(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135417
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】ガス貯留装置
(51)【国際特許分類】
F17C 5/02 20060101AFI20240927BHJP
F17C 13/00 20060101ALI20240927BHJP
F17C 1/04 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
F17C5/02
F17C13/00 301Z
F17C1/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023046085
(22)【出願日】2023-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 康太郎
【テーマコード(参考)】
3E172
【Fターム(参考)】
3E172AB01
3E172AB04
3E172BA01
3E172BB12
3E172BD03
3E172CA14
3E172DA36
3E172EA03
3E172EB02
3E172GA03
(57)【要約】
【課題】ガス貯留装置の肥大化を抑えつつ圧力容器の冷却を効率的に行うこと。
【解決手段】ガス貯留装置は、移動体に搭載され、ガスを貯留可能な圧力容器を備えるガス貯留装置である。圧力容器は、軸方向に延在し、ガスを貯留する容器本体と、容器本体の軸方向端部に配置される口金と、容器本体及び口金の外周面を覆う補強層と、を有する。ガス貯留装置は、口金を内外に貫く口金通路部と口金通路部の内端に接続して容器本体の内部に配置される冷却通路部とを有し、ガスステーションから供給される液化ガスが流れる液化ガス通路を備える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体に搭載され、ガスを貯留可能な圧力容器を備えるガス貯留装置であって、
前記圧力容器は、
軸方向に延在し、前記ガスを貯留する容器本体と、
前記容器本体の軸方向端部に配置される口金と、
前記容器本体及び前記口金の外周面を覆う補強層と、
を有し、
前記口金を内外に貫く口金通路部と、前記口金通路部の内端に接続して前記容器本体の内部に配置される冷却通路部と、を有し、ガスステーションから供給される液化ガスが流れる液化ガス通路を備える、ガス貯留装置。
【請求項2】
前記液化ガス通路を流れた前記液化ガスを気化してガス供給通路を通じて前記容器本体内へ供給する気化装置を備える、請求項1に記載されたガス貯留装置。
【請求項3】
前記気化装置は、前記圧力容器の外側に配置されており、
前記液化ガス通路は、前記圧力容器と前記気化装置との間に介在する連通部に設けられ、軸方向片側の前記口金通路部から前記気化装置へ前記液化ガスを導く液化ガス連通路部を有し、
前記連通部には、前記液化ガス連通路部とは別に前記ガス供給通路の少なくとも一部が設けられている、請求項2に記載されたガス貯留装置。
【請求項4】
前記気化装置は、前記圧力容器の内側に前記容器本体が占める領域とは区画して配置されている、請求項2に記載されたガス貯留装置。
【請求項5】
前記容器本体は、前記ガスを吸蔵可能かつ放出可能な貯蔵材を有し、
前記貯蔵材は、前記冷却通路部が配策される配策孔を有する、請求項1乃至4の何れか一項に記載されたガス貯留装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスを高圧で充填することが可能なガス貯留装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両などの移動体に搭載されたガス貯留装置に、街中などに設置されたガスステーションから水素ガスや天然ガスなどのガスを補給するシステムが知られている(例えば、特許文献1)。一般に、ガス補給システムにおいて、水素ステーションなどのガスステーションは、ガスを液化した状態で貯留しており、その液化ガスを気化器で気化しそのガスを昇圧して蓄圧器に貯蔵した後に移動体のガス貯留装置へ供給する。移動体のガス貯留装置は、圧力容器内にガスを貯留することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ガス貯留装置の圧力容器では、ガスの出し入れ時や振動時に発熱が生じ得るので、その発熱が生じたときは冷却することが求められる。特に圧力容器の容器本体内にガスを吸蔵しかつ放出する貯蔵材が配置される構造では、ガスの出し入れ時に発熱が生じ易いので、冷却手段が必須の構成となる。一方、液化水素ガスなどの液化ガスは、常温よりも低温で存在し、沸点以上に達して気化するときに周囲から熱を奪う。
【0005】
このため、ガス貯留装置に専用の冷却装置が独自に設けられかつ液化ガスの気化時における熱交換がガスステーション側で完結する構成では、ガス貯留装置が肥大化すると共に、ガスステーション側で温度低下が無駄に生じるのでシステム構成としての効率が悪い。
【0006】
本発明は、このような点に鑑みてなされたものであり、ガス貯留装置の肥大化を抑えつつ圧力容器の冷却を効率的に行うことが可能なガス貯留装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、移動体に搭載され、ガスを貯留可能な圧力容器を備えるガス貯留装置であって、前記圧力容器は、軸方向に延在し、前記ガスを貯留する容器本体と、前記容器本体の軸方向端部に配置される口金と、前記容器本体及び前記口金の外周面を覆う補強層と、を有し、前記口金を内外に貫く口金通路部と、前記口金通路部の内端に接続して前記容器本体の内部に配置される冷却通路部と、を有し、ガスステーションから供給される液化ガスが流れる液化ガス通路を備える、ガス貯留装置である。
【0008】
この構成によれば、肥大化を抑えつつ圧力容器の冷却を効率的に行うガス貯留装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態に係るガス貯留装置とガスステーションとを含むガス補給システムの構成図である。
【
図3】本実施形態のガス貯留装置が備える圧力容器の分解斜視図である。
【
図5】本実施形態のガス貯留装置における液化ガス通路及びガス供給通路を表した斜視図である。
【
図6】本発明の一変形形態に係るガス貯留装置の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、
図1-
図6を用いて、本発明に係るガス貯留装置の具体的な実施の形態について説明する。
【0011】
一実施形態に係るガス貯留装置20は、ガスを貯留するための装置である。ガス貯留装置20は、例えばガスを燃料にして走行する車両などの移動体に搭載される。移動体は、街中や駐車場,自宅などに設置されたガスを補強可能なガスステーション10で貯留ガスの補給を受けることが可能である。
図1に示す如く、ガス貯留装置20及びガスステーション10は、ガスステーション10から移動体のガス貯留装置20へガスを補給するガス補給システム1を構築している。
【0012】
尚、ガスステーション10からガス貯留装置20へ補給されるガスは、常温よりも低温で液化する(すなわち、沸点が低い)液化ガスであればよい。このガスは、何れの種類のガスであってもよく、例えば水素ガスや天然ガス等の燃料ガスであってよい。液化ガスの温度は、例えば液化水素ガスのときはマイナス250℃以下であり、液化天然ガスのときはマイナス160℃以下である。また、ガス貯留装置20が貯留可能なガスの圧力は、何れであってもよいが、高圧(例えば100MPaなど)であってよい。すなわち、ガス貯留装置20は、耐圧容器にガスを貯留するものであってよい。
【0013】
ガス貯留装置20は、ガスを貯留することができると共に、液化ガスをガス化することができる。ガス貯留装置20は、
図2及び
図4に示す如く、圧力容器30と、気化装置40と、液化ガス通路50と、ガス供給通路60と、連通部90と、を備えている。
【0014】
圧力容器30は、ガスを貯留するタンクである。圧力容器30は、柱状(例えば、円柱状)に形成されている。圧力容器30は、
図3及び
図4に示す如く、容器本体31と、口金34,35と、シャフト36と、補強層37と、を備えている。容器本体31は、タンク本体をなす軸方向Xに延在する部材である。容器本体31は、ライナ32と、貯蔵材33と、を有している。
【0015】
ライナ32は、内部空間39を内包する筒状(例えば、円筒状や正多角形状など)に形成されている。ライナ32は、軸方向X中央部において略同径になるように形成されつつ、軸方向X両端部において軸方向X中央側から軸方向X端側にかけて縮径するように形成されている。ライナ32は、内部空間39に貯蔵されたガスを透過しない或いは透過し難いガスバリア性を有する材料により構成されている。
【0016】
尚、ライナ32の材料は、圧力容器30の使用環境等に応じて選択されればよい。例えば、大きな温度変化に対する耐性が確保されるように、ライナ32の材料は、アルミニウムやステンレススチール等の金属材料であってもよい。また、ライナ32の材料は、ガスが水素であるときはポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂等の樹脂材料であってもよい。また、ライナ32の内部は、エチレン・ビニルアルコール共重合体(EVOH)等のガスバリア性に優れる材料でコートされていてもよい。
【0017】
更に、ライナ32は、複数の分体により構成され、それら複数の分体が溶着や溶接などにより接合されて一体化されることにより形成されていてよい。具体的には、
図3に示す如く、ライナ32は、軸方向X中央部にある略同径の胴体分体32aと、軸方向X一端部にあるドーム状のドーム分体32bと、軸方向X他端部にあるドーム状のドーム分体32cと、が接合されることにより形成されている。
【0018】
貯蔵材33は、ガスを吸蔵可能であると共に放出可能な部材である。貯蔵材33は、軸方向Xに延びて柱状(例えば、円柱状)に形成されている。貯蔵材33は、軸方向X中央部において略同径になるように形成されつつ、軸方向X両端部において軸方向X中央側から軸方向X端側にかけて縮径するように形成されている。貯蔵材33は、ライナ32の内部空間39に収容されている。
【0019】
貯蔵材33は、所定量のガスを貯蔵することができる容量を有している。尚、貯蔵材33には、例えば貯蔵材33全体におけるガス濃度の均一化を図るため、ガスが流通する流路が設けられていてもよい。貯蔵材33は、貯蔵対象のガスの種類に応じた材料により形成されている。貯蔵材33の材料は、例えば、カーボンナノチューブ等の多孔性の炭素材料、多孔性の金属錯体(すなわちMOF)、ゼオライト、水素吸蔵合金、金属水素化物などである。
【0020】
尚、貯蔵材33は、例えば一次粒子や二次粒子などの粉末を固めた状態すなわちペレット状に形成されていてよい。ペレット状の貯蔵材33によれば、ガスに対する貯蔵材33の接触面積を大きく確保することができるので、ガスの吸蔵放出性能を向上させることができる。この場合、貯蔵材33は、貯蔵材材料の粉末が架橋剤により架橋され又はバインダにより結着されることにより成形されてよい。架橋剤やバインダは、例えば、シリコン系、エポキシ系、アミン系の材料により形成されている。
【0021】
また、貯蔵材33は、例えばハニカム形状に形成された収容部材の各収容空間に収容されて、収容部材の区画壁に囲まれて保持されるものであってもよい。また、貯蔵材33が収容部材に収容される場合、収容部材の区画壁は、熱伝導材により形成されて熱交換器として機能してもよい。この熱伝導材は、シャフト36と同様に、常温(例えば25℃)における熱伝導率が空気の熱伝導率に比べて高い材料であり、具体的には、ステンレススチール、アルミニウム、アルミナ、炭化ケイ素等に代表される金属、合金、セラミックス等であってよい。
【0022】
更に、貯蔵材33は、複数の分体により構成されていてよい。具体的には、
図3に示す如く、貯蔵材33は、軸方向X中央部で分かれた二つの貯蔵材分体33a,33bにより構成されていてよい。貯蔵材分体33a,33b同士は、軸方向X中央部で軸方向Xに互いに対向し又は接した状態にある。各貯蔵材分体33a,33bはそれぞれ、略同径の胴体部の一部と縮径するドーム部の一部とを含んでいる。
【0023】
口金34,35は、圧力容器30の内部(具体的には、容器本体31の内部空間39)と外部(例えば、ガスステーション10や後述の気化装置40)との間でガスや液化ガスを出し入れさせる部材である。口金34,35は、容器本体31の外部から内部へのガスや液化ガスの導入に用いられると共に、容器本体31の内部から外部へのガスや液化ガスの放出に用いられる。
【0024】
口金34は、容器本体31の軸方向X一端側に配置されている。口金35は、容器本体31の軸方向X他端側に配置されている。口金34,35は、剛性確保のため、例えばアルミニウムやステンレススチール等の金属により形成されている。口金34,35はそれぞれ、軸方向に延在する軸部34a,35aと、軸部34a,35aに一体化されて軸回りの全周に亘って径方向に広がる円板状のフランジ部34b,35bと、を有している。
【0025】
口金34は、フランジ部34b及び軸部34aの根元部が貯蔵材33の軸方向X一端部に嵌った状態で軸部34aの先端部がライナ32の軸方向一端部に開いた開口32dから軸方向一方に露出するように配置されている。また、口金35は、フランジ部35b及び軸部35aの根元部が貯蔵材33の軸方向X他端部に嵌った状態で軸部35aの先端部がライナ32の軸方向他端部に開いた開口32dから軸方向他方に露出するように配置されている。
【0026】
口金34,35は、貫通孔34c,35cを有している。貫通孔34c,35cは、圧力容器30(具体的には、容器本体31)の内部を外部に連通させる通路である。具体的には、貫通孔34cは、容器本体31から移動体のエンジンへ供給するガスが流れる通路孔である。貫通孔35cは、気化装置40から容器本体31へ供給されるガスが流れる通路である。貫通孔34c,35cは、軸部34a,35aの軸中心部に設けられている。貫通孔34c,35cは、軸方向Xに延びており、例えば円柱状に形成されている。貫通孔34c,35cは、例えばガス管やバルブなどに接続される。
【0027】
更に、口金34,35は、熱伝導材により形成されている。口金34,35は、圧力容器30の温度調整のため、熱交換媒体が循環する熱交換器として機能してもよい。この場合、口金34,35の双方が熱交換器として機能することが好適であるが、口金34,35のうちの何れか一方が熱交換器として機能するものであってもよい。
【0028】
シャフト36は、口金34と口金35とを接続させる軸部材である。シャフト36は、軸方向Xに直線的に延在している。シャフト36は、軸方向X一端部で口金34に接続されていると共に、軸方向X他端部で口金35に接続されている。シャフト36は、貯蔵材33に設けられた貫通孔33cに挿入配置されている。シャフト36は、軸方向X中央部で分かれた二つのシャフト分体36a,36bにより構成されている。シャフト分体36a,36b同士は、軸方向X中央部で例えば凹凸嵌合などにより互いに接続されている。
【0029】
シャフト36(具体的には、そのシャフト分体36a)の軸方向X一端部は、口金34に組み付けられて一体化されている。また、シャフト36(具体的には、そのシャフト分体36b)の軸方向X他端部は、口金35に組み付けられて一体化されている。口金34とシャフト36と口金35とは、相互に相対回転が規制されて相互に固定されており、互いに一体回転する。尚、口金34とシャフト36と口金35とは、例えば、圧入、ボルト締結、螺合、溶接、溶着などにより相互に固定されるものであってよい。
【0030】
シャフト36は、熱伝導材により形成されている。この熱伝導材は、例えば、常温(例えば25℃)における熱伝導率が空気の熱伝導率に比べて高い材料であり、具体的には、ステンレススチール、アルミニウム、アルミナ、炭化ケイ素等に代表される金属、合金、セラミックス等である。
【0031】
シャフト36は、貫通孔36cと、通気孔(図示せず)と、を有している。貫通孔36cは、口金34側と口金35側との間で貯蔵材33を貫通している。貫通孔36cは、口金34,35の一方の貫通孔34c,35c側から他方の貫通孔35c,34c側へガスを導くための通路である。上記の通気孔は、貫通孔36cに接続しつつ径方向外方に延びシャフト36の外面からシャフト外に露出する孔である。通気孔は、貫通孔36cに流通するガスをシャフト36の軸方向中途から径方向外側の貯蔵材33に導くと共に、貯蔵材33内のガスをシャフト36の軸方向中途から貫通孔36cに導くための通路である。通気孔は、シャフト36に万遍なく複数設けられている。
【0032】
補強層37は、貯蔵材33及び口金34,35の外周面を覆って貯蔵材33を補強する層である。具体的には、補強層37は、ライナ32及び貯蔵材33の胴体部及びドーム部の外側に向いた面並びに口金34,35のフランジ部34b,35bの軸方向外側に向いた面を覆う。補強層37は、例えば繊維状部材により構成されている。補強層37は、フィラメントワインディング(FW)法などによって繊維状部材がライナ32及び貯蔵材33の外面に巻回されることにより形成されている。補強層37を構成する繊維状部材は、例えば、樹脂を含浸した高強度繊維(すなわち、FRP)であって、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維等である。
【0033】
尚、補強層37は、繊維状部材がフープ巻きされたフープ層や繊維状部材がヘリカル巻きされたヘリカル層であってよい。また、補強層37は、繊維状部材が直接的にライナ32及び貯蔵材33の外面に巻回されることに代えて、繊維状部材を用いてシート状に形成されたヘリカル層やフープ層がライナ32及び貯蔵材33の外面に貼り付けられることにより形成されてもよい。また、補強層37は、繊維状部材に樹脂が含浸された状態で形成されてよく、例えば、ヘリカル層やフープ層の形成後に樹脂が加熱硬化されたものであってもよい。この繊維状部材に含浸される樹脂は、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂等の熱硬化性樹脂などである。
【0034】
口金34(具体的には、軸部34aの外表面)とライナ32との間、及び、口金35(具体的には、軸部34aの外表面)とライナ32との間にはそれぞれ、シール部材71,72(
図4参照)が介在されている。各シール部材71,72は、圧力容器30の内部から外部へのガスの漏出を防止するための部材である。各シール部材71,72は、例えば円環状に形成されたOリングなどである。シール部材71,72は、口金34,35の軸部34a,35aに略径方向外側を向くように形成されたシール溝部に嵌って装着されている。
【0035】
気化装置40は、後に詳述する液化ガス通路50を流れた液化ガスをガス化する装置である。気化装置40は、液化ガスがガス化されたガスを、後に詳述するガス供給通路60を通じて容器本体31内(具体的には、ライナ32の内部空間39に収容された貯蔵材33)へ供給する。気化装置40は、液化ガスをガス化する気化器及びガスを所定気圧まで昇圧する圧縮機を有すればよく、更に、液化ガスを貯める液体貯留部や圧縮したガスを冷却する冷却器などを有してもよい。尚、気化装置40は、圧力容器30と同じような容器状に形成されていればよい。
【0036】
気化装置40は、圧力容器30の外側に配置されている。具体的には、気化装置40は、圧力容器30に対して口金35よりも軸方向X外側に配置されている。圧力容器30と気化装置40との間には、連通部90が介在している。圧力容器30と気化装置40とは、連通部90を介して接続されている。連通部90には、圧力容器30と気化装置40とを繋ぐ液化ガス通路50の一部及びガス供給通路60の一部が設けられている。
【0037】
尚、連通部90は、液化ガス通路50の一部及びガス供給通路60の一部を含むものであればよい。例えば、連通部90は、気化装置40に一体に形成されて圧力容器30に組み付けされるものであってもよいし、逆に、圧力容器30に一体に形成されて気化装置40に組み付けられるものであってもよいし、或いは、気化装置40及び圧力容器30に着脱可能に形成されて両者に組み付けられるものであってもよい。
【0038】
液化ガス通路50は、ガスステーション10から供給される液化ガスが流れる通路である。液化ガス通路50は、ガス貯留装置20において口金34,35と気化装置40との間に両者を繋ぐように設けられている。液化ガス通路50は、
図3及び
図4に示す如く、口金通路部51,52と、冷却通路部53と、液化ガス連通路部54と、を有している。
【0039】
尚、液化ガス通路50は、口金34,35と気化装置40とを繋ぐ通路であればよい。例えば、液化ガス通路50は、筒状に形成された配管内に形成された通路であってもよいし、また、口金34,35や貯蔵材33に孔状に形成された通路であってもよい。また、液化ガス通路50は、上記した配管型の通路と孔型の通路とがそれぞれ部分的に設けられたものであってもよい。
【0040】
また、液化ガス通路50は、口金34,35と気化装置40との間において一本以上あればよく、複数本あってもよい。本実施形態においては、
図5に示す如く、液化ガス通路50が4本設けられている。また、液化ガス通路50が複数本設けられている構造では、それら複数本の液化ガス通路50が軸回りに等角度間隔で配置されることが、圧力容器30(具体的には、貯蔵材33)を全域に亘って満遍なく冷却するうえで好ましい。
【0041】
また、液化ガス通路50が複数本設けられている構造では、それら複数本の液化ガス通路50が、
図5に示す如く口金34側と気化装置40側との間で互いに接続することなく独立して存在することとしてもよいし、或いは、口金34側と気化装置40側との間で分岐するように接続することとしてもよい。すなわち、液化ガス通路50は、口金34の外端や気化装置40との接続端では一本であるが、口金34側と気化装置40側との間で複数本となるように接続していてもよい。
【0042】
口金通路部51,52は、口金34,35を内外に貫く通路部位である。口金通路部51,52は、口金34,35を軸方向Xに直線的に延びている。口金通路部51,52は、口金34,35に開いた孔型の通路である。口金通路部51は、口金34に設けられている。口金通路部51は、ガスステーション10側に接続される。また、口金通路部52は、口金35に設けられている。口金通路部52は、気化装置40側に接続される。口金通路部51と口金通路部52とは、冷却通路部53を介して互いに接続されている。
【0043】
冷却通路部53は、容器本体31の内部に配置される通路部位である。冷却通路部53は、容器本体31の内部空間39に収容される配管型の通路である。冷却通路部53は、口金通路部51,52それぞれの内端(すなわち、口金通路部51,52が内部空間39側に露出する開口部)に接続されている。冷却通路部53は、口金通路部51と口金通路部52との間に介在している。冷却通路部53は、内部空間39において主に軸方向Xに直線的に延びている。尚、冷却通路部53は、内部空間39において流れる液化ガスにより貯蔵材33を効果的に冷却できる位置に設けられており、例えば屈曲する部位すなわち径方向に延びる部位を有していてもよい。
【0044】
冷却通路部53は、貯蔵材33を貫くように配置されている。貯蔵材33は、冷却通路部53が配策される配策孔33dを有している。配策孔33dは、貯蔵材33において冷却通路部53の沿う形状に形成されている。尚、貯蔵材33は、配策孔33dへの冷却通路部53の配策を容易にするため、配策孔33dを形成する複数の分体に分かれて構成されていてもよい。
【0045】
液化ガス連通路部54は、軸方向X他端側の口金通路部52から気化装置40へ液化ガスを導く通路部位である。液化ガス連通路部54は、圧力容器30と気化装置40との間の連通部90に設けられている。液化ガス連通路部54は、連通部90を軸方向Xに直線的に延びている。液化ガス連通路部54は、連通部90に開いた孔型又は連通部90に設けられた配管型の通路である。液化ガス連通路部54は、連通部90全体における軸中心から径方向外側にずれた位置に設けられている。液化ガス連通路部54の一端は、口金通路部52に接続されている。液化ガス連通路部54の他端は、気化装置40に接続されている。
【0046】
ガス供給通路60は、気化装置40から圧力容器30へ供給されるガスが流れる通路である。ガス供給通路60は、ガス貯留装置20において気化装置40と圧力容器30との間に両者を繋ぐように設けられている。ガス供給通路60は、
図4に示す如く、ガス連通路部61を有している。尚、口金35の貫通孔35cは、ガス供給通路60の一部をなしていてよい。
【0047】
ガス連通路部61は、連通部90に設けられている。ガス連通路部61は、連通部90を軸方向Xに直線的に延びている。ガス連通路部61は、連通部90に開いた孔型又は連通部90に設けられた配管型の通路である。ガス連通路部61は、連通部90全体における軸中心に設けられている。ガス連通路部61の一端は、口金35の貫通孔35cに接続されている。ガス連通路部61の他端は、気化装置40に接続されている。
【0048】
次に、ガス貯留装置20を含むガス補給システム1の動作及び作用について説明する。
移動体が充填ノズルを介してガスステーション10のディスペンサに接続されてガス補給が開始されると、そのガスステーション10は液化ガスをその移動体に向けて供給する。移動体のガス貯留装置20において、ガスステーション10から液化ガスが供給されると、その液化ガスは、まず、液化ガス通路50を流れる。
【0049】
液化ガスは、液化ガス通路50を流れた後、気化装置40に導かれる。気化装置40は、液化ガス通路50を流れた液化ガスを気化してそのガスをガス供給通路60を通じて圧力容器30の容器本体31の内部空間39へ供給する。気化装置40から圧力容器30に供給されたガスは、容器本体31の内部空間39に進入して貯蔵材33に流れ込む。貯蔵材33に流れ込んだガスは、その貯蔵材33に徐々に吸蔵される。このガスの貯留は、貯留量が所定量になるまで可能である。そして、ガス補給が終了すると、圧力容器30へのガスの充填が完了する。
【0050】
ガスステーション10のディスペンサとの接続が解除されると、移動体は移動可能になる。圧力容器30へのガスの充填後、口金34の貫通孔34cがバルブにより開放されると、圧力容器30内のガスがその貫通孔34cを通じて容器外へ放出される。これにより、移動体は、圧力容器30のガスを燃料として動力を発生しその動力により移動することが可能になる。
【0051】
従って、ガス補給システム1によれば、ガスステーション10から移動体のガス貯留装置20へ液化ガスを供給し、その液化ガスをガス貯留装置20の気化装置40で気化し、その気化されたガスをガス貯留装置20の圧力容器30に貯留することができる。そして、圧力容器30に貯留したガスを燃料として圧力容器30の外部へ放出して移動体の動力を発生させることができる。
【0052】
また、ガス貯留装置20において、ガスステーション10から移動体のガス貯留装置20へ供給される液化ガスは、液化ガス通路50を流れる。液化ガスは、常温よりも低温で液化している。また、液化ガス通路50は、ガスステーション10側からガス貯留装置20の圧力容器30を経由して気化装置40に延びている。液化ガス通路50は、圧力容器30の口金34,35を内外に貫く口金通路部51,52を有すると共に、容器本体31の内部に配置されて具体的には内部空間39に収容されて貯蔵材33の配策孔33dに配策される冷却通路部53と、を有する。
【0053】
この構成においては、ガス貯留装置20の圧力容器30の容器本体31の内部(具体的には、貯蔵材33の内部)に、液化ガスが流れる液化ガス通路50が設けられている。すなわち、ガスステーション10側からの液化ガスが気化装置40への到達前に低温状態で容器本体31の内部(具体的には、貯蔵材33の内部の液化ガス通路50)を流れる。この場合には、容器本体31内においてガスの出し入れや振動などに伴って発熱が生じる部材がその液化ガスにより熱を奪われて冷却される。
【0054】
このため、容器本体31の性能(特に貯蔵材33のガス吸蔵放出性能)が熱で損なわれるのを抑えることができると共に、容器本体31内を冷却するための専用の冷媒やその専用冷媒自体を収容する収容部,その専用冷媒との熱交換を行う熱交換器などを、ガス貯留装置20において専用にかつ独自に設けることは不要である。また、ガスステーション10からガス貯留装置20に供給された液化ガスと容器本体31内の部材との間で熱交換が行われるので、液化ガスの気化を促進することができると共に、ガスステーション10側で液化ガスとの熱交換に伴う温度低下が無駄に生じるのを回避することができる。
【0055】
従って、本実施形態によれば、ガス貯留装置20の肥大化を抑えつつ、圧力容器30(特に、貯蔵材33)の冷却を効率的に行うことができる。
【0056】
また、上記の構成においては、ガスステーション10側に液化ガスを気化する気化装置を設けることは不要である。このため、ガスステーション10側のコスト削減やメンテナンス機会の減少を図ることができる。
【0057】
ところで、上記の実施形態においては、気化装置40が圧力容器30の外側に配置され、圧力容器30に対して口金35よりも軸方向X外側に配置されている。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、
図6に示す如く、気化装置40が、圧力容器30の内側に容器本体31が占める領域とは区画して配置されていてもよい。すなわち、移動体側のガス貯留装置20が、圧力容器30と気化装置40とを一体化した一つのタンクで構成されるものとしてもよい。
【0058】
また、上記の実施形態においては、移動体のガス貯留装置20が気化装置40を備えている。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、気化装置40がガスステーション10に設けられていてもよい。この変形形態においては、気化装置40が液体ガスを気化する過程でその液体ガスの流路として移動体のガス貯留装置20の圧力容器30内に配置された液化ガス通路50を経由することとすればよい。
【0059】
尚、本発明は、上述した実施形態や変形形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更を施すことが可能である。また、本明細書は、出願当初に各請求項に記載された引用関係で示される技術思想を開示するだけでなく、各請求項に記載された事項を適宜組み合わせた技術思想を開示するものである。
【符号の説明】
【0060】
1:ガス補給システム、10:ガスステーション、20:ガス貯留装置、30:圧力容器、31:容器本体、32:ライナ、33:貯蔵材、33d:配策孔、34,35:口金、36:シャフト、37:補強層、39:内部空間、40:気化装置、50:液化ガス通路、51,52:口金通路部、53:冷却通路部、54:液化ガス連通路部、60:ガス供給通路、61:ガス連通路部、90:連通部。