作状態が時系列順に示される。
図3~
図6の各図では、塗布装置100のうち一部の構成が上下に並ぶ平面図および側面図により示される。
【0041】
まず、
図3に示すように、処理対象となる基板Wがプレート部材131上に吸着保持される。この状態で、液ノズルブロック151が、水平面内でプレート部材131よりもわずかに後方の初期位置に保持される。また、液ノズルブロック151のZ方向の位置(高さ位置)が、予め設定された処理条件(液ノズルブロック151と基板Wとの間の隙間の間隔)に対応する位置となるように調整される。
【0042】
以下の説明では、プレート部材131上に吸着保持された基板Wのうち最も後方に位置する部分を第1の基板端部wp1と呼ぶ。また、プレート部材131上に吸着保持された基板Wのうち最も前方に位置する部分を第2の基板端部wp2と呼ぶ。
【0043】
次に、液ノズルブロック151が、初期位置から予め設定された処理条件(液ノズルブロック151の移動速度)に従う速度で前進する。平面視で液ノズルブロック151と基板Wの第1の基板端部wp1とが重なるタイミングで、図示しないポンプにより所定量の処理液が吐出口14から吐出される。このとき、液ノズルブロック151と基板Wとの間の隙間が処理液で満たされ、毛細管現象が発生し、液ノズルブロック151内の処理液が基板W上に引き出される。その後、液ノズルブロック151が基板W上を前進することにより、
図4に示すように、基板Wの上面のうち平面視で液ノズルブロック151が通過する部分に連続的に処理液の膜が形成される。
図4および後続の
図5および
図6では、基板W上に形成される処理液の膜がドットパターンで示される。
【0044】
液ノズルブロック151の前進動作は、液ノズルブロック151が平面視で第2の基板端部wp2に重なる位置に到達するまで継続される。これにより、
図5に示すように、基板Wの上面全体に処理液の膜が形成される。
【0045】
液ノズルブロック151が平面視で第2の基板端部wp2に重なる位置に到達すると、液ノズルブロック151の前進動作が一時的に停止する。また、
図6の側面図に白抜きの点線矢印で示すように、液ノズルブロック151が所定高さ上昇する。これにより、液ノズルブロック151の吐出口14から処理液が吐出されることが停止される。
【0046】
その後、
図6の側面図に白抜きの実線矢印で示すように、液ノズルブロック151が再度前進する。このとき、
図6の平面図および側面図に太い実線の矢印で示すように、液ノズルブロック151に取り付けられた気体ノズル170から液ノズルブロック151の下方の空間に向かって気体が噴射される。塗布装置100の前後方向において、液ノズルブロック151がプレート部材131から十分に離間することにより、基板Wの塗布処理が終了する。この時、気体ノズル170における気体の噴射も停止される。
【0047】
<4>気体ノズル170から噴射される気体の働き
図3~
図6に示される例で、気体ノズル170から噴射される気体の働きについて説明する。背景技術で説明したように、スリット状の吐出口を有するスリットノズルを用いて基板Wに塗布処理を行う場合、スリットノズルが基板から離間する際には、基板W上に、処理液の液溜まりに起因する膜厚異常部分が発生する。
【0048】
図7および
図8は、
図1の塗布装置100に気体ノズル170が設けられない場合に基板W上に発生し得る膜厚異常部分を説明するための参考図である。
図7では、基板Wの上面全体に処理液の膜が形成された後、液ノズルブロック151が基板Wから離間するときの処理液の状態が3つの側面図で時系列順に示される。
【0049】
まず、上記のように、液ノズルブロック151は、基板W上で前進することにより平面視で第2の基板端部wp2に重なる位置に到達すると、所定高さ上昇する。この場合、
図7の上段に示すように、液ノズルブロック151に付着する処理液と基板W上の処理液とをつなぐように液柱LCが形成される。
【0050】
その後、液ノズルブロック151がさらに前進することにより、基板Wと液ノズルブロック151とが互いに遠ざかると、
図7の中段に示すように、液柱LCが分断される。液柱LCが形成されてから液柱LCが分断されるまでの間は、液ノズルブロック151に付着する処理液が液柱LCを伝って基板W上に流れやすい。また、液柱LCの分断時には、分断された液柱LCの一部が基板W上に余剰の処理液として流れ込む。それにより、第2の基板端部wp2の近傍部分に、余剰の処理液が残留する。このようにして基板W上に残留する余剰の処理液が、上記の液溜まりである。それにより
図7の下段に示すように、第2の基板端部wp2の近傍部分に、処理液の膜の厚みが局所的に大きい膜厚異常部分epが形成される。
図8に、
図7の下段の膜厚異常部分epが平面図で示される。
【0051】
本実施の形態に係る気体ノズル170は、
図7および
図8の膜厚異常部分epを除去するかまたは膜厚異常部分epを可能な限り基板Wの外周端部に近づけるために用いられる。
図9は、気体ノズル170から噴射される気体により得られる効果を説明するための図である。
図9では、
図7の例と同様に、基板Wの上面全体に処理液の膜が形成された後、液ノズルブロック151が基板Wから離間するときの処理液の状態が3つの側面図で時系列順に示される。
【0052】
図9の上段に示すように、本実施の形態では、基板Wの上面全体に処理液の膜が形成された後、液ノズルブロック151が上昇することにより液柱LCが形成されるタイミングで気体ノズル170から気体が噴射される。このとき、気体ノズル170から噴射される気体の一部は、液柱LCに衝突する。それにより、液柱LCは、液ノズルブロック151が上昇を開始した後、比較的短時間で分断される。
【0053】
それにより、液ノズルブロック151に付着する処理液が液柱LCを伝って基板Wの上面上に流れることが低減される。したがって、液柱LCの分断後に基板Wの上面上に形成される処理液の液溜まりが大きくなりにくい。
【0054】
また、気体ノズル170による気体の噴射は、当該気体ノズル170から噴射される気体が基板Wから外れた位置に流れるまで継続される。それにより、液柱LCの分断後に基板W上に液溜まりが形成される場合でも、
図9の中段に示されるように、その液溜まりを形成する余剰の処理液が基板Wの第2の基板端部wp2に向かって押し出される。それにより、膜厚異常部分epにおける処理液の凹凸が平坦化される。さらに、
図9の下段に示すように、余剰の処理液の一部は、基板Wの外周端部を通して基板Wの下面側に回り込むように流動する。
【0055】
このように、気体ノズル170によれば、基板W上の処理液の膜に膜厚異常部分epが形成される場合でも、その膜厚異常部分epの余剰の処理液を基板Wの外周端部により近い領域に移動させることができる。あるいは、その膜厚異常部分epの余剰の処理液を基板Wの下面側に移動させることができる。これらの結果、基板Wの上面のうち回路パターン等が形成される有効領域に膜厚異常部分が形成されることが防止される。
【0056】
なお、気体ノズル170による気体の噴射は、液ノズルブロック151と基板Wとの間に形成される液柱LCの分断時点、または分断後のタイミングで行われてもよい。この場合においても、基板Wの第2の基板端部wp2の近傍に形成される膜厚異常部分epに向かって気体が噴射されることにより、膜厚異常部分epの凹凸が平坦化される。
【0057】
<5>気体ノズル170から噴射される気体に関する試験
本発明者らは、気体ノズル170を用いた気体の噴射による効果を確認するために、以下の試験を行った。まず、
図1の基板処理装置1において一の基板Wの上面全体に処理液を塗布した後、塗布処理中に液ノズルブロック151を当該一の基板Wから離間させ、液ノズルブロック151を一時的に停止させた。続いて、液ノズルブロック151と一の基板Wとの間に形成される液柱LCが分断された後、予め定められた第1の気体噴射条件で気体ノズル170から気体を噴射させ、実施例1の基板Wを作製した。第1の気体噴射条件においては、噴射時間(本例では噴射継続時間)を5secとし、風圧を0.1MPaとした。
【0058】
次に、
図1の基板処理装置1において他の基板Wの上面全体に処理液を塗布した後、塗布処理中に液ノズルブロック151を当該他の基板Wから離間させ、液ノズルブロック151を一時的に停止させた。続いて、液ノズルブロック151と他の基板Wとの間に形成される液柱LCが分断された後、予め定められた第2の気体噴射条件で気体ノズル170から気体を噴射させ、実施例2の基板Wを作製した。第2の気体噴射条件においては、噴射時間(本例では噴射継続時間)を1secとし、風圧を0.2MPaとした。
【0059】
図10は、実施例1および実施例2の基板Wの作製時に気体ノズル170から気体を噴射する状態を示す側面図である。
図10に示すように、実施例1および実施例2の基板Wの作製時において、気体ノズル170から気体を噴射する際の気体ノズル170の先端部から第2の基板端部wp2までのX方向の距離D1は、100mmであった。また、気体ノズル170の先端部から基板Wの上面までのZ方向の距離D2は、40mmであった。
【0060】
次に、
図1の基板処理装置1において気体ノズル170から気体を噴射させることなくさらに他の基板Wに塗布処理を行うことにより比較例の基板Wを作製した。その後、実施例1、実施例2および比較例の基板Wについて、乾燥処理および加熱処理を施した後、基板W上に形成された膜の厚み分布を測定した。
【0061】
図11は、実施例1、実施例2および比較例の基板Wに形成された膜の厚み分布の測定結果を示す図である。
図11では、膜の厚み分布の測定結果が、グラフにより示される。
図11のグラフにおいて、縦軸は基板W上に形成される膜の厚みを表す。また、横軸は、基板Wの中心と第2の基板端部wp2とを結ぶ直線上の位置(基板Wの半径方向の位置)を表す。横軸に示される数値は、基板Wの中心からの距離を表す。実施例1、実施例2および比較例の基板Wはそれぞれ300mmの直径を有する。そのため、
図11の横軸における150mmの位置は、各基板Wの第2の基板端部wp2の位置に相当する。
【0062】
図11に実線の折れ線で示すように、実施例1の基板Wにおいては、膜の厚みに大きな変動が認められる部分(膜厚異常部分ep)が、半径方向において概ね148mmの位置から150mmの位置の範囲内に存在する。また、
図11に一点鎖線の折れ線で示すように、実施例2の基板Wにおいても、膜の厚みに大きな変動が認められる部分(膜厚異常部分ep)が、半径方向において概ね148mmの位置から150mmの位置の範囲内に存在する。これに対して、
図11に点線の折れ線で示すように、比較例の基板Wにおいては、膜の厚みに大きな変動が認められる部分(膜厚異常部分ep)が、半径方向において概ね146mmの位置から150mmの位置の範囲内に存在する。
【0063】
これにより、塗布処理時に基板Wの第2の基板端部wp2近傍に気体ノズル170から気体を噴射することにより、基板Wの周縁部に形成される膜厚異常部分epの範囲(半径方向の幅)が小さくなることが確認された。すなわち、塗布処理時に膜厚異常部分epの発生部分に気体を噴射することにより、基板Wの上面におけるより広い範囲に渡って膜の厚みを均一化することが可能であることが確認できた。
【0064】
<6>第1の実施の形態の効果
(a)本実施の形態に係る塗布装置100においては、基板Wの第2の基板端部wp2近傍に吐出された処理液に気体ノズル170から気体が供給される。この場合、第2の基板端部wp2の近傍における膜厚異常部分epの凹凸が平坦化される。その結果、基板Wの上面に形成される処理液の膜の厚みをより広い範囲に渡って均一化することができる。
【0065】
(b)また、上記の塗布装置100においては、液ノズルブロック151に気体ノズル170が取り付けられている。この場合、液ノズルブロック151と気体ノズル170との位置関係が固定される。したがって、液ノズルブロック151と気体ノズル170との位置関係を予め適切に定めておくことにより、液ノズルブロック151から基板W上に塗布された処理液の膜に対して、所望の位置に容易かつ正確に気体を噴射することが可能になる。
【0066】
2.第2の実施の形態
第2の実施の形態に係る基板処理装置1について、第1の実施の形態に係る基板処理装置1と異なる点を説明する。第2の実施の形態に係る基板処理装置1は、気体ノズル170が、第1の実施の形態に係る気体ノズル170とは異なる構成を有する。
図12は、第2の実施の形態に係る気体ノズル170の構成を説明するための模式的平面図である。
図12では、第2の実施の形態に係る気体ノズル170とともに、その周辺部材(プレート部材131、液ノズルブロック151および気体供給系180)が平面図で示される。
【0067】
図12に示すように、本実施の形態に係る気体ノズル170は、複数(本例では15本)の分割ノズル部n1~n15を有する。複数の分割ノズル部n1~1n15は、図示しない保持部材により一体的に保持され、取付部材171(
図13等参照)により液ノズルブロック151に取り付けられている。なお、
図12では、取付部材171の図示が省略されている。
【0068】
複数の分割ノズル部n1~n15は、液ノズルブロック151の後方の位置でY方向に等間隔で並んでいる。また、複数の分割ノズル部n1~n15は、Y方向における吐出口14の複数の部分にそれぞれ対応するように設けられている。
【0069】
複数の分割ノズル部n1~n15には、気体供給系180を構成する複数の配管PI2がそれぞれ接続されている。ここで、本実施の形態に係る気体供給系180は、各配管PI2を通して複数の分割ノズル部n1~n15の各々に気体を供給する気体供給装置181を備える。複数の配管PI2の各々にはバルブvaが設けられている。
【0070】
各配管PI2に設けられたバルブvaが開かれることにより、当該配管PI2に接続された分割ノズル部から気体が噴射される。各配管PI2に設けられたバルブvaが閉じられることにより、当該配管PI2に接続された分割ノズル部から気体が噴射されない。
【0071】
本実施の形態に係る基板処理装置1の制御部110においては、条件設定部115(
図2)に「気体噴射条件」として、複数の分割ノズル部n1~n15からそれぞれ気体が噴射されるべき期間(噴射時間)が記憶される。これにより、気体噴射制御部114(
図2)は、記憶された複数の分割ノズル部n1~n15の噴射時間に基づいて、複数の分割ノズル部n1~n15にそれぞれ対応する複数のバルブvaの開閉状態を制御する。すなわち、気体噴射制御部114は、複数のバルブvaの開閉状態を制御することにより、複数の分割ノズル部n1~n15の各々の気体の噴射状態を切り替える。
【0072】
第1の実施の形態に係る基板処理装置1の説明では、塗布処理中に第2の基板端部wp2の近傍に発生する膜厚異常部分epについて言及している。しかしながら、実際には、基板Wの塗布処理中、第2の基板端部wp2の近傍以外の部分にも膜厚異常部分epが発生する可能性がある。
【0073】
基板Wの塗布処理時に発生する可能性がある膜厚異常部分epの基板W上の位置は、当該塗布処理を行う前にシミュレーションまたは実験を行うことによりある程度予測することができる。そこで、本実施の形態では、基板W上に発生する可能性がある複数の膜厚異常部分epの基板W上の位置が予測される。その上で、複数の膜厚異常部分epの発生が予測される基板W上の複数の部分にそれぞれ気体が噴射されるように、複数の分割ノズル部n1~n15の各々の噴射時間が「気体噴射条件」として条件設定部115に設定される。
【0074】
図12の例では、プレート部材131上に吸着保持された基板の上面をX方向およびY方向に等距離で分割する複数の仮想点線が示される。複数の仮想点線で仕切られる複数の領域の各々について、膜厚異常部分epの発生の可能性が評価される。その上で、膜厚異常部分epの発生が予測される1または複数の領域に対して局所的に気体が噴射されるように複数の分割ノズル部n1~n15の噴射時間が定められる。
【0075】
具体的には、例えば基板Wの第1の基板端部wp1の近傍に膜厚異常部分epの発生が予測される場合を想定する。この場合、液ノズルブロック151が基板Wの第1の基板端部wp1およびその近傍を通過する際に、当該第1の基板端部wp1およびその近傍部分にのみ気体が噴射されるように複数の分割ノズル部n1~n15の噴射時間が設定される。
図12では、第1の基板端部wp1およびその近傍部分として気体が噴射されるべき3つの領域が薄いハッチングで示される。また、
図12では、第1の基板端部wp1およびその近傍部分として気体が噴射されるべき領域のX方向の位置が符号x1で示される。
【0076】
図13は、第2の実施の形態に係る塗布処理において基板Wの第1の基板端部wp1およびその近傍部分に気体が噴射される状態を示す側面図である。
図14は、
図13の気体ノズル170、液ノズルブロック151、プレート部材131および基板Wを塗布装置100の前方から見た図である。
図14では、複数の分割ノズル部n1~n15と基板Wとの位置関係の理解を容易にするために、液ノズルブロック151が一点鎖線により示される。また、複数の分割ノズル部n1~n15のうち気体を噴射する分割ノズル部n7,n8,n9に薄いハッチングが付されている。
【0077】
図13および
図14に示すように、本例では、塗布処理中、液ノズルブロック151がX方向の位置x1を通過する際、所定のタイミングで一部の分割ノズル部n7,n8,n9から、基板W上の処理液に気体が噴射される。それにより、第1の基板端部wp1およびその近傍部分に膜厚異常部分epが発生する場合でも、気体ノズル170から噴射される気体により膜厚異常部分epの凹凸が平坦化される。また、膜厚異常部分epの形成領域が小さくされる。
【0078】
また、例えば基板Wの外周端部のうち第1の基板端部wp1および第2の基板端部wp2から所定距離離れた複数の円弧状部分の近傍に膜厚異常部分epの発生が予測される場合を想定する。この場合、液ノズルブロック151が基板Wの複数の円弧状部分およびその近傍を通過する際に、それらの複数の円弧状部分およびその近傍部分にのみ気体が噴射されるように複数の分割ノズル部n1~n15の噴射時間が設定される。
図12では、複数の円弧状部分およびその近傍部分として気体が噴射されるべき複数の領域がドットパターンで示される。また、
図12では、複数の円弧状部分およびその近傍部分として気体が噴射されるべき領域の一部に重なるX方向の位置が符号x2で示される。
【0079】
図15は、第2の実施の形態に係る塗布処理において基板Wの外周端部のうち複数の円弧状部分の一部に気体が噴射される状態を示す側面図である。
図16は、
図15の気体ノズル170、液ノズルブロック151、プレート部材131および基板Wを塗布装置100の前方から見た図である。
図16では、
図14の例と同様に、液ノズルブロック151が一点鎖線により示される。また、複数の分割ノズル部n1~n15のうち気体を噴射する分割ノズル部n1,n15にドットパターンが付されている。
【0080】
図15および
図16に示すように、本例では、塗布処理中、液ノズルブロック151がX方向の位置x2を通過する際、所定のタイミングで一部の分割ノズル部n1,n15から、基板W上の処理液に気体が噴射される。それにより、基板Wの外周端部のうち複数の円弧状部分およびその近傍部分に膜厚異常部分epが発生する場合でも、気体ノズル170から噴射される気体により各膜厚異常部分epの凹凸が平坦化される。また、膜厚異常部分epの形成領域が小さくされる。
【0081】
また、上記のように、スリット状の吐出口14を有する液ノズルブロック151の塗布処理では、基板Wの第2の基板端部wp2の近傍に膜厚異常部分epの発生が予測される。そこで、液ノズルブロック151が基板Wの第2の基板端部wp2およびその近傍を通過する際に、当該第2の基板端部wp2およびその近傍部分にのみ気体が噴射されるように複数の分割ノズル部n1~n15の噴射時間が設定される。
図12では、第2の基板端部wp2およびその近傍部分として気体が噴射されるべき1つの領域が濃いハッチングで示される。また、
図12では、第2の基板端部wp2およびその近傍部分として気体が噴射されるべき領域のX方向の位置が符号x3で示される。
【0082】
図17は、第2の実施の形態に係る塗布処理において基板Wの第2の基板端部wp2およびその近傍部分に気体が噴射される状態を示す側面図である。
図18は、
図17の気体ノズル170、液ノズルブロック151、プレート部材131および基板Wを塗布装置100の前方から見た図である。
図18では、
図14の例と同様に、液ノズルブロック151が一点鎖線により示される。また、複数の分割ノズル部n1~n15のうち気体を噴射する分割ノズル部n8に濃いハッチングが付されている。
【0083】
図17および
図18に示すように、本例では、塗布処理中、液ノズルブロック151がX方向の位置x3を通過する際、所定のタイミングで一部の分割ノズル部n8から、基板W上の処理液に気体が噴射される。それにより、第2の基板端部wp2およびその近傍部分に膜厚異常部分epが発生する場合でも、気体ノズル170から噴射される気体により膜厚異常部分epの凹凸が平坦化される。また、膜厚異常部分epの形成領域が小さくされる。
【0084】
上記のように、第2の実施の形態に係る基板処理装置1によれば、予め基板W上に発生することが予測される膜厚異常部分epの位置を把握しておくことにより、基板W上の任意の位置に局所的に気体を噴射することが可能である。例えば、
図12の基板W上で丸印が付された3つの領域に示すように、基板W上の略中央部の領域に局所的に気体を噴射することも可能である。
【0085】
3.他の実施の形態
(a)第1の実施の形態に係る基板処理装置1には、
図1の気体ノズル170に代えて、以下の構成を有する気体ノズル170が設けられてもよい。
図19は、他の実施の形態に係る気体ノズル170の一構成例を示す平面図である。
図19では、気体ノズル170とともに液ノズルブロック151の平面図が示される。
【0086】
図19に示すように、本例の気体ノズル170は、Y方向に延びるスリット状の噴射口179を有する。また、噴射口179のY方向の長さは、液ノズルブロック151の吐出口14のY方向の長さと同じである。この場合、気体ノズル170から液ノズルブロック151の下方の空間に気体が噴射されることにより、基板W上に帯状(カーテン状)の気体の流れを発生させることができる。
【0087】
したがって、
図19の気体ノズル170を用いる場合には、例えば塗布処理中継続して気体ノズル170から気体を噴射させることにより、簡単な構成で基板W上の処理液の膜の全体に渡って厚みを均一化することができる。
【0088】
(b)第1の実施の形態に係る気体ノズル170および第2の実施の形態に係る複数の分割ノズル部n1~n15の各々は、水平方向において塗布装置100の前方を向きかつ上下方向において下方を向く方向に気体を噴射するように設けられている。しかしながら、本発明はこれに限定されない。
【0089】
第1の実施の形態に係る気体ノズル170および第2の実施の形態に係る複数の分割ノズル部n1~n15のうちの少なくとも一部は、水平方向において塗布装置100の後方を向きかつ上下方向において下方を向く方向に気体を噴射するように設けられてもよい。あるいは、第1の実施の形態に係る気体ノズル170および第2の実施の形態に係る複数の分割ノズル部n1~n15のうちの少なくとも一部は、鉛直方向に平行でかつ下方を向く方向に気体を噴射するように設けられてもよい。
【0090】
(c)第1の実施の形態に係る気体ノズル170および第2の実施の形態に係る複数の分割ノズル部n1~n15の各々は、気体の噴射方向を変更可能に液ノズルブロック151に取り付けられてもよい。
【0091】
(d)第1の実施の形態に係る気体ノズル170および第2の実施の形態に係る複数の分割ノズル部n1~n15の各々は液ノズルブロック151に取り付けられるが、本発明はこれに限定されない。第1の実施の形態に係る気体ノズル170および第2の実施の形態に係る複数の分割ノズル部n1~n15の各々は、液ノズルブロック151とは異なる支持部材に支持されてもよい。この場合、支持部材を、当該支持部材により支持される気体ノズルの位置および姿勢を調整可能に構成することが好ましい。それにより、基板W上に形成される膜厚異常部分epの種類および位置等に応じた気体の噴射が可能になる。
【0092】
(e)第1および第2の実施の形態に係る基板処理装置1において、処理対象の基板は、ノッチまたはオリエンテーションフラット等が形成された円形基板であるが、本発明はこれに限定されない。処理対象の基板は、矩形基板であってもよい。
【0093】
(f)第1および第2の実施の形態に係る基板処理装置1において、液ノズルブロック151から基板Wには、液ノズルブロック151と基板Wとの間の隙間で発生する毛細管現象を利用して基板W上に処理液が供給されるが、本発明はこれに限定されない。
【0094】
例えば、基板処理装置1は、毛細管現象の発生を利用することなく、液ノズルブロック151の吐出口14から基板W上に処理液を供給するように構成されてもよい。それにより、液ノズルブロック151から基板Wへの処理液の供給時に、液ノズルブロック151と基板Wとの間の距離を毛細管現象が発生しない程度に大きくすることができる。
【0095】
この場合、液ノズルブロック151から基板Wへの処理液の供給は、液ノズルブロック151内の処理液の圧力を調整する(高くする)ことにより行う。なお、基板Wに対する液ノズルブロック151の移動時には、基板Wの外側の領域に余分な処理液が吐出されないように、吐出口14の開口幅を基板Wの寸法に合うように調整することが好ましい。すなわち、吐出口14のうち平面視で基板Wに重ならない部分を閉塞することが好ましい。それにより、基板Wが存在しない領域に処理液が吐出されることが防止され、処理液の無駄な消費が防止される。
【0096】
(g)第1および第2の実施の形態に係る塗布装置100は、固定されたプレート部材131上の基板Wに対して液ノズル装置150が前後方向に移動することにより基板W上に処理液の膜が形成されるが、本発明はこれに限定されない。
【0097】
塗布装置100は、プレート部材131が前後方向に移動可能に構成されてもよい。この場合、固定された液ノズル装置150に対してプレート部材131が前後方向に移動することにより、プレート部材131に載置された基板W上に処理液の膜が形成されてもよい。あるいは、液ノズル装置150が後方(または前方)に向かって移動するとともにプレート部材131が前方(または後方)に向かって移動することにより、プレート部材131に載置された基板W上に処理液の膜が形成されてもよい。
【0098】
4.請求項の各構成要素と実施の形態の各部との対応関係
以下、請求項の各構成要素と実施の形態の各要素との対応の例について説明するが、本発明は下記の例に限定されない。請求項の各構成要素として、請求項に記載されている構成または機能を有する他の種々の要素を用いることもできる。
【0099】
上記実施の形態においては、基板処理装置1が基板処理装置の例であり、ステージ装置130が基板保持部の例であり、液ノズルブロック151が液ノズルの例であり、ノズル支持体140およびX方向駆動部141が移動部の例であり、気体ノズル170および複数の分割ノズル部n1~n15が1または複数の気体ノズルの例である。
【0100】
また、気体ノズル170、複数の分割ノズル部n1~n15および気体供給系180が気体供給部の例であり、
図19の噴射口179がスリット状の噴射口の例であり、
図19の気体ノズル170が一の気体ノズルの例であり、分割ノズル部n1~n15が複数の気体ノズルの例であり、
図12の複数のバルブvaおよび
図2の気体噴射制御部114が切替部の例である。
【0101】
5.実施の形態の総括
(第1項)第1項に係る基板処理装置は、
基板の上面に処理液の膜を形成する基板処理装置であって、
前記基板を保持する基板保持部と、
第1の方向に延びるスリット状の吐出口を有し、前記基板保持部により保持された前記基板に前記吐出口から処理液を吐出する液ノズルと、
前記液ノズルが前記基板に処理液を吐出しつつ前記基板の上方の空間を通過するように、前記基板保持部および前記液ノズルのうち少なくとも一方を他方に対して前記第1の方向に交差する第2の方向に相対的に移動させる移動部と、
前記液ノズルから前記基板上に吐出された処理液に気体を供給する1または複数の気体ノズルを有する気体供給部とを備える。
【0102】
その基板処理装置においては、液ノズルが処理液を吐出しつつ基板保持部により保持された基板の上方の空間を通過する。これにより、基板保持部により保持された基板の上面に処理液の膜が形成される。このようにして基板の上面に形成される膜には、液ノズルと基板との間の処理液の状態の変化により局所的に厚みが変化する部分(以下、膜厚異常部分と呼ぶ。)が発生する場合がある。
【0103】
上記の構成によれば、液ノズルから基板上に吐出された処理液に気体が供給される。この場合、膜厚異常部分に気体が供給されることにより、当該膜厚異常部分における処理液の凹凸が平坦化される。その結果、基板の上面に形成される処理液の膜の厚みを均一化することができる。
【0104】
(第2項)第1項に記載の基板処理装置において、
前記1または複数の気体ノズルのうち少なくとも1つは、前記基板保持部により保持される前記基板の上方の位置に設けられ、水平方向において前記第2の方向を向きかつ上下方向において下方を向く方向に気体を噴射するように構成されてもよい。
【0105】
この場合、基板の上面に対して斜め下方に気体が噴射される。それにより、上記の液溜まりを構成する余剰な処理液が第2の方向に流動しやすい。
【0106】
(第3項)第2項に記載の基板処理装置において、
前記移動部は、前記液ノズルが前記基板の上方の空間を通過することにより前記基板の前記上面に処理液の膜が形成された後、前記基板と前記液ノズルとが互いに遠ざかるように、前記基板保持部および前記液ノズルのうち少なくとも一方を他方に対して前記第2の方向に相対的に移動させる離間動作を行い、
前記移動部による前記離間動作中には、前記基板と前記液ノズルとの間で、前記基板の前記上面上に存在する処理液と前記液ノズルの外表面に付着する処理液とをつなぐ液柱が形成され、
前記気体供給部は、前記移動部による前記離間動作中、前記液柱が分断される前に、前記1または複数の気体ノズルのうち少なくとも1つから前記液柱に気体を噴射してもよい。
【0107】
この場合、液柱に気体が噴射されることにより、移動部による離間動作が開始された後、液柱が比較的短時間で分断される。それにより、液ノズルの外表面に付着する処理液が液柱を伝って基板の上面上に流れることが低減され、液柱の分断後に基板の上面上に形成される液溜まりが大きくなりにくい。
【0108】
また、仮に基板の上面上に液溜まりが形成されても、その液溜まりに対して基板の外方に向いて気体が噴射される場合には、当該液溜まりから余剰の処理液が他の領域に流動する。それにより、液溜まりに起因する膜厚異常部分を、基板の外周端部により近い領域、および基板の下面側に移動させることができる。これらの結果、基板の上面のうち回路パターン等が形成される領域に膜厚異常部分が形成されることが防止される。
【0109】
(第4項)第1項~第3項のいずれか一項に記載の基板処理装置において、
前記1または複数の気体ノズルは、前記第1の方向に延びるスリット状の噴射口を有する一の気体ノズルを含み、
前記一の気体ノズルの前記噴射口は、前記液ノズルの前記吐出口と同じ長さを有してもよい。
【0110】
この場合、一の気体ノズルの噴射口が液ノズルの吐出口と同じ長さを有するので、基板上の処理液の膜のより広い範囲に渡って気体を噴射することができる。したがって、簡単な構成で基板上の処理液の膜のより広い範囲に渡って厚みを均一化することができる。
【0111】
(第5項)第1項~第4項のいずれか一項に記載の基板処理装置において、
前記1または複数の気体ノズルは、前記液ノズルの前記吐出口の前記第1の方向における複数の部分にそれぞれ対応するように設けられた複数の気体ノズルを含み、
前記気体供給部は、
前記複数の気体ノズルにおける前記気体の噴射状態を切り替え可能に構成された切替部とを含んでもよい。
【0112】
この場合、複数の気体ノズルにおける気体の噴射状態を切り替えることにより、基板の上面上に供給される処理液のうち所望の部分に個別に気体を噴射することができる。したがって、膜厚異常部分が発生した部分、あるいは膜厚異常部分が発生することが予測される部分に個別に気体を噴射することにより、基板の上面上の複数の部分で膜厚異常部分が発生することを低減することができる。
【0113】
(第6項)第1項~第5項のいずれか一項に記載の基板処理装置において、
前記1または複数の気体ノズルは、前記液ノズルに取り付けられてもよい。
【0114】
この場合、液ノズルと1または複数の気体ノズルとの位置関係が固定される。したがって、液ノズルと1または複数の気体ノズルとの位置関係を予め適切に定めておくことにより、液ノズルから基板上に塗布された処理液の膜に対して、所望の位置に容易かつ正確に気体を噴射することが可能になる。
【0115】
(第7項)第7項に係る基板処理方法は、
基板の上面に処理液の膜を形成する基板処理方法であって、
基板保持部により前記基板を保持するステップと、
第1の方向に延びるスリット状の吐出口を有し、前記基板保持部により保持された前記基板に前記吐出口から処理液を吐出する液ノズルを用意するステップと、
前記液ノズルが前記基板に処理液を吐出しつつ前記基板の上方の空間を通過するように、前記基板保持部および前記液ノズルのうち少なくとも一方を他方に対して前記第1の方向に交差する第2の方向に相対的に移動させるステップと、
1または複数の気体ノズルを用いて前記液ノズルから前記基板上に吐出された処理液に気体を供給するステップとを含む。
【0116】
その基板処理方法においては、液ノズルが処理液を吐出しつつ基板保持部により保持された基板の上方の空間を通過する。これにより、基板保持部により保持された基板の上面に処理液の膜が形成される。このようにして基板の上面に形成される膜には、液ノズルと基板との間の処理液の状態の変化により局所的に厚みが変化する部分(以下、膜厚異常部分と呼ぶ。)が発生する場合がある。
【0117】
上記の構成によれば、液ノズルから基板上に吐出された処理液に気体が供給される。この場合、膜厚異常部分に気体が供給されることにより、当該膜厚異常部分における処理液の凹凸が平坦化される。その結果、基板の上面に形成される処理液の膜の厚みを均一化することができる。
【0118】
(第8項)第7項に記載の基板処理方法において、
前記1または複数の気体ノズルのうち少なくとも1つは、前記基板保持部により保持される前記基板の上方の位置に設けられ、水平方向において前記第2の方向を向きかつ上下方向において下方を向く方向に気体を噴射するように構成されてもよい。
【0119】
上記の構成によれば、基板の上面に対して斜め下方に気体が噴射される。それにより、上記の液溜まりを構成する余剰な処理液が第2の方向に流動しやすい。
【0120】
(第9項)第8項に記載の基板処理方法において、
前記基板処理方法は、
前記液ノズルが前記基板の上方の空間を通過することにより前記基板の前記上面に処理液の膜が形成された後、前記基板と前記液ノズルとが互いに遠ざかるように、前記基板保持部および前記液ノズルのうち少なくとも一方を他方に対して前記第2の方向に相対的に移動させる離間ステップをさらに含み、
前記離間ステップ中には、前記基板と前記液ノズルとの間で、前記基板の前記上面上に存在する処理液と前記液ノズルの外表面に付着する処理液とをつなぐ液柱が形成され、
前記気体を供給するステップは、前記離間ステップ中、前記液柱が分断される前に、前記1または複数の気体ノズルのうち少なくとも1つから前記液柱に気体を噴射することを含んでもよい。
【0121】
この場合、液柱に気体が噴射されることにより、離間ステップが開始された後、液柱が比較的短時間で分断される。それにより、液ノズルの外表面に付着する処理液が液柱を伝って基板の上面上に流れることが低減され、液柱の分断後に基板の上面上に形成される液溜まりが大きくなりにくい。
【0122】
また、仮に基板の上面上に液溜まりが形成されても、その液溜まりに対して基板の外方に向いて気体が噴射される場合には、当該液溜まりから余剰の処理液が他の領域に流動する。それにより、液溜まりに起因する膜厚異常部分を、基板の外周端部により近い領域、および基板の下面側に移動させることができる。これらの結果、基板の上面のうち回路パターン等が形成される領域に膜厚異常部分が形成されることが防止される。
【0123】
(第10項)第7項~第9項のいずれか一項に記載の基板処理方法において、
前記1または複数の気体ノズルは、前記第1の方向に延びるスリット状の噴射口を有する一の気体ノズルを含み、
前記一の気体ノズルの前記噴射口は、前記液ノズルの前記吐出口と同じ長さを有してもよい。
【0124】
この場合、一の気体ノズルの噴射口が液ノズルの吐出口と同じ長さを有するので、基板上の処理液の膜のより広い範囲に渡って気体を噴射することができる。したがって、簡単な構成で基板上の処理液の膜のより広い範囲に渡って厚みを均一化することができる。
【0125】
(第11項)第7項~第10項のいずれか一項に記載の基板処理方法において、
前記1または複数の気体ノズルは、前記液ノズルの前記吐出口の前記第1の方向における複数の部分にそれぞれ対応するように設けられた複数の気体ノズルを含み、
前記気体を供給するステップは、前記複数の気体ノズルにおける前記気体の噴射状態を切り替えることを含んでもよい。
【0126】
この場合、複数の気体ノズルにおける気体の噴射状態を切り替えることにより、基板の上面上に供給される処理液のうち所望の部分に個別に気体を噴射することができる。したがって、膜厚異常部分が発生した部分、あるいは膜厚異常部分が発生することが予測される部分に個別に気体を噴射することにより、基板の上面上の複数の部分で膜厚異常部分が発生することを低減することができる。
【0127】
(第12項)第7項~第11項のいずれか一項に記載の基板処理方法において、
前記1または複数の気体ノズルは、前記液ノズルに取り付けられてもよい。
【0128】
この場合、液ノズルと1または複数の気体ノズルとの位置関係が固定される。したがって、液ノズルと1または複数の気体ノズルとの位置関係を予め適切に定めておくことにより、液ノズルから基板上に塗布された処理液の膜に対して、所望の位置に容易かつ正確に気体を噴射することが可能になる。
【0129】
上記の実施形態に係る基板処理装置および基板処理方法によれば、基板処理の歩留まりが向上し、処理液の無駄な消費が抑制されるので、多量な処理液を生成する必要がない。したがって、処理液に起因する地球環境の汚染の低減に寄与することができる。
【符号の説明】
【0130】
1…基板処理装置,11…前面,12…後面,13a…基板対向面,13b…前傾斜面,13c…後傾斜面,14…吐出口,15…液流路,16…貯留部,100…塗布装置,110…制御部,111…ノズル移動制御部,112…吐出制御部,113…プレート制御部,114…気体噴射制御部,115…条件設定部,120…ステージ支持体,121…ガイドレール,130…ステージ装置,131…プレート部材,132…プレート調整部,133…支持ピン,134…ピン昇降駆動部,135…吸気駆動部,140…ノズル支持体,141…X方向駆動部,142…Z方向駆動部,150…液ノズル装置,151…液ノズルブロック,160…処理液供給系,170…気体ノズル,171…取付部材,179…噴射口,180…気体供給系,181…気体供給装置,190…操作部,LC…液柱,PI1,PI2…配管,W…基板,ep…膜厚異常部分,n1~n15…分割ノズル部,ta…一端部,tb…他端部,va…バルブ,wp1…第1の基板端部,wp2…第2の基板端部